説明

金属ベース回路基板

【課題】光反射機能を併せ持つ金属ベース回路基板を提供する。
【解決手段】金属基板と、金属基板の一方の面に積層された絶縁層と、絶縁層の露出面に形成された回路と、絶縁層及び回路の露出面に積層された白色膜を有する金属ベース回路基板であって、白色膜を構成する組成物に無機質中空粉体が含有され、この無機質中空粉体の中空率が30体積%以上90体積%以下であり、無機質中空粉体の平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である金属ベース回路基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)を使用した液晶のバックライト用の金属ベース回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置は、様々の分野で使用されており、特にパーソナルコンピューターやテレビ等の電子産業分野では数多く使用されてきた。これらの液晶表示装置のなかで、特に直下型のバックライトシステムを採用しているものは、液晶パネルの背面にバックライトを配置しており、またエッジライト型では光源からの出射光を導光板に入射させ、その伝播した光を導光板の表面側からプリズムシート等を介して出射させることによって、液晶パネルの背面を全体的に照射するようにしている。バックライトの光源としては、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp:冷陰極管)が主に使用されていたが、高輝度化や水銀レスといった環境側面への配慮からLEDを使用したものが増加しつつある。
【0003】
特に家庭用テレビの大面積化に伴い、バックライトには高輝度化への要求が高まり、LEDからの出射光のみならず反射光を有効利用する様々な方法が提案されている。
【0004】
従来反射光を有効利用するためには、光反射シートを用いることが一般的でありLEDと搭載したバックライトにおいても、プリント回路基板上にLEDパッケージを実装し、さらに、該プリント回路基板上に光反射シートを貼り付けて使用していた(特許文献1)。
【0005】
これに対し、基板自体を白色化する提案が成されているが、これらはLEDが発する熱の拡散性に劣り、安定した輝度が得られないばかりでなく、LED自体の寿命を短くしてしまう等の欠点があり、また、十分は反射率を有するものではなかった(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2006−310014号公報
【特許文献2】特開2006−317173
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、バックライト用のLEDパッケージ実装用プリント回路基板には、光反射機能がないため、バックライト用のプリント回路基板として使用する場合は、LEDパッケージ実装後に光反射シートを貼り付ける必要があった。このため、製造時の工数及び必要部材の増加により、製造プロセス上取り扱いが煩雑になり、不便であるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上の様な課題を解決するまったく新しい金属ベース回路基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、金属基板と、金属基板の一方の面に積層された絶縁層と、絶縁層の露出面に形成された回路と、絶縁層及び回路の露出面に積層された白色膜を有する金属ベース回路基板であって、白色膜を構成する組成物に無機質中空粉体が含有され、この無機質中空粉体の中空率を30体積%以上90体積%以下とし、無機質中空粉体の平均粒子径を0.1μm以上30μm以下とし、これにより無機・中空間の屈折率差により効果的に反射率を高め、該可視光(波長範囲:400〜800nm)に対する金属ベース回路基板の反射率の平均を70%以上にするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LED実装後に光反射シートを貼り付けなくても、金属ベース回路基板のみで反射光を有効利用することができ、また、LEDからの発熱を効果的に拡散しLEDの輝度の安定化を図ると共に長寿命化も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図を用いて本発明を説明する。
【0012】
<実施の形態1・一層>
図1は、本発明の金属ベース回路基板の一例である。本発明の金属ベース回路基板においては、金属基板と絶縁層及び回路とからなる金属ベース回路基板上に高反射率の白色膜14を形成したものである。本発明の金属ベース回路基板は図1に示す様に複数のLEDパッケージ115が半田接合部16などにより接合搭載され使用される。
【0013】
<実施の形態2・多層>
図2は、本発明の金属ベース回路基板の別の例である。本発明の金属ベース回路基板においては、金属基板上に複数の絶縁層と回路を交互に形成した金属ベース回路基板上において、金属基板と相反する最外層に高反射率の白色膜27を形成したものである。本発明の金属ベース回路基板は図2に示すように複数のLEDパッケージ29が半田接合部28などにより接合搭載され使用される。なお、図2は一例として2層構造を示したが、3層以上の場合も基本構造は同様である。
【0014】
<反射率>
本発明に於いては、白色膜が高反射率を有することが特徴であり、400〜800nmの波長の光に対する反射率の平均が70%以上、好ましくは、白色膜の450〜470nm、520〜570nm、及び620〜660nmのそれぞれの波長の範囲で反射率の最大値がいずれも80%以上、更に好ましくは85%以上である。
【0015】
<反射率・定義/測定法>
本発明で用いる反射率とは、基板表面への入射光から基板層中で吸収される光と透過する光を除いたものである。測定装置としては、積分球を備えた分光光度計で、400〜800nmの波長範囲で測定可能なものが望ましい。本発明においては前記仕様を満たす島津分光光度計UV−2550、積分球ISR2200を使用した。この測定装置では220nmから850nmでの波長範囲での測定が可能である。
以下、反射率の測定法について図3を用いて説明する。積分球31下部には測定試料34が取り付け可能であり、積分球上部には入射光用の窓33がある。入射光35が測定試料表面で反射されると、積分球表面にてさらに反射され、側面に設けられた検出器32で検出される。
【0016】
<絶縁層熱伝導率>
本発明の金属ベース回路基板は、上述の構成を有しており、しかも絶縁層の熱伝導率が1W/mK以上であり、好ましくは1.5W/mK以上である。この熱伝導率は、高ければ高いほどよい。また、導体回路と金属箔との間の耐電圧が1.5kV以上、望ましく2kV以上という、高い放熱性と耐電圧特性を有しており、LED光源から発生する熱を効率よく金属ベース回路基板裏面側に放熱し、さらに、外部に放熱することによりLEDパッケージ実装回路基板の蓄熱を低減し、LEDの温度上昇を小さくするとともに、バックライト面内の温度を均一化することにより、LEDの発光効率低下の抑制と輝度の均一化を図ることができる。このため、光反射機能を持つ高反射率の白色膜の効果とあわせて、明るく且つ長寿命のバックライトを提供することができる。
【0017】
<絶縁層>
絶縁層を構成する材料としてはフェノール樹脂、イミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などといった回路基板として使用されている樹脂を適宜選択でき、前述の熱伝導率と耐電圧特性を達成するためにはエポキシ樹脂が好ましく、さらに好ましくは当該エポキシ樹脂に無機フィラー、前記エポキシ樹脂用の硬化剤を含有するものが好ましい。
【0018】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂、例えば例えばナフタレン型、フェニルメタン型、テトラキスフェノールメタン型、ビフェニル型、およびビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂等があげられ、このうち応力緩和性という理由で、主鎖がポリエーテル骨格を有し直鎖状であるエポキシ樹脂が好ましい。
主鎖がポリエーテル骨格を有し主鎖状であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型の水素添加エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂に代表される脂肪族エポキシ樹脂、およびポリサルファイド変性エポキシ樹脂等があり、これらを複数組み合わせてもよい。
これらエポキシ樹脂のうち、金属ベース回路基板に高い耐熱性が必要な場合には、電気絶縁性、熱伝導率が共に高く、耐熱性の高い樹脂硬化体が得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、このビスフェノールA型エポキシ樹脂の効果が発揮する範囲内であれば、当該ビスフェノールA型エポキシ樹脂に他のエポキシ樹脂を組み合わせて用いることもできる。
【0019】
<ビスフェノールA型エポキシ樹脂>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ当量300以下であることが一層好ましい。エポキシ当量が300以下であれば、高分子タイプになるときに見られる架橋密度の低下によるTg(ガラス転移温度)の低下、従って耐熱性の低下を引き起こすことが防止されるからである。また、分子量が大きくなると、液状から固形状となり、無機フィラーを硬化性樹脂中にブレンドすることが困難になり、均一な樹脂組成物が得られなくなるという問題をも避けることができる。
【0020】
<エポキシ樹脂・加水分解塩素濃度>
エポキシ樹脂を採用する場合、加水分解性塩素濃度が600ppm以下であることが好ましい。加水分解性塩素濃度が600ppm以下であれば、金属ベース回路基板として充分な耐湿性を示すことができる。
【0021】
<硬化剤>
エポキシ樹脂には硬化剤を添加することが好ましい。硬化剤としては、芳香族アミン系樹脂、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂及びジシアンアミドからなる群から選ばれる1種類以上を用いることができる。
【0022】
<硬化剤の添加量>
硬化剤の添加量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上35質量部以下であることが一層好ましい。
【0023】
<硬化触媒>
エポキシ樹脂には硬化触媒を使用することもできる。硬化触媒としては、イミダゾール化合物、有機リン酸化合物、第三級アミン、第四級アンモニウム等が使用され、いずれか1種類以上を選択することができる。硬化触媒の添加量は、硬化温度により変化するため特に制限はないが、硬化触媒の添加量が少ないと硬化触媒を添加した効果が発揮されない傾向にあり、添加量が多いと硬化度合いの制御が難しくなる傾向にあるため、例えば、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0024】
<フィラー種>
エポキシ樹脂に含有される無機フィラーとしては、電気絶縁性で熱伝導性に優れるものであればどのようなものでも構わない。このような無機フィラーとして、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素、酸化マグネシウム、窒化珪素等の単独又はこれらの組み合わせがある。これら無機フィラーのうち、窒化アルミウム及び窒化硼素が高熱伝導性であるという理由で好ましい。また、結晶質二酸化ケイ素、窒化硼素を用いることで硬化体の誘電率を低く抑えることが可能となり、高周波で用いる電気、電子部品の放熱材料に用いる場合に、電気絶縁性が確保しやすいことから好ましい。
更に、ハンドリング性および流動性を向上させるため、前記無機フィラーの粒子形状はアスペクト比が1に近いものが好ましい。粗粒子と微粒子を混ぜ合わせると破砕粒子や球状粒子を単独で用いた場合よりも高充填が可能となり、更に好ましい。
【0025】
<フィラー・粗粉/微粉>
無機フィラーとして粗粒子と微粒子を混ぜ合わせて用いる場合には(a)最大粒子径が100μm以下で且つ粒子径1μm以上12μm以下のものを50体積%以上含有し平均粒子径が5μm以上50μm以下である粗粒子と、(b)粒子径2.0μm以下のものを70体積%以上含有し平均粒子径が0.2μm以上1.5μm以下である微粒子とからなる混合粉を用いることが好ましい。粗粒子と微粒子の割合としては粗粒子が34体積%以上70体積%以下、微粒子が3体積%以上24体積%以下であることが好ましい。また、粗粒子と微粒子を混ぜ合わせて用いる場合には少なくともその一方が球状であることがより好ましい。
【0026】
<フィラー添加量>
無機フィラーの配合割合は、エポキシ樹脂と硬化剤の合計量100質量部に対して70質量部以上95質量部以下が好ましく、下限としてさらに好ましくい値は80質量部、上限としてさらに好ましい値は90質量部である。
【0027】
<絶縁層中白色顔料>
本発明の絶縁層には酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ、スメクタイトから選ばれる少なくとも1種以上の白色顔料を添加することが可能である。特に最外層となる絶縁層に白色顔料を含有させることにより、金属ベース回路基板上に白色膜を設けた際の反射率を向上させる効果がある。
【0028】
<絶縁層中チタニア>
前記白色顔料のうち、二酸化チタンが最も屈折率が大きく、基板の反射率を高める際に用いる場合により好ましい。また、同フィラーにおいて光の散乱効率を高める場合には、平均粒子径が0.30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が0.3μm以上のものと混合して使用することでより効果的に反射率を向上することが可能となる。
【0029】
<絶縁層中酸化亜鉛>
前記白色顔料のうち、酸化亜鉛は高屈折率及び高放熱性を兼備する材料であり、基板の反射率及び放熱性を高める際に用いる場合により好ましい。また、同フィラーにおいて光の散乱効率を高める場合には、平均粒子径が0.35μm以下であることが好ましく、平均粒子径が0.3μm以上のものと混合して使用することでより効果的に反射率を向上することが可能となる。
【0030】
<白色膜・チタニア>
二酸化チタンでは、ルチル型のものは安定性に優れるため光触媒作用が弱く、他の構造のものに比べ樹脂成分の劣化が抑制されるため好適に用いることができる。更に二酸化チタンを表面処理し光触媒作用を抑制したものが好適に用いることができ、表面処理としては、二酸化珪素又は水酸化アルミニウム等によるコーティングがある。
【0031】
<絶縁層中無機質中空粉体>
本発明の絶縁層には無機質中空粉体を添加することが可能である。特に最外層となる絶縁層に無機質中空粉体顔料を含有させることにより、金属ベース回路基板上に白色膜を設けた際の反射率を向上させる効果がある。
【0032】
<無機質中空粉体>
本発明の無機質中空粉体の平均中空率は30体積%以上90体積%以下、平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である。平均粒子径が0.1μm以上5μm以下の場合の平均中空率のより好ましい上限は70体積%、更に好ましい上限は60体積%である。また、平均粒子径が5μm以上30μm以下の場合の平均中空率はの好ましい下限50体積%、より好ましい下限は70体積%であり、好ましい上限は90体積%、より好ましい上限は85体積%である。平均中空率を小さくすると屈折率による反射率向上の効果が得られにくくなり、逆に大きくなると粒子の殻厚が薄くなって粒子強度が弱くなって粉体のハンドリング中やゴム又は樹脂との混練中に粒子が破壊する傾向にある。
【0033】
平均中空率とは、粒子の理論密度に対する粒子密度の実測値との比であると定義される。例えば、シリカ中空粒子の密度の実測値が1.1g/cmである場合、その平均中空率は非晶質シリカの理論密度2.2g/cmで割って50体積%と算出される。密度は、ピクノメーター法自動粉粒体真密度測定器(例えばセイシン企業社製商品名「オートトゥルーデンサーMAT−7000」)で測定される。
【0034】
本発明の無機質中空粉体の平均粒子径はより好ましくは0.1μm以上20μm以下である。無機質中空粉体の平均粒子径を大きくすると表面の平滑性が損なわれる傾向にあり、小さくすると十分な中空率を得るためには殻厚が薄くって無機質中空粉体が破壊される傾向にあるため、上述の範囲が好ましい。
【0035】
<平均粒子径測定法>
無機質中空粉体の平均粒子径、最大粒子径は、レーザー回折散乱法による粒度分布を測定して求める。粒度分布は、0.04μm以上2000μm以下の範囲をlog(μm)=0.04の幅で116分割にして測定される。測定機には、例えばベックマンコールター社製「モデルLS−230」がある。測定は、水と試料を混合し、超音波ホモジナイザーで、200Wの出力で1分間分散処理してから行う。PIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)濃度を45質量%以上55質量%以下に調整する。水の屈折率には1.33を用い、試料の屈折率にはその材質の屈折率、例えば非晶質シリカでは1.50を用いる。
【0036】
<無機質中空粉体材質>
無機質中空粉体の材質には特に制限はなく、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアの単体又は複合体があり、好ましくは、可視光の反射率が高くなるチタニア粒子が好ましい。
【0037】
<表面処理1>
本発明の無機質中空粉体は、例えばシランカップリング剤等の表面処理剤で処理されていることが好ましい。通常、無機質粉体の表面は親水性であるので、樹脂、有機溶剤など疎水性分散媒への分散性が良くないので、表面処理剤で処理しておくと分散性が改善される。また、無機質中空粉体の材質としてチタニアを用いる場合には光触媒作用抑制効果のある表面処理を施すことが好ましい。
【0038】
<表面処理2>
表面処理剤としては、シランカップリング剤、Zrキレート、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリングなどを用いることができる。シランカップリング剤を例示すれば、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、例えばアミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランや、例えばフェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等の疎水性シラン化合物やメルカプトシランなどである。
また、光触媒作用抑制効果のある表面処理としては二酸化珪素又は水酸化アルミニウム等によるコーティングがある。
【0039】
<絶縁層中白色顔料/無機質中空粉体量>
絶縁層に白色顔料と無機質中空粉体の少なくとも一方又は双方を添加する場合の添加量は、絶縁層全体に対し白色顔料及び無機質中空粉体の合計量として5体積%以上50体積%以下が好ましく、更に好ましくは5体積%以上30体積%以下である。添加量が少ないと十分な反射率向上の効果が得られ難くなる傾向にあり、添加量が多いと十分な分散ができず凝集塊等を形成してしまう傾向にあるためである。白色顔料と無機質中空粉体の比率に特に制限はない。
【0040】
<絶縁層二層化>
絶縁層の反射率及び絶縁信頼性を調整する場合に、絶縁層構造を二層構造とすることも可能である。絶縁層を二層構造とする場合には、内層となる一層目を絶縁性の高い絶縁層に、外層となる二層目を反射率の高い絶縁層に機能分離構造とすることが好ましい。また、所望の特性を得る為にそれぞれの絶縁層厚み比率を変更することがより効果的である。
【0041】
<助剤>
本発明の絶縁層には必要に応じてカップリング剤等の分散助剤、溶剤等の粘度調整助剤など公知の各種助剤を添加することが可能である。
【0042】
<金属基板・回路>
本発明の金属基板及び回路として使用する金属については、アルミニウム、鉄、銅の単体又はこれら金属の合金があり、熱放散性を考慮するとアルミニウム、銅の単体又は合金が好ましい。また、絶縁層との密着性を改良するために、絶縁層との接着面側に、サンドブラスト、エッチング、各種メッキ処理、カップリング剤処理等の表面処理も適宜選択可能である。
【0043】
<金属基板厚み>
前記金属基板の厚さは0.013mm以上4mm以下が好ましく、更に好ましい下限は0.05mm、更に好ましい上限は0.50mmである。この厚みが薄いとハンドリング時にしわが生じる傾向にあり、厚くなっても技術的な限定は少ないが、あまりに厚くなると金属ベース回路基板としての用途が見いだせず、実用的でない。
【0044】
<回路厚み>
前記回路の厚さは、あまりに薄いとバックライト用の回路基板として十分な導通回路を確保できない傾向にあり、あまりに厚いと回路形成の製造プロセス上の問題が生じる傾向にあるため、好ましくい下限は0.005mmであり、更に好ましい下限は0.03mmであり、好ましい上限は0.400mmであり、更に好ましい上限は0.30mmである。
【0045】
<絶縁層厚み>
本発明において、絶縁層の厚さは、80μm以上200μm以下が好ましい。この範囲が好ましいのは、あまりに薄いと電気絶縁性が確保できなくなる傾向にあり、あまりに厚いと熱放散性が低下する傾向にあり、さらに小型化や薄型化に寄与できなくなる傾向にあるためである。
【0046】
<白色膜反射率>
本発明の金属ベース回路基板は絶縁層及び回路上に白色膜を設けることにより該白色膜表面は、400nm以上800nm以下の波長の光に対して70%以上の反射率を有する。好ましくは、該白色膜表面の450nm以上470nm以下、520nm以上570nm以下、及び620nm以上660nm以下のそれぞれの波長の範囲で反射率の最大値がいずれも80%以上、更に好ましくは85%以上である。
【0047】
<白色膜・樹脂>
白色膜は通常レジスト材として使用される紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂の何れか一方を少なくとも含有する樹脂組成物に白色顔料及び無機質中空粉体を含有するものである。これら硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂及びこれらの混合物が好適に用いられるが、これらに制限されるものではない。
【0048】
<白色膜・顔料>
前記白色膜に含有される白色顔料・無機質中空粉体としては、上述の絶縁層中に用いるものと同様のものを用いることが可能である。
【0049】
<白色膜・顔料含有量>
白色膜中の白色顔料及び無機質中空粉体の含有量はその合計量で30体積%以上70体積%以下であり、より好ましくは30体積%以上60体積%以下である。あまりに少ないと十分な反射効果が得られず、あまりに多いと膜形成時の流動性が低下し均一な膜を形成できなくなる傾向にあるためである。白色顔料と無機質中空粉体の比率に特に制限はない。
【0050】
回路上に形成した白色膜にはLEDの搭載部は配線部に開口部を任意に設けることが可能である。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
35μm厚の銅箔上に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP−828」)対し、硬化剤としてフェノールノボラック(大日本インキ化学工業社製、「TD−2131」)を加え、平均粒子径が1.2μmである破砕状粗粒子の酸化珪素(龍森社製、「A−1」)と平均粒子径が10μmである破砕状粗粒子の酸化珪素(龍森社製、「5X」)を合わせて絶縁層中56体積%(球状粗粒子と球状微粒子は質量比が7:3)となるように配合し、硬化後の厚さが150μmになるように絶縁層を形成した。つぎに、200μm厚のアルミ箔を貼り合わせ、加熱することにより絶縁層を熱硬化させ、絶縁層中の無機フィラー全体でナトリウムイオン濃度が50ppm以下である金属ベース基板を得た。
得られた金属ベース基板について、所定の位置をエッチングレジストでマスクして銅箔をエッチングした後、エッチングレジストを除去して銅回路を形成し金属ベース回路基板とした。さらに、金属ベース回路基板上に高反射率の白色膜を形成するために、白色ソルダーレジスト層を塗布し、熱及び紫外線で硬化した。この時、銅回路上のLEDパッケージ実装部分には白色塗膜を形成しない。白色ソルダーレジストとしては、山栄化学社製、「SSR−6300S」に平均粒径0.4μm、中空率35%の酸化チタン中空粉を5体積%添加し用いた。
得られた基板について反射率の測定を行うとともに、図4に示す様に出力3Wクラスの青色、赤色、緑色のLEDを実装し色彩輝度計(トプコンテクノハウス社製BM−7)により輝度測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
(実施例2)
絶縁層中に更に平均粒径0.4μm、中空率35%の酸化チタン中空粉を5体積%添加した以外は実施例1と同様にして金属ベース回路基板を得た。
【0054】
(実施例3)
絶縁材層中の酸化珪素(龍森社製、「A−1」)と酸化珪素(龍森社製、「5X」)の添加量を絶縁層中46体積%(球状粗粒子と球状微粒子は質量比が7:3)となるように添加し、更に白色顔料として二酸化チタン(石原産業株式会社PFC104)を絶縁層中10体積%添加した以外は実施例1と同様にして金属ベース回路基板を得た。
【0055】
(実施例4)
絶縁層中に更に平均粒径0.4μm、中空率35%の酸化チタン中空粉を5体積%添加した以外は実施例3と同様にして金属ベース回路基板を得た。
【0056】
得られた基板について反射率の測定を行うとともに、図4に示す様に出力3Wクラスの青色、赤色、緑色のLEDを実装し色彩輝度計(トプコンテクノハウス社製BM−7)により輝度測定を行った。評価結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の金属ベース回路基板は、LEDパッケージを実装する金属ベース基板表面に高反射率の白色塗膜を形成しているので、通常のプリント回路基板と類似の構成のまま光反射機能を有している。このため、高価な光反射シートを使用しなくてもLED光源の反射光を液晶部分に供給することができる。また、液晶バックライト製造時の工数を削減することもでき、効率的であり、LED用の金属べース回路基板として産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明に係る金属ベース回路基板の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明に係る金属ベース回路基板の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る金属ベース回路基板反射率測定の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、実施例におけるLED搭載の模式図である。
【符号の説明】
【0059】
11 金属箔
12 絶縁層
13 回路
14 白色膜
15 半田接合部
16 LEDパッケージ
21 金属箔
22 絶縁層1層目
23 絶縁層2層目
24 回路1層目
25 金属柱
26 回路2層目
27 白色膜
28 半田接合部
29 LEDパッケージ
31 積分球
32 検出器
33 入射光用の窓
34 測定試料
35 入射光
36 反射光
41 基板
42 緑色LED
43 赤色LED
44 青色LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、金属基板の一方の面又は双方の面に積層された絶縁層と、絶縁層の露出面に形成された回路と、絶縁層及び回路の露出面に積層された白色膜を有する金属ベース回路基板であって、白色膜を構成する組成物に無機質中空粉体が含有され、この無機質中空粉体の中空率が30体積%以上90体積%以下であり、無機質中空粉体の平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である金属ベース回路基板。
【請求項2】
前記絶縁層と前記回路の両方が、前記金属基板の一方の面又は双方の面に複数積層された請求項1記載の金属ベース回路基板。
【請求項3】
前記金属基板の一方又は双方の面に回路を形成した請求項1又は2記載の金属ベース回路基板。
【請求項4】
波長範囲400nm以上800nm以下の光に対する前記白色膜の反射率の平均が、70%以上である請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の金属ベース回路基板。
【請求項5】
前記絶縁層が、エポキシ樹脂と、無機フィラーと、前記エポキシ樹脂用の硬化剤とを含有し、硬化後の熱伝導率が1.0W/mK以上18W/mK以下である請求項1乃至3の何れか一項に記載の金属ベース回路基板。
【請求項6】
前記無機フィラーが、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計量100質量部に対して、70質量部以上95質量部以下配合されている請求項1乃至5の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項7】
前記硬化剤が、水酸基を有する物質を含む請求項1乃至6の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項8】
前記絶縁層のうち少なくとも白色膜が積層されている絶縁層、当該白色膜積層絶縁層を含むいくつかの絶縁層、又は、全ての絶縁層のいずれかが、白色顔料を含有し、この白色顔料が酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ、スメクタイトから選ばれる少なくとも一種以上の白色顔料を含有する請求項1乃至7の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項9】
前記絶縁層中の白色顔料が、二酸化チタン単独、又は、二酸化チタンと次の素材、“酸化亜鉛、炭酸カルシウム、アルミナ、スメクタイト”の中から選ばれる少なくとも一種以上の白色顔料の混合物のいずれかである請求項1乃至7の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項10】
前記絶縁層中の白色顔料が、酸化亜鉛単独、又は、酸化亜鉛と次の素材“二酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、スメクタイト”の中から選ばれる少なくとも一種以上の白色顔料の混合物からなる請求項1乃至7の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項11】
前記絶縁層が、無機質中空粉体を含有し、この無機質中空粉体の中空率が40体積%以上90体積%以下であり、この無機質中空粉体の平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である請求項1乃至請求項10の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項12】
前記絶縁層中の白色顔料が酸化亜鉛を含有する請求項8、9又は11の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項13】
前記絶縁層が、無機質中空粉体を含有し、この無機質中空粉体の中空率が40体積%以上90体積%以下であり、この無機質中空粉体の平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である請求項1乃至12の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項14】
前記白色膜が、白色顔料として二酸化チタンを含有する請求項1乃至13の何れか一項記載の金属ベース回路基板。
【請求項15】
前記二酸化チタンが、ルチル型で且つその表面が水酸化アルミニウム又は二酸化珪素で被覆されている請求項8乃至10又は14の何れか一項記載の金属ベース回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−129801(P2009−129801A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305388(P2007−305388)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】