説明

陸上競技用スパイクシューズ

【課題】 トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮でき、しかも接地時のソールの回転を防止できる陸上競技用スパイクシューズを提供する。
【解決手段】 ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.18〜0.43)×W(W:ソール幅)の位置かつ爪先先端から前後方向に(0.28〜0.31)×L(L:表示サイズ足長)の位置に第1のスパイクピン1を設け、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.58〜0.74)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.29〜0.33)×Lの位置に第2のスパイクピン2を設け、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.43〜0.58)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.17〜0.28)×Lの位置に第3のスパイクピン3を設ける。第1〜第3のスパイクピン1〜3は、これらを頂点とする三角形を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上競技用スパイクシューズに関し、詳細には、とくにスプリント競技の際に走路のトラック面に対して十分なトラクション性能を発揮でき、しかも接地時にソールの不要な回転を防止できるようにしたスパイクピン配置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上競技において、とくに100mダッシュや200mダッシュなどのスプリント競技の際にタイムを短縮するには、より短い接地時間でより速く体の重心を前方に運ぶことが重要になる。スパイクシューズとしてこれを実現するためには、短い接地時間であってもトラック面に対して確実にトラクション性能を発揮できるものであることが必要である。また、接地時にソールの接地底面で無駄な回転が生じるなどの走行ロスを発生させないようにすることも必要である。
【0003】
そこで、本願の発明者らは、まず、スプリント競技時の競技者の足の足圧分布を求めることから始めた。図6は、スプリント競技時に競技者の足に作用する足圧を測定した結果を示す足圧分布図である。これは、加速局面、すなわち足を蹴り出し始めてから蹴り抜くまでの足圧分布を示している。なお、この足圧測定の際には、シューズの中敷と中底の間にEVAシートをクッション層として足圧測定用センサシートを挿入したスパイクシューズを被験者に履いてもらい、被験者が実際にダッシュした際に発生する足圧をセンサシートにより測定した。
【0004】
図6から分かるように、スプリント競技時に足圧が最も高くなる領域(最大足圧領域)は、第2指中足骨MBの骨頭部、第3指中足骨MBの骨頭部、および第2、第3指基節骨PP、PPの各骨底部の中間部分を覆う略三角形状の領域である。
【0005】
その一方、従来の陸上競技用スパイクシューズにおいては、特開平9−306号公報の明細書の段落[0017]〜[0019]および図1に示すように、第1指中足骨骨頭部、第2指中足骨骨頭部および第4指中足骨骨頭部にそれぞれ相当する位置にスパイクが設けられている。
【0006】
これを上記足圧分布図と比較すると分かるように、従来の陸上競技用スパイクシューズでは、スプリント競技時の最大足圧領域内において第1指側の境界線寄りの位置(すなわち三角形状の最大足圧領域の一つの頂点の位置)に1本のスパイクが設けられているだけである。
【0007】
上記公報に示す発明は、陸上のスプリント競技時に競技者の足の中足骨骨頭部が先に着地するというロードパス(体重負荷経路)理論に着目してなされたものであるため、足の第1指、第2指、第4指の各中足骨骨頭相当位置にスパイクピンを配置している。
【0008】
これに対して、本願発明では、陸上のスプリント競技時に競技者の足に実際に作用する足圧分布に着目してなされたものである。
【特許文献1】特開平9−306号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、走路のトラック面に対して十分なトラクション性能を発揮でき、しかも接地時にソールの接地底面内での回転を防止できるスパイクピン配置を有する陸上競技用スパイクシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1ないし3の発明はいずれも、上記足圧分布図における最大足圧領域に対応してスパイクピンを配置するようにしたものである。
【0011】
請求項1の発明に係る陸上競技用スパイクシューズは、ソールの接地底面に設けられるスパイクピンが、着用者の足の第2指中足骨骨頭部の第1指側側縁部に相当する位置に配置された第1のスパイクピンと、第3指中足骨骨頭部の第4指側側縁部に相当する位置に配置された第2のスパイクピンと、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部間の中間領域に配置された第3のスパイクピンとを備えており、第1、第2および第3のスパイクピンがこれらを頂点とする三角形を形成している。
【0012】
請求項1の発明によれば、三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の位置に各スパイクピンが配置されるので、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、これにより、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。この場合には、第1、第2のスパイクピンに加えて、その前方にさらに第3のスパイクピンが配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、3本のスパイクピンが三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。なお、ここで「接地中」とは、第1、第2および第3のピンが地面と接地しているときを指している。
【0013】
これに対して、特開平9−306号公報の図1に示すようなスパイクピン配置では、最大足圧領域内において境界線の縁部寄りの1個所にのみスパイクピンが配置されているので、最大足圧の発生時にソールが当該スパイクピンの周りで回転を起こす恐れがあり、その結果、走行ロスが発生して、タイムロスが生じる可能性がある。
【0014】
請求項2の発明に係る陸上競技用スパイクシューズは、ソールの接地底面に設けられる第1ないし第3のスパイクピンが、着用者の足の第1指中足骨骨頭中心位置A、第4指中足骨骨頭中心位置B、第2指基節骨骨頭部および第3指基節骨骨頭部の中間位置Cをそれぞれ頂点とする大形の△ABCと、第2指中足骨骨頭中心位置a、第3指中足骨骨頭中心位置b、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部の中間位置cをそれぞれ頂点とする小形の△abcとで囲まれた帯状の三角形状領域に配置されている。そして、第1のスパイクピンが、前記三角形状領域内において、第2指中足骨骨頭中心位置aの後方でかつ第1指寄りの位置に配置され、第2のスパイクピンが、前記三角形状領域内において、第3指中足骨骨頭中心位置bの後方でかつ第4指寄りの位置に配置され、第3のスパイクピンが、前記三角形状領域内において、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部の中間位置cの前方に配置されており、第1、第2および第3のスパイクピンがこれらを頂点とする三角形を形成している。
【0015】
請求項2の発明によれば、三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の近傍位置または三角形状の最大足圧領域を囲繞する位置に各スパイクピンが配置されるので、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、これにより、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。この場合には、第1、第2のスパイクピンに加えて、その前方にさらに第3のスパイクピンが配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、3本のスパイクピンが三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【0016】
この場合において、各スパイクピンの設置領域として、三角形状の最大足圧領域を越える領域まで認めたのは、最大足圧領域を囲繞する三角形状領域であれば、最大足圧領域を安定して支持し得るからである。また、最大足圧領域を越える領域として、大形の△ABCの領域までに限ったのは、以下の理由による。すなわち、点Aに関しては、点Aが第1指中足骨骨頭中心位置であるため、第1のスパイクピンの接地時に第1指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点Bに関しては、点Bが第4指中足骨骨頭中心位置であるため、第2のスパイクピンの接地時に第4指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点Cに関しては、第2指基節骨骨体部および第3指基節骨骨体部間で比較的足圧が高い領域をカバーするためである。
【0017】
また、各スパイクピンの設置領域として、三角形状の最大足圧領域の内部の領域まで認めたのは、最大足圧領域の内部であっても、第1および第2のスパイクピンの設置スパンとして、少なくとも第2指および第3指中足骨骨頭部間の距離があれば、荷重を安定して支持することが可能だからである。また、最大足圧領域の内部の領域として、小形の△abcの領域までに限ったのは、以下の理由による。すなわち、点aに関しては、点aが第2指中足骨骨頭中心位置であるため、第1のスパイクピンの接地時に第2指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点bに関しては、点bが第3指中足骨骨頭中心位置であるため、第2のスパイクピンの接地時に第3指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点cに関しては、3本のスパイクピンの接地中において足部の矢状面上での不要な回転を抑制するためには、第3のスパイクピンが少なくとも中足趾節関節を越えた位置に配置されていることが好ましいと考えたからである。
【0018】
請求項3の発明に係る陸上競技用スパイクシューズは、ソールの接地底面に設けられるスパイクピンが、シューズの表示サイズ足長をLとし、ソールの幅をWとするとき、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.18〜0.43)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.28〜0.31)×Lの位置に配置された第1のスパイクピンと、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.58〜0.74)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.29〜0.33)×Lの位置に配置された第2のスパイクピンと、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.43〜0.58)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.17〜0.28)×Lの位置に配置された第3のスパイクピンとを備えており、第1、第2および第3のスパイクピンがこれらを頂点とする三角形を形成している。
【0019】
なお、上記各数値による各スパイクピンの設置領域は、標準的な足の骨格形状に対応させて記載した請求項2による設置領域を別の観点から特定したものである。ここで、各スパイクピンの前後方向位置に関し、シューズの表示サイズ足長に対する爪先先端からの比率で表したのは、シューズによって踵部の形状が大きく異なるため、実質的な差異のない爪先先端からの距離を用いたのである。また、各スパイクピンの左右方向位置に関し、ソールの幅寸法を用いたのは、陸上競技用スパイクシューズの特徴として、通常、足幅に対して隙間なく密着して着用されることから、ソール幅が実質的に足幅に等しくなるため、横方向の寸法Wとして、ソールの幅を用いたのである。
【0020】
請求項3の発明によれば、競技者の足の最大足圧領域内の3個所に、または三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の位置に、あるいは最大足圧領域を囲繞する3個所にスパイクピンが配置されるので、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、これにより、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。この場合には、第1、第2のスパイクピンに加えて、その前方にさらに第3のスパイクピンが配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、3本のスパイクピンが三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【0021】
ここで、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.18Wおよび爪先先端から前後方向に0.31Lの位置は、第1指中足骨の骨頭中心位置に対応し、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.43Wおよび爪先先端から前後方向に0.28Lの位置は、第2指中足骨の骨頭中心位置に対応している。同様に、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.58Wおよび爪先先端から前後方向に0.29Lの位置は、第3指中足骨の骨頭中心位置に対応しており、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.74Wおよび爪先先端から前後方向に0.33Lの位置は、第4指中足骨の骨頭中心位置に対応している。また、ソールの爪先先端から前後方向に0.17Lの位置は、第3指基節骨PPの骨頭中心を通っている。
【0022】
請求項4の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記三角形の領域が、スプリント競技の際に足圧が最も高くなる領域に対応して配置されている。
【0023】
請求項5の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記三角形の領域にその他のスパイクピンが設けられていない。
【0024】
この場合、最大足圧領域には第1ないし第3のスパイクピンのみが配置されることになるので、最大足圧領域を安定して支持しつつ、スパイクピンがトラック面に刺さる際の抵抗を低減できるとともに、スパイクピンがトラック面から抜ける際の抵抗を低減できる。
【0025】
請求項6の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、第1、第2、第3のスパイクピンが、ソール接地底面からの露出部分において円柱形状を有している。
【0026】
請求項7の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、第1、第2、第3のスパイクピンが、ソール接地底面からの露出部分において、先端に向かうにしたがい小径となる載頭円錐形状を有している。
【0027】
この場合には、接地時にスパイクピンがトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にスパイクピンがトラック面から抜けやすくなるため、スパイクピンの接地時間(つまり、スパイクピンの先端がトラック面に接地してから基端がトラック面に嵌まり込むまでに要する時間)を短縮できる。また、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなるので、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【0028】
請求項8の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、第1、第2、第3のスパイクピンが、その先端側が小形となる段差部を有している。
【0029】
この場合においても、接地時にスパイクピンがトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にスパイクピンがトラック面から抜けやすくなるため、スパイクピンの接地時間を短縮できる。また、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなるので、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【0030】
請求項9の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、第1、第2および第3のスパイクピンのソール接地底面からの長さが、ソール接地底面に設けられるその他のスパイクピンのソール接地底面からの長さと等しいかまたはこれよりも短くなっている。
【0031】
この場合には、第1ないし第3のスパイクピンが接地時に他のスパイクピンと同等にまたは他のスパイクピンよりもトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にはトラック面から抜けやすくなるため、スパイクピンの接地時間を短縮できる。また、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなって、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【0032】
請求項10の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、第1、第2および第3のスパイクピンの外径が、ソール接地底面に設けられるその他のスパイクピンの外径と等しいかまたはこれよりも小さくなっている。なお、スパイクピンの「外径」とは、一般に用いられているピン呼称径を指し、スパイクピン本体部分の外径寸法である。
【0033】
この場合には、第1ないし第3のスパイクピンが接地時に他のスパイクピンと同等にまたは他のスパイクピンよりもトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にはトラック面から抜けやすくなるため、スパイクピンの接地時間を短縮できる。また、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなって、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【0034】
請求項11の発明では、請求項1ないし3のいずれかにおいて、第1、第2および第3のスパイクピンにより形成される三角形の領域の剛性が、その周囲の領域の剛性と同等かまたはこれよりも高くなっている。
【0035】
この場合には、前記三角形領域がその周囲の領域と同等に曲がりにくくなり、または周囲の領域よりも曲がりにくくなるので、ソール接地底面における前記三角形領域のトラック面との接地状態を維持でき、これにより、前記三角形状領域のトラクション性能を向上できる。また、この場合、三角形領域の剛性を高くすることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなって、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明の第1の発明に係る陸上競技用スパイクシューズによれば、第2指中足骨骨頭部の第1指側側縁部に相当する位置に第1のスパイクピンを配置し、第3指中足骨骨頭部の第4指側側縁部に相当する位置に第2のスパイクピンを配置し、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部間の中間領域に第3のスパイクピンを配置するようにしたので、スプリント競技時における三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の位置に各スパイクピンが配置されることになり、これにより、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。この場合には、第1、第2のスパイクピンに加えて、その前方にさらに第3のスパイクピンが配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、3本のスパイクピンが三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【0037】
本発明の第2の発明に係る陸上競技用スパイクシューズによれば、第1ないし第3のスパイクピンを、第1指中足骨骨頭中心位置A、第4指中足骨骨頭中心位置B、第2指基節骨骨頭部および第3指基節骨骨頭部の中間位置Cをそれぞれ頂点とする大形の△ABCと、第2指中足骨骨頭中心位置a、第3指中足骨骨頭中心位置b、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部の中間位置cをそれぞれ頂点とする小形の△abcとで囲まれた帯状の三角形状領域に配置するとともに、第1のスパイクピンを第2指中足骨骨頭中心位置aの後方でかつ第1指寄りの位置に配置し、第2のスパイクピンを第3指中足骨骨頭中心位置bの後方でかつ第4指寄りの位置に配置し、第3のスパイクピンを、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部の中間位置cの前方に配置するようにしたので、スプリント競技時における三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の近傍位置または三角形状の最大足圧領域を囲繞する位置に各スパイクピンが配置されることになり、これにより、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。この場合には、第1、第2のスパイクピンに加えて、その前方にさらに第3のスパイクピンが配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、3本のスパイクピンが三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【0038】
本発明の第3の発明に係る陸上競技用スパイクシューズによれば、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.18〜0.43)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.28〜0.31)×Lの位置に第1のスパイクピンを配置し、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.58〜0.74)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.29〜0.33)×Lの位置に第2のスパイクピンを配置し、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.43〜0.58)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.17〜0.28)×Lの位置に第3のスパイクピンを配置するようにしたので、スプリント競技時における足の最大足圧領域内の3個所に、または三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の位置に、あるいは最大足圧領域を囲繞する3個所にスパイクピンが配置されるので、三角形状の最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、これにより、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。この場合には、第1、第2のスパイクピンに加えて、その前方にさらに第3のスパイクピンが配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、3本のスパイクピンが三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1および図2は、本発明の第1の実施例による陸上競技用スパイクシューズを示しており、図1Aは陸上競技用スパイクシューズのソール底面部分図、図1Bは図1AのB−B線断面図、図1Cは図1AのC−C線断面図、図2は本実施例によるスパイクピン配置を足圧分布図(図6)と併せて示す図である。
【0040】
図1Aに示すように、この陸上競技用スパイクシューズのアウトソールSは、その接地底面Sの前足部中央部分に第1ないし第3のスパイクピン1、2、3を有している。これらのスパイクピンの位置は、各スパイクピン1、2、3を頂点とする三角形を形成するように配置されている。
【0041】
より詳細には、各スパイクピン1、2、3により形成される三角形状領域は、スプリント競技の際に足圧が最も高くなる領域に対応して配置されている。これを図2を用いて説明する。
【0042】
図2は、図6に示した足圧分布図に各スパイクピン1、2、3の位置を記したものである。図2中、参照符号1、2、3を付した+印が各スパイクピン1、2、3の中心位置を示している。
【0043】
図2から明らかなように、第1のスパイクピン1は、着用者の足の第2指中足骨MBの骨頭部の第1指側側縁部に相当する位置に配置されており、第2のスパイクピン2は、第3指中足骨MBの骨頭部の第4指側側縁部に相当する位置に配置されており、第3のスパイクピン3は、第2指基節骨PPの骨底部および第3指基節骨PPの骨底部間の中間領域に配置されている。
【0044】
このように、第1ないし第3のスパイクピン1〜3は、スプリント競技時に足圧が最も高くなる三角形状の最大足圧領域の各頂点部分に配置されている。
【0045】
図1Aに戻って説明すると、アウトソールSの接地底面Sにおいて、各スパイクピン1、2、3の周りには、さらにスパイクピン4〜9が設けられている。図2の骨格図と重ね合わせてみると分かるように、スパイクピン4は着用者の足の第1指中足骨MBの骨頭部に相当する位置に、スパイクピン5は第5指中足骨MBの骨頭部に相当する位置に、スパイクピン6は第1指末節骨DPに相当する位置に、スパイクピン7は第3指末節骨DPおよび第3指中節骨MPの中間位置に相当する位置に、スパイクピン8は第1指基節骨PPの骨体部に相当する位置に、スパイクピン9は第5指末節骨DPおよび第5指中節骨MPの中間位置に相当する位置にそれぞれ配置されている。
【0046】
図1Cに示すように、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3およびスパイクピン8、9は、残りのスパイクピン4〜7に比べて外径が小さく小形である。また、図1Cに示すように、第1、第2のスパイクピン1、2(第3のスパイクピン3およびスパイクピン8、9も同様)は、ソール接地底面Sからの露出部分において先端に向かうにしたがい小径となる載頭円錐形状を有している。これに対して、スパイクピン4〜7は、ソール接地底面Sからの露出部分において円柱形状を有するとともに、先端側が小形となる段差部を有している。すなわち、スパイクピン4〜7は、比較的大径の円柱部と、その先端側に一体に形成された比較的小径の円柱部とから構成されている。
【0047】
第1ないし第3のスパイクピン1、2、3のソール接地底面Sからの露出部分の長さは、スパイクピン8、9のソール接地底面Sからの露出部分の長さと等しく、残りのスパイクピン4〜7のソール接地底面Sからの露出部分の長さよりも短くなっている(図1C参照)。
【0048】
第1ないし第3のスパイクピン1、2、3の各設置位置を頂点とする三角形状領域の剛性は、その周囲の領域の剛性と同等かまたは高くなっている。すなわち、図1Aおよび図1Bに示すように、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3による三角形状領域を含むハニカム構造部(図1Aにおいて多数の正六角形状の枠組部からなる構造部分)は、その前側の薄肉領域である薄肉部Sに比べて肉厚の厚い厚肉部Sとなっている。なお、図1Bにおいては、ハニカム構造の断面形状を忠実に表現することはせずに、ハニカム構造の底面側最突出面の位置を破線でつないで表している(図1Cにおいても同様)。
【0049】
また、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3による三角形状領域には、その他のスパイクピンは設けられていない。
【0050】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
【0051】
上述したように、本実施例による陸上競技用スパイクシューズによれば、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3が三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の位置に配置されているので、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、これにより、走路のトラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。
【0052】
しかも、第1、第2のスパイクピン1、2に加えて、その前方にさらに第3のスパイクピン3が配置されているので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3が三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【0053】
また、この場合には、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3を頂点とする三角形状の領域にはその他のスパイクピンが設けられておらず、最大足圧領域には第1ないし第3のスパイクピン1、2、3のみが配置されているので、最大足圧領域を安定して支持しつつ、スパイクピンがトラック面に刺さる際の抵抗を低減できるとともに、スパイクピンがトラック面から抜ける際の抵抗を低減できる。
【0054】
さらに、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3が載頭円錐形状を有しているので、接地時にスパイクピンがトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にスパイクピンがトラック面から抜けやすくなるため、スパイクピンの接地時間(つまり、スパイクピンの先端がトラック面に接地してから基端がトラック面に嵌まり込むまでに要する時間)を短縮できる。また、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなるので、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3による支持の安定性を向上できる。
【0055】
しかも、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3の長さがその他のスパイクピン4〜7の長さよりも短くなっているので、第1ないし第3のスパイクピンが接地時に他のスパイクピンよりもトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にはトラック面から抜けやすくなるため、スパイクピンの接地時間を短縮できる。また、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなって、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【0056】
また、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3の外径がその他のスパイクピンの4〜7の外径よりも小さくなっているので、第1ないし第3のスパイクピンが接地時に他のスパイクピンよりもトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にはトラック面から抜けやすくなるため、スパイクピンの接地時間を短縮できる。そして、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなって、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【0057】
さらに、この場合には、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3により形成される三角形状の領域の剛性はその周囲の領域の剛性と同等かまたは高くなっているので、三角形領域がその周囲の領域と同等に曲がりにくくなり、または周囲の領域よりも曲がりにくくなるので、ソール接地底面における三角形領域のトラック面との接地状態を維持でき、これにより、三角形状領域のトラクション性能を向上できる。また、この場合、三角形領域の剛性を高くすることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなって、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【0058】
なお、前記第1の実施例では、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3の設置位置について、それぞれ第2指中足骨MBの骨頭部の第1指側側縁部に相当する位置、第3指中足骨MBの骨頭部の第4指側側縁部に相当する位置、第2指基節骨PPの骨底部および第3指基節骨PPの骨底部間の中間領域であるとしたが、本発明の適用はこれに限定されるものではない。以下の第2ないし第4の実施例は、各スパイクピンの設置位置を別の観点から記載したものである。
<第2の実施例>
図3は、本発明の第2の実施例による陸上競技用スパイクシューズにおける各スパイクピンの設置可能領域を足圧分布図(図6)と併せて示す図である。同図には、前記第1の実施例における各スパイクピン1、2、3の配置が併せて示されている。
【0059】
この第2の実施例では、図3に示すように、第1ないし第3のスパイクピンの設置可能領域が、着用者の足の第1指中足骨骨頭中心位置A、第4指中足骨骨頭中心位置B、第2指基節骨骨頭部および第3指基節骨骨頭部の中間位置Cをそれぞれ頂点とする大形の△ABCと、第2指中足骨骨頭中心位置a、第3指中足骨骨頭中心位置b、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部の中間位置cをそれぞれ頂点とする小形の△abcとで囲まれた帯状の三角形状領域(斜線領域)で示されている。
【0060】
第1のスパイクピン1は、三角形状領域内において、第2指中足骨MBの骨頭中心位置aの後方でかつ第1指寄りの位置に配置されている。第2のスパイクピン2は、三角形状領域内において、第3指中足骨MBの骨頭中心位置bの後方でかつ第4指寄りの位置に配置されている。第3のスパイクピン3は、三角形状領域内において、第2指基節骨PPの骨底部および第3指基節骨PPの骨底部の中間位置cの前方に配置されており、第1、第2および第3のスパイクピン1、2、3がこれらを頂点とする三角形を形成している。
【0061】
第2の実施例によれば、三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の近傍位置または三角形状の最大足圧領域を囲繞する位置に各スパイクピンが配置されるので、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで安定して支持でき、これにより、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。
【0062】
この場合には、第1、第2のスパイクピン1、2に加えて、その前方にさらに第3のスパイクピン3が配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3が三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【0063】
この場合において、各スパイクピンの設置領域として、三角形状の最大足圧領域を越える領域まで認めたのは、最大足圧領域を囲繞する三角形状領域であれば、最大足圧領域を安定して支持し得るからである。また、最大足圧領域を越える領域として、大形の△ABCの領域までに限ったのは、以下の理由による。すなわち、点Aに関しては、点Aが第1指中足骨骨頭中心位置であるため、第1のスパイクピンの接地時に第1指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点Bに関しては、点Bが第4指中足骨骨頭中心位置であるため、第2のスパイクピンの接地時に第4指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点Cに関しては、第2指基節骨骨体部および第3指基節骨骨体部間で比較的足圧が高い領域をカバーするためである。
【0064】
各スパイクピンの設置領域として、三角形状の最大足圧領域の内部の領域まで認めたのは、最大足圧領域の内部であっても、第1および第2のスパイクピン1、2の設置スパンとして、少なくとも第2指および第3指中足骨骨頭部間の距離があれば、荷重を安定して支持することが可能だからである。また、最大足圧領域の内部の領域として、小形の△abcの領域までに限ったのは、以下の理由による。すなわち、点aに関しては、点aが第2指中足骨骨頭中心位置であるため、第1のスパイクピンの接地時に第2指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点bに関しては、点bが第3指中足骨骨頭中心位置であるため、第2のスパイクピンの接地時に第3指中足骨骨頭への突上げを防止するためであり、点cに関しては、足部の矢状面上での回転運動である背屈および座屈を抑制するためには、第3のスパイクピンが少なくとも中足趾節関節を越えた位置に配置されていることが好ましいと考えたからである。
<第3の実施例>
図4は、本発明の第3の実施例による陸上競技用スパイクシューズにおける各スパイクピンの設置可能領域を足圧分布図(図6)と併せて示す図である。同図には、前記第1の実施例における各スパイクピン1、2、3の配置が併せて示されている。
【0065】
この第3の実施例では、図4に示すように、シューズの表示サイズ足長をLとし、ソールの幅をWとするとき、第1のスパイクピン1は、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.18〜0.43)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.28〜0.31)×Lの位置に配置されている。第2のスパイクピン2は、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.58〜0.74)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.29〜0.33)×Lの位置に配置されている。第3のスパイクピン3は、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.43〜0.58)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.17〜0.28)×Lの位置に配置されている。
【0066】
ここで、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.18Wおよび爪先先端から前後方向に0.31Lの位置は、第1指中足骨MBの骨頭中心位置に対応しており、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.43Wおよび爪先先端から前後方向に0.28Lの位置は、第2指中足骨MBの骨頭中心位置に対応している。
【0067】
同様に、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.58Wおよび爪先先端から前後方向に0.29Lの位置は、第3指中足骨MBの骨頭中心位置に対応しており、ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に0.74Wおよび爪先先端から前後方向に0.33Lの位置は、第4指中足骨MBの骨頭中心位置に対応している。
【0068】
また、ソールの爪先先端から前後方向に0.17Lの位置は、第3指基節骨PPの骨頭中心を通っている。
【0069】
この場合には、競技者の足の最大足圧領域内の3個所に、または三角形状の最大足圧領域の3つの頂点の位置に、あるいは最大足圧領域を囲繞する3個所にスパイクピンが配置されるので、最大足圧領域をこれら3本のスパイクピンで支持でき、これにより、トラック面に対して十分なトラクション性能を発揮できる。
【0070】
この場合には、第1、第2のスパイクピン1、2に加えて、その前方にさらに第3のスパイクピン3が配置されるので、蹴り抜き時において前方への一層の加速を得ることができる。しかも、この場合には、第1ないし第3のスパイクピン1、2、3が三角形の頂点をなすように配置されるので、荷重を3点で支えることができ、これにより、3本のスパイクピンの接地中に足部の矢状面上での不要な回転を抑制でき、重心の安定性を向上できるとともに、前額面上および水平面上においても不要な回転を抑制でき、走行中のロスを低減できる。
【0071】
なお、前記第2の実施例において、第1のスパイクピン1の配置に関して、第2指中足骨MBの骨頭中心位置aの後方でかつ第1指寄りの位置とは、三角形状領域内において、0.28L以上かつ0.43W以下の範囲を示している。同様に、第2のスパイクピン2の配置に関して、第3指中足骨MBの骨頭中心位置bの後方でかつ第4指寄りの位置とは、三角形状領域内において、0.29L以上かつ0.58W以上の範囲を示している。
<第4の実施例>
図5は、本発明の第4の実施例による陸上競技用スパイクシューズを示しており、図5Aは陸上競技用スパイクシューズのソール底面部分図、図5Bは図5AのB−B線断面図、図5Cは図5AのC−C線断面図である。各図中、前記第1の実施例と同一符号は、同一または相当部分を示している。
【0072】
図5Aに示すように、第1ないし第3のスパイクピン1’、2’、3’は、前記第1の実施例における第1ないし第3のスパイクピン1、2、3の位置とは若干異なる位置に配置されているが、これらはいずれも図3または図4中の斜線領域内の位置に配置されている。
【0073】
また、この第4の実施例では、前記第1の実施例におけるスパイクピン8に相当するスパイクピンは設けられておらず、他のスパイクピンの位置も前記第1の実施例とは若干異なっている。スパイクピン4’、5’は、第1ないし第3のスパイクピン1’、2’、3’と同様に、載頭円錐形状を有している(図5C参照)。
【0074】
なお、第1ないし第3のスパイクピン1’、2’、3’のソール接地底面S’からの露出部分の長さは、残りのスパイクピン4’、5’のソール接地底面S’からの露出部分の長さよりも短くなっており(図5C参照)。また、第1ないし第3のスパイクピン1’、2’、3’の各設置位置を頂点とする三角形状領域の剛性は、その周囲の領域の剛性と同等かまたはこれよりも高くなっている。すなわち、図5Aおよび図5Bに示すように、第1ないし第3のスパイクピン1’、2’、3’による三角形状領域を含むハニカム構造部は、その前側の薄肉領域である薄肉部S’に比べて肉厚の厚い厚肉部S’となっている。
<他の実施例>
前記各実施例では、第1ないし第3のスパイクピンが載頭円錐形状を有している例を示したが、本発明は、第1ないし第3のスパイクピンが、ソール接地底面からの露出部分の基端側に円柱形状部を有している場合にも同様に適用できる。
【0075】
また、本発明は、第1ないし第3のスパイクピンが、他のスパイクピンと同様に、ソール接地底面からの露出部分において先端側が小形となる段差部を有している場合にも同様に適用できる。
【0076】
この場合においても、接地時にスパイクピンがトラック面に刺さりやすくなるとともに、離地時にスパイクピンがトラック面から抜けやすくなるため、接地時間を短縮できる。また、スパイクピンがトラック面に刺さりやすくなることによって、スパイクピンからの突上げを緩和でき、その結果、トラック面からの反発力が小さくなるので、第1ないし第3のスパイクピンによる支持の安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1A】本発明の第1の実施例による陸上競技用スパイクシューズのソール底面部分図である。
【図1B】図1AのB−B線断面図である。
【図1C】図1AのC−C線断面図である。
【図2】前記スパイクシューズにおける第1ないし第3のスパイクピンの配置(図1A)を足圧分布図(図6)と併せて示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例による陸上競技用スパイクシューズにおける各スパイクピンの設置可能領域を足圧分布図(図6)と併せて示す図である。
【図4】本発明の第3の実施例による陸上競技用スパイクシューズにおける各スパイクピンの設置可能領域を足圧分布図(図6)と併せて示す図である。
【図5A】本発明の第4の実施例による陸上競技用スパイクシューズのソール底面図である。
【図5B】図5AのB−B線断面図である。
【図5C】図5AのC−C線断面図である。
【図6】陸上のスプリント競技時に競技者の足に作用する足圧を測定した結果を示す足圧分布図を足の骨格図とともに示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1〜3: 本発明による第1ないし第3のスパイクピン
4〜9: その他のスパイクピン

S: アウトソール
: 接地底面

MB: 第2指中足骨
MB: 第3指中足骨
PP: 第2指基節骨
PP: 第3指基節骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上競技用スパイクシューズにおいて、
ソールの接地底面に設けられるスパイクピンが、
着用者の足の第2指中足骨骨頭部の第1指側側縁部に相当する位置に配置された第1のスパイクピンと、
第3指中足骨骨頭部の第4指側側縁部に相当する位置に配置された第2のスパイクピンと、
第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部間の中間領域に配置された第3のスパイクピンとを備え、
前記第1、第2および第3のスパイクピンがこれらを頂点とする三角形を形成している、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項2】
陸上競技用スパイクシューズにおいて、
着用者の足の第1指中足骨骨頭中心位置(A)、第4指中足骨骨頭中心位置(B)、第2指基節骨骨頭部および第3指基節骨骨頭部の中間位置(C)をそれぞれ頂点とする大形の三角形(ABC)と、第2指中足骨骨頭中心位置(a)、第3指中足骨骨頭中心位置(b)、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部の中間位置(c)をそれぞれ頂点とする小形の三角形(abc)とで囲まれた帯状の三角形状領域に第1ないし第3のスパイクピンが配置されるとともに、
前記第1のスパイクピンが、前記三角形状領域内において、第2指中足骨骨頭中心位置(a)の後方でかつ第1指寄りの位置に配置されており、
前記第2のスパイクピンが、前記三角形状領域内において、第3指中足骨骨頭中心位置(b)の後方でかつ第4指寄りの位置に配置されており、
前記第3のスパイクピンが、前記三角形状領域内において、第2指基節骨骨底部および第3指基節骨骨底部の中間位置(c)の前方に配置されており、
前記第1、第2および第3のスパイクピンがこれらを頂点とする三角形を形成している、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項3】
陸上競技用スパイクシューズにおいて、
ソールの接地底面に設けられるスパイクピンが、シューズの表示サイズ足長をLとし、ソールの幅をWとするとき、
ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.18〜0.43)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.28〜0.31)×Lの位置に配置された第1のスパイクピンと、
ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.58〜0.74)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.29〜0.33)×Lの位置に配置された第2のスパイクピンと、
ソールの内甲側最突出端の位置から幅方向に(0.43〜0.58)×Wの位置かつ爪先先端から前後方向に(0.17〜0.28)×Lの位置に配置された第3のスパイクピンとを備え、
前記第1、第2および第3のスパイクピンがこれらを頂点とする三角形を形成している、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記三角形の領域が、スプリント競技の際に足圧が最も高くなる領域に対応して配置されている、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記三角形の領域には、その他のスパイクピンが設けられていない、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1、第2、第3のスパイクピンが、ソール接地底面からの露出部分において円柱形状を有している、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1、第2、第3のスパイクピンが、ソール接地底面からの露出部分において先端に向かうにしたがい小径となる載頭円錐形状を有している、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1、第2、第3のスパイクピンが、先端側が小形となる段差部を有している、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1、第2および第3のスパイクピンのソール接地底面からの長さが、ソール接地底面に設けられるその他のスパイクピンのソール接地底面からの長さと等しいかまたはこれよりも短くなっている、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1、第2および第3のスパイクピンの外径が、ソール接地底面に設けられるその他のスパイクピンの外径と等しいかまたはこれよりも小さくなっている、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1、第2および第3のスパイクピンにより形成される前記三角形の領域の剛性が、その周囲の領域の剛性と同等かまたはこれよりも高くなっている、
ことを特徴とする陸上競技用スパイクシューズ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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