説明

防音消音壁

【課題】防音消音壁を提供する。
【解決手段】異なる反射表面を有する2以上の反射板からなる音響反射板を配置して構成した壁部、該壁部を支える振動伝達型支柱、及び該支柱を固定する基礎部からなる防音消音壁、凹状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を組み合わせて音響反射板を構成した防音消音壁、及び凸状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を、騒音の振動の進行方向に対して距離の差を設けて配置した防音消音壁。
【効果】壁(音響反射板)自体は、薄く、軽量であって、比較的低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して高い防音特性と高い消音特性を有する防音消音壁を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、簡便な設備で、高い防音及び消音機能を有する防音消音壁に関するものであり、更に詳しくは、壁自体は、薄く、軽量であるが、比較的低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して、高い防音特性と高い消音特性を有する借質量型の防音消音壁に関するものである。本発明は、例えば、オフィスの仕切りや壁材、建築物の壁材、音響施設の壁材、道路及び鉄道用防音消音壁等として有用な、高い防音消音機能を有する新しいタイプの壁材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防音壁、あるいは消音壁として、多くの壁材が開発され、先行文献には、多くの関連技術が提案されている。例えば、防音壁として、騒音発生源の路線に沿って立設された防音壁体の横方向の末端部に吸音材からなる消音筒を付設した防音壁が提案されている(特許文献1)。また、防音断熱材として、耐熱性繊維製基材層の表面に鱗片状鉱物被膜層が形成されて成る防音断熱材が提案されている(特許文献2)。また、防音壁の支柱の表面をほとんど被覆して消音効果を高め、防音壁の外観も向上させることができる消音ボックスが提案されている(特許文献3)。
【0003】
また、透光性を有するとともに、吸音及び消音の機能を備えた、道路、鉄道等の防音壁の構成材料に適した吸音パネルが提案されている(特許文献4)。また、消音効果と、吸音面の立体化による吸音効果の増大、過流発生による音波の散乱と回折波音の防止等の相乗効果による防音壁が提案されている(特許文献5)。また、一対の透視用のスリットが形成されている複数個の消音ボックスを互いに一列に配列したものからなる防音壁が提案されている(特許文献6)。更に、2枚のアルミニウム板間に多数の穿孔を有するアルミニウム基板を接着介装してなる複層吸音材が提案されている(特許文献7)。
【0004】
しかしながら、従来の防音壁、消音壁は、大きな効果を達成するためには、厚く、重量が重く、複雑形状を有した構造物が必要であり、しかも、防音、消音できる周波数帯域が限られているという問題を有していることから、当技術分野においては、薄くて、軽量であって、しかも、低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して、高い防音特性と高い消音特性を有する壁材の開発が強く要請されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−301420号公報
【特許文献2】特開2003−266572号公報
【特許文献3】特開2002−13110号公報
【特許文献4】特開平11−323845号公報
【特許文献5】特開平11−13026号公報
【特許文献6】特開平7−26520号公報
【特許文献7】特開平5−307392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の有する問題を確実に解消することが可能な新しい壁材を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、支柱を固定する基礎部の質量及び強度を効率的に利用する(借りる)借質量型の壁を開発することに成功し、本発明に至った。本発明において、借質量型の壁とは、支柱を支持する基礎部の質量及び強度を利用する(借りる)ことにより支柱へ伝えられた音の振動を強固に固定する機能を有する壁のことを意味する。
【0007】
本発明は、比較的低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して、高い防音特性と高い消音特性を有する防音消音壁を提供することを目的とするものである。また、本発明は、支柱の形状、構造を工夫することによって、壁(音響反射板)、及び支柱が歪むことなく、その基礎部の質量及び強度を効率的に借りる(利用する)ことができ、軽量の音響反射板、及び支柱であっても、質量の大きい壁と同等の騒音(音エネルギー)を反射し、防音する効果を発揮することが可能な防音消音壁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)異なる反射表面を有する2以上の反射板からなる音響反射板を配置して構成した壁部、該壁部を支える振動伝達型支柱、及び該支柱を固定する基礎部からなることを特徴とする防音消音壁。
(2)凹状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を組み合わせて音響反射板を構成した前記(1)記載の防音消音壁。
(3)凸状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を、騒音の振動の進行方向に対して距離の差を設けて配置した前記(1)記載の防音消音壁。
(4)上記壁部の全体を湾曲させて支柱に固定した前記(1)記載の防音消音壁。
(5)上記壁部の区分を、騒音の振動の進行方向に対して距離の差を設けて支柱に固定した前記(1)記載の防音消音壁。
(6)第1の反射板と第2の反射板の間に、騒音の振動の進行距離を変えるための仕切板を有する前記(1)記載の防音消音壁。
(7)音響反射板が、透光性を有する材料からなる前記(1)記載の防音消音壁。
(8)上記音響反射板及び支柱が、騒音が進む方向に対して歪まない強固な形状及び構造を有する前記(1)記載の防音消音壁。
(9)上記音響反射板表面の複数の湾曲が段違いに配置されている前記(1)記載の防音消音壁。
(10)騒音源から反射板までの距離の差を任意に設定して反射音同士の位相がずれるようにした前記(1)記載の防音消音壁。
(11)両端をラッパ状に形成したチューブをらせん状に巻いてその開口部を騒音の振動の進行方向に向けて音響反射板を構成した前記(1)記載の防音消音壁。
(12)基礎部が、基礎(土台)、あるいは床及び天井である前記(1)記載の防音消音壁。
【0009】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の防音消音壁は、異なる反射面を有する2以上の反射板からなる音響反射板、該音響反射板を固定する振動伝達型支柱、上記音響反射板から振動伝達型支柱へ伝えられた音の振動を固定する基礎部からなることを特徴としている。そして、上記音響反射板は、異なる反射面を有する2以上の反射板、例えば、小さい湾曲と大きい湾曲を含む複数の湾曲を有し、これらの湾曲は、次の要件、(1)音の振動を反射させ、拡散させながら減衰させる、(2)音エネルギーの位相を一部ずらして反射させ、位相の違う音を混合させることで、音自体のエネルギーを利用して消音する、を満たすように配置される。本明細書では、音を騒音と記載することがあるが、本発明は、あらゆる種類の音を対象とするものであり、騒音に限定されるものではない。また、上記音響反射板から振動伝達型支柱へ伝えられた音の振動は、基礎部の質量及び強度を借りる(利用する)ことで、上記基礎部により強固に固定される。
【0010】
本発明において、上記音響反射板としては、騒音の振動が進む方向に対して、歪まない形状、構造及び材質を持った板材が用いられる。また、上記振動伝達型支柱としては、上記音響反射板を固定すると共に、該音響反射板が受けた騒音を基礎部に伝達できる形状、構造及び材質からなる支柱が用いられる。更に、上記基礎部としては、上記振動伝達型支柱を支持すると共に、音響反射板から振動伝達型支柱へ伝えられた騒音の振動を強固に固定できる質量及び強度を有する構造物が用いられる。
【0011】
これらについて、更に説明すると、まず、上記音響反射板としては、異なる反射面を有する2以上の反射板、例えば、異なる湾曲表面を有する2以上の反射板からなる板材が用いられるが、好適には、例えば、上記複数の湾曲が段違いに配置された構造を有し、反射音同士の位相をずらし、干渉させることで、所定の周波数帯域の音を効果的に消音する作用を有するもの、及び音響反射板が受けた騒音の振動を効率的に振動伝達型支柱へ伝えられる形状、構造を有するものが例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、異なる反射面、例えば、上記複数の湾曲、を組み合わせて、同効の作用を発揮できるものであれば同様に使用することができる。
【0012】
本発明の防音消音壁において、その壁部は、上記音響反射板を1つ以上備えていればよく、壁の全体の具体的な構成は、使用目的に応じて、例えば、湾曲構造、平面構造、これらの組み合わせ等、任意に設計することができる。次に、上記振動伝達型支柱としては、騒音の振動が進む方向に対して、歪まない強固な構造を有する適宜の支柱が用いられ、その具体的な形状、構造及び材質は特に制限されるものではない。更に、上記基礎部としては、音響反射板から振動伝達型支柱へ伝えられた騒音の振動を強固に固定できる質量及び強度を有するものが用いられ、その具体的な形状、構造及び材質は特に制限されるものではない。
【0013】
本発明では、上記振動伝達型支柱は、屋外に設置する場合には、例えば、大きい質量及び強度を有する基礎(土台)に強固に支持することが好ましい。また、屋内に設置する場合には、好適には、例えば、床及び天井に強固に支持し、設置する方法が例示される。床及び天井は、垂直方向よりも水平方向に対して変位しにくい、水平方向の強度を有している。支柱は、この床及び天井の性質を最大限に利用できる方式で、床及び天井に強固に支持されるが、それによって、支柱は、上述の水平方向の強度に相当する質量を最大限に利用する(借りる)ことが可能となる。
【0014】
支柱を設置する場合、床及び天井(支柱の固定点)に近い部分では、支柱は強固に支持され、振動しにくいが、床と天井の中間の中央部分では、支柱は振動し易く、たわみやすい。この中央部分における振動を防止する方法としては、(1)支柱の上部又は下部に厚みを持たせることにより、支柱の振動し易い部分を中間点から下又は上にずらす方法、(2)支柱の中央部に厚みを持たせることにより、支柱の最も振動し易い部分に質量を持たせる方法、(3)支柱の最も振動し易い中央部分を支えて支持することにより、支柱が振動しにくくする方法、及び(4)支柱の音に対する面の幅よりも支柱側面の幅の方を極端に広くする方法、(5)これらを任意に組み合わせた方法、等が例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、これらと同効のものであれば同様に採用することができる。
【0015】
本発明では、例えば、凹状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を組み合わせて音響反射板を構成することができる。また、本発明では、例えば、凸状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を、騒音の振動の進行方向に対して距離の差を設けて配置することができる。また、本発明では、上記壁部の全体を湾曲させて支柱に固定することができる。また、本発明では、例えば、上記壁部の区分を、騒音の振動の進行方向に対して距離の差を設けて支柱に固定することができる。また、本発明では、例えば、第1の反射板と第2の反射板の間に、騒音の振動の進行距離を変えるための、音の進行方向を制御し得る経路を形成した仕切板を有することができる。その場合、該仕切板は、反射板と別体に形成することも可能であり、また、第2の反射板と一体的に形成することも可能である。この仕切板により、音の進行距離を変えて、音エネルギーの位相を一部ずらして反射させることが可能となる。該仕切板の形状、構造は、使用目的に応じて任意に設計することができる。
【0016】
次に、本発明について更に説明すると、本発明は、薄く、軽量であっても、低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して、高い防音特性と高い消音特性を有する防音消音壁であって、少なくとも、次の部材;(a)騒音が進む方向に対して歪まない構造を持った音響反射板、(b)該音響反射板を固定するための、騒音が進む方向に対して歪まない強固な構造を有する振動伝達型支柱、(c)音響反射板から振動伝達型支柱へ伝えられた騒音の振動を強固に固定できる質量及び強度を有する基礎部、から構成される。
【0017】
上記振動伝達型支柱は、音響反射板が受けた騒音を支柱に伝えられるように、騒音が進む方向に対して強固な形状と構造を持ち、音響反射板(騒音反射板)は、音エネルギーがぶつかったとき振動伝達型支柱に取り付けた状態で変形しにくい強固な形状と構造を有しており、音エネルギーを振動伝達型支柱に伝える。支柱は、基礎などに強固に固定することによって、基礎の質量及び強度を借りることができ、基礎の質量と同等の防音効果を有し、また、薄く、軽量な音響反射板でも、質量の重い壁と同等の音エネルギーを(効率良く)反射させることができる。音響反射板は、騒音が反射して行くとき、すなわち、低い周波数帯域から高い周波数帯域までの騒音が反射されるとき、小さい湾曲と大きい湾曲複数の湾曲で騒音を拡散させながら減衰させ、音エネルギーの位相を一部ずらして反射させることで位相の違う騒音を混合させることでき、騒音そのもののエネルギーを利用し、防音及び消音する機能を発揮する。
【0018】
また、本発明の防音消音壁としては、好適には、例えば、比較的低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して、高い防音特性と高い消音特性を有する防音消音壁であって、少なくとも、次の部材;(a)音響反射板としての、騒音が進む方向に対して歪まない強固な形状を持ち表面に複数の大きさの湾曲を有する壁、(b)該音響反射板を固定する、騒音が進む方向に対して歪まない強固な構造を有する柱、(c)音響反射板から振動伝達型支柱へ伝えられた騒音の振動を強固に固定できる質量及び強度のある基礎(土台)、を具備してなり、上記音響反射板表面の複数の湾曲は、段違いに配置されており、反射音同士の位相をずらし、干渉させることで、ある周波数帯域の音を効果的に防音及び消音することを特徴とする上記防音消音壁、が例示される。
【0019】
上記音響反射板の表面には、複数の大きさ及び/又は構造の湾曲が形成されている。湾曲部表面で効率的に反射された騒音(音エネルギー)は、拡散され、減衰する。また、表面の複数の湾曲は、段違いに配置されており、騒音源から受音(反射)点までの距離に差をつけることによって、反射音同士の位相をずらし、干渉させることで、ある周波数帯域の音を効果的に防音及び消音する。騒音源から受音(反射)までの距離の差を変えることによって、防音及び消音効果のある周波数帯域も変化する。壁(音響反射板)としては、透光性のあるものも使用することができる。基礎(土台)は、既存のものでも利用可能である。本発明は、既存の防音壁、消音壁の一部又は全部と組み合わせて本発明の防音消音壁を適宜構成することも可能である。
【0020】
本発明において、壁(音響反射板)自体は、薄く、軽量であっても、比較的低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して、高い防音特性と高い消音特性を有する。本発明では、壁(音響反射板)、及び支柱の形状、構造を工夫することによって、騒音(音エネルギー)が壁(音響反射板)に当たった際、壁(音響反射板)、及び支柱が歪むことなく、その基礎(土台)の質量及び強度を効率的に借りる(利用する)ことができ、軽量の音響反射板、及び支柱であっても、質量の大きい壁と同等の騒音(音エネルギー)を反射し、防音する効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、1)比較的低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して、高い防音特性と高い消音特性を有する防音消音壁を提供することができる、2)オフィスの仕切りや壁材、建築物の壁材、音響施設の壁材、道路及び鉄道用防音壁等として有用な新しい防音消音壁を提供できる、3)本発明の防音消音壁は、壁(音響反射板)自体は、薄く、軽量であっても、質量の大きい壁と同等の騒音(音エネルギー)を反射、防音することができる、4)従来製品は、例えば、壁の表面板の材料に極軽質の材料を使用しないと防音、消音効果が得られないこと、また、強度、耐候性の必要な屋外大規模型の防音消音壁には不向きであること等の問題があったが、本発明製品は、軽量で、極めて単純な構造であっても、より優れた防音消音効果が期待できる、5)本発明では、該防音消音壁の材料として、耐候性のある材料を利用しやすく、屋外の大規模な防音消音に好適に使用することができる、6)設置の方法は、従来の防音壁設置工事とほとんど変わらず、施工費も比較的安価で済む、という効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図面に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
図1に、本発明の防音消音壁の壁部及び音響反射板の一例を示す。音響反射板は、第1の反射板と第2の反射板から構成されており、第1の反射板の前に第2の反射板が配置される。第1の反射板は、騒音の振動が進む方向に対して、湾曲した凹面を有し、入射した騒音の振動を反射させ、拡散させながら減衰させる作用を有し、一方、第2の反射板は、騒音の振動が進む方向に対して、凸面を有し、騒音の振動を反射させ、拡散させながら減衰させる作用を有し、これらの2枚の反射板により、音エネルギーの一部の位相をずらして反射させ、位相の違う振動を混合し、騒音自体のエネルギーを利用して防音及び消音させることができる。このような第1の反射板と第2の反射板を壁面に配置することにより、壁部が構成される。反射板の表面に複数の湾曲があるため、騒音の振動が多方向に拡散し、高い減衰効果が得られる。また、騒音の振動が進む方向に対して、反射面の位置に距離の差を設けることで、反射音の位相をずらし、干渉させることで、高い消音効果が得られる。この例のものは、壁が薄くても、距離の差を大きく設けることが可能であるため、波長の長い低音に対する高い防音消音効果が得られる。
【0024】
図2に、音響反射板の他の例を示す。この例では、音響反射板の第1の反射板及び第2の反射板は、共に騒音の振動の進行方向に対して、凸面を有しており、それらの反射板は前後にずらして配置されている。それにより、騒音の振動は、拡散しながら減衰すると共に、音エネルギーの位相を一部ずらして反射させ、混合することで、高い防音及び消音効果が得られる。反射面の表面に複数種の湾曲があるため、騒音の振動が拡散され、減衰される。また、騒音の振動に対して、反射面に距離の差を設けることにより、反射音の位相をずらし、干渉させ、高い防音消音効果を得ることができる。
【0025】
図3に、本発明の防音消音壁の壁部の全体の形状、構造の一例を示す。この例では、音響反射板を設置して構成される壁部の各区分を交互に前後にずらして配置することによって高い位相のずれと、それによる高い防音及び消音効果が得られる。壁の全体を湾曲させて設置する方が、平面の壁よりも、騒音の振動の進行方向に対して強固で、歪まない構造に形成できる。図4〜15に、振動伝達型支柱のいくつかの例を示す。音響反射板と支柱の形状及び構造を騒音の振動の進行方向に対して歪まないように形成することにより、基礎の質量及び強度を効率的に借りる(利用する)ことができ、軽量の壁及び支柱であっても、質量の大きい壁と同等の防音消音効果が得られる。図16〜19に、振動伝達型支柱を基礎部に取付るための取付構造のいくつかの例を示す。少なくとも2つの反射板の湾曲の形状、構造、及び支柱の形状、構造の具体的構成は、使用目的等に応じて任意に設計することができる。
【0026】
図20〜26に、振動伝達型支柱の他の例を示す。支柱を固定する床(基礎)及び天井は垂直方向よりも水平方向に対して変位しにくい。支柱は、この性質を最大限に利用するために、床(基礎)及び天井に強固に支持されており、これによって、支柱は、水平方向の強度に相当する質量を借りている。防音消音壁を固定するための支柱を設置する際、床(基礎)及び天井に近い部分で支柱は固定点に近く強固に支持され、振動しにくいが、床(基礎)と天井の中間、中央部分で支柱は振動し易く、たわみやすい。この振動を抑えることによって、防音消音壁で仕切った隣室への騒音の伝達を防ぐことができる。
【0027】
図20は、支柱の上部に厚みを持たせることにより、振動し易い部分を支柱の中間点から下にずらしたものである。これにより、支柱の振動する部分の振幅を小さくすることができる。また、支柱の下部が細くなっているため、空間の有効利用が可能である。図21及び図23は、支柱中央部に厚みを持たせることにより、支柱の最も振動し易い部分に質量を持たせ、振動しにくくしたものである。また、支柱の下部が細くなっているため、空間の有効利用が可能である。図22は、上記支柱の下部に厚みを持たせることにより、振動し易い部分を支柱の中間点から上にずらしたものである。これにより、支柱の振動する部分の振幅を小さくすることができる。
【0028】
図25は、支柱の最も振動し易い中間部分を支え固定することにより、支柱が振動しにくくしたものである。図26は、支柱の音に対する面の幅よりも支柱側面の幅の方が極端に広いものである。図27に、音響反射板の他の例を示す。これは、先端がラッパ状になっているチューブをらせん状に巻いた構造を有する。上部の開口部から騒音が入り、チューブの中を通り、反対側の開口部から出る。チューブの部分で、音は様々な方向に反射、拡散される。表面の凹凸部で反射した音とチューブの中を通り位相のずれた音とが互いに干渉し、打ち消し合う。図に示した壁の全体構造において、部品と部品の間は、充填剤で埋めることが可能であり、あるいは部品を壁に埋め込むことも可能である。図28に、第1の反射板と第2の反射板の間に仕切板を配置した仕切板を有する音響反射板の一例を示す。仕切板により、騒音の振動の進行距離を変えて、音エネルギーの位相を一部ずらして反射させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、防音消音壁に係るものであり、本発明により、比較的低い周波数帯域から高い周波数帯域までの音に対して高い防音特性と高い消音特性を有する防音消音壁を提供することができる。本発明は、建築物の壁材、音響施設の壁材、道路、鉄道用防音壁等として有用な新しい防音消音壁を提供することを可能とする。本発明は、壁(音響反射板)自体は、薄く、軽量であっても、質量の大きい壁と同等の騒音(音エネルギー)を反射し、防音する効果を発揮することを可能とする。本発明は、従来製品の壁は、軽量で、薄い構造をもつ壁の表面板の材料に極軽質の材料を使用しないと消音効果が得られないため、強度、耐候性の必要な屋外大規模型の防音消音壁には不向きであったが、本発明は、極めて単純な構造であり、しかも、より優れた防音消音効果が期待できる。本発明は、当該防音消音壁の材料として耐候性のある材料を利用しやすく、屋外の大規模な防音消音に好適に使用することができる。本発明は、設置の方法は、従来の防音壁設置工事とほとんど変わらず、施工費も比較的安価で済むという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】

【図1】音響反射板及び壁部の構造の一例を示す。
【図2】音響反射板及び壁部の構造の一例を示す。
【図3】壁部の配置構造の一例を示す。
【図4】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図5】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図6】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図7】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図8】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図9】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図10】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図11】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図12】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図13】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図14】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図15】振動伝達型支柱の構造の一例を示す。
【図16】取付構造の一例を示す。
【図17】取付構造の一例を示す。
【図18】取付構造の一例を示す。
【図19】取付構造の一例を示す。
【図20】振動伝達型支柱の構造の他の例を示す。
【図21】振動伝達型支柱の構造の他の例を示す。
【図22】振動伝達型支柱の構造の他の例を示す。
【図23】振動伝達型支柱の構造の他の例を示す。
【図24】振動伝達型支柱の構造の他の例を示す。
【図25】振動伝達型支柱の構造の他の例を示す。
【図26】振動伝達型支柱の構造の他の例を示す。
【図27】音響反射板の他の例を示す。
【図28】仕切板を有する音響反射板の一例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる反射表面を有する2以上の反射板からなる音響反射板を配置して構成した壁部、該壁部を支える振動伝達型支柱、及び該支柱を固定する基礎部からなることを特徴とする防音消音壁。
【請求項2】
凹状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を組み合わせて音響反射板を構成した請求項1記載の防音消音壁。
【請求項3】
凸状の湾曲表面を有する反射板と、凸状の湾曲表面を有する反射板を、騒音の振動の進行方向に対して距離の差を設けて配置した請求項1記載の防音消音壁。
【請求項4】
上記壁部の全体を湾曲させて支柱に固定した請求項1記載の防音消音壁。
【請求項5】
上記壁部の区分を、騒音の振動の進行方向に対して距離の差を設けて支柱に固定した請求項1記載の防音消音壁。
【請求項6】
第1の反射板と第2の反射板の間に、騒音の振動の進行距離を変えるための仕切板を有する請求項1記載の防音消音壁。
【請求項7】
音響反射板が、透光性を有する材料からなる請求項1記載の防音消音壁。
【請求項8】
上記音響反射板及び支柱が、騒音が進む方向に対して歪まない強固な形状及び構造を有する請求項1記載の防音消音壁。
【請求項9】
上記音響反射板表面の複数の湾曲が段違いに配置されている請求項1記載の防音消音壁。
【請求項10】
騒音源から反射板までの距離の差を任意に設定して反射音同士の位相がずれるようにした請求項1記載の防音消音壁。
【請求項11】
両端をラッパ状に形成したチューブをらせん状に巻いてその開口部を騒音の振動の進行方向に向けて音響反射板を構成した請求項1記載の防音消音壁。
【請求項12】
基礎部が、基礎(土台)、あるいは床及び天井である請求項1記載の防音消音壁。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−161342(P2006−161342A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352071(P2004−352071)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(396019893)株式会社イトオン (1)
【Fターム(参考)】