説明

開口部装置

【課題】 使用者の意思に従って確実に障子が動作され、かつハイパワーな駆動源を必要としない開口部装置を提供する。
【解決手段】 、四辺の枠体10と、該枠体内を左右方向に移動可能に構成された障子30と、この障子を開閉方向に駆動する駆動手段300とを具備する開口部装置100において、障子は使用者が該障子を開閉するために手を掛ける操作部209を備えるとともに、該操作部の動作を感知する感知手段214を備え、さらに感知手段の感知した操作部の動作に基づいて駆動手段を制御する制御手段40を備え、障子は制御手段の制御に基づいて操作部が使用者により力を加えられる方向に駆動手段により駆動されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子を開閉するのに大きな力を必要としない開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等商業施設では、顧客の利便性を図るため、その出入り口ドアを自動開閉式にしたものが使用されていることが多い。自動ドアなどの電動のスライディングサッシのスイッチは人を感知するセンサか、扉に取り付けられたタッチスイッチのようなものが通常使用されている。特許文献1には、ドアの駆動源モータの給電可否を切換可能な、切換スイッチを備えた自動ドア開示されている。
【特許文献1】特開2004−132130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、特に都市部では高層マンション等の住居に人気が高まっている。しかし、マンション等居住用のサッシは通常店舗等に使用されているものとは異なり、高い気密性が要求されている。すなわち、枠と障子との間に気密材が配設されており、その摩擦抵抗によって、開閉に要する力はより大きなものである。特に高層階に使用されるような場合、風圧によって障子と気密材との当たりが強くなり、さらに開閉に大きな力が要求される。
【0004】
かかる居住用住宅のサッシにも電動で障子を駆動するものが望まれている。通常自動ドアに使用される障子の駆動装置のパワーには限りがあるので、上記人を感知するセンサや、タッチスイッチで障子の開閉動作を制御しようとしても、無風のときには動くが風の強いときには動かなかったり、軽量の障子は動くがガラスが厚い、しかも複層ガラスであるというような場合には動かなかったり、という不具合が発生することがあるという問題があった。また、それに対処するために、ハイパワーの駆動源を使用することも考えられるが、その場合にはコストが上昇するという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、使用者の意思に従って確実に障子が動作され、かつハイパワーな駆動源を必要としない開口部装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明は、四辺の枠体(10)と、該枠体内を左右方向に移動可能に構成された障子(30)と、この障子を開閉方向に駆動する駆動手段(300)とを具備する開口部装置(100)であって、障子は使用者が該障子を開閉するために手を掛ける操作部(209、402)を備えるとともに、該操作部の動作を感知する感知手段(214)を備え、さらに感知手段の感知した操作部の動作に基づいて駆動手段を制御する制御手段(80)を備え、障子は制御手段の制御に基づいて操作部が使用者により力を加えられる方向に駆動手段により駆動されるように構成されたことを特徴とする開口部装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の開口部装置(100)において、操作部は障子の縦框(34)に取り付けられた把手(209)であり、把手は所定範囲内で両方向に回動自在であるとともに自然状態では弾性部材(206)の付勢により中立位置に戻されるように構成され、感知手段(214)は把手の左右への回動を感知することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の開口部装置(100)において、操作部は障子の縦框(434)に取り付けられた引き手(402)であり、引き手は所定範囲内で左右に摺動自在であるとともに、自然状態では弾性部材の付勢により摺動可能範囲の略中央部に戻されるように構成され、感知手段は引き手の左右への摺動を感知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、例えば使用者が障子を開けようとした場合に、操作部を障子が開く方向に手を掛けて動かすと、駆動手段も障子をその方向に駆動するように制御手段によりその動作を制御される。従って、駆動手段のパワーが障子を開くに十分な大きさがある場合には、使用者が障子を開く方向に操作部に手を掛けて動かすことにより、障子が駆動手段により自動的に開く方向に動作される。
【0011】
一方、駆動手段のパワーが障子を開くに十分な大きさでない場合にも、使用者が操作部に、障子の開く方向に力を加え続けることで、駆動手段のパワーを補って、障子を動作させることが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、例えば使用者が障子を開けようとした場合に、把手を障子が開く方向に手を掛けて回動させると、駆動手段も障子をその方向に駆動するように制御手段によりその動作を制御される。従って、駆動手段のパワーが障子を開くに十分な大きさがある場合には、使用者が障子を開く方向に把手に手を掛けて回動することにより、障子が駆動手段により自動的に開く方向に動作される。
【0013】
一方、駆動手段のパワーが障子を開くに十分な大きさでない場合にも、使用者が把手に、障子の開く方向に力を加え続けることで、駆動手段のパワーを補って、障子を動作させることが可能となる。したがって、コストの高い大きなパワーを備えた駆動装置を備える必要がない。
【0014】
請求項3の発明によれば、例えば使用者が障子を開けようとした場合に、引き手を障子が開く方向に手を掛けて摺動させると、駆動手段も障子をその方向に駆動するように制御手段によりその動作を制御される。従って、駆動手段のパワーが障子を開くに十分な大きさがある場合には、使用者が障子を開く方向に引き手に手を掛けて摺動させることにより、障子が駆動手段により自動的に開く方向に動作される。
【0015】
一方、駆動手段のパワーが障子を開くに十分な大きさでない場合にも、使用者が引き手に、障子の開く方向に力を加え続けることで、駆動手段のパワーを補って、障子を動作させることが可能となる。したがって、コストの高い大きなパワーを備えた駆動装置を備える必要がない。
【0016】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である、片側嵌め殺しの片開き障子を備えた開口部装置を室内側の視点から示す正面図である。図示の開口部装置100は、上枠11、左縦枠12、下枠13(ただし下枠13は室内側床面FLの下方にあるので図1には表されていない。)、及び右縦枠14からなる四辺の枠体10内に、固定式(嵌め殺しの)外障子20と、図面左右方向に移動可能な内障子30とを備えている。
【0019】
外障子20は、上桟21、下桟23、及び右縦框24(ただし右縦框24は、後述する内障子30の左縦框32と召し合っており、図1では、左縦框32の背後に位置するため現れていない。)を備えている。左縦框は、枠体10の左縦枠12と兼用されている。これら上桟21、下桟23、右縦框24、及び左縦枠12により構成される枠内にガラスパネル26が固定されている。右縦框24には、後に説明する内障子の左縦框32に取り付けられているクレッセント35と係合する係合部材25が取り付けられている。前記したとおり、外障子20は枠体10に対して固定されている。
【0020】
内障子30は、上桟31、左縦框32、下桟33、及び右縦框34を備え、これら四辺の桟、框内にガラスパネル36が嵌め込まれている。内障子30は、枠体10内で下枠13上を紙面左右方向に移動可能に構成されている。左縦框32にはクレッセント35が取り付けられており、内障子30の閉鎖状態において、これを回動させて前記係合部材25に係合させることにより、開口部装置100を室内側から施錠することができる。
【0021】
一方、内障子30の右縦框34には把手ユニット200が取り付けられている。把手ユニットのハンドル209を左右方向に回動させることにより内障子30の開閉動作が行われる。把手ユニット200については後に詳しく説明する。把手ユニット200内には、ハンドルが操作された方向に応じて所定の信号を発信する、送信部202(図4、及び図5参照)が内蔵されている。
【0022】
当該開口部近傍の室内側壁面には制御ユニット40が設置されている。制御ユニット40は、ユニット電源のON/OFFを手動で操作するスイッチ41と、送信部202から発信された信号を受信する受信部42(図7(A)参照)、及び後述する直動機構300の動作を制御する制御装置80(図7(A)参照)とを内蔵している。ユニット正面には受信部42が送信部202からの信号を受信中であることを使用者に伝えるパイロットランプ86が設けられている。なお、スイッチ41は手動に代えて、別途設けたリモコン装置から発信される信号によりON/OFF操作を行えるよう構成しても良い。
【0023】
図2は、図1に示す開口部装置100の垂直断面図であり、(A)はIIA‐IIA矢視断面図、(B)はIIB‐IIB矢視断面図である。図面左側が室外側、右側が室内側を表している。なお、図2において、図1に表された部材と同一部材が表されている場合には、図1におけるものと同一の参照符号を付してその説明を省略することがある。上下の枠11、13の間に(A)では室外側(図面左側)に嵌め殺しの外障子20、室内側(図面右側)に可動式の内障子30が表されている。上下の枠11、13の室内側にはそれぞれ上側額縁240、下側額縁250が設けられている。
【0024】
外障子20の上桟21は、上枠11と一体に固定されている。また外障子20の下桟23は下枠13と一体に形成されている。図2(A)における内障子30は断面ではなく召し合わせ框である左縦框32の左側面部がいわゆる見え線として現れている。
【0025】
図2(B)では、内障子30の断面のみが現れている。上枠11の内障子30寄り下面には、紙面垂直方向(内障子30の可動方向)に長手を有する振れ止め片51が下方に向けて延設されている。一方、内障子30の左右の縦框32、34の上端には、振れ止めピース52が取り付けられている。振れ止めピース52には、紙面垂直方向(内障子30の可動方向)に長手を有する上向きのスリットが形成されている。そして、このスリットに前記振れ止め片51が上方から差し入れられることにより、内障子30上部の室内外方向への振れが抑制される。内障子30の下桟33内には戸車53が回転自在に取り付けられている。一方、下枠13の内障子30下方には凸条54が紙面垂直方向(内障子30の可動方向)を長手方向に形成されている。戸車53が、凸条54上を転動されることにより内障子30の開閉が行われる。
【0026】
上枠11の室内側の下面には、直動機構300が取り付けられている。直動機構300は制御ユニット40に内蔵される制御装置80による制御を受けて、内障子30に駆動力を与える機構である。図2(C)は、直動機構300の部分を拡大して示す図である。直動機構300は、上枠11に固定して取り付けられ、下方に開口320を有するケース310を備えている。ケース310はさらに上部室311と、前記開口320を備える下部室312に仕切られている。
【0027】
下部室312内には永久磁石302を備える可動子303が、室内左右側面側に上下の軸の周りに回転自在に取り付けられた多数のローラ304、304、…を介して、紙面垂直方向(内障子30の可動方向)に移動可能に取り付けられている。永久磁石302は、紙面垂直方向に沿って下部室内312に多数配置されている。永久磁石302は隣り合うもの同士の極性を互いに異ならせて配置され、直動機構300の可動子を構成している。
【0028】
一方、上部室311内には当該直動機構300の固定子たるコイル301が取り付けられている。固定子は鉄心入りのコイル301を複数長手方向に縦列させたもので、各コイル301、301、…は磁気センサ320(図2には表されていない。図7(A)参照)により検出される上記永久磁石302との相対値に基づいて、制御ユニット40内に内蔵されている制御装置80により、同一方向に駆動力が発生するように通電方向が切り替えられる。
【0029】
可動子303の下面側には、取り付けねじ307により連結材305が固定されている。連結材305はさらに連結材306を介して、取り付けネジ308a、308bにより内障子30左縦框32の側面側に固定されている。
【0030】
上記構成により、上枠11側には直動機構300の固定子(コイル301)が、内障子30側には可動子(永久磁石302)が固定され、上下室311、312内でコイル301と永久磁石コイル302とが隣接配置される。制御装置80は、後述する把手ユニット200の送信部202(図4、5参照)から送出される信号と、上記磁気センサの検出するコイル301と永久磁石302との相対位置情報とに基づいて、固定子の各コイル301、301、…への通電方向をタイミングよく切り換え各コイル301、301、…の鉄芯に、永久磁石302、302、…の極性に対して吸引・反発の極性をもたせることで、所定方向の駆動力を固定子/可動子間に作用させる。上枠11側には固定子(コイル301)が、内障子30側には可動子(永久磁石302)が固定されて配設されているため、相対的に内障子30が枠体10内で開閉駆動力を与えられる。
【0031】
図3は、図1に示す開口部装置のIII‐III矢視水平断面図である。この図では図面上方が室外側を、下方が室内側を表している。なおこの図においても、図1に表された部材と同一部材が表されている場合には、図1におけるものと同一の参照符号を付してその説明を省略することがある。
【0032】
左右の縦枠12、14の間には、室外側に外障子20が固定され、室内側には可動の内障子30が図面左右方向に移動可能となるよう取り付けられている。内障子30の左縦框の左側面には戸当たりピース37が設けられ、左縦枠12への衝突の際の衝撃を和らげている。右縦框34の室内側の面34には把手ユニット200が取り付けられている。なお、内障子30の左縦框32と固定の外障子20の右縦框24とは召し合わされている。また、開口部装置100の両側室内側には左右の額縁260、270が設けられている。さらに右額縁270から右に延設されている室内壁パネルWには制御ユニット40が取り付けられている。制御ユニット40の室内側の面には手動スイッチ41が設けられている。手動スイッチ41を室外方向に押し込むことにより、制御スイッチ41のON/OFFの切り替えが可能とされている。
【0033】
図4(A)は把手ユニットの内部構造を示す正面図、(B)は把手ユニットの側面図である。また、図5(A)は把手ユニットの動作を内部構造とともに示す正面図、(B)は把手ユニットの内部構造を示す側面図である。以下にこれらの各図を参照しつつ、把手ユニット200の構造と動作、及びその機能に付いて説明する。
【0034】
まず、台座201の上下には、上部取り付け孔280と下部取り付け孔290とが設けられており、これらの孔に取り付け部材を差し入れて、台座201が、室内壁面パネルWに固定される。台座201は上下に長い皿型をしており、室内壁パネルWとの間には縦長の所定空間(以下において空室230という。)が形成される。なお台座201の室内側面には意匠性を高めるため台座カバー203が取り付けられている。台座カバー203の中央やや上方寄りには後述するハンドルシャフト210を受け入れる孔220が設けられている。さらに空室230内には孔220に連通する内周面を有するハンドル固定部211が台座201の空室内面側に取り付けられている。ハンドル209の長手方向一端の一面側にハンドル209の長手方向とは直交する方向にハンドルシャフト210が取り付けられている。ハンドルシャフト210の断面形状は略正方形である。ハンドルシャフト210は、孔220及びハンドル固定部211の内周側に差し入れられて、所定角度の範囲で回動自在とされている。所定の角度については後に説明する。ハンドル209の台座201への取り付け面には、合成樹脂製のワッシャ−208が配設されている。ワッシャ208を合成樹脂により形成することで、回動されるハンドル209と台座201との間の摩擦が低減され、また衝撃が和められる。
【0035】
ハンドルシャフト210の先端側には、内障子右縦框34の室内側面に近接するように、回転ピース204が取り付けられている。回転ピース204は、ハンドルシャフト210の回動とともに回動される。回転ピース204の上部には、湾入部224(図6参照)が設けられている。また、回転ピース204の下部には、ピン205が回転ピース204の平面に直交する方向かつ内障子右縦框34の室内側面とは反対方向に延設されている。空室230内の回転ピース204の下方にはスライドピース207が配置されている。スライドピース207はその正面方向垂直断面形状が臼状をなしており、上部内面は漏斗状にえぐられている。スライドピース207は、空室230内において常にコイルばね206(206a、206b)により上方に付勢されており、空室230内を上下方向に摺動可能である。自然状態においては、回転ピース204のピン205は、スライドピース207の前記漏斗形状の底部(図6(A)のP点参照)に当接されている。
【0036】
台座201の孔220の上方内面側には補強フレーム212が取り付けられている。補強フレーム212の先端側にはスイッチ取り付けネジ213により検出スイッチ214が取り付けられている。検出スイッチ214の下面側からは可倒子216が下向きに取り付けられている。可倒子216の先端は回転ピース204の湾入部224内に差し入れられている。なお、可倒子216は不図示の付勢機構により、力が加えられていない自然状態においては、中央位置に戻される。
【0037】
空室230の下部には送信部202が設けられている。送信部202は、検出スイッチ214が検出した、ハンドル209が操作をされている状況に関する情報を、制御ユニット40に内蔵されている受信部42あて発信する。送信部202には、電源としての電池が内蔵されている。
【0038】
図6は、検出スイッチ、回転ピース204、及びスライドピース207の動作を示す図である。なお、図6は図4(A)の視点に対応する。(A)は、ハンドル209に力が加えられていないときの状態を示し、(B)は、(A)の状態からハンドル209に手を掛けてハンドル209を図面の時計回り方向に力を加えたときの状態を示す。
【0039】
図6(A)の状態においては、ハンドル209はフリーの状態(図5(A)のNのポジション)にあり、この状態においては回転ピース204の垂直方向に観念される中心軸は、直立している。回転ピース204の下部に取り付けられているピン205は、スライドピース207の臼状断面の底部中央(図6(A)にてPで示される点)に当接されている。このときスライドピース207は、上記のとおりコイルばね206(図4(A)、図5(B)参照)により上方へと付勢を受けている。また、スライドピース207は、空室203内を上下方向に摺動可能であるが、このときが摺動範囲の上死点にあり、臼状断面の底部P点でピン205を上方に押圧している。一方、この状態において、回転ピース204の上部湾入部224の入り口部にある凸部225、226は検出スイッチ214の下面から下方に向けて延設されている可倒子216には触れていない。可倒子216がこの姿勢のとき、検出スイッチ214の上部に設けられた端子215a〜215cからは、電流が流れていない。
【0040】
次に、ハンドル209を図5(A)のRのポジションに回動したときについて説明する。図6(B)がこのときの、検出スイッチ、回転ピース204、及びスライドピース207の動作を示す図である。この状態においては回転ピース204の垂直方向に観念される中心軸は、時計回り方向に傾いている。回転ピース204の下部に取り付けられているピン205は、スライドピース207の臼状断面の底部左寄りコーナー部(図6(B)にてQ1で示される点)にまで移動されて当接されている。このときも、スライドピース207は、コイルばね206により上方へと付勢を受けていて、このときが摺動範囲の下死点にある。一方、この状態において、回転ピース204の上部湾入部224の入り口部にある凸部225が検出スイッチ214の可倒子216に接触して、可倒子216を時計と反対周り方向に回動させている。可倒子216がこの姿勢のとき、検出スイッチ214の上部に設けられた端子215a〜215cから、所定方向の電流が流れて、送信部202はハンドル209が右方向に操作された旨の信号を受信部42に向けて発信する。ハンドル209から手を離すと、コイルばね206に付勢されているスライドピース207が上方に押し上げられ、ピン205がQ1の位置から再びP点に戻され、これに伴って、回転ピース204も反時計回り方向に回動され、もとの直立姿勢に復帰する。このときハンドル209は、中立位置Nに戻されている。すなわち手動操作されたハンドル209は、コイルばね206の弾性により、手を離すと中立位置Nにまで戻される。ハンドルを209を反時計回りに回動したときも同様である。
【0041】
次に、ハンドル209を図5(A)のLのポジションに回動したときについて説明する。図6にはこの状態は表されていない。この状態においては回転ピース204の垂直方向に観念される中心軸は、反時計回り方向に傾いている。回転ピース204の下部に取り付けられているピン205は、スライドピース207の臼状断面の底部右寄りコーナー部(図6(B)にてQ2で示される点)にまで移動されて当接されている。このときも、スライドピース207は、コイルばね206により上方へと付勢を受けていて、摺動範囲の下死点にある。一方、この状態において、回転ピース204の上部湾入部224の入り口部にある凸部226が検出スイッチ214の可倒子216に接触して、可倒子216を時計周り方向に回動させている。可倒子216がこの姿勢のとき、検出スイッチ214の上部に設けられた端子215a〜215cから、所定方向の電流が流れて、送信部はハンドル209が左方向に操作された旨の信号を受信部42に向けて発信する。
【0042】
図7(A)は制御装置80のブロック図、(B)は、制御装置80により制御される直動機構300の駆動力発生方向を、ハンドル209操作方向との関係で示すテーブルである。
【0043】
図7(A)において、制御装置80には、直動機構300の動作制御を実行するCPU81と、CPU81に対するメモリとが設けられている。CPU81はマイクロプロセッサユニットおよびその動作に必要な各種の周辺回路を組み合わせて構成されている。メモリは、例えば直動機構300動作の制御に必要なプログラム、図7(B)に記載のテーブルや、各種のデータを記憶するROM82と、CPU81の作業領域として機能するRAM83とを組み合わせて構成される。そして、CPU81がメモリに記憶されたプログラムと組み合わされることにより、制御装置80に設けられる各種の手段として機能する。
【0044】
CPU81には、入力信号として、受信部42からのハンドル操作位置に関する情報、直動機構磁気センサ320からのコイル301と永久磁石302との相対位置に関する情報が入力ポート84を介して導かれる。
【0045】
CPU81は上述した入力信号及びに基づいて、かつ(B)に記載のテーブルを参照して、出力ポート85を介して直動機構300に対する動作指令を制御する。
【0046】
図8は、ハンドル209の操作と、上記制御装置80により制御される直動機構300により駆動される内障子30の動作との関係を示す図である。(a)の状態は、枠体10内で左右に可動の内障子30は閉鎖位置にあり、ハンドル209は自然状態の中立位置Nにある。この状態からハンドル209に手を掛けて左方向に回動させ、左方向操作位置Lにすると、上記のように回転ピース204が回動され、これを検出スイッチ214が感知して所定の信号を制御ユニット40に送信する。かかる信号を受けて制御装置80は直動機構300(図2参照)が内障子30を開方向に駆動するような制御を行う(図8(b)参照。図において、白矢印は障子動作方向、黒矢印は直動機構300の駆動方向を表している。図8(c)においても同様である。)。このとき、例え直動機構300の駆動力が内障子30を駆動するに十分な大きさでなかったとしても、使用者はハンドル209を左方向に押し続けることにより直動機構300の駆動力を補って内障子30を開方向に動かすことができる。
【0047】
かかる内障子30が開方向に動作しているときに、今度は使用者がハンドル209を逆方向に操作してRの位置にすると、直動機構300はこれまでとは反対向きの駆動力を内障子30に及ぼす。これにより内障子30は減速され(図8(c))、最終的には停止する(図8(d))。このときも、ハンドル209への手動操作方向が障子を減速させるための駆動力方向と一致するので、使用者の操作の力により直動機構300の駆動力を補うことが可能である。ハンドル209から手を離して、一度ハンドルを中立状態Nに戻し、再度いずれかの側に回動させると内障子30は再びハンドル209の回動された方向に直動機構300により駆動される。
【0048】
図9は、他の実施形態にかかる開口部装置に備えられた引き手の動作を示す図である。横方向に示す各(A)、(B)、(C)は引き手の動作を示す。また各図上段は引き手が取り付けられる障子の右縦框434の水平断面を表し、下段は、引き手の室内側視点からの正面図を表している。図示の引き手ユニット400は、第一実施形態にかかる開口部装置100における把手ユニット200と同一位置に取り付けられている。引き手ユニット400は、取り付け部401と、引き手402とを備えている。引き手402は、取り付け部401に対して左右方向に摺動可能、かつ自由状態では、図9(A)の中立位置Nに不図示の弾性部材により戻されるように構成されている。かかる引き手ユニット400と、上記の検出スイッチ214、送信部202、制御ユニット40、及び直動機構300とを組み合わせることにより、開口部装置100と同様の機能、作用効果を奏する開口部装置を構成することが可能である。
【0049】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う開口部装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態である、片側嵌め殺しの片開き障子を備えた開口部装置を室内側の視点から示す正面図である。
【図2】図1に示す開口部装置の垂直断面図であり、(A)はIIA‐IIA矢視断面図、(B)はIIB‐IIB矢視断面図である。また(C)は、直動機構を拡大して示す図である。
【図3】図1に示す開口部装置のIII‐III矢視水平断面図である。
【図4】(A)は把手の内部構造を示す正面図、(B)は把手の側面図である
【図5】(A)は把手の動作を内部構造とともに示す正面図、(B)は把手の内部構造を示す側面図である。
【図6】検出スイッチ、回転ピース204、及びスライドピース207の動作を示す図である。
【図7】(A)は制御装置のブロック図、(B)は、制御装置により制御される直動機構の駆動力発生方向を、ハンドル操作方向との関係で示す図である。
【図8】把手の操作と障子の動作との関係を示す図である。
【図9】他の実施形態にかかる開口部装置に備えられた引き手の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
FL 床面
L 左方向操作位置
N 中立位置
P 上死点
Q1、Q2 下死点
R 右方向操作位置
W 室内壁パネル
10 枠体
11 上枠
12 左縦枠
13 下枠
14 右縦枠
20 外障子(固定)
21 上桟
23 下桟
24 右縦框(召し合わせ)
25 係合部材
26 ガラスパネル
30 内障子(可動)
31 上桟
32 左縦框(召し合わせ)
33 下桟
34 右縦框
35 クレッセント
36 ガラスパネル
37 戸当たりピース
40 制御ユニット
41 スイッチ
42 受信部
51 振れ止め片
52 振れ止めピース
53 戸車
54 凸条
80 制御装置(制御手段)
81 CPU
82 ROM
83 RAM
84 入力ポート
85 出力ポート
86 パイロットランプ
100 開口部装置
200 把手ユニット
201 台座
202 送信部
203 台座カバー
204 回転ピース
205 ピン
206 コイルばね
207 スライドピース
208 ワッシャ
209 ハンドル(把手)
210 ハンドルシャフト
211 ハンドル固定部
212 補強フレーム
213 スイッチ取り付けネジ
214 検出スイッチ
215 端子
216 可倒子
220 孔
224 湾入部
225 凸部
226 凸部
230 空室
240 上側額縁
250 下側額縁
260 左側額縁
270 右側額縁
280 上部取り付け孔
290 下部取り付け孔
300 直動機構(駆動手段)
301 コイル(固定子)
302 永久磁石
303 可動子
304 ローラ
305 連結材(可動子側)
306 連結材(召し合わせ框側)
307 取り付けネジ
308 取り付けネジ
310 ケース
311 上部室
312 下部室
320 磁気センサ
400 引き手ユニット
401 取り付け部
402 引き手
434 縦框

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四辺の枠体と、該枠体内を左右方向に移動可能に構成された障子と、この障子を開閉方向に駆動する駆動手段と、を具備する開口部装置であって、
前記障子は、使用者が該障子を開閉するために手を掛ける操作部を備えるとともに、該操作部の動作を感知する感知手段を備え、
さらに前記感知手段の感知した前記操作部の動作に基づいて、前記駆動手段を制御する制御手段を備え、
前記障子は、前記制御手段の制御に基づいて、前記操作部が使用者により力を加えられる方向に前記駆動手段により駆動されるように構成されたことを特徴とする、開口部装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記障子の縦框に取り付けられた把手であり、
前記把手は所定範囲内で両方向に回動自在であるとともに、自然状態では弾性部材の付勢により中立位置に戻されるように構成され、
前記感知手段は、前記把手の左右への回動を感知する、請求項1に記載の開口部装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記障子の縦框に取り付けられた引き手であり、
前記引き手は所定範囲内で左右に摺動自在であるとともに、自然状態では弾性部材の付勢により前記摺動可能範囲の略中央部に戻されるように構成され、
前記感知手段は、前記引き手の左右への摺動を感知する、請求項1に記載の開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−28839(P2006−28839A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207627(P2004−207627)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】