説明

金属樹脂複合板およびその製造方法

【要 約】
【課 題】 廃プラスチックを利用した、軽量で剛性に優れかつ高い接着強度を有し、さらに好ましくは平面性に優れる金属樹脂複合板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 廃プラスチック低比重分板状材を芯材とし、該廃プラスチック低比重分板状材の両面には変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有し、該変性ポリオレフィンを含む樹脂層に金属板をそれぞれ積層し、変性ポリオレフィンを含む樹脂層と金属板とを接着剤、好ましくは反応型ウレタン系ホットメルトで接着し、金属樹脂複合板とする。金属板は、鋼板、好ましくはステンレス鋼板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック廃棄物(以下、廃プラスチックともいう)の再商品化に係り、とくに廃プラスチックを金属樹脂複合板の積層用樹脂として利用する、剛性に優れる金属樹脂複合板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器包装リサイクル法の制定・施行により、プラスチック製容器包装廃棄物の再商品化が義務付けられるようになった。プラスチック製容器包装廃棄物を代表とする廃プラスチックをリサイクルし再商品化する方法として、材料リサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3種類が考えられている。材料リサイクルは、プラスチックのまま再利用し、新たなプラスチック製品とするものであり、ケミカルリサイクルはコークス原料や高炉還元剤として使用する場合であり、サーマルリサイクルは燃料としてそのエネルギーを利用する場合である。容器包装リサイクル法では、これらの中で、材料リサイクルすることを最優先させることが望ましいとされている。
【0003】
しかし、再商品化された廃プラスチックのうち材料リサイクルされた比率は年々増加しているものの、ケミカルリサイクルされた比率に比べはるかに少ないのが現状である。
これは、廃プラスチックを材料リサイクルする有効な技術が不足しているからであり、廃プラスチックを材料リサイクルする新たな技術の開発が望まれている。
【0004】
現在、廃プラスチックをケミカルリサイクルする場合、塩化水素発生の原因となる塩化ビニールを取り除く目的で水を利用した比重分離が一般的に行われている。ここでいう、水を利用した比重分離とは、回収した廃プラスチック粉砕物を水中に投入し、水に浮かぶものと沈むもので分離する方法である。水に浮く廃プラスチックを一般に廃プラスチック低比重分と呼んで、現状では、ほとんどをコークス原料や高炉還元剤としてリサイクルしている。
【0005】
この廃プラスチック低比重分は、射出成型や熱プレス成型等の溶融成型が容易で、材料リサイクル用として有利な点を有しているが、さまざまな着色料がすでに含まれているため製品の外観性に劣るという問題があり、材料リサイクルするに際しては、現状では屋外で使用されるような外観性が問題にされない、杭やガーデニング用部材など用途が限定されていた。
【0006】
この廃プラスチック低比重分は、通常低密度および高密度ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン類が90質量%程度を占めている。
【0007】
ポリオレフィン系樹脂は、アルミ樹脂複合材の芯材用として広く利用されていることが、非特許文献1に示されている。ポリオレフィン系樹脂の両面に金属板を接着した金属樹脂複合板は、軽量で剛性に優れ、看板材や内装材等用として好適である。
【0008】
このような金属樹脂複合板であれば、芯材となる樹脂は、着色による外観性の問題はなくなる。しかし、このような金属樹脂複合板では、芯材となる樹脂の平坦性の確保と、樹脂と金属板との間の接着力の確保が大きな問題となる。
【0009】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、末端に少なくとも一個の活性水素を有する主鎖の飽和した炭化水素ポリマーに不飽和カルボン酸もしくはその誘導体及びモノエポキシ化合物もしくはその誘導体を反応させたポリマーをポリオレフィンに配合してなるポリオレフィン組成物と金属との間に熱可塑性もしくは熱硬化性を有するエポキシ樹脂系接着剤を介在させて、該組成物を金属に融着させる金属とポリオレフィンの積層体の製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭55―53558号公報
【非特許文献1】建材レポート、2003年3月号、P6〜23
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された技術を利用して、金属板とポリオレフィンの積層体を製造するに際しては、つぎの(1)および(2)に示す問題点があった。
【0011】
(1)通常のポリオレフィン樹脂よりも高価な不飽和カルボン酸類、モノエポキシ化合物類で変性したポリマーをポリオレフィン全体に配合するが、実際に接着剤を介して金属板との接着性向上に寄与している変性ポリマーはポリオレフィン層表層に存在する一部だけであり、無駄が多いこと。
【0012】
(2)ポリオレフィンと変性ポリマーの組成物を融着させるため、組成物が溶融するような160℃以上の高温に10分以上加熱し、さらに積層体の平面性を保持するため、ポリオレフィン層が固化するまで冷プレスを行う必要があり、作業性に問題があること。
【0013】
また、これまで廃プラスチック低比重分を利用して金属樹脂複合板を製造しようとした例は無い。これは、廃プラスチック低比重分の主成分がポリオレフィンであるため、特許文献1に代表されるような技術を利用しなければならないことや、さらに廃プラスチック低比重分は単体のポリオレフィン系樹脂と比較し表面平坦性に劣ることが理由にあげられる。
【0014】
廃プラスチック低比重分はポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン類の混合物が主成分であるが、その他にも発泡ポリスチレン等も混入する。
【0015】
廃プラスチック低比重分は上記したように数種の樹脂の混合物であるため、融点、軟化点および熱収縮率が異なり溶融状態から固化する際に、しわや凹凸ができやすく、したがって、金属樹脂複合板としたときも、金属と樹脂との接着面積が減少することに起因して接着強度が低下したりするという問題があった。
【0016】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決し、廃プラスチックを材料リサイクルとして芯材として利用し、軽量で剛性に優れかつ高い接着強度を有し、さらに好ましくは、平面性に優れ、効率的製造が可能な金属樹脂複合板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、金属板と芯材である廃プラスチックからなる樹脂板とを積層する場合の、とくに接着強度に及ぼす各種要因について鋭意考究した。その結果、金属板と芯材とを積層する際に、使用する接着剤を、金属板側と樹脂層側とで異なるものとすることにより、金属樹脂複合板の接着強度が顕著に向上することを見出した。金属板側に使用する接着剤としては反応性ホットメルトが、一方、樹脂層側には変性ポリオレフィンを含む樹脂が、金属樹脂複合板の接着強度向上に有効であることを知見した。
本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)樹脂層を芯材とし、該芯材の両面に金属板を積層してなる金属樹脂複合板であって、前記樹脂層を廃プラスチック低比重分板状材とし、該廃プラスチック低比重分板状材の両面には変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有し、該変性ポリオレフィンを含む樹脂層と前記金属板とを接着剤で接合してなることを特徴とする金属樹脂複合板。
(2)(1)において、前記接着剤が、反応型ウレタン系ホットメルトであることを特徴とする金属樹脂複合板。
(3)(1)又は(2)において、前記金属板が、鋼板であることを特徴とする金属樹脂複合板。
(4)(3)において、前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする金属樹脂複合板。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記変性ポリオレフィンを含む樹脂層の厚さが、10μm以上であることを特徴とする金属樹脂複合板。
(6)樹脂層からなる芯材の両面に金属板を積層して金属樹脂複合板とする金属樹脂複合板の製造方法であって、前記芯材を廃プラスチック低比重分板状材とし、該廃プラスチック低比重分板状材の両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を形成して両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有する廃プラスチック低比重分板状材としたのち、前記金属板の片面に接着剤を塗布し、該接着剤を塗布した片面が、前記変性ポリオレフィンを含む樹脂層と接するように、前記金属板を前記芯材の両面にそれぞれ積層しプレスしながら、前記芯材と前記金属板とを接合することを特徴とする金属樹脂複合板の製造方法。
(7)(6)において、前記接着剤を反応型ウレタン系ホットメルトとし、該反応型ウレタン系ホットメルトを加熱、溶融させた状態で前記金属板の片面に塗布し、前記プレスを熱プレスとすることを特徴とする金属樹脂複合板の製造方法。
(8)(6)または(7)において、前記金属板が、鋼板であることを特徴とする金属樹脂複合板の製造方法。
(9)(8)において、前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする金属樹脂複合板の製造方法。
(10)(7)において、前記熱プレスが、80〜120℃で行なうことを特徴とする金属樹脂複合板の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、廃プラスチックを材料リサイクルして利用可能となり、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、軽量でかつ剛性に優れるうえ、接着強度が高い金属樹脂複合板が安価に製造でき、さらに好ましくは平面性にも優れ、看板板、内装材等の建材、仮設資材等に利用できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の金属樹脂複合板は、図1に示すように、芯材1である樹脂層の両面に金属板2、2を積層してなる金属樹脂複合板である。
【0020】
本発明では、樹脂層として、廃プラスチック低比重分板状材を用いる。ここでいう「廃プラスチック」とは、使用済みのプラスチック製容器包装廃棄物に代表されるプラスチック廃棄物を意味する。また、本発明でいう「廃プラスチック低比重分」とは、一般にいう水に浮く廃プラスチック、すなわち、比重が1.0以下の廃プラスチックをいうものとする。
【0021】
廃プラスチック低比重分は、ポリ塩化ビニルを代表とする塩素系プラスチックを取り除くことを目的にしてすでに工業的に行なわれている方法、すなわち、粉砕した廃プラスチックを水を溶媒として比重分離する方法、を利用して容易に集めることができる。廃プラスチック低比重分は、大部分がポリオレフィン系プラスチックであるが、通常はポリスチレン等、他のプラスチック類や木材等の不純物が若干混入する。しかし、本発明では、加熱、溶融して板状(シート状)にするにあたって特に問題がない限り、若干の不純物が混入していても何ら問題はない。
【0022】
これら廃プラスチック低比重分は、回収した地域の違い等で組成が異なる場合がある。廃プラスチックを有効利用するという観点からは、極力、廃プラスチックを多く用いたほうが望ましい。本発明では、物性を一定にするという目的で、これら廃プラスチック低比重分に、新しいポリオレフィン系樹脂を、芯材全量に対し50質量%未満添加して成分調整してもよい。
【0023】
廃プラスチック低比重分板状材は、廃プラスチック低比重分を板状(シート状)に成形したものをいう。
【0024】
本発明では、この芯材1である廃プラスチック低比重分板状材は、両面に、図1に示すように、変性ポリオレフィンを含む樹脂層3を有する。変性ポリオレフィンを含む樹脂層は、廃プラスチック低比重分板状材の両面に、融着して形成されることが好ましい。変性ポリオレフィンを含む樹脂層は、廃プラスチック低比重分と強く接着でき、廃プラスチック低比重分板状材との接着強度を高く維持し、かつ板状材表面の平面性を確保できるという特徴を有している。
【0025】
変性ポリオレフィンを含む樹脂層は、変性ポリオレフィンのみ、あるいは変性ポリオレフィンに未変性の樹脂を混合した樹脂を用いて形成できる。本発明で使用する変性ポリオレフィンとしては、マレイン酸等の有機酸変性および/または塩素化したポリプロピレンやポリエチレンが好ましい。なお、有機酸変性の変性率は、マレイン酸変性樹脂の場合を例にすると、0.05〜1質量%のものが金属板との接着強度確保および樹脂強度の観点から好ましい。また、塩素化の塩素含量は、同じく金属板の接着強度の観点から15〜45質量%であることが好ましい。さらに、未変性の樹脂を混合する場合は、変性樹脂の分散性の観点から同種の樹脂であることが好ましい。なお、混合した場合であっても最終的な混合樹脂全体に対し、上記範囲程度の変性率を確保していることが好ましい。
【0026】
変性ポリオレフィンを含む樹脂層の厚さは、欠陥が無ければよく、特に制限されないが、10μm以上とすることが平面性確保の観点から好ましい。一方、変性ポリオレフィンを含む樹脂層の厚さの上限は、廃プラスチックを極力多く利用するという観点から、金属樹脂複合板全体の厚さの1/3程度以下とすることが望ましい。
【0027】
さらに、本発明の金属樹脂複合板は、図1に示すように、芯材1の両面に形成された変性ポリオレフィンを含む樹脂層3と金属板2とを、接着剤4を用いて接合してなる複合板である。
【0028】
本発明では、金属板と変性ポリオレフィンを含む樹脂層との接合に用いる接着剤は、とくに限定されず、反応型ウレタン系、EVA系、エラストマー系、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系のホットメルトやエポキシ系、ウレタン系、シリコーン系などの熱硬化型接着剤が例示できる。なお、最終的な接着強度が高く、120℃以下の温度で使用でき平面性確保が容易で、特に120℃以下の熱プレスでも、プレス後、すぐに金属樹脂複合板を動かすことができ、優れた作業性と高い生産効率を確保できる反応型ウレタン系ホットメルトとすることが好ましい。
【0029】
ホットメルトは、室温では固体で、加熱により溶融して塗布可能となり、冷却すると再び固化し、接着力が発現する接着剤である。
【0030】
本発明で好適に使用する反応型ウレタン系ホットメルトは、イソシアネート基(−NCO)を分子鎖に含む、例えば、ウレタンプレポリマー等の成分を有し、溶融後大気中の水分や近接分子中の水酸基と架橋反応し硬化する。反応型ウレタン系ホットメルトとしては、例えば、特開昭49−98445号公報に例示されている反応型ウレタン系ホットメルトを挙げることができる。なお、本発明で使用する反応型ウレタン系ホットメルトは、特開昭49−98445号公報に記載されたものに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0031】
反応型ウレタン系ホットメルトと変性ポリオレフィンを含む樹脂層とは、強く接着する。廃プラスチック低比重分板状材の両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有し、接着剤として反応型ウレタン系ホットメルトを使用することにより、芯材である廃プラスチック低比重分板状材と金属板との接着強度を高く維持でき剥離が起こりにくくなり、金属樹脂複合板の曲げ加工が容易になる。変性ポリオレフィンを含む樹脂層が形成されない場合には、接着剤として反応型ウレタン系ホットメルトを使用しても、芯材である廃プラスチック低比重分板状材と金属板との接着強度が低く、僅かな曲げ加工でも剥離が発生することがある。
【0032】
なお、反応型ウレタン系ホットメルトを用いる場合には、接着剤層の厚さは、通常の接着剤層と同程度の厚さがあれば良く、10〜200μmとすることが好ましい。
【0033】
本発明で用いる金属板は、特に限定されるものではないが、価格、強度、重量等の観点から、鋼板が、さらに防錆性の観点を加えるとなかでもステンレス鋼板とすることが好ましい。なお、アルミニウム板を用いてもよいことはいうまでもない。金属板の厚さは、特に限定する必要はないが、厚さの下限値としては金属箔加工が可能な厚さであり、鋼板の場合は、50μm程度である。
【0034】
また、耐食性、意匠性を付与する目的でこれら金属板に、塗装やめっき処理、ヘアライン加工等を施してもなんら問題はない。
【0035】
つぎに、本発明の金属樹脂複合板の好ましい製造方法について説明する。
【0036】
本発明の金属樹脂複合板は、芯材として廃プラスチック低比重分板状材を用い、表面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を形成して、両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有する廃プラスチック低比重分板状材としたのち、廃プラスチック低比重分板状材の両面に、片面に接着剤を塗布した金属板をそれぞれ積層しプレスしながら接合して金属樹脂複合板とする。
【0037】
廃プラスチック低比重分を板状とするには、公知の方法がいずれも好適に使用できる。具体的には、廃プラスチック低比重分を加熱、溶融したのち、T型ダイスから押し出し所望の厚さに圧延する方法や、熱プレスにより押圧して所望の厚さとする方法が例示できる。なお、この際、板状材の平面性を確保することが重要となる。優れた平面性を確保するためには、熱プレスを利用する場合、溶融した状態から約120℃程度で冷却固化するまで、板状材(シート)にほぼ連続的に所定圧力で押圧し続ける必要がある。また、T型ダイスから連続的に押し出し圧延する場合には、冷却固化するまで連続的に配置したロール間を通すことが必要となる。また、軽量化を目的に、発泡剤を添加する方法や窒素吹き込み等の方法で廃プラスチックを発泡してもよい。
【0038】
廃プラスチック低比重分板状材の両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を形成する方法は、とくに限定する必要はないが、具体的な方法としては、廃プラスチック低比重分板状材に懸濁液や溶液状の変性ポリオレフィンを塗布して、必要に応じ加熱したのち乾燥する方法や、変性ポリオレフィンを含むフィルム状の樹脂を加熱プレスにより溶融し接着(溶着)させる方法が例示できる。また、変性ポリオレフィンを含む樹脂を押出し機で溶融して、廃プラスチック低比重分板状材表面に薄く延ばして融着しても良い。
【0039】
廃プラスチック低比重分板状材と変性ポリオレフィンを含む樹脂層との接着を強固とするためには、廃プラスチック低比重分と変性ポリオレフィンを含む樹脂をそれぞれ別の押出し機に投入し、2種3層T型ダイスにより溶融状態で接着し一体化する方法を用いることがより好ましい。
【0040】
つぎに、本発明では、金属板の片面に接着剤を塗布する。金属板への接着剤の塗布方法はとくに限定されないが、ロールコーターやバーコーター等の通常の塗布手段を用いることが好ましい。
【0041】
接着剤として、反応型ウレタン系ホットメルトを用いる場合には、一旦融点以上に加熱し溶融させた反応型ウレタン系ホットメルトを、ロールコーターやバーコーター等の塗布手段を用いて金属板の片面に塗布することが好ましい。
【0042】
そして、接着剤を塗布した金属板の片面が、芯材の両面に形成された変性ポリオレフィンを含む樹脂層と接するように、金属板を芯材の両面にそれぞれ積層しプレスしながら、接合する。
【0043】
なお、一般に反応型ウレタン系ホットメルトの融点は100〜120℃であるが、一旦融点以上に加熱し、金属板に塗布した後は、必ずしも融点までの加熱は必要ではなく、積層する金属板とともに80℃以上、かつ廃プラスチック低比重分の融点よりも低い温度、具体的には、120℃以下で熱プレスすれば、表面に凹凸やしわができずに接着が可能である。これにより、平面性に優れた複合板が製造可能となる。
【0044】
ただし、一旦溶融して塗布した時点からイソシアネート基による架橋反応が始まるため、塗布後なるべく速やかに積層しプレスするのが望ましい。一般には、20℃、相対湿度50%で6時間程度養成してもイソシアネート基の反応率は、10〜20%程度であり、塗布後、半日程度は接着可能であると言える。なお、速効性のホットメルトを使用したり、高温多湿環境に置いた場合は、その限りでないのは当然である。
【0045】
本発明によれば、反応型ウレタン系ホットメルトは、変性ポリオレフィン層と金属板両方に強固に接着するため、曲げ加工に強く剛性に優れ、看板材や内装材用として好適な複合板となる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
容器包装リサイクル法に基づき、分別回収された廃プラスチックを粉砕後、水を用いた比重分離法により、比重が1.0以下のものを分別、回収し、粉砕し、粉砕廃プラスチック低比重分を得た。また、マレイン酸変性プロポリピレン樹脂(三洋化成工業(株)製 ユーメックス1010:変性率5質量%)を10質量%とポリプロピレン樹脂(MFR(JIS K 7210:1997):8g/10min)90質量%を混合して変性ポリオレフィンを含む樹脂とした。これら廃プラスチック低比重分と変性ポリオレフィンを含む樹脂を、別々の単軸押出し機に投入し、2種3層T型ダイスにより溶融状態で接着させながら、ベルト状のプレス装置で押圧し、両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有する廃プラスチック低比重分板状材とした。なお、板状材の長さは1820mm、幅は910mm、総厚さは2.7mmであった。なお、変性ポリオレフィンを含む樹脂層の厚さは、片面500μmであった。
【0047】
次に、厚さ100μmのステンレス鋼板を2枚用意し、脱脂処理のみ施したのち、各ステンレス鋼板の片面に、接着剤である反応型ウレタン系ホットメルト(日本NSC社製)を120℃に加熱し溶融させて、ロールコーターで厚さ50μmとなるように塗布した。ついで、接着剤を塗布した片面が変性ポリオレフィンを含む樹脂層に接するように、廃プラスチック低比重分板状材の両面にステンレス鋼板をそれぞれ積層し、100℃の熱プレスで押圧して接着し、金属樹脂複合板を得た。
【0048】
得られた金属樹脂複合板について、平面性、接着強度について調査した。平面性は、複合板表面の凹凸の有無を目視で観察し、凹凸の無いものを○、しわや凹凸のあるものを×として、評価した。得られた金属樹脂複合板から試験片(板厚×幅25mm×長さ200mm)を採取し、JIS K 6854−2:1999の規定に準拠して、複合板の剥離接着強さを測定した。
【0049】
また、剥離後の試験片について、破壊モードを観察した。
(実施例2)
実施例1のステンレス鋼板に代えて、溶融亜鉛めっき鋼板にポリエステル樹脂を塗装した塗装溶融亜鉛めっき鋼板(厚さ:150μm)を用いた以外は、実施例1と同様とした。
(実施例3)
実施例1のステンレス鋼板に代えて、アルミニウム板(厚さ:50μm)を用いた以外は、実施例1と同様とした。
(実施例4)
容器包装リサイクル法に基づき、分別回収された廃プラスチックを粉砕後、水を用いた比重分離法により、比重が1.0以下のものを分別、回収し、粉砕し、粉砕廃プラスチック低比重分を得た。この廃プラスチック低比重分を、単軸押出し機に投入し、T型ダイスを用いて、2.7mmの樹脂シート(廃プラスチック低比重分板状材)とした。この廃プラスチック低比重分板状材両面に、塩素化ポリプロピレン/トルエン溶液(東洋化成工業(株)製 ハードレン 15−LPB:塩素含量30質量%)を塗布し、90℃で乾燥し、
両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を形成した廃プラスチック低比重分板状材とした。
なお、変性ポリオレフィンを含む樹脂層の厚さは、片面50μmであった。
【0050】
実施例1の廃プラスチック低比重分板状材に代えて、この廃プラスチック低比重分板状材を用いた以外は、実施例1と同様とした。
(実施例5)
実施例1の熱プレス温度:100℃に代えて、80℃とした以外は実施例1と同様とした。
(実施例6)
実施例1の熱プレス温度:100℃に代えて、120℃とした以外は実施例1と同様とした。
(実施例7)
接着剤を、実施例1の反応型ウレタン系ホットメルトに代えて、2液混合エポキシ系熱硬化型接着剤(日本NSC社製)を用いた以外は実施例1と同様とした。
(実施例8)
実施例1のプレス温度:100℃に代えて、140℃とした以外は、実施例1と同様とした。
(実施例9)
実施例7のプレス温度:100℃に代えて、25℃とした以外は、実施例1と同様とした。
【0051】
得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例4の変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有する廃プラスチック低比重分板状材に代えて、変性ポリオレフィンを含む樹脂層を形成しない廃プラスチック低比重分板状材を用いた以外は実施例4と同様とした。
(比較例2)
実施例7の変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有する廃プラスチック低比重板状材に代えて、変性ポリオレフィンを含む樹脂層を形成しない廃プラスチック低比重分板状材を用いた以外は、実施例7と同様にした。
【0052】
【表1】

【0053】
本実施例はいずれも、高い接着強度を有する金属樹脂複合板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、接着強度が顕著に低下している。また、本発明の好適範囲を外れる実施例は、平面性が低下しているか、あるいは接着強度が若干低下している。
【0054】
本発明の廃プラスチック低比重分を利用した金属樹脂複合板は、十分な剛性が期待できるうえ、金属樹脂間の接着力が強く、さらに好ましくは、平面性に優れ、表面の意匠性も金属板と同様に付与することが可能であり、看板板、内装材等の建材、仮設資材等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の金属樹脂複合板の断面構造を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 芯材(廃プラスチック低比重分板状材)
2 金属板
3 変性ポリオレフィンを含む樹脂層
4 接着剤(反応型ウレタン系ホットメルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層を芯材とし、該芯材の両面に金属板を積層してなる金属樹脂複合板であって、前記樹脂層を廃プラスチック低比重分板状材とし、該廃プラスチック低比重分板状材の両面には変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有し、該変性ポリオレフィンを含む樹脂層と前記金属板とを接着剤で接合してなることを特徴とする金属樹脂複合板。
【請求項2】
前記接着剤が、反応型ウレタン系ホットメルトであることを特徴とする請求項1に記載の金属樹脂複合板。
【請求項3】
前記金属板が、鋼板であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属樹脂複合板。
【請求項4】
前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする請求項3に記載の金属樹脂複合板。
【請求項5】
前記変性ポリオレフィンを含む樹脂層の厚さが、10μm以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の金属樹脂複合板。
【請求項6】
樹脂層からなる芯材の両面に金属板を積層して金属樹脂複合板とする金属樹脂複合板の製造方法であって、前記芯材を廃プラスチック低比重分板状材とし、該廃プラスチック低比重分板状材の両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を形成して両面に変性ポリオレフィンを含む樹脂層を有する廃プラスチック低比重分板状材としたのち、前記金属板の片面に接着剤を塗布し、該接着剤を塗布した片面が、前記変性ポリオレフィンを含む樹脂層と接するように、前記金属板を前記芯材の両面にそれぞれ積層しプレスしながら、前記芯材と前記金属板とを接合することを特徴とする金属樹脂複合板の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤を反応型ウレタン系ホットメルトとし、該反応型ウレタン系ホットメルトを加熱、溶融させた状態で前記金属板の片面に塗布し、前記プレスを熱プレスとすることを特徴とする請求項6に記載の金属樹脂複合板の製造方法。
【請求項8】
前記金属板が、鋼板であることを特徴とする請求項6または7に記載の金属樹脂複合板の製造方法。
【請求項9】
前記鋼板がステンレス鋼板であることを特徴とする請求項8に記載の金属樹脂複合板の製造方法。
【請求項10】
前記熱プレスが、80〜120℃で行なうことを特徴とする請求項7に記載の金属樹脂複合板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−21454(P2006−21454A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202541(P2004−202541)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】