説明

関節式プローブヘッド装置および方法

測定プローブ(12)を支持する関節式プローブヘッド(10)を含む、座標位置決め機用の装置が記載される。関節式プローブヘッド(10)は少なくとも1つの電動機(40、42)を含む。関節式プローブヘッド内において熱を発生させる加熱手段が提供される。この加熱手段は、電動機(40、42)または別個の加熱エレメントとすることができる。1つまたは複数の温度センサ(46、48)など、関節式プローブヘッド(10)の温度を決定する温度感知手段も提供される。この装置は、関節式プローブ(10)ヘッドの温度を制御することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標測定機(co−ordinate measurement machine:CMM)などの座標位置決め機(co−ordinate positioning machine)上で使用されるタイプの関節式プローブヘッド装置(Articulating probe head apparatus)に関する。より詳細には本発明は、温度制御および/または温度補償を実現するための温度感知手段を含む関節式プローブヘッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
関節式プローブヘッドは知られており、例えば特許文献1、2および3に記載されている。一般的な関節式プローブヘッドは、工作機械、座標測定機(CMM)などの座標位置決め機の可動アームに取り付けることができるベースを含む。関節式プローブヘッドは、座標位置決め機の可動アームに対する1つまたは複数の回転自由度で測定プローブを支持するように構成される。このような構成はいくつかの利点を有する。例えば、このような配置は、さまざまな向きの複数の表面を測定プローブによって検査することを可能にし、それによって、さもなければ接近できない部品上の特徴を探測することを可能にする。
【0003】
特許文献3に記載されているタイプの関節式プローブヘッドは、いわゆる「インデキシング(indexing)」ヘッドである。このようなインデキシングヘッドは、座標位置決め機の測定アームに対して固定された所定のいくつかの向きと向きの間で測定プローブを移動させるために使用される1つまたは複数の電動機を含む。ヘッドが所望の位置にセットされた後、座標位置決め機の測定アームを移動させることによって(例えば互いに直交するx、yおよびz軸に沿ってアームを移動させることによって)、測定プローブによる部品の座標測定が実施される。言い換えると、座標が測定されている間、インデキシングプローブヘッドは固定された位置にロックされる。
【0004】
特許文献3はさらに、ヘッドを熱平衡状態に保つ試みにおいて、インデキシングプローブヘッドに一定の電流を供給する方法を記載している。具体的には、特許文献3は、プローブヘッドに一定の電流が供給されるように、駆動モータが作動していないときに活動化される発熱手段をヘッド内に配置することを記載している。しかしながら、このような構成はいくつかの欠点を有する。例えば、発熱レベルが一定であるにもかかわらず、ヘッドは、周囲温度に応じた温度に落ち着く。このことによって、この機械を異なる環境で作動させたときに、測定された座標に不確かさが導入される可能性がある。
【0005】
特許文献2は、しばしば「アクティブ(active)」または「サーボイング(servoing)」ヘッドと呼ばれる他のタイプの関節式プローブヘッドを記載している。ここで、そのようなヘッドはアクティブヘッドと呼ばれる。このような構成では、測定が実施されている間に、アクティブヘッドが関節式ヘッドのベースに対して測定プローブを移動させるように構成される。これによって、座標位置決め機の3つの直線軸の移動が、関節式ヘッドの1つまたは複数の(例えば2つの)回転軸の移動と組み合わされ、4軸以上の測定が提供される。
【0006】
【特許文献1】欧州特許第360853号明細書
【特許文献2】欧州特許第402440号明細書
【特許文献3】欧州特許第690286号明細書
【特許文献4】欧州特許第1086354号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、測定プローブを支持する関節式プローブヘッドを含む、座標位置決め機用の装置において、関節式プローブヘッドは少なくとも1つの電動機を含み、この装置は、関節式プローブヘッド内において熱を発生させる加熱手段を含む装置であって、関節式プローブヘッドの温度を決定する温度感知手段を含むことを特徴とする装置が提供される。
【0008】
本発明はしたがって、座標測定機(CMM)、工作機械、単軸ステージ(single axis stage)などの座標位置決め機に装着するのに適した関節式プローブヘッドを提供する。この関節式プローブヘッドはさらに、測定プローブを保持するように構成され、前記少なくとも1つの電動機は、適当な駆動電流が加えられたときに、取り付けられた測定プローブが、座標位置決め機の関節式ヘッドが装着された部分に対して運動する(例えば1つまたは複数の軸を軸にして回転する)ことを可能にする。
【0009】
この装置はさらに、関節式プローブヘッド内において熱を発生させる加熱手段を含む。この加熱手段は、関節式プローブヘッドの内側に配置することができ、または関節式プローブヘッドから離して配置する、例えば関節式プローブヘッドのアウターケーシング(outer casing)に取り付けることができる。好都合には、加熱手段は、プローブヘッド内に1つまたは複数の熱源を含むことができ、より好ましくは、加熱手段は、前記少なくとも1つの電動機のところで熱を発生させ、かつ/または前記少なくとも1つの電動機の近くで熱を発生させるように構成される。後により詳細に概説するが、加熱手段は、別個の加熱エレメント(heating element)(1つまたは複数)および/または少なくとも1つの電動機を含むことができる。
【0010】
さらに、この関節式プローブヘッドは、関節式プローブヘッドの温度を決定する温度感知手段を含む。有利には、温度感知手段は例えば、関節式プローブヘッド内に装着され、または関節式プローブヘッドに取り付けられ、それによってヘッドの1つまたは複数の領域の温度を測定することを可能にする少なくとも1つの温度センサを含むことができる。後に詳述するとおり、温度感知手段は、前記少なくとも1つの電動機から離れた関節式ヘッドの1つまたは複数の点、および/または前記少なくとも1つの電動機の近くの関節式ヘッドの1つまたは複数の点の温度を感知するように構成することができる。
【0011】
本発明の装置は、特許文献3に記載されたタイプの装置よりも有利な点をいくつか有する。前述のとおり、特許文献3は、関節式ヘッド内の電動機が作動していないときに関節式ヘッドに加熱電流を流すことを記載している。このような加熱電流は、電動機を駆動するのに必要な電流に実質的に等しいように選択され、したがって、アクティブヘッドへの一定の熱流の結果、熱平衡が達成されると仮定される。
【0012】
しかしながら、特許文献3の技法によって、関節式プローブヘッドが同じ温度プロファイルを常に維持するとは限らないことが分かっている。具体的には、関節式ヘッドによって放散される熱量は、そのヘッドの向きによって異なることが分かった。さらに、周囲の温度条件は、プローブヘッドが到達する熱平衡を達成する。本発明に基づく直接温度測定の使用は、このような欠点を克服し、関節式プローブヘッド内での熱膨張の影響によって座標測定値に導入された誤差を低減させ、または確かめる改良された方法を提供する。
【0013】
好ましくは、この装置は温度コントローラをさらに含み、この温度コントローラは、温度感知手段から温度信号を受け取り、温度感知手段によって感知される温度を第1の温度範囲内に維持するように加熱手段を選択的に活動化させるように構成される。例えば、温度感知手段によって感知されたプローブヘッド内のある位置の温度を第1の標的温度に保ち、または第1の温度範囲内に保つように、温度コントローラを構成することができる。したがって、この温度コントローラは、ヘッド内における発熱を制御し、プローブヘッド内の1つまたは複数の位置の温度をある標的温度に維持し、またはある温度範囲内に維持することを可能にする。この温度コントローラを、必要に応じて加熱手段を単純に活動化しまたは非活動化するように構成することができる(例えば、この温度コントローラは加熱手段を「オン」または「オフ」に切り換えることができる)。あるいは、この温度コントローラは、加熱手段に供給される電力を必要に応じて変化させることができる。
【0014】
好都合には、温度コントローラが、閉ループフィードバック制御を実現するように構成される。このような閉じたフィードバックループの時定数は必要に応じて設定することができ、この時定数は、プローブヘッドの熱容量に依存し、さらに、温度が測定される位置(例えば温度センサの位置)(1つまたは複数)への熱源(1つまたは複数)の近接に依存する。この温度コントローラは、少なくとも部分的に関節式ヘッド内に配置することができ、かつ/または少なくとも部分的に、関節式プローブヘッドから離れた別個のインタフェースまたはコントローラ内に配置することができる。
【0015】
第1の温度範囲は、ともに20℃超、30℃超、40℃超または50℃超の上限および下限を有することができる。有利には、所定の第1の温度範囲の幅(すなわち上限温度と下限温度との差)を、20℃未満、10℃未満、5℃未満または1℃未満とすることができる。第1の温度範囲は、所与の装置に対して固定とすることができ、または使用者が選択することができる。例えば周囲温度を参照することによって、または装置が動作している環境の歴史的温度データから、温度範囲を自動的に選択するように、温度コントローラを構成することもできる。
【0016】
機械の始動時に加熱手段が活動化され、設定された期間の間、あるいは第1の温度範囲に達したこと、または第1の温度範囲にまもなく達することを温度感知手段が指示するまで、加熱手段が作動し続けるように、温度コントローラを構成することもできる。その機械がその公称動作温度に達するのに要する時間を短縮するため、始動時に加熱手段が、所望の範囲内に前記温度を維持するためにその後に使用される発熱速度に比べてより高い速度で熱を発生させるように、温度コントローラを構成することができる。言い換えると、初期の熱バースト(burst)を使用して、所望の動作温度まで関節式プローブヘッドを速やかに加熱することができる。この初期の熱バーストを、ヘッドのいくつかの領域の温度を、それらの領域がその後に維持される温度よりも高くするのに十分なものにすることができることに留意されたい。
【0017】
有利には、関節式プローブヘッドは少なくとも1つの別個の加熱エレメントを含む。例えば、プローブヘッドは、1つまたは複数の抵抗加熱エレメントを含むことができる。この加熱エレメント(1つまたは複数)は、前記1つまたは複数の電動機の近くに配置し、または前記1つまたは複数の電動機に取り付けることができる。好都合には、それらのうちの1つまたは複数の加熱エレメントを、そのデバイスの他の発熱構成部品に取り付け、またはそのデバイスの他の発熱構成部品と一体に形成することができ、例えば、装置の回路板または他の電気構成部品が加熱エレメントを含むことができる。有利には、このような複数の抵抗性加熱エレメントを使用することができる。例えば、ヘッドが複数の電動機を含む場合には、複数の加熱エレメントをそれぞれの電動機の近くに配置することができる(例えば、1つまたは複数の加熱エレメントをそれぞれの電動機ケーシングに取り付けることができる)。複数の別個の加熱エレメントが配置される場合には、必要に応じて、このような要素を電気的に直列に、および/または並列に接続することができる。好都合には、加熱手段は、関節式プローブヘッドの外側に配置され、例えば空気などの加熱された流体流によって熱をヘッド内に伝達する熱源を含むことができる。
【0018】
1つまたは複数の別個の加熱エレメントが配置される場合には、関節式ヘッドの電動機(1つまたは複数)を駆動するのに使用される制御系を、温度コントローラとは別に使用することができる。例えば、温度コントローラを実現する電子回路を関節式ヘッド内に配置することができる。次いで、システムコントローラなどの遠隔電源から温度コントローラに電力を直接に供給することができる。これによって例えば、装置の温度安定化システムを非活動化する必要なしに、(例えば、測定と測定の間に、または非常停止に応答して、または非使用時に消費電力を低減させるために)電動機を分離することが可能になるであろう。このような一構成では、必要な場合に、温度コントローラに絶えず電力を供給することができ、それによって関節式ヘッドを所望の温度に保ち、装置を「暖める」必要性を一切排除することができる。
【0019】
別個の加熱エレメント(1つまたは複数)を使用する代わりに、または別個の加熱エレメント(1つまたは複数)を使用することに加えて、好都合には、加熱手段は、前記少なくとも1つの電動機を含むことができる。例えば、この装置は、有利には、所与のトルクを生み出すために前記少なくとも1つの電動機に供給される全電力を変化させることができるように構成された加熱手段を含むことができる。このようにすると、この加熱手段は、前記少なくとも1つの電動機に供給される電力を増大させることができ、それによって、電動機によって生み出されるトルクを変化させることなしに、電動機によって生み出される熱を増大させることができる。言い換えると、所与のトルクに対して必要な入熱を達成するように、電動機の効率を制御することができる。
【0020】
有利には、前記少なくとも1つの電動機はブラシレス(brushless)電動機であり、加熱手段は、前記電動機に供給される多相電力成分間の相対位相を制御するように構成される。ブラシレス電動機は、多相AC電動機、例えば3、4、5または6相電動機とすることができる。次いで、前記電動機に電力を供給するのに使用される電源によって生み出される磁場と前記電動機の定磁場との間の相対位相角を制御するように、加熱手段を構成することができる。言い換えると、好都合には、加熱手段を、電動機の巻線に加えられた前記多相電力成分によって生み出される磁場と、前記電動機巻線に対して回転するブラシレス電動機の構成部品によって生み出される磁場との間の相対位相角を制御するように構成することができる。
【0021】
所与の全入力電流に対して電動機が生み出すトルクは、回転子の磁場と、固定子巻線を流れる電流によって生み出される結果として生じる磁場との間(または相巻線が回転し、定磁場が固定である場合にはその逆)の角度に関係するため、ブラシレス電動機は必要な熱源を提供することができる。極対の2つの磁場が互いに90°であるとき、トルクは最大であり(すなわち接線トルクベクトル)、それらが平行であるとき、トルクは生み出されない(すなわち半径方向トルクベクトル)。言い換えると、回転子磁場と電動機に供給される電流成分によって生み出される磁場との間の相対位相角を変化させて、電動機の総合効率(すなわち電力1ワットあたりに生み出されるトルクの量)を低下させることができる。このことは、所与の軸トルクに対してより多くの電力を電動機に供給することを可能にし、したがって、電動機によって生み出されるトルクを増大させることなく、電動機によって生み出される熱を増大させる。
【0022】
このような装置は、必要なときにブラシレス電動機が依然として最大トルクを生み出すことができるように構成されることが好ましいことにも留意されたい。さらに、有利には、電動機に供給される電流成分の相対位相を制御しているときに、装置の位置制御に対する関連する影響がごくわずかであるように、加熱手段が構成される。関節式ヘッドの熱時定数の大きさは一般に、位置制御ループを妨害しない低速の(例えば数秒の)温度制御ループが確立されるのには十分なので、これは容易に達成することができる。言い換えると、温度制御ループは、位置制御ループよりもはるかに低い帯域幅を有するように構成することができる。
【0023】
多極ブラシレス電動機が使用される場合にも、巻線場と回転子場の間の物理的な角度(すなわち所与の量のトルクおよび熱を生み出すために必要な角度)を、その極数に対して適当な定数で割らなければならないことを除き、同じ原理があてはまる。
【0024】
高周波AC(すなわち電動機トルクが誘導されないように十分に高い周波数を有する電流)または直流(DC)をAC電動機に供給することもできる。あるいは、AC電流を供給して、DC電動機内において熱を発生させることもできる。言い換えると、好都合には、加熱手段が、電動機の巻線の加熱だけを引き起こす周波数成分を有する電流を、前記少なくとも1つの電動機に供給するように構成される。
【0025】
好都合には、関節式プローブヘッドは、第1の回転軸を軸にして関節式ヘッドを駆動する第1の電動機を含む。このような場合には、第1の電動機の近くの温度を感知するように温度感知手段を構成することができる。温度感知手段は、電動機の近くに配置された温度センサを含むことができ、例えば、第1の電動機のケーシングに温度センサを取り付けることができる。
【0026】
好ましくは、関節式プローブヘッドは、少なくとも第1の電動機および第2の電動機を含む。これらの2つの電動機を含めることによって、2つの回転軸を軸にして関節式ヘッドを駆動することができる。次いで、第1と第2の両方の電動機の近くの温度を感知するように、温度感知手段を構成することができる。例えば、好都合には、関節式ヘッドは、少なくとも第1の温度センサおよび第2の温度センサを含むことができる。有利には、第1の温度センサは第1の電動機の近くに配置され、第2の温度センサは第2の電動機の近くに配置される。例えば、第1の温度センサは第1の電動機のケーシングに取り付けることができ、かつ/または第2の温度センサは第2の電動機のケーシングに取り付けることができる。
【0027】
有利には、関節式プローブヘッドは第3の電動機をさらに含むことができる。3つの電動機を使用することによって、関節式ヘッドを3つの回転軸を軸にして駆動することができる。次いで、第3の電動機の近くの温度をさらに感知するように、温度感知手段を構成することができる。例えば、好都合には、関節式ヘッドは、少なくとも第1、第2および第3の温度センサを含むことができる。第3の温度センサは、第3の電動機のケーシングに取り付けることができる。
【0028】
必要な場合には、追加の電動機(例えば第4、第5の電動機など)を使用することもできる。このような電動機は、1軸を軸にして関節式ヘッドを駆動するために、または任意の追加の目的のために使用することができる。
【0029】
有利には、2つ以上の電動機を有する(例えば第1、第2および第3の電動機を有する)装置は、前述のタイプの温度コントローラを含むことができる。このような温度コントローラは、第1の電動機の近くに配置された第1の温度センサから第1の温度信号を受け取り、第1の温度センサによって感知される前記温度を所定の第1の温度範囲内に維持するよう第1の電動機を選択的に加熱するように構成することができる。好都合には、この温度コントローラはさらに、第2の電動機の近くに配置された第2の温度センサから第2の温度信号を受け取り、第2の温度センサによって感知される前記温度を所定の第2の温度範囲内に維持するよう第2の電動機を選択的に加熱するように構成される。有利には、温度コントローラをさらに、第3の電動機の近くに配置された第3の温度センサから第3の温度信号を受け取り、第3の温度センサによって感知される前記温度を所定の第3の温度範囲内に維持するよう第3の電動機を選択的に加熱するように構成することができる。
【0030】
前述のとおり、関節式プローブヘッドの電動機(例えば第1、第2および第3の電動機)は、電動機に適当な駆動信号を加えることによって直接に加熱することができ、かつ/または、このような加熱を可能にするために、(例えば電動機ケーシングに取り付けられた)別個の加熱エレメントを使用することができる。有利には、それぞれの電動機を選択された温度範囲内に維持する別個の温度制御ループを確立するように、温度コントローラを構成することができる。例えば、第1、第2および第3の電動機をそれぞれ、所定の第1、第2および第3の温度範囲内の温度に別々に維持することができる。
【0031】
好都合には、温度コントローラは、それぞれの電動機(例えば第1、第2および第3の電動機)を実質的に同じ温度に保つことができる。例えば、前述の所定の第1、第2および第3の温度範囲を実質的に同じとすることができる。しかしながら、有利には、温度コントローラが、それぞれの電動機を異なる温度に維持し、または異なる温度範囲内に維持するように構成される。電動機を異なる温度に保つことが一般に好ましいは、関節式プローブヘッドの各種電動機はしばしば関節式ヘッド内の異なる熱環境内に置かれ、したがって使用中に異なる量の熱を放散するからである。さらに、1つの電動機が平均して他の電動機よりも多くの仕事を実行する必要があるように、プローブヘッドを構成することができる。例えば、重力に逆らって必要なプローブ位置を維持するために、1つの電動機がより高いトルクを絶えず加える必要があることがある。それぞれの電動機を維持する温度範囲は、予め設定することができ、または前述の方法で使用者が設定することができる。
【0032】
2つ以上の電動機が使用される場合には、それぞれの電動機を同じタイプの電動機とすることができることに留意されたい。例えば、これらの電動機を三相AC電動機とすることができる。あるいは、ある1つの電動機が別の電動機と異なってもよい。例えば、1つの電動機(例えば第1の電動機)をAC電動機とし、別の電動機(例えば第2の電動機)を、異なるタイプのAC電動機またはDC電動機とすることができる。異なる電動機を、実質的に同じまたは異なる最大トルクを与えるように構成することもできる。当業者は、異なる用途および異なるタイプの関節式ヘッドに対して適当と思われる電動機のタイプを識別するであろう。
【0033】
有利には、この関節式プローブヘッドは、測定工程中に部品を横切って測定プローブを走査させるアクティブまたは「サーボイング」ヘッドである。このようなアクティブヘッドデバイスでは、測定プローブの位置を変化させるため、および/または走査工程中に異なるトルクを与えるために、電動機(1つまたは複数)に供給される電力が時間の経過とともに変化する。言い換えると、アクティブヘッドでは電動機が単純にオンまたはオフにされず、使用中は、(ヘッドが測定プローブを、座標位置決め機に対して固定された向きに保持しているときでも)電力が連続的に供給される。
【0034】
好都合には、関節式プローブヘッドを、他の知られている任意のタイプのインデキシングヘッドまたは関節式プローブヘッドとすることができる。
【0035】
有利には、関節式プローブヘッドに測定プローブが取り付けられる。このプローブは、キネマティックマウント(kinematic mount)を介して取り付けることができ、かつ/または関節式ヘッドから熱的に分離することができる。好都合には、測定プローブは、関節式プローブヘッドに容易に取り付け、関節式プローブヘッドから容易に取り外すことができる。
【0036】
有利には、測定プローブは、接触プローブまたは非接触プローブを含むことができる。好ましくは、接触プローブは光センサを含む。例えば、特許文献4に記載されているタイプのプローブを使用することができる。
【0037】
好都合には、前記少なくとも1つの電動機は、使用中に、測定プローブの速度、位置および加速度のうちの少なくとも1つを制御するように構成される。
【0038】
有利には、温度感知手段は少なくとも1つの温度センサを含む。それぞれの温度センサは、熱抵抗器(サーミスタ)、ディジタル温度計チップおよびバイメタルストリップ(bimetallic strip)のうちの少なくとも1つを含むことができる。しかしながら、知られているタイプの任意の温度センサを使用することができる。このような温度センサは、関節式ヘッドとの物理的な接触を必要とする場合があり、または熱(赤外)検出器などの非接触熱センサとすることができる。
【0039】
前述の関節式プローブヘッド装置を含む座標位置決め機を提供することもできる。この関節式プローブヘッドは、座標位置決め機のクイル(quill)にリリース可能に取り付けることができるベース部分を含むことができる。有利には、この座標位置決め機は、座標測定機(CMM)、工作機械または検査ロボットを含むことができる。
【0040】
座標位置決め機は一般に、その動作を制御する機械コントローラ(例えばパーソナルコンピュータ)を含む。例えば、機械コントローラは、関節式ヘッドを保持したクイルを機械のX、YおよびZ軸に沿って移動させる直線平行移動電動機に電力を供給するように構成される。有利には、座標位置決め機の機械コントローラは、関節式ヘッドの前記少なくとも1つの電動機を制御するように適合される。言い換えると、この機械コントローラは、関節式ヘッドの動作を制御するように適合される。この制御は直接制御とすることができ、または制御インタフェースを介して実行することができる。
【0041】
好都合には、機械コントローラにさらに、温度感知手段からの温度信号(1つまたは複数)が供給される。機械コントローラはしたがって、前述の温度コントローラを含むことができる。
【0042】
機械コントローラはさらに、温度感知手段によって測定された温度を使用して、熱膨張の影響に関して座標測定値を補正し、かつ/またはこのような測定値に関連した不確かさを示すことができる。例えば、好都合には、第1、第2および第3の電動機の測定された温度を使用して、関節式ヘッド内における熱膨張の影響を補正し、または確かめることができる。1つまたは複数の全体的な温度の読みを得るために、プローブヘッド内に(例えば電動機から離して)1つまたは複数の追加の温度センサを配置することもできる。温度補正は、その関節式ヘッドを用いていくつかの異なる温度で取得された較正データを使用して達成することができ、または公称レベルから離れた前記温度の任意の分散を考慮するように、いくつかの補正係数を用いて機械コントローラをプログラムすることができる。
【0043】
少なくとも1つの温度センサ(特に前述のタイプの追加の温度センサ)によって測定された温度を使用して、装置が公称熱レベルを達成した(すなわち装置が「暖まった」)ことを使用者に指示することできる。
【0044】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも1つの電動機を含む関節式プローブヘッドを動作させる方法であって、(a)プローブヘッドの1つまたは複数の領域の温度を測定するステップと、(b)関節式ヘッド内において熱を発生させるステップとを含む方法が提供される。好都合には、ステップ(b)は、ステップ(a)で測定される温度をある温度範囲内(例えば周囲温度よりも高いある温度)に維持するように、関節式ヘッド内において熱を発生させるステップを含む。
【0045】
本発明の他の態様によれば、座標位置決め機用の関節式ヘッド装置において、測定プローブを保持するように構成されており、装置に測定プローブが取り付けられているときに、測定プローブの位置、速度および加速度のうちの少なくとも1つを制御する少なくとも1つの電動機を含む関節式ヘッド装置であって、前記少なくとも1つの電動機はさらに、少なくとも関節式ヘッド装置の部分の温度を制御するように構成された関節式ヘッド装置が提供される。電動機を使用して、電動機が与えるトルクの量を達成することなく熱を発生させることについては、すでにより詳細に説明した。このように、前記少なくとも1つの電動機を使用して、測定プローブの移動と関節式ヘッドの温度の両方を制御することができることが分かる。
【0046】
本発明の他の態様によれば、測定プローブを支持する関節式プローブヘッドを含む、座標位置決め機用の装置であって、関節式プローブヘッドは少なくとも1つの電動機を含み、この装置は、関節式プローブヘッド内において熱を発生させるヒータ(heater)と、関節式プローブヘッドの温度を測定する少なくとも1つの温度センサとを含む装置が提供される。
【0047】
次に、図面を参照して関して本発明を、単なる例示として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1を参照すると、座標測定機(CMM)2が示されている。CMM2は、フレーム6を支持するベース4を含み、フレーム6はクイル8を保持する。互いに直交する3軸X、YおよびZに沿ってクイル8を移動させるため電動機(図示せず)が提供される。
【0049】
クイル8は、関節式プローブヘッド10を保持する。プローブヘッド10は、クイル8に取り付けられたベース部分20、中間部分22およびプローブ保持部分24を有する。ベース部分20は、第1の回転軸30を軸にして中間部分22を回転させる第1の電動機(図示せず)を含む。中間部分22は、第1の回転軸に対して実質的に垂直な第2の回転軸を軸にしてプローブ保持部分24を回転させる第2の電動機(図示せず)を含む。示されてはいないが、関節式プローブヘッドのこれらの可動部分間に軸受を配置してもよい。
【0050】
プローブ保持部分24には測定プローブ12が(例えばキネマティックマウントを使用して)取り付けられている。測定プローブ12は、タッチトリガプローブ(touch trigger probe)またはスタイラス(stylus)を含むアナログプローブ(analogue probe)とすることができる。測定プローブは光センサを含むことができる。あるいは、測定プローブを、光学プローブなどの非接触プローブとしてもよい。
【0051】
CMMの動作を制御する機械コントローラ36も提供される。機械コントローラは専用の電子制御系とすることができ、かつ/またはパーソナルコンピュータを含むことができる。
【0052】
プローブヘッド10はいわゆる「アクティブヘッド」であり、使用時、プローブヘッド10は、クイル8に対する自由度2で測定プローブ12が移動することを可能に得る。プローブヘッド10によって与えられるこの2つの自由度と、CMMの3つの(X、Y、Z)直線平行移動軸との組合せは、測定プローブ12が5つの軸を軸にして運動することを可能にする。これは、座標測定機のベース部分20に装着された関連部品34のいわゆる「5軸」測定を可能にする。
【0053】
機械コントローラ36は、使用中にそれぞれの電動機が必要なトルクを与えるように、第1および第2の電動機に適当な駆動電流を流すように構成される。それぞれの電動機によって与えられたトルクを使用して、関連回転軸を軸にした運動を引き起こし、またはある回転位置を維持することができる。したがって、アクティブヘッドでは、使用中に、アクティブプローブヘッド10のそれぞれの電動機に駆動電流を連続的に流す必要があること、すなわち、関連回転軸を軸とした運動が必要ない場合であってもそれぞれの電動機に電力を供給する必要があることが分かる。
【0054】
図1は、アクティブヘッドを含むCMMの最上位レベルの説明しか示していないことに留意されたい。このような装置のより完全な説明は他の文献にでており、例えば特許文献2(特に6〜20列)を参照されたい。この文献の内容は参照によって本明細書で組み込まれる。
【0055】
図1を参照して説明したタイプの関節式アクティブプローブヘッド内での熱膨張の影響は、座標測定値の正確さをかなり低下させうることを、本発明の発明者らは見出した。具体的には、アクティブヘッドの電動機によって不可避的に生み出される熱が、プローブヘッドの部分を加熱することが分かった。さらに、このような加熱の量は、電動機によって加えられるトルクに依存し、したがって、このような加熱の量は、走査速度およびある部分の表面を横切ってプローブが走査されたときに加えられる力とともに変化する。
【0056】
さらに、プローブヘッドからの全熱放散量および/または熱放散プロファイルは、アクティブヘッドの電動機に供給される電力の変動の他に、プローブヘッドの向きによっても変化することが分かった。言い換えると、アクティブプローブヘッドがその2軸を軸にしてさまざまな位置に回転されるとき、熱損失は異なる。
【0057】
発熱速度の変動と熱放散量の変動はともに、使用中のアクティブヘッドの熱プロファイルを予測不可能に変動させることが分かっている。さらに、周囲の熱環境は、プローブヘッドの全体的な熱プロファイルに影響を及ぼす。以上のことから、使用中に関節式プローブヘッドの熱プロファイルはかなり変動しうることが分かる。このような温度の変動は、測定の正確さをひどく低下させうるアクティブヘッド内での熱膨張につながる。
【0058】
関節式インデキシングヘッドの熱膨張によって生み出される誤差を解決するいくつかの技法が特許文献3に記載されている。これらの従来の方法は、ヘッドの電動機によって生み出される熱よりもかなり大きな一定の出熱を有する抵抗ヒータなどの熱源を使用することを含む。このような構成では、電動機によって生み出される追加の熱が、それに比例した低い熱膨張量を生み出す。
【0059】
特許文献3はさらに、動作中にプローブヘッドに一定の電流が供給されるように、インデキシングヘッドの電動機が作動していないとき(すなわち関節式ヘッドがある測定位置にロックされているとき)にだけ活動化される熱源を有することを記載している。しかしながら、特許文献3の技法は一般に、電動機がオンまたはオフであるインデキシングヘッドにしか適用できない(すなわち使用中に電動機に供給される電力が変化するアクティブヘッドには適用できない)ことが分かる。さらに、この技法は、ヘッドからの熱放散速度が実質的に一定であること、および周囲の熱環境が不変であることに依存する。これらの仮定はいずれも、正確さの高い測定が必要とされるときには採択されないことが分かっている。以下では、関節式プローブヘッド内での熱膨張の影響を緩和する本発明に基づく改良された技法を説明する。
【0060】
図2を参照すると、本発明のアクティブヘッドがより詳細に示されている。図2に示された諸特徴のうち、図1を参照して説明した諸特徴と共通のものには同様の参照符号が割り当てられている。したがって図2は、ベース部分20、中間部分22およびプローブ保持部分24を有するアクティブヘッド10を示す。
【0061】
ベース部分20に装着された第1の電動機40は、第1の回転軸30を軸にして中間部分22をベース部分20に対して回転させるために提供される。中間部分22に装着された第2の電動機42は、第2の回転軸44を軸にしてプローブ保持部分24を中間部分22に対して回転させるために提供される。第1の回転軸30はしばしば「D軸」と呼ばれ、第2の回転軸44はしばしば「E軸」と呼ばれる。この例では、第1および第2の電動機がともに三相交流(AC)電動機である。しかしながら、代わりに、他のタイプのAC電動機または直流(DC)電動機を使用することもできる。
【0062】
プローブヘッド10はさらに、第1の電動機40のケーシングに取り付けられた第1のサーミスタ46、および第2の電動機42のケーシングに取り付けられた第2のサーミスタ48を含む。さらに、プローブヘッドケーシング内の異なる位置に追加のサーミスタ50および52が配置される。サーミスタは、温度を測定する単純かつ安価な方法を提供するが、当業者なら、代わりに使用することができる多数の温度センサを識別するであろう。
【0063】
次に、図3を参照すると、図1および2を参照して説明したCMMの制御系の電子レイアウトの概略図が示されている。この制御系は機械コントローラ36を含み、機械コントローラ36は例えばパーソナルコンピュータ(PC)を含むことができる。
【0064】
機械コントローラ36は、アクティブヘッドの第1の電動機40および第2の電動機42にそれぞれ三相電源を供給する。X、YおよびZ軸に沿ったクイルの移動を制御する電動機60にも適当な制御信号が供給される。機械コントローラ36はさらに、測定プローブ12ならびに第1、第2および追加のサーミスタ46、48、50および52からそれぞれデータ信号を受け取る。
【0065】
機械コントローラ36は、第1の電動機40に三相駆動信号を供給するように構成された第1の制御部分64を含む。第1の制御部分64はさらに、第1のサーミスタ46から第1の電動機40のケーシングの温度を示す信号を受け取る。この温度信号に応答して、第1の制御部分64は、第1の電動機40に供給される全電力、したがってそれによって生成される熱を変化させるように構成される。しかしながら、この三相駆動信号は、使用中に電動機40が必要な量のトルクを生み出すように選択されることに留意することが重要である。
【0066】
当業者には理解されることだが、三相AC電動機は、3つの交流電流信号を受け取るように構成される。電源の異なる成分間の位相差は、電動機内に回転電磁場を生み出す。電流成分の位相が互いに120°ずれている場合、電動機は最適効率で動作する。しかし、3つのAC成分間の位相差をこの最適レベルから変化させると、電動機の効率が低下する。言い換えると、電動機が同じ量のトルクを発生させるためにはより多くの電力(すなわちより大きな電流)が必要となる。したがって、三相電動機によって与えられるトルクを増大させることなく、電動機によって生み出される熱を大きくすることができることが分かる。電流によって生成される磁場の中心を電動機の回転軸の近くに保つためには、電流によって生成される磁場と前記電動機の定磁場との間の相対位相角を制御するように電流成分の位相が変更されることが好ましい。決して必須ではないが、これにより、さもなければ存在する可能性がある中心を外れた力が低減する。
【0067】
したがって、第1の制御部分64は、(a)必要なトルクが電動機によって与えられるようにし、(b)電動機内において必要な量の熱を発生させるために第1の電動機40に供給される三相電源の相対位相および振幅を制御するように構成される。第1の電動機によって生み出される熱の制御は、第1の電動機の温度を所定の第1の温度範囲内に維持する閉じたフィードバック制御ループの確立を可能にする。
【0068】
第2の制御部分66は、第2の電動機42の温度を所定の第2の温度範囲内に維持する別のフィードバックループの確立を可能にする。この所定の第1および第2の温度範囲は同じでも、または異なっていてもよい。この温度範囲(1つまたは複数)は工場でセットしてもよく、またはさまざまな周囲環境での動作のためにこのような範囲をいくつか提供してもよい。あるいは、この温度範囲(1つまたは複数)を、周囲温度または他の温度の読みに対して定義してもよい。
【0069】
別個の制御ループを説明したが、1つまたは複数のサーミスタを使用して両方の電動機に対する単一の温度制御系を実現することも可能であろう。同様に、追加のサーミスタ50および52のうちの1つまたは複数のサーミスタからの温度測定値を、第1および/または第2の制御部分のフィードバックループにおいて使用することもできる。しかしながら、熱遅れ(thermal lag)の影響が原因である可能性がある制御ループの不安定性または振幅を最小にするために、フィードバックループにおいて使用される温度センサは、熱源の近くに配置されることが好ましい。
【0070】
三相電源の相対位相を変化させることによって、必要な加熱効果を生じさせることができるが、プローブヘッド内において熱を発生させる他の方法も可能であることに留意されたい。例えば、トルクを一切与えることなく電動機巻線を加熱するだけの十分に高い周波数を有するAC成分を電動機に供給することができる。このタイプの高周波数AC加熱は、さまざまなタイプの電動機、例えばDCまたは単相AC電動機とともに使用することもできる。熱源として電動機を使用する代わりに、別の熱源を使用することも可能であろう。例えば、1つまたは複数の抵抗加熱エレメントを使用することができる。このような加熱エレメントは、プローブヘッドのハウジングの内側に配置し、またはヘッドの外面に取り付けることができる。
【0071】
閉ループ温度制御を提供することに加えて、または閉ループ温度制御を提供する代わりに、機械コントローラは、1つまたは複数のサーミスタによって測定された温度を使用して、座標測定値中の熱誤差を補償することができる。例えば、追加のサーミスタ50および/または52を使用して、アクティブヘッドの温度の全体的な目やすを得ることができる。次いで、この測定された温度を以前に取得された較正データとともに使用して、この機械によって取得された座標測定値を補正することができる。言い換えると、ある補償因子を使用して、アクティブヘッドの温度の変化に関して、測定された座標を補正することができる。
【0072】
また、図3は単にCMM制御系の機能を示すものであることに留意しなければならない。具体的には、機械コントローラ36の各種構成要素は同じボックスの中に物理的に配置することができるが、この機械上の異なる位置に配置することもできる。例えば、プローブヘッドは、第1および第2の制御部分64および66の電子回路の一部または全部を含むことができる。
【0073】
以上では関節式「アクティブ」ヘッドを説明したが、本発明は他のタイプの関節式ヘッドにも適用可能である。例えば、インデキシングヘッドも、ヘッドの向きによって異なる量の熱を放散し、やはり周囲温度に左右される温度プロファイルを有するであろう。したがって、本発明は、関節式インデキシングヘッドに適用されたときに、特許文献3の技法よりも有利であることが分かる。
【0074】
図1〜3を参照して説明した例はCMMに関するが、関節式プローブヘッドは任意のタイプの座標位置決め機に装着することができることに留意されたい。関節式プローブヘッドは例えば、工作機械に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】アクティブヘッドを含む座標測定機(CMM)を示す図である。
【図2】図1のCMMの関節式アクティブヘッドをより詳細に示す図である。
【図3】CMMの制御系を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定プローブを支持する関節式プローブヘッドを含む、座標位置決め機用の装置において、前記関節式プローブヘッドは少なくとも1つの電動機を含み、この装置は、前記関節式プローブヘッド内において熱を発生させる加熱手段を含む装置であって、前記関節式プローブヘッドの温度を決定する温度感知手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記関節式ヘッドは前記温度感知手段を含み、前記温度感知手段は少なくとも1つの温度センサを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの温度センサは熱抵抗器を含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記温度感知手段は、前記少なくとも1つの電動機から離れた前記関節式ヘッドの1つまたは複数の点の温度を感知するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
温度コントローラを含み、前記温度コントローラは、前記温度感知手段から温度信号を受け取り、前記温度感知手段によって感知される前記温度を第1の温度範囲内に維持するよう前記加熱手段を選択的に活動化させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記温度コントローラは、装置始動時に前記加熱手段が、前記第1の温度範囲内に前記温度を維持するためにその後に使用される発熱速度に比べてより高い速度で熱を発生させるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記加熱手段は少なくとも1つの別個の加熱エレメントを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記加熱手段は、所与のトルクを生み出すために前記少なくとも1つの電動機に供給される全電力を変化させることができるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電動機はブラシレス電動機であり、前記加熱手段は、前記電動機に供給される多相電力成分間の相対位相を制御するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記加熱手段は、前記電動機の巻線に加えられた前記多相電力成分によって生み出される磁場と、前記電動機巻線に対して回転する前記ブラシレス電動機の構成部品によって生み出される磁場との間の相対位相角を制御するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記加熱手段は、前記電動機の前記巻線の加熱だけを引き起こす周波数成分を有する電流を、前記少なくとも1つの電動機に供給するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
少なくとも第1の電動機および第2の電動機を有する関節式ヘッドを含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
少なくとも第3の電動機をさらに含む関節式ヘッドを含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記関節式ヘッドは前記温度感知手段を含み、前記温度感知手段は、少なくとも第1の温度センサおよび第2の温度センサを含むことを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
請求項12または13に従属するときの請求項14に記載の装置であって、前記第1の温度センサは前記第1の電動機の近くに配置されており、前記第2の温度センサは前記第2の電動機の近くに配置されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
前記第1の温度センサは前記第1の電動機のケーシングに取り付けられており、前記第2の温度センサは前記第2の電動機のケーシングに取り付けられていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
温度コントローラを含み、前記温度コントローラは、前記第1の温度センサから第1の温度信号を受け取り、前記第1の温度センサによって感知される前記温度を所定の第1の温度範囲内に維持するよう前記第1の電動機を選択的に加熱するように構成されていることを特徴とする請求項15から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記温度コントローラは、前記第2の温度センサから第2の温度信号を受け取り、前記第2の温度センサによって感知される前記温度を所定の第2の温度範囲内に維持するよう前記第2の電動機を選択的に加熱するように構成されていることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記関節式プローブヘッドはアクティブプローブヘッドであることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記関節式プローブヘッドに測定プローブが取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記測定プローブは非接触プローブを含むことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記測定プローブは接触プローブを含むことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記接触プローブは光センサを含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの電動機は、前記測定プローブの速度、位置および加速度のうちの少なくとも1つを制御するように構成されていることを特徴とする請求項20から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
請求項1ないし24のいずれかに記載の装置を含むことを特徴とする座標位置決め機。
【請求項26】
機械コントローラを含み、前記機械コントローラは、前記関節式ヘッドの前記少なくとも1つの電動機を制御するように適合されていることを特徴とする請求項25に記載の機械。
【請求項27】
前記機械コントローラに前記温度感知手段からの信号が供給されることを特徴とする請求項26に記載の機械。
【請求項28】
熱膨張の影響に関して座標測定値を補正するために、前記温度感知手段によって測定された前記温度が前記機械コントローラによって使用されることを特徴とする請求項27に記載の機械。
【請求項29】
座標位置決め機用の関節式ヘッド装置において、測定プローブを保持するように構成されており、装置に測定プローブが取り付けられているときに、前記測定プローブの位置、速度および加速度のうちの少なくとも1つを制御する少なくとも1つの電動機を含む関節式ヘッド装置であって、前記少なくとも1つの電動機はさらに、少なくとも前記関節式ヘッド装置の部分の温度を制御するように構成されていることを特徴とする関節式ヘッド装置。
【請求項30】
少なくとも1つの電動機を含む関節式プローブヘッドを動作させる方法であって、(a)前記プローブヘッドの1つまたは複数の領域の温度を測定するステップと、(b)前記関節式ヘッド内において熱を発生させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
ステップ(b)は、ステップ(a)で測定される温度をある温度範囲内に維持するように、前記関節式ヘッド内において熱を発生させるステップを含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
以下の明細書において図1から3を参照して実質的に記述されることを特徴とする装置。
【請求項33】
以下の明細書において図1から3を参照して実質的に記述されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−526985(P2009−526985A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554839(P2008−554839)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000514
【国際公開番号】WO2007/093789
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】