説明

防錆構造

【課題】 単筒型の緩衝器の外周側にバネ受けやホースブラケット類を配在する場合の具現化に向くようにする。
【解決手段】 筒型の緩衝器1を構成しながら懸架バネSの介在下にロッド体12を出没可能に挿通させるシリンダ体11と、下端がシリンダ体11のボトム端部11aに固着されながらシリンダ体11の外周側に隙間Aを有して介装されて外周にホースブラケット3類を連設させる外筒4とを有してなる防錆構造において、シリンダ体11の上端あるいは上端部11bから防水構造下に垂設される筒状あるいは有頭筒状に形成のカバー部材5における下端部5bの内周側に外筒4における上端が臨在されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防錆構造に関し、特に、単筒型の緩衝器の外周側にバネ受けやホースブラケット類を連設させる外筒を介装する場合の防錆構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、筒型緩衝器の外周には、たとえば、特許文献1に開示されているように、懸架バネの下端を担持するバネ受けが介装されるが、このとき、バネ受けの多くが緩衝器を構成するシリンダ体の外周に直接あるいは間接に保持されるとしている。
【0003】
ちなみに、上記の特許文献1に開示されているところにあっては、バネ受けはシリンダ体の外周に移動可能に介装されていて、このバネ受けを担持するアジャストステーなる担持部材がシリンダ体の外周に固着されるとしている。
【0004】
ところで、バネ受けや上記の担持部材などが溶接でシリンダ体の外周に直接に保持されるとしても良いのは、緩衝器が複筒型に設定されていて、シリンダ体を構成するアウターシェルが溶接などで歪むとしても、内周にピストンを摺接させるインナーシェルに溶接などによる歪みの影響が波及されないことが保障されている場合である。
【特許文献1】特開2004−3676号公報(段落0003,図2,図4) ところで、このような構造的な背景がある一方で、近年では、たとえば、図2に示すように、単筒型の緩衝器1の外周に懸架バネSの下端を担持するバネ受け2やホースブラケット3を保持させようとする提案がある。
【0005】
このとき、緩衝器1を構成するシリンダ体11の外周側には適宜の隙間Aを有して外筒4が介装されるとし、この外筒4の外周にバネ受け2およびホースブラケット3を溶接するとしている。
【0006】
ちなみに、外筒4は、下端部4aがシリンダ体11のボトム端部11aに溶接されるとし、このとき、いわゆる水抜きを形成するために、一部溶接しない部位を設けることがあるとしている。
【0007】
それゆえ、この図2に示す提案によれば、シリンダ体11において、ピストンを摺接させる部位となる内周に溶接による歪みの影響を波及させずして、所定のバネ受け2およびホースブラケット3を配在することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した図2に示す提案にあっては、シリンダ体11の外周と外筒4の内周との間に形成される隙間Aにおける防錆を保障できなくなる危惧があると指摘される可能性がある。
【0009】
すなわち、上記した図2に示す提案にあって、上記の隙間Aにおける防錆を保障するために外筒4の上端部4bをシリンダ体11の外周に密着させるようにしても、外筒4の上端部4bの内周とシリンダ体11の外周との間における防水は完全ではない。
【0010】
それゆえ、外筒4の上端部4bの内周とシリンダ体11の外周との間を介して上記の隙間Aに水が侵入したり、あるいは、この水が隙間Aに侵入しているダストに含浸されるなどでして、この隙間Aにおける錆が促進されることもある。
【0011】
そして、複雑な構造を採用すれば、効果的な防錆も可能になるであろうが、その場合には、その防錆構造を具現化する製品のコストを高騰化させ、それゆえ、その防錆構造を具現化した製品の汎用性の向上を期待できなくするであろう。
【0012】
この発明は、上記した現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、単筒型の緩衝器の外周側にバネ受けやホースブラケットなどを配在する場合の具現化に向き、その汎用性の向上を期待するのに最適となる防錆構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、この発明による防錆構造の構成を、筒型の緩衝器を構成しながら懸架バネの介在下にロッド体を出没可能に挿通させるシリンダ体と、下端がシリンダ体のボトム端部に固着されながらシリンダ体の外周側に隙間を有して介装されて外周にホースブラケット類を連設させる外筒とを有してなる防錆構造において、シリンダ体の上端あるいは上端部から防水構造下に垂設される筒状あるいは有頭筒状に形成のカバー部材における下端部の内周側に外筒における上端が臨在されてなるとする。
【発明の効果】
【0014】
それゆえ、この発明によれば、外筒の上端が上端側を防水構造下にシリンダ体の上端側に連繋させているカバー部材の下端部で覆われるから、外筒の内周とシリンダ体の外周との間に形成される隙間への防水が可能になり、この隙間における防錆を効果的に実現し得ることになる。
【0015】
このとき、この発明にあっては、カバー部材を必要とすることになるが、基本的には、カバー部材が必要になるのみで、それ以上に多数の部材を必要とする訳ではなく、この発明を具現化する製品のコストをいたずらに高騰化させないようにすることが可能になる。
【0016】
その結果、単筒型の緩衝器の外周側にバネ受けやホースブラケット類を配在する場合の具現化に向き、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による防錆構造は、図示するところにあっても、前記した図2に示す場合と同様に、単筒型の緩衝器1に具現化されてなるとしている。
【0018】
そして、この緩衝器1は、詳しくは図示しないが、懸架バネSの配在下に車軸側部材たるシリンダ体11内に車体側部材たるロッド体12を出没可能に挿通してなるとしている。
【0019】
また、同じく図示しないが、この緩衝器1にあっては、シリンダ体11内に摺動可能にピストンを収装していて、このピストンによってシリンダ体11内にロッド側室とピストン側室とを画成すると共に、ピストン側室にフリーピストンを摺動可能に収装していて、このフリーピストンの背後側にガス室からなるエアバネ室を画成するとしている。
【0020】
ちなみに、ピストンは、ロッド側室とピストン側室との連通を許容しながら、所定の伸側減衰力を発生させる伸側減衰バルブと所定の圧側減衰力を発生させる圧側減衰バルブとを有してなるとしている。
【0021】
それゆえ、この緩衝器1にあっては、ロッド体12がシリンダ体11に対して出没される伸縮作動時に、シリンダ体11内でピストンが移動し、このとき、ピストンに配在の伸側減衰バルブおよび圧側減衰バルブを作動油が通過することになり、所定の伸側および圧側の各減衰力が発生されることになる。
【0022】
一方、図示する緩衝器1にあっても、前記した図2に示す緩衝器1と同様に、シリンダ体11の外周側に外筒4を有してなるとしており、この外筒4の外周には、前記した図2に示す場合と同様に、ホースブラケット3が溶接されるとしている。
【0023】
ちなみに、この発明にあって、バネ受け2は、前記した図2に示す場合と異なり、後述するように、カバー部材6に溶接されてなるとしている。
【0024】
ところで、外筒4は、前記した図2に示す場合と同様に、シリンダ体11との間に隙間Aを形成するとしており、このとき、下端部4aは、シリンダ体11のボトム端11aに溶接されてなるとしている。
【0025】
ちなみに、前記した図2に示す場合にあっては、前述したように、外筒4の下端部4aをシリンダ体11のボトム端部11aに溶接するときに、水抜きを形成するために部分的に溶接が省略されることがあるとしている。
【0026】
これに対して、この発明では、後述することからも、水抜きを形成する必要がなく、したがって、外筒4の下端部4aをシリンダ体11のボトム端部11aに対していわゆる全周溶接することが可能になり、それゆえ、部分的に溶接が省略されるために、却って、この溶接が省略されている部分から隙間Aに水を浸入させ易くする場合に比較して、このボトム端部11a側からの水の浸入の機会をなくし、隙間Aにおける錆の招来を回避できることになる点で有利となる。
【0027】
ところで、上記の外筒4をシリンダ体11の外周側に配在するにあって、図示するところにあっても、前記した図2に示す場合と同様に、シリンダ体11の外周と外筒4の内周との間に隙間Aが形成されるとしている。
【0028】
このとき、図示するところでは、外筒4の上端部4bは、シリンダ体11の外周から上記の隙間Aを出現させるように離れているとしており、これによって、少なくともこの場面において、上記の隙間Aが閉鎖空間とされることで、いわゆる魔法瓶効果を発現しないように配慮している。
【0029】
以上からすると、外筒4の上端部4bは、シリンダ体11の外周から離れているから、この離れている言わば開口部分から隙間Aに水が浸入したりダストが侵入したりすることになる。
【0030】
そこで、この発明では、上記の開口部分をカバー部材5によって外側から覆うようにするもので、図示するところでは、このカバー部材5が有頭筒状に形成されながら緩衝器1を構成するシリンダ体11の上端部たるヘッド部11bに係止されるようにして垂設されてなるとしている。
【0031】
このとき、このカバー部材5とシリンダ体11との間における防水性を保障するために、すなわち、このカバー部材5とシリンダ体11との間における防水性が保障されないために、上記した開口部分に水が浸入することになるのを効果的に阻止するために、このカバー部材5がシリンダ体11のヘッド部11bとここに連設されるバンプストッパ13との間に頭部5aが挟持されることで防水構造が具現化されるとしている。
【0032】
ちなみに、カバー部材5における頭部5aの軸芯部にはシリンダ体11と共に緩衝器1を構成して上記のバンプストッパ13の軸芯部を貫通するロッド体12が貫通されてなるとしている。
【0033】
また、このカバー部材5は、この発明にあって、下端部5bの外周に懸架バネSの下端を担持するバネ受け2を溶接させてなるとしており、このカバー部材5を緩衝器1に改装することで、併せてバネ受け2を配在できるとしている。
【0034】
一方、上記のカバー部材5における下端部5bは、その内周側に外筒4の上端部4bが臨在されることになるまで垂下されるとしており、これによって、前記した開口部分を外部から遮蔽し、開口部分を介して隙間Aに水が浸入し、あるいは、ダストが侵入することを阻止するとしている。
【0035】
以上からすれば、この発明にあっては、外筒4の上端部4b側および下端部4a側からの隙間Aへの水の浸入が阻止されるから、隙間Aにおける防錆を確実に実現し得ることになる。
【0036】
そして、図示するところでは、カバー部材5における下端部5bの内周と外筒4における上端部4bの外周との間にシール部材6を配在するとしており、それゆえ、このシール部材6の配在で外筒4の上端部4b側からの隙間Aへの水の浸入を確実に阻止し得るのはもちろんのこと、このシール部材6が弾性に富む材料で形成される場合には、カバー部材5の下端部5bが外筒4の上端部4bに衝突する不具合を回避でき、騒音発生を危惧しなくて済むことになる。
【0037】
前記したところでは、カバー部材5が有頭筒状に形成され、したがって、シリンダ体11のヘッド部11bとバンプストッパ13との間に頭部5aが挟持されることで、所定の垂設状態におかれるとしているが、下端部5bが外筒4の上端を内周側に臨在させて防水機能を発揮する限りには、図示しないが、たとえば、カバー部材5が筒状に形成されて、上端がシリンダ体11のヘッド部11bの外周に溶接されるとしても良いことはもちろんである。
【0038】
ちなみに、カバー部材5の上端がシリンダ体11のヘッド部11bの外周に溶接されることで、このヘッド部11bに歪みが発生するとしても、シリンダ体11内を摺動するピストンは、この歪みを発生するヘッド部11bにまで摺動してこないので問題はない。
【0039】
なお、カバー部材5が有頭筒状に形成され、したがって、頭部5aがシリンダ体11のヘッド部11bとバンプストッパ13との間に挟持される状態になるとき、この頭部5aがバンプストッパ13のいわゆる下面にあらかじめ溶接されてなるとしても良いことはもちろんである。
【0040】
そして、前記したところでは、カバー部材5とバネ受け2とが別体に形成されていて、バネ受け2が爾後に溶接でカバー部材5に連設されるとしているが、この発明が意図するところからすれば、カバー部材5があらかじめバネ受け2を一体に有する構造に形成されているとしても良いことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明による防錆構造を具現化した単筒型の緩衝器を一部断面で示す部分正面図である。
【図2】従来例とされる単筒型の油圧緩衝器を図1と同様に示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 緩衝器
2 バネ受け
3 ホースブラケット
4 外筒
4b 上端部
5 カバー部材
5b 下端部
6 シール部材
11 シリンダ体
11a ボトム端部
11b 上端部たるヘッド部
12 ロッド体
S 懸架バネ
A 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型の緩衝器を構成しながら懸架バネの介在下にロッド体を出没可能に挿通させるシリンダ体と、下端がシリンダ体のボトム端部に固着されながらシリンダ体の外周側に隙間を有して介装されて外周にホースブラケット類を連設させる外筒とを有してなる防錆構造において、シリンダ体の上端あるいは上端部から防水構造下に垂設される筒状あるいは有頭筒状に形成のカバー部材における下端部の内周側に外筒における上端が臨在されてなることを特徴とする防錆構造
【請求項2】
カバー部材における下端部の内周と外筒における上端部の外周との間にシール部材が配在されてなる請求項1に記載の防錆構造
【請求項3】
カバー部材における下端部の外周に懸架バネの下端を担持するバネ受けが保持されてなる請求項1に記載の防錆構造

【図1】
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【図2】
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