説明

開閉体用のヒンジ装置

【課題】ベースに対して開閉体を開閉可能に支持するヒンジ装置であって、開閉体が比較的軽快に開き、自由な位置に無段階で静止できるとともに、閉じる際に開閉体の自重による急激な落下を防止する。
【解決手段】ヒンジ装置10は、固定筒40、シャフト50、シャフト50が固定筒40内を回転する際に摩擦抵抗によるトルクを発生させ、開閉体の最大開放位置から下方に向かって所定角度、閉じた回転角度範囲においては、開閉体を自由な位置に無段階で静止可能として、回転角度範囲を超えて閉じた際に、開閉体の自重により閉じる力がトルクを超えるように設定し、開閉体がゆっくりと閉じるトルク発生機構60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプリンタや複写機等のベースに対して、上方に向かって開く原稿圧着板、原稿自動送装置(ADF)或いはスキャナ等の開閉体を開閉可能に支持するヒンジ装置であって、開閉体を開いた際に、自由な位置に無段階で静止できるとともに、閉じる際に開閉体の自重による急激な落下を防止することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮コイルバネによる開方向のモーメントを開閉体に作用させ、当該開方向のモーメントの大きさと、開閉体の自重によって生ずる閉方向のモーメントの大きさとを均衡させることで、開閉体を全開状態に保持するようにしたヒンジ装置が知られている(特許文献1の段落番号「0016」〜「0019」、図2、図4及び図5参照)。
なお、オイル等の粘性流体を使用した回転ダンパーであるが、ラチェット機構を組み込んだものも知られている(特許文献2の段落番号「0017」〜「0019」及び図1〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-98839号公報
【特許文献2】実用新案登録第2591742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のヒンジ装置は、圧縮コイルバネによる開方向のモーメントの大きさと、開閉体の自重によって生ずる閉方向のモーメントの大きさとを均衡させる均衡点の位置の設定が設計上、困難であり、圧縮コイルバネの部品精度により、均衡点の位置がバラ付き易く、又、圧縮コイルバネの疲労により均衡点が変化し易いという問題点があった。
【0005】
また、上記した従来のヒンジ装置は、開閉体の重量により、圧縮コイルバネのバネ力が左右され、開閉体の重量が増加すると、装置が大型化してしまうという問題点があった。
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
【0006】
請求項1に記載の発明は、開閉体を開いた際に、自由な位置に無段階で静止できるとともに、閉じる際に開閉体の自重による急激な落下を防止することができるようにしたものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記した従来のヒンジ装置と比較し、圧縮コイルバネによる開方向のモーメントを開閉体に作用させる必要が無く、シャフトと固定筒との間の摩擦抵抗を利用しているので、設計上の自由度が高く、又、装置の小型化にも有利である。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項2に記載の発明は、クラッチ機構により、開閉体を開く際のトルク発生機構によるトルクの伝達を遮断することで、開閉体を比較的軽快に開放することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項3に記載の発明は、ラチェット機構を用いて、開閉体を開く際に、トルクの伝達を遮断することができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項4に記載の発明は、内筒、スライダ、バネの3個の部品からクラッチ機構を構成することができるようにしたものである。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項4に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0010】
すなわち、請求項5に記載の発明は、金属と合成樹脂との摩擦抵抗を利用することができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0012】
第1に、例えば図1〜4に示すように、ベース(20)に対して上方に向かって開く開閉体(30)を開閉可能に支持するヒンジ装置(10)である。
第2に、ヒンジ装置(10)は、例えば図1に示すように、次の構成を備える。
(1)固定筒(40)
固定筒(40)は、例えば図1〜4に示すように、ベース(20)に固定されるものである。
【0013】
(2)シャフト(50)
シャフト(50)は、例えば図1〜4に示すように、固定筒(40)内に回転可能に支持され、開閉体(30)と一体的に回転するものである。
(3)トルク発生機構(60)
トルク発生機構(60)は、例えば図1〜3に示すように、固定筒(40)とシャフト(50)との間に位置し、シャフト(50)が固定筒(40)内を回転する際に摩擦抵抗によるトルクを発生させ、開閉体(30)の最大開放位置から下方に向かって所定角度、閉じた回転角度範囲においては、開閉体(30)を自由な位置に無段階で静止可能とするものである。
【0014】
これに加え、トルク発生機構(60)は、回転角度範囲を超えて閉じた際に、開閉体(30)の自重により閉じる力がトルクを超えるように設定し、開閉体(30)がゆっくりと閉じるものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、ヒンジ装置(10)は、例えば図1に示すように、次の構成を備える。
(1)クラッチ機構(70)
クラッチ機構(70)は、例えば図1に示すように、トルク発生機構(60)とシャフト(50)との間に位置し、開閉体(30)を開く際に、トルク発生機構(60)からシャフト(50)へのトルクの伝達を遮断するものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、クラッチ機構(70)は、例えば図1に示すように、ラチェット機構(例えば歯部84,92)を用いている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0017】
すなわち、クラッチ機構(70)は、例えば図1に示すように、次の構成を備える。
(1)内筒(80)
内筒(80)は、例えば図1及び図9に示すように、固定筒(40)とシャフト(50)との間に位置し、固定筒(40)に対して回転可能に支持されるとともに、シャフト(50)が摩擦抵抗を伴って回転可能に挿入されるものである。
【0018】
(2)スライダ(90)
スライダ(90)は、例えば図1及び図9に示すように、内筒(80)の軸線方向に位置し、内筒(80)と接離する方向に固定筒(40)に支持されるとともに、固定筒(40)に回転不能に支持されるものである。
(3)バネ(100)
バネ(100)は、例えば図1及び図9に示すように、スライダ(90)を内筒(80)に向かって接近する方向に付勢するものである。
【0019】
(4)一対の歯部(84,92)
一対の歯部(84,92)は、例えば図1及び図9に示すように、内筒(80)とスライダ(90)との接触面にそれぞれ形成され、開閉体(30)を閉じる際に、内筒(80)の回転を阻止するものである。
これに加え、一対の歯部(84,92)は、開閉体(30)を開く際に、バネ(100)の付勢力に抗して、スライダ(90)を離隔させ、内筒(80)の回転を許容する、互いに噛み合うものである。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項4に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0020】
第1に、シャフト(50)を金属製とする。
第2に、内筒(80)を、合成樹脂により一体的に成形している。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、開閉体を開いた際に、自由な位置に無段階で静止できるとともに、閉じる際に開閉体の自重による急激な落下を防止することができる。
【0022】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、上記した従来のヒンジ装置と比較し、圧縮コイルバネによる開方向のモーメントを開閉体に作用させる必要が無く、シャフトと固定筒との間の摩擦抵抗を利用しているので、設計上の自由度が高く、又、装置の小型化にも有利である。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0023】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、クラッチ機構により、開閉体を開く際のトルク発生機構によるトルクの伝達を遮断することで、開閉体を比較的軽快に開放することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0024】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、ラチェット機構を用いて、開閉体を開く際に、トルクの伝達を遮断することができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項3に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0025】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、内筒、スライダ、バネの3個の部品からクラッチ機構を構成することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明によれば、上記した請求項4に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0026】
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、金属と合成樹脂との摩擦抵抗を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ヒンジ装置の分解斜視図である。
【図2】開閉体の開閉を説明するためのベースの概略側面図である。
【図3】図2に対応し、開閉体を一部開いた状態のベースの概略側面図である。
【図4】ヒンジ装置の斜視図である。
【図5】ヒンジ装置の正面図である。
【図6】ヒンジ装置の平面図である。
【図7】ヒンジ装置の左側面図である。
【図8】ヒンジ装置の右側面図である。
【図9】図8のA−A線に断面図である。
【図10】固定筒の斜視図である。
【図11】固定筒の正面図である。
【図12】固定筒の平面図である。
【図13】固定筒の底面図である。
【図14】固定筒の左側面図である。
【図15】固定筒の右側面図である。
【図16】図15のB−B線に断面図である。
【図17】内筒の斜視図である。
【図18】内筒の下半を断面にした正面図である。
【図19】内筒の左側面図である。
【図20】内筒の右側面図である。
【図21】内筒の第1の歯部の一部拡大図である。
【図22】シャフトの斜視図である。
【図23】スライダの斜視図である。
【図24】スライダの下半を断面にした正面図である。
【図25】スライダの平面図である。
【図26】スライダの左側面図である。
【図27】スライダの右側面図である。
【図28】スライダの第2の歯部の一部拡大図である。
【図29】キャップの斜視図である。
【図30】キャップの下半を断面にした正面図である。
【図31】キャップの平面図である。
【図32】キャップの左側面図である。
【図33】キャップの右側面図である。
【図34】図33のC−C線に断面図である。
【図35】本発明の第2の実施の形態を示し、ブラケットを装着した状態のヒンジ装置の斜視図である。
【図36】ブラケットを装着した状態のヒンジ装置の側面図である。
【図37】ブラケットの斜視図である。
【図38】ブラケットの正面図である。
【図39】図38のD−D線に断面図である。
【図40】ブラケットの左側面図である。
【図41】ブラケットの右側面図である。
【図42】図38のE−E線に断面図である。
【図43】ブラケットとヒンジ装置との斜視図である。
【図44】本発明の第3の実施の形態を示し、アームとヒンジ装置との斜視図である。
【図45】アームを装着した状態のヒンジ装置の斜視図である。
【図46】アームの正面図である。
【図47】アームの平面図である。
【図48】アームの底面図である。
【図49】アームの左側面図である。
【図50】アームの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(ヒンジ装置10)
図1〜4中、10は、ヒンジ装置であって、ヒンジ装置10は、図2及び図3に示すように、ベース20に対して上方に向かって開く開閉体30を開閉可能に支持するものである。
ベース20は、例えばプリンタや複写機等から構成する。なお、ベース20として、プリンタや複写機を例示したが、これらに限定されず、スキャナ、プリンタ、複写機、スキャナのうち、複数の機能を備えた複合機であっても良い。
【0029】
開閉体30は、原稿圧着板、原稿自動送装置(ADF)或いはスキャナ等から構成する。なお、開閉体30として、原稿圧着板、原稿自動送装置(ADF)、スキャナを例示したが、これらに限定されず、原稿圧着板、原稿自動送装置(ADF)、スキャナのうち、複数の機能を備えた複合体であっても良い。
具体的には、ヒンジ装置10は、図1に示すように、大別すると、次のパーツを備える。
【0030】
なお、次の(1)〜(4)については、後述する。
(1)固定筒40
(2)シャフト50
(3)トルク発生機構60
(4)クラッチ機構70
なお、ヒンジ装置10のパーツは、上記した(1)〜(4)に限定されない。
(固定筒40)
固定筒40は、ベース20に固定されるものである。固定筒40は、剛性を有する、例えばPOM(ポリアセタール)等の熱可塑性の合成樹脂により一体的に成形されている。
【0031】
具体的には、固定筒40は、図10〜16に示すように、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)外筒120
(2)支持脚130
なお、固定筒40の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(シャフト50)
シャフト50は、固定筒40内に回転可能に支持され、開閉体30と一体的に回転するものである。シャフト50は、例えば金属製である。なお、シャフト50として、金属製を例示したが、これに限定されず、例えば合成樹脂製としても良い。
【0032】
具体的には、シャフト50は、図22に示すように、次の各部を備える。
なお、シャフト50の各部は、次の(1)及び(2)に限定されない。
(1)基部51
基部51は、図22に示すように、シャフト50の一端部に位置し、断面が円形に形成され、後述する内筒80内に圧入される。
【0033】
(2)軸先端部52
軸先端部52は、図22に示すように、シャフト50の他端部に位置し、断面が非円形、例えば断面小判形或いは断面D形に形成されている。軸先端部52は、シャフト50を固定筒40内に挿入した状態において、図4〜7及び図9に示すように、固定筒40から外部に突出し、開閉体30に連結され、図2及び図3に示すように、開閉体30と一体的に回転する。
【0034】
なお、軸先端部52の断面形状として、小判形或いはD形を例示したが、これらに限定されず、非円形であれば良い。また、シャフト50と開閉体30との連結は、例えばローレット形状やビス止め形状等を採用しても良い。
(トルク発生機構60)
トルク発生機構60は、図1に示すように、固定筒40とシャフト50との間に位置し、シャフト50が固定筒40内を回転する際に摩擦抵抗によるトルクを発生させ、開閉体30の最大開放位置(最大開放角度、例えば45度)から下方に向かって所定角度(例えば40度)、閉じた第1の回転角度範囲(例えば開放角度5〜45度)においては、開閉体30を自由な位置に無段階で静止可能として、第1の回転角度範囲(例えば開放角度5〜45度)を超えて閉じた際に、開閉体30の自重により閉じる力がトルクを超えるように設定し、開閉体30がゆっくりと閉じるものである。
【0035】
すなわち、第1の回転角度範囲(例えば開放角度5〜45度)においては、トルク発生機構60がいわゆるフリーストップ機構として機能し、残る第2の回転角度範囲(例えば開放角度0〜4度)においては、いわゆるダンパーとして機能する。
なお、最大開放角度として、「45度」を、所定角度として「40度」を、第1の回転角度範囲として「5〜45度」を、第2の回転角度範囲として「0〜4度」をそれぞれ例示したが、これらの数値に限定されない。
【0036】
具体的には、トルク発生機構60は、図1に示すように、シャフト50に加え、次のパーツから構成されている。
なお、次の(1)については、後述する。
(1)内筒80
なお、トルク発生機構60のパーツは、上記した(1)に限定されない。
(クラッチ機構70)
クラッチ機構70は、図1に示すように、トルク発生機構60とシャフト50との間に位置し、開閉体30を開く際に、トルク発生機構60からシャフト50へのトルクの伝達を遮断するものである。
【0037】
クラッチ機構70は、例えばラチェット機構を用いている。
具体的には、クラッチ機構70は、図1に示すように、内筒80に加え、次のパーツから構成されている。
なお、次の(1)〜(3)については、後述する。
(1)スライダ90
(2)バネ100
(3)キャップ110
なお、クラッチ機構70のパーツは、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(外筒120)
外筒120は、図1及び図9に示すように、中空な円筒形に形成され、シャフト50、並びに後述する内筒80、スライダ90、バネ100、キャップ110が装着される。
【0038】
具体的には、外筒120は、図10〜16に示すように、次の各部を備える。
なお、外筒120の各部は、次の(1)〜(4)に限定されない。
(1)開口部121
開口部121は、外筒120の一端部に位置し、後述するキャップ110により閉じられる。
(2)貫通孔122
貫通孔122は、外筒120の一端部に位置し、開口部121より一回り小さい円形に形成されている。貫通孔122には、外筒120内に挿入されたシャフト50の軸先端部52が通り、当該軸先端部52は、貫通孔122を通して外側に突出する。
【0039】
(3)キー溝123
キー溝123は、外筒120の開口部121側に位置し、後述するスライダ90のキー突起93がはまり込む。キー溝123は、断面凹形に形成され、外筒120の内周面、並びに開口部121に向かって開放し、後述する支持脚130の突出方向に平行に、上下に一対形成されている。キー溝123の全長は、キー突起93の全長より長く設定され、キー突起93はキー溝123に沿ってスライドすることで、スライダ90は外筒120の軸線方向にスライドする。また、スライダ90のキー突起93が、キー溝123にはまる込むことで、外筒120内でのスライダ90の回転が阻止される。
【0040】
(4)爪部124
爪部124は、外筒120の開口部121側の外周面から突出し、後述するキャップ110を係止するためのものである。爪部124は、キー溝123と直交する向きに、左右一対形成されている。
(支持脚130)
支持脚130は、図10、図11及び図13〜16に示すように、外筒120から垂下し、ベース20に固定される。支持脚130は、外筒120の全長のほぼ中央から下方に向かって角柱形に延びている。
なお、固定筒40を、支持脚130を介してベース20に固定したが、これに限定されず、固定筒40を例えばネジ止めしても良い。
(内筒80)
内筒80は、図1及び図9に示すように、固定筒40とシャフト50との間に位置し、固定筒40に対して回転可能に支持されるとともに、シャフト50が摩擦抵抗を伴って回転可能に挿入されるものである。内筒80は、剛性を有する、例えばPOM(ポリアセタール)等の熱可塑性の合成樹脂により一体的に成形されている。
【0041】
具体的には、内筒80は、図17〜21に示すように、次の各部を備える。
なお、内筒80の各部は、次の(1)〜(4)に限定されない。
(1)筒本体81
筒本体81は、内筒80の一端部に位置し、円筒形に形成され、シャフト50の基部51が挿入される。
【0042】
(2)軸部82
軸部82は、内筒80の一端部に位置し、内筒80の軸線方向に円柱形に細く延びる。軸部82には、後述するスライダ90が挿入され、スライダ90を通してキャップ110に向かって更に突出し、キャップ110との間には、同じく後述するバネ100が通される。
(3)開口部83
開口部83は、筒本体81の端面に位置し、シャフト50の基部51が挿入される。開口部83からは軸先端部52が突出する。
【0043】
(4)第1の歯部84
第1の歯部84は、軸部82が突出する筒本体81の環状の端面側に位置し、当該環状の端面の円周方向に沿って形成されている。第1の歯部84は、後述するスライダ90の第2の歯部92と噛み合うものである。第1の歯部84と、第2の歯部92とは、開閉体30を閉じる際に、互いに噛み合うことで、スライダ90と内筒80とを連結することで、内筒80の回転を阻止する。これに対し、開閉体30を開く際に、第1の歯部84と第2の歯部92とが乗り越えるようにして滑る。このため、内筒80からスライダ90が離隔し、両者の連結状態が外れ、内筒80の回転が可能となる。
(スライダ90)
スライダ90は、図1及び図9に示すように、内筒80の軸線方向に位置し、内筒80と接離する方向に固定筒40に支持されるとともに、固定筒40に回転不能に支持されるものである。スライダ90は、中心穴91を有するドーナツ形に形成され、剛性を有する、例えばPOM(ポリアセタール)等の熱可塑性の合成樹脂により一体的に成形されている。
【0044】
具体的には、スライダ90は、図23〜28に示すように、次の各部を備える。
なお、スライダ90の各部は、次の(1)〜(3)に限定されない。
(1)中心穴91
中心穴91は、横に円形に貫通するものであり、スライダ90は中心穴91を中心にドーナツ形に形成されている。中心穴91には、内筒80の軸部82が通され、当該軸部82は中心穴91から突出する。
【0045】
(2)第2の歯部92
第2の歯部92は、内筒80の第1の歯部84と対向し、中心穴91を中心とする環状の端面側に位置し、当該環状の端面の円周方向に沿って形成されている。第2の歯部92は、内筒80の第1の歯部84と噛み合うものである。
(3)キー突起93
キー突起93は、スライダ90の外周から突出し、固定筒40のキー溝123にはまり込むものである。キー突起93は、断面凸形に形成され、スライダ90の直径方向に一対形成されている。
(バネ100)
バネ100は、図1及び図9に示すように、スライダ90を内筒80に向かって接近する方向に付勢するものである。
【0046】
バネ100は、金属製の圧縮スプリングから構成され、スライダ90の中心穴91から突出する内筒80の軸部82に通され、後述するキャップ110との間で圧縮される。
なお、バネ100として、金属製の圧縮スプリングを例示したが、これに限定されず、例えば合成樹脂の弾性を利用したいわゆる樹脂バネを利用して良い。
(キャップ110)
キャップ110は、図1、図4〜6、図8及び図9に示すように、外筒120の開口部121に装着され、当該開口部121を閉じるためのものである。キャップ110は、適度な弾性と剛性とを有する、例えばPOM(ポリアセタール)等の熱可塑性の合成樹脂により一体的に成形されている。
【0047】
具体的には、キャップ110は、図29〜34に示すように、次の各部を備える。
なお、キャップ110の各部は、次の(1)〜(4)に限定されない。
(1)環状底部111
環状底部111は、後述するガイド筒112を中心に環状に形成され、外筒120の開口部121を閉じるとともに、バネ100の一端部に当接し、バネ100を圧縮するためのものである。
【0048】
(2)ガイド筒112
ガイド筒112は、環状底部111の中心から外筒120の内部に向かって円筒形に突出する。ガイド筒112内には、スライダ90の中心穴91から突出する内筒80の軸部82に挿入される。軸部82は、ガイド筒112の環状の底に突き当たる。
ガイド筒112の外周には、バネ100が通され、バネ100の一端部は、第2の歯部92の無い側のスライダ90の端面に、他端部はキャップ110の環状底部111にそれぞれ当接し、両者の間で圧縮される。
【0049】
(3)取付片113
取付片113は、環状底部111の外周から、ガイド筒112と同方向に延び、外筒120の開口部121の外周にはまり合う。取付片113は、環状底部111の直径方向に一対形成されている。
(4)係止孔114
係止孔114は、一対の取付片113にそれぞれ形成され、外筒120の一対の爪部124にそれぞれ、取付片113の弾性を利用してはまり込むものである。
【0050】
なお、キャップ110に係止孔114を形成し、外筒120に爪部124を形成したが、これらに限定されず、図示しないが、キャップ110側に爪部を形成し、外筒120側に係止孔を形成しても良い。
(ヒンジ装置10の動作)
上記した構成を有する組み立て状態のヒンジ装置10の動作について、以下に説明する。
【0051】
まず、固定筒40の支持脚130を、ベース20側に固定し、固定筒40から突出するシャフト50の軸先端部52を開閉体30に連結する。
(開閉体30の開く動作)
図2に示すように、閉じた状態の開閉体30を開くと、第1、第2の歯部84,92とが乗り越えるようにして滑ることで、内筒80とスライダ90との連結状態が外れ、シャフト50の回転に伴って、内筒80が外筒120内で空転する。
【0052】
このため、開閉体30を軽快に開放できる。
開閉体30を開く力を解放すると、第1、第2の歯部84,92とが噛み合うことで、内筒80とスライダ90とが連結状態に復帰し、内筒80とシャフト50との摩擦抵抗によるトルクにより、図2に一点鎖線で示すように、開閉体30が開く力を解放した位置に静止する。
(開閉体30の閉じる動作)
図2に一点鎖線で示すように、開いた開閉体30を閉じると、第1、第2の歯部84,92とが噛み合うことで、内筒80とスライダ90との連結状態を維持され、内筒80とシャフト50との摩擦抵抗によるトルクに抗して、開閉体30を閉じる必要がある。
【0053】
開閉体30を所定角度(例えば開放角度5度)、閉じた位置で閉じる力を解放すると、図3に示すように、開閉体30の自重により閉じる力がトルクを超え、開閉体30がゆっくりと静粛に閉じる。
なお、閉じた状態に、図示しないが、ロック手段によりロックするようにしても良い。
(第2の実施の形態)
つぎに、図35〜43を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0054】
本実施の形態の特徴は、図35及び図43に示すように、シャフト50にブラケット200を装着した点にある。
具体的には、ブラケット200に、図35〜43に示すように、シャフト50の軸先端部52が挿入可能な軸受部210と、軸受部210の外周から断面L字形に屈曲して延びる取付部220とを備えている。ブラケット200は、剛性を有する、例えばPOM(ポリアセタール)等の熱可塑性の合成樹脂により一体的に成形されている。
【0055】
なお、ブラケット200を、合成樹脂製としたが、これに限定されず、金属製としても良い。
軸受部210は、図41に示すように、シャフト50の軸先端部52の断面小判形或いは断面D形に適合した形状に形成され、シャフト50に対する軸受部210の空転が阻止される。
取付部220には、図35〜図41及び図43に示すように、複数個、例えば2個のガイドピン221を突出する。開閉体30には、図示しないが、ガイドピン221がはまり込む凹部或いは穴を形成しておく。
【0056】
なお、本実施の形態の説明において、先に図1〜34を用いて説明した第1の実施の形態と同一の構成部分については同一の符号を図面に付し、説明を省略する。
ブラケット200の軸受部210には、図35及び図43に示すように、固定筒40から突出するシャフト50の軸先端部52を挿入する。その後、取付部220のガイドピン221を、図示しないが、開閉体30の凹部或いは穴に合わせてはめ込んで位置決めした後、図示しないが、ネジ等により開閉体30に固定する。
(第3の実施の形態)
図43〜50を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0057】
本実施の形態の特徴は、図44及び図45に示すように、シャフト50にアーム300を装着した点にある。
具体的には、アーム300に、図44〜50に示すように、シャフト50の軸先端部52が挿入可能な軸受部310と、軸受部210の外周から接線方向に延びる差込部320とを備えている。アーム300は、剛性を有する、例えばPOM(ポリアセタール)等の熱可塑性の合成樹脂により一体的に成形されている。
【0058】
なお、アーム300を、合成樹脂製としたが、これに限定されず、金属製としても良い。
軸受部310は、図44〜46に示すように、シャフト50の軸先端部52の断面小判形或いは断面D形に適合した形状に形成され、シャフト50に対する軸受部310の空転が阻止される。
差込部320は、図44〜46に示すように、先端部に向かって上下の厚みが徐々に減少する先細り状に形成されている。開閉体30には、図示しないが、差込部320を差し込み可能な溝或いは穴を形成しておく。
【0059】
なお、本実施の形態の説明において、先に図1〜34を用いて説明した第1の実施の形態と同一の構成部分については同一の符号を図面に付し、説明を省略する。
アーム300の軸受部310には、図44及び図45に示すように、固定筒40から突出するシャフト50の軸先端部52を挿入する。その後、差込部320を、図示しないが、開閉体30の溝或いは穴に差し込むことで、シャフト50を開閉体30に簡便且つ迅速に装着できる。
【符号の説明】
【0060】
(第1の実施の形態)
10 ヒンジ装置
20 ベース 30 開閉体
40 固定筒 50 シャフト
51 基部 52 軸先端部
60 トルク発生機構 70 クラッチ機構
80 内筒
81 筒本体 82 軸部
83 開口部 84 第1の歯部
90 スライダ
91 中心穴 92 第2の歯部
93 キー突起
100 バネ 110 キャップ
111 環状底部 112 ガイド筒
113 取付片 114 係止孔
120 外筒
121 開口部 122 貫通孔
123 キー溝 124 爪部
130 支持脚
(第2の実施の形態)
200 ブラケット
210 軸受部 220 取付部
221 ガイドピン
(第3の実施の形態)
300 アーム
310 軸受部 320 差込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに対して上方に向かって開く開閉体を開閉可能に支持するヒンジ装置であって、
前記ヒンジ装置は、
前記ベースに固定される固定筒と、
前記固定筒内に回転可能に支持され、前記開閉体と一体的に回転するシャフトと、
前記固定筒と前記シャフトとの間に位置し、前記シャフトが前記固定筒内を回転する際に摩擦抵抗によるトルクを発生させ、前記開閉体の最大開放位置から下方に向かって所定角度、閉じた回転角度範囲においては、前記開閉体を自由な位置に無段階で静止可能として、
前記回転角度範囲を超えて閉じた際に、前記開閉体の自重により閉じる力が前記トルクを超えるように設定し、前記開閉体がゆっくりと閉じるトルク発生機構とを備えていることを特徴とする開閉体用のヒンジ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉体用のヒンジ装置であって、
前記ヒンジ装置は、
前記トルク発生機構と前記シャフトとの間に位置し、前記開閉体を開く際に、前記トルク発生機構から前記シャフトへの前記トルクの伝達を遮断するクラッチ機構を備えていることを特徴とする開閉体用のヒンジ装置。
【請求項3】
前記ヒンジ装置は、
請求項2に記載の開閉体用のヒンジ装置であって、
前記クラッチ機構は、
ラチェット機構を用いていることを特徴とする開閉体用のヒンジ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉体用のヒンジ装置であって、
前記クラッチ機構は、
前記固定筒と前記シャフトとの間に位置し、前記固定筒に対して回転可能に支持されるとともに、前記シャフトが摩擦抵抗を伴って回転可能に挿入される内筒と、
前記内筒の軸線方向に位置し、前記内筒と接離する方向に前記固定筒に支持されるとともに、前記固定筒に回転不能に支持されるスライダと、
前記スライダを前記内筒に向かって接近する方向に付勢するバネと、
前記内筒と前記スライダとの接触面にそれぞれ形成され、前記開閉体を閉じる際に、前記内筒の回転を阻止し、
前記開閉体を開く際に、前記バネの付勢力に抗して、前記スライダを離隔させ、前記内筒の回転を許容する、互いに噛み合う一対の歯部とを備えていることを特徴とする開閉体用のヒンジ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の開閉体用のヒンジ装置であって、
前記シャフトを金属製とし、
前記内筒を、合成樹脂により一体的に成形していることを特徴とする開閉体用のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【公開番号】特開2012−52396(P2012−52396A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198045(P2010−198045)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】