説明

釣り用履き物

【課題】アッパーの損傷が抑制され、かつ屈曲性に優れた釣り用履き物2の提供。
【解決手段】釣り用履き物2のアウトソール14は、その側壁面38に第一瘤状突起40、第二瘤状突起42、第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46を備えている。第一瘤状突起40及び第二瘤状突起42は、履き物2のアウトサイドに位置している。第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46は、履き物2のインサイドに位置している。瘤状突起40、42、44、46は、アッパーの岩との衝突を防止する。第一瘤状突起40と第二瘤状突起42との間には、アウトサイド凹陥部48が位置している。第三瘤状突起44と第四瘤状突起46との間には、インサイド凹陥部50が位置している。アウトサイド凹陥部48及びインサイド凹陥部50は、屈曲面Fに位置している。瘤状突起40、42、44、46は、アウトソール14の屈曲性を阻害しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用される履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
磯釣りでは、釣り人は岩に登ったり、好ポイントを求めて歩いたり、跳躍したりの動作を行う。これらの動作において釣り人の靴は、岩に衝突し、岩と擦れ合う。衝突や擦動により、靴のアッパーは傷つく。損傷したアッパーは、釣り人の足を十分には保護しない。損傷が激しい靴は、もはや使用に耐えられない。
【0003】
強度に優れる材料からアッパーが構成されれば、損傷は抑制される。しかし、強度に優れる材料は、概して柔軟性に劣る。柔軟性に劣るアッパーは、足の屈曲を妨げる。このアッパーを備えた靴は、履き心地に劣る。
【0004】
特開2001−204506公報には、アッパーを覆うフード状の補強材を備えた釣り用履き物が開示されている。この補強材は、硬質の合成樹脂からなる。この補強材により、アッパーの損傷が防止される。
【特許文献1】特開2001−204506公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に開示された靴では、補強材が屈曲性を阻害する。この靴は、履き心地に劣る。本発明の目的は、アッパーの損傷が抑制され、かつ屈曲性に優れた釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る釣り用履き物は、アッパーとアウトソールとを備える。このアウトソールは、その側壁面に瘤状突起を備える。
【0007】
本発明に係る他の釣り用履き物は、アッパーとアウトソールとを備える。このアウトソールは、その側壁面のアウトサイドに、第一瘤状突起と、この第一瘤状突起と隣接する第二瘤状突起と、この第一瘤状突起と第二瘤状突起との間に位置するアウトサイド凹陥部とを備える。このアウトソールはさらに、その側壁面のインサイドに、第三瘤状突起と、この第三瘤状突起と隣接する第四瘤状突起と、この第三瘤状突起と第四瘤状突起との間に位置するインサイド凹陥部とを備える。このアウトサイド凹陥部及びインサイド凹陥部は、履き物の屈曲面に位置する。好ましくは、アウトサイド凹陥部及びインサイド凹陥部の深さは、1mm以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る釣り用履き物では、アウトソールの瘤状突起が岩に衝突する。この瘤状突起は、アッパーの岩への衝突及びアッパーと岩との擦動を防止する。この履き物では、アッパーの損傷が抑制される。この瘤状突起は、アッパーの屈曲性を阻害しない。この履き物は、履き心地にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る釣り用履き物2が示された正面図であり、図2はその平面図である。図1には、履き物2のアウトサイドが示されている。この履き物2は、アッパー4、ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10、紐12及びアウトソール14を備えている。図2では、紐12の図示が省略されている。
【0011】
アッパー4は、メッシュ状の生地からなる。アッパー4は、透水性である。このアッパー4は軽量であり、かつ柔軟である。このアッパー4は、屈曲性に優れている。アッパー4は、ハトメ16を備えている。このハトメ16には、紐12が通されている。アッパー4はまた、フラップ18も備えている。
【0012】
ヒールガード6は、アッパー4の踵近傍を覆っている。ヒールガード6は、硬質の合成樹脂からなる。図1に示されるように、ヒールガード6は開口20を備えている。図2に示されるように、ヒールガード6は左右一対のアーム22を備えている。アーム22は、着用者の足首の爪先側にまで延在している。アーム22は、その先端に貫通孔24を備えている。
【0013】
アウトサイドガード8は、アッパー4のアウトサイドを覆っている。アウトサイドガード8は、開口26を備えている。インサイドガード10は、アッパー4のインサイドを覆っている。図示されていないが、インサイドガード10もアウトサイドガード8と同様の開口を備えている。アウトサイドガード8及びインサイドガード10は、ヒールガード6と同様の硬質樹脂からなる。
【0014】
図3は、図1の釣り用履き物2が示された底面図である。図3には、右足用の履き物2が示されている。左足用の履き物2は、図3に示された形状が反転された形状を呈する。図3において、上側がアウトサイドであり、下側がインサイドである。この履き物2のアウトソール14は、ベース28と、多数のブロック30と、多数のスパイクピン32とを備えている。ベース28は、架橋ゴムからなる。ベース28には、耐摩耗性及び強度に優れたゴムが用いられる。ブロック30は、硬質樹脂からなる。スパイクピン32は、金属材料からなる。
【0015】
図4は、図3のIV−IV線に沿った拡大断面図である。この図4には、アッパー4及びアウトソール14と共に、インソール34が示されている。履き物2が、インソール34とアウトソール14との間にミッドソールを備えてもよい。図4に示されるように、スパイクピン32の、先端部36を除く大部分は、ブロック30に埋設されている。この埋設により、スパイクピン32がブロック30に堅固に固定されている。スパイクピン32の先端部36は、ブロック30から下方に突出している。この先端部36が地面に突き刺さることにより、履き物2のスリップが防止される。ブロック30の一部はベース28に埋設されている。この埋設により、ブロック30がベース28に堅固に固定されている。
【0016】
図1から明らかなように、アウトソール14は側壁面38を備えている。図1、図2及び図3から明らかなように、側壁面38は、第一瘤状突起40、第二瘤状突起42、第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46を備えている。これら瘤状突起40、42、44、46は、外向きに突出している。第一瘤状突起40及び第二瘤状突起42は、履き物2のアウトサイドに位置している。第二瘤状突起42は、第一瘤状突起40と隣接している。第一瘤状突起40と第二瘤状突起42との間には、アウトサイド凹陥部48が位置している。第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46は、履き物2のインサイドに位置している。第四瘤状突起46は、第三瘤状突起44と隣接している。第三瘤状突起44と第四瘤状突起46との間には、インサイド凹陥部50が位置している。
【0017】
この履き物2の製造では、金型にブロック30が配置され、さらにこの金型に未架橋ゴム組成物が充填される。ゴム組成物は加熱によって架橋反応を起こし、アウトソール14が成形される。成形と同時に、瘤状突起40、42、44、46が形成される。一方、アッパー4にヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10が接合される。接合は、縫合によって達成される。接合が、接着剤によってなされてもよい。次に、このアッパー4にアウトソール14が接合される。接合は、接着剤によって達成される。次に、アウトソール14にインソール34が積層され、このインソール34が接着剤によってアウトソール14に接合されて、履き物2が完成する。
【0018】
この履き物2が着用されるときは、まず着用者が足を履き物2に入れる。次に、ハトメ16及びアーム22の貫通孔24を通された紐12が締められて、縛られる。前述のようにアーム22は足首の爪先側にまで至っているので、紐12が締められることでアーム22がアッパー4を着用者の足首に強く押圧する。このとき、アーム22に働く張力はヒールガード6の全体に及ぶ。この張力により、ヒールガード6の直下のアッパー4は着用者の踵を強く押圧する。足首及び踵の押圧により、履き物2が足にフィットする。釣り場では着用者が激しい動作を行うこともあるが、足にフィットした履き物2はこの動作を妨げない。ヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10は硬質なので、履き物2の安定性に寄与する。さらに、ヒールガード6、アウトサイドガード8及びインサイドガード10は、アッパー4の保護にも寄与する。
【0019】
着用者が磯で歩行等の動作を行うと、履き物2が岩と衝突する。前述の通り瘤状突起40、42、44、46は外向きに突出しているので、この瘤状突起40、42、44、46がまず岩に衝突する。従って、アッパー4が岩と激しく衝突することがなく、アッパー4が岩と激しく擦れ合うこともない。この履き物2では、アッパー4の損傷が抑制される。換言すれば、瘤状突起40、42、44、46はアッパー4を保護する役割を果たす。瘤状突起40、42、44、46はアウトソール14に形成されているので、アッパー4の柔軟性を損なわない。この履き物2では、優れた屈曲性が維持される。
【0020】
瘤状突起40、42、44、46の強度は高いので、瘤状突起40、42、44、46が岩と衝突しても瘤状突起40、42、44、46の損傷は軽微である。瘤状突起40、42、44、46の損傷抑制の観点から、JIS−A硬度計で測定されたアウトソール14の硬度Hsは20以上80以下が好ましい。
【0021】
図3において二点鎖線Fで示されているのは、屈曲面である。着用者が履き物2を履いて歩行するとき、アウトソール14は屈曲面Fにおいて最も大きく変形する。図3から明らかなように、アウトサイド凹陥部48及びインサイド凹陥部50は、屈曲面Fに位置している。第一瘤状突起40及び第二瘤状突起42は、屈曲面Fを挟んで対峙している。第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46も、屈曲面Fを挟んで対峙している。換言すれば、屈曲面Fには瘤状突起40、42、44、46が位置していない。この履き物2では、瘤状突起40、42、44、46がアウトソール14の変形を阻害しない。この履き物2は、屈曲性に極めて優れる。
【0022】
図5(a)は図3の履き物2のアウトサイドの一部が示された拡大図であり、図5(b)は図3の履き物2のインサイドの一部が示された拡大図である。図5(a)において符号Doで示されているのは、アウトサイド凹陥部48の深さである。深さDoは、第一瘤状突起40及び第二瘤状突起42に引かれた共通接線Loと、アウトサイド凹陥部48の最深部との距離である。図5(b)において符号Diで示されているのは、インサイド凹陥部50の深さである。深さDiは、第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46に引かれた共通接線Liと、インサイド凹陥部50の最深部との距離である。アッパー4の保護の観点から、深さDo及び深さDiは1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。アウトソール14の軽量の観点から、深さDo及び深さDiは20mm以下が好ましい。
【0023】
図6は本発明の他の実施形態に係る釣り用履き物60が示された正面図であり、図7はその平面図である。この履き物60は、図1に示された履き物2と同様、アッパー4、ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10、紐12及びアウトソール62を備えている。アッパー4、ヒールガード6、アウトサイドガード8、インサイドガード10及び紐12の形状及び材質は、図1に示された履き物2のそれと同様である。
【0024】
図8は、図6の釣り用履き物60が示された底面図である。この履き物60のアウトソール62は、図3に示されたアウトソール14と同様、ベース64、多数のブロック30及び多数のスパイクピン32を備えている。ベース64、ブロック30及びスパイクピン32の材質は、図1に示された履き物2のそれと同様である。
【0025】
図6から明らかなように、アウトソール62は側壁面66を備えている。図6、図7及び図8から明らかなように、側壁面66は、第一瘤状突起40、第二瘤状突起42、第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46を備えている。側壁面66はさらに、多数の他の瘤状突起68も備えている。これら瘤状突起40、42、44、46、68は、外向きに突出している。第一瘤状突起40及び第二瘤状突起42は、履き物60のアウトサイドに位置している。第二瘤状突起42は、第一瘤状突起40と隣接している。第一瘤状突起40と第二瘤状突起42との間には、アウトサイド凹陥部48が位置している。第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46は、履き物60のインサイドに位置している。第四瘤状突起46は、第三瘤状突起44と隣接している。第三瘤状突起44と第四瘤状突起46との間には、インサイド凹陥部50が位置している。
【0026】
この履き物60では、第一瘤状突起40、第二瘤状突起42、第三瘤状突起44及び第四瘤状突起46と共に、他の瘤状突起68も、アッパー4の保護に寄与する。図8から明らかなように、この履き物60でも、屈曲面には瘤状突起40、42、44、46、68が位置していない。この履き物60では、瘤状突起40、42、44、46、68がアウトソール62の変形を阻害しない。この履き物60は、屈曲性に極めて優れる。この履き物60でも、屈曲性の観点から、アウトサイド凹陥部48の深さDo及びインサイド凹陥部50の深さDiは1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。アウトソール62の軽量の観点から、深さDo及び深さDiは20mm以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る履き物は、磯、船等の種々の釣り場において利用されうる。本発明に係る履き物が、ウェーダーに装着されてもよい。ブーツ又は地下足袋において、ソールに瘤状突起が設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の釣り用履き物が示された平面図である。
【図3】図3は、図1の釣り用履き物が示された底面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った拡大断面図である。
【図5】図5(a)は図3の履き物のアウトサイドの一部が示された拡大図であり、図5(b)は図3の履き物のインサイドの一部が示された拡大図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態に係る釣り用履き物が示された正面図である。
【図7】図7は、図6の釣り用履き物が示された平面図である。
【図8】図8は、図6の釣り用履き物が示された底面図である。
【符号の説明】
【0029】
2、60・・・釣り用履き物
4・・・アッパー
6・・・ヒールガード
8・・・アウトサイドガード
10・・・インサイドガード
14、62・・・アウトソール
22・・・アーム
28、64・・・ベース
30・・・ブロック
32・・・スパイクピン
34・・・インソール
38、66・・・側壁面
40・・・第一瘤状突起
42・・・第二瘤状突起
44・・・第三瘤状突起
46・・・第四瘤状突起
48・・・アウトサイド凹陥部
50・・・インサイド凹陥部
68・・・他の瘤状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーとアウトソールとを備えており、
このアウトソールが、その側壁面に瘤状突起を備えている釣り用履き物。
【請求項2】
アッパーとアウトソールとを備えており、
このアウトソールが、その側壁面のアウトサイドに、第一瘤状突起と、この第一瘤状突起と隣接する第二瘤状突起と、この第一瘤状突起と第二瘤状突起との間に位置するアウトサイド凹陥部とを備えており、
このアウトソールが、その側壁面のインサイドに、第三瘤状突起と、この第三瘤状突起と隣接する第四瘤状突起と、この第三瘤状突起と第四瘤状突起との間に位置するインサイド凹陥部とを備えており、
このアウトサイド凹陥部及びインサイド凹陥部が屈曲面に位置している釣り用履き物。
【請求項3】
上記アウトサイド凹陥部及びインサイド凹陥部の深さが1mm以上である請求項2に記載の釣り用履き物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−192190(P2006−192190A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9227(P2005−9227)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】