説明

閉塞検知機能付き搬送装置

【課題】搬送管が閉塞していることを検知できる閉塞検知機能付き搬送装置を提供すること。
【解決手段】斜面2の上方部から下方部へコンクリート3を搬送し、斜面2の下方部の施工現場に供給するコンクリート3の搬送装置であって、コンクリート3の搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を計測するセンサと閉塞判断手段を備えている。これにより、センサから読み取った情報と、実験値から予想される閉塞閾値を比較して、閾値を超えているか否かによって、搬送管12の閉塞を推定し、出力部18から閉塞を警告する。また、監視端末17からの指令によって、電動機駆動用制御盤15を介して運転制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートなどの搬送物を搬送する閉塞検知機能付き搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダムの施工現場などにコンクリートを搬送する装置として、内周面に搬送混練用ブレードを突設させた搬送管を回転自在として斜面に沿って複数設置し、その搬送管の上方部からコンクリートを投入し、搬送管内を通じて斜面の下方にコンクリートを搬送する装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−36267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような搬送装置は、コンクリートや骨材などの流動性が低い場合において、搬送管が閉塞するおそれがある。しかしながら、搬送管は筒状になっているため、閉塞が発生していることを外観から判断することができないという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、搬送管の閉塞発生を予想または検知できる閉塞検知機能付き搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る閉塞検知機能付き搬送装置は、内周面に羽根を取り付けた搬送管を回転可能な状態で前記斜面に沿って配設し、前記搬送管内で搬送物を流下させて前記斜面の上方から下方へ搬送物を搬送する搬送装置であって、前記搬送管内の搬送物の重量が与える負荷を計測するセンサと、前記センサから得られる値に基づいて搬送管の閉塞を判断する判断手段と、を備えて構成される。
【0006】
この発明によれば、搬送管内の搬送物の重量が与える負荷を計測し、所定以上の負荷が加わっていると判断した場合は、閉塞の発生を予想または検知する。これによって、閉塞発生を予想することや閉塞発生後においても閉塞を迅速に検知することができるため、大量の廃棄搬送物の発生や工事遅延の発生を防ぐことができる。
【0007】
また、本発明に係る閉塞検知機能付き搬送装置において、前記センサは、前記負荷として、前記搬送管を回転させる駆動源の電流値を計測してもよく、前記搬送管を支持する支持部材に加わる荷重又は前記支持部材の歪みを計測してもよい。
【0008】
この発明によれば、装置の規模や搬送対象物に応じて、使用するセンサを自由に組み合わせることが可能である。また、搬送管内の搬送物の重量が与える負荷を複数の観点から測定し、その複数の測定結果を判断材料とすることで、閉塞検知の精度を向上することができる。
【0009】
また、本発明に係る閉塞検知機能付き搬送装置において、前記搬送物は、コンクリート、骨材又は土砂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送物を搬送する搬送管閉塞の発生を予想または検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る搬送装置の構成概要図である。図2は本発明の実施形態に係る搬送装置を構成する搬送管12の側面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る搬送装置1は、閉塞検知機能付き搬送装置であって、斜面2の上方部から下方部へコンクリート3を搬送し、斜面2の下方部の施工現場に供給するものである。この搬送装置1は、各センサで読み取った情報から搬送管12の閉塞を推定し、出力部18から閉塞を警告する機能を備えている。
【0014】
この搬送装置1は、斜面2に沿って配設される搬送路11を備えている。搬送路11は、コンクリート3を搬送する搬送手段として機能するものであり、内周面に羽根24を取り付けて構成する搬送管12を複数連結して構成されている。搬送管12は、駆動源19によって軸方向を中心に回転可能に設けられている。この搬送管12は、図示しない支柱や架台などによって斜面2に沿って支持されている。羽根24は、例えば、搬送管12の内周の四分の1周程度の長さに形成され、搬送管12の内周面に沿って2つの羽根24が向かい合わせるように突設されており、所定の間隔おいて複数箇所に螺旋状に取り付けられている。
【0015】
搬送装置1で搬送するコンクリート3は、建設現場で発生した礫材や岩石質の原材料を所定粒径以下に調整したものと、セメントおよび水を混合させたものであり、例えばCSG(Cemented Sand and Gravel)である。
【0016】
搬送路11の上流側には、投入ホッパ13、コンベア14が設置されている。投入ホッパ13は、コンクリート3を投入するためのホッパであり、斜面2の上方部に設置されている。コンベア14は、投入ホッパ13に投入されたコンクリート3を搬送路11の上端部まで搬送する搬送手段であり、例えばベルトコンベアが用いられる。このコンベア14の作動を制御することにより、搬送路11におけるコンクリート3の搬送量を調整することができる。
【0017】
また、搬送装置1は、搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を計測するセンサとして、搬送管12の駆動源19の電流値を測定するセンサを備えている。この駆動源19として、例えば電動機が用いられる。また、駆動源19の電流値は、駆動源19のトルク力に関係する。例えば、搬送管12内のコンクリート3の重量が増えれば、より大きなトルク力が必要となる。よって、駆動源19の電流値を測定することで搬送管12内のコンクリート3の重量を推定することが可能となる。駆動源19の電流値は、電動機駆動用制御盤15で測定され、監視端末17でモニタリングされる。電動機駆動用制御盤15は、例えば、駆動源19と電源部の間に直列に配置して、駆動源19が消費する電流を測定する。
【0018】
また、搬送装置1は、搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を計測するセンサとして、搬送管12内にあるコンクリート3の重量によって搬送管12の支持部材23に生じた歪みを測定するセンサを備えている。この支持部材23に生じた歪みによって、搬送管12内のコンクリート3の重量を推定する。支持部材23に生じた歪みは、歪み計21で測定され、歪み計測器16を介して、監視端末17でモニタリングされる。歪み計21は、応力によって物体に生じた歪みを測定する機能を備えており、例えば、図2で示すように、搬送管12を支える支持部材23に取り付けられ、搬送管12内のコンクリートの荷重によって支持部材23に生じる歪みを測定する。
【0019】
また、搬送装置1は、搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を計測するセンサとして、搬送管12内にあるコンクリート3の重量によって搬送管12のローラ付き支持部材22に加わる荷重を測定するセンサを備えている。ローラ付き支持部材22に加わる荷重は、ロードセル20で測定され、歪み計測器16を介して、監視端末17でモニタリングされる。このローラ付き支持部材22に加わる荷重によって、搬送管12内のコンクリート3の重量を推定する。ロードセル20は、荷重を電気信号に変換する機能を備えており、例えば、搬送管12の回転部分を支えるローラ付き支持部材22に取り付けれ、搬送管12内のコンクリート3の荷重によってローラ付き支持部材22に加わる荷重を測定する。
【0020】
尚、本発明の実施形態に係る搬送装置1において、搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を計測するセンサは、電動機駆動用制御盤15、ロードセル20、歪み計21の3つのセンサを備えているが、いずれか一つ又は二つ設置する場合もある。
【0021】
歪み計測器16は、電気信号等から物理量を計測する装置であり、例えば、歪み計21及びロードセル20で測定した電気信号等を入力して、歪みや重量といった物理量に変換し、監視端末17へ出力する機能を備えている。
【0022】
監視端末17は、電子制御するコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および通信ユニットや入出力インターフェイス(ディスプレイ含む)などを備えて構成されている。この監視端末17は、信号処理部として、各センサから出力された情報を直接あるいは歪み計測器16を介して入力し、モニタリングする機能と、入力された情報が所定の値以上か否かを判断し、所定の値以上の場合は、出力部18へ信号を出力する機能を備えている。さらに、監視端末17は搬送装置1の運転を自動制御する機能を備えていてもよい。
【0023】
出力部18は、搬送装置1の使用者に対して、視覚や聴覚などを通じて閉塞状態であることを伝える機能を有し、例えばディスプレイ、ブザー、スピーカなどを備えて構成される。
【0024】
次に、本実施形態に係る搬送装置1の閾値決定処理について説明する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る搬送装置1の閾値決定処理を示すフローチャートである。図3の処理は、搬送装置1を稼動させる前に事前に行われる。
【0026】
まず、S10に示すとおり、閉塞が発生していない状態でコンクリート3の搬送を行った場合のデータを取得する処理が行われる。この処理は、閉塞が発生していない状態、すなわち定常状態で、駆動源19の電流値、ローラ付き支持部材22に加わる荷重、支持部材23の歪みを測定した値を入力する処理である。S10の処理が終了すると、定常状態のデータ変化を数値モデル化する処理へ移行する(S12)。
【0027】
S12は、定常状態のデータ変化を数値モデル化する処理である。この処理では、S10の値を入力として、駆動源19の電流値、ローラ付き支持部材22に加わる荷重、支持部材23の歪みについて、定常状態ではコンクリート3の重量とどのような数値関係があるのかを実験データから決定する処理となる。例えば、コンクリート3の重量がX[t]である場合において、駆動源19の電流値がY[A]〜Y[A]にあるときには定常状態であるといった決定を実験データから行う。S12の処理が終了すると、閉塞状態で搬送した場合のデータ取得処理へ移行する(S14)。
【0028】
S14は、閉塞が発生した状態でコンクリート3の搬送を行った場合のデータを取得する処理である。この処理は、閉塞が発生した状態で、駆動源19の電流値、ローラ付き支持部材22に加わる荷重、支持部材23の歪みを測定した値を入力する処理である。閉塞状態は意図的に発生させてデータ取得を行う。S14の処理が終了すると、閉塞状態のデータ変化を数値モデル化する処理へ移行する(S16)。
【0029】
S16は、定常状態のデータ変化を数値モデル化する処理である。この処理では、S14の値を入力として、駆動源19の電流値、ローラ付き支持部材22に加わる荷重、支持部材23の歪みについて、閉塞状態ではコンクリート3の重量とどのような数値関係があるのかを実験データから決定する処理となる。例えば、コンクリート3の重量がX[t]である場合において、駆動源19の電流値がY[A]〜Y[A]にあるときには閉塞状態であるといった決定を実験データから行う。S16の処理が終了すると、閉塞状態を判断する閾値決定処理へ移行する(S18)。
【0030】
S18は、閉塞状態を判断する閾値を決定する処理となる。この処理では、S12で得られた定常状態の数値モデルとS16で得られた閉塞状態の数値モデルを基に、閉塞状態を予測する閾値を決定する。閾値として、例えば、駆動源19の電流値のみを閾値にしても良いし、駆動源19の電流値およびローラ付き支持部材22に加わる荷重の二つに閾値を設けて、それぞれ超えた場合に閉塞状態であると判断するとしても良い。さらに、駆動源19の電流値、ローラ付き支持部材22に加わる荷重、支持部材23の歪みの三つに閾値を設けて判断してもよい。このように、搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を複数の観点から測定し、その複数の測定結果を判断材料とすることで、閉塞検知の精度を向上することができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る搬送装置1の制御動作について説明する。
【0032】
搬送装置1は、通常動作として、監視端末17から電動機駆動用制御盤15を介して制御信号を駆動源19へ送信する。この制御信号に応じて駆動源19が動作することにより、搬送管12が回転し、斜面2の上方部から下方部へコンクリート3を搬送する。搬送装置1は、このような通常動作と同時に、閉塞検知処理を実施する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る搬送装置1の閉塞検知処理を示すフローチャートである。図4の処理は、搬送装置1の電源がオンされてから所定のタイミングで繰り返し実施される。
【0034】
まず、S20で示すようにデータ取得処理が行われる。この処理は、駆動源19の電流値、ローラ付き支持部材22に加わる荷重、支持部材23の歪みのデータを各センサから取得する処理である。S20の処理が終了すると、閉塞状態判断の処理へ移行する(S22)。
【0035】
S22は、閉塞状態であるか否かを判断する処理である。閉塞状態であるか否かを判断するには、図3のS18で決定した閾値を一定時間超えているか否かを判断すればよい。また、閾値を閉塞直前の値に設定することで、閉塞の予想もすることができる。S22において、閾値を一定時間超えていない場合は、図4の処理を終了する。閾値を一定時間超えている場合は、警告処理へ移行する(S24)。
【0036】
S24は、S22で閉塞状態と判断された場合、搬送装置1の使用者に閉塞が発生したことを警告する処理である。例えば、出力部18のスピーカを用いてブザー音を鳴らしたり、ディスプレイ上に文字として出力したりして警告を行う。また、S24において、閾値が閉塞直前の値に設定されている場合は、閉塞発生が予想されることを搬送装置1の使用者に警告する。S24の処理が終了すると、図4の処理は終了する。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る搬送装置1によれば、搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を計測し、所定以上の負荷が加わっていると判断した場合は、閉塞予想または閉塞が発生していると検知する。これによって、閉塞発生の予想や閉塞発生を迅速に検知でき、大量の廃棄搬送物の発生や工事遅延の発生を防ぐことができる。
【0038】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、装置の規模や搬送対象物に応じて、電動機駆動用制御盤15、ロードセル20、歪み計21を自由に組み合わせてコンクリート3の重量を測定することが可能である。また、搬送管12内のコンクリート3の重量が与える負荷を複数の観点から測定し、その複数の測定結果を判断材料とすることで、閉塞検知の精度を向上することができる。
【0039】
なお、上述した実施形態は本発明に係る搬送装置の一例を示すものである。本発明に係る搬送装置は、これらの実施形態に係る搬送装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る搬送装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0040】
例えば、本実施形態ではコンクリートを搬送する例を示したが、搬送する対象がコンクリートに混入される骨材や土砂であってもよい。この場合でも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係る搬送装置1の構成概要図である。
【図2】図1の搬送装置1における搬送管12の側面図である。
【図3】図1の搬送装置1における閾値決定処理を示すフローチャートである。
【図4】図1の搬送装置1の閉塞検知処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1…搬送装置
2…斜面
3…コンクリート
11…搬送路
12…搬送管
13…投入ホッパ
14…コンベア
15…電動機駆動用制御盤
16…歪み計測器
17…監視端末
18…出力部
19…駆動源
20…ロードセル
21…歪み計
22…ローラ付き支持部材
23…支持部材
24…羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に羽根を取り付けた搬送管を回転可能な状態で斜面に沿って配設し、前記搬送管内で搬送物を流下させて前記斜面の上方から下方へ搬送物を搬送する搬送装置であって、
前記搬送管内の搬送物の重量が与える負荷を計測するセンサと、
前記センサから得られる値に基づいて搬送管の閉塞を判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする閉塞検知機能付き搬送装置。
【請求項2】
前記センサは、前記負荷として前記搬送管を回転させる駆動源の電流値を計測する電流センサであること、
を特徴とする請求項1に記載の閉塞検知機能付き搬送装置。
【請求項3】
前記センサは、前記負荷として前記搬送管を支持する支持部材に加わる荷重を計測する荷重センサであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の閉塞検知機能付き搬送装置。
【請求項4】
前記センサは、前記負荷として前記搬送管を支持する支持部材の歪みを計測する歪みセンサであること、
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の閉塞検知機能付き搬送装置。
【請求項5】
前記搬送物は、コンクリート、骨材又は土砂であること、
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の閉塞検知機能付き搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−260624(P2008−260624A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106150(P2007−106150)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(504024597)独立行政法人水資源機構 (15)
【出願人】(300074329)財団法人水資源協会 (4)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(594208525)株式会社大阪砕石工業所 (7)
【Fターム(参考)】