集成材の防腐処理方法
【課題】複数のラミナを積層して構成される集成材に、その集成材を傷めず、重量を増加させず、かつその強度を十分に保ちつつ、防腐剤を、容易かつ十分に浸透させることのできる防腐処理方法を提供する。
【解決手段】ラミナ2の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝Gを形成して溝付きラミナ2aを形成し、溝付きラミナ2aの少なくとも片面に、溝Gを形成していないラミナ2である通常ラミナ2bを固着して集成材1を構成する。集成材1を、防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬し、集成材1の表面および溝Gからその内部に、防腐剤Sを浸透させる。
【解決手段】ラミナ2の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝Gを形成して溝付きラミナ2aを形成し、溝付きラミナ2aの少なくとも片面に、溝Gを形成していないラミナ2である通常ラミナ2bを固着して集成材1を構成する。集成材1を、防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬し、集成材1の表面および溝Gからその内部に、防腐剤Sを浸透させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集成材の防腐処理方法に関する。より詳細には、住宅等の建築に使用される集成材(積層材)に対して防腐処理を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材は、乾燥状態では長期間安定した状態を保つことができる。このことは、多くの木造建築物(例えば法隆寺)が1000年以上も建築当初の原形を維持していることから明らかである。
【0003】
しかし、木材は乾燥状態で優れた耐久性を発揮するものの、含水状態では、腐朽菌の作用によって腐朽が進み易いという欠点を有している。例えば、地面に打ち込んだ杭は含水するので、防腐処理が施されていなければ、シロアリの被害に加えて腐朽菌の作用によって短期間(数年)で腐朽し、多くの場合、その原形を失ってしまう。
【0004】
木材資源が豊富な時代は、例えば、住宅の土台角(土台用の角材)にはクリやヒノキなどの耐久性に優れた木材(優良材)を使用することで腐朽等に対応してきた。しかし、近年では木材資源の枯渇によってこうした優良材が高価となり、ベイツガ、ラジアータパインなどの優良材と比較して耐久性に劣る木材を使用せざるを得ない状況にある。
【0005】
こうした耐久性の劣る木材を土台角などに用いる場合には、腐朽等に対応すべく防腐処理を施すことが必要である。適切な防腐処理を行うことによって、優良材と同様に、長期間安定した状態を保つことができるからである。
【0006】
従来、木材(集成材を含む)に防腐処理を施す方法としては、木材を、加熱した薬液中で圧縮および開放を繰り返すもの(例えば、特許文献1参照)や、木材の内部まで防腐剤を均一に浸透させることのできるインサイジング加工方法(例えば、特許文献2、3参照)が開発されてきた。
インサイジング加工方法は、図11に示すように、木材20の表面に針状または爪状の刃物を押し当てて無数の刃物傷Cを付け、その刃物傷Cから防腐剤が内部へ浸透し易くするものである。
【0007】
さらに、木材に針を差し込み、その先端から防腐剤を注入する方法(例えば、特許文献4参照)や、木材に貫通孔を穿設して、その中に防腐剤を投入し、その成分を木材中に徐々に浸透させる方法(例えば、特許文献5参照)も開発されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−277204号公報
【特許文献2】特開昭56−69102号公報
【特許文献3】特開2002−283305号公報
【特許文献4】特開2002−187107号公報
【特許文献5】特開平11−172807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の防腐処理方法には、以下の問題がある。
(1)防腐剤の浸透が不十分である(特許文献1に記載の防腐処理方法)。
特許文献1に記載の方法は、肉厚の小さい木材に対しては有効であるが、肉厚の大きい木材(例えば、土台角(肉厚:105〜120mm))に対しては、防腐剤が内部へ十分に浸透し難い。
その結果、防腐剤が浸透した表面部分を残して、内部が腐朽して空洞化してしまう場合がある。
【0010】
(2)防腐処理に長時間を要する(特許文献1に記載の防腐処理方法)。
木材20(集成材1)の肉厚が大きい場合(例えば、120mm×120mmの角柱の場合)、図13に示すように、表面に付着した防腐剤Sを、木材20の中心部分まで長い距離(最短で60mm)を浸透させる必要がある。また、防腐剤Sを木材20の中心部まで浸透させた後、余分な溶媒を除去しなければならないが、この溶媒も長い距離(最短60mm)を逆方向に浸透させる必要がある。こうした作用は圧縮装置を使用して促進させることができるものの、通常、1〜2日の処理時間が必要となる。
【0011】
なお、防腐剤Sの浸透が不十分だと腐朽の恐れが生じる。また、溶媒の除去が不十分であると、居住者への健康被害が発生し、さらに、木材が乾燥に伴って変形するなどの問題が生じる。
【0012】
防腐剤の浸透性やその溶媒の除去を容易とするために、図12に示すように、木材20の中央部に通気孔Hを穿設することが考えられる。
しかし、この場合、少なくとも木材20全長の半分の長さを有する特殊なドリルが必要となり、また、作業も厄介である。さらに、ドリルの偏心によって通気孔Hの位置ずれが生じる場合もある。またさらに、後述する(7)のようにボルトを締める際に強度が不足するといった問題も発生する。
【0013】
(3)木材の重量が増加する(特許文献1、2、3、4に記載の防腐処理方法)。
防腐剤の処理後に溶媒を十分に除去すれば木材の重量の増加は1%以下であるが、除去が不十分な場合は重量が大幅に増加する。例えば、土台角は長さが4m程度の長大材であるので、運搬や保管がさらに困難となる。
【0014】
(4)木材の表面が荒れる(特許文献2、3の防腐処理方法)。
特許文献2および3に記載のインサイジング加工は、図11で示したように、木材20の表面に刃物で無数の傷を付けるために、土台角の表面に凹凸状の刃物傷Cが形成されてしまう。この刃物傷Cは深いので、表面を研磨および塗装しても平滑面にはならず、よって化粧性が悪い。
この刃物傷Cを目立たなくするためには、刃物を肉薄として刃物傷Cが細線となるように切込み加工することが考えられるが、そうすると木材20から刃物を抜いた瞬間に、刃物で形成した切込みが木材20の弾性によって閉塞しまう。その結果、防腐剤の浸透が不十分となったり、浸透に時間が掛かってしまう。
【0015】
(5)木材の強度が低下する(特許文献2、3に記載の防腐処理方法)。
通常、インサイジング加工の刃物は木材の表面部分の繊維を切断することになり、この表面部分は曲げモーメントが最も強く作用する部分であるため、木材の強度が低下してしまう(通常、数%〜20%低下する)。
【0016】
(6)防腐効果が遅くて不確実である(特許文献5に記載の防腐処理方法)。
特許文献5に記載の方法は、防腐剤の成分が木材に浸透するのに長期間を要するので、即効性がなく、従って、防腐剤の効果が発揮されるまでにシロアリや腐朽菌の被害に遭ってしまうといった危険性がある。また、木材の全体に防腐剤を確実に浸透させることできず、よって、その防腐効果も不確実である。
【0017】
(7)木材がボルトによって破損する(特許文献5に記載の防腐処理方法)。
例えば、図14および図15に示すように、土台角(木材20)に貫通孔Pを穿設すると、木材を布基礎に固定するためのアンカーボルト11aや、隣接する土台角同士を接合するための横方向ボルト11bを締付ける際に土台角が破損してしまい易い。また、これによって、ボルト11a,11bの緩みが発生してしまう。
【0018】
そこで本発明の目的とするところは、木材である集成材に、その集成材を傷めず、重量を増加させず、かつその強度を十分に保ちつつ、防腐剤を、容易かつ十分に浸透させることのできる防腐処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の集成材の防腐処理方法は、複数のラミナ(2)を積層して構成される集成材(1)を防腐処理する方法であって、
前記ラミナ(2)の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝(G)を形成して溝付きラミナ(2a)を形成し、前記溝付きラミナ(2a)の少なくとも片面に、溝(G)を形成していないラミナ(2)である通常ラミナ(2b)を固着して集成材(1)を構成した後、前記構成した集成材(1)を、防腐剤(S)を含む液剤(L)に浸漬して、前記集成材(1)の表面および前記溝(G)からその内部に、前記防腐剤(S)を浸透させることを特徴とする。
【0020】
なお、上記「繊維方向」とは、図16の矢印で示す方向(年輪に直交する方向)を言う(以下同じ)。
【0021】
また、請求項2に記載の集成材の防腐処理方法は、複数のラミナ(2)を積層して構成される集成材(1)を防腐処理する方法であって、
前記ラミナ(2)の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝(G)を形成して溝付きラミナ(2a)を形成し、前記溝付きラミナ(2a)を同一方向に複数枚積層し、その両面にそれぞれ、溝(G)を形成していないラミナ(2)である通常ラミナ(2b)を一枚または複数枚固着して集成材(1)を構成した後、前記構成した集成材(1)を、防腐剤(S)を含む液剤(L)に浸漬して、前記集成材(1)の表面および前記溝(G)からその内部に、前記防腐剤(S)を浸透させることを特徴とする。
【0022】
また、請求項3に記載の集成材の防腐処理方法は、前記複数の溝付きラミナ(2a)の間に、一枚または複数枚の通常ラミナ(2b)を介在させたことを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項4に記載の集成材の防腐処理方法は、複数のラミナ(2)を積層して構成される集成材(1)を防腐処理する方法であって、
前記ラミナ(2)の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝(G)を形成して溝付きラミナ(2a)を形成し、前記溝付きラミナ(2a)を、防腐剤(S)を含む液剤(L)に浸漬して、前記溝付きラミナ(2a)の表面および前記溝(G)からその内部に、前記防腐剤(S)を浸透させた後、前記防腐剤(S)を浸透させた溝付きラミナ(2a)を、複数枚固着するか、あるいは、前記防腐剤(S)を浸透させた溝付きラミナ(2a)に、溝(G)を形成していないラミナ(2)である通常ラミナ(2b)を一枚以上固着して、集成材(1)を構成することを特徴とする。
【0024】
またさらに、請求項5に記載の集成材の防腐処理方法は、前記溝(G)を、前記集成材(1)を固定するためのボルト(11)が貫通する部分を避けて形成したことを特徴とする。
【0025】
また、請求項6に記載の集成材の防腐処理方法は、前記集成材(1)が、布基礎(10)の上に固定される土台角、または柱であることを特徴とする。
【0026】
なお、カッコ内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1に記載の集成材の防腐処理方法によれば、以下の効果が発揮される。
(1)防腐剤が十分浸透する。
防腐剤を含む液剤に浸漬された集成材には溝が形成されているので、防腐剤が集成材の表面のみならずその溝からも浸透する。従って、防腐剤が集成材の全体に十分浸透する。
【0028】
(2)防腐処理時間が短い。
集成材に溝を設けているので、防腐剤の浸透距離を短くすることができる。また、防腐剤浸透後、溶媒の除去も同様に短くすることができる。集成材の肉厚が大きい場合(例えば、120mm×120mmの角柱の場合)、従来では最短で60mmの距離を浸透させる必要があったが、本発明では、溝の位置や数によって異なるものの、従来の1/2〜1/4程度まで短縮することができる。従って、防腐処理を短時間で行うことができる。
【0029】
(3)集成材の軽量化が可能である。
防腐剤の処理後における溶媒の除去を確実に行うことができる。従って、集成材の重量が溶媒の残存によって増加するといった事態を防止することができる。また、溝を形成したことによっても集成材の重量を軽減することができる(必要な強度を維持しつつ、最大約30%軽減することが可能である)。
【0030】
(4)表面の荒れがない。
インサイジング加工のように集成材に刃物傷を形成しないので、表面を凹凸のない平滑面のまま保つことができ、化粧性に優れる。従って、この集成材は、例えば、外から視覚される土台角として使用する場合に適している。
【0031】
(5)強度が低下しない。
溝は、集成材の表面部分(曲げモーメントが最も強く作用する部分)ではなく、その内部に形成しているので、集成材の強度を十分なものに維持することができる。また、溝は繊維方向に沿って形成しているので、複数の繊維を切断することがない。これによっても、集成材の強度を高く維持することができる。
【0032】
(6)防腐効果が迅速で確実である。
溝を形成した集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬するので、防腐剤を短時間で迅速に浸透させることができる。従って、防腐処理後、直ぐに防腐効果が発揮される。
【0033】
また、請求項2に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が発揮される。また、溝付きラミナを同一方向に複数枚積層し、その両面に、通常ラミナを一枚または複数枚固着して集成材を構成しているので、肉厚の集成材の中央部分に溝を配置することができる。従って、この肉厚の集成材にも効果的に防腐処理を施すことができる。
【0034】
また、請求項3に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、複数の溝付きラミナの間に、一枚または複数枚の通常ラミナを介在させたので、溝の位置を分散させることができる。これによっても、肉厚の集成材に効果的な防腐処理を施すことができる。
【0035】
さらに、請求項4に記載の集成材の防腐処理方法によれば、溝付きラミナに防腐剤を浸透させた後に複数枚固着したり、あるいは、防腐剤を浸透させた溝付きラミナに、溝を形成していないラミナである通常ラミナを一枚以上固着して、集成材を構成することができる。
【0036】
さらにまた、請求項5に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加えて、溝を、集成材を固定するためのボルトが貫通する部分を避けて形成したので、集成材がボルトを締結することによって破損することがない。また、ボルトの緩みも発生しない。
【0037】
また、請求項6に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項1乃至5に記載の発明の作用効果に加えて、集成材が、布基礎の上に固定される土台角、または柱であるので、この土台角または柱に防腐剤を容易かつ十分に浸透させることができる。また、この防腐処理は、土台角または柱を傷めず、その重量を増加させず、さらにその強度を維持したまま行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係る集成材の防腐処理方法について説明する。図1は、集成材1を構成するラミナ2(溝付きラミナ2a)を示す斜視図であり、図2は複数のラミナ2によって構成された集成材1を示す斜視図である。また、図3は集成材1を防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬した状態を示す斜視図である。
【0039】
本実施形態における集成材1は土台角(住宅の布基礎10に固定される土台)として使用されるものであり、複数のラミナ2を積層して構成したものである。なお、この集成材1は土台角の他に、柱や梁など他の部材として使用することもできる。
【0040】
本実施形態における集成材1は六枚のラミナ2を積層して構成したものであり、次のように防腐処理される。まず、図1に示すように、ラミナ2の各片面に、繊維方向に沿って二本の溝Gを形成して溝付きラミナ2aを形成する。この溝付きラミナ2aを二枚形成する。
次に、図2に示すように、その二枚の溝付きラミナ2aを、同一方向(ラミナ2および溝Gの配置方向が同一)に積層し、その両面に、溝Gを形成していないラミナ2である通常ラミナ2bを二枚ずつ同一方向(ラミナ2の配置方向が同一)に配置して固着する。これによって、集成材1を構成する。
【0041】
そして、図3に示すように、この集成材1を、浸漬容器Rに貯えた防腐剤Sを含む液剤Lに一定時間浸漬する。これによって、図4の矢印で示すように、防腐剤Sが、集成材1の表面および溝Gからその内部を含む全体に浸透し、防腐処理が施される。なお、液剤Lは、少なくとも防腐剤Sと溶媒を混合した液状体である。
【0042】
この集成材1は、土台角(120mm×120mm)として使用するものであり、従って、各ラミナ2の肉厚は20mmとしている。また、各ラミナ2に形成した二つの溝Gは、ラミナ2の横幅を三等分する位置に形成し、防腐剤Sが集成材1の内部に均等に浸透するようにしている。また、溝Gの深さは、ラミナ2の肉厚の1/2以上に設定している。この集成材1は、図2および図3に示すように、木口面から溝Gが視覚される。
【0043】
本実施形態に係る集成材の防腐処理方法は、溝Gを設けているので、防腐剤Sを集成材1の表面とこの溝Gから浸透させることができる。従って、集成材1の中心部を含む全体に、防腐剤Sを短時間で十分に浸透させることができる。また、溝Gを設けたことによって、防腐剤Sの浸透後における溶媒の除去を確実に行うことができるので、集成材1の軽量化を図ることができる。また、溝Gを設けたことによる軽量化も図ることができる。
【0044】
さらに、この防腐処理方法は、集成材1の表面部分を傷つけることなく行うので、その化粧性を良好に保つことができると共に、強度を低下させることがない。この強度は、溝Gを集成材1の繊維方向に沿って形成したことによっても保たれる。また、集成材1を防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬するので、防腐剤Sを迅速に浸透させることができ、防腐効果も短時間で発揮される。
【0045】
なお、上記実施形態に係る集成材(土台角)1を布基礎10に、図5に示すような状態でアンカーボルト11aで固定する場合、溝Gがアンカーボルト11aの締付けによって潰れる恐れはないが、この集成材1を隣接する集成材(土台角)1に羽子板ボルト等の横方向ボルト11bで、図6に示すような状態で固定する場合には、溝Gが潰れてしまう恐れがある。
【0046】
そうした場合、図7に示すように、集成材1の、少なくとも横方向ボルト11bを貫通する部分のラミナ2には溝Gを形成せず、その上下のラミナ2に溝Gを形成しておくことができる。すなわち、集成材1の横方向ボルト11bが貫通する部分を図7に示す構成とし、他の部分を図2に示す構成とする。こうすることで、横方向ボルト11bを強く締めすぎても溝Gが潰れる恐れがない。
【0047】
また、集成材1の全長を図7に示す構成とすることもできる。こうすることによって、図8に示すように、集成材1を布基礎10にアンカーボルト11aで固定する場合や、図9に示すように、隣接する集成材1と横方向ボルト11bで固定する場合にも、溝Gが潰れることがない。
【0048】
なお、溝Gの数と形成位置は、防腐剤Sの浸透程度によって決定するが、例えば、ボルト11による固定を考慮しなくても良い場合は、図10に示すように、多数の溝Gを設けることが可能である。
【0049】
また、防腐剤Sの浸透手段は特に限定されないが、溝Gの形成によって、防腐剤Sおよび溶媒の浸透距離が従来技術より短いので、一般的な減圧・加圧手段を用いて浸透させることもできるが、集成材1の材質や溝Gの数や位置によっては、単に、防腐剤Sを含む液剤L中に浸漬するのみでも良い。
【0050】
なお、本実施形態に係る集成材の防腐処理方法では、集成材1を構成した後、防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬して、集成材1の表面および溝Gからその内部に、防腐剤Sを浸透させるようにしたが、集成材を構成する前段階で防腐剤Sを浸透させるようにしてもよい。
すなわち、ラミナ2の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝Gを形成して溝付きラミナ2aを形成し、溝付きラミナ2aを、防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬して、溝付きラミナ2aの表面および溝Gからその内部に、防腐剤Sを浸透させる。その後、防腐剤Sを浸透させた溝付きラミナ2aを、複数枚固着するか、あるいは、防腐剤Sを浸透させた溝付きラミナ2aに、溝Gを形成していないラミナ2である通常ラミナ2bを一枚以上固着して、集成材1を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
防腐剤Sに代えて防虫剤を使用することで、防虫に関連する分野における適用が可能である。また、着色剤を使用することで、着色分野における適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態における集成材を構成するラミナ(溝付きラミナ)を示す斜視図である。
【図2】図1に示す複数のラミナによって構成された集成材を示す斜視図である。
【図3】図2に示す集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬した状態を示す斜視図である。
【図4】図3において防腐剤が集成材に浸透する状態を示す説明図である。
【図5】図2に示す集成材にアンカーボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図6】図2に示す集成材に横方向ボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明における集成材の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】図7に示す集成材にアンカーボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図9】図7に示す集成材に横方向ボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明のおける集成材のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】従来例に係るインサイジング加工方法における木材を示す斜視図である。
【図12】従来例に係る防腐処理方法の木材を示す斜視図である。
【図13】従来例に係る防腐処理方法において、防腐剤が木材に浸透する状態を示す説明図である。
【図14】従来例における木材を示す斜視図である(アンカーボルトを貫通した状態)。
【図15】従来例における木材を示す斜視図である(横方向ボルトを貫通した状態)。
【図16】木材(ラミナ)の繊維方向を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 集成材
2 ラミナ
2a 溝付きラミナ
2b 通常ラミナ
10 布基礎
11 ボルト
11a アンカーボルト
11b 横方向ボルト
20 木材
C 刃物傷
G 溝
H 通気孔
L 液剤
P 貫通孔
R 浸漬容器
S 防腐剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、集成材の防腐処理方法に関する。より詳細には、住宅等の建築に使用される集成材(積層材)に対して防腐処理を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材は、乾燥状態では長期間安定した状態を保つことができる。このことは、多くの木造建築物(例えば法隆寺)が1000年以上も建築当初の原形を維持していることから明らかである。
【0003】
しかし、木材は乾燥状態で優れた耐久性を発揮するものの、含水状態では、腐朽菌の作用によって腐朽が進み易いという欠点を有している。例えば、地面に打ち込んだ杭は含水するので、防腐処理が施されていなければ、シロアリの被害に加えて腐朽菌の作用によって短期間(数年)で腐朽し、多くの場合、その原形を失ってしまう。
【0004】
木材資源が豊富な時代は、例えば、住宅の土台角(土台用の角材)にはクリやヒノキなどの耐久性に優れた木材(優良材)を使用することで腐朽等に対応してきた。しかし、近年では木材資源の枯渇によってこうした優良材が高価となり、ベイツガ、ラジアータパインなどの優良材と比較して耐久性に劣る木材を使用せざるを得ない状況にある。
【0005】
こうした耐久性の劣る木材を土台角などに用いる場合には、腐朽等に対応すべく防腐処理を施すことが必要である。適切な防腐処理を行うことによって、優良材と同様に、長期間安定した状態を保つことができるからである。
【0006】
従来、木材(集成材を含む)に防腐処理を施す方法としては、木材を、加熱した薬液中で圧縮および開放を繰り返すもの(例えば、特許文献1参照)や、木材の内部まで防腐剤を均一に浸透させることのできるインサイジング加工方法(例えば、特許文献2、3参照)が開発されてきた。
インサイジング加工方法は、図11に示すように、木材20の表面に針状または爪状の刃物を押し当てて無数の刃物傷Cを付け、その刃物傷Cから防腐剤が内部へ浸透し易くするものである。
【0007】
さらに、木材に針を差し込み、その先端から防腐剤を注入する方法(例えば、特許文献4参照)や、木材に貫通孔を穿設して、その中に防腐剤を投入し、その成分を木材中に徐々に浸透させる方法(例えば、特許文献5参照)も開発されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−277204号公報
【特許文献2】特開昭56−69102号公報
【特許文献3】特開2002−283305号公報
【特許文献4】特開2002−187107号公報
【特許文献5】特開平11−172807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の防腐処理方法には、以下の問題がある。
(1)防腐剤の浸透が不十分である(特許文献1に記載の防腐処理方法)。
特許文献1に記載の方法は、肉厚の小さい木材に対しては有効であるが、肉厚の大きい木材(例えば、土台角(肉厚:105〜120mm))に対しては、防腐剤が内部へ十分に浸透し難い。
その結果、防腐剤が浸透した表面部分を残して、内部が腐朽して空洞化してしまう場合がある。
【0010】
(2)防腐処理に長時間を要する(特許文献1に記載の防腐処理方法)。
木材20(集成材1)の肉厚が大きい場合(例えば、120mm×120mmの角柱の場合)、図13に示すように、表面に付着した防腐剤Sを、木材20の中心部分まで長い距離(最短で60mm)を浸透させる必要がある。また、防腐剤Sを木材20の中心部まで浸透させた後、余分な溶媒を除去しなければならないが、この溶媒も長い距離(最短60mm)を逆方向に浸透させる必要がある。こうした作用は圧縮装置を使用して促進させることができるものの、通常、1〜2日の処理時間が必要となる。
【0011】
なお、防腐剤Sの浸透が不十分だと腐朽の恐れが生じる。また、溶媒の除去が不十分であると、居住者への健康被害が発生し、さらに、木材が乾燥に伴って変形するなどの問題が生じる。
【0012】
防腐剤の浸透性やその溶媒の除去を容易とするために、図12に示すように、木材20の中央部に通気孔Hを穿設することが考えられる。
しかし、この場合、少なくとも木材20全長の半分の長さを有する特殊なドリルが必要となり、また、作業も厄介である。さらに、ドリルの偏心によって通気孔Hの位置ずれが生じる場合もある。またさらに、後述する(7)のようにボルトを締める際に強度が不足するといった問題も発生する。
【0013】
(3)木材の重量が増加する(特許文献1、2、3、4に記載の防腐処理方法)。
防腐剤の処理後に溶媒を十分に除去すれば木材の重量の増加は1%以下であるが、除去が不十分な場合は重量が大幅に増加する。例えば、土台角は長さが4m程度の長大材であるので、運搬や保管がさらに困難となる。
【0014】
(4)木材の表面が荒れる(特許文献2、3の防腐処理方法)。
特許文献2および3に記載のインサイジング加工は、図11で示したように、木材20の表面に刃物で無数の傷を付けるために、土台角の表面に凹凸状の刃物傷Cが形成されてしまう。この刃物傷Cは深いので、表面を研磨および塗装しても平滑面にはならず、よって化粧性が悪い。
この刃物傷Cを目立たなくするためには、刃物を肉薄として刃物傷Cが細線となるように切込み加工することが考えられるが、そうすると木材20から刃物を抜いた瞬間に、刃物で形成した切込みが木材20の弾性によって閉塞しまう。その結果、防腐剤の浸透が不十分となったり、浸透に時間が掛かってしまう。
【0015】
(5)木材の強度が低下する(特許文献2、3に記載の防腐処理方法)。
通常、インサイジング加工の刃物は木材の表面部分の繊維を切断することになり、この表面部分は曲げモーメントが最も強く作用する部分であるため、木材の強度が低下してしまう(通常、数%〜20%低下する)。
【0016】
(6)防腐効果が遅くて不確実である(特許文献5に記載の防腐処理方法)。
特許文献5に記載の方法は、防腐剤の成分が木材に浸透するのに長期間を要するので、即効性がなく、従って、防腐剤の効果が発揮されるまでにシロアリや腐朽菌の被害に遭ってしまうといった危険性がある。また、木材の全体に防腐剤を確実に浸透させることできず、よって、その防腐効果も不確実である。
【0017】
(7)木材がボルトによって破損する(特許文献5に記載の防腐処理方法)。
例えば、図14および図15に示すように、土台角(木材20)に貫通孔Pを穿設すると、木材を布基礎に固定するためのアンカーボルト11aや、隣接する土台角同士を接合するための横方向ボルト11bを締付ける際に土台角が破損してしまい易い。また、これによって、ボルト11a,11bの緩みが発生してしまう。
【0018】
そこで本発明の目的とするところは、木材である集成材に、その集成材を傷めず、重量を増加させず、かつその強度を十分に保ちつつ、防腐剤を、容易かつ十分に浸透させることのできる防腐処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の集成材の防腐処理方法は、複数のラミナ(2)を積層して構成される集成材(1)を防腐処理する方法であって、
前記ラミナ(2)の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝(G)を形成して溝付きラミナ(2a)を形成し、前記溝付きラミナ(2a)の少なくとも片面に、溝(G)を形成していないラミナ(2)である通常ラミナ(2b)を固着して集成材(1)を構成した後、前記構成した集成材(1)を、防腐剤(S)を含む液剤(L)に浸漬して、前記集成材(1)の表面および前記溝(G)からその内部に、前記防腐剤(S)を浸透させることを特徴とする。
【0020】
なお、上記「繊維方向」とは、図16の矢印で示す方向(年輪に直交する方向)を言う(以下同じ)。
【0021】
また、請求項2に記載の集成材の防腐処理方法は、複数のラミナ(2)を積層して構成される集成材(1)を防腐処理する方法であって、
前記ラミナ(2)の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝(G)を形成して溝付きラミナ(2a)を形成し、前記溝付きラミナ(2a)を同一方向に複数枚積層し、その両面にそれぞれ、溝(G)を形成していないラミナ(2)である通常ラミナ(2b)を一枚または複数枚固着して集成材(1)を構成した後、前記構成した集成材(1)を、防腐剤(S)を含む液剤(L)に浸漬して、前記集成材(1)の表面および前記溝(G)からその内部に、前記防腐剤(S)を浸透させることを特徴とする。
【0022】
また、請求項3に記載の集成材の防腐処理方法は、前記複数の溝付きラミナ(2a)の間に、一枚または複数枚の通常ラミナ(2b)を介在させたことを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項4に記載の集成材の防腐処理方法は、複数のラミナ(2)を積層して構成される集成材(1)を防腐処理する方法であって、
前記ラミナ(2)の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝(G)を形成して溝付きラミナ(2a)を形成し、前記溝付きラミナ(2a)を、防腐剤(S)を含む液剤(L)に浸漬して、前記溝付きラミナ(2a)の表面および前記溝(G)からその内部に、前記防腐剤(S)を浸透させた後、前記防腐剤(S)を浸透させた溝付きラミナ(2a)を、複数枚固着するか、あるいは、前記防腐剤(S)を浸透させた溝付きラミナ(2a)に、溝(G)を形成していないラミナ(2)である通常ラミナ(2b)を一枚以上固着して、集成材(1)を構成することを特徴とする。
【0024】
またさらに、請求項5に記載の集成材の防腐処理方法は、前記溝(G)を、前記集成材(1)を固定するためのボルト(11)が貫通する部分を避けて形成したことを特徴とする。
【0025】
また、請求項6に記載の集成材の防腐処理方法は、前記集成材(1)が、布基礎(10)の上に固定される土台角、または柱であることを特徴とする。
【0026】
なお、カッコ内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1に記載の集成材の防腐処理方法によれば、以下の効果が発揮される。
(1)防腐剤が十分浸透する。
防腐剤を含む液剤に浸漬された集成材には溝が形成されているので、防腐剤が集成材の表面のみならずその溝からも浸透する。従って、防腐剤が集成材の全体に十分浸透する。
【0028】
(2)防腐処理時間が短い。
集成材に溝を設けているので、防腐剤の浸透距離を短くすることができる。また、防腐剤浸透後、溶媒の除去も同様に短くすることができる。集成材の肉厚が大きい場合(例えば、120mm×120mmの角柱の場合)、従来では最短で60mmの距離を浸透させる必要があったが、本発明では、溝の位置や数によって異なるものの、従来の1/2〜1/4程度まで短縮することができる。従って、防腐処理を短時間で行うことができる。
【0029】
(3)集成材の軽量化が可能である。
防腐剤の処理後における溶媒の除去を確実に行うことができる。従って、集成材の重量が溶媒の残存によって増加するといった事態を防止することができる。また、溝を形成したことによっても集成材の重量を軽減することができる(必要な強度を維持しつつ、最大約30%軽減することが可能である)。
【0030】
(4)表面の荒れがない。
インサイジング加工のように集成材に刃物傷を形成しないので、表面を凹凸のない平滑面のまま保つことができ、化粧性に優れる。従って、この集成材は、例えば、外から視覚される土台角として使用する場合に適している。
【0031】
(5)強度が低下しない。
溝は、集成材の表面部分(曲げモーメントが最も強く作用する部分)ではなく、その内部に形成しているので、集成材の強度を十分なものに維持することができる。また、溝は繊維方向に沿って形成しているので、複数の繊維を切断することがない。これによっても、集成材の強度を高く維持することができる。
【0032】
(6)防腐効果が迅速で確実である。
溝を形成した集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬するので、防腐剤を短時間で迅速に浸透させることができる。従って、防腐処理後、直ぐに防腐効果が発揮される。
【0033】
また、請求項2に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が発揮される。また、溝付きラミナを同一方向に複数枚積層し、その両面に、通常ラミナを一枚または複数枚固着して集成材を構成しているので、肉厚の集成材の中央部分に溝を配置することができる。従って、この肉厚の集成材にも効果的に防腐処理を施すことができる。
【0034】
また、請求項3に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、複数の溝付きラミナの間に、一枚または複数枚の通常ラミナを介在させたので、溝の位置を分散させることができる。これによっても、肉厚の集成材に効果的な防腐処理を施すことができる。
【0035】
さらに、請求項4に記載の集成材の防腐処理方法によれば、溝付きラミナに防腐剤を浸透させた後に複数枚固着したり、あるいは、防腐剤を浸透させた溝付きラミナに、溝を形成していないラミナである通常ラミナを一枚以上固着して、集成材を構成することができる。
【0036】
さらにまた、請求項5に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加えて、溝を、集成材を固定するためのボルトが貫通する部分を避けて形成したので、集成材がボルトを締結することによって破損することがない。また、ボルトの緩みも発生しない。
【0037】
また、請求項6に記載の集成材の防腐処理方法によれば、請求項1乃至5に記載の発明の作用効果に加えて、集成材が、布基礎の上に固定される土台角、または柱であるので、この土台角または柱に防腐剤を容易かつ十分に浸透させることができる。また、この防腐処理は、土台角または柱を傷めず、その重量を増加させず、さらにその強度を維持したまま行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係る集成材の防腐処理方法について説明する。図1は、集成材1を構成するラミナ2(溝付きラミナ2a)を示す斜視図であり、図2は複数のラミナ2によって構成された集成材1を示す斜視図である。また、図3は集成材1を防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬した状態を示す斜視図である。
【0039】
本実施形態における集成材1は土台角(住宅の布基礎10に固定される土台)として使用されるものであり、複数のラミナ2を積層して構成したものである。なお、この集成材1は土台角の他に、柱や梁など他の部材として使用することもできる。
【0040】
本実施形態における集成材1は六枚のラミナ2を積層して構成したものであり、次のように防腐処理される。まず、図1に示すように、ラミナ2の各片面に、繊維方向に沿って二本の溝Gを形成して溝付きラミナ2aを形成する。この溝付きラミナ2aを二枚形成する。
次に、図2に示すように、その二枚の溝付きラミナ2aを、同一方向(ラミナ2および溝Gの配置方向が同一)に積層し、その両面に、溝Gを形成していないラミナ2である通常ラミナ2bを二枚ずつ同一方向(ラミナ2の配置方向が同一)に配置して固着する。これによって、集成材1を構成する。
【0041】
そして、図3に示すように、この集成材1を、浸漬容器Rに貯えた防腐剤Sを含む液剤Lに一定時間浸漬する。これによって、図4の矢印で示すように、防腐剤Sが、集成材1の表面および溝Gからその内部を含む全体に浸透し、防腐処理が施される。なお、液剤Lは、少なくとも防腐剤Sと溶媒を混合した液状体である。
【0042】
この集成材1は、土台角(120mm×120mm)として使用するものであり、従って、各ラミナ2の肉厚は20mmとしている。また、各ラミナ2に形成した二つの溝Gは、ラミナ2の横幅を三等分する位置に形成し、防腐剤Sが集成材1の内部に均等に浸透するようにしている。また、溝Gの深さは、ラミナ2の肉厚の1/2以上に設定している。この集成材1は、図2および図3に示すように、木口面から溝Gが視覚される。
【0043】
本実施形態に係る集成材の防腐処理方法は、溝Gを設けているので、防腐剤Sを集成材1の表面とこの溝Gから浸透させることができる。従って、集成材1の中心部を含む全体に、防腐剤Sを短時間で十分に浸透させることができる。また、溝Gを設けたことによって、防腐剤Sの浸透後における溶媒の除去を確実に行うことができるので、集成材1の軽量化を図ることができる。また、溝Gを設けたことによる軽量化も図ることができる。
【0044】
さらに、この防腐処理方法は、集成材1の表面部分を傷つけることなく行うので、その化粧性を良好に保つことができると共に、強度を低下させることがない。この強度は、溝Gを集成材1の繊維方向に沿って形成したことによっても保たれる。また、集成材1を防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬するので、防腐剤Sを迅速に浸透させることができ、防腐効果も短時間で発揮される。
【0045】
なお、上記実施形態に係る集成材(土台角)1を布基礎10に、図5に示すような状態でアンカーボルト11aで固定する場合、溝Gがアンカーボルト11aの締付けによって潰れる恐れはないが、この集成材1を隣接する集成材(土台角)1に羽子板ボルト等の横方向ボルト11bで、図6に示すような状態で固定する場合には、溝Gが潰れてしまう恐れがある。
【0046】
そうした場合、図7に示すように、集成材1の、少なくとも横方向ボルト11bを貫通する部分のラミナ2には溝Gを形成せず、その上下のラミナ2に溝Gを形成しておくことができる。すなわち、集成材1の横方向ボルト11bが貫通する部分を図7に示す構成とし、他の部分を図2に示す構成とする。こうすることで、横方向ボルト11bを強く締めすぎても溝Gが潰れる恐れがない。
【0047】
また、集成材1の全長を図7に示す構成とすることもできる。こうすることによって、図8に示すように、集成材1を布基礎10にアンカーボルト11aで固定する場合や、図9に示すように、隣接する集成材1と横方向ボルト11bで固定する場合にも、溝Gが潰れることがない。
【0048】
なお、溝Gの数と形成位置は、防腐剤Sの浸透程度によって決定するが、例えば、ボルト11による固定を考慮しなくても良い場合は、図10に示すように、多数の溝Gを設けることが可能である。
【0049】
また、防腐剤Sの浸透手段は特に限定されないが、溝Gの形成によって、防腐剤Sおよび溶媒の浸透距離が従来技術より短いので、一般的な減圧・加圧手段を用いて浸透させることもできるが、集成材1の材質や溝Gの数や位置によっては、単に、防腐剤Sを含む液剤L中に浸漬するのみでも良い。
【0050】
なお、本実施形態に係る集成材の防腐処理方法では、集成材1を構成した後、防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬して、集成材1の表面および溝Gからその内部に、防腐剤Sを浸透させるようにしたが、集成材を構成する前段階で防腐剤Sを浸透させるようにしてもよい。
すなわち、ラミナ2の片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝Gを形成して溝付きラミナ2aを形成し、溝付きラミナ2aを、防腐剤Sを含む液剤Lに浸漬して、溝付きラミナ2aの表面および溝Gからその内部に、防腐剤Sを浸透させる。その後、防腐剤Sを浸透させた溝付きラミナ2aを、複数枚固着するか、あるいは、防腐剤Sを浸透させた溝付きラミナ2aに、溝Gを形成していないラミナ2である通常ラミナ2bを一枚以上固着して、集成材1を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
防腐剤Sに代えて防虫剤を使用することで、防虫に関連する分野における適用が可能である。また、着色剤を使用することで、着色分野における適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態における集成材を構成するラミナ(溝付きラミナ)を示す斜視図である。
【図2】図1に示す複数のラミナによって構成された集成材を示す斜視図である。
【図3】図2に示す集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬した状態を示す斜視図である。
【図4】図3において防腐剤が集成材に浸透する状態を示す説明図である。
【図5】図2に示す集成材にアンカーボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図6】図2に示す集成材に横方向ボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明における集成材の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】図7に示す集成材にアンカーボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図9】図7に示す集成材に横方向ボルトを貫通した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明のおける集成材のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】従来例に係るインサイジング加工方法における木材を示す斜視図である。
【図12】従来例に係る防腐処理方法の木材を示す斜視図である。
【図13】従来例に係る防腐処理方法において、防腐剤が木材に浸透する状態を示す説明図である。
【図14】従来例における木材を示す斜視図である(アンカーボルトを貫通した状態)。
【図15】従来例における木材を示す斜視図である(横方向ボルトを貫通した状態)。
【図16】木材(ラミナ)の繊維方向を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 集成材
2 ラミナ
2a 溝付きラミナ
2b 通常ラミナ
10 布基礎
11 ボルト
11a アンカーボルト
11b 横方向ボルト
20 木材
C 刃物傷
G 溝
H 通気孔
L 液剤
P 貫通孔
R 浸漬容器
S 防腐剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラミナを積層して構成される集成材を防腐処理する方法であって、
前記ラミナの片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝を形成して溝付きラミナを形成し、
前記溝付きラミナの少なくとも片面に、溝を形成していないラミナである通常ラミナを固着して集成材を構成した後、
前記構成した集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬して、前記集成材の表面および前記溝からその内部に、前記防腐剤を浸透させることを特徴とする集成材の防腐処理方法。
【請求項2】
複数のラミナを積層して構成される集成材を防腐処理する方法であって、
前記ラミナの片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝を形成して溝付きラミナを形成し、
前記溝付きラミナを同一方向に複数枚積層し、その両面にそれぞれ、溝を形成していないラミナである通常ラミナを一枚または複数枚固着して集成材を構成した後、
前記構成した集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬して、前記集成材の表面および前記溝からその内部に、前記防腐剤を浸透させることを特徴とする集成材の防腐処理方法。
【請求項3】
前記複数の溝付きラミナの間に、一枚または複数枚の通常ラミナを介在させたことを特徴とする請求項2に記載の集成材の防腐処理方法。
【請求項4】
複数のラミナを積層して構成される集成材を防腐処理する方法であって、
前記ラミナの片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝を形成して溝付きラミナを形成し、
前記溝付きラミナを、防腐剤を含む液剤に浸漬して、前記溝付きラミナの表面および前記溝からその内部に、前記防腐剤を浸透させた後、
前記防腐剤を浸透させた溝付きラミナを、複数枚固着するか、あるいは、前記防腐剤を浸透させた溝付きラミナに、溝を形成していないラミナである通常ラミナを一枚以上固着して、集成材を構成することを特徴とする集成材の防腐処理方法。
【請求項5】
前記溝を、前記集成材を固定するためのボルトが貫通する部分を避けて形成したことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の集成材の防腐処理方法。
【請求項6】
前記集成材が、布基礎の上に固定される土台角、または柱であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の集成材の防腐処理方法。
【請求項1】
複数のラミナを積層して構成される集成材を防腐処理する方法であって、
前記ラミナの片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝を形成して溝付きラミナを形成し、
前記溝付きラミナの少なくとも片面に、溝を形成していないラミナである通常ラミナを固着して集成材を構成した後、
前記構成した集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬して、前記集成材の表面および前記溝からその内部に、前記防腐剤を浸透させることを特徴とする集成材の防腐処理方法。
【請求項2】
複数のラミナを積層して構成される集成材を防腐処理する方法であって、
前記ラミナの片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝を形成して溝付きラミナを形成し、
前記溝付きラミナを同一方向に複数枚積層し、その両面にそれぞれ、溝を形成していないラミナである通常ラミナを一枚または複数枚固着して集成材を構成した後、
前記構成した集成材を、防腐剤を含む液剤に浸漬して、前記集成材の表面および前記溝からその内部に、前記防腐剤を浸透させることを特徴とする集成材の防腐処理方法。
【請求項3】
前記複数の溝付きラミナの間に、一枚または複数枚の通常ラミナを介在させたことを特徴とする請求項2に記載の集成材の防腐処理方法。
【請求項4】
複数のラミナを積層して構成される集成材を防腐処理する方法であって、
前記ラミナの片面に、繊維方向に沿って一本または複数本の溝を形成して溝付きラミナを形成し、
前記溝付きラミナを、防腐剤を含む液剤に浸漬して、前記溝付きラミナの表面および前記溝からその内部に、前記防腐剤を浸透させた後、
前記防腐剤を浸透させた溝付きラミナを、複数枚固着するか、あるいは、前記防腐剤を浸透させた溝付きラミナに、溝を形成していないラミナである通常ラミナを一枚以上固着して、集成材を構成することを特徴とする集成材の防腐処理方法。
【請求項5】
前記溝を、前記集成材を固定するためのボルトが貫通する部分を避けて形成したことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の集成材の防腐処理方法。
【請求項6】
前記集成材が、布基礎の上に固定される土台角、または柱であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の集成材の防腐処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−247494(P2010−247494A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102004(P2009−102004)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】
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