説明

階段構造および建物

【課題】4層、2.5階建ての建物に設ける階段構造において、階段の上方が開放された階段構造およびこの階段構造を備えた建物を提供する。
【解決手段】1階から2.5階にかけて設けられた平面視矩形状の階段室5と、階段室5において、1.5階、2階、2.5階にそれぞれ配置された3つの踊り場7〜9と、上下に隣り合う踊り場間に設けられた2つの階段および1階床1MFと1.5階の踊り場7との間に設けられた1つの階段の合計3つの階段10〜12とを備え、階段10〜12および踊り場7〜9は平面視において、前記階段室5の中央部の周囲に配置されており、前記階段10〜12は上下に重ならないように配置されているので、階段10〜12の上方を開放することができ、通風性や採光性に優れるとともに、階段10〜12を昇降する人が圧迫感を感じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4層、2.5階建ての建物に設けられる階段構造および建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の各階の床の一部を、上下方向に半階ずらすことによって、多層構造とした建物の一例として特許文献1に記載のものが知られている。
この建物は、各階の床の一部を、上下方向に半階ずらすことによって、3階建てより一部が半階程度の高さ高くなった3.5階となるとともに、所定の天井高を有する部屋を設けることが可能な層を上下に6層設けた建物である。
【特許文献1】特開2000−192628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のような建物では、階段室内に上下の各層の床どうしを接続する階段があるために、通常の建物より階段の数が多くなり、さらに、階段が上下に重なって配置されているので、上下に隣り合う階段の距離が狭くなって、通風性や採光性が低下するとともに、階段を昇降する人が圧迫感を感じることがある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、4層、2.5階建ての建物に設ける階段構造において、階段の上方が開放された階段構造およびこの階段構造を備えた建物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図4に示すように、4層、2.5階建ての建物に設けられる階段構造であって、
1階から2.5階にかけて設けられた平面視矩形状の階段室5と、
前記階段室5において、1.5階、2階、2.5階にそれぞれ配置された3つの踊り場7〜9と、上下に隣り合う踊り場間に設けられた2つの階段11,12および1階床1MFと1.5階の踊り場7との間に設けられた1つの階段10の合計3つの階段10〜12とを備え、
前記階段10〜12および踊り場7〜9は平面視において、前記階段室5の中央部の周囲に配置されており、前記階段10〜12は上下に重ならないように配置されていることを特徴とする。
【0006】
ここで、4層、2.5階建ての建物とは、2階建ての建物の各階の床の一部を、上下方向に半階ずらすことによって、2階建てより一部が半階程度の高さ高くなった2.5階となるとともに、所定の天井高を有する部屋を設けることが可能な層を上下に4層設けた建物のことを意味する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、階段10〜12および踊り場7〜9は平面視において、階段室5の中央部の周囲に配置されており、前記階段10〜12は上下に重ならないように配置されているので、階段10〜12の上方を開放することができ、通風性や採光性に優れるとともに、階段10〜12を昇降する人が圧迫感を感じることがない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の階段構造において、
前記階段室5の平面視における中央部には、雛壇状の棚部21が2階から2.5階にかけて設けられており、この棚部21の最下段の棚21aが2.5階の床2MFの高さと等しいことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、2階の床2Fにある踊り場8と、2.5階に至る階段12の双方から棚部21に載置された装飾物を見ることができる。
また、棚部21の最下段21aの棚が2.5階の床2MFの高さと等しいので、棚部21の全ての棚21a〜21cは、2.5階に至る階段12の段板より高い位置にあり、よって、階段12を上り下りする最中に棚21a〜21cに載置した装飾物が傷付いたり破損したりするおそれがない。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の階段構造を備えた建物であって、
前記階段室5は、平面視において一辺を構成する壁5aが、建物の外壁6の一部を構成するようにして配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、階段室5は、平面視において一辺を構成する壁5aが、建物の外壁6の一部を構成するようにして配置されているので、階段は建物の外壁5aの近傍に配置されることになり、建物の中央部に配置されないので、建物内の部屋の配置を階段にさほど影響されることなく、比較的容易に行える。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の建物において、
前記階段室5の1.5階から2階に至る階段11の下が階段下収納18となっており、
この階段下収納18は建物の外壁5aに沿って配置されており、この外壁5aに前記階段下収納18への出入口18aが形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、階段室の1.5階から2階に至る階段11の下が階段下収納18となっているが、その階段11の下には1階から1.5階に至る階段10は配置されていないので、階段下収納18の上下の高さを大きくとれる。また、この階段下収納18に外部から出入口18aを介して出入りできるので、収納物の出し入れが容易となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の建物において、
前記階段室5の2階の踊り場8に隣接して、天井高が0.9〜1.4mの収納室23が配置されるとともに、前記2階の踊り場8に面して前記収納室23への出入口23aが設けられており、
前記階段室の2.5階の踊り場9に隣接して、部屋25が配置されるとともに、前記2.5階の踊り場9に面して前記部屋25への出入口25aが設けられており、
前記部屋25は前記収納室23の直上に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、2階の収納室23に2階の踊り場8から出入口23aを介して容易に出入りでき、また、天井高の低い収納室23の直上に部屋25が配置されているので、この部屋25の天井高を高くとれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1階から2.5階にかけて設けられた平面視矩形状の階段室に、1.5階、2階、2.5階にそれぞれ配置された3つの踊り場と、上下に隣り合う踊り場間および1階床と1.5階の踊り場との間に設けられた3つの階段とを備えており、前記階段および踊り場は平面視において、前記階段室の中央部の周囲に配置されており、前記階段は上下に重ならないように配置されているので、階段の上方を開放することができ、通風性や採光性に優れるとともに、階段を昇降する人が圧迫感を感じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る建物の一例を示すもので、1階の平面図、図2は同、1.5階〜2階にかけての平面図、図3は同、2階〜2.5階にかけての平面図である。また、図4は本発明に係る建物の概略構成を示す縦断面図である。
【0018】
本発明に係る建物は、図4に示すように、4層、2.5階建ての建物である。
つまり、1階の中間部に1階床1Fより半階ほど高い位置に1.5階床1MFが設けられ、2階の中間部に2階床2Fより半階ほど高い位置に2.5階床2MFが設けられることによって、上下に半階程度がラップする4層を有する2.5階建ての建物である。なお、2階の天井位置には床LFが設けられており、この床LFと天井との間はロフトLとなっている。
【0019】
前記建物には本発明に係る階段構造が設けられている。すなわちまず、建物の1階から2.5階にかけて階段室5が設けられている。この階段室5は、図1〜図3に示すように、平面視矩形状に形成されており、平面視において一辺を構成する壁5aが、建物の北側の外壁6の一部を構成するようにして配置されている。
前記階段室5において、1.5階には踊り場7が配置されており、2階には踊り場8が配置されており、2.5階には踊り場9が配置されている。
1階床1Fと、1.5階の踊り場7との間には階段10が設けられており、1.5階の踊り場7と2階の踊り場8との間には階段11が設けられており、2階の踊り場8と2.5階の踊り場9との間には階段12が設けられている。
【0020】
そして、前記階段10〜12および踊り場7〜9は平面視において、階段室5の中央部の周囲に配置されており、階段10〜12は上下に重ならないように配置されている。
すなわちまず、階段10は、図1に示すように、階段室5の西側の壁5bに沿って配置された直階段であり、キッチン13の近傍の1階床1Fと、階段室5の壁5bと壁5aとの角部に設けられた踊り場7とに接続されている。
また、階段11は、図2に示すように、階段室5の壁5aに沿って配置された直階段であり、前記踊り場7と、階段室5の南側の壁5cと壁5aとの間に東側の壁5dに沿って配置された踊り場8とに接続されている。
さらに、階段12は、図2および図3に示すように、階段室5の南側の壁5cに沿って配置された直階段であり、前記踊り場8と、階段室5の壁5bと壁5cとの角部に設けられた踊り場9とに接続されている。
【0021】
建物の1階(1層)には、図1に示すように、前記キッチン13の東側に玄関14が配置され、西側にリビング15が配置されている。リビング15の北側には、天井高が0.9〜1.4mの収納室16が配置されており、この収納室16にはリビング15に面して設けられた引戸を備えた出入口16aから出入りできるようになっている。また、建物の北側の外壁6には、引戸を備えた出入口16bが設けられており、この出入口16bから収納室16に外部から出入りできるようになっている。なお、収納室16の床は、1階床1Fと高さが等しい床16cと、この床16cより1段低い土間床16dとで構成されている。
【0022】
また、建物の1階(1層)において、前記階段室5には、階段下収納17,18と、トイレ19とが配置されている。
階段下収納17は、階段12と2階床2Fの下方に設けられたものであり、食品や食器等を収納しておくパントリーとして利用されている。この階段下収納17には、キッチン13の北側で、かつトイレ19の南側の部位から出入りできるようになっている。
また、階段下収納18は、1.5階から2階に至る階段11の下方に設けられたものであり、建物の外壁6でかつ階段室5を形成する壁5aに沿って配置されている。この壁5aには戸を備えた出入口18aが設けられており、この出入口18aから階段下収納18に外部から出入りできるようになっている。
【0023】
また、図2に示すように、建物の1.5階(2層)において、1.5階床1MFは、前記収納室16の直上に位置しており、この1.5階床1MF上は和室20となっている。この和室20の床は、前記踊り場7と高さが等しくなっており、踊り場7に面する出入口7aから和室20に出入りできるようになっている。
【0024】
図1〜図3に示すように、前記階段室5の平面視における中央部には、雛壇状の棚部21が2階から2.5階にかけて設けられている。つまり、棚部21は平面視において、前記階段10〜12、踊り場7〜9によって囲まれている。
また、棚部21は3段に形成されたものであり、その最下段の棚21aは2.5階床2MFの高さと等しくなっている。また、棚部21は、階段12の上り方向において、段状に高くなっていき、最上段の棚21cは2.5階の天井まで達しておらず、2.5階の略半分の高さに位置している。つまり、2階床2Fと等しい高さ位置にある踊り場8の床が、平面視において階段11,12間まで延出され、この床上に棚部21が設置されている。また、棚部21の前面は踊り場8に面しており、背面は踊り場7に面している。
したがって、棚部21の棚21a,21b,21cに載置される装飾物は、踊り場8や階段12、階段11から見ることができる。
【0025】
また、図2に示すように、建物の2階(3層)において、階段室5の南側には、天井高が0.9〜1.4mの収納室23が2階の踊り場8に隣接し配置されており、この収納室23には踊り場8に面して設けられた引戸を備えた出入口23aから出入りできるようになっている。
また、収納室23の東側には、寝室となる部屋24が配置されており、この部屋24と収納室23とを仕切る壁には、引戸を備えた出入口23bが設けられ、この出入口23bから収納室23の出入りできるようになっている。つまり、収納室23には、この出入口23bと前記出入口23aの2箇所から出入りできるようになっている。
なお、部屋24には、前記踊り場8に面して設けられた出入口24aから出入りできるようになっている。
【0026】
また、図3に示すように、建物の2.5階(4層)において、階段室5の南側には、居間となる部屋25が2.5階の踊り場9に隣接して配置されており、この部屋25には踊り場9に面して設けられた出入口25aから出入りできるようになっている。また、前記部屋25は前記収納室23の直上に配置されている。
また、部屋25の西側には子供部屋となる部屋27が配置されている。この部屋27の北側にはウォークインクローゼット27aが配置されている。
【0027】
本実施の形態によれば以下のような効果を得ることができる。
すなわちまず、1階から2.5階にかけて設けられた平面視矩形状の階段室5において、1.5階、2階、2.5階にそれぞれ配置された3つの踊り場7〜9と、上下に隣り合う踊り場間および1階床1Fと1.5階の踊り場7との間に設けられた3つの階段10〜12とを備えており、階段10〜12および踊り場7〜9は平面視において、階段室5の中央部の周囲に配置されており、前記階段10〜12は上下に重ならないように配置されているので、階段10〜12の上方を開放することができ、通風性や採光性に優れるとともに、階段10〜12を昇降する人が圧迫感を感じることがない。
【0028】
また、階段室5の平面視における中央部に、雛壇状の棚部21が2階から2.5階にかけて設けられており、この棚部21の最下段の棚21aが2.5階床2MFの高さと等しいので、2階床2Fにある踊り場8と、2.5階に至る階段12の双方から棚部21a〜21cに載置された装飾物を見ることができる。
また、棚部21の最下段の棚21aが2.5階床2MFの高さと等しいので、棚部21の全ての棚21a〜21cは、2.5階に至る階段12の段板より高い位置にあり、よって、階段12を上り下りする最中に棚21a〜21cに載置した装飾物が傷付いたり破損したりするおそれがない。
【0029】
さらに、階段室5は、平面視において一辺を構成する壁5aが、建物の外壁6の一部を構成するようにして配置されているので、階段10〜12は建物の外壁の近傍に配置されることになり、建物の中央部に配置されないので、建物内の部屋の配置を階段10〜12にさほど影響されることなく、比較的容易に行える。
加えて、階段室5の1.5階から2階に至る階段11の下が階段下収納18となっており、この階段下収納18は建物の外壁5aに沿って配置されており、この外壁5aに階段下収納18への出入18aが形成されているので、階段下収納18に外部から出入口18aを介して出入りできるので、収納物の出し入れが容易となる。また、階段11の下には1階から1.5階に至る階段10は配置されていないので、階段下収納18の上下の高さを大きくとれる。
【0030】
また、階段室5の2階の踊り場8に隣接して天井高の低い収納室23が配置されるとともに、2階の踊り場8に面して前記収納室23への出入口23aが設けられているので、収納室23に踊り場8から出入口23aを介して容易に出入りできる。
また、天井高の低い収納室23の直上に部屋25が配置されているので、この部屋25の天井高を高くとれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る建物の一例を示すもので、1階の平面図である。
【図2】同、1.5階〜2階にかけての平面図である。
【図3】同、2階〜2.5階にかけての平面図である。
【図4】本発明に係る建物の概略構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1F 1階床
1MF 1.5階床
2F 2階床
2MF 2.5階床
5 階段室
5a 壁
7〜9 踊り場
10〜12 階段
18 階段下収納
18a 出入口
23 収納室
25 部屋
25a 出入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4層、2.5階建ての建物に設けられる階段構造であって、
1階から2.5階にかけて設けられた平面視矩形状の階段室と、
前記階段室において、1.5階、2階、2.5階にそれぞれ配置された3つの踊り場と、上下に隣り合う踊り場間に設けられた2つの階段および1階床と1.5階の踊り場との間に設けられた1つの階段の合計3つの階段とを備え、
前記階段および踊り場は平面視において、前記階段室の中央部の周囲に配置されており、前記階段は上下に重ならないように配置されていることを特徴とする階段構造。
【請求項2】
請求項1に記載の階段構造において、
前記階段室の平面視における中央部には、雛壇状の棚部が2階から2.5階にかけて設けられており、この棚部の最下段の棚が2.5階の床の高さと等しいことを特徴とする階段構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の階段構造を備えた建物であって、
前記階段室は、平面視において一辺を構成する壁が、建物の外壁の一部を構成するようにして配置されていることを特徴とする建物。
【請求項4】
請求項3に記載の建物において、
前記階段室の1.5階から2階に至る階段の下が階段下収納となっており、
この階段下収納は建物の外壁に沿って配置されており、この外壁に前記階段下収納への出入口が形成されていることを特徴とする建物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の建物において、
前記階段室の2階の踊り場に隣接して、天井高が0.9〜1.4mの収納室が配置されるとともに、前記2階の踊り場に面して前記収納室への出入口が設けられており、
前記階段室の2.5階の踊り場に隣接して、部屋が配置されるとともに、前記2.5階の踊り場に面して前記部屋への出入口が設けられており、
前記部屋は前記収納室の直上に配置されていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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