説明

防音パネル

【課題】防汚性を有する硬度の高い層を防音パネルの表面に形成し、長期にわたり防汚性を保持し得る防音パネルを提供する。
【解決手段】防音パネル1の車道側と歩道側の両表面に、日本工業規格JIS−K−5600に記載の手かき法によって測定した鉛筆硬度による塗膜硬度が8Hであるアルカリシリケート系の親水性無機塗膜4を形成しているので、走行車両等による跳ね石が防音パネル1の表面に当たっても、その表面に形成した硬度の高い親水性無機塗膜4が剥がれ落ちることが少ないため、長期にわたり防汚性を保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車道と歩道の境界に沿って設置され、車両による騒音公害を防止するための防音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、街路等の一般道路においては、歩道利用者や沿線住民に対して車両騒音を防止するために、高さ800〜1000mm程度の防音パネルを、車道と歩道の境界や中央分離帯に沿って設置することがある。この種の防音パネルは、走行車両からの距離が近いため、走行車両から排出される排気ガス等が付着したり、また歩道利用者により落書き等がなされ、その表面が汚れてしまうことがある。かかる問題を解決するため、例えば特許文献1には、遮音又は防音性を有する基材の表面に、防汚膜を形成してなる防汚性を有する遮音又は防音材において、該防汚膜は、ペルオキソチタン酸を含む下地層と、この下地層上に形成されたペルオキソチタン酸とアナターゼ型酸化チタンとを含む光触媒層とを備えることを特徴とする防汚性を有する遮音又は防音材を用いた防音パネルが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−68719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される防音パネルでは、ペルオキソチタン酸を含む下地層の上に光触媒層を備えたものであるため、その層の硬度は高くとも鉛筆硬度2H〜5Hであるため、例えば走行車両による跳ね石が防音パネルの表面に形成された層に当たった場合、その層が剥がれてしまい、防汚性を長期にわたり保持することができない懸念があった。
【0005】
本発明は上記の如き課題を解決するためになされたものであり、防汚性を有する硬度の高い層を防音パネルの表面に形成し、長期にわたり防汚性を保持し得る防音パネルを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係る防音パネルは、車道と歩道の境界に沿って設置される防音パネルであって、車道側と歩道側の両表面に、日本工業規格JIS−K−5600に記載の手かき法によって測定した鉛筆硬度による塗膜硬度が8Hであるアルカリシリケート系の親水性無機塗膜が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る防音パネルによれば、防音パネルの車道側と歩道側の両表面に、日本工業規格JIS−K−5600に記載の手かき法によって測定した鉛筆硬度による塗膜硬度が8Hであるアルカリシリケート系の親水性無機塗膜を形成しているので、走行車両等による跳ね石が防音パネルの表面に当たっても、その表面に形成した硬度の高い親水性無機塗膜が剥がれ落ちることが少ないため、長期にわたり防汚性を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。図1は、本発明に係る防音パネルを設置した状態を示す正面図、図2は図1に示す防音パネルの断面図である。1は防音パネルであって、ガラスウールやロックウール等の吸音材2が内蔵されると共に、その車道側に位置する前面板11には通孔12が穿設されることで吸音機能が具備され、歩道側に位置するパンチング加工等による通孔12が穿設されていない背面板13により遮音機能が具備された吸音パネルで形成されている。そして、車道と歩道の境界に沿って設置された複数のH型鋼の支柱3間に一段の防音パネル1が2段に差し渡されて低層防音壁が形成されている。また、H型鋼の支柱上方からの見栄えを向上させ、また防音パネル1と支柱3間の僅かな隙間に子供が手等を入れて怪我すること防止するため、支柱3の上端にはその断面を覆う支柱キャップ31が取付けられている。
【0009】
防音パネル1の前面板11と背面板13の両表面には、日本工業規格JIS−K−5600に記載の手かき法によって測定した鉛筆硬度による塗膜硬度が8Hであるアルカリシリケート系の親水性無機塗膜4が塗着されている。
【0010】
この親水性無機塗膜4は、アルカリ金属シリケートを主成分とし、水を希釈剤とする各種塗料を用いることができ、例えば、アルカリ金属シリケートにケイ酸カルシウムあるいはリン酸亜鉛を添加すると共に、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B,5HO)或いはウレキサイト(NaO,2CaO,5B,16HO)を主成分とした天然ガラスを微細片状(例えば平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状)として混合した無機質塗料を用いることができる。前記無機充填材として、コレマナイト或いはウレキサイトを主成分とした天然ガラスを用いるのは、それらに含有するB成分のガラス化により強固な塗膜が形成されるためである。
【0011】
日本工業規格JIS−K−5600に記載の手かき法による塗膜硬度の測定方法とは、測定対象に対して鉛筆芯部を45°の角度で当て、鉛筆芯部を測定対象上を手前から奥に押しつけながら移動させる。この動作を測定対象に対して5回実施し、そのうち3回以上、測定対象に傷が付いた時の鉛筆芯部の硬さの1つ柔らかい側の鉛筆芯部の硬さをもって、測定対象の硬さとする方法である。
【0012】
防音パネル1の前面板11と背面板13への親水性無機塗膜4の形成方法は、一般に用いられる塗装方法を用いればよく、例えば、防音パネル1の前面板11及び背面板13をアルカリ脱脂処理した後、化成処理を行い、スプレー法によりアルカリ金属シリケートを主成分とした塗料を防音パネル1の前面板11及び背面板13に塗装して、焼付硬化(硬化温度250℃以下)させて親水性無機塗膜4を形成すればよい。尚、同様にして防音パネル1の上面にも親水性無機塗膜4を形成し、防音パネル1上面に防汚性を付与するのが望ましい。
【実施例】
【0013】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
実施例1
遮音壁の前面板として想定したアルミ合金板(70mm×150mm)の上に、MO・nSiO2(MはNa、K等のアルカリ金属)の構造を有する親水性無機塗料をスプレーガンにて塗布し、約250℃で焼付硬化させて、膜厚12μmの親水性無機塗膜を形成した。
【0014】
比較例1
遮音壁の前面板として想定したアルミ合金板(70mm×150mm)の上に、ペルオキソチタン酸を含む塗料をスプレーガンにて塗布して自然乾燥させ、膜厚0.4μmの下地層を形成し、その上に、ペルオキソチタン酸とアナターゼ型酸化チタンとを含む塗料をスプレーガンにて塗布し、膜厚0.8μmの光触媒層を形成した。
【0015】
(表1)

この結果より、本発明に係るアルカリシリケート系の親水性無機塗膜を形成したものについては、従来のペルオキソチタン酸を含む下地層と、この下地層上に形成されたペルオキソチタン酸とアナターゼ型酸化チタンとを含む光触媒層とを備えたものに比べ、塗膜硬度が高く、且つ親水性は同等であるため、例えば走行車両等による跳ね石が防音パネルの表面に当たっても、その表面に形成した硬度の高い親水性無機塗膜が剥がれ落ちることが少ないため、長期にわたり防汚性を保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明に係る防音パネルは、防音パネルの車道側と歩道側の両表面に、日本工業規格JIS−K−5600に記載の手かき法によって測定した鉛筆硬度による塗膜硬度が8Hであるアルカリシリケート系の親水性無機塗膜を形成しているので、走行車両等による跳ね石が防音パネルの表面に当たっても、その表面に形成した硬度の高い無機塗膜が剥がれ落ちることが少ないため、長期にわたり防汚性を保持することができる防音パネルとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る防音パネルを設置した状態を示す正面図である。
【図2】図1に示す防音パネルの断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 防音パネル
11 前面板
12 通孔
13 背面板
2 吸音材
3 支柱
31 支柱キャップ
4 親水性無機塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道と歩道の境界に沿って設置される防音パネルであって、車道側と歩道側の両表面に、日本工業規格JIS−K−5600に記載の手かき法によって測定した鉛筆硬度による塗膜硬度が8Hであるアルカリシリケート系の親水性無機塗膜が形成されていることを特徴とする防音パネル。

【図1】
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【図2】
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