説明

防曇性物品

【課題】本発明は、耐熱性及び防曇性に優れる防曇性物品を提供することを課題とする。
【解決手段】基材と該基材に密着した被膜とを具備した防曇性物品において、該被膜がバインダー成分とポリアクリル酸類の共重合体とを含有する複合膜であって、該被膜は吸水性を呈する被膜であり、該被膜の吸水飽和時の単位体積の吸水量が0.05〜3mg/mmであり、該被膜は100℃以下の熱に対して耐熱性を有する防曇性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用、建築用等の防曇性窓材または防曇性鏡、レンズ、ディスプレー等各種用途において、日射などの熱に長期間に亘って晒される場合においても、耐熱性と防曇性に優れる防曇性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスやプラスチック等の光透過性基材や鏡等の光反射性基材は、基材を挟んで内面と外面の温湿度の差により、一方の表面が露点以下になった場合、又は、基材に対して急激な温湿度変化が起こった場合(沸騰水蒸気が基材に接触した場合や、低温部から高温多湿の環境に移った場合等)に雰囲気中の水分が水滴として付着し、基材表面は結露する。その結果、結露した水滴により光の散乱が起こる、いわゆる「曇り」が発生することで、視界が妨げられる。このような「曇り」により、一般的な窓ガラス、自動車や航空機のフロントガラス、反射鏡、眼鏡、サングラス等では、安全性や視認性が著しく損なわれる。
【0003】
特許文献1には、無機アルコキシド、無機アルコキシドの加水分解物および無機アルコキシドの加水分解重縮合物から選ばれる少なくとも1つ、ポリアクリル酸類およびポリビニルアルコールを配合してなる防曇性コーティング材料、および、無機アルコキシドの加水分解物の少なくとも重縮合反応をポリアクリル酸類およびポリビニルアルコールの存在下で生じせしめて得られる組成物を主成分とする防曇性塗膜が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アセタール化度2〜40モル%のポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルフェニルアセトアセタール、ポリビニルベンズアセタール、ポリビニルブチラールなど)からなる防曇層が開示されている。
【0005】
防曇膜には、長期間に亘り防曇性及び視認性が維持できることが望まれており、例えば日射などの熱に長期間に亘って晒される用途においては防曇膜に耐熱性が要求される。しかし、上記のいずれの発明においても得られる防曇膜は長期間にわたって加熱された場合に黄変しやすく、外観や視認性に問題が生じやすい傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−061029号公報
【特許文献2】特開平6−158031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性及び防曇性に優れる防曇性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防曇性物品は、基材と該基材に密着した被膜とを具備した防曇性物品において、該被膜がバインダー成分とポリアクリル酸類の共重合体とを含有する複合膜であって、該被膜は吸水性を呈する被膜であり、該被膜の吸水飽和時の単位体積の吸水量が0.05〜3mg/mmであり、該被膜は100℃以下の熱に対して耐熱性を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、基材と密着した被膜とは、引っ掻き等の人為的な作業で剥離しない膜で、且つ経時的に被膜自体または被膜中の成分が溶出することのない膜のことを示す。尚、本発明での吸水量とは、吸水していない状態での被膜の質量を基準としたときの被膜中に存在する水の質量を示している。
【0010】
吸水飽和時の前記被膜への単位体積の吸水量を上記範囲に設定したのは、0.05mg/mm未満では、吸水を飽和するまでの時間を長くするためには膜厚を厚くする必要があり、その結果、光学的な歪が生じやすくなることや、生産性が低下することがあるため好ましくない。3mg/mm超では、被膜のべたつき感が大きくなることや、強度の低下や耐水性が悪くなるからである。より好ましい単位体積の吸水量は0.1〜2mg/mmである。
【0011】
また、前記被膜は100℃以下の熱に対して耐熱性を有することが好ましい。100℃とはJIS R 3212「自動車用安全ガラス試験方法」に記載される自動車用ガラスの熱負荷を想定したものである。
【0012】
本発明において、「被膜が100℃以下の熱に対して耐熱性を有すること」とは、被膜が100℃以下の熱に晒された後であっても、該被膜の視認性や防曇性に不具合が生じないことを意味する。
【0013】
視認性に関しては、100℃以下の熱に晒された後であっても前記被膜に、例えば着色や亀裂、異物の析出、ひずみ等の外観上の不具合が発生しないことが好ましい。
【0014】
防曇性に関しては、100℃以下の熱に晒された後であっても、例えば、車両用窓ガラスにおける実車環境を想定した防曇性試験(以下、実車想定防曇性試験と記載する)で10分以上結露が発生しないことが好ましい。ここで実車想定防曇性試験とは、図1に示すような温度湿度が制御できる二室の間にサンプルを設置した試験である。被膜側を車内想定恒温室、基板側を車外想定恒温室とし、曇りの発生しやすい梅雨時期を想定した車外想定温度を20℃、車内想定温度を25℃、車内想定湿度を95%としたものと、冬場を想定した車外想定温度を0℃、車内想定温度を25℃、車内想定湿度を60%としたものである。
【0015】
前記被膜は、バインダー成分由来の成分の耐熱性と、ポリアクリル酸類由来の成分の吸水性と耐熱性により、優れた耐熱性と防曇性を兼ね備えた被膜である。
【0016】
また、前記バインダー成分は、下記一般式[1]で表される有機金属化合物(A)、前記有機金属化合物(A)が一部縮合した化合物(B)、または、前記の(A)と(B)を混合したものであることが好ましい。
MX4−n [1]
ここで、Rは炭素数が1〜18の炭化水素基、または、前記炭化水素基の一部の水素原子をエポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換した有機基である。また、MはSi、Ti、Al、Zr、Sn、Znからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素で、Xはアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1つの基であり、nは0〜3の整数である。
【0017】
前記有機金属化合物(A)のうち少なくとも1種が、前記一般式[1]のMがSiである化合物であると、防曇性及び耐熱性に優れた被膜が得られるため特に好ましい。
【0018】
前記ポリアクリル酸類の分子量は、1,000〜250,000であることが好ましい。分子量が1,000未満の場合、防曇性が発現しない、または十分な防曇性が得られない傾向がある。分子量が250,000超の場合、塗布剤の粘度上昇が大きく、成膜性が低下する傾向がある。なお、本発明において分子量とは重量平均分子量である。
【0019】
前記ポリアクリル酸類は、
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、もしくはポリメタクリル酸エステル、及び、
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、もしくはポリメタクリル酸エステルのメチレン鎖の水素原子の一部がエポキシ基、グリシドキシ基、もしくはアミノ基と反応性を有する置換基に置換された化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。吸水性の観点から、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などが特に好ましい。
【0020】
前記のバインダー成分、及び、ポリアクリル酸類の総量に対して、ポリアクリル酸類は、5〜60質量%であることが好ましい。5質量%未満では、得られる被膜に防曇性が発現しない、または十分な防曇性が得られない傾向がある。60質量%超では、得られる被膜中でポリアクリル酸類を固定化できず、吸水時にポリアクリル酸類が溶出する傾向がある。防曇性とポリアクリル酸類の固定化の観点から、より好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%である。
【0021】
また、前記被膜の十分な吸水性の機能を得るために被膜の膜厚を5μm以上とすることが好ましい。膜厚を厚くする程、被膜の吸水容量は大きくなるが、厚くしすぎると光学的な歪が生じやすくなることや、生産性が低下するので、100μm以下とすることが好ましい。
【0022】
前記吸水性の機能は、被膜中に存在するポリアクリル酸類由来の成分によって、効率的に行うことができる。ポリアクリル酸類由来の成分に含まれるカルボキシル基は、水を結合水として吸収する機能を有し、吸水性による防曇性を発現させることを可能とする。従来の吸水性により防曇性を発現する膜には吸水成分としてポリビニルアルコール類やポリビニルアセタール類に由来する成分を含む場合があるが、本発明で得られる被膜中で該ポリビニルアルコール類やポリビニルアセタール類に由来する成分は5質量%以下であることが好ましい。5質量%超では100℃以下の熱により被膜が着色し易いため好ましくない。被膜中のポリビニルアルコール類やポリビニルアセタール類に由来する成分のより好ましい濃度は1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、さらに、得られる被膜中に前記ポリビニルアルコール類やポリビニルアセタール類に由来する成分が実質的に含まれないことが特に好ましい。
【0023】
また、前記基材と前記被膜の屈折率差が、10%以内であることが好ましい。前記の屈折率差が10%超であると、干渉作用が大きくなり、視認性が低下したり、目視により干渉縞や着色がみられたりするため好ましくない。より好ましくは、前記の屈折率差が5%以内である。なお、前記の屈折率差(%)はエリプソメータで波長633nmにおける基材及び被膜の屈折率を測定し、(被膜の屈折率−基材の屈折率)/基材の屈折率)×100の絶対値として算出する。
【0024】
また、本発明の防曇性物品は、少なくとも以下の工程を経て作製されることが好ましい。
(1)バインダー成分、ポリアクリル酸類を含有する被膜形成用塗布剤を調製する工程
(2)前記被膜形成用塗布剤を塗布する工程、及び
(3)塗膜を硬化する工程
【発明の効果】
【0025】
本発明の防曇性物品は、耐熱性及び防曇性に優れるため、長期間に亘って熱に晒される部材や用途において使用することが出来る。特に車両用の窓材に使用した場合に効果が顕著であり、安全で快適な車内環境を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】二室型環境試験機を用いた実車想定防曇性試験の模式図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の防曇性物品は、基材と該基材に密着した被膜とを具備した防曇性物品において、該被膜がバインダー成分とポリアクリル酸類の共重合体とを含有する複合膜であって、該被膜は吸水性を呈する被膜であり、該被膜の吸水飽和時の単位体積の吸水量が0.05〜3mg/mmであり、該被膜は100℃以下の熱に対して耐熱性を有する。
【0028】
本発明の防曇性物品は、少なくとも以下の工程を経て作製される。
(1)バインダー成分、ポリアクリル酸類を含有する被膜形成用塗布剤を調製する工程
(2)前記被膜形成用塗布剤を塗布する工程、及び
(3)塗膜を硬化する工程
【0029】
基材としては、光透過性、光反射性または光沢性を有し、曇りにより著しく安全性や、外観、意匠性が損なわれるものが用いられる。
【0030】
光透過性を有する代表的な基材としてはガラスが用いられる。そのガラスは自動車用ならびに建築用、産業用ガラス等に通常用いられている板ガラスであり、フロート法、デュープレックス法、ロールアウト法等による板ガラスであって、製法は特に問わない。ガラス種としては、クリアをはじめグリーン、ブロンズ等の各種着色ガラスやUV、IRカットガラス、電磁遮蔽ガラス等の各種機能性ガラス、網入りガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス等防火ガラスに供し得るガラス、強化ガラスやそれに類するガラス、合わせガラスのほか複層ガラス等を使用できる。また、上記板ガラス以外に、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ポリカーボネート、アクリル等の樹脂板等も使用することができる。
【0031】
また、光反射性を有する代表的な基材としては、銀引き法、あるいは真空成膜法により作製された鏡や金属、金属メッキされた物品等を使用できる。
【0032】
また、光沢性を有する代表的な基材としては、金属、金属メッキされた物品、セラミックス等を使用できる。
【0033】
上記の基材には、平板、曲げ板等各種の成形体を使用できる。板厚は特に制限されないが、1.0mm以上10mm以下が好ましく、例えば車両用の窓材としては1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。基材への被膜の形成は、基材の片面だけであってもよいし、両面に行ってもよい。また、該被膜の形成は基材面の全面でも一部分であってもよい。
【0034】
前記被膜は、バインダー成分とポリアクリル酸類の共重合体を含有する複合膜であることが好ましい。前記被膜は、バインダー成分由来の成分の耐熱性と、ポリアクリル酸類由来の成分の吸水性と耐熱性により、優れた耐熱性と防曇性を兼ね備えた被膜である。
【0035】
前記被膜としては、好適には、バインダー成分由来のメタロキサン結合を有する成分を含有することが好ましく、該成分は有機金属化合物を縮合して得られる成分であることが好ましい。さらに、バインダー成分とポリアクリル酸類が結合した複合膜であると、被膜からのポリアクリル酸類由来の成分の溶出が防げ、長期間に亘って防曇性を発現することができ、熱により被膜が劣化し難くなるため、有機金属化合物はポリアクリル酸類と共重合するものがより好ましい。
【0036】
有機金属化合物としては、下記一般式[1]で表される有機金属化合物(A)、前記有機金属化合物(A)が一部縮合した化合物(B)、または、前記の(A)と(B)を混合したものを使用することができる。
MX4−n [1]
ここで、Rは炭素数が1〜18の炭化水素基、または、前記炭化水素基の一部の水素原子をエポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換した有機基である。また、MはSi、Ti、Al、Zr、Sn、Znからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素で、Xはアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1つの基であり、nは0〜3の整数である。
【0037】
前記有機金属化合物(A)の例としては、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、(クロロメチル)ジメチルイソプロポキシシラン、[ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル]トリエトキシシラン、トリメチル[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、トリメトキシシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、トリメトキシ(p−トリル)シラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリエトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシフルオロシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、N−[2−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ベンジルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル クロリド、3−−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、(クロロメチル)トリエトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3−ブロモプロピル)トリメトキシシラン、オルトけい酸テトラプロピル、オルトけい酸テトラメチル、オルトけい酸テトラキス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル)、オルトけい酸テトライソプロピル、オルトけい酸テトラエチル、オルトけい酸テトラブチル、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジ−p−トリルシラン、ジメトキシ(メチル)シラン、ジエトキシメチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシ(メチル)フェニルシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、シクロヘキシル(ジメトキシ)メチルシラン、3−メルカプトプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、1,5−ジクロロ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(3−グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、3−クロロプロピルジクロロメチルシラン、クロロメチル(ジクロロ)メチルシラン、ジ−tert−ブチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジクロロ(メチル)オクタデシルシラン、ジクロロ(メチル)フェニルシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシラン、ジクロロデシルメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジヘキシルシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジペンチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロドデシルメチルシラン、ジクロロエチルシラン、ジクロロヘキシルメチルシラン、ジクロロメチルシラン、n−オクチルメチルジクロロシラン、テトラクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、ビス(トリクロロシリル)アセチレン、ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジメチルジシラン、イソブチルトリクロロシラン、n−オクチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、テキシルトリクロロシラン、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロ(プロピル)シラン、トリクロロ−2−シアノエチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロシラン、トリクロロテトラデシルシラン、(3−シアノプロピル)ジメチルクロロシラン、(ブロモメチル)クロロジメチルシラン、(クロロメチル)ジメチルクロロシラン、1,2−ジクロロテトラメチルジシラン、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,5−ジクロロ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、α−(クロロジメチルシリル)クメン、ベンジルクロロジメチルシラン、ブチルクロロジメチルシラン、クロロ(デシル)ジメチルシラン、クロロ(ドデシル)ジメチルシラン、クロロジイソプロピルシラン、クロロジメチルフェニルシラン、クロロジメチルプロピルシラン、クロロジメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリメチルシラン、ジエチルイソプロピルシリル クロリド、ジメチル−n−オクチルクロロシラン、ジメチルエチルクロロシラン、ジメチルイソプロピルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、トリイソプロピルシリルクロリド、トリフェニルクロロシランなどの有機ケイ素化合物や、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、四塩化チタンなどの有機チタン化合物や、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、三塩化アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、四塩化ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物や、すずメトキシド、すずエトキシド、すずイソプロポキシド、すずブトキシド、二塩化すずなどの有機すず化合物や、ジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛、ジ−n−プロポキシ亜鉛、ジ−n−ブトキシ亜鉛、二塩化亜鉛などの有機亜鉛化合物が挙げられる。特に、得られる被膜の透明性や価格から、有機ケイ素化合物が好ましい。
【0038】
前記有機金属化合物は、基材と被膜の屈折率のマッチングを考慮して、前記基材と前記被膜の屈折率差が10%以内となるように選定することが重要である。例えば基材としてガラスを用いる場合、屈折率のマッチングや該基材との密着性などから、前記有機金属化合物は有機ケイ素化合物であることが好ましい。また、上記の有機金属化合物を複数種類組み合わせて使用してもよい。
【0039】
また、前記有機金属化合物(A)のうち少なくとも1種が、前記一般式[1]のMがSiである化合物であると、防曇性及び耐熱性に優れた被膜が得られるため特に好ましい。
【0040】
ポリアクリル酸類としては、
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、もしくはポリメタクリル酸エステル、及び、
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、もしくはポリメタクリル酸エステルのメチレン鎖の水素原子の一部がエポキシ基、グリシドキシ基、もしくはアミノ基と反応性を有する置換基に置換された化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを使用することができる。
【0041】
前記の反応性を有する置換基としてはアミノ基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアナート基、アルコキシ基、ビニル基、アクリル基、もしくはメタクリル基などが挙げられる。また、ポリアクリル酸類として、下記一般式[2]で示すようなポリアクリル酸と反応性基Yを有する部位が共重合した化合物であってもよい。



ここで、反応性基Yはアミノ基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアナート基、アルコキシ基、ビニル基、アクリル基、もしくはメタクリル基などであり、sは10〜350、tは5〜200であることが好ましい。
【0042】
なお、一般式[2]の化合物はブロック共重合体でもよく、交互共重合体でもよく、ランダム共重合体でも良い。また、s及びtは、ブロック共重合体の場合にはそれぞれの繰り返し単位の数を表し、交互共重合体及びランダム共重合体の場合にはそれぞれの構造単位の総数を表す。
【0043】
吸水飽和時の被膜中の単位体積の吸水量が0.05〜3mg/mmとなるように、ポリアクリル酸類の添加量を調整し、被膜中のポリアクリル酸類由来の吸水成分量を調整する。該吸水成分は、ポリアクリル酸類に含まれる、カルボキシル基、及びカルボキシル基のナトリウム塩などが好ましい。
【0044】
前記被膜形成用塗布剤を調製する工程において、該塗布剤は溶媒を含有してもよい。溶媒としては前記塗布剤を溶解するものであれば特に限定されないが、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。相溶性、安全性の観点からエチルアルコールが好ましい。また、複数の溶媒を用いて混合溶媒としてもよい。
【0045】
また、前記被膜形成用塗布剤には、該塗布剤の硬化反応を促進する目的で、触媒が添加されてもよい。該触媒として、酸性水溶液を用いる場合、加水分解速度に応じて塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、フタル酸、コハク酸などの有機酸等の酸触媒を有する水溶液が選択されることが好ましい。このとき、塗布剤中でのpH値が1乃至5となるように酸触媒が添加されることが好ましい。
【0046】
また、触媒として、スズ、アルミニウム、チタン、ジルコニウムなどの金属錯体を用いることができる。ここで、金属錯体は弗化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、アセチルアセトナート塩などが好ましい。該触媒は、塗布剤中の有機金属化合物量に対し質量比で、0.05倍量迄加えてもよい。0.05倍量超加えても、添加量に対する触媒効果がそれ以上向上しなくなる傾向があるので、大量の触媒を添加する必要はない。他方、触媒効果を発揮させるためには、硬化触媒は処理剤中のケイ素化合物B量に質量比で、0.0001倍量以上添加することが好ましい。
【0047】
また、被膜形成用塗布剤には、前記ポリアクリル酸類、前記バインダー成分以外の成分として、本発明の目的を阻害しない範囲で、光重合開始剤、熱重合開始剤、界面活性剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、防黴剤等の他の成分を添加しても良い。
【0048】
前記他の成分が水酸基、カルボニル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等を有する成分であると、前記ポリアクリル酸類由来の成分による吸水効果に加え、該他の成分の親水性により前記吸水効果が促進されるため好ましい。
【0049】
前記有機金属化合物と前記ポリアクリル酸類を含有する塗布剤を基材にディップコート、フローコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、手塗り法、インクジェット法等の公知の塗布手段により塗布し、硬化させることで被膜を得ることができる。
【0050】
前記被膜形成用塗布剤の塗膜の硬化方法としては、熱硬化、光硬化等で硬化することができる。熱硬化の場合、加熱温度は50〜200℃、より好ましくは80〜150℃が好ましい。50℃未満では硬化速度が遅く、硬化に時間が掛かるため好ましくない。また200℃超ではポリアクリル酸類が劣化しやすいため好ましくない。光硬化させる場合は、一般的なラジカル重合開始剤、もしくはカチオン性重合開始剤を用い、光照射の方法はとくに限定されず、高圧水銀灯やキセノンランプ等を用いることができる。
【0051】
また、防曇性物品の耐久性をより向上させるために、基材と被膜との接着強度を向上させる処理を基材表面に予め行うこともできる。前記の処理としては、プライマー処理、プラズマ照射、コロナ放電、高圧水銀灯照射等が挙げられる。
【0052】
前記プライマー処理では、前記塗布液の塗布前に、プライマーとしてシランカップリング剤を有する液を基材表面塗布しておくことが好ましい。好適なシランカップリング剤として、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を使用することが可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例および比較例で得られた防曇性物品は、以下に示す方法により品質評価を行った。
【0054】
[外観評価]
成膜品の外観を目視にて確認し、干渉縞や着色や透視ひずみなどの外観上の不具合がないサンプルを(○)、外観上の不具合が見られたサンプルを(×)とした。
【0055】
[被膜の単位体積の吸水量測定]
温度80℃の乾燥炉で2時間保持後の防曇性物品の質量(a)を測定し、被膜に35℃飽和水蒸気を暴露面全面が曇るまで接触させ、その後、すぐに被膜表面の水滴を払拭した後に防曇性物品の質量(b)を測定した。単位体積の吸水量は{(b−a)/(蒸気暴露面積×膜厚)}の計算式で得られた値を単位体積の吸水量とした。尚、ここでの(a)値は、被膜が吸水していない状態のものに相当する。前記吸水量が0.05〜3mg/mmであるサンプルを(○)、該範囲から外れるサンプルを(×)とした。
【0056】
[膜厚測定]
触針式表面粗さ計(小坂研究所製、サーフコーダーET−4000A)を用いて、湿度50%、温度55℃の環境で12時間保持後の被膜の膜厚を測定した。
【0057】
[屈折率評価]
He−Neレーザーを光源とするエリプソメータ(溝尻光学工業所製DVA−FL3G型)で波長633nmにおける基材及び被膜の屈折率を測定し、基材と被膜の屈折率差が10%以内であるものを合格(○)、10%超であるものを不合格(×)とした。
【0058】
[35℃水蒸気防曇性試験]
35℃飽和水蒸気で満たされた槽の上部に、被膜面を前記槽に向けてサンプルを設置し、曇りが生じるまでの時間を測定し、30秒以上のものを(○)、30秒未満のもの、または外観上不具合が発生したものを(×)とした。
【0059】
[実車想定防曇性試験]
図1に示すように二室型環境試験機(タバイエスペック社製、型式TBL−2HW2P1A/TBU−2HW0P2A)を用いて二室の間にサンプルを設置し、二室の温湿度を実使用に近い下記条件とし結露が発生するまでの時間を測定し、10分以上のものを(○)、10分未満のもの、または外観上不具合が発生したものを(×)とした。
条件1:梅雨を想定
車外想定恒温室温度20℃、車内想定恒温室温度25℃、車内想定恒温室湿度95%
条件2:冬場を想定
車外想定恒温室温度0℃、車内想定恒温室温度25℃、車内想定恒温室湿度60%
【0060】
[耐熱性試験]
100℃で保持された恒温槽で200時間サンプルを保持し、外観に不具合がなかったもの及び防曇性(35℃水蒸気防曇性、実車想定防曇性)試験に合格したものを(○)、外観に不具合があったものや、防曇性が不合格となったものを(×)とした。
【0061】
実施例1
[基材の準備]
基材としては、厚さ3mm、100mm四方のフロートガラスを使用した。基材ガラス表面をセリア微粒子で研磨し、ブラッシング洗浄を行い乾燥した。
【0062】
[被膜形成用塗布剤の調合]
メチルアルコール41.53g、イオン交換水10.14g、分子量25,000のポリアクリル酸(和光純薬工業製)10gを加え、溶解するまで攪拌混合した。その後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、GPTMSと記載する)(信越シリコーン製、商品名:KBE−403)12.72g、メチルトリエトキシシラン(以下、MTESと記載する)(信越シリコーン製、商品名:KBE−13)15.48g、1N硝酸を10.14g添加し、23℃で16時間攪拌し、被膜形成用塗布剤100gを得た。
【0063】
[防曇性物品の作製]
前記塗布剤を、前記基材ガラスにスピンコーティング法により塗布した。塗布剤が塗布された基材ガラスを100℃に保持された電気炉に16時間入れ、硬化させることにより被膜を形成させた。品質評価結果を表1に示す。この被膜は、外観上の不具合が見られず○、膜厚が35μm、被膜の単位体積の吸水量が0.7mg/mmで○であった。また、基材のフロートガラス及び得られた被膜の屈折率は、それぞれ、1.52、1.48であり、屈折率差は3%であり、○であった。防曇性物品の35℃水蒸気防曇性は120秒で○、実車想定防曇性試験は条件1で60分以上となり○、条件2では21分で○となった。また、耐熱性試験として該防曇性物品を100℃で200時間保持した後も、外観に不具合がなく、防曇性(35℃水蒸気防曇性、実車想定防曇性)試験に合格し、○であった。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例2
実施例1の[防曇性の被膜形成用塗布剤の調合]にて、バインダー成分としてGPTMS、MTESに加え、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業製)(以下、TiTIPと記載する)を15g添加し、基材として屈折率1.80の鉛系ガラスを用いた以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を得た。この被膜は、外観上の不具合が見られず○、膜厚が35μm、被膜の単位体積の吸水量が0.2mg/mmで○であった。また、得られた被膜の屈折率は、1.68であり、屈折率差は7%であり、○であった。防曇性物品の35℃水蒸気防曇性は35秒で○、実車想定防曇性試験は条件1で30分となり○、条件2では12分で○となった。また、耐熱性試験として該防曇性物品を100℃で200時間保持した後も、外観に不具合がなく、防曇性(35℃水蒸気防曇性、実車想定防曇性)試験に合格し、○であった。
【0066】
比較例1
実施例1の[防曇性の被膜形成用塗布剤の調合]にてポリアクリル酸10gの代わりに、分子量2,000のポリビニルアルコール(キシダ化学製)10gを使用した以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を得た。この防曇性物品の被膜において、外観上の不具合は見られず○、膜厚は35μmで、被膜の単位体積の吸水量が1.0mg/mmで○であり、得られた被膜の屈折率は、1.49であり、屈折率差は2%であり○、35℃水蒸気防曇性は150秒で○、実車想定防曇性試験は条件1で60分以上となり○、条件2では30分で○であったが、耐熱性試験として該防曇性物品を100℃で200時間保持することで膜が黄変し×であった。
【0067】
比較例2
アセタール化度9%のポリビニルアセタール(KX−1、固形分9%、積水化学製)を防曇膜形成用塗布剤とした以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を得た。この防曇性物品の被膜において、外観上の不具合は見られず○、膜厚は10μmで、被膜の単位体積の吸水量が1.5mg/mmで○であり、得られた被膜の屈折率は、1.46であり、屈折率差は4%であり○、35℃水蒸気防曇性は60秒で○、実車想定防曇性試験は条件1で60分となり○、条件2では15分で○であったが、耐熱性試験として該防曇性物品を100℃で200時間保持することで膜が黄変し×であった。
【0068】
比較例3
実施例1の[防曇性の被膜形成用塗布剤の調合]にてポリアクリル酸添加量を1gとした以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を得た。この防曇性物品の被膜において、外観上の不具合は見られず○、膜厚は35μmで、被膜の単位体積の吸水量が0.01mg/mmで×であり、得られた被膜の屈折率は、1.48であり、屈折率差は3%であり○、35℃水蒸気防曇性は5秒で×、実車想定防曇性試験は条件1で3分となり×、条件2では1分で×であった。また、耐熱性試験として該防曇性物品を100℃で200時間保持しても外観に不具合はなかったが、防曇性(35℃水蒸気防曇性、実車想定防曇性)試験が不合格であり×であった。
【0069】
比較例4
実施例1の[防曇性の被膜形成用塗布剤の調合]にてポリアクリル酸添加量を50gとした以外は実施例1と同様の操作で防曇性物品を得た。この被膜は、べとつきがあり外観上も透視ひずみが見られ×、膜厚が35μm、被膜の単位体積の吸水量が3.2mg/mmで×であった。また、基材のフロートガラス及び得られた被膜の屈折率は、それぞれ、1.52、1.48であり、屈折率差は3%であり、○であった。防曇性物品の35℃水蒸気防曇性は300秒でも曇りは見られなかったが、膜のべとつきがより悪化し透視ひずみがあり×、実車想定防曇性試験は条件1で60分以上、条件2では50分となったが、試験後に膜のべとつきが悪化し透視ひずみがあり×となった。また、耐熱性試験として該防曇性物品を100℃で200時間保持した後も、べとつきがあり外観上も透視ひずみが見られ×、防曇性(35℃水蒸気防曇性、実車想定防曇性)試験も不合格であり×であった。
【0070】
比較例5
基材として屈折率1.80の鉛系ガラスを用いた以外は比較例1と同様の操作で防曇性物品を得た。この被膜は、外観に透視ひずみが見られ×、膜厚は35μm、被膜の単位体積の吸水量が1.0mg/mmで○であった。また、基材のフロートガラス及び得られた被膜の屈折率は、それぞれ、1.80、1.49であり、屈折率差は17%であり、×であった。防曇性物品の35℃水蒸気防曇性は150秒で○、実車想定防曇性試験は条件1で60分以上となり○、条件2では30分で○となった。また、耐熱性試験として該防曇性物品を100℃で200時間保持することで膜が黄変し×であった。
【符号の説明】
【0071】
1 車外想定恒温室(温度制御)
2 車内想定恒温室(温度・湿度制御)
3 車外側と車内側を仕切る壁材
4 防曇性物品
5 基材
6 被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材に密着した被膜とを具備した防曇性物品において、該被膜がバインダー成分とポリアクリル酸類の共重合体とを含有する複合膜であって、該被膜は吸水性を呈する被膜であり、該被膜の吸水飽和時の単位体積の吸水量が0.05〜3mg/mmであり、該被膜は100℃以下の熱に対して耐熱性を有することを特徴とする防曇性物品。
【請求項2】
前記バインダー成分が、下記一般式[1]で表される有機金属化合物(A)、前記有機金属化合物(A)が一部縮合した化合物(B)、または、前記の(A)と(B)を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の防曇性物品。
MX4−n [1]
(式[1]中、Rは炭素数が1〜18の炭化水素基、または、前記炭化水素基の一部の水素原子をエポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換した有機基である。また、MはSi、Ti、Al、Zr、Sn、Znから選ばれる少なくとも1つの元素で、Xはアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基であり、nは0〜3の整数である。)
【請求項3】
前記有機金属化合物(A)のうち少なくとも1種が、前記一般式[1]のMがSiである化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の防曇性物品。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸類の分子量が、1,000〜250,000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防曇性物品。
【請求項5】
前記ポリアクリル酸類が、
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、もしくはポリメタクリル酸エステル、及び、
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、もしくはポリメタクリル酸エステルのメチレン鎖の水素原子の一部がエポキシ基、グリシドキシ基、もしくはアミノ基と反応性を有する置換基に置換された化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防曇性物品。
【請求項6】
前記のバインダー成分、及び、ポリアクリル酸類の総量に対して、ポリアクリル酸類が5〜60質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の防曇性物品。
【請求項7】
被膜の膜厚が5〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の防曇性物品。
【請求項8】
被膜の吸水を、被膜中に存在するポリアクリル酸類由来の成分によって行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の防曇性物品。
【請求項9】
前記基材と前記被膜の屈折率差が、10%以内であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の防曇性物品。
【請求項10】
少なくとも以下の工程を経て作製することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の防曇性物品の形成方法。
(1)バインダー成分、ポリアクリル酸類を含有する被膜形成用塗布剤を調製する工程
(2)前記被膜形成用塗布剤を塗布する工程、及び
(3)塗膜を硬化する工程

【図1】
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【公開番号】特開2012−17394(P2012−17394A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155164(P2010−155164)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】