説明

除湿機及びその運転制御方法

【課題】電源周波数に依存することなく、除湿ロータの表面温度を一定範囲内となるように適切に温調することのできる除湿機及びその運転制御方法を提供する。
【解決手段】ケーシング21と、回転可能に配置された除湿ロータ51と、除湿ロータを正転方向に回転駆動する駆動手段59と、周囲の空気を吸引して除湿ロータで除湿された乾燥空気を周囲に排出する第1ファンと、再生空気を循環させる第2ファンと、再生空気と除湿ロータを加熱する加熱ヒータと、内部を流動する再生空気を、外部を通過する空気により冷却して結露させる熱交換器81と、熱交換器により得られた結露水を貯留するタンク15と、除湿ロータの表面温度を、直接的又は間接的に検出する温度検出手段と、検出温度に基づいて、駆動手段を駆動制御して除湿ロータの回転速度を調整することにより、除湿ロータ51の表面温度の変化を一定範囲内に温調する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿機及びその運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、除湿機として、内部を除湿通路と再生通路とに区画したケーシングと、前記両通路に跨って駆動手段により回転可能に配設した除湿ロータと、前記除湿通路内に配設し、室内の空気を吸引して前記除湿ロータによって除湿した乾燥空気を室内に循環供給する室内空気循環ファンと、前記再生通路内に配設し、再生空気を循環させる再生空気循環ファンと、前記再生通路内に配設し、前記再生空気および除湿ロータを加熱する加熱ヒータと、前記除湿通路内に配設すると共に、内部に流通する再生空気を外部に流通する空気により冷却して含有した水分を取り除く熱交換器と、前記熱交換器により取り除いた水分を貯留するタンクとを備えたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の除湿機では、除湿ロータの回転に大きな駆動トルクを発生させることのできる同期モータが使用されることが多い。同期モータの回転速度は電源周波数に依存するため、除湿ロータが加熱ヒータによる加熱領域を横切る速度が電源周波数の変動に応じて変化することがある。そして、場合によっては、除湿ロータが当初予測していた温度を超えて温度上昇する危険性がある。このため、従来から電源周波数に依存せずに除湿機を運転できることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3764727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電源周波数に依存することなく、除湿ロータの表面温度を一定範囲内となるように適切に温調することのできる除湿機及びその運転制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
除湿通路と再生通路を備えたケーシングと、
前記両通路に跨って回転可能に配置された除湿ロータと、
前記除湿ロータを正転方向に回転駆動する駆動手段と、
前記除湿通路内に配置され、周囲の空気を吸引して前記除湿ロータで除湿することにより得られた乾燥空気を周囲に排出する第1ファンと、
前記再生通路内に配置され、再生空気を循環させる第2ファンと、
前記再生通路内に配置され、前記再生空気と除湿ロータを加熱する加熱ヒータと、
内部を流動する再生空気を、外部を通過する空気により冷却して結露させる熱交換器と、
前記熱交換器により得られた結露水を貯留するタンクと、
を備えた除湿機であって、
前記除湿ロータの表面温度を、直接的又は間接的に検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段での検出温度に基づいて、前記駆動手段を駆動制御して除湿ロータの回転速度を調整することにより、前記除湿ロータの表面温度の変化を一定範囲内に温調する制御手段と、
をさらに備えたものである。
【0007】
この構成により、温度検出手段で検出される温度に基づいて、ロータの回転速度を調整することにより、ロータの表面温度を一定範囲内に維持することができる。したがって、電源周波数の変化に拘わらず、除湿ロータが必要以上に加熱されたり、加熱されずに除湿ロータの再生が不十分になったりするといった不具合の発生を防止することが可能となる。
【0008】
前記温度検出手段は、使用環境温度を検出するものであり、
前記制御手段は、前記温度検出手段で検出される温度が高ければ高いほど、前記駆動手段による除湿ロータの回転速度を増大させるのが好ましい。
【0009】
ここに、使用環境温度とは、除湿機の周囲雰囲気温度、ケーシングの除湿通路の入口等の空気温度、除湿ロータの表面近傍の温度等、除湿ロータの表面温度と相関関係を有する温度の全てを意味する。
【0010】
運転の累計時間を計時する計時手段を備え、
前記制御手段は、前記計時手段で計時される運転の累計時間が、予め設定した設定時間となることにより、前記除湿ロータを、通常運転時よりも遅い、予め設定した設定速度で回転させるのが好ましい。
【0011】
この構成により、運転により除湿ロータの表面に有機化合物が付着したと考えられる設定時間が経過すれば、除湿ロータの回転速度を低下させることにより、加熱手段による単位時間当たりの加熱量を増大させることができる。これにより、除湿ロータの表面温度を一時的に高めることができ、表面に付着した有機化合物を効果的に除去することが可能となる。なお、除湿ロータを設定速度で回転させるのは、除湿ロータの表面に付着した有機化合物を十分に除去でき、しかも、除湿ロータが熱損傷を受けないか、あるいは、殆ど受けない時間とすればよい。
【0012】
前記除湿ロータは、再生温度が300℃以下の除湿剤で構成することができる。すなわち、除湿ロータの表面温度を直接的又は間接的に測定した結果に基づいて、除湿ロータの回転速度を調整するので、除湿ロータの表面温度を確実に一定範囲内に温調することができる。したがって、除湿ロータが必要以上に加熱されることがないので、耐熱温度が低く、再生温度が300℃以下の除湿ロータを使用することができる。
【0013】
使用環境湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記湿度検出手段で検出される使用環境湿度に基づいて、前記駆動手段を駆動制御して前記除湿ロータの回転速度を調整することにより、前記除湿ロータが除湿通路を通過する際の吸湿時間を変更するのが好ましい。
【0014】
この構成により、湿度の違いによる除湿ロータで吸湿される水分量を考慮し、再生させる際に必要となる加熱量を適切な値に調整することができる。例えば、湿度が低く、吸湿量が少ない状況下であれば、除湿ロータの回転速度を速くすることにより、加熱手段によって除湿ロータが必要以上に加熱されてしまうことを確実に防止することが可能となる。
【0015】
前記加熱手段への供給電力値を検出する電力検出手段を備え、
前記制御手段は、前記加熱手段による前記除湿ロータの単位時間当たりの加熱量が一定範囲内となるように、前記電力検出手段で検出される供給電力値に基づいて、前記駆動手段を駆動制御して除湿ロータの回転速度を調整するのが好ましい。
【0016】
この構成により、加熱手段への供給電力の変動をも考慮して除湿ロータの回転速度を調整することができるので、より一層、除湿ロータを一定範囲内に温調することが可能となる。
【0017】
前記駆動手段は、直流モータで構成すればよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温度検出手段で直接的又は間接的に測定されるロータの表面温度に基づいて、ロータの回転速度を制御するので、ロータの表面温度を一定範囲内に維持することができる。したがって、除湿ロータが必要以上に加熱されて熱損傷したり、加熱されずに除湿ロータの再生が不十分になって吸湿能力が低下したりするといった不具合の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る除湿機の正面側から見た状態を示す斜視図である。
【図2】図1の部分破断斜視図である。
【図3】図2の仕切部材の斜視図である。
【図4】図1を反対方向から見た状態を示す斜視図である。
【図5】図4の部分破断斜視図である。
【図6】図3を反対方向から見た状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る除湿機の側面断面図である。
【図8】第2仕切部の斜視図である。
【図9】図8を反対方向から見た状態を示す斜視図である。
【図10】(a)は図3に示す除湿ロータのギアの拡大側面図、(b)は(a)のギアの拡大図、(c)は(a)のギアとフォトインタラプタの断面図である。
【図11】(a)は除湿ロータが正回転している状態でのフォトインタラプタの出力信号を示す図、(b)は逆回転での出力信号を示す図である。
【図12】図1の除湿機の除湿ロータを支持する構成を示す正面図である。
【図13】図1の除湿機の再生通路を概略的に示す図である。
【図14】図1の除湿機のヒータケースの部分拡大断面図である。
【図15】図6のB−B線断面図である。
【図16】図3のA−A線断面図である。
【図17】図1の除湿機のラジエータと熱交換部との位置関係を示す断面図である。
【図18】図17のラジエータの部分破断斜視図である。
【図19】図1の除湿機の熱交換部を示す斜視図である。
【図20】図17の熱交換部の変形例を示す平面断面図である。
【図21】本実施形態に係る除湿機のブロック図である。
【図22】本実施形態に係る除湿機の有機化合物除去処理を示すフローチャートである。
【図23】図21の温度検出センサでの検出温度と、除湿ロータの表面温度との関係を示すグラフである。
【図24】図21の湿度検出センサでの検出湿度と、除湿ロータの表面温度との関係を示すグラフである。
【図25】運転モードの違いと、除湿ロータの表面温度との関係を示すグラフである。
【図26】電源電圧と除湿ロータの表面温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1.全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る除湿機11を示す。この除湿機11は、除湿機本体12の内部に、除湿通路と再生通路とを備え、各駆動部品は制御部によって駆動制御されるようになっている。
【0021】
(1−1.除湿機本体)
除湿機本体12は、略直方体形状のケーシング21の内部空間を仕切部材41によって前後に2分割したものである。
【0022】
(1−1−1.ケーシング)
ケーシング21は、除湿通路上流側に配設された前カバー22と、除湿通路下流側に配設された後カバー23と、これらの上部に配設された天カバー24とからなる。
【0023】
前カバー22は、前壁25と、上下壁26と、両側壁27とを備え、前壁25には除湿機11内部に空気を取り込む吸気口28が形成されている。吸気口28は、横方向に連続する複数のスリット29で構成されている。
【0024】
後カバー23は、図2に示すように、後壁30と、上下壁31と、両側壁32とを備え、上壁31には除湿機11内部の空気を機外に排出する排気口33が形成されている。排気口33は、上壁31の前カバー22とは反対側の縁部に沿う長方形状の範囲で開口する格子状のものである。
【0025】
天カバー24は略直方体形状であり、前カバー22と反対側の縁部には、天板35から排気口33に至る凹部36が形成されている。凹部36を構成する両内側面の間には、支軸37を中心として開閉板38が回動可能に取り付けられている。開閉板38を回動させて所定の位置に位置決めすることにより、除湿機11から機外に排出する空気流れの方向を変更可能となっている。
【0026】
(1−1−2.仕切部材41)
仕切部材41は、第1仕切部42と第2仕切部43からなる。
【0027】
第1仕切部42には、図3及び図4に示すように、円形開口部44と、この円形開口部44の側方に隣接する矩形状筒部45とが形成されている。円形開口部44には後述する除湿ロータ51が配置される。矩形状筒部45には後述するラジエータ81が配置される。円形開口部44及び矩形状筒部45よりも下方側には、分離壁46が設けられている。分離壁46の上方側には後述する熱交換部91が配置され、分離壁46の下方側には結露水を回収するための貯水タンク15が配置されている。
【0028】
第2仕切部43の中心付近には円形開口部48が形成され、第2仕切部43の背面側には後述するメインファン47が配置されている。メインファン47は、その中心に回転軸を固定したメインファン駆動モータ49の駆動により回転するようになっている。メインファン駆動モータ49は円形開口部48の内縁部に固定した、中心部から3方に向かって延びる支持梁48aに支持されている。メインファン47の周囲には、上方に向かって延びる略半円形状の内壁50が形成され、除湿機11内に取り入れた空気を機外へと案内するインボリュート通路を構成している。メインファン47からインボリュート通路に吹き出された空気は、図2中、反時計回り方向へと案内され、排気口33を介して外部に排気される。
【0029】
なお、ここでは、ケーシング21と仕切部材41を別体としたが、第1仕切部42を前カバー22と一体化し、第2仕切部43を後カバー23と一体化するように構成することも可能である。
【0030】
(1−2.除湿通路)
除湿通路は、吸気口28から排気口33に至る通路であり、その途中には、除湿通路を通過する空気(以下、処理空気と記載する。)に含有される水蒸気を吸着する除湿ロータ51と、処理空気の空気流れを形成するためのメインファン47とが配設されている。
【0031】
(1−2−1.除湿ロータ)
除湿ロータ51は、図5に示すように、円板状のロータ本体52と、ロータ本体52の外周縁部に取り付けられたロータホルダ53とから構成されている。ロータ本体52の中心部には、貫通穴54aを有するロータベアリング54が接着により固定されている。除湿ロータ51は、後述するように、回転支持部材58によって外周部を支持されており、従来のような中心軸で支持する構造は採用されていない。このため、ロータホルダ53には、中心から径方向に向かって放射状に延びる支持リブは不要となっている。したがって、除湿ロータ51の開口面積を増やすことができ、より多くの処理空気を通過させて除湿性能を高めることが可能である。
【0032】
ロータ本体52には、ゼオライトやシリカゲル等を結合させたセラミックハニカムが使用されている。ここでは、除湿ロータ51には、例えば、300℃から400℃の耐熱温度の低いものを使用し、例えば、200℃から300℃の低温で再生(吸湿した水分の蒸発)するようにしている。なお、耐熱温度の低い除湿ロータ51を使用できたのは、後述するように、加熱ヒータ64としてPTCヒータ等のアルミコルゲートフィンを発熱部に張り合わせたヒータを使用したからである。すなわち、このようなヒータを使用することにより、放熱性を向上させ、除湿ロータ51の表面温度が過度に上昇することを抑制することが可能となる。また、このようなヒータは、自己温度制御特性を有し、ロータ本体52が所定温度を超えて加熱されることがない。
【0033】
ロータホルダ53の外周面にはギア部55が形成されている。ギア部55を構成する各ギア55aには、除湿ロータ51の回転及び回転方向を検出するための検出穴56がそれぞれ形成されている。検出穴56は、除湿ロータ51の中心から延び、各ギア55aの中心を通る直線(中心線)に対して、非対称、あるいは、中心線の片側にのみ形成されている。例えば、図6では、ギア55aの中心線に対して、除湿ロータ51の回転方向上流側にのみ広がった扇型形状に形成されている。
【0034】
検出穴56は、発光素子と受光素子からなる非接触式センサ、ここではフォトインタラプタ57によって検出されるようになっている。この場合、フォトインタラプタ57からの出力信号は、除湿ロータ51が正回転している場合、図8に示すように、各ギア55aが通過する際には、検出時間の長い波形の次に検出時間の短い波形が形成される。一方、除湿ロータ51が逆回転している場合、図9に示すように、各ギア55aが通過する際には、検出時間の短い波形の次に検出時間の長い波形が形成される。したがって、フォトインタラプタ57の出力信号により除湿ロータ51の回転及び回転方向を検出することが可能である。なお、ここでは、特殊な処理を施す場合を除き、除湿ロータ51は正回転させるようにしている。
【0035】
また、除湿ロータ51は除湿機本体12の円形開口部44に配設され、図10に示すように、2箇所に設けた回転支持部材58によって支持され、1箇所に設けた駆動ギア59aを介して回転する。
【0036】
各回転支持部材58は、第1仕切部42の円形開口部44の中心よりも下方側であって、第1仕切部42の円形開口部44の周縁に沿って配置されている。各回転支持部材58は外周面に複数のギア58aを備え、ロータホルダ53のギア部55を構成するギア55aと噛合し、除湿ロータ51の回転に従動して回転する。したがって、検出穴56を、ロータホルダ53のギア部55の各ギア55aに代えて、図11に示すように、回転支持部材58の各ギア58aに設けることも可能である。この場合、検出穴56を設けるために大型化していたロータホルダ53のギア55aを小さくし、除湿ロータ51を小型化することが可能となる。なお、回転支持部材58は除湿ロータ51を回転可能に支持することができる構成であれば、ローラ等の他の支持部材を使用することも可能である。
【0037】
駆動ギア59aは、第1仕切部42の円形開口部44の中心よりも上方側であって、除湿ロータ51と後述するラジエータ81との間に第1仕切部42の円形開口部44の周縁に沿って配設されている。駆動ギア59aは、除湿ロータ駆動モータ59の回転軸に固定され、この除湿ロータ駆動モータ59を駆動することにより除湿ロータ51を正回転できるようになっている。ここでは、除湿ロータ駆動モータ59としてシンクロナスモータを使用している。シンクロナスモータは、交流電源の周波数に比例した正確な回転速度で正逆回転駆動可能なものであるが、ここでは内蔵したクラッチ機構により正回転駆動させるだけとしている。除湿ロータ駆動モータ59の正回転駆動により除湿ロータ51は正回転し、除湿通路を横切り、後述する再生通路の高温領域を横切った後、冷却領域を横切る。
【0038】
(1−2−2.メインファン)
メインファン47は、後カバー23の背面側に回転可能に取り付けた、有底筒状のシロッコファンで、外周面に複数のフィンが設けられている。メインファン47の中心にはメインファン駆動モータ48の回転軸が固定されている。そして、メインファン駆動モータ48を駆動してメインファン47を回転させることにより、吸気口28を介して除湿機本体12内に取り込まれた空気は、除湿通路側と、後述するラジエータ81側とに分岐して流動するようになっている(以下、ラジエータ81側を通過する空気を冷却空気と記載する。)。
【0039】
(1−3.再生通路)
再生通路は、除湿ロータ51から吸湿した水分を除去するための通路であり、図12の矢印で示す閉ループを構成し、再生空気が循環する(以下、再生通路を循環する空気を再生空気と記載する。)。再生通路の途中には、ヒータユニット61と、ラジエータ81と、ヒータユニット61とラジエータ81とを連通する熱交換部91とが設けられている。
【0040】
(1−3−1.ヒータユニット)
ヒータユニット61は、図4に示すように、ユニット本体62と、ユニット本体62の一端に配設されたサブファン63と、ユニット本体62の他端に配設された加熱ヒータ64とから構成されている。
【0041】
ユニット本体62は、サブファン63を配設するために円形に形成されたファン収容部66と、ファン収容部66とは反対側に、除湿ロータ51の半径方向に沿って設けられた中空直方体形状のヒータ収容部67と、ファン収容部66とヒータ収容部67とを連通し、除湿ロータ51の表面上を除湿ロータ51の中心に向かって延びる通路68とを備えている。
【0042】
ヒータ収容部67は、除湿ロータ51の中心側から周縁側に向かって形成され、除湿ロータ51の表面と所定間隔で対向するように配置されている。ヒータ収容部67は、ロータ本体52の表面のうち、1/8の領域に対応する部分と対向している。ロータ本体52の残る7/8の領域は通風可能に開口して除湿通路内に位置している。
【0043】
ヒータ収容部67には、図13に示すように、断面略L字形状のヒータ反射板71により、内部空間が、除湿ロータ51の回転方向上流側に位置する上流側開口部72と、除湿ロータ51の回転方向下流側に位置する下流側開口部73とに分割されている(除湿ロータ51は矢印方向に正回転する。)。ヒータ反射板71は金属製であり、ここではステンレス(SUS430)が使用されている。上流側開口部72には、除湿ロータ51と対向するように加熱ヒータ64が配設されており、この領域が除湿ロータ51に加熱された再生空気を供給するための加熱領域76となっている。一方、下流側開口部73は、サブファン63から吹き出された再生空気が、直接、除湿ロータ51に供給される冷却領域77となっている。
【0044】
また、ヒータ収容部67には、図14に示すように、除湿ロータ51の中心部に設けたロータベアリング54の端面と面接触して取り付けられる、略円形の取付部74が一体に形成されている。後述するロータカバー111には、ロータベアリング54と対向する面に、ロータベアリング54の貫通穴54a内に挿通し、ヒータ収容部67の取付部74まで延びる突出部112が設けられている(図15参照)。ヒータ収容部67の取付部74とロータカバー111の突出部112とがネジ113で連結されている。これにより、ユニット本体62を、ロータベアリング54の端面に当接する取付部74を基準として取り付けることができ、加熱ヒータ64と除湿ロータ51との隙間を一定寸法とすることが可能となる。この結果、ユニット本体62が除湿ロータ51に接触するのを防止しつつ、再生空気経路からの空気漏れを防ぎ、除湿能力の低下を防止することが可能となる。
【0045】
サブファン63は公知のシロッコファンであり、サブファン駆動モータ63aの駆動により回転して熱交換部91内の空気を吸い込み、ヒータユニット61内に吹き出すことで、再生通路内で空気を循環させる。
【0046】
加熱ヒータ64は、上流側開口部72を通過する処理空気を加熱して除湿ロータ51に供給するほか、除湿ロータ51を直接加熱する。これにより、除湿ロータ51に吸湿された水分を蒸発させることができ、除湿ロータ51の吸湿能力を回復させることが可能となっている。
【0047】
ここでは前述の通り、除湿ロータ51として、例えば、200℃から300℃の低温で再生させる低温再生型除湿ロータを使用することにより、除湿機11の製造コストを低減している。なお、低温再生型除湿ロータは、除湿素子の吸湿スピード、吸湿性能が低いがロータホルダ53から支持リブを不要として処理空気の通過量を増大させることにより、広い吸湿面積を確保している。
【0048】
加熱ヒータ64は、図示しない電源からの供給電力により発熱し、除湿ロータ51を、通過させる再生空気を加熱して間接的に、あるいは、直接加熱する。これにより、除湿ロータ51は吸湿した水分を蒸発させる。ここでは、加熱ヒータ64にPTCヒータを使用している。PTCヒータは、チタン酸バリウム(BaTi03)を主成分とする半導体セラミックからなり、放熱性能が高く、又、ワット密度(ヒータ容量をヒータ表面積で割った値で、単位面積あたりのワット数)が高くなるように設計することができる。したがって、PTCヒータの専有面積を小さくして小型化を図ることが可能となっている。ところで、PTCヒータは、ヒータ自身の温度が上がれば抵抗値を大きくして発熱量を抑制するという性能を有する。このため、PTCヒータは、所定温度(ここでは、除湿ロータ51の低温の耐熱温度よりも低い温度)を超えて高温になることがない。したがって、除湿ロータ51には、前述のように、耐熱性の低い低温再生型の安価なものを使用することが可能となっている。
【0049】
加熱ヒータ64は、ヒータ収容部67に、除湿ロータ51の中心から半径方向外方に向かって広がる扇状とするのが好ましい。ただし、除湿ロータ51を十分に加熱することができる限り、加熱ヒータ64は半径方向に沿った長方形状としてもよい。長方形状の加熱ヒータ64を使用する場合、単位面積当たりの加熱時間は、除湿ロータ51の内周側では長く、外周側では短くなり、除湿ロータ51を径方向に均一に加熱することができない。この場合、加熱ヒータ64の外周側のワット密度を大きくし、内周側のワット密度を小さくしたり、あるいは、内周側のヒータ開口部の面積を小さくしたりすればよい。
【0050】
(1−3−2.ラジエータ)
ラジエータ81は、図15に示すように、加熱ヒータ64からの熱が流入する第1ラジエータ部82と、この第1ラジエータ部82で一旦冷却された再生空気が流入する第2ラジエータ部83と、この2つのラジエータ部83の上端部同士を互い連通する蓋体84とで構成されている。また、ラジエータ81は、後述する熱交換部91の上方側に配置され、第1仕切部42の矩形状筒部45に取り付けられている(図3参照)。
【0051】
各ラジエータ部82、83は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂材料からなる複数のパイプ85(85a、85b)で構成されている。第1ラジエータ部82は径の太いパイプ85aで構成され、第2ラジエータ部83は径の細いパイプ85bで構成されている。これらパイプ85は、図17に示すように、上端が1枚の平板形状の上板86に、下端が1枚の平板形状の下板87に溶着・一体化されている。これにより、各パイプ85間の距離を一定に保ち、パイプ85同士が接触したり、折れ曲がったりするのを防止することができる。なお、パイプ85の中央は平板形状の中板88に溶着すれば、より一層、各パイプ85間の位置関係を安定させることができる点で好ましい。第1ラジエータ部82の下端は、後述する熱交換部91の高温空気流動通路105と連通し、第2ラジエータ部83の下端は、後述する熱交換部91の低温空気流動通路106と連通している。また、蓋体84は、下面に開口する中空の直方体形状で、上板86にネジ89により固定されている。したがって、ラジエータ81内では、再生空気は、高温空気流動通路105から第1ラジエータ部82を通過して上方に向かい、蓋体84で方向変換され、第2ラジエータ部83を下方に向かって流動した後、低温空気流動通路106へと流出される。
【0052】
ラジエータ81を2つのラジエータ部82、83で構成することにより、その表面積を十分に増大させることができる。また、第1ラジエータ部82を径の太いパイプ85aで構成することにより、第1ラジエータ部82内で発生した結露水が、上方に向かう再生空気の流れに拘わらず、流下させることが可能となっている。また、ラジエータ81で発生した結露水を、その下方に配置した熱交換器91へと流下させることができるように構成しているので、別途、結露水の排水構造を設ける必要がなく、構成を簡略化することができる。
【0053】
(1−3−3.熱交換器)
熱交換部91は、図18に示すように、中空のタンク状のものであり、熱交換部91の上壁92は、ラジエータ81のパイプ85を挿通する挿通口93が形成された第1水平面94と、第1水平面94の一方の端部から除湿ロータ51の形状に沿って湾曲する湾曲面95と、湾曲面95の第1水平面94と反対側の端部から第1仕切部42の分離壁46に向かって斜め下方に向かって延びる傾斜面96と、傾斜面96の湾曲面95と反対側の端部から水平方向に延びる第2水平面97とから構成されている。熱交換部91の底壁98の最下点には、ラジエータ81からの結露水を排水する排水口99が設けられており、熱交換部91の底壁98は、ラジエータ81の下方から排水口99に向かう下り勾配の案内面101と、底壁98の前記案内面101と反対側の端部から排水口99に向かう傾斜面102とから構成されている。熱交換部91の側壁103は、前記上壁92及び底壁98の端面を覆うように形成されている。
【0054】
また、熱交換部91は除湿機本体12の除湿ロータ51及びラジエータ81の下方であって、分離壁46よりも上方側に取り付けられている。熱交換部91の内部は、側壁103と同一形状の隔壁104により、加熱ヒータ64から除湿ロータ51を通過した高温再生空気をラジエータ81まで搬送する高温空気流動通路105と、ラジエータ81で冷却された低温再生空気を加熱ユニット64まで搬送する低温空気流動通路106とに分割されている。そして、隔壁104を介して、高温空気流動通路105を通過する高温再生空気と、低温空気流動通路106を通過する低温再生空気との間で熱交換させることが可能となっている。
【0055】
隔壁104は、熱伝導率の高い金属材料、例えば、アルミ合金等で形成され、表裏面に複数の凹凸部107を備える。凹凸部107により、隔壁104の表裏面の面積を大きくすると共に、高温空気流動通路105及び低温空気流動通路106内にそれぞれ乱流を発生させることができ、より一層、高温空気流動通路105と低温空気流動通路106の間での熱交換を促進することが可能となっている。
【0056】
高温空気流動通路105の一端部は、除湿ロータ51を介してヒータ収容部67と対向し、除湿ロータ51の表面領域から待避するように延びるロータカバー111と連通し、他端部は、第1水平面94を介して第1ラジエータ部82と連通している。したがって、高温の再生空気は高温空気流動通路105内を、矢印の方向に搬送される(図16参照)。これにより、再生空気はロータカバー111から高温空気流動通路105に鉛直下向きに流入し、高温空気流動通路105を通過して、第1ラジエータ部82に鉛直上向きに流出する。つまり、再生空気は略U字状に流動される。したがって、再生空気よりも比重の大きい埃は、自重による落下に加えて遠心力によっても落下するので、案内面101を流れる結露水に付着しやすくなり、再生空気内の埃をより確実に除去することができる。
【0057】
案内面101は、排水口99から、高温空気流動通路105での再生空気の流動方向に沿って所定角度立ち上がっている。したがって、高温空気流動通路105内の高温再生空気が案内面101に衝突し、埃が案内面101を流れる結露水にも付着しやすくなるので、高温再生空気中の埃をさらに除去することができる。
【0058】
低温空気流動通路106の一端部は、第2ラジエータ部83と連通し、他端部は、ヒータユニット61と連通している。したがって、低温の再生空気は低温空気流動通路106内を、矢印方向に搬送される。
【0059】
低温空気流動通路106は除湿通路の上流側に位置し、高温空気流動通路105が、除湿通路の下流側に位置するように除湿機本体12に取り付けられている。そして、吸気口28から吸い込んだ空気は除湿通路側にも流動する。しかしながら、除湿通路は、吸い込んだ空気の流れに対して、上流側に低温空気流動通路106が位置するように構成されている。このため、除湿通路の上流側に高温空気流動通路105を設ける場合に比べて、吸い込んだ空気と低温空気流動通路106内を流動する低温再生空気との温度差を小さくすることができる。つまり、低温再生空気の熱が吸い込んだ空気に奪われにくくなる。
【0060】
また、熱交換部91の案内面101、すなわち高温空気流動通路105及び低温空気流動通路106の底面は、ここで生じた結露水の排水のみならず、ラジエータ81で生じた結露水をも貯水タンク105に排水する排水通路として使用することができる。排水通路は排水口99と、案内面101とから構成されている。ラジエータ81で生じた結露水は案内面101に滴下し、案内面101の傾斜面に沿って排水口99に向かい、排水される。排水通路を高温空気流動通路105及び低温空気流動通路106に一体的に設けているので、別部品等を用いて排水通路を設ける必要がなく、部品点数を減らして製造コストを低減することができる。
【0061】
(1−4.制御部120)
制御部120は、前記フォトインタラプタ57等からの入力信号に基づいて、メインファン47、サブファン63、加熱ヒータ64等を制御する。
【0062】
(2.動作)
次に、本実施形態に係る除湿機11の除湿動作について具体的に説明する。
【0063】
メインファン47の駆動により、吸気口28から吸い込まれる周囲の空気は、除湿通路側とラジエータ81側とに分岐して流動する。
【0064】
(2−1.除湿通路での空気流れ)
除湿通路では、吸気口28から吸い込まれた空気が除湿ロータ51を通過する際に、含有した水分が吸着される。これにより、乾燥した空気がインボリュート通路を流動し、後カバー23の排気口33から室内に排出される。
【0065】
除湿ロータ51では、前述のように表裏面に支持リブが設けられておらず、除湿ロータ51の開口面積が増え、より多くの空気を通過させることができる。
【0066】
ラジエータ81では、吸気口28から吸い込まれた空気のうち、分岐した冷却空気が通過し、ラジエータ81内を流動する再生空気と熱交換を行う。
【0067】
(2−2.再生通路での空気流れ)
再生通路では、サブファン63の駆動により、再生空気が通路68を介してヒータ収容部67に流入する。ヒータ収容部67内に流入した再生空気は、ヒータ反射板71により分岐され、一方は加熱ヒータ64で加熱された後、除湿ロータ51を通過し(高温再生空気)、他方は加熱ヒータ64を経ずに除湿ロータ51を通過する(低温再生空気)。
【0068】
高温再生空気は除湿ロータ51を通過する際に、除湿ロータ51に吸着した水分を加熱して蒸発させる。低温再生空気は除湿ロータ51を通過する際に、高温再生空気と加熱ヒータ64とによって加熱された除湿ロータ51を冷却することで、除湿通路で除湿ロータ51を通過する空気が加熱されて機外に排出されるのを抑制する。
【0069】
除湿ロータ51を通過した高温再生空気及び低温再生空気は、ロータカバー111を介して熱交換部91の高温空気流動通路105に流入する。高温空気流動通路105は横方向に長いので、再生空気の移動距離が長くなる。よって、再生空気に含まれる埃を自重により落ちやすくし、底壁98に生じる結露水に付着させて除去することができる。また、高温空気流動通路105の再生空気は案内面101に衝突し、再生空気中の埃が案内面101を流れる結露水にも付着しやすくなるので、埃をさらに除去することができる。そして、再生空気はロータカバー111を鉛直下方に移動し、高温空気流動通路105内を略水平方向に移動し、第1ラジエータ部82を鉛直上方に移動する。これにより、再生空気は略U字型に搬送されるので、再生空気よりも比重の大きい埃は自重による滴下に加えて、遠心力によっても落下するので、案内面101を流れる結露水に付着し、再生空気内の埃をより確実に除去することができる。
【0070】
高温空気流動通路105を通過した再生空気は、第1ラジエータ部82に流入し、パイプ85a内を上方に向かって搬送される。再生空気が第1ラジエータ部82を通過する際、この再生空気とラジエータ81を通過する冷却空気との温度差による熱交換で再生空気は冷却され、再生空気中の水分が結露する。結露水は、ラジエータ81から熱交換部91の排水通路に排水され、排水口99から貯水タンク15に回収される。このように、排水通路を底壁98に一体に設けているので、別部品等を用いて排水通路を設ける必要がなく、除湿機11の部品点数を減らし製造コストを低減することができる。また、第1ラジエータ部82を構成するパイプ85aの断面積が大きいので、上方に再生空気を搬送しつつパイプ85a内で発生する結露水を、パイプ85aの下端まで導き、排水することができる。
【0071】
第1ラジエータ部82から流出した再生空気は、蓋体84で折り返し第2ラジエータ部83に流入し、冷却空気と熱交換を行う。具体的には、第2ラジエータ部83内の再生空気、つまり、冷却の進んだ再生空気が冷却空気の上流側と熱交換を行うので、ラジエータ81内の再生空気温度をより低下させてラジエータ81の冷却性能を向上させることができる。
【0072】
また、熱交換部91内では、隔壁104を介して高温空気流動通路105と低温空気流動通路106内を再生空気が対向する方向に流動するので、隔壁104を介して高温の再生空気と低温の再生空気とが熱交換を行うことができる。これにより、ラジエータ81に流入する前の高温の再生空気を予め冷却し、加熱ヒータ64に流入する前の低温再生空気を予め加熱することができる。
【0073】
低温空気流動通路106から流出した再生空気は、サブファン63によりヒータ収容部67に向かって再び供給されて循環する。
【0074】
(2−3.有機化合物除去処理)
ところで、前記除湿機では、長期に亘って使用していると、除湿ロータ51に有機化合物が付着してくる。この有機化合物をそのままにしておくと、異臭を発生させたり、除湿性能を低下させたり、場合によっては火災の原因ともなる。
【0075】
そこで、図22のフローチャートに示すようにして有機化合物を除去するための有機化合物除去処理(リフレッシュ処理)を実行する。
【0076】
すなわち、まず、運転モードが有機化合物を除去するためのリフレッシュモードに移行すべきか否かを判断する(ステップS1)。ここでは、リフレッシュモードに移行するか否かの判断は、通常運転モードでの運転時間の累計値が予め設定したリフレッシュモードへの移行時間に到達したか否かにより行う。但し、リフレッシュモードに移行すべきか否かの判断は、除湿ロータ51の表面状態を超音波センサ等で直接検出した結果や、除湿ロータ51を通過する空気量の変化等に基づいて行うようにすることも可能である。
【0077】
リフレッシュモードに移行すべきであると判断すれば、除湿ロータ駆動モータ59を逆回転させ、回転速度を低下させることによりリフレッシュモードを開始する(ステップS2)。これにより、除湿ロータ51は、冷却領域を横切った後、加熱領域を横切ることになる。加熱領域では、除湿ロータ51が空気流れの下流側から横切ることになるが、除湿ロータ51に向かって空気流れが約90度方向変換される関係上、方向変換されるまでの空気流れの下流側で空気量が多くなる。このため、加熱ヒータ64により加熱される空気温度が上流側に比べて下流側の方が低くなる。つまり、除湿ロータ51は加熱領域を横切る際、徐々に温度が高くなるように加熱されることになる。したがって、除湿ロータ51に付着した有機化合物は、急激に加熱されて発火点に至るといったことがなく、徐々に温度上昇して熱分解される。熱分解された有機化合物は、除湿ロータ51を通過し、前述の埃等と同様にして結露水に吸着されて除去される。そして、リフレッシュモードに移行してから、予め設定したリフレッシュ時間が経過すれば(ステップS3)、通常運転モードによる運転時間の累計値をリセット(=0)し(ステップS4)、運転モードを通常運転モードに復帰させる(ステップS5)。
【0078】
一方、リフレッシュモードに移行すべきでないと判断すれば(ステップS1:NO)、累計値が移行時間に到達するまで、通常運転モードによる運転時間のカウントを続行する。
【0079】
このように、前記実施形態に係る除湿機によれば、除湿ロータ51への有機化合物の付着量が増大すれば、除湿ロータ51を逆回転させるだけでリフレッシュモードに切り替えて有機化合物を除去することができる。したがって、既存の構造を何等変更することなく対応することができ、簡単かつ安価な構成とすることが可能となる。
【0080】
ところで、前記実施形態では、次のようにして除湿ロータ51の表面温度が過度に上昇することを防止している。
【0081】
すなわち、前カバー22の内面側には、吸気口28の近傍に温度検出センサ130(サーミスタ)が設けられている。この温度検出センサ130での検出温度(除湿機本体12の周囲雰囲気を吸い込んだ直後の空気温度、ここでは、この空気温度が使用環境温度となる。)は、制御部120に入力されるようになっている。
【0082】
制御部120では、温度検出センサ130での検出温度に基づいて、表1に従って除湿ロータ51の回転速度を制御する。ここでは、検出温度が16〜24℃の場合を基準とし、このとき、除湿ロータ51の表面温度が295〜305℃となるような除湿ロータ51の回転速度を100%としている。
【0083】
【表1】

【0084】
図23のグラフは、表1に従って除湿ロータ51の回転速度を制御した場合の除湿ロータ51の表面温度の変化を示す。除湿ロータ51を一定速度で回転させる場合、図中、点線で示すように、検出温度が高くなるに従って除湿ロータ51の表面温度も徐々に高くなり、適正温度の範囲から外れることがある。これに対し、前述のように、除湿ロータ51の回転速度を制御することにより、除湿ロータ51の表面温度を適正温度の範囲内に維持することができた。
【0085】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、前記実施形態では、吸気口28の近傍に設けた温度検出センサ130での検出温度に基づいて、除湿ロータの回転速度を制御するようにしたが、温度検出センサ130を設ける位置は、吸気口28の近傍に限らず、除湿機本体の上面等、使用環境温度を検出可能であれば、いずれの場所であってもよい。
【0087】
また、前記実施形態では、検出温度に基づいて除湿ロータ51の回転速度を制御するようにしたが、検出湿度に基づいて次のようにして、加熱ヒータ64の加熱量及び除湿ロータ51の回転速度を制御するようにしてもよい。
【0088】
検出湿度は、例えば、吸気口28の近傍に設けた湿度検出センサ131で検出すればよい。そして、湿度検出センサ131で検出される湿度(検出湿度:吸気口28から吸い込まれる周囲雰囲気の湿度すなわち使用環境湿度)に基づいて、表2に従って除湿ロータ51の回転速度を制御する。ここでは、検出湿度が50〜60%の場合を基準とし、加熱ヒータ64への通電を100%(最大)とすることにより、除湿ロータ51の表面温度が295〜305℃となるような除湿ロータ51の回転速度を100%としている。そして、検出湿度が低くなれば、それに応じて、加熱ヒータ64による加熱量及び除湿ロータ51の回転速度を抑制する。すなわち、検出湿度が基準値(50〜60%)よりも低い場合、除湿通路を横切る領域での除湿ロータ51の水分担持量を最大(100%)とすることができない。そこで、除湿ロータ51の回転速度を低下させて、除湿ロータ51の単位面積当たりの吸湿時間を増大させる。また、除湿ロータ51の回転速度を低下させると、除湿ロータ51の単位面積当たりの加熱ヒータ64による加熱量が増え、表面温度が上昇し過ぎるので、加熱ヒータ64への通電量を抑制し、温度上昇を抑える。一方、検出湿度が基準値(50〜60%)を超える場合、既に、加熱ヒータ64による加熱量及び除湿ロータ51の回転速度を最大(100%)としているため、その範囲での制御は行えない。但し、加熱ヒータ64による加熱量及び除湿ロータ51の回転速度は、除湿ロータ51の表面温度は低下するものの、その低下が適正温度の範囲内に抑えられるように設定している。
【0089】
【表2】

【0090】
図24のグラフは、表2に従って除湿ロータ51の回転速度を制御した場合の除湿ロータ51の表面温度の変化を示す。除湿ロータ51を一定速度で回転させる場合、図中、点線で示すように、検出湿度が約45%以下の低湿度の範囲では除湿ロータ51の表面温度が適正温度を超えてしまう。これに対し、前述のように、加熱ヒータ64による加熱量及び除湿ロータ51の回転速度を制御することにより、除湿ロータ51の表面温度を適正範囲内に維持することができた。
【0091】
また、前記実施形態では、除湿運転を通常除湿モードでのみ行う場合について説明したが、除湿モードは、加熱ヒータ64への通電量を変更することにより調整可能としてもよい。
【0092】
例えば、表3に示すように、除湿運転モードを「強(300W)」、「中(200W)」、「弱(100W)」の3段階で切り替えられるようにする場合、除湿ロータ51の表面温度が一定(ここでは、300℃)となるように、除湿ロータ51の回転速度を調整する。
【0093】
【表3】

【0094】
図25のグラフは、表3に従って除湿ロータ51の回転速度を制御した場合の除湿ロータ51の表面温度の変化を示す。除湿ロータ51を一定速度で回転させる場合、図中、点線で示すように、運転モードが「中」及び「弱」で適正温度よりもかなり低い温度となり、除湿ロータ51の再生が不十分なものとなった。これに対し、表3に従って除湿ロータ51の回転速度を制御することにより、除湿ロータ51の表面温度を一定とすることができ、除湿ロータ51の再生を適切に行うことができた。
【0095】
また、前記実施形態では、電源電圧の高低に拘わらず、除湿ロータ51の回転速度を一定としたが、電源電圧検出センサ132で検出される電源電圧の高低に応じて除湿ロータ51の回転速度を制御するようにしてもよい。すなわち、電源電圧が高くなれば高くなるほど、加熱ヒータ64への供給電力が大きくなり、除湿ロータ51の表面温度が上昇するため、除湿ロータ51の回転速度を上昇させることにより、その表面温度の上昇度合いを抑制する。
【0096】
例えば、表4に示すように、電源電圧が97〜100(V)の場合を基準とし、加熱ヒータ64への通電量を282〜300(W)とした場合、除湿ロータ51の表面温度が290〜300℃となるように決定した除湿ロータ51の回転速度を100%とする。そして、電源電圧が低くなるに従って除湿ロータ51の回転速度を低下させる。また、電源電圧が高くなるに従って除湿ロータ51の回転速度を上昇させる。
【0097】
【表4】

【0098】
図26のグラフは、表4に従って除湿ロータ51の回転速度を制御した場合の除湿ロータの表面温度の変化を示す。除湿ロータ51を一定速度で回転させる場合、図中、点線で示すように、電源電圧が低ければ低いほど除湿ロータ51の表面温度は低くなって適正温度から外れ、逆に電源電圧が高ければ高いほど除湿ロータ51の表面温度は高くなって、やはり適正温度から外れる。これに対し、電源電圧の高低に応じて除湿ロータ51の回転速度を制御することにより、除湿ロータ51の表面温度を適正範囲内に維持することが可能となった。
【0099】
また、前記実施形態では、除湿ロータ駆動モータ59として、シンクロナスモータを使用し、交流電力により駆動するようにしたが、通常の交流モータを使用してインバータ制御するようにしてもよし、直流電源により駆動する直流モータを使用するようにしてもよい。直流モータを使用する場合、商用電源(100V-50Hz又は100V-60Hz)を整流・平滑化し、AC−DCコンバータにより所望の電圧に電圧変換し、DC−DCコンバータにより昇圧して直流モータを駆動することにより、周波数変動の影響を受けることがなく、除湿ロータ駆動モータ59の回転速度を任意に制御することが可能となる。
【0100】
また、前記除湿ロータ駆動モータ59はインバータ制御するようにしてもよい。すなわち、商用電源(100V-50Hz又は100V-60Hz)を整流・平滑化し、AC−DCコンバータにより所望の周波数の矩形波に変換した後、DC−ACコンバータにより交流に変換することにより、除湿ロータ駆動モータ59に供給すればよい。これにより、交流電力の周波数の変動の影響を受けることなく、除湿ロータ駆動モータ59の回転速度を任意に制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0101】
11…除湿機
12…除湿機本体
15…貯水タンク
21…ケーシング
22…前カバー
23…後カバー
24…天カバー
25…前壁
26…上下壁
27…両側壁
28…吸気口
30…後壁
31…上下壁
32…両側壁
33…排気口
35…天板
36…凹部
37…支軸
38…開閉板
41…仕切り部材
42…第1仕切部
43…第2仕切部
44…円形開口部
45…矩形状筒部
46…分離壁
47…メインファン(第1ファン)
48…円形開口部
49…メインファン駆動モータ
50…内壁
51…除湿ロータ
52…ロータ本体
53…ロータホルダ
54…ロータベアリング
54a…貫通穴
55…ギア部
55a…ギア
56…検出穴
57…フォトインタラプタ(回転状態検出手段)
58…回転支持部材
59…除湿ロータ駆動モータ(駆動手段)
59a…駆動ギア
61…ヒータユニット
62…ユニット本体
63…サブファン(第2ファン)
63a…サブファン駆動モータ
64…加熱ヒータ
66…ファン収容部
67…ヒータ収容部
68…通路
71…ヒータ反射板
72…上流側開口部
73…下流側開口部
74…取付部
76…加熱領域
77…冷却領域
81…ラジエータ(熱交換器)
82…第1ラジエータ部
83…第2ラジエータ部
84…蓋体
85a…径の太いパイプ
85b…径の細いパイプ
86…上板
87…下板
88…中板
91…熱交換部
92…上壁
93…挿通口
94…第1水平面
95…湾曲面
96…傾斜面(上壁)
97…第2水平面
98…底壁
99…排水口
101…案内面
102…傾斜面(底壁)
103…側壁
104…隔壁
105…高温空気流動通路
106…低温空気流動通路
107…凹凸部
111…ロータカバー
112…突出部
113…ネジ
120…制御部(制御手段)
130…温度検出センサ(温度検出手段)
131…湿度検出センサ(湿度検出手段)
132…電源電圧検出センサ(電力検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除湿通路と再生通路を備えたケーシングと、
前記両通路に跨って回転可能に配置された除湿ロータと、
前記除湿ロータを正転方向に回転駆動する駆動手段と、
前記除湿通路内に配置され、周囲の空気を吸引して前記除湿ロータで除湿することにより得られた乾燥空気を周囲に排出する第1ファンと、
前記再生通路内に配置され、再生空気を循環させる第2ファンと、
前記再生通路内に配置され、前記再生空気と除湿ロータを加熱する加熱ヒータと、
内部を流動する再生空気を、外部を通過する空気により冷却して結露させる熱交換器と、
前記熱交換器により得られた結露水を貯留するタンクと、
を備えた除湿機であって、
前記除湿ロータの表面温度を、直接的又は間接的に検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段での検出温度に基づいて、前記駆動手段を駆動制御して除湿ロータの回転速度を調整することにより、前記除湿ロータの表面温度の変化を一定範囲内に温調する制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする除湿機。
【請求項2】
前記温度検出手段は、使用環境温度を検出するものであり、
前記制御手段は、前記温度検出手段で検出される温度が高ければ高いほど、前記駆動手段による除湿ロータの回転速度を増大させることを特徴とする請求項1に記載の除湿機。
【請求項3】
除湿運転の累計時間を計時する計時手段を備え、
前記制御手段は、前記計時手段で計時される除湿運転の累計時間が、予め設定した設定時間となることにより、前記除湿ロータを、通常運転時よりも遅い、予め設定した設定速度で回転させることを特徴とする請求項1又は2に記載の除湿機。
【請求項4】
前記除湿ロータは、再生温度が300℃以下の除湿剤で構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の除湿機。
【請求項5】
使用環境湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記湿度検出手段で検出される使用環境湿度に基づいて、前記駆動手段を駆動制御して前記除湿ロータの回転速度を調整することにより、前記除湿ロータが除湿通路を通過する際の吸湿時間を変更することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の除湿機。
【請求項6】
前記加熱手段への供給電力値を検出する電力検出手段を備え、
前記制御手段は、前記加熱手段による前記除湿ロータの単位時間当たりの加熱量が一定範囲内となるように、前記電力検出手段で検出される供給電力値に基づいて、前記駆動手段を駆動制御して除湿ロータの回転速度を調整することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の除湿機。
【請求項7】
前記駆動手段は、直流モータであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の除湿機。
【請求項8】
除湿通路と再生通路を備えたケーシングと、
前記両通路に跨って回転可能に配置された除湿ロータと、
前記除湿ロータを正転方向に回転駆動する駆動手段と、
前記除湿通路内に配置され、周囲の空気を吸引して前記除湿ロータで除湿することにより得られた乾燥空気を周囲に排出する第1ファンと、
前記再生通路内に配置され、再生空気を循環させる第2ファンと、
前記再生通路内に配置され、前記再生空気と除湿ロータを加熱する加熱ヒータと、
内部を流動する再生空気を、外部を通過する空気により冷却して結露させる熱交換器と、
前記熱交換器により得られた結露水を貯留するタンクと、
を備えた除湿機の運転制御方法であって、
前記除湿ロータの表面温度を、直接的又は間接的に検出し、
検出温度に基づいて、前記駆動手段を駆動制御して除湿ロータの回転速度を調整することにより、前記除湿ロータの表面温度の変化を一定範囲内に温調することを特徴とする除湿機の運転制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2011−36810(P2011−36810A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186591(P2009−186591)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】