説明

釣り竿のグリップ構造

【課題】 コルクの握り感触の良さを生かしながら、グリップ全体として剛性を高め、魚信等の竿先の挙動に対する感知特性を向上させることのできる釣り竿のグリップ構造を提供する。
【解決手段】 竿素材1Aの外周面にコルク製のコア材3を取付固定するとともに、一方向に引き揃えた炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグテープ4を、コア材3の外周面に間隔を開けて巻回する。プリプレグテープ4を巻回したコア材3を竿素材1Aとともに焼成し、プリプレグテープ4をコア材3に溶着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿素材の外周面にコルク製のコア材を取付固定している釣り竿のグリップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コルク製のコア材の表面に、組紐を隙間無く巻回することによって、コア材を被覆し、被覆した組紐を通してコア材を握る構成を採っていた(特許文献1参照)。これによって、コア材を握った際に滑りを生ずることなく握れるという利点を有していた。
【0003】
【特許文献1】実開平5−2675号公報(段落番号〔0007〕、及び、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、コルク製のコア材を組紐によって、隙間無く覆ってグリップを形成している。この為に、コルクが持つ柔軟性のある握り感覚が十分に感知できず、コルク自体の握り感触の良さを生かし切れてなかった。
一方、コルクのコア材だけでグリップを構成すると、コルク自体が気泡を含んだ樹木から出来ているので、グリップ全体として剛性に欠ける面があり、グリップを通して竿先の動きを感知し難い面があった。
【0005】
本発明の目的は、コルクの握り感触の良さを生かしながら、グリップ全体として剛性を高め、魚信等の竿先の挙動に対する感知特性を向上させることのできる釣り竿のグリップ構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、竿素材の外周面にコルク製のコア材を取付固定するとともに、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成したプリプレグテープを、前記コア材の外周面に間隔を開けて巻回し、加熱溶着させてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
コルク製のコア材に対してプリプレグテープを巻回し、加熱溶着させた。これによって、加熱されたプリプレグテープのマトリックス樹脂の一部が溶け出し、コルク製のコア材の気泡内に入り込み、プリプレグテープとコア材との接着が行われ、かつ、強力な接着状態を現出する。
プリプレグテープは最終段階では硬くなる。一方、プリプレグテープは隣接するプリプレグテープとの間隔を開けて設けてある。したがって、プリプレグテープを施した部分は硬い部分となり、プリプレグテープを施していない部分は、コルク製のコア材自体が表出した軟らかい部分となる。
そうすると、グリップを握る釣り人の手は、コルク製のコア材自体が表出した軟らかい部分を通してグリップを握ることとなるので、手の掌等に痛みを感じることが少なく、軟らかいグリップの感触を得ることができる。
一方、プリプレグテープを施した部位は硬い部分となり、この硬い部分の存在によって、コア材全体の剛性が高まり、保形性が良好になる。これによって、グリップ自体の強度向上を図ることができるとともに、竿先の動きを捉えることが容易になった。
【0008】
〔効果〕
コア材の表面に巻回するものとして、プリプレグテープを選択し、かつ、隣接するプリプレグテープを間隔を開けて巻回する構成により、握りの感触が柔らかでかつグリップ全体としては剛性を高め、竿先の動きを感知し易い釣り竿のグリップ構造を提供できるに至った。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、竿素材の外周面にコルク製のコア材を取付固定するとともに、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成したプリプレグテープを、前記コア材の外周面に間隔を開けて巻回し、プリプレグテープを巻回したコア材を竿素材とともに焼成し、プリプレグテープを前記コア材に溶着固定する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
基本的作用効果は、請求項1に係る発明と同様である。しかも、次ぎのような作用効果も奏する。つまり、コルク製のコア材の表面に巻回するものとしてプリプレグテープを採用することによって、特に接着剤を使用することなく、コルク製のコア材の表面にプリプレグテープを巻回しその状態で焼成することにより、プリプレグテープ内のマトリックス樹脂を接着剤に兼用でき、かつ、プリプレグテープをコア材に固定するために接着剤や接着作業を必要としない。
【0011】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1又は2に係る発明において、前記コア材の端部と竿素材との境界位置にプリプレグ製の端面処理体が施こされている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
端面処理体によってコルク製のコア材の端部が損傷していくことを未然に防止できるとともに、端面処理体がプリプレグであるので、コア材に巻回されたプリプレグテープを溶着する際に同時に焼成して溶着することができ、接着固定の簡素化を図ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項1〜3の内のいずれか一つに係る発明において、前記プリプレグテープを、前記竿素材の軸線に対して傾斜する状態に配置して互いに交差する状態に編み組みしてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
プリプレグテープを竿素材の軸線に対して傾斜状態に配置し、しかも交差状態で設けているので、竿素材の軸線に対して傾斜する方向に作用する剪断力に対してもプリプレグテープが対抗力を発揮し、竿軸線方向に沿った荷重またはその竿軸線に直交する方向に作用する荷重だけに対抗力を発揮するコア材ではなくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ヘラ竿、ルアー竿等の釣り竿のグリップ構造について説明する。図1及び図2に示すように、元竿1の竿尻側端部にグリップ2を設けてある。グリップ2は、元竿1の竿素材1Aの外周面に接着剤を介して固着されているコア材3と、コア材3の外側に装着されているプリプレグテープ4及び尻栓6とで構成してある。
【0016】
コア材3の構成に付いて説明する。図1及び図2に示すように、コア材3はコルクを材料として成形されたもので、二つの紡錘型の外形を呈している。軸線位置には貫通孔3Aが形成され、元竿1の竿素材1Aにその貫通孔3A部分を外嵌させることによって、取付固定される。
【0017】
竿素材1Aについて説明する。使用する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の合成樹脂繊維を使用する。一方、マトリックス樹脂としては、エポキシ、フェノール等の熱硬化性樹脂、或いは、PET等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0018】
上記材料によって竿素材1Aを製造する工程を説明する。図示はしていないが、強化繊維を一方向に引き揃え、引き揃えた強化繊維群に熱硬化性樹脂を含浸させて、プリプレグシートを構成し、プリプレグシートを機能に応じて所定形状に裁断する。所定形状に裁断したメインパターン、及び、補助パターンを順次マンドレルに巻回し、マンドレルに巻回したプリプレグ製の筒状体を成形テープで巻回して、焼成する。焼成後、マンドレルをプリプレグ製の筒状体より抜き出し、筒状体を所定長さに裁断し、仕上加工を施して竿素材1Aを構成する。
図1及び図2に示すプリプレグテープ4は、前記したプリプレグシートを形成し、プリプレグシートを幅の狭いテープに裁断して形成する。
【0019】
以上のような構成よりグリップ構造を構成する。図1及び図2に示すように、竿素材1Aの竿尻側端部の所定位置に、二つの紡錘型を繋ぎ合わせた形状のコルク製のコア材3を外嵌して接着固定し、グリップ2を構成する。グリップ2の外周形状は、グリップ2の竿先側半部分と竿尻側半部分とに紡錘型の外形形状を呈し、グリップ2を握る手の安定化を図っている。
【0020】
次に、図1及び図2に示すように、プリプレグテープ4をコア材3の外周面に巻回するに、プリプレグテープ4の隣接するもの同士がプリプレグテープ4の幅よりは広い間隔で巻回されるとともに、竿軸線に対して傾斜する螺旋状態にかつ互いに交差する状態に巻回されている。
【0021】
また、図1及び図2に示すように、コア材3の竿先端及び竿尻端には、コア材3の端部と竿素材1Aとの境界位置に端面処理体7としてのプリプレグが巻回してある。
プリプレグテープ4を巻回した後には、図示してはいないが、竿素材1Aとコア材3とに亘ってポリエステル製の成形テープを螺旋状に巻回し、成形テープを巻回した竿素材1Aとコア材3とを焼成する。
【0022】
焼成後は、成形テープを剥離し、再度、竿素材1A、及び、コア材3の表面処理を行う。
以上のように、プリプレグテープ4をコア材3の表面に巻回した状態で焼成するところから、プリプレグテープ4は熱硬化性樹脂が高温で硬化する前のやや低いゲル化温度において溶融するので、一部溶融樹脂がコルクの気泡内に浸入し、コア材3と強力に溶着する。
【0023】
また、図2に示すように、プリプレグテープ4は一部が硬化する過程で、コルク表面の軟らかい層に食い込むこととなり、一部がコルク表面から僅かに突出し、他の一部が沈み込む状態となって、存在する。したがって、プリプレグテープ4が適度な滑り止め効果を発揮しながら、握る手の掌への影響を抑制することができる。
このような状態でプリプレグテープ4がコア材3に接着することとなるので、プリプレグテープ4を巻回した部分は剛性の高い状態を呈し、プリプレグテープ4を巻回していない部分は、コルク層が表出する軟らかい部分となる。
【0024】
このような構成によって、コルク層で手に圧迫力を与えることの少ないグリップとしての軟らかい感触を維持しながら、プリプレグテープ4を施した部分でコルクをしっかりした形状に保持するものである。
コア材3の端部に施されたプリプレグ製の端面処理体7は、コア材3の端部と竿素材1Aとの密着性を高め、崩れ易いコルク端部の崩れ落ちを抑制する。
そして、端面処理体7がコア材3の表面に溶着されているプリプレグテープ4に重ね合わせられると、端面処理体7とプリプレグテープ4とが繋がり、竿素材1Aに巻回されている端面処理体7とプリプレグテープ4を介してよりよく竿先側の挙動を感知し易くなる。
【0025】
〔別実施形態〕
(1) 端面処理体7としては、図3に示すように、紐材8をコア材3の端部と竿素材1Aとの境界部位に巻回した状態で樹脂塗料9で固める構成を採ることができる。
(2) プリプレグテープ4としては、熱可塑性樹脂であってもよい。
(3) プリプレグテープ4の巻回方向は、竿軸線に対して平行及び直交する方向でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】グリップの全体側面図
【図2】グリップの全体縦断側面図
【図3】端面処理体を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0027】
1A 竿素材
3 コア材
4 プリプレグテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿素材の外周面にコルク製のコア材を取付固定するとともに、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成したプリプレグテープを、前記コア材の外周面に間隔を開けて巻回し、加熱溶着させてある釣り竿のグリップ構造。
【請求項2】
竿素材の外周面にコルク製のコア材を取付固定するとともに、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成したプリプレグテープを、前記コア材の外周面に間隔を開けて巻回し、プリプレグテープを巻回したコア材を竿素材とともに焼成し、プリプレグテープを前記コア材に溶着固定する釣り竿のグリップ構造の製造方法。
【請求項3】
前記コア材の端部と竿素材との境界位置にプリプレグ製の端面処理体が施こされている請求項1又は2記載の釣り竿のグリップ構造。
【請求項4】
前記プリプレグテープを、前記竿素材の軸線に対して傾斜する状態に配置して互いに交差する状態に編み組みしてある請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の釣り竿のグリップ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−187942(P2008−187942A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24460(P2007−24460)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】