説明

金属製部材接合体の製造方法および金属製部材接合体

【課題】金属製部材間の加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物の厚みが所定の厚みであり、加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物が金属製部材間にとどまっており、金属製部材が金属粒子の加熱焼結物により強固に接合しており、該焼結物に液体または気体が侵入・通過することのない金属製部材接合体の製造方法および前記金属製部材接合体を提供する。
【解決手段】(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子と(B)揮発性分散媒とからなるペースト状金属粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、無加圧下での加熱(1)により、該揮発性分散媒を揮散させ、該金属粒子同士を焼結せしめて生成した、断面における空孔率が面積比で15%以上である多孔質焼結物により、複数の金属製部材同士を接合させ、しかる後に、該金属製部材を加熱(1)よりも高い温度で加熱(2)して、該多孔質焼結物の空孔率を15%未満に低減する。かくして得られた金属製部材接合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属製部材が加熱焼結性金属粒子の焼結物により接合された金属製部材接合体の製造方法、および、複数の金属製部材が加熱焼結性金属粒子の焼結物により接合された金属製部材接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
銀、銅、ニッケルなどの金属粉末を液状熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる導電性・熱伝導性ペーストは、加熱により硬化して導電性・熱伝導性被膜が形成される。したがって、プリント回路基板上の導電性回路の形成、抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成、電磁波シールド用導電性被膜の形成、コンデンサ,抵抗,ダイオード,メモリ,演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接着、太陽電池の電極の形成、特に、アモルファスシリコン半導体を用いているために,高温処理のできない太陽電池の電極の形成、積層セラミックコンデンサ,積層セラミックインダクタ,積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に使用されている。
【0003】
近年、チップ部品の高性能化により、チップ部品からの発熱量が増え、電気伝導性はもとより、熱伝導性の向上が要求される。したがって、金属粒子の含有率を可能な限り増加することにより電気伝導性、熱伝導性を向上しようとする。ところが、そうすると、ペーストの粘度が上昇し、作業性が著しく低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、本発明者らは、銀粉末と揮発性分散媒とからなるペースト状銀組成物は、加熱すると当該揮発性分散媒が揮発し銀粉末が焼結して、極めて高い導電性と熱伝導性を有する固形状銀となること、および、金属製部材の接合や,導電回路の形成に有用なことを見出して国際出願した(WO2006/126614、WO2007/034833)。
【0005】
しかしながら、加熱焼結性金属粒子の焼結物は、多数の金属粒子同士が複数の接点で焼結して連結した不規則な網目構造を有する多孔質体であり、多数の空孔や空隙、しかも、連続した空孔や空隙を有しているので、付着した液体(例えば、水)を毛細管現象により内部に吸入しやすく、また、雰囲気のガス(例えば、水蒸気、腐食性有機ガス)を内部に吸入しやすく、金属製の部材や部品が腐食等されるという問題があることに、本発明者らは気付いた。
【0006】
特開2008−195974には、金属ナノ粒子を被接合部材間の所定の位置に保持した状態で加熱・焼成することにより被接合部材同士を接合する接合方法であって、被接合部材の接合面に、有機保護膜で被覆された金属ナノ粒子とバインダーとが含まれる接合材料を塗布して被接合部材同士を重ね合わせ、前記接合材料がその接合温度以上となるように加熱しながら比較的低圧の加圧力で前記被部材同士を加圧し、前記被接合部材、前記接合材料、及び、それらの周辺雰囲気のいずれかに生じる所定の物理量変化、又は加熱開始からの経過時間を測定し、該物理量変化が一定量に到達した時点又は一定時間経過後において、前記加圧力を比較的高圧へと増圧することを特徴とする接合方法が開示されており、接合強度が向上していると記載されている。
【0007】
ところが、前記接合材料は柔らかいペースト状態であるので、比較的低圧の加圧力で前記被部材同士を加圧しても、該接合材料が容易に押しつぶされて厚さが極めて薄くなるという問題があり、そのため加熱・焼成後の被接合部材間の接着強さ・接合強度が不十分であるという問題がある。また、該接合材料が容易に押しつぶされるため、該接合材料が金属製部材間外に食み出して周辺を汚染し、ひいては、接合体である半導体装置等の金属製の部材や部品が腐食されたり、変質したりして半導体装置等の信頼性が低下する、という問題があることに、本発明者らは気付いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/126614
【特許文献2】WO2007/034833
【特許文献3】特開2008−195974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは上記の問題点を解決するため鋭意研究した結果、ペースト状金属粒子組成物を金属製部材間の接合に用いた場合、金属製部材間のペースト状金属粒子組成物の加熱焼結物が所定の厚みを確保でき、該ペースト状金属粒子組成物が金属製部材間外に食み出すことがなく、金属粒子が十分に加熱焼結して金属製部材を強固に接合し、かつ、液体(例えば、水)や気体(例えば、水蒸気、腐食性有機ガス)が該焼結物に侵入することがなく、該焼結物を通過することがない、金属製部材接合体の製造方法を見出して、本発明に到達した。
【0010】
本発明の目的は、複数の金属製部材が加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物により接合されてなる金属製部材接合体の製造方法において、金属製部材間のペースト状金属粒子組成物の加熱焼結物が所定の厚みを確保でき、該ペースト状金属粒子組成物が金属製部材間外に食み出すことがなく、金属製部材が強固に接合しており、しかも液体(例えば、水)や気体(例えば、水蒸気、腐食性有機ガス)が該焼結物に侵入することがなく、該焼結物を通過することがない、気密封止が可能な金属製部材接合体の製造方法を提供することにある。さらには、複数の金属製部材が加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物により接合されてなる金属製部材接合体において、金属製部材間の加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物の厚みが所定の厚みであり、加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物が金属製部材間にとどまっており、金属製部材が強固に接合しており、しかも液体(例えば、水)や気体(例えば、水蒸気、腐食性有機ガス)が該焼結物に侵入することがなく、該焼結物を通過することがない、気密封止が可能な金属製部材接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、
「[1] (A)平均粒径(メディアン径D50)が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子と(B)揮発性分散媒とからなるペースト状金属粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、無加圧で加熱(1)することにより、該揮発性分散媒を揮散させ、該金属粒子同士を焼結せしめて生成した、断面における空孔率が面積比で15%以上である多孔質焼結物により、複数の金属製部材同士を接合させ、しかる後に、該金属製部材を加熱(1)よりも高い温度で加熱(2)して、該多孔質焼結物の空孔率を15%未満に低減することを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
[2] 加熱(1)の加熱温度が70℃以上300℃以下であり、加熱(2)の加熱温度が250℃以上であり、かつ加熱(2)の加熱温度が加熱(1)の加熱温度よりも50℃以上高い温度であることを特徴とする、[1]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[3]加熱(2)において、金属製部材接合体の多孔質焼結物に0.001MPa以上の圧力を加えることを特徴とする、[1]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[4] 加熱(1)の加熱温度が70℃以上300℃以下であり、加熱(2)の加熱温度が200℃以上であり、かつ加熱(2)の加熱温度が加熱(1)の加熱温度よりも50℃以上高い温度であることを特徴とする、[3]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[5] 加熱焼結性金属粒子が還元法で製造され、表面が有機化合物で被覆されている銀粒子であり、かつ、金属製部材の金属が銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これら各金属の合金であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の金属製部材接合体の製造方法。
[6] 加熱(2)における雰囲気ガスが、不活性ガスまたは乾燥空気であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の金属製部材接合体の製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の金属製部材接合体の製造方法により製造された、金属製部材接合体。
[8] 複数の金属製部材が、加熱焼結性金属粒子が焼結して生成した断面における空孔率が面積比で15%未満の金属粒子焼結物により接合されていることを特徴とする、[7]記載の金属製部材接合体。
[9] 接合した金属製部材間のせん断接着強さが14MPa以上であることを特徴とする、[8]記載の金属製部材接合体。」により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属製部材接合体の製造方法によると、金属製部材間のペースト状金属粒子組成物の加熱焼結物が所定の厚みを確保でき、該ペースト状金属粒子組成物が金属製部材間外に食み出すことがなく、金属製部材同士が加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物により強固に接合しており、かつ、液体(例えば、水)や気体(例えば、水蒸気、腐食性有機ガス)が該焼結物に侵入することがなく、該焼結物を通過することがないという、気密封止性の金属製部材接合体を製造することができる。
【0013】
製造される金属製部材接合体が半導体装置(例えば金属製のケースと蓋の接合体)である場合に、加圧によって食み出たペースト状金属粒子組成物の一部が半導体装置の内部に落下した状態で密閉されて該ペースト中の揮発性分散媒の熱分解により発生したガスにより半導体装置の耐熱性が低下するということがない。
【0014】
本発明の金属製部材接合体は、金属製部材間の加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物の厚みが所定の厚みであり、加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物が金属製部材間にとどまっており、金属製部材同士が加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物により強固に接合しており、かつ、液体(例えば、水)や気体(例えば、水蒸気、腐食性有機ガス)が該焼結物に侵入することがなく、該焼結物を通過することがない。
【0015】
本発明の金属製部材接合体が半導体装置(例えば金属製のケースと蓋の接合体)である場合に、加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物が半導体装置の内部に密閉されておらず、半導体装置の耐熱性が低下するということがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している空孔率(1)を有する多孔質焼結物および比較例1の半導体装置(1)のケースと蓋を接合している空孔率(1)を有する多孔質焼結物の断面部分拡大写真である。
【図2】実施例2の、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している空孔率(1)を有する多孔質焼結物の断面部分拡大写真である。
【図3】実施例1の、半導体装置(2)のケースと蓋を接合している空孔率(2)を有する焼結物の断面部分拡大写真である。
【図4】実施例2の、半導体装置(2)のケースと蓋を接合している空孔率(2)を有する焼結物の断面部分拡大写真である。
【図5】実施例3の、半導体装置(2)のケースと蓋を接合している空孔率(2)を有する焼結物の断面部分拡大写真である。
【図6】実施例4の、半導体装置(2)のケースと蓋を接合している空孔率(2)を有する焼結物の断面部分拡大写真である。
【図7】比較例2の、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している空孔率(1)を有する多孔質焼結物の断面部分拡大写真である。
【図8】実施例、比較例におけるせん断接着強さ測定用試験体(1)、せん断接着強さ測定用試験体(2)の平面図である。銀基板1と銀チップ3とが、銀粒子の加熱焼結物である固体状銀により接合されている。
【図9】図8におけるX−X線断面図である。
【図10】実施例、比較例における半導体装置(1)、半導体装置(2)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の金属製部材接合体の製造方法は、(A)平均粒径が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子と(B)揮発性分散媒とからなるペースト状金属粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、無加圧で加熱(1)することにより、該揮発性分散媒を揮散させ、該金属粒子同士を焼結せしめて生成した、断面における空孔率が面積比で15%以上である多孔質焼結物により複数の金属製部材同士を接合させ、しかる後に、該金属製部材を加熱(1)よりも高い温度で加熱(2)して、該多孔質焼結物の断面における空孔率が面積比で15%未満となるように低減することを特徴とする。本発明の金属製部材接合体の製造方法によれば、加熱(1)により生成した多孔質焼結物は、その空孔や空隙が外部と連通しているので、焼結物内部に入り込んだ揮発状態の揮発性分散媒(B)が外部に自然に排出され、その内部が清浄になった後で、加熱(2)により多孔質焼結物の穴孔や空隙を塞いで気密にすることが可能である。
【0018】
平均粒径(メディアン径D50)が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子(A)における平均粒径(メディアン径D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる一次粒子の平均粒径(メディアン径D50)である。メディアン径D50は、レーザー回折法50%粒径と称されたり(特開2003−55701参照)、体積累積粒径D50と称されてもいる(特開2007−84860参照)。
レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、金属粒子にレーザービームを照射し、その金属粒子の大きさに応じて様々な方向へ発せられる回折光や散乱光のレーザー光の強度を測定することにより一次粒子の粒径を求めるという汎用の測定方法である。数多くの測定装置が市販されており(例えば、株式会社島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD、日機装株式会社製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック)、これらを用いて容易に平均粒径(メディアン径D50)を測定することができる。なお金属粒子の凝集が強い場合には、ホモジナイザーにより一次粒子の状態に分散してから測定することが好ましい。
【0019】
加熱焼結性金属粒子(A)の平均粒径(メディアン径D50)は0.01μm以上50μm以下である。平均粒径(メディアン径D50)が50μmを越えると、加熱焼結性金属粒子(A)の焼結性が低下するため平均粒径(メディアン径D50)はそれより小さい方が好ましい。このため20μm以下であることが好ましく、特には10μm以下であることが好ましい。しかし、平均粒径(メディアン径D50)が0.01μm未満であると金属粒子は表面活性が強すぎて、ペースト状金属粒子組成物の保存安定性が低下し、加熱焼結時の接合強度が不均一になるため、平均粒径(メディアン径D50)は0.01μm以上であり、0.1μm以上であることが好ましく、特には0.7μm以上であることが好ましい。
【0020】
加熱焼結性金属粒子(A)の材質は、常温で固体であり、加熱により焼結しやすければよく、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、スズ、アルミニウム、および、これら各金属の合金が例示され、さらには金属化合物が例示される。
これらの材質のうちでは、加熱焼結性、焼結物の熱伝導性および導電性の点で、銀、銅、ニッケルが好ましく、銀、銀合金、銅、銅合金がより好ましく、銀が特に好ましい。銀粒子は、表面や内部が酸化銀または過酸化銀であってもよいが、その割合は50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。銅粒子は、表面や内部が酸化銅であってもよいがその割合は50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0021】
また加熱焼結性金属粒子(A)は、通常、単独の材質からなるが、複数の材質の粒子の混合物であってもよい。加熱焼結性金属粒子(A)は、それら加熱焼結性金属(例えば銀)により表面がメッキされた金属(例えば、銅、ニッケルまたはアルミニウム)粒子、それら加熱焼結性金属(例えば、銀)により表面がメッキされた樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂)粒子であってもよい。
【0022】
加熱焼結性金属粒子(A)の形状は、加熱焼結性があれば特に限定されず、球状,針状,角状,樹枝状,繊維状,フレーク状(片状),粒状,不規則形状,涙滴状が例示される(JIS Z2500:2000参照)。さらには楕円球状,海綿状,ぶどう状,紡錘状,略立方体状等が例示される。
その形状は、多孔質焼結物を形成しやすい点で球状、粒状およびフレーク状が好ましい。
ここで言う球状とは、ほぼ球に近い形状である(JIS Z2500:2000参照)。必ずしも真球状である必要はなく、粒子の長径(DL)と短径(DS)との比(DL)/(DS)(球状係数と言うことがある)が1.0〜1.2の範囲にあるものが好ましい。
【0023】
粒状とは、不規則形状のものではなくほぼ等しい寸法をもつ形状である(JIS Z2500:2000参照)。
フレーク状(片状)とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000参照)、鱗のように薄い板状であることから鱗片状とも言われるものである。いずれの形状であっても粒度分布は限定されない。
好ましい加熱焼結性金属粒子(A)は、還元法で作られた銀粒子である。なお、還元法による銀粒子の製造方法は多く提案されており、通常、硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて酸化銀を調製し、これにホルマリンのような還元剤の水溶液を加えることにより酸化銀を還元して銀粒子分散液とし、分散液をろ過し、ろ過残渣を水洗し、乾燥をおこなうことにより製造される。
【0024】
加熱焼結性金属粒子(A)は、加熱焼結性金属粒子の凝集防止のため表面が有機物で被覆ないし処理されていることが好ましく、特に撥水性有機物で被覆ないし処理されていることが好ましい。そのような撥水性有機物としては、高・中級脂肪酸、高・中級脂肪酸金属塩、高・中級脂肪酸アミド、高・中級脂肪酸エステルおよび高・中級アルキルアミンが例示される。被覆効果、処理効果の点で特には高・中級脂肪酸が好ましい。高・中級脂肪酸は加熱焼結性金属粒子表面に化学結合していることがあり得る。
【0025】
高級脂肪酸は、炭素原子数15以上の脂肪酸であり、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシステアリン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)等の直鎖飽和脂肪酸;2−ペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、イソステアリン酸等の分枝飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の不飽和脂肪酸が例示される。
【0026】
中級脂肪酸は、炭素原子数が6〜14の脂肪酸であり、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)等の直鎖飽和脂肪酸;イソヘキサン酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、2−プロピルヘプタン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、2−ブチルオクタン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸等の分枝飽和脂肪酸;10−ウンデセン酸等の不飽和脂肪酸が例示される。
【0027】
有機物の被覆量は、金属粒子の粒径、比表面積、形状などにより変わるが、加熱焼結性金属粒子(A)の0.01〜5重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。少なすぎると加熱焼結性金属粒子(A)が凝集しやすくなって保存安定性が低下し、ひいては加熱焼結時の接合強度が不均一になり、多すぎると加熱焼結性金属粒子(A)の加熱焼結性が低下するからである。
【0028】
有機物の被覆量は通常の方法で測定できる。例えば、窒素ガス中で有機物の揮発温度または熱分解温度以上に加熱して重量減少を測定する方法、加熱焼結性金属粒子(A)を酸素気流中で加熱して加熱焼結性金属粒子(A)に付着していた有機物中の炭素を炭酸ガスに変え、赤外線吸収スペクトル法により定量分析する方法が例示される。
【0029】
有機物で被覆したフレーク状加熱焼結性金属粒子は、例えば、ボールミル中に球状のような形状の金属粒子と有機物を投入して、ボールにより金属粒子を殴打することにより製造することができる(特公昭40−6971、特開2000−234107の[0004]参照)。
具体的には、粒状の加熱焼結性金属粒子と、高・中級脂肪酸、高・中級脂肪酸金属塩、高・中級脂肪酸エステル、高・中級脂肪酸アミド等の有機物とを、セラミック製のボールとともに、回転式ドラム装置(例えばボールミル)に投入し、ボールで金属粒子を殴打することにより、該有機物が付着したフレーク状加熱焼結性金属粒子を製造することができる。この際、潤滑性向上のための高・中級脂肪酸、高・中級脂肪酸金属塩(ただし、アルカリ金属塩を除く)、高・中級脂肪酸エステル、高・中級脂肪酸アミド、高・中級アルキルアミン等の有機物が、フレーク状加熱焼結性金属粒子表面に付着する。表面を有機物で被覆した加熱焼結性金属粒子(A)は、該有機物の溶液中に加熱焼結性金属粒子を浸漬した後、該金属粒子を取り出して乾燥することにより製造することもできる。
【0030】
加熱焼結性金属粒子(A)表面は、このような高・中級脂肪酸等の有機物により半分以上が被覆されていればよいが、全部が被覆されていることが好ましい。金属表面が撥水性有機物により被覆された場合には、加熱焼結性金属粒子(A)は撥水性を示す。
【0031】
揮発性分散媒(B)は、粉状である加熱焼結性金属粒子をペースト状にするために配合される。なお、ペースト状はクリーム状やスラリー状を含むものである。加熱時に加熱焼結性金属粒子が焼結可能とするため、あるいは、ペースト状金属粒子組成物を加熱による接合剤として使用可能にするためには、常温常圧において非揮発性ではなく、揮発性であることが必要である。特に、加熱焼結性金属粒子(A)が銀粒子や銅粒子の場合、焼結する際に分散媒が揮散すると、銀粒子や銅粒子が焼結しやすくなり、接合剤として利用しやすくなるからである。揮発性分散媒の沸点は、常圧において60℃〜300℃であることが好ましい。沸点が60℃未満であると、ペースト状金属粒子組成物を調製する作業中に溶媒が揮散しやすく、沸点が300℃より大であると、加熱後も揮発性分散媒(B)が残留しかねないからである。
【0032】
そのような揮発性分散媒(B)は、炭素原子および水素原子からなる揮発性炭化水素化合物、炭素原子,水素原子および酸素原子からなる揮発性有機化合物、炭素原子,水素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物、炭素原子,水素原子,酸素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物、前記揮発性有機化合物のうちの親水性揮発性有機化合物と水との混合物などから選択される。これらはいずれも常温において液状である。
水は純水が好ましく、その電気伝導度は100μS/cm以下が好ましく、10μS/cm以下がより好ましい。純水の製造方法は、通常の方法で良く、イオン交換法、逆浸透法、蒸留法が例示される。
【0033】
具体的には、炭素原子,水素原子および酸素原子からなる揮発性有機化合物として、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール等の揮発性一価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ、メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エメチルセロソルブ、エチルカルビトール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルセロソルブ、プロピルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール等のエーテル結合を有する揮発性一価アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコールなどの揮発性アラルキルアルコール;テルピネオール等のテルペン系アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの揮発性多価脂肪族アルコールが例示される。
【0034】
さらにはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3、5、5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイブチルケトン(2、6−ジメチル−4−ヘプタノン)等の揮発性脂肪族ケトン;酢酸エチル(エチルアセテート)、酢酸ブチル、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2−ジアセトキシエタンのような揮発性脂肪族カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2−ビス(2−ジエトキシ)エタン、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン等の揮発性脂肪族エーテルが例示される。その他に、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エタンのようなエステルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコールが例示される。
【0035】
炭素原子および水素原子からなる揮発性炭化水素化合物として、n−パラフィン、イソパラフィン等の揮発性脂肪族炭化水素;リモネンなどのテルペン系炭化水素;トルエン、キシレン等の揮発性芳香族炭化水素が例示される。
【0036】
炭素原子、水素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物として、アセトニトリル、プロピオニトリルのような揮発性アルキルニトリルが例示される。
炭素原子、水素原子、酸素原子および窒素原子からなる揮発性有機化合物として、アセトアミド、N、N-ジメチルホルムアミドのような揮発性カルボン酸アミドが例示される。その他に、低分子量の揮発性シリコーンオイルおよび揮発性有機変成シリコーンオイルが例示される。
【0037】
揮発性分散媒(B)の配合量は、加熱焼結性金属粒子(A)を常温においてペースト状にするのに十分な量である。加熱焼結性金属粒子(A)の粒径、比表面積、形状など、および、揮発性分散媒(B)の種類、粘度などにより、ペースト状にするのに十分な量は変動するが、具体的には、例えば、加熱焼結性金属粒子(A)100重量部当たり3〜30重量部である。
本発明で使用するペースト状金属粒子組成物は、本発明の目的に反せず、本発明の効果を阻害しない限り、加熱焼結性金属粒子(A)以外の金属系または非金属系の粉体、金属化合物、金属錯体、チクソ剤、安定剤、着色剤等の添加物を少量ないし微量含有しても良い。なお、本発明で使用するペースト状金属粒子組成物は、バインダー、特には有機樹脂バインダーを含むと、加熱焼結性金属粒子(A)の加熱焼結性が低下するので、バインダー、特には有機樹脂バインダーを含まないものである。
【0038】
本発明で使用するペースト状金属粒子組成物は、(A)平均粒径が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子と(B)揮発性分散媒を、ミキサーに投入し、均一なペースト状になるまで撹拌混合することにより、容易に製造することができる。
【0039】
本発明で使用するペースト状金属粒子組成物は、加熱焼結性金属粒子(A)と揮発性分散媒(B)との混合物であり、常温でペースト状である。なお、ペースト状はクリーム状やスラリー状を含む。ペースト化することによりシリンダーやノズルから細い線状に吐出でき、また、メタルマスクによる印刷塗布が容易である。複数の金属製部材間に介在させるペースト状金属粒子組成物の厚さは、加熱焼結性金属粒子(A)の加熱焼結により必要な接合強度が発現する厚さであれば、特に限定されない。通常、5μm以上、1200μm以下である。
【0040】
本発明で使用する金属製部材は、塗布されたペースト状金属粒子組成物が加熱により該組成物中の揮発性分散媒が揮発し、加熱焼結性金属粒子同士(A)が焼結して接合する被接合体である。金属製部材の材質としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、スズ、アルミニウム、および、これら各金属の合金が例示される。これらのうちでは導電性、接合性の点で、銅、銀、金、白金、パラジウムまたはこれら各金属の合金が好ましい。金属製部材は前記金属で全体または一部をメッキされたものであってもよく、本発明においては、前記金属で全体または一部をメッキされたものも金属製部材である。そのような金属製部材として、セラミック製部材、樹脂製部材を前記金属で全体または一部をメッキしたものが例示される。金属製部材としては、全体または一部が金属で形成されたリードフレーム、プリント基板、半導体チップ、半導体チップ封止用のキャン、ケース、キャップおよびリッド、放熱板が例示される。
【0041】
本発明の金属製部材接合体の製造方法では、(A)平均粒径が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子と(B)揮発性分散媒とからなるペースト状金属粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、加熱(1)により、該揮発性分散媒を揮散させ、該金属粒子同士を焼結せしめて生成した、断面における空孔率が面積比で15%以上である多孔質焼結物により複数の金属製部材同士を接合させ、しかる後に、該金属製部材に加熱(1)よりも高い温度で加熱(2)して、該多孔質焼結物の空孔率を15%未満に低減する。
【0042】
このときの雰囲気ガスは、加熱焼結性金属粒子の焼結を阻害しなければ特に限定されないが、加熱焼結性金属粒子および金属製部材が銅または銅合金のように酸化されやすい材質の場合には、酸素ガスを含まない、窒素ガス等の不活性ガス、水素ガスを含む還元性ガスが好ましい。このうち水素ガス5〜25体積%と窒素ガス95〜75体積%からなるフォーミングガスと称される還元性ガスが特に好ましい。
加熱焼結性金属粒子および金属製部材が銀または銀合金からなる場合は、酸素ガスを含む酸化性ガス、特には乾燥空気または、窒素ガス等の不活性ガスが好ましい。乾燥空気としては23℃において相対湿度10%以下のものが好ましく、5%以下が特に好ましい。なお、接合に使用するペースト状金属粒子組成物中の加熱焼結性金属粒子(A)と金属製部材の表面金属は、同一の金属もしくは金属合金でも良く、合金を形成しやすい金属であっても良い。
【0043】
本発明で使用するペースト状金属粒子組成物は、加熱することにより揮発性分散媒が揮散する。本発明で使用するペースト状金属粒子組成物は、加熱焼結性金属粒子(A)の焼結温度以上の温度に加熱(1)することにより、揮発性分散媒(B)が揮散して、該金属粒子同士(A)が焼結し、導電性と熱伝導性が優れた固形状の金属となり金属製部材同士を接合する。このようにして金属製部材間での加熱焼結性金属粒子同士の焼結物は、多孔質であり、図1または図2に示されるように、数多くの微細な空孔や空隙、しかも、連続した空孔すなわち、細孔を有している。
【0044】
その空孔率は断面における面積比で15%以上であることが必要である。多孔質焼結物の空孔率が15%未満であると、該多孔質焼結物は空孔や空隙同士の連結がなく,あるいは,乏しいため、該ペースト状金属粒子組成物中の揮発性分散媒(B)や該金属粒子(A)を被覆している有機物が該多孔質焼結物中に閉じ込められて残留してしまうという問題がある。また、該ペースト状金属粒子組成物を半導体チップ等の電子部品を気密封止する際のキャンまたはケースとキャップまたはリッドとの接合に用いた場合は、封止したキャンまたはケース内に揮発性分散媒(B)や該金属粒子(A)を被覆している有機物が閉じ込められてしまい、内部にある金属製部材や金属製部品を腐食する不具合が起こるためである。
【0045】
その空孔率は断面における面積比で20%以上であることが好ましい。
多孔質焼結物の空孔率が大きすぎると、該多孔質焼結物がもろくなり、金属製部材同士を強固に接合できなくなるため、断面における面積比で空孔率は60%以下であることが好ましく、50%以下であることがよりより好ましく、40%以下であることが特に好ましい。なおペースト状金属粒子組成物を加熱(1)する際に、このような問題がない範囲で超音波振動を加えても良い。
【0046】
この際、揮発性分散媒(B)が揮散し、ついで加熱焼結性金属粒子(A)同士が焼結してもよく、揮発性分散媒(B)の揮散と共に加熱焼結性金属粒子(A)同士が焼結してもよい。特に加熱焼結性金属粒子(A)が銀粒子の場合は、銀が本来大きな強度と極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有するため、銀粒子同士の焼結物も、大きな強度ときわめて高い電気伝導性と熱伝導性を有する。また加熱焼結性金属粒子(A)が銅粒子の場合は、銅が本来極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有するため、銅粒子同士の焼結物も、きわめて高い電気伝導性と熱伝導性を有する。
【0047】
この際の加熱(1)の温度は、揮発性分散媒(B)が揮散し、加熱焼結性金属粒子(A)が焼結して、断面における空孔率が面積比で15%以上となる温度であればよく、通常70℃以上であり、150℃以上がより好ましい。しかし、300℃を越えると、加熱焼結性金属粒子(A)が焼結性に優れる場合、該空孔率が15%未満になる可能性があり、また、揮発性分散媒が突沸的に蒸発して、多孔質焼結物の形状へ悪影響が出る恐れがあるため、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。
【0048】
加熱(1)においては、ペースト状金属粒子組成物に圧力を加えない。加熱(1)において、ペースト状金属粒子組成物は柔らかいペースト状であり、この際に加圧すると該ペースト状金属粒子組成物が容易に押しつぶされて金属製部材間からはみ出し、その結果、加熱(1)後の焼結物の厚さが所定の厚さより低下し、金属製部材間の接着強さが低下するためである。また、該ペースト状金属粒子組成物が容易に押しつぶされた場合、金属製部材間からはみ出した該ペースト状金属粒子組成物が周辺の部材を汚染するからである。
【0049】
なお、複数、例えば2枚の金属製部材を積み重ね、それら部材間にペースト状金属粒子組成物を介在させて加熱焼結する場合は、上側の金属製部材の重量がペースト状金属粒子組成物にかかるが、ペースト状金属粒子組成物を容易に押しつぶさない限り、そのような重量は加圧に含めないものとする。
【0050】
金属製部材接合体が半導体装置(例えば金属製のケースと蓋)である場合に、加圧によってはみ出たペースト状金属粒子組成物の一部が半導体装置の内部に落下した状態で密閉されて該ペースト中の揮発性分散媒の熱分解により発生したガスにより半導体装置の耐熱性が低下するからである。
【0051】
空孔率は焼結体の断面における空孔の割合を面積の比率を百分率で示したもので、その測定方法は通常の測定方法が利用できる。例えば、焼結体の断面を電子顕微鏡等の顕微鏡で写真撮影し、画像解析ソフトにより、金属部分と空間部分の面積比率を求める方法、あるいは、顕微鏡により撮影した写真を均質な紙等に印刷し、金属部分と空間部分をはさみ等で切り分けて各々の重量を測定し、その重量比率を面積比率とする方法が例示される。この場合の紙等は、実質的に均一な材質および厚さであることが好ましい。
【0052】
なお、図1または図2に示されるように、空孔や空隙の形状や大きさは、種々様々である。焼結前の焼結性金属粒子間の空孔や空隙が主に細孔になるので、通常0.01〜50μmであるが、連続的な細孔は50μmよりはるかに長い可能性がある。
【0053】
焼結物が多孔質であると機械的な強度が出にくいという問題があり、また、水等の液体や水蒸気、有機ガス等の気体と接触すると、毛細管現象や呼吸作用によりにより液体やガスが侵入して焼結物の内部に取り込まれる。この際、液体やガスが水、水蒸気、腐食性の有機ガスの場合、該焼結物を腐食してマイグレーションの原因となりかねない。また、その成分が半導体チップ等の電子部品の腐食や信頼性低下の原因となる場合がある。さらに、粉じん等の微細な異物の場合、半導体チップ等が光学部品の場合は、光透過率の変動や低下等により機能が低下する場合がある。そこで、本発明ではこのような金属製部材接合体間の多孔質焼結物の空孔率を、加熱(2)により低減することを特徴とする。空孔率を低減するための加熱(2)の温度は、加熱(1)よりも高い温度であることが必要である。
【0054】
この際、加熱(2)の温度は加熱(1)の温度よりも50℃以上高いことが好ましく、特には100℃以上高いことが好ましい。加熱(2)の温度が加熱(1)の温度よりも低いと、加熱時間を長くしても空孔率を低減することができないためである。加熱(2)の温度は加熱焼結性金属粒子の焼結性によって変わるが250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることが特に好ましい。加熱(2)の上限温度は接合する被金属製部材の耐熱温度であるので、特に限定されるものではないが、400℃以下が好ましい。
【0055】
本発明では、多孔質焼結物の断面における空孔率を面積比で15%未満に低減せしめて空孔や空隙、特には連結した空孔を塞いでいるので、液体、気体および微粒子状固体の侵入、通過を防止することができる。また、空孔率が低減した加熱焼結性金属粒子の焼結物は、金属製部材同士をより強固に接合するので、該焼結物による複数の金属製部材同士の接合強度は更に向上している。このときの焼結物では、ペースト状金属粒子組成物中の揮発性分散媒(B)はすでに加熱(1)により揮発してしまっているので、焼結物の空孔率を15%未満にしても、揮発性分散媒(B)が金属製部材接合体の内部に残留することはない。このようにして焼結物の空孔率を15%未満に低減した例を図3〜図6に示す。その空孔率は断面における面積比で0〜10%であることが好ましく、0%が最も好ましい。
【0056】
このとき、金属製部材接合体の多孔質焼結物に圧力を加えながら加熱(2)すれば、空孔率をより低減することができるため、加熱(2)の温度を下げることが可能である。このときの圧力は0.001MPa以上であり、0.01MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましく、特には1MPa以上であることが好ましい。圧力の上限は特に限定されないが、加熱(1)後の金属製部材接合体の多孔質焼結物が変形や破壊をしない範囲である。
【0057】
加熱(1)後の金属製部材接合体の多孔質焼結物に圧力を加える方法は限定されないが、加熱(1)後の金属製部材接合体の多孔質焼結物は、複数の金属製部材間に介在しているので、複数の金属製部材を介して圧力を加える方法が好ましい。したがって、加熱(1)後の金属製部材接合体に錘を載せる方法、または、プレス機により加熱(1)後の金属製部材接合体をはさむ方法等が例示される。この際、加熱(1)後の金属製部材接合体の多孔質焼結物全体に均一に圧力が加わることが好ましく、また、加熱(1)後の金属製部材接合体と接する錘やプレス機の天地板は温度調整できることが好ましい。
【0058】
加熱(1)後の金属製部材接合体の多孔質焼結物に圧力を加える場合の加熱(2)の温度は、加熱焼結性金属粒子の焼結性によって変わるが、200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。加熱(1)後の金属製部材接合体の多孔質焼結物に圧力を加える場合の加熱(2)の上限温度は、接合する被金属製部材の耐熱温度であるので、特に限定されるものではないが、400℃以下が好ましい。
【0059】
かくして得られた金属製部材接合体は、金属製部材間の加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物の厚みが所定の厚みであり、加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物が金属製部材間にとどまっており、金属粒子の加熱焼結物の硬さや接合強度が向上し、または、冷熱サイクルにおける熱応力による該焼結物の破壊および金属製部材との剥離が低減し、強固な接合強度を維持できるという特徴も有する。
【0060】
本発明で使用するペースト状金属粒子組成物は、加熱(1)により揮発性分散媒(B)が揮散し、加熱焼結性金属粒子(A)同士が焼結する。複数の金属製部材間の接合に用いた場合、加熱焼結物は、焼結時に接触していた金属製部材、例えば金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、アルミニウム基板、ニッケルメッキ基板、スズメッキ金属基板等の金属系基板、金,銀,銅などの金属メッキセラミック部材へ強固に接着し、電気絶縁性基板上の電極等金属部分へ強固に接着する。さらに該金属製部材を加熱(1)よりも高い温度で加熱(2)しているので、更に強固に接着する。このため本発明の金属製部材接合体の製造方法は、金属系基板や金属部分を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等の金属製部材接合体の製造に有用である。
【0061】
そのような接合として、コンデンサ,抵抗等のチップ部品と回路基板との接合、ダイオード,メモリ,IC,CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合、半導体チップや電子部品または光学部品を搭載したキャンまたはケースとキャップまたはリッドとの接合、高発熱のCPUチップと冷却板との接合等が例示される。
【0062】
本発明の金属製部材接合体は、複数の金属製部材が、加熱焼結性金属粒子が焼結して生成した断面における空孔率が面積比で15%以上の多孔質焼結物の空孔率を15%未満に低減した焼結物により接合されており、多孔質焼結物の空孔や空隙、特には連結した空孔を塞ぐことにより液体および気体が侵入、通過しないことを特徴とする。また、該焼結物の硬さ等の機械的特性、接着強度・接合強度が優れていることを特徴とする。
接合した金属製部材間のせん断接着強さは、実施例で規定した方法で測定した場合に14MPa以上であり、好ましくは20MPa以上であることを特徴とする。
【0063】
金属製部材、加熱焼結性金属粒子、加熱焼結条件、多孔質焼結物、空孔や空隙の形状や大きさ、空孔率、加圧条件、雰囲気ガス、金属製部材間の加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物の厚み、加熱焼結性金属粒子の加熱焼結物が金属製部材間にとどまりなどについては、金属製部材接合体の製造方法に関して説明したとおりである。複数の金属製部材間に介在している加熱焼結した金属層の厚さは、必要な接合強度が発現する厚さであれば、特に限定されない。通常、3μm以上、1000μm以下である。
【0064】
本発明の金属製部材接合体は、複数の金属製部材間で、平均粒径が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子が加熱焼結し、さらに、該多孔質焼結物の空孔や空隙、特に連結した空孔が塞がれているので、液体や気体が残留、侵入、通過することなく金属製部材がより強固に接合している。そのような接合体として、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合体、ダイオード,メモリ,IC,CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合体、半導体チップや電子部品または光学部品を搭載したキャンまたはケースとキャップまたはリッドとの接合、高発熱のCPUチップと冷却板との接合体等の金属製部材接合体が例示される。
【0065】
また、本発明の金属製部材接合体のうち、半導体チップ等の電子部品または光学部品等を搭載した金属製などのキャンまたはセラミック製のケース等と、それらを気密封止するためのキャップまたはリッドを接合した、気密封止された金属製部材接合体の気密性は、通常の方法で測定することができる。そのような方法として、金属製部材接合体を水没させたときに出てくる泡を測定する水没試験、ヘリウム等の低分子量ガスを使用したリーク試験、水および水蒸気を使用した恒温恒湿試験またはプレッシャークッカー試験、フッ素系の不活性液体を使用したリーク試験、液状の蛍光染料による含浸試験、X線や超音波を使用した断層撮影検査等が例示される。
【実施例】
【0066】
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中、部と記載されているのは、重量部を意味する。実施例における乾燥空気は、23℃において相対湿度5%のものである。
【0067】
金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1)と称する)および半導体装置(1)を、ペースト状銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子の加熱(1)によって接合することにより、後述のとおり作製した。
金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1)と称する)および半導体装置(1)の次の項目について、後述のとおりに測定した。なお、測定時の温度として特に記載のない場合の温度は23℃である。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1および半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の空孔率(1)、気密性および耐熱性
【0068】
また、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2)と称する)および半導体装置(2)を、加熱(1)後の金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))および半導体装置(1)を加熱(2)することにより、後述のとおり作製した。
金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2)と称する)および半導体装置(2)の次の項目について、後述のとおりに測定した。なお、測定時の温度として特に記載のない場合の温度は23℃である。
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0069】
[半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無の測定方法]
半導体ダミーチップ4を、電気的な接続が可能な外部リード端子5を有するセラミック製ケース6のタブ7上に設け、この半導体チップの上端部に設けられたボンディングパッド8と外部リード端子5を金製のボンディングワイヤ9により電気的に接続した。次いで、このセラミック製ケース上部の金メッキ10を施した外周部にペースト状銀粒子組成物11を塗布厚さが100μmとなる量をディスペンス塗布し、セラミック製の蓋12(ペースト状銀粒子組成物11と接する面には金メッキ10が施されている)を載せた。
【0070】
この状態で半導体装置(1)の全体の厚さをマイクロメーターで測定し、そこから予め測定したセラミック製ケース6の厚さ、金メッキ10の厚さ、および、蓋12の厚さを差し引いて、半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1とした。
【0071】
次に、加熱(1)後の半導体装置(1)の全体の厚さをマイクロメーターで測定し、そこから予め測定したセラミック製ケース6の厚さ、金メッキ10の厚さ、および、蓋12の厚さを差し引いて、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2とした。この際、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無を目視で観察した。
【0072】
[加熱(1)による接合強度測定用試験体(1)の作製方法および接合強度測定用試験体(1)のせん断接着強さの測定方法]
幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板1(銀純度99.99%)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物2を印刷塗布し、その上にサイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ3(銀純度99.99%)を搭載した。これを熱風循環式オーブン内で、加熱(1)を所定の温度で1時間おこなって、銀基板1と銀チップ3を接合することにより、金属製部材接合体(1)を作製した。
【0073】
加熱(1)の際に加圧をする場合は、銀基板1にペースト状銀粒子組成物2を印刷塗布し、銀チップ3を搭載した後、銀チップの上面に所定の質量の錘を載せることによりおこなった。
【0074】
かくして得られた金属製部材接合体(1)を接合強度測定用試験体(1)として、該接合強度測定用試験体(1)を接着強さ試験機の試験体取付け具にセットし、該銀チップ3の側面を接着強さ試験機の押圧棒により押厚速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ(単位;MPa)とした。4個の平均値をせん断接着強さとした。
なお、せん断接着強さ測定用試験体(1)の平面図を図8に示し、該平面図におけるX−X線断面図を図9に示す。
【0075】
[加熱(1)による半導体装置(1)の作製方法および半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の空孔率(1)の測定方法]
半導体装置(1)を次の方法により作製した。
半導体ダミーチップ4を、電気的な接続が可能な外部リード端子5を有するセラミック製ケース6のタブ7上に設け、この半導体チップの上端部に設けられたボンディングパッド8と外部リード端子5を金製のボンディングワイヤ9により電気的に接続した。次いで、このセラミック製ケース上部の金メッキ10を施した外周部にペースト状銀粒子組成物11をディスペンス塗布し、セラミック製の蓋12(ペースト状銀粒子組成物11と接する面には金メッキ10が施されている)を載せた。これを熱風循環式オーブン内で、加熱(1)を所定の温度で1時間おこなって、セラミック製ケース6とセラミック製の蓋12を接合することにより、半導体装置(1)を作製した。なお、半導体装置(1)は金属製部材接合体である。半導体装置(1)の断面図を図10に示す。
【0076】
加熱(1)の際に加圧をする場合は、このセラミック製ケース上部の金メッキ10を施した外周部にペースト状銀粒子組成物11をディスペンス塗布し、セラミックの蓋12を載せた後、セラミックの蓋12の上面に所定の質量の錘を載せることによりおこなった。
【0077】
かくして得られた半導体装置(1)のセラミック製ケース6とセラミック製の蓋12を接合している銀粒子焼結物の断面を顕微鏡で撮影し、PPC用紙(上質紙・中性紙)に印刷した。次いで、写真の空孔部分と非空孔部分を切り分けてそれぞれの質量を測定し、空孔部分の割合を面積として算出し、その百分率を空孔率とした。
【0078】
[半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無の測定方法]
半導体装置(1)を加熱(2)して作成した半導体装置(2)の全体の厚さをマイクロメーターで測定し、そこから予め測定したセラミック製ケース6の厚さ、金メッキ10の厚さ、および、蓋12の厚さを差し引いて、半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3とした。この際、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無を目視で観察した。
【0079】
[加熱(1)と加熱(2)とによる接合強度測定用試験体(2)の作製方法および接合強度測定用試験体(2)のせん断接着強さの測定方法]
[加熱(1)による接合強度測定用試験体(1)の作製方法および接合強度測定用試験体(1)のせん断接着強さの測定方法]で作製した加熱(1)後の金属製部材接合体(1)を、次の通り加熱(2)した。
この金属製部材接合体(1)の銀粒子焼結物に圧力を加えて加熱(2)する場合は、金属製部材接合体(1)を加熱可能なプレス機に上下方向から挟み、所定の圧力を加えながら加熱(2)を所定の温度で1時間おこなって、空孔率を低減した銀粒子焼結物を形成することにより、金属製部材接合体(2)を作製した。金属製部材接合体(1)の銀粒子焼結物に圧力を加えないで加熱(2)する場合は、金属製部材接合体(1)を電気炉中で加熱(2)を所定の温度で1時間おこなって空孔率を低減した銀粒子焼結物を形成することにより、金属製部材接合体(2)を作製した。
【0080】
かくして得られた金属製部材接合体(2)を接合強度測定用試験体(2)として、該接合強度測定用試験体(2)を接着強さ試験機の試験体取付け具にセットし、該銀チップ3の側面を接着強さ試験機の押圧棒により押厚速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ(単位;MPa)とした。4個の平均値をせん断接着強さとした。なお、せん断接着強さ測定用試験体(2)の平面図、該平面図におけるX−X線断面図は、せん断接着強さ測定用試験体(1)のものと同様である。
【0081】
[加熱(1)と加熱(2)とによる半導体装置(2)の作製方法および半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の空孔率(2)の測定方法]
[加熱(1)による半導体装置(1)の作製方法および半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)の測定方法]で作製した加熱(1)後の半導体装置(1)の銀粒子焼結物に、圧力を加えて加熱(2)する場合は、半導体装置(1)を加熱可能なプレス機に上下方向から挟み、所定の圧力を加えながら加熱(2)を所定の温度で1時間おこなって、空孔率を低減した銀粒子焼結物を形成することにより、半導体装置(2)を作製した。
半導体装置(1)の焼結物に圧力を加えないで加熱(2)する場合は、電気炉中で加熱(2)を所定の温度で1時間おこなって、空孔率を低減した銀粒子焼結物を形成することにより、半導体装置(2)を作製した。なお、半導体装置(2)は金属製部材接合体である。半導体装置(2)の断面図は半導体装置(1)とものと同様である。
【0082】
かくして得られた半導体装置(2)のセラミック製ケース6とセラミック製の蓋12を接合している銀粒子焼結物の断面を顕微鏡で撮影し、PPC用紙(上質紙・中性紙)に印刷した。次いで、写真の空孔部分と非空孔部分を切り分けてそれぞれの質量を測定し、空孔部分の割合を面積として算出し、その百分率を空孔率とした。
【0083】
[半導体装置の気密性]
後述する各実施例、比較例において、半導体装置(2)20個(比較例1においては、半導体装置(1)20個である。)を121℃のプレッシャークッカーオーブン中で96時間加熱した後、この半導体装置の外部端子に電流を流して、外部端子間のリーク電流を測定して、リーク電流に変化があった半導体装置の個数の割合(%)を不良率とした。これをもってこの半導体装置の気密性の評価とした。
【0084】
[半導体装置の耐熱性]
後述する各実施例、比較例において、半導体装置(2)20個(比較例1においては、半導体装置(1)20個である。)を200℃の熱風循環式オーブン中で1000時間加熱した後、この半導体装置の外部端子に電流を流して、外部端子間のリーク電流を測定して、リーク電流に変化があった半導体装置の個数の割合(%)を不良率とした。これをもって半導体装置の耐熱性の評価とした。
【0085】
[実施例1]
特開昭54−121270の実施例に準じて還元法で製造され、表面がオレイン酸で被覆された銀粒子(形状:粒状、1次粒子の平均粒径:0.9μm、オレイン酸量:0.6重量%)100部に、揮発性分散媒として酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エタン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)8部を添加し、ヘラを用いて均一に混合することによりペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0086】
該ペースト状銀粒子組成物を用いて、加熱(1)の加熱温度を200℃として、金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))および半導体装置(1)を前記作製方法で作製した。さらには、加熱(2)の加熱温度を350℃として、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を前記作製方法で作製した。
【0087】
次の項目について、測定をし、結果を表1および表2にまとめて示した。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0088】
以上の結果により、本発明の金属製部材接合体の製造方法は、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さが所定の厚さであり、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出しておらず、金属製部材同士を強固に接合し、気密性の優れた金属製部材接合体の製造に有用なことがわかった。
【0089】
[実施例2]
市販の,還元法で製造された銀粒子をフレーク化し,表面がステアリン酸で被覆されたフレーク状銀粒子(1次粒子の平均粒径:6.5μm、ステアリン酸量:0.3重量%)100部に、揮発性分散媒として酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エタン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)8部を添加し、ヘラを用いて均一に混合することによりペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0090】
該ペースト状銀粒子組成物を用いて、加熱(1)の加熱温度を200℃として、金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))および半導体装置(1)を前記作製方法で作製した。さらには、加熱(2)の加熱温度を350℃として、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を前記作製方法で作製した。
【0091】
次の項目について、測定をし、結果を表1および表2にまとめて示した。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0092】
以上の結果により、本発明の金属製部材接合体の製造方法は、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さが所定の厚さであり、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出しておらず、金属製部材同士を強固に接合し、気密性の優れた金属製部材接合体の製造に有用なことがわかった。
【0093】
[実施例3]
実施例1において、金属製部材接合体(1)および半導体装置(1)に圧力を加えないで加熱(2)する代わりに、金属製部材接合体(1)および半導体装置(1)に2.0MPaの圧力を加えて加熱(2)(加熱温度300℃)して、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を作製した。
【0094】
次の項目について、測定をし、結果を表1および表2にまとめて示した。
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)
なお、表1中の次の項目については、実施例1の測定結果である。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
表2中の次の項目については、実施例1の測定結果である。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1
【0095】
以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さが所定の厚さであり、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出しておらず、金属製部材同士を強固に接合し、気密性の優れた金属製部材接合体の製造に有用なことがわかった。
【0096】
[実施例4]
実施例2において、金属製部材接合体(1)に圧力を加えないで加熱(2)した代わりに、窒素ガス中で金属製部材接合体(1)および半導体装置(1)に2.0MPaの圧力を加えて加熱(2)(加熱温度300℃)して、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を作製した。
【0097】
次の項目について、測定をし、結果を表1および表2にまとめて示した。
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
なお、表1中の次の項目については、実施例2の測定結果である。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
表2中の次の項目については、実施例2の測定結果である。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1
【0098】
以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さが所定の厚さであり、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出しておらず、金属製部材同士を強固に接合し、気密性の優れた金属製部材接合体の製造に有用なことがわかった。
【0099】
[実施例5]
実施例1において、揮発性分散媒として用いた酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エタンの代わりに、揮発性炭化水素であるイソパラフィン(新日本石油株式会社製、アイソゾール400(アイソゾールは登録商標である。)を用いて調製したペースト状銀粒子組成物を用いて、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を作製した。
【0100】
次の項目について、測定をし、結果を表1および表2にまとめて示した。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0101】
以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法は、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さが所定の厚さであり、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出しておらず、金属製部材同士を強固に接合し、気密性の優れた金属製部材接合体の製造に有用なことがわかった。
【0102】
[比較例1]
実施例1における、加熱(2)を行っていない半導体装置(1)の気密性および耐熱性の測定をし、結果を表3および表4にまとめて示した。以上の結果により、この金属製部材接合体の加熱(2)を行わない製造方法では、金属製部材接合体である半導体装置を十分に気密封止することができないことがわかった。
なお、表3中の次の項目については、実施例1の測定結果である。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
【0103】
[比較例2]
実施例1において、加熱(1)の温度を400℃とした以外は同様にして、金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))および半導体装置(1)、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を作製した。
【0104】
次の項目について、測定をし、結果を表3および表4にまとめて示した。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0105】
以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法では、半導体装置(1)が気密封止され、ケースと蓋を接合している焼結物の空孔率が極めて小さく気体を通過できないため、ペースト状銀粒子組成物が加熱(1)された際に揮発して半導体装置(1)の内部に閉じ込められた該ペースト状銀粒子組成物中の揮発性分散媒が外部に排出されることなく残留し、加熱(2)した後もそのまま半導体装置(2)の内部に残留して金属製部材接合体である半導体装置の信頼性が低下することがわかった。
【0106】
[比較例3]
実施例1において調製したペースト状銀粒子組成物を用いて、加熱(1)の加熱温度を150℃とし、かつ、10MPaの圧力を加えながら加熱することにより、金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))および半導体装置(1)を作製した。さらに、加熱(2)の加熱温度を150℃のまま、30MPaの圧力を加えながら加熱することにより、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を作製した。
【0107】
次の項目について、測定をし、結果を表3および表4にまとめて示した。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0108】
以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法では、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さがきわめて薄く、半導体装置のケースと蓋の接合強度が低く、また、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出して周辺を汚染し、金属製部材接合体である半導体装置の信頼性が低下することがわかった。
【0109】
[比較例4]
実施例1において調製したペースト状銀粒子組成物を用いて、加熱(1)の加熱温度を200℃とし、かつ、10MPaの圧力を加えながら加熱することにより、金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))および半導体装置(1)を作製した。さらに、加熱(2)の加熱温度を200℃のまま、30MPaの圧力を加えながら加熱することにより、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を作製した。
【0110】
次の項目について、測定をし、結果を表3および表4にまとめて示した。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0111】
以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法では、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さがきわめて薄く、半導体装置のケースと蓋の接合強度が低く、また、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出して周辺を汚染し、金属製部材接合体である半導体装置の信頼性が低下することがわかった。
【0112】
[比較例5]
実施例1において調製したペースト状銀粒子組成物を用いて、加熱(1)の加熱温度を250℃とし、かつ、10MPaの圧力を加えながら加熱することにより、金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))および半導体装置(1)を作製した。さらに、加熱(2)の加熱温度を250℃のまま、30MPaの圧力を加えながら加熱することにより、金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))および半導体装置(2)を作製した。
【0113】
次の項目について、測定をし、結果を表3および表4にまとめて示した。
・半導体装置(1)のケースと蓋間のペースト状銀粒子組成物の加熱(1)前の厚さa1、半導体装置(1)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa2、および、半導体装置(1)におけるペースト状銀粒子組成物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(1)(接合強度測定用試験体(1))のせん断接着強さ
・半導体装置(1)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(1)
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している焼結物の厚さa3、および、半導体装置(2)における焼結物の食み出しの有無
・金属製部材接合体(2)(接合強度測定用試験体(2))のせん断接着強さ
・半導体装置(2)のケースと蓋を接合している銀粒子焼結物の空孔率(2)、気密性および耐熱性
【0114】
以上の結果により、この金属製部材接合体の製造方法では、半導体装置のケースと蓋を接合している焼結物の厚さがきわめて薄く、半導体装置のケースと蓋の接合強度が低く、また、焼結物が半導体装置のケースと蓋間から食み出して周辺を汚染し、金属製部材接合体である半導体装置の信頼性が低下することがわかった。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の金属製部材接合体の製造方法は、金属製部材が加熱焼結性金属粒子の焼結物により強固に接合され、該焼結物に液体や気体が侵入・通過することのない、気密封止可能な金属製部材接合体を製造するのに有用である。本発明の金属製部材接合体の製造方法は、コンデンサ,抵抗等のチップ部品と回路基板との接合体、ダイオード,メモリ,IC,CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合体、半導体チップや電子部品または光学部品を搭載したキャンまたはケースとキャップまたはリッドとの接合体、高発熱のCPUチップと冷却板の接合体などの製造に有用である。
本発明の金属製部材接合体は、電子部品、電子装置、電気部品、電気装置などに有用である。
【符号の説明】
【0120】
A せん断接着強さ測定用試験体(1)、せん断接着強さ測定用試験体(2)
1 銀基板
2 ペースト状銀粒子組成物(加熱焼結後は、焼結物である固体状銀)
3 銀チップ
B 半導体装置(1)、半導体装置(2)
4 半導体ダミーチップ
5 外部リード端子
6 セラミック製ケース
7 タブ
8 ボンディングパッド
9 ボンディングワイヤ
10 金メッキ
11 ペースト状銀粒子組成物(加熱焼結後は、焼結物である固体状銀)
12 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.01μm以上50μm以下である加熱焼結性金属粒子と(B)揮発性分散媒とからなるペースト状金属粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、無加圧で加熱(1)することにより、該揮発性分散媒を揮散させ、該金属粒子同士を焼結せしめて生成した、断面における空孔率が面積比で15%以上である多孔質焼結物により、複数の金属製部材同士を接合させ、しかる後に、該金属製部材を加熱(1)よりも高い温度で加熱(2)して、該多孔質焼結物の空孔率を15%未満に低減することを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
【請求項2】
加熱(1)の加熱温度が70℃以上300℃以下であり、加熱(2)の加熱温度が250℃以上であり、かつ加熱(2)の加熱温度が加熱(1)の加熱温度よりも50℃以上高い温度であることを特徴とする、請求項1に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項3】
加熱(2)において、金属製部材接合体の多孔質焼結物に0.001MPa以上の圧力を加えることを特徴とする、請求項1に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項4】
加熱(1)の加熱温度が70℃以上300℃以下であり、加熱(2)の加熱温度が200℃以上であり、かつ加熱(2)の加熱温度が加熱(1)の加熱温度よりも50℃以上高い温度であることを特徴とする、請求項3に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項5】
加熱焼結性金属粒子が還元法で製造され、表面が有機化合物で被覆されている銀粒子であり、かつ、金属製部材の金属が銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これら各金属の合金であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項6】
加熱(2)における雰囲気ガスが、不活性ガスまたは乾燥空気であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の金属製部材接合体の製造方法により製造された、金属製部材接合体。
【請求項8】
複数の金属製部材が、加熱焼結性金属粒子が焼結して生成した断面における空孔率が面積比で15%未満の金属粒子焼結物により接合されていることを特徴とする、請求項7記載の金属製部材接合体。
【請求項9】
接合した金属製部材間のせん断接着強さが14MPa以上であることを特徴とする、請求項8記載の金属製部材接合体。

【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−236494(P2011−236494A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220751(P2010−220751)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【特許番号】特許第4795483号(P4795483)
【特許公報発行日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000111199)ニホンハンダ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】