説明

長尺物のサポート補強構造

【課題】簡素かつ軽量な構造で剛性を高めることができるうえ、補強処理を簡単な施工とすることができる。
【解決手段】サポート補強構造1Aは、天井よりダクトを支持するためのサポート3の補強構造であり、サポート3の外周に接着層7を介して設けられた繊維補プレート6(6a、6b)を備えている。繊維補強プレート6(6a、6b)は、炭素繊維を一方向に並べて樹脂材を含有させたものであり、比較的に軽量かつ高強度・高剛性のもとなっており、サポート3の外周形状に合わせて成形された板状成形体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ダクト、配管、ケーブルトレイ、電線管などの長尺物を支持するサポートの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物などに配設されるダクト、配管、ケーブルトレイ、電線管などの長尺物を支持するサポートの補強方法として、別のサポートを追設したり、既存サポートに対してブレースやリブを適宜箇所に溶接補強しているのが一般的となっている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、トラス構造物の既設部材(サポートに相当)を添え材で補強する方法であって、既存部材の山形鋼の一対のフランジの開放端を閉合して閉断面を形成するようにして、補強部材としての山形鋼を添設し、それらの外周を繊維シートで巻き付ける補強方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のサポートの補強技術においては、以下のような問題があった。
すなわち、既存のサポートを補強する場合には、ブレース、リブなどの補強部材を補強施工箇所に搬入する必要があり、とくに補強部材が鋼材である場合には重量もあり、搬入に手間がかかり、多大な時間を要していた。
また、既存のサポートに対して溶接により補強処理を施す場合には、準備にかかる段取りや養生に手間がかかるうえ、前記長尺物が延設された狭隘部での作業では溶接機器などが作業場所に入らなく、溶接困難箇所が発生するという不具合があった。
さらに、サポートによる支持対象物(長尺物)がダクトである場合には、補強処理が必要なダクトの近傍に設置されている機器への悪影響(例えば、ノイズによる誤動作)を防止するために、電気を用いた機械加工や溶接・溶断作業が制限されるという問題があり、その点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡素かつ軽量な構造で剛性を高めることができるうえ、補強処理を簡単な施工とすることができる長尺物のサポート補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る長尺物のサポート補強構造では、被支持部より長尺物を支持するためのサポートの補強構造であって、サポートの外周に接着層を介して設けられた繊維補強材を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明では、繊維補強材をサポートの外周に接着剤などによって貼り付けて接合するといった溶接工法に拠らない補強構造により、サポートの肉厚を増大させて剛性を高めた補強を行うことができる。
また、狭い箇所での作業で溶接機器などが入らないような溶接困難箇所による施工条件であっても、溶接工法を採用することなく、容易に且つ確実にサポートを補強することがき、補強処理の施工に要する労力と時間とを軽減することができる。
さらに、繊維補強材に比較的に軽量な板状部材やシート状の部材を採用することが可能となるので、サポート全体の重量の増加を抑制することができ、補強処理の施工時における取り扱いを容易なものとすることができる。
【0008】
また、本発明に係る長尺物のサポート補強構造では、繊維補強材は、サポートの外周形状に合わせて成形された板状成形体からなることが好ましい。
本発明では、繊維補強材を板状成形体とすることで、取り扱う部材が比較的に軽量となるので、補強処理の施工が容易になる利点がある。しかも、例えばH型鋼、L型鋼、溝形鋼などのサポートの角部に合わせた適宜な形状で成形することで、さらに補強処理の施工効率の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係る長尺物のサポート補強構造では、繊維補強材は、サポートの外周形状に沿って貼り合わされるシート状の部材からなることが好ましい。
本発明では、繊維補強材をシート状の部材とすることで、取り扱う部材が比較的に軽量となるので、補強処理の施工が容易になる利点がある。しかも、例えばH型鋼、L型鋼、溝形鋼などのサポートの形状に合わせて容易に貼り付けることができるので、さらに補強処理の施工効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る長尺物のサポート補強構造では、サポートは、被支持部に対して定着部を介して固定されてなり、繊維補強材は、定着部とサポートとにわたって設けられていることがより好ましい。
この構成によれば、被支持部に対するサポートの基端部を補強することができるので、より効果的にサポート全体の剛性をより高めることができる。
【0011】
また、本発明に係る長尺物のサポート補強構造では、サポートは、その一部に凹部又は空胴部を有し、凹部又は空胴部に硬化補強材が充填された中実構造体であってもよい。
これにより、凹部又は空胴部を有するサポートであっても、溶接工法を用いることなく中実構造体を形成することができ、さらに中実構造体の外周に繊維補強体を設けることで、サポート全体の剛性を高めることができる。
【0012】
また、本発明に係る長尺物のサポート補強構造では、サポートは、被支持部より下方に延びる一対の縦材と、縦材の下端同士を連結する横材とからなり、長尺物が横材によって下方から支持される構成をなし、長尺物の上方で縦材同士を連結する梁部材を備える構成であってもよい。
本発明では、サポートと梁部材とによってラーメン構造を形成することができるので、サポート全体の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の長尺物のサポート補強構造によれば、簡素かつ軽量な構造でサポートの剛性を高めることができるうえ、既存のサポートに対しての補強処理を簡単な施工とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるサポート補強構造1Aを示す一部破断斜視図である。
【図2】図1に示すA−A線矢視図である。
【図3】第2の実施の形態によるサポート補強構造1Bを示す水平断面図である。
【図4】第3の実施の形態によるサポート補強構造1Cを示す水平断面図である。
【図5】第4の実施の形態によるサポート補強構造1Dを示す水平断面図である。
【図6】第5の実施の形態によるサポート補強構造1Eを示す水平断面図である。
【図7】(a)は第6の実施の形態によるサポート補強構造1Fを示す水平断面図、(b)は施工方法の一例を示す図である。
【図8】第7の実施の形態によるサポート補強構造1Gを示す斜視図である。
【図9】図8に示す梁部材20の構造の水平断面図である。
【図10】第8の実施の形態によるサポート補強構造1Hを示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による長尺物のサポート補強構造について、図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
本第1の実施の形態によるサポート補強構造1Aは、ダクト1(長尺物)を支持するサポート3の外周に対して繊維補強プレート6(繊維補強材)を設けて補強したものである。ここで、ダクト1は、プラント設備の制御室の排気を目的として配設され、サポート3によって支持された状態で天井2(被支持部)に沿って延設されている。
【0016】
ダクト1は、断面形状が矩形状の角ダクトであり、比較的、薄肉の鋼板からなる4つのダクト壁によって角部を介して連続する閉断面となり、このダクト壁に囲まれた空間が排気流路Rとなっている。
【0017】
図1および図2に示すように、サポート3は、H型鋼からなり、定着板5(定着部)を介して天井2に固定されている。具体的には、ダクト1の左右両側に配置される一対の縦材31、31と、これら縦材31、31の下端同士を連結する横材32とからなる。つまり、ダクト1は、横材32によって下方より支持された状態となっている。
サポート3のウェブ3aおよびフランジ3bの各表面には、繊維補強プレート6がエポキシ系の浸透接着樹脂などからなる接着層7によって一体的に固着されている。
【0018】
ここで、サポート3の縦材31の上端を固定した定着板5は、平面視で四角形状の鋼板であって、四隅の位置でアンカーボルト4、4、…によって天井2に固定されている。
【0019】
繊維補強プレート6(6a、6b)は、炭素繊維を一方向または多方向に並べて樹脂材を含有させてなる板状成形体であり、比較的に軽量かつ高強度・高剛性のもとなっており、樹脂材として例えばエポキシ樹脂などを用いることができる。
サポート3に接合される繊維補強プレート6としては、サポート3の縦材31および横材32のウェブ3aとフランジ3bによって囲われる凹部3dの3面それぞれに設けられる符号6aに示す板状のプレートと、フランジ3bの外面部分に設けられる符号6bの板状のプレートからなり、それぞれが縦材31および横材32の長手方向(軸方向)の長さ寸法と略等しい長さだけ延在している。なお、H型鋼材のサポート3の厚み部3cには、繊維補強プレート6は配設されていない。
【0020】
接着層7は、サポート3と繊維補強プレート6との間に形成されており、エポキシ系の接着剤が乾燥硬化してなっている。
【0021】
このようなサポート補強構造1Aは、ダクト1を支持するサポート3に対して、事後的に繊維補強プレート6を付加して強度の向上を図る構成となっている。
そして、本サポート補強構造1Aの施工手順は、ダクト1内の排気を継続させながら、このダクト1を支持した状態のサポート3に対して、以下のようにして行われる。
【0022】
すなわち、繊維補強プレート6a、6bの各面における貼付け部分を手作業で機械研磨又は化学研磨といった下地処理を施した後に、この下地処理面に接着層7となるエポキシ系の接着剤を塗布し、予め貼付け部分の大きさに形成した繊維補強プレート6a、6bを所定部分に貼付けて施工が終了し、サポート補強構造1Aを得る。さらに具体的な施工方法として、接着層7の塗布前において、エポキシ樹脂によるプライマー処理を施し、その樹脂厚によりサポート3表面の凹凸を処理する。
また、接合した繊維補強プレート6a、6bに対してエポキシ系の含有接着樹脂でコーティングし、さらにアクリルウレタン樹脂等の表面仕上げ剤で表面仕上げを行うことで、非透水層が形成され、塩害対策としての効果を得ることが可能となる。
【0023】
このように、本サポート補強構造1Aでは、繊維補強プレート6a、6bをH型鋼からなるサポート3の外周に接着剤によって貼り付けて接合するといった溶接工法に拠らない補強構造により、サポート3の肉厚を増大させて剛性を高めた補強を行うことができる。
また、狭い箇所での作業で溶接機器などが入らないような溶接困難箇所による施工条件であっても、溶接工法を採用することなく、容易に且つ確実にサポート3を補強することができ、補強処理の施工に要する労力と時間とを軽減することができる。
さらに、繊維補強プレート6に比較的に軽量な板状成形体からなる部材を採用することで、サポート3全体の重量の増加を抑制することができ、補強処理の施工時における取り扱いを容易なものとすることができる。
【0024】
上述した本第1の実施の形態による長尺物のサポート補強構造では、簡素かつ軽量な構造でサポート3の剛性を高めることができるうえ、既存のサポート3に対しての補強処理を簡単な施工とすることができる。
【0025】
次に、本発明の長尺物のサポート補強構造による他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0026】
(第2の実施の形態)
図3に示すように、第2の実施の形態によるサポート補強構造1Bは、上述した第1の実施の形態と同様でサポート3の凹部3dの二つの内角部それぞれに、断面視L字形状の繊維補強プレート6(6c)を接着層7を介して配置させた構造となっている。ここで、繊維補強プレート6cおよび接着層7の材料、サポート3の構造は、第1の実施の形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
なお、本実施形態による補強処理の施工は、上述した第1の実施の形態と同様の手順により行うことができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0027】
本第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるうえ、予め凹部3dに合わせた所定寸法のL字形状の繊維補強プレート6cを成形しておくことで、現場での施工が容易となるので、さらに補強処理の施工効率の向上を図ることができる。
なお、凹部3d内において繊維補強プレート6c、6c同士の間に形成される隙間sは、別のシート状の繊維補強材(図3で二点鎖線)によって閉塞することも可能である。
【0028】
(第3の実施の形態)
図4に示すように、第3の実施の形態によるサポート補強構造1Cは、上述した第2の実施の形態のL字状の繊維補強プレート6cに代えて、断面視コ字形状をなす繊維補強プレート6(6d)を接着層7を介して配置させたものである。
なお、本実施形態による補強処理の施工は、上述した実施の形態と同様の手順により行うことができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0029】
本第3の実施の形態によれば、上述した第2の実施の形態と同様の効果を得ることができるうえ、予め凹部3dに合わせてL字形状となるように繊維補強プレート6dを成形しておくことで、現場での施工が容易となるので、さらに補強処理の施工効率の向上を図ることができる。
【0030】
(第4の実施の形態)
図5に示す第4の実施の形態によるサポート補強構造1Dは、L型鋼を用いたサポート3Aに対して繊維補強プレート6を設けて補強したものである。サポート3Aの形状は、上述した図1に示す一対の縦材31、31と横材32とを枠組みした同様の構成である。
具体的にサポート補強構造1Dは、サポート3Aの内角側L字面3eに合うL字形状の繊維補強プレート6eを接着層7を介して配置させるとともに、外角側L字面3fに合うL字形状の繊維補強プレート6fを接着層7を介して配置させている。なお、本実施形態による補強処理の施工は、上述した実施の形態と同様の手順により行うことができる。
【0031】
本第4の実施の形態のサポート補強構造1Dによれば、上述したH型鋼からなるサポート3(図1〜図4参照)と同様に、L型鋼からなるサポート3Aが繊維補強プレート6e、6fによりその肉厚が増大されて補強される。また、繊維補強プレート6e、6fを予めサポート3Aに沿うL字形状に成形しておくことで、現場での施工が容易になるという効果を奏する。
なお、サポート補強構造1Dにおいては、サポート3Aの内角側L字面3e及び外角側L字面3fの各面に沿った板状の繊維補強プレートを設けるようにしてもよい。
【0032】
(第5の実施の形態)
図6に示す第5の実施の形態によるサポート補強構造1Eは、溝形鋼を用いたサポート3Bに対して繊維補強プレート6を設けて補強したものである。サポート3Bの形状は、上述した図1に示す一対の縦材31、31と横材32とを枠組みした同様の構成である。
具体的にサポート補強構造1Eは、サポート3Bのウェブ3aとフランジ3bによって囲まれた凹部に凹型形状の繊維補強プレート6gを接着層7を介して配置させるとともに、外周側においても凹型形状の繊維補強プレート6hを接着層7を介して配置させている。なお、本実施形態による補強処理の施工は、上述した実施の形態と同様の手順により行うことができる。
【0033】
本第5の実施の形態のサポート補強構造1Eによれば、上述したH型鋼やL型鋼からなるサポート3、3A(図1〜図5参照)と同様に、溝形鋼からなるサポート3Bが繊維補強プレート6g、6hによってその肉厚が増大されて補強される。また、繊維補強プレート6g、6hを予めサポート3Bに沿う凹状に成形しておくことで、現場での施工が容易になるという効果を奏する。
なお、サポート補強構造1Eにおいては、サポート3Bの各面に沿った板状の繊維補強プレートを設けてもよい。
【0034】
(第6の実施の形態)
図7(a)に示すように、第6の実施の形態によるサポート補強構造1Fは、上述した第1の実施の形態と同様のH型鋼からなるサポート3に対して繊維補強シート9を設けて補強する構造である。すなわち、サポート補強構造1Fは、サポート3の凹部3dの空間s1に充填材8を充填させた中実構造体とされ、さらにその中実構造体の外周を繊維補強シート9(繊維補強材)で巻き回して配置した構造となっている。なお、繊維補強シート9は、図示しない接着層を介してサポート3のフランジ3bに固着している。
【0035】
充填材8は、サポート3の凹部3dの開口端の位置まで充填されている。充填材8として、エポキシ系接着樹脂、繊維材(鋼繊維、炭素繊維)、発泡性のコンクリートなどの硬化補強材として機能する材料が採用される。
【0036】
繊維補強シート9は、炭素繊維を一方向または多方向に並べて樹脂材を含有させて成形させたものであり、比較的に軽量かつ高強度・高剛性のもとなっており、樹脂材として例えばエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0037】
このようなサポート補強構造1Fの補強処理の施工として、図7(a)に示すように、先ず、サポート3のフランジ3bの外面を下地処理した後、その外面に接着層(図示省略)となるエポキシ系の接着剤を塗布し、そのサポート3の外周に凹部3d内の空間s1を確保した状態で繊維補強シート9を巻き回して配置する。続いて、空間s1内に充填材8を密実に充填して所定強度に硬化させることでサポート補強構造1Fを得る。
【0038】
また、図7(b)に示すように、他の施工方法として、サポート3の二つの凹部3dの開口をそれぞれ塞ぐようにしてテフロン(登録商標)シート等の一定強度を有する型枠シート10を着脱可能に配置する、このとき、型枠シート10とサポート3のフランジ3bとの間には隙間が無い状態とする。次いで、凹部3dと型枠シート10との間の空間s1内に充填材8を密実に充填し、その充填材8が所定強度に硬化したら型枠シート10をサポート3から取り外し、中実構造体となったサポート3の外周に繊維補強シート9(図7(b)に示す二点鎖線)を図示しない接着層を介して巻き回して配置することで、サポート補強構造1Fを得る。
【0039】
本第6の実施の形態のサポート補強構造1Fによれば、サポート3を充填材8により中実構造として断面剛性を確保することができるうえ、その中実構造体の外周全体にわたって繊維補強シート9が巻き付けられた構造であるので、サポート3の剛性をより一層高めることができる。
また、溶接工法を採用することなく、狭い箇所の作業で溶接機器などが入らないような溶接困難箇所による施工条件であっても、容易に且つ確実にサポート3の補強を行うことができる。
【0040】
(第7の実施の形態)
図8に示す第7の実施の形態によるサポート補強構造1Gは、上述した第1の実施の形態のサポート補強構造1A(図1参照)に対して、縦材31、31同士をダクト1の上方位置で横方向に連結する梁部材20を設けた構造となっている。なお、サポート3は、特に図示しないが繊維補強プレート6a、6b(図1参照)によって補強されている。
【0041】
図9に示すように、梁部材20は、各縦材31のフランジ3bを挟持する一対の係止板21、21と、各縦材31、31に設けられる全ての係止板21、21、…同士を連結する長尺の複数のボルト22とを備えて概略構成されている。
係止板21は、長方形の平板であり、長手方向の長さがフランジ3bの幅寸法より長く、両端にはボルト22用の挿通孔が形成されている。ボルト22は、一対の縦材31、31に設けられる4枚の係止板21、21、…の前記挿通孔に挿通され、その先端22bに第1ナット23が螺合されて締め付けられている。そして、ボルト22は、図9に示す平面視で縦材31のフランジ3bの幅方向両側に2本ずつ配設されている。
【0042】
このような梁部材20は、ボルト22と第1ナット23の締結により図9に示す矢印P方向への張力を作用させることで、ボルト22の頭部22a側と先端22b側の係止板21A、21Aがサポート3のフランジ3bに当接する。さらに、ボルト22の中間部に位置する2枚の係止板21B、21Bが第2ナット24によってフランジ3b側に締め付けられて当接している。これにより、梁部材20は、一対の縦材31、31に対して剛接合となっている。
【0043】
本第7の実施の形態のサポート補強構造1Gによれば、一対の縦材31、31、横材32、および梁部材20によって多層ラーメン構造が形成されるため、上述した第1の実施の形態のサポート補強構造1Aに比べてより高い剛性を確保することができる。
また、溶接工法を採用することなく、狭い箇所の作業で溶接機器などが入らないような溶接困難箇所による施工条件であっても、容易に且つ確実にサポート3の補強を行うことができる。
【0044】
(第8の実施の形態)
図10に示すように、第8の実施の形態によるサポート補強構造1Hは、定着部5とH型鋼からなるサポート3の縦材31との接合部Tに対して接着層7を介して繊維補強プレート6を設けて補強したものである。サポート3の形状は、上述した図1に示す一対の縦材31、31と横材32とを枠組みした同様の構成である。また、定着板5および接着層7もまた、第1の実施の形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0045】
繊維補強プレート6(6i)は、定着板5と縦材31との両者にわたって設けられており、サポート3における設置箇所は縦材31のウェブ3aとフランジ3bの外面側である。
本第8の実施の形態のサポート補強構造1Hによれば、溶接工法を採用することなく縦材31と定着板5との接合部Tを補強して剛性を高めることができるので、狭い箇所での作業で溶接機器などが入らないような溶接困難箇所による施工条件であっても、より効果的にサポート3の補強を行うことができる。
【0046】
以上、本発明による長尺物のサポート補強構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では、サポート3、3A、3Bで支持する長尺物としてダクト1を対象としているが、これに限定されることはなく、配管、ケーブルトレイ、電線管などの長尺物を対象とすることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、サポート3、3A、3Bの縦材31に対して繊維補強材を設けているが、横材32に対しても上述した実施の形態と同様の繊維補強材を用いた補強を施すことが可能である。
また、サポートの形状として、上述した実施の形態では一対の縦材31、31と、それらの下端同士を連結する横材32とからなる吊り下げ構造とし、横材によってダクト1を下方より支持しているが、このような形状のサポートであることに制限されることはなく、例えば壁面から側方に延びる構造のサポートや、床上に設けられる架台状のサポートであってもかまわない。
【0048】
さらに、上述した第6の実施の形態では、H型鋼のサポート3の凹部3dの空間s1に充填材8を充填しているが、これに限定されることはなく、例えばサポートが角型鋼管である場合には、その空胴部に硬化補強材としての充填材を充填することが可能である。
さらにまた、繊維補強プレート6、繊維補強シート9の部材、長さ寸法、厚さ寸法(シート層数)、形状、サポートに対する設置範囲等の構成はサポートの形状、寸法などに応じて適宜変更することができる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施の形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ダクト(長尺物)
1A〜1H サポート補強構造
2 天井(被支持部)
3、3A、3B サポート
31 縦材
32 横材
4 アンカーボルト
5 定着板(定着部)
6、6a〜6i 繊維補強プレート(繊維補強材)
7 接着層
8 充填材(硬化補強材)
9 繊維補強シート(繊維補強材)
10 型枠シート
20 梁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持部より長尺物を支持するためのサポートの補強構造であって、
前記サポートの外周に接着層を介して設けられた繊維補強材を備えることを特徴とする 長尺物のサポート補強構造。
【請求項2】
前記繊維補強材は、前記サポートの外周形状に合わせて成形された板状成形体からなることを特徴とする請求項1に記載の長尺物のサポート補強構造。
【請求項3】
前記繊維補強材は、前記サポートの外周形状に沿って貼り合わされるシート状の部材からなることを特徴とする請求項1に記載の長尺物のサポート補強構造。
【請求項4】
前記サポートは、前記被支持部に対して定着部を介して固定されてなり、
前記繊維補強材は、前記定着部と前記サポートとにわたって設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の長尺物のサポート補強構造。
【請求項5】
前記サポートは、その一部に凹部又は空胴部を有し、該凹部又は空胴部に硬化補強材が充填された中実構造体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の長尺物のサポート補強構造。
【請求項6】
前記サポートは、前記被支持部より下方に延びる一対の縦材と、該縦材の下端同士を連結する横材とからなり、前記長尺物が前記横材によって下方から支持される構成をなし、
前記長尺物の上方で前記縦材同士を連結する梁部材を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の長尺物のサポート補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−117135(P2011−117135A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273279(P2009−273279)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】