説明

釣竿用穂先の製造方法

【課題】軽量化の促進を図ったうえで、高強度化の促進を図り得、且つ、簡便にして容易に高精度な剛性バランスを実現した釣竿を提供する。
【解決手段】パイプ部材11の一端部から芯金12上には、強化繊維プリプレグである第1のプリプレグ131が巻回された第1のプリプレグ層13が形成される。この際、中実部10の元端部と略面一となるような状態に巻回する。そして、中実部10の元端部にオーバラップする一端部から上記第1のプリプレグ層13上には、強化繊維プリプレグである第2のプリプレグ141を、例えば階段状に巻回した第2のプリプレグ層14が積層形成されて中空部15を連結形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、魚釣用釣竿に係り、特に、その穂先の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣竿用穂先は、その先側における調子が柔らかく、しかも大きな撓みに対応可能な剛性を有し、その元側においては、調子が硬く、軽量であることが要求される。そのため、このような釣竿用穂先は、先側に中実部である中実杆を配し、この中実杆の元側に中空部である中空竿管を連結した竿管構造のものが用いられている。
【0003】
ところで、このような釣竿用穂先としては、中実杆と中空竿管を別体で形成して、それぞれに切削加工等による削り出し等により結合部を形成して、相互の結合部を接着して連結し、その後、接着部位に糸巻き・糸止めを施して所望の強度に形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところが、上記釣竿用穂先では、その構造上、中実杆の材料により、調子が定められるために、中空杆との間における剛性の連続性を出すのが困難であるという問題を有する。また、これによれば、中実杆と中空竿管との連結部位の強度を確保するために糸巻き・糸止め工程が必要となることで、その製作性が劣るという問題を有する。
【0005】
そこで、中実杆の元端に補強部材を形成して、この補給部材に芯金を対向配置し、中実杆の元端部から芯金上にプリプレグを巻き付けて穂先を形成するようにして、剛性バランスを実現したうえで、糸巻き・糸止め作業を行うことなく連結部位の強度を得るように構成したものが提案されている。
【特許文献1】実開昭60―18048号公報
【特許文献2】特開平8―289701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記釣竿用穂先では、中実杆の補強部材に芯金を対向配置した状態でプリプレグを巻き付けることとなるために、その位置合わせが面倒であるという問題を有する。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、軽量化の促進を図ったうえで、高強度化の促進を図り得、且つ、簡便にして容易に高精度な剛性バランスを実現し得るようにした釣竿用穂先及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、中実部の元端に同軸的に設けられるパイプ部材と、一端部が前記パイプ部材及び前記中実部の元端部上に被着された前記中実部に連結形成される中空部とを備えて釣竿用穂先を構成した。
【0009】
上記構成によれば、中実部は、そのパイプ部材に対して芯金が挿入されると、該芯金がパイプ部材を介して位置決めされ、この状態で、これら中実部の一端部、パイプ部材及び芯金上にプリプレグを巻回し、その後、芯金をパイプ部材及び中空部から引き抜くことにより、中空部がパイプ部材を介して連結形成される。これにより、軽量化を確保したうえで、中実部と中空部との連結部位に捩れの発生しない、高強度な結合が簡便にして容易に実現されると共に、全体としての剛性バランスの調整が容易に実現される。
【0010】
また、この発明の釣竿用穂先の製造方法は、パイプ部材の一端部に芯金の先端を引き抜き可能に内挿し、前記パイプ部材及び芯金上にプリプレグを巻回して第1のプリプレグ層を形成する第1の工程と、前記パイプ部材の他端部に中実部の元端に形成した小径部を接合し、前記中実部の元端部から前記第1のプリプレグ層上にプリプレグを巻回して少なくとも一層の第2のプリプレグ層を積層した中空部を前記中実部に連結形成するて第2の工程とを備えて構成した。
【0011】
上記構成によれば、パイプ部材の一端部に芯金の先端部を内挿することにより、該芯金が中実部に対してパイプ部材を介して位置決めされ、この状態で、これらパイプ部材及び芯金上にプリプレグを巻回して第1のプリプレグ層を形成し、その後、パイプ部材の他端部に中実部の小径部を接合し、中実部の元端部から第1のプリプレグ層上にプリプレグを巻回して第2のプリプレグ層を積層した中空部を、中実部に連結形成する。これにより、軽量化を確保したうえで、中実部と中空部との連結部位に捩れが発生することなく、高強度な結合が実現されると共に、全体としての剛性バランスの調整が実現される釣竿用穂先を、簡便にして容易に製作することが可能となる。
【0012】
また、この発明の釣竿用穂先の製造方法は、中実部の元端に小径部を突設形成し、この中実部の小径部をパイプ部材の一端部に内挿する第1の工程と、前記パイプ部材の他端に芯金の先端を内挿し、前記中実部の元端部から前記パイプ部材上にプリプレグを巻回して第1のプリプレグ層を形成し、この第1のプリプレグ層上にプリプレグを巻回して少なくとも一層の第2のプリプレグ層を積層した中空部を前記中実部に連結形成する第2の工程とを備えて構成した。
【0013】
上記構成によれば、中実部の小径部をパイプ部材の一端部に内挿し、このパイプ部材の他端部に芯金の先端を内挿することにより、中実部と芯金がパイプ部材を介して位置決めされ、この状態で、これら中実部の元端部近傍からパイプ部材上にプリプレグを巻回して第1のプリプレグ層を形成し、その後、中実部の元端部から第1のプリプレグ層上にプリプレグを巻回して第2のプリプレグ層を積層した中空部を、中実部に連結形成する。これにより、軽量化を確保したうえで、中実部と中空部との連結部位に捩れが発生することなく、高強度な結合が実現されると共に、全体としての剛性バランスの調整が実現される釣竿用穂先を、簡便にして容易に製作することが可能となる。
【0014】
また、この発明の釣竿用穂先の製造方法は、中実部の元端にパイプ部材を同軸的に形成し、この中実部のパイプ部材に芯金の先端を引き抜き可能に内挿する第1の工程と、前記中実部の元端部からパイプ部材及び芯金上にプリプレグを巻回してプリプレグ層を被着した中空部を前記中実部に連結形成する第2の工程とを備えて構成した。
【0015】
上記構成によれば、中実部のパイプ部材に芯金の先端を内挿することにより、中実部と芯金がパイプ部材を介して位置決めされ、この状態で、これら中実部の元端部近傍からパイプ部材、芯金上にプリプレグを巻回して少なくとも一層のプリプレグ層を被着して中空部を、中実部に連結形成する。これにより、軽量化を確保したうえで、中実部と中空部との連結部位に捩れが発生することなく、高強度な結合が実現されると共に、全体としての剛性バランスの調整が実現される釣竿用穂先を、簡便にして容易に製作することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、軽量化の促進を図ったうえで、高強度化の促進を図り得、且つ、簡便にして容易に高精度な剛性バランスを実現し得るようにした釣竿用穂先及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、この発明の一実施の形態に係る釣竿用穂先を示すもので、中実部10は、その先端方向が先細りに形成される。そして、この中実部10の元端部には、小径部101が同軸的に突出されて形成される(図2参照)。この中実部10は、例えばNT合金等の金属材料、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の材料を金型等を用いて形成される。ここで、中実部10は、その小径部101の先端が元端となる。
【0019】
上記中実部10の小径部101は、パイプ部材11の一端部に内挿される。このパイプ部材11は、ステンレス、NT合金、アルミニウム、真鍮、チタン、マグネシウム等の金属材料やカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維等の材料を用いてパイプ状の所望の寸法に形成され(図3参照)、その一端部に上記中実部10の小径部101が内挿されて接着等により接合される。
【0020】
また、パイプ部材11は、その他端部にマンドレルと称する芯金12に設けた嵌合部121が離形剤及び樹脂材料を用いて引き抜き可能に内挿される。この芯金12は、先端部がパイプ部材11の外径と略同寸法に形成され、その先端に上記嵌合部121がパイプ部材11の内径部位に内挿可能に形成される。これにより、芯金12は、その嵌合部121が、パイプ部材11に内挿された状態で、その外周壁がパイプ部材11の外径と略面一となる。そして、パイプ部材11は、その一端部に中実部10の小径部101が内挿されると共に、その他端部に芯金12の嵌合部121が内挿されると、これら中実部10と芯金12との相互間を直線状に位置決めする。
【0021】
ここで、パイプ部材11の一端部から芯金12上には、強化繊維プリプレグである第1のプリプレグ131が巻回された第1のプリプレグ層13が形成される(図4参照)。この際、中実部10の元端部と略面一となるような状態に巻回する。そして、中実部10の元端部にオーバラップする一端部から上記第1のプリプレグ層13上には、強化繊維プリプレグである第2のプリプレグ141を、例えば階段状に巻回した第2のプリプレグ層14が積層形成されて中空部15が連結形成される。
【0022】
上記第1及び第2のプリプレグ131、141を形成する強化繊維プリプレグは、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の樹脂が含浸されて形成される。
【0023】
上記構成において、パイプ部材11の一端部には、芯金12の嵌合部121が、例えば離形剤と樹脂が塗布されて引き抜き可能に挿入されて仮止めされ、この状態で、パイプ部材11及び芯金12上に第1のプリプレグ131が巻回されて第1のプリプレグ層13が形成される。
【0024】
次に、第1のプリプレグ層13が形成されたパイプ部材11の他端部には、中実部10に設けた小径部101が、例えば接着剤を用いたり、樹脂を使って熱硬化させることで接合される。ここで、中実部10は、パイプ部材11を介して芯金12と位置決めされ、その元端部近傍からパイプ部材11及び芯金12上の第1のプリプレグ層13上にわたって第2のプリプレグ141が、例えば階段状に巻回されて第2のプリプレグ層14が積層される。この状態で、第2のプリプレグ層14上には、テーピングが施されて焼結処理される。これにより、中実部10及び中空部15は、捩れたりすること無く、略直線状に連結形成される。その後、芯金12が、パイプ部材11及び中空部15から引き抜かれて製作作業が完了される。
【0025】
上記釣竿用穂先は、中実部10と中空部15とを、その結合部位にパイプ部材11を介在して連結形成するように構成した。これによれば、中実部10と中空部15との間に介在したパイプ部材11により、中実部10の軽量化を図ったうえで、その連結部位における捩れの発生が防止されると共に、その強度が高められる。
【0026】
また、これによれば、パイプ部材11により、プリプレグの均一な巻回が可能となり、又、従来のような糸巻き・糸止めを連結部位に施すことなく、所望の強度を確保することが可能となることにより、細身を実現したうえで、高精度な剛性バランスを容易に実現することが可能となる。さらに、移動ガイドを所望の位置に配置することも可能となる。
【0027】
また、上記釣竿用穂先の製造方法は、中実部10の元端の小径部101をパイプ部材11の一端部に内挿した状態で、該パイプ部材11の他端に芯金12を挿入することにより、該芯金12が中実部10に対してパイプ部材11を介して位置決めされ、この状態で、これら中実部10の一端部、パイプ部材11及び芯金12上に第2のプリプレグ141を巻回して中空部15が連結形成され、その後、芯金12がパイプ部材11及び中空部15から引く抜くように構成した。これによれば、軽量化を確保したうえで、中実部10と中空部15との連結部位に捩れが発生することなく、高強度な結合が可能であると共に、全体としての剛性バランスの調整が可能な釣竿用穂先を、簡便にして容易に製作することが可能となる。
【0028】
また、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、例えば図5に示すように構成しても、略同様の効果が期待される。但し、図5においては、上記図1乃至図4と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
即ち、この図5に示す実施の形態では、中実部10の元端に小径部101を突設形成し、この中実部10の小径部101をパイプ部材16の一端部に内挿し、このパイプ部材16の他端部に芯金12の先端の嵌合部121を内挿し、中実部10の元端部からパイプ部材16上に第1のプリプレグ171を巻回して第1のプリプレグ層17を形成し、この第1のプリプレグ層17上に第2のプリプレグ181を巻回して第2のプリプレグ層18を積層した中空部19を上記中実部10に連結形成する。この場合、パイプ部材16は、その外径が中実部10の最大径と略同形状に形成されるものが用いられる。
【0030】
なお、上記各実施の形態では、第1のプリプレグ層13,17上に第2のプリプレグ層14,18を一層積層形成するように構成した場合で説明したが、これに限ることなく、複数層を積層形成するように構成することも可能である。
【0031】
また、上記各実施の形態では、中実部10と中空部19とを、パイプ部材16を介在して連結形成するよう構成した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、例えば中実部の元端にパイプ状のパイプ部材を同軸的に一体的に形成し、このパイプ部材に芯金の先端に形成した嵌合部を引き抜き可能に内挿して、中実部の元端に結合部を介在して中空部を連結形成するように構成することも可能で、略同様の効果が期待される。
【0032】
この中実部の元端にパイプ部材を一体的に形成するように構成した場合は、例えば中実部の結合部に芯金の先端を引き抜き可能に内挿して仮止して、中実部の元端部からパイプ部材、芯金上に略同様にプリプレグを巻回して少なくとも一層のプリプレグ層を形成し、その後、芯金を引き抜いて中空部を中実部に連結形成する。
【0033】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0034】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施の形態に係る釣竿用穂先の要部を分解して示した分解図である。
【図2】図1の中実部を取り出して示した断面図である。
【図3】図1のパイプ部材を取り出して示した断面図である。
【図4】図1の釣竿用穂先の製造方法を説明するために示した断面図である。
【図5】この発明の他の実施の形態に係る釣竿用穂先の製造方法を説明するために示した断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10…中実部、101…小径部、11,16…パイプ部材、12…芯金、121…嵌合部、13,17…第1のプリプレグ層、131,171…第1のプリプレグ、14,18…第2のプリプレグ層、141,181…第2のプリプレグ、15,19…中空部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ部材の一端部に芯金の先端を引き抜き可能に内挿し、前記パイプ部材及び芯金上にプリプレグを巻回して第1のプリプレグ層を形成する第1の工程と、
前記パイプ部材の他端部に中実部の元端に形成した小径部を接合し、前記中実部の元端部から前記第1のプリプレグ層上にプリプレグを巻回して少なくとも一層の第2のプリプレグ層を積層した中空部を前記中実部に連結形成する第2の工程と、
を具備することを特徴とする釣竿用穂先の製造方法。
【請求項2】
中実部の元端に小径部を突設形成し、この中実部の小径部をパイプ部材の一端部に内挿する第1の工程と、
前記パイプ部材の他端に芯金の先端を内挿し、前記中実部の元端部から前記パイプ部材上にプリプレグを巻回して第1のプリプレグ層を形成し、この第1のプリプレグ層上にプリプレグを巻回して少なくとも一層の第2のプリプレグ層を積層した中空部を前記中実部に連結形成する第2の工程と、
を具備することを特徴とする釣竿用穂先の製造方法。
【請求項3】
中実部の元端にパイプ部材を同軸的に形成し、この中実部のパイプ部材に芯金の先端を引き抜き可能に内挿する第1の工程と、
前記中実部の元端部からパイプ部材及び芯金上にプリプレグを巻回して少なくとも一層のプリプレグ層を被着した中空部を前記中実部に連結形成する第2の工程と、
を具備することを特徴とする釣竿用穂先の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−60916(P2009−60916A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281785(P2008−281785)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【分割の表示】特願2004−99275(P2004−99275)の分割
【原出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】