説明

開口構造

【課題】開位置において引戸を見栄え良く納め得る開口構造を提供する。
【解決手段】開口構造1は、壁体10の両側に略床面3から略天井面2までの高さ寸法とされた第1開口部14と第2開口部15とを設け、これら各開口部のそれぞれを開閉する第1引戸21と第2引戸22とをそれぞれ前記壁体の一壁面13に沿わせるように移動自在に設け、かつ、これら各引戸の高さ寸法を、それぞれ略床面から略天井面までの寸法とする一方、これら各引戸の幅寸法W1,W2を足し合わせた幅寸法と、前記壁体の幅寸法W3とを略同一寸法とし、これら各引戸が、それぞれ開位置とされた状態において、これら各引戸と前記壁体とが厚さ方向で互いに重合する構造とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居等の建物内に設けられる開口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より建物の内壁等に開口部を設け、この開口部を開閉する引戸を設けた開口構造が知られている。このような引戸の納め態様としては、内壁に戸袋を設けて戸袋内に引戸を収納する戸袋納めや、内壁に袖壁を設けてこの袖壁に納める袖壁納めが知られている。このような戸袋納めや袖壁納めでは、引戸を納めた状態(開位置とした状態)では引戸を目立ち難くすることが可能である。しかしながら、戸袋や袖壁を設ける必要があるため、施工性や外観性等を向上させる観点から、これらを設けずに引戸を壁面に沿って納める、いわゆるアウトセット納めが提案されている(例えば、下記特許文献1及び下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−102863号公報
【特許文献2】特開2010−196301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなアウトセット納めでは、引戸が開位置とされた状態では、引戸が存在する側の壁面と引戸との間に段差が形成されることから引戸が目立ち易くなり、見栄えが悪くなる傾向があり、更なる改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、開位置において引戸を見栄え良く納め得る開口構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る開口構造は、壁体の両側に略床面から略天井面までの高さ寸法とされた第1開口部と第2開口部とを設け、これら各開口部のそれぞれを開閉する第1引戸と第2引戸とをそれぞれ前記壁体の一壁面に沿わせるように移動自在に設け、かつ、これら各引戸の高さ寸法を、それぞれ略床面から略天井面までの寸法とする一方、これら各引戸の幅寸法を足し合わせた幅寸法と、前記壁体の幅寸法とを略同一寸法とし、これら各引戸が、それぞれ開位置とされた状態において、これら各引戸と前記壁体とが厚さ方向で互いに重合する構造とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記第1引戸と前記第2引戸とを、前記開位置において互いの戸尻側端面同士が突き合わせられるように、幅方向に沿って略同一直線状を移動自在とされたものとしてもよい。
また、本発明においては、前記第1引戸及び前記第2引戸の戸先側端面が当接する前記第1開口部及び前記第2開口部の戸当り部のうちの少なくとも一方を、壁仕上げ面としてもよい。
また、本発明においては、前記第1開口部及び前記第2開口部のそれぞれの幅寸法を略同一寸法とし、前記第1引戸及び前記第2引戸のそれぞれの幅寸法を略同一寸法としてもよい。
また、本発明においては、前記第1開口部及び前記第2開口部の幅寸法を異なる寸法とし、前記第1引戸及び前記第2引戸の幅寸法を対応する開口部の幅寸法に対応させて異なる寸法としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る開口構造は、上述のような構成としたことで、開位置において引戸を見栄え良く納めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の一実施形態に係る開口構造の一例を模式的に示し、(a)は、一部破断概略正面図、(b)は、(a)におけるX1−X1線矢視に対応させた一部破断概略横断面図である。
【図2】(a)、(b)は、いずれも同開口構造の各引戸を閉位置とした状態を模式的に示し、図1(a)、(b)にそれぞれ対応させた図であり、(a)は、一部破断概略正面図、(b)は、(a)におけるX2−X2線矢視に対応させた一部破断概略横断面図である。
【図3】(a)は、図1(b)におけるZ1部に対応させた一部破断概略拡大横断面図、(b)は、図1(b)におけるZ2部に対応させた一部破断概略拡大横断面図、(c)は、図1(a)におけるY−Y線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(d)は、(c)におけるZ3部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図、(e)は、(c)におけるZ4部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、いずれも本発明の他の実施形態に係る開口構造の一例を模式的に示す一部破断概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の各実施形態では、壁体の一壁面に沿わせるようにして配設された引戸が存在する側において、引戸に対面した状態を基準として、手前側を前方、手前側の面を前面とし、その逆側をそれぞれ後方、背面(後面)として説明し、また、左右方向を説明する。
【0011】
図1〜図3は、第1実施形態に係る開口構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
本実施形態に係る開口構造1は、図1及び図2に示すように、住居等の建物内に設けられ、壁体10の両側に第1開口部14と第2開口部15とを設け、これら各開口部14,15のそれぞれを開閉する第1引戸21と第2引戸22とを設けた構造とされている。これら第1引戸21及び第2引戸22は、壁体10の前面(一壁面)13に沿うように移動自在に設けられている。つまり、これら各引戸21,22は、いわゆるアウトセット納めとされている。
【0012】
第1開口部14及び第2開口部15は、それぞれ略床面3から略天井面2までの高さ寸法とされている。本実施形態では、これら各開口部14,15は、その上側が天井面2によって区画される一方、下側が床面3によって区画されている。
第1開口部14の左右両側のうち戸当り側(図示左側)は、壁体10の左側に配設された内壁によって区画され、その戸当り部がこの内壁の壁仕上げ面4とされる一方、その逆側(図示右側)は、壁体10の壁仕上げ面とされた左見込み面11によって区画されている。
第2開口部15の左右両側のうち戸当り側(図示右側)は、壁体10の右側に配設された内壁によって区画され、その戸当り部がこの内壁の壁仕上げ面5とされる一方、その逆側(図示左側)は、壁体10の壁仕上げ面とされた右見込み面12によって区画されている。
【0013】
つまり、本実施形態では、各開口部14,15の左右両内側面が壁仕上げ面とされている。この壁仕上げ面としては、壁材の表面に貼着された合成樹脂化粧シート(フィルム)や突板等によって構成してもよく、または、下地壁に貼着された壁紙やクロス紙等によって構成してもよい。さらには、下地壁に塗布された塗料や漆喰等の塗り壁剤等によって構成してもよい。
また、本実施形態では、これら第1開口部14及び第2開口部15のそれぞれの幅寸法W4,W5を、略同一寸法としている。
【0014】
第1開口部14を開閉する第1引戸21及び第2開口部15を開閉する第2引戸22は、各開口部14,15の高さ寸法に対応させて、いずれも略床面3から略天井面2までの高さ寸法とされている。
また、これら第1引戸21及び第2引戸22は、本実施形態では、略同一寸法とされた各開口部14,15のそれぞれの幅寸法W4,W5に対応させて、それぞれの幅寸法W1,W2を略同一寸法としている。
また、壁体10の幅寸法W3は、第1引戸21の幅寸法W1と第2引戸22の幅寸法W2とを足し合わせた寸法とされている。
【0015】
これら第1引戸21及び第2引戸22のそれぞれの戸先側端部には、図1及び図2に示すように、取手23が設けられている。この取手23は、本実施形態では、図3(a)に示すように、各引戸21,22の前面及び背面に、厚さ方向にそれぞれ形成された凹部に嵌め込まれて固定された凹状取手23,23とされている。つまり、これら凹状取手23,23は、各引戸21,22の表面から凹むような形状とされている。
このような凹状取手23とすることで、壁体10の前面13に沿うようにスライド移動されて開閉される各引戸21,22と壁体10の前面13との隙間(クリアランス)を、突出するようなハンドル等を設けた場合と比べて小さくすることができる。
また、これら引戸21,22は、本実施形態では、採光窓や鏡板等を有しておらず、その前面及び背面が上記した凹状取手23を除いて、概ね段差のないフラットな略平坦面とされている。
【0016】
また、これら各引戸21,22は、その上端面が天井面2に近接対面し、下端面が床面3に近接対面した状態で移動自在に支持される構造とされており、本実施形態では、上吊り構造とされている。これら各引戸21,22の上端部の戸幅方向(左右方向)両側端部近傍には、図1(a)及び図2(a)に示すように、ランナー部材20,20が連結固定されている。このランナー部材20は、公知のもので、図3(c)、(d)に示すように、各引戸21,22の上端部に設けられたカップ部等に連結固定される連結固定部やこの連結固定部に回動自在に設けられた転動部(ローラー)等を備えている。本実施形態では、天井に埋め込まれるようにして固定された上レール6に、ランナー部材20の転動部が転動自在に収容保持されて各引戸21,22が開閉自在に支持されている。
【0017】
上レール6は、図3(d)に示すように、上枠や天井下地等に固定される上板部と、この上板部の幅方向両側縁から垂れ下がるように連成された両側板部とを備え、これらによって下方に向けて開口する形状とされている。この上レール6の開口内にランナー部材20の転動部等が収容される。また、上レール6の両側板部の下端縁には、当該上レール6の幅方向内方側に向けて突出する案内片がそれぞれに設けられており、これら案内片に、ランナー部材20の転動部が転動自在に支持される。
また、この上レール6は、図1(a)及び図2(a)に示すように、各引戸21,22の開閉軌跡に対応させて個別に左右の各開口部14,15の上側にそれぞれ設けられている。各上レール6の長手方向両端部には、各引戸21,22の閉位置(図2に示す状態)から更なる閉方向への移動及び各引戸21,22の開位置(図1に示す状態)から更なる開方向への移動を防止するストッパー片等のストッパー部7,7がそれぞれに設けられている。
これら上レール6は、各引戸21,22を幅方向に沿って略同一直線状を案内支持可能なように、壁体10の厚さ方向で同じ位置となるように略同一直線状に設けられている。
【0018】
上記のような上吊り構造の引戸21,22とすることで、下レールが不要となり、床面3の見栄えを向上させることができる。
なお、上レール6を含む上枠等を天井に埋め込むようにして固定する態様に代えて、上レール6を含む上枠等を天井面2に付設するようにして固定する態様としてもよい。この場合には、各開口部14,15の上側が上枠によって区画されることとなる。また、これに対応させて、各引戸21,22の高さ寸法を適宜のものとすればよい。
また、上記した上レール6を各引戸21,22の共用のものとし、開位置における各引戸21,22の各戸尻側端部に対応させた位置(図例では、略中央部)にストッパー部を設けるようにしてもよい。
【0019】
また、これら各引戸21,22の下端部には、図3(c)、(e)に示すように、下方(床面3)に向けて開口したガイド凹溝24が、図1(a)及び図2(a)に示すように、各引戸21,22の戸幅方向に沿って形成されている。このガイド凹溝24には、床に設けられたマグネットガイド8のガイドピン9を吸引する磁石や鉄板等の吸着部が適所に設けられている。
マグネットガイド8は、図1(a)及び図2(a)に示すように、各引戸21,22の移動軌跡に沿うようにして複数箇所(図例では、3箇所づつ)に設けられており、図3(e)に示すように、床に埋め込まれるようにして配設されている。このマグネットガイド8は、床面3から上下方向に沿って出没自在とされた磁石等を有したガイドピン9を有している。このガイドピン9は、各引戸21,22のガイド凹溝24に吸引されて床面3から突出し、ガイド凹溝24に挿入され、各引戸21,22の下部を開閉方向に沿ってガイドするガイド部として機能する。一方、各引戸21,22が通過し、ガイド凹溝24の吸着部による吸引力が除荷されれば、ガイドピン9は、ケース内に自重によって没入し、その上端面が床面3と略面一状となる。
【0020】
上記のような出没自在とされたマグネット式のガイドピン9によってガイド部を構成することで、見栄えが良く、また、躓き等を防止することもできる。
なお、このような出没自在とされたガイドピン9によってガイド部を構成する態様に代えて、各引戸21,22のガイド凹溝24に挿入(遊挿)される固定ピンを床面3の適所に設ける態様としてもよい。この場合は、上記吸着部は不要である。
【0021】
上記した上レール6によって案内支持される各引戸21,22は、本実施形態では、図1及び図3(b)に示すように、開位置において、互いの戸尻側端面21b,22b同士が突き合わせられるように略同一直線状を移動自在とされている。つまり、図1(b)及び図3(b)に示すように、これら引戸21,22がそれぞれ開位置とされた状態では、各引戸21,22の互いの戸尻側端面21b,22b同士が突き合わせられるようにして当接し、各引戸21,22の前面及び背面のそれぞれが略同一平面状となる。また、上記開位置とされた状態では、第1引戸21の戸先側端面21aが第1開口部14の右内側面を構成する壁体10の左見込み面11と略同一平面状に位置する(図3(a)も参照)。また、上記開位置とされた状態では、第2引戸22の戸先側端面22aが第2開口部15の左内側面を構成する壁体10の右見込み面12と略同一平面状に位置する(図3(a)も参照)。
【0022】
つまり、これら第1引戸21及び第2引戸22がそれぞれ開位置とされた状態では、図1に示すように、これら引戸21,22と壁体10とが厚さ方向で互いに重合する構造とされている。つまりは、手前側から見た状態では、これら引戸21,22によって壁体10の全体が覆い隠される構成とされている。
一方、閉位置とされた状態では、図2に示すように、第1引戸21の戸先側端面21aが第1開口部14の戸当り部としての壁仕上げ面4に当接し、戸尻側端部が壁体10の左側端部と厚さ方向で重合する。また、第2引戸22の戸先側端面22aが第2開口部15の戸当り部としての壁仕上げ面5に当接し、戸尻側端部が壁体10の右側端部と厚さ方向で重合する。なお、この閉位置における各引戸21,22の戸尻側端部と壁体10の左右両側端部との重ね合わせ部位の幅寸法は、各引戸21,22の背面と壁体10の前面13との間の隙間等に応じて、明かり漏れ等を防止する観点等から適宜の寸法としてもよい。
【0023】
上記構造とされた本実施形態に係る開口構造1によれば、開位置において各引戸21,22を見栄え良く納めることができる。
つまり、第1引戸21及び第2引戸22のそれぞれの高さ寸法を、略床面3から略天井面2までの高さ寸法とし、これらを開位置とした状態で壁体10と両引戸21,22とが厚さ方向で互いに重合する構造としている。従って、開位置では、これら両引戸21,22が存在する側から見た状態では、図1(a)に示すように、これら両引戸21,22が壁状の外観を呈することとなる。従って、開位置では、これら引戸21,22が目立ち難くなり、これら引戸21,22を見栄え良く納めることができる。つまりは、これら引戸21,22が存在する側でこれらに対面した状態では、これら引戸21,22によって壁体10が覆い隠され、これら引戸21,22が壁状となるので、見栄えを向上させることができる。
また、これら引戸21,22を開位置とした状態では、略床面3から略天井面2までの高さ寸法とされた各開口部14,15が大きく開放されるとともに、これら引戸21,22が壁状となり目立ち難くなることから、開閉建具のない無目枠仕上げ状のすっきりとした印象を与えることができる。
【0024】
また、本実施形態では、第1引戸21と第2引戸22とを、開位置において互いの戸尻側端面21b,22b同士が突き合わせられるように、幅方向に沿って略同一直線状を移動自在としている。従って、各引戸21,22が開位置とされた際に、例えば、厚さ方向に異なる位置で移動自在とされたようなものと比べて、引戸21,22間に段差等が形成され難いので、よりすっきりとした印象を与えることができ、より見栄えを向上させることができる。
【0025】
さらに、本実施形態では、第1引戸21及び第2引戸22の戸先側端面21a,22aがそれぞれ当接する第1開口部14及び第2開口部15の各戸当り部を、壁仕上げ面4,5としている。従って、各引戸21,22を開位置とした状態では、例えば、開口枠の戸当り部に戸先側端面を当接させるようなものと比べて、すっきりとした無枠状の開口部14,15となり、より見栄えを向上させることができる。
また、本実施形態では、各開口部14,15の反戸当り側の内側面も壁仕上げ面とされた壁体10の左右の見込み面11,12としているので、より無枠状の印象を与えることができ、見栄えを向上させることができる。
【0026】
さらにまた、本実施形態では、第1開口部14及び第2開口部15のそれぞれの幅寸法W4,W5を略同一寸法とし、第1引戸21及び第2引戸22のそれぞれの幅寸法W1,W2を略同一寸法としている。従って、各引戸21,22を開位置とした状態において壁状の外観を呈する各引戸21,22の戸尻側端部の外形線が略中央に位置することとなるため、よりすっきりとした印象を与えることができ、より見栄えを向上させることができる。また、各引戸21,22を同じ幅寸法とすることで、取り扱い性が良く、また、製造コストを低減させることもできる。
【0027】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図4(a)、(b)は、第2実施形態に係る開口構造の一例について説明するための概念的な説明図であり、図1(b)、図2(b)にそれぞれ対応させた図である。
なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
【0028】
本実施形態に係る開口構造1Aは、第1開口部14Aの幅寸法W8と第2開口部15Aの幅寸法W9とを異なる寸法としている。図例では、第1開口部14Aの幅寸法W8を、第2開口部15Aの幅寸法W9よりも大きくした例としている。
また、各引戸21A,22Aの幅寸法W6,W7を、これら各開口部14A,15Aのそれぞれの幅寸法W8,W9に対応させて異なる寸法としている。つまり、第1引戸21Aの幅寸法W6を、第1開口部14Aの幅寸法W8に対応させた寸法とし、第2引戸22Aの幅寸法W7を、第2開口部15Aの幅寸法W9に対応させた寸法としている。
このように、本実施形態に係る開口構造1Aでは、壁体10の両側に形成された各開口部14A,15Aのそれぞれの幅寸法W8,W9が異なる場合にも、上記第1実施形態と概ね同様、見栄えを向上させることができる。
【0029】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図4(c)、(d)は、第3実施形態に係る開口構造の一例について説明するための概念的な説明図であり、図1(b)、図2(b)にそれぞれ対応させた図である。
なお、第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
【0030】
本実施形態に係る開口構造1Bは、第1引戸21と第2引戸22とを、厚さ方向に異なる位置で移動自在としている。つまり、これら引戸21,22は、略同一直線状を移動自在とされておらず、これら引戸21,22が開位置とされた状態では、互いの戸尻側端面21b,22b同士が突き合わせられることなく厚さ方向にずれた位置となる。図例では、第1引戸21を第2引戸22よりも手前側に設けた例を示している。また、この第1引戸21の移動軌跡に対応させて、図示は省略しているが、上記した上レール6を設けるとともに、マグネットガイド8を設けている。
このように、本実施形態に係る開口構造1Bでは、開位置において各引戸21,22間に段差が形成されるものの、上記第1実施形態と概ね同様、見栄えを向上させることができるとともに、設計の自由度を向上させることができる。
なお、上記第2実施形態において説明したように、壁体10の両側の各開口部の幅寸法を異ならせたものとし、各引戸の幅寸法をそれぞれの開口部の幅寸法に対応させて異なる寸法としたものとしてもよい。
【0031】
なお、上記各実施形態では、第1引戸21(21A)及び第2引戸22(22A)の戸先側端面21a,22aがそれぞれ当接する第1開口部14(14A)及び第2開口部15(15A)の各戸当り部を、壁仕上げ面4,5とした例を示しているが、いずれか一方の戸当り部のみを壁仕上げ面としてもよい。この場合は、他方側に戸当り部となる縦枠等を設けるようにしてもよい。または、両方の戸当り部を縦枠等からなるものとしてもよい。
また、上記各実施形態では、各開口部14(14A),15(15A)の反戸当り側の内側面を、壁体10の左右の見込み面11,12とした例を示しているが、壁体10の左右の側端部に設けた方立部材等の縦枠によって反戸当り側の内側面を構成してもよい。
さらに、本実施形態では、壁体10の前面13をフラットな略平坦面とした例を示しているが、手前側に向けて開口する凹所や収納部等をこの壁体10に設けるようにしてもよい。さらには、当該壁体10の一部または全体を、複数の収納部を有したキャビネットによって構成するようにしてもよい。この場合は、各引戸21(21A),22(22A)がキャビネットの収納部の開閉扉としても機能する。
【0032】
さらにまた、上記各実施形態では、各引戸21(21A),22(22A)を支持する上レール6を下向きに開口し、両側板部に、ランナー部材20の転動部を転動自在に支持する案内片を連成したものとしているが、このような態様に限られない。例えば、上レールは、ランナー部材の形状や構造に応じて、略L字状とされたものや、横向きに開口した略コ字状(略倒U字状)とされたものとしてもよい。
さらには、上記各実施形態では、各引戸21(21A),22(22A)を上吊り構造とした例を示しているが、このような態様に限られず、下荷重構造としてもよい。この場合は、各引戸21(21A),22(22A)の上端部に、ランナー部材に代えて、上レール等に係合する案内片やピボット等を設けるようにしてもよい。また、この場合は、各引戸21(21A),22(22A)の下端部に戸車を設け、この戸車をガイドする下レール等を床面3に敷設乃至は床に埋設するようにしてもよい。
【0033】
また、上記各実施形態に係る開口構造1,1A,1Bは、例えば、収納空間や水廻り空間、個室(和室、洋室)空間などの二つの空間と居間や廊下などの共用空間とを壁体10によって区画し、その両側の第1開口部及び第2開口部を必要に応じて開閉させたい場合等に用いるようにしてもよい。その他、多様化する建物内空間の区画態様や趣向等に応じて、種々の箇所に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1,1A,1B 開口構造
2 天井面
3 床面
4 壁仕上げ面(第1開口部の戸当り部)
5 壁仕上げ面(第2開口部の戸当り部)
10 壁体
13 壁体の前面(一壁面)
14,14A 第1開口部
15,15A 第2開口部
21,21A 第1引戸
21a 第1引戸の戸先側端面
21b 第1引戸の戸尻側端面
22,22A 第2引戸
22a 第1引戸の戸先側端面
22b 第1引戸の戸尻側端面
W1,W6 第1引戸の幅寸法
W2,W7 第2引戸の幅寸法
W3 壁体の幅寸法
W4,W8 第1開口部の幅寸法
W5,W9 第1開口部の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の両側に略床面から略天井面までの高さ寸法とされた第1開口部と第2開口部とを設け、これら各開口部のそれぞれを開閉する第1引戸と第2引戸とをそれぞれ前記壁体の一壁面に沿わせるように移動自在に設け、かつ、これら各引戸の高さ寸法を、それぞれ略床面から略天井面までの寸法とする一方、これら各引戸の幅寸法を足し合わせた幅寸法と、前記壁体の幅寸法とを略同一寸法とし、これら各引戸が、それぞれ開位置とされた状態において、これら各引戸と前記壁体とが厚さ方向で互いに重合する構造とされていることを特徴とする開口構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1引戸と前記第2引戸とは、前記開位置において互いの戸尻側端面同士が突き合わせられるように、幅方向に沿って略同一直線状を移動自在とされていることを特徴とする開口構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1引戸及び前記第2引戸の戸先側端面が当接する前記第1開口部及び前記第2開口部の戸当り部のうちの少なくとも一方は、壁仕上げ面とされていることを特徴とする開口構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記第1開口部及び前記第2開口部のそれぞれの幅寸法を略同一寸法とし、前記第1引戸及び前記第2引戸のそれぞれの幅寸法を略同一寸法としたことを特徴とする開口構造。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記第1開口部及び前記第2開口部の幅寸法を異なる寸法とし、前記第1引戸及び前記第2引戸の幅寸法を対応する開口部の幅寸法に対応させて異なる寸法としたことを特徴とする開口構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−112114(P2012−112114A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259990(P2010−259990)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】