説明

門型壁枠ユニットの搬送方法及び門型壁枠ユニットの搬送構造体

【課題】ねじれ防止補強材の廃材処理又は再利用のための回収作業を不要にしつつ、搬送時における門型壁枠ユニットのねじれ変形による損傷抑制を図った門型壁枠ユニットの搬送方法、及び搬送構造体を提供する。
【解決手段】上下方向に延びる一対の垂直材10と、一対の垂直材10を連結する水平材20と、水平材20の下方に位置して一対の垂直材10を連結するマグサ30とにより門型に形成され、門型の内側部分1aを建物の開口部として機能させる門型壁枠ユニット1の搬送方法であって、門型壁枠ユニット1を建物に組み付ける組付時には、マグサ30が建物の開口部1aの上部に位置するよう、マグサ30を一対の垂直材10に固定し、門型壁枠ユニット1を搬送する搬送時には、組付時の位置よりも下方に位置するよう、マグサ30を一対の垂直材10に仮固定して、搬送構造体2に変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部として機能させる門型壁枠ユニットの搬送方法、及びその門型壁枠ユニットの搬送構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
枠組壁工法の建物に形成された開口のうち、開口の最下部が床面位置まである掃出し開口を構成するにあたり、建物の壁を構成する門型の壁枠ユニットを用いるのが従来より一般的である。この種の門型壁枠ユニットの構造は特許文献1等にて開示されており、上下方向に延びる一対の垂直材と、一対の垂直材を連結する水平材と、水平材の下方に位置して一対の垂直材を連結するマグサとにより門型に形成される構造である。
【特許文献1】特許第2977494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、建物の構造部品等を工場で生産し、その工場生産品を建築現場に搬送し、建築現場にて工場生産品を組み立てるといった工業化住宅においては、一対の垂直材、水平材及びマグサの各々を結合して固定して門型壁枠ユニットを製造する作業を、建築現場ではなく工場で行うようになってきている。これによれば、工場にて製造された門型壁枠ユニットを建築現場に搬送し、建築現場では、予め工場で製造された門型壁枠ユニットを所定箇所に据え付けて固定する作業だけでよいので、建築現場における工期短縮を図ることができる。
【0004】
しかしながら、この種の門型壁枠ユニットは、門型であるが故に搬送時にねじれ変形が生じ易い。すると、垂直材と水平材との結合部分、及び垂直材とマグサとの結合部分が、ねじれ変形により損傷する恐れがある。
【0005】
この問題に対し従来では、図9(a)に示すように、一対の垂直材10下側端部に結合されて水平に延びる左右一対のランナ50aを延長させて結合し、1本の部材50により形成している。これによれば、ランナ50aを含む部材50がねじれ防止補強材として機能することとなり、上記ねじれ変形を抑制できる。しかしながら、この構造では、搬送が終われば補強材50を切断してランナ50aのみを残すことを要するため、切除された部分50b(図9(a)中の斜線部分)を廃材として処理しなければならず、廃材発生といった新たな問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、図9(b)に示すように、ねじれ防止補強材60を脱着可能な状態で垂直材10に仮固定し、搬送が終われば補強材60を回収して再利用する構造を検討した。しかしながらこの構造においては、ねじれ防止補強材60を回収する作業が手間である。
【0007】
本発明は、ねじれ防止補強材の廃材処理又は再利用のための回収作業を不要にしつつ、搬送時における門型壁枠ユニットのねじれ変形による損傷抑制を図った門型壁枠ユニットの搬送方法、及び搬送構造体を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、第1の発明では、上下方向に延びる一対の垂直材と、前記一対の垂直材を連結する水平材と、前記水平材の下方に位置して前記一対の垂直材を連結するマグサとにより門型に形成され、門型の内側部分を建物の開口部として機能させる門型壁枠ユニットの搬送方法であって、前記門型壁枠ユニットを前記建物に組み付ける組付時には、前記マグサが前記建物の開口部の上部に位置するよう、前記マグサを前記一対の垂直材に固定し、前記門型壁枠ユニットを搬送する搬送時には、前記組付時の位置よりも下方に位置するよう、前記マグサを前記一対の垂直材に仮固定することを特徴とする。
【0010】
これによれば、搬送時には、組付時の位置よりも下方の位置でマグサが一対の垂直材に仮固定されているので、門型壁枠ユニットは門型の下方部分にてマグサにより補強された状態となる。よって、搬送時における門型壁枠ユニットのねじれ変形を抑制でき、各結合部分の損傷抑制を図ることができる。しかも、搬送時にねじれ防止補強材として機能するマグサは、組付時にはマグサとして用いるため、ねじれ防止補強材の廃材処理又は再利用のための回収作業は不要である。
【0011】
また、第2の発明では、前記搬送時における仮固定位置から前記組付時における固定位置に前記マグサを移動させるにあたり、前記一対の垂直材に沿って前記マグサをスライド移動させることを特徴とする。これによれば、搬送時の仮固定の状態から組付時における固定位置にマグサを移動させるにあたり、その作業性を良好にできる。
【0012】
また、第3の発明では、前記マグサのうち長手方向一方側部分及び他方側部分に、一対の持ち手用穴を予め形成しておき、前記スライド移動させる時には、前記一対の持ち手用穴に作業者が手を掛け、前記一対の持ち手用穴を均等に移動させることを特徴とする。ここで、マグサをスライド移動させるためにはマグサを平行に移動させることが要求されるが、本発明によればマグサを平行に移動させることを容易にできる。
【0013】
また、第4の発明では、前記マグサの両端に、前記一対の垂直材に沿って延びるとともに前記垂直材に回転可能に取り付けられた回転アームを予め取り付けておき、前記回転アームを前記マグサとともに回転させることにより、前記搬送時における仮固定位置から前記組付時における固定位置に前記マグサを移動させることを特徴とする。これによれば、搬送時の仮固定の状態から組付時における固定位置にマグサを移動させるにあたり、その作業性を良好にできる。
【0014】
また、第5の発明では、前記搬送時における仮固定位置から前記組付時における固定位置に前記マグサを移動させる作業を、前記門型壁枠ユニットを前記建物に組み付けた後に行うことを特徴とする。これによれば、垂直材が建物に固定された状態でマグサを移動させることとなるので、マグサを移動させる作業の作業性を良好にできる。
【0015】
次に、上下方向に延びる一対の垂直材と、前記一対の垂直材を連結する水平材と、前記水平材の下方に位置して前記一対の垂直材を連結するマグサとにより門型に形成され、門型の内側部分を建物の開口部として機能させる門型壁枠ユニットを搬送するための搬送構造体に関する発明を説明する。
【0016】
第6の発明では、前記一対の垂直材と、前記水平材と、前記マグサを転用したものであり、前記マグサが前記門型を形成した時の位置よりも下方に位置して前記一対の垂直材を連結するよう仮固定されたねじれ防止補強材と、を備え、前記ねじれ防止補強材を、前記仮固定の位置から前記建物の開口部の上部に移動して前記マグサとして機能させるよう構成されていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、搬送時には、マグサが門型を形成した時の位置よりも下方の位置でねじれ防止補強材が一対の垂直材に仮固定されているので、搬送時における門型壁枠ユニットのねじれ変形を抑制でき、各結合部分の損傷抑制を図ることができる。しかも、ねじれ防止補強材は、搬送終了後にはマグサとして機能されるので、ねじれ防止補強材の廃材処理又は再利用のための回収作業は不要である。
【0018】
また、第7の発明では、前記ねじれ防止補強材のうち長手方向一端側部分及び他端側部分には、前記ねじれ防止補強材を前記開口部の上部に移動させるために作業者が手を掛ける、一対の持ち手用穴が形成されていることを特徴とする。ここで、ねじれ防止補強材を仮固定の位置からマグサとして機能する位置までスライド移動させる場合には、ねじれ防止補強材を平行に移動させることが要求される。本発明はこの点を鑑みてなされたものであり、ねじれ防止補強材に形成された一対の持ち手用穴に作業者が手を掛け、一対の持ち手用穴を均等に移動させれば、ねじれ防止補強材を平行に移動させることを容易にできる。
【0019】
また、第8の発明では、前記ねじれ防止補強材の両端には、前記一対の垂直材に沿って延びるとともに前記垂直材に回転可能に取り付けられた回転アームが固定されており、前記回転アームを前記ねじれ防止補強材とともに回転させることにより、前記仮固定の位置から前記開口部の上部に前記ねじれ防止補強材を移動可能に構成されていることを特徴とする。これによれば、搬送時にて仮固定されたねじれ防止補強材を、マグサとして機能させる位置まで移動させるにあたり、その作業性を良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0021】
[第1の実施形態]
図1(a)は本実施形態に係る門型壁枠ユニット1を示す斜視図であり、図1(b)は、門型壁枠ユニット1を搬送用に構造変更させた搬送構造体2を示す斜視図である。なお、図1(a)中の上下方向を示す矢印は、門型壁枠ユニット1を建物に組み付けた状態における上下方向を示す。
【0022】
先ず、門型壁枠ユニット1及び搬送構造体2のうち、門型壁枠ユニット1の構造を説明する。
【0023】
門型壁枠ユニット1は、上下方向に延びる一対の垂直材10と、一対の垂直材10を連結する水平材としての垂れ壁部20と、垂れ壁部20の下方に位置して一対の垂直材10を連結するマグサ30とにより門型に形成されている。そして、このように形成された門型の内側部分1aを建物の開口部として機能させている(以下、前記内側部分1aを開口部1aと記載する場合もある)。なお、これらの垂直材10、垂れ壁部20及びマグサ30は金属製である。
【0024】
図2は門型壁枠ユニット1からマグサ30を取り外した状態を示す斜視図であり、マグサ30と垂直材10とは脱着可能に締結されている。具体的には、マグサ受け金物41(図1参照)を介してタップ、ボルト等の締結手段により互いに締結されている。また、垂直材10と垂れ壁部20とは、タップ、ボルト、溶接等の手段により互いに結合されている。
【0025】
垂直材10は、上下方向に延びる一対のスタッド11及びマグサ受け12を組み合わせて構成されている。図1のI−I断面を示す図3に示すように、スタッド11及びマグサ受け12には、ウェブ11a,12a、フランジ11b,12b及びリップ11c,12cからなるリップ付き溝形鋼が採用されている。そして、互いのウェブ11a,12aを突き合わせてタップ、ボルト、溶接等の手段により結合されている。
【0026】
スタッド11及びマグサ受け12の下側端部には、水平に延びるランナ42がタップ、ボルト、溶接等の手段により結合されている。図示は省略しているが、建物の土台上に設置された根太上には床パネルが敷き詰められており、この床パネルの上にランナ42が設置されている。
【0027】
垂れ壁部20は、水平に延びる一対の上枠ランナ21及び下枠ランナ22と、上下方向に延びて上枠ランナ21と下枠ランナ22とを連結する複数本の開口上部スタッド23と、を組み合わせて構成されている。上枠ランナ21及び下枠ランナ22には溝形鋼が採用され、開口上部スタッド23にはリップ付き溝形鋼が採用されている。開口上部スタッド23の両端は、上枠ランナ21及び下枠ランナ22の溝内に各々挿入配置されており、上枠ランナ21、下枠ランナ22及び開口上部スタッド23は、タップ、ボルト、溶接等の手段により互いに結合されている。
【0028】
また、上枠ランナ21にはスタッド11の上側端面が付き合わされて締結されており、下枠ランナ22にはマグサ受け12の上側端面が付き合わされて締結されている。また、下枠ランナ22の両端は、スタッド11に付き合わされて締結されている。なお、下枠ランナ22とマグサ30とは締結されていない。
【0029】
図3に示すように、マグサ受け金物41にはウェブ41a及びフランジ41bからなるH形鋼が採用されている。そして、マグサ受け12のリップ12cとマグサ30の端面とにウェブ41aが挟まれるように、マグサ受け金物41、マグサ受け12及びマグサ30は配置されている。マグサ受け金物41のフランジ41bとマグサ受け12のフランジ12bとは、タップ、ボルト等の脱着可能な締結手段43により締結されている。また、マグサ受け金物41のフランジ41bとマグサ30とは、タップ、ボルト、溶接等の手段により結合されている。なお、マグサ受け金物41とマグサ受け12とは脱着不能な状態で締結するようにしてもよい。
【0030】
マグサ30の下面30a(図1(a)参照)とマグサ受け12のリップ12cとに囲まれた部分が前述した門型の内側部分1aを形成している。そして、この内側部分1aにはサッシ枠(図示せず)が取り付けられ、サッシ枠には開口部1aを開閉する窓ガラス及び障子等の開閉部材(図示せず)が嵌め込まれる。また、門型壁枠ユニット1の屋内側(図1の紙面手前側)には石こうボード及びクロス等の内装材が取り付けられ、門型壁枠ユニット1の屋外側(図1の紙面奥側)には合板、防湿シート、断熱材及び外壁材等の外装材が取り付けられている。
【0031】
このように、門型の内側部分1aにはサッシ枠を介して開閉部材が開閉移動可能な状態で取り付けられるため、地震等の外力により建物の各部が変形する場合であっても、内側部分1aは平行四辺形とならないように矩形形状を保持することが要求される。そのため、門型壁枠ユニット1には、垂れ壁部20に加えマグサ30が備えられており、このマグサ30により内側部分1aが形成されている。
【0032】
したがって、マグサ30は、開口部1aに対して垂直に延びる軸J1(図1参照)周りの曲げ変形に対して高い剛性を有していることが望ましい。よって、マグサ30には、軸J1方向の厚み寸法に比べて上下方向の幅寸法の方が長い部材が採用されており、これにより、軸J1周りの曲げ変形に対する剛性は、上下方向に延びる軸J2(図1参照)周りの曲げ変形に対する剛性に比べて高剛性である。また、マグサ30は垂直材10と締結されているため、マグサ30を垂れ壁部20と締結した場合に比べて、前述した矩形形状を高い精度で保持できている。
【0033】
次に、搬送構造体2の構造、及び門型壁枠ユニットの搬送方法を説明する。
【0034】
門型壁枠ユニット1では、マグサ30を下枠ランナ22の下側に隣接して配置させているのに対し、搬送構造体2では、マグサ30をマグサ受け12の最下端部分に配置させている(図1(b)参照)。このマグサ30の位置以外は、門型壁枠ユニット1と搬送構造体2とは同じ構造である。また、搬送構造体2では、マグサ受け金物41とマグサ受け12との締結を、脱着可能な仮固定の状態で締結させており、例えば、タップ、ボルト等の締結手段により締結して好適である。以下、搬送構造体2におけるマグサ30の位置を仮固定位置と呼び、門型壁枠ユニット1におけるマグサ30の位置を本固定位置と呼ぶ。
【0035】
搬送構造体2は、建築現場とは別の場所にある工場で製造される。そして、工場にて製造された搬送構造体2は、クレーンやフォークリフト等の揚上機械によりトラックの荷台に積み込まれ、トラックにより建築現場まで搬送される。その後、建築現場にて揚上機械によりトラックの荷台から建築現場の資材置き場に搬送構造体2を積み降ろした後、搬送構造体2をそのまま建物の所定位置(床パネルの上)に据え付ける。或いは、トラックの荷台から吊り上げて、搬送構造体2をそのまま建物の所定位置に直接据え付ける。
【0036】
そして、搬送構造体2を建物の所定位置に組み付けて固定した後、タップ43を取り外すことにより搬送構造体2のマグサ受け金物41とマグサ受け12との締結を取り外し、マグサ受け12が結合された状態のマグサ30を、仮固定位置から本固定位置まで移動させ、その後、下枠ランナ22の下側隣接位置(本固定位置)にてマグサ受け金物41とマグサ受け12とをタップ43により締結する。これにより、搬送構造体2が門型の門型壁枠ユニット1に変わる。
【0037】
マグサ30を仮固定位置から本固定位置に移動させて搬送構造体2を門型壁枠ユニット1に変えるにあたり、マグサ受け金物41及びマグサ30をマグサ受け12に沿ってスライド移動させている。ここで、マグサ30の屋内側の面には、左右対称となる位置に一対の持ち手用穴31が、工場にて予め形成されている。そして、上述の如くマグサ30をスライド移動させる時には、一対の持ち手用穴31に作業者が手を掛け、一対の持ち手用穴31に均等に力をかけて同時に移動させる。ここで、マグサ30をスライド移動させるためにはマグサ30を平行に移動させることが要求されるが、上述のように一対の持ち手用穴31を同時に移動させれば、マグサ30を平行に移動させることを容易にできる。
【0038】
以上により、本実施形態によれば、搬送構造体2の搬送時には、マグサ30はマグサ受け12の最下端部分に仮固定されているので、搬送構造体2は、門型壁枠ユニット1を門型の下方部分にてマグサ30により補強された構造となる。よって、搬送時や吊り上げ時における門型壁枠ユニット1のねじれ変形を抑制でき、各結合部分の損傷抑制を図ることができる。しかも、搬送時にねじれ防止補強材として機能するマグサ30は、建物に据え付けられた時には開口部1aを矩形形状に保持する本来のマグサ30として機能するため、ねじれ防止補強材の廃材処理又は再利用のための回収作業は不要である。
【0039】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、マグサ30を仮固定位置から本固定位置に移動させて、搬送構造体2を門型壁枠ユニット1に変える作業を行なうにあたり、マグサ30をマグサ受け12に沿ってスライド移動させている。これに対し本実施形態では、仮固定位置のマグサ30を、開口部1aに対して垂直な方向にマグサ受け12から抜き出し、マグサ30の向きを上下反転させた後、マグサ受け12の本固定位置に開口部1aに対して垂直な方向にマグサ30を嵌め込む。これにより、マグサ30を仮固定位置から本固定位置に移動させている。
【0040】
図4(a)は、本実施形態に係る門型壁枠ユニット1αを示す斜視図であり、図4(b)は、本実施形態に係る搬送構造体2αを示す斜視図である。また、図5は、マグサ30と垂直材10との連結構造を示す斜視図、図6は図4のII−II断面図である。以下、図4〜図6を用いて第1実施形態との構造的な相違点を説明する。
【0041】
図4に示すように、門型壁枠ユニット1αは、マグサ受け金物41αとマグサ受け12との間に介在し、マグサ受け12に沿って上下方向に延びる金属製のカバー材44を備えている。
【0042】
図6に示すように、カバー材44には、ウェブ44a及びフランジ44bからなる不等辺L形鋼が採用されている。また、上記第1の実施形態に係るマグサ受け金物41にはH形鋼が採用されていたのに対し、本実施形態に係るマグサ受け金物41αには、ウェブ41a及びフランジ41bからなる溝形鋼が採用されている。
【0043】
そして、マグサ受け金物41αのウェブ41aとカバー材44のウェブ44aとが当接するように、マグサ受け金物41αとカバー材44とはタップ、ボルト、溶接等の手段により互いに結合されている。同様にして、マグサ受け金物41αのフランジ41bとマグサ30とはタップ、ボルト、溶接等の手段により互いに結合されている。
【0044】
また、上記第1の実施形態では、カバー材44のフランジ44bとマグサ受け12のフランジ12bとをタップ43により締結しているが、本実施形態では当該タップ43を廃止している。
【0045】
図5に示すように、カバー材44のウェブ44aの上下両端部には、上端面及び下端面から円弧状に延びるスリット44cが形成されており、マグサ受け12のリップ12cの下端部には、スリット44cに挿入されて係合するピン12dが形成されている。そして、スリット44cが延びる方向(図5中の矢印Yに示す方向)にカバー材44を動かすことにより、カバー材44のウェブ44aとマグサ受け12のリップ12cとを脱着可能に係合させている。
【0046】
以上により、マグサ30は、カバー材44及びマグサ受け金物41αとともに一体構造物として形成され、上述の如くマグサ30を仮固定位置から本固定位置に移動させる場合には、先ずタップ43を取り外すことにより搬送構造体2αのカバー材44とマグサ受け12との締結を取り外し、カバー材44及びマグサ受け金物41αが結合された状態のマグサ30を、上下反転させて仮固定位置から本固定位置まで移動させ、その後、下枠ランナ22の下側隣接位置(本固定位置)にてカバー材44とマグサ受け12とをタップ43により締結する。これにより、搬送構造体2αが門型の門型壁枠ユニット1αに変わる。
【0047】
また、本実施形態によれば、マグサ受け12のリップ12cの開口がカバー材44により閉塞されることとなるので、内側部分1aにサッシ枠を取り付けるにあたり、例えばカバー材44にタッピングスクリュ等の締結部材で締結できるので、サッシ枠の取り付け性を良好にできる。因みに、上記第1の実施形態において、リップ12cの開口をカバー材で覆うようにしてサッシ枠の取り付け性向上を図るようにしてもよい。
【0048】
[第3の実施形態]
図7(a)は、本実施形態に係る門型壁枠ユニット1βを示す斜視図であり、図7(b)は、本実施形態に係る搬送構造体2βを示す斜視図である。上記第2の実施形態ではカバー材44に不等辺L形鋼を採用しているのに対し、本実施形態では、図7に示すようにカバー材44βに平鋼を採用している。
【0049】
そして、カバー材44βの上下方向中心部分はマグサ受け12に回転可能な状態で取り付けられており、カバー材44β及びマグサ受け金物41αが結合された状態のマグサ30は、回転軸45周りに回転可能である。つまり、カバー材44βが、マグサ受け12に対してマグサ30を回転可能に支持させるための回転アームとして機能する。なお、カバー材44βの上下方向長さは、回転軸45からマグサ30にいたるまでの長さであればよく、カバー材44βのうち回転軸45よりもマグサ30と反対側の部分は廃止するようにしてもよい。
【0050】
以上の構成によれば、マグサ30を仮固定位置から本固定位置に移動させて、搬送構造体2βを門型の門型壁枠ユニット1βに変えることができる。なお、このような回転を可能にするために、カバー材44bの両端部44a及びマグサ30の上面30bは円弧形状に形成されている。
【0051】
[他の実施形態]
本発明は以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。そして、以下に説明する各実施形態の特徴的制御内容及び構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0052】
・上記各実施形態のマグサ30には、図8(a)に示す角パイプを採用しているが、図8(b)(c)に示すように2つのリップ付き溝形鋼32,33のリップを突き合わせて1つのマグサ30を構成するようにしてもよい。この場合には、マグサ受け金物41αに溝形鋼を採用し、2つのリップ付き溝形鋼32,33及びマグサ受け金物41αをタップ、ボルト、溶接等の手段により互いに結合して好適である。
【0053】
・上記第1の実施形態では一対の持ち手用穴31を作業者が手を掛ける穴として使用しているが、マグサ30を移動させるための治具を掛ける穴として使用してもよい。また、持ち手用穴31を廃止して、マグサ30の下面30aを手や治具で上方に押してマグサ30を移動させてもよい。
【0054】
・上記各実施形態では、マグサ30を移動させる作業を、搬送構造体2を建物に組み付けた後に行なっているが、搬送構造体2を建物に組み付ける前にマグサ30を移動させて門型壁枠ユニット1に変えておき、門型壁枠ユニット1の状態で建物に組み付けるようにしてもよい。
【0055】
・搬送構造体2は、門型壁枠ユニット1の屋外側に取り付けられることとなる外装材を備えていてもよい。例えば、外装材には合板、防湿シート、断熱材及び外壁材等が挙げられるが、これらのうち少なくとも1つを搬送構造体2に備えるようにして好適である。
【0056】
・上記各実施形態では、水平材としての垂れ壁部20を、上枠ランナ21、下枠ランナ22及び開口上部スタッド23にて構成しているが、開口上部スタッド23を廃止してもよく、また、上枠ランナ21及び下枠ランナ22のいずれかを廃止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は、第1の実施形態に係る門型壁枠ユニットを示す斜視図であり、(b)は、第1の実施形態に係る搬送構造体を示す斜視図である。
【図2】図1の門型壁枠ユニットからマグサを取り外した状態を示す斜視図。
【図3】図1のI−I断面図。
【図4】(a)は、第2の実施形態に係る門型壁枠ユニットを示す斜視図であり、(b)は、第2の実施形態に係る搬送構造体を示す斜視図である。
【図5】図4のマグサと垂直材との連結構造を示す斜視図。
【図6】図4のII−II断面図。
【図7】(a)は、第3の実施形態に係る門型壁枠ユニットを示す斜視図であり、(b)は、第3の実施形態に係る搬送構造体を示す斜視図である。
【図8】他の実施形態に係るマグサの断面形状を示す線図である。
【図9】(a)は、従来の門型壁枠ユニットを示す斜視図であり、(b)は、本発明の発明者らにより検討された門型壁枠ユニットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1α,1β…門型壁枠ユニット、1a…内側部分、開口部、2,2α,2β…搬送構造体、10…垂直材、11…スタッド(垂直材)、12…マグサ受け(垂直材)、20…垂れ壁部(水平材)、21…上枠ランナ(水平材)、22…下枠ランナ(水平材)、23…開口上部スタッド(水平材)、30…マグサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる一対の垂直材と、前記一対の垂直材を連結する水平材と、前記水平材の下方に位置して前記一対の垂直材を連結するマグサとにより門型に形成され、門型の内側部分を建物の開口部として機能させる門型壁枠ユニットの搬送方法であって、
前記門型壁枠ユニットを前記建物に組み付ける組付時には、前記マグサが前記建物の開口部の上部に位置するよう、前記マグサを前記一対の垂直材に固定し、
前記門型壁枠ユニットを搬送する搬送時には、前記組付時の位置よりも下方に位置するよう、前記マグサを前記一対の垂直材に仮固定することを特徴とする門型壁枠ユニットの搬送方法。
【請求項2】
前記搬送時における仮固定位置から前記組付時における固定位置に前記マグサを移動させるにあたり、前記一対の垂直材に沿って前記マグサをスライド移動させることを特徴とする請求項1に記載の門型壁枠ユニットの搬送方法。
【請求項3】
前記マグサのうち長手方向一方側部分及び他方側部分に、一対の持ち手用穴を予め形成しておき、
前記スライド移動させる時には、前記一対の持ち手用穴に作業者が手を掛け、前記一対の持ち手用穴を均等に移動させることを特徴とする請求項2に記載の門型壁枠ユニットの搬送方法。
【請求項4】
前記マグサの両端に、前記一対の垂直材に沿って延びるとともに前記垂直材に回転可能に取り付けられた回転アームを予め取り付けておき、
前記回転アームを前記マグサとともに回転させることにより、前記搬送時における仮固定位置から前記組付時における固定位置に前記マグサを移動させることを特徴とする請求項1に記載の門型壁枠ユニットの搬送方法。
【請求項5】
前記搬送時における仮固定位置から前記組付時における固定位置に前記マグサを移動させる作業を、前記門型壁枠ユニットを前記建物に組み付けた後に行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の門型壁枠ユニットの搬送方法。
【請求項6】
上下方向に延びる一対の垂直材と、前記一対の垂直材を連結する水平材と、前記水平材の下方に位置して前記一対の垂直材を連結するマグサとにより門型に形成され、門型の内側部分を建物の開口部として機能させる門型壁枠ユニットを搬送する際の搬送構造体であって、
前記一対の垂直材と、
前記水平材と、
前記マグサを転用したものであり、前記マグサが前記門型を形成した時の位置よりも下方に位置して前記一対の垂直材を連結するよう仮固定されたねじれ防止補強材と、
を備え、
前記ねじれ防止補強材を、前記仮固定の位置から前記建物の開口部の上部に移動して前記マグサとして機能させるよう構成されていることを特徴とする搬送構造体。
【請求項7】
前記ねじれ防止補強材のうち長手方向一端側部分及び他端側部分には、前記ねじれ防止補強材を前記開口部の上部に移動させるために作業者が手を掛ける、一対の持ち手用穴が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の搬送構造体。
【請求項8】
前記ねじれ防止補強材の両端には、前記一対の垂直材に沿って延びるとともに前記垂直材に回転可能に取り付けられた回転アームが固定されており、
前記回転アームを前記ねじれ防止補強材とともに回転させることにより、前記仮固定の位置から前記開口部の上部に前記ねじれ防止補強材を移動可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の搬送構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−267057(P2008−267057A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113987(P2007−113987)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】