説明

雨水ます用フィルター

【課題】小径の合成樹脂製の雨水ます等においても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口のみを覆うことができる簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することを目的とする。
【解決手段】雨水ますの中で位置決めするための、少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる第1及び第2の位置決め手段と、第1及び第2の位置決め手段との間で内部から流出口のみを覆うように第1及び第2の位置決め手段により直接的に又は間接的に支持されるフィルター本体と、フィルター本体の過剰な変形を防止し且つ雨水ますに対する着脱を容易にするために第1の位置決め手段の対抗した2点の間で連結される吊り手手段と、そして雨水ますの内壁面からの反力を受けている時はフィルター表面から引っ込み、そうでない時は突出するフィルター本体の回転止め手段とからなる雨水ます用フィルターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等を集めて排水するための雨水ますに使用されるフィルターに関し、特に雨水ますの流出口へ設置するために、上下1対の棒状の位置決め手段の間でその位置決め手段により支持されているフィルター本体において、前記フィルター本体の表面には、一の端をフィルター本体又は第1若しくは第2の位置決め手段に固定された固定端とし他の端をフィルター本体の表面から突出した自由端とすることにより、弾性変形可能な片持ち支持構造を形成するフィルター本体の回転止め手段が設けられた雨水ます用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
雨水ますでは、雨水ますの外部又は上流から砂利や泥、木の葉などの異物が流入してくるため、コンクリート製の大型雨水ますでは、例えば実開昭59−80582号公報(特許文献1)、特開平7−82790号公報(特許文献2)および特開平8−296271号公報(特許文献3)に開示されているように、その開口部や浸透出口などにかご型のフィルターを設け、若しくはその流出口にキャップ式のドーム型フィルター等を設けることにより、雨水ますにおいて前記異物を除去する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、かご型のフィルターは上から下へと鉛直方向に流れる排水の異物除去には適しているが、水平方向に流れる排水の異物除去に対しては殆んど効果的に機能することができず、実際には有益に利用できるものではなかった。このため、水平方向の流れを形成する雨水ますの流出口などに対しては、フィルターの背面に数本の脚が伸びたキャップ式のドーム型フィルター等を使用して、フィルターの脚を流出口の中に挿入して固定することより使用していた(特許文献1の図1,2参照)。
【0004】
しかしながら、水平方向の流れを形成する雨水ますの流出口は、一般に雨水ますの上部開口部から遠く離れた深い位置に配置されているため、上述のようなフィルターの脚を流出口の中に挿入することにより固定しなければならないキャップ式のドーム型のフィルタータイプでは、流出口への着脱が極めて困難となり作業性が悪くなるという問題があった。特に、大径のコンクリート製の大型雨水ますの場合、作業者が雨水ますの中へ入ることにより上記ドーム型フィルターの着脱が可能となる場合があるが、作業者が中へ入ることができない小径の合成樹脂製の雨水ますでは、実質上、上述のような脚付きのフィルターを使用することができなかった。
【0005】
なお、雨水ますの流入口に対してフィルターを設置すると、流入口へ接続される枝管の出口(雨水ますとの接続部)で配管詰まり生じ易くなるため、通常、雨水ますの流入口にはフィルターは設置されない。
【0006】
一方、小径の合成樹脂製の雨水ますでは、特開平8−311983号公報(特許文献4)に記載されているように雨水ますの外部又は上流から流入してくる砂利や泥、木の葉などの異物を除去するため、異物の通過を阻止する程度の間隙を有する網目又はスリット等が適用されたバケツ状の泥溜め部およびその中に土砂捕捉用バスケットを配置する技術が知られている。
【0007】
しかしながら、このようなタイプの小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますにおいても、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物を更に下流側の排水設備へ排出するのを防止するためのフィルターは使用されておらず、また、雨水ますの流出口に簡単に着脱でき、かつ上述したような従来の問題点を克服したフィルター技術を教えるものではなかった。
【特許文献1】実開昭59−80582号公報
【特許文献2】特開平7−82790号公報
【特許文献3】特開平8−296271号公報
【特許文献4】特開平8−311983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物が更に下流側の排水設備へ排出されるのを防止する目的で、小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますにおいても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口のみを覆うことができる、簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者等は、従来技術のように雨水ますの流出口毎に脚付きのキャップ式ドーム型フィルターを適用するのではなく、フィルター本体を雨水ますの内壁面の形状に適合させて、雨水ますの内壁面に沿うように雨水ますの上部開口部から出し入れ可能とすることにより、雨水ますの流出口のみを覆って装着することが可能な簡易構造の雨水ます用フィルターを発明した。
【0010】
また、この場合、フィルターの着脱性のみを考慮してフィルター本体を雨水ますの内壁面と略同じ曲率を有する筒型形状とすると、フィルターは強力な排水の流れや一時的にフィルター表面に付着した枯葉等の異物により排水の抵抗を受けて周方向へ回転してしまう(流出口からズレてしまう)ことが考えられる。そこで、本発明者等は、フィルター本体の着脱のための上下方向の動きは規制しないが周方向の回転はしっかりと規制することができるフィルター本体の回転止め手段を開発し、回転止め構造を有する本発明の雨水ます用フィルターを完成させるに至った。
【0011】
具体的には、本発明によれば、雨水ますの中で位置決めするための、少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる第1の位置決め手段およびその下側に配置される第2の位置決め手段と、前記第1の位置決め手段と第2の位置決め手段との間で前記雨水ますの内部から流出口のみを覆うように、前記第1の位置決め手段および第2の位置決め手段により直接的に又は間接的に支持される網目状又はスリット状のフィルター本体と、前記フィルター本体の過剰な変形を防止し、且つ雨水ますに対する着脱を容易にするために前記第1の位置決め手段の対抗する2点の間で連結される吊り手手段と、そしてフィルター本体の回転を止めるための手段であって、前記フィルター本体が前記雨水ますの内壁面と相対する時、前記内壁面からの反力を受けて前記フィルター本体の表面へ向けて引っ込んでおり、そして前記フィルター本体が前記雨水ますの流出口と相対する時、前記フィルター本体の表面から前記流出口の中へ向けて突出することにより、前記フィルター本体の着脱のための上下方向の動きは規制しないが周方向の回転は規制する、前記フィルター本体の外表面上に設けられた前記回転止め手段と、からなる雨水ます用フィルターが提供される。
【0012】
このように、本発明の雨水ます用フィルターは、雨水ますの中で位置決めするための、雨水ますの内径に応じてその大きさが選択される第1および第2の位置決め手段によりフィルター本体を支持し、そしてフィルター本体の表面に設けられた回転止め手段により、雨水ますの中で回転(ズレ)を防止するという特徴を有する。
【0013】
また、本発明では、フィルター本体は第1および第2の位置決め手段を介して支持されるため、前記第1および第2の位置決め手段間の距離を大きく採ることにより、雨水ますの流出口が上部開口部から遠く離れた深い位置に配置されている場合であっても、雨水ますの上部開口部からフィルター本体を容易に着脱することができるようになる。
【0014】
このように、本発明の雨水ます用フィルターは第1および第2の位置決め手段を介して雨水ますの中へ取り付けられるため、フィルター本体の形状に影響されることなく、様々な形状を有するフィルター本体を雨水ますの流出口へ装着することができる。例えば、フィルター本体の形状は、雨水ますの内壁面に接するように配置することができる曲面形状を有するフィルターの他に、ドーム型に立体成形されたフィルターや有底の筒型フィルターなど、雨水ますの流出口を覆うことができる形状であれば、特に制限されることなく様々な形状を有するフィルターを使用することができる。
【0015】
また、フィルター本体の大きさも目的とする雨水ますの流出口を覆うことができる大きさであれば、特に制限されることなく任意の大きさに設定することができる。したがって、例えばフィルター本体の上縁および下縁の長さが雨水ますの流出口を覆うことができる長さを有していれば、それを支持する第1および第2の位置決め手段の円弧長より短い長さであってもよい。
【0016】
また、フィルター本体の高さも第1の位置決め手段と第2の位置決め手段との間を直接的に連結する長さが確保されている必要はなく、例えば雨水ますの流出口の口径よりは大きいが第1の位置決め手段と第2の位置決め手段との間の距離よりは短い長さの直径を有する円形の形状であってもよい。ただし、このような場合、円形形状のフィルター本体は第1および第2の位置決め手段を高さ方向に連結する棒状の補助部材等を使用して間接的に支持する必要がある。
【0017】
本発明において、フィルター本体は第1および第2の位置決め手段と一体的な構造を形成するものであるが、第1および第2の位置決め手段の大きさとは関係なく流出口を覆うことができる任意の形状および任意の大きさを設定することができ、且つ第1および第2の位置決め手段により雨水ます内の任意の位置に配置することもできるため、雨水ますの流入口を避けて流出口のみへ選択的に設置することができる。
【0018】
したがって、本発明の雨水ます用フィルターは、1つのフィルター本体で複数の流出口を覆うこともできるし、複数の流出口をそれぞれに対応する複数のフィルターを用いて覆うこともでき、それ故、複数の流出口及び/又は複数の流入口を有する合流タイプの雨水ますに対しても適用することができる。例えば、1つのフィルター本体で複数のすべての流出口を覆うことを意図する場合、1つのフィルター本体から雨水ますの流入口に相対する部分のみを取り去れば、1つのフィルター本体で流入口のみを避けて複数のすべての流出口を覆うことができる。
【0019】
なお、本発明において、フィルター本体を雨水ますの流出口のみへ設置することとしているのは、雨水ますの流入口に対してフィルターを設置すると、流入口へ接続される枝管の出口(雨水ますとの接続部)で配管詰まりが生じ易くなることを考慮したからである。
【0020】
フィルター本体は、雨水ますの外部又は上流から流入してくる砂利や泥、木の葉などの異物を除去するのに適した網目又はスリットなどの間隙を有するものであればよく、金属製やプラスチック製など様々な種類のフィルターを使用することができる。ただし、コスト面、加工のし易さ等を考慮すると、フィルター本体は金属製の金網フィルターであることが好ましい。
【0021】
第1および第2の位置決め手段は、それに使用される材料の種類や形状、性状に特に制限はないが、雨水ますの中で位置決めするために少なくとも180度以上の中心角を有する円弧形状を有する必要があることから、弾性を有する金属製の棒状部材から作られていることが好ましい。
【0022】
したがって、フィルター本体が金属製の金網フィルターであり、第1および第2の位置決め手段がフィルター本体の上縁および下縁に用いられている金網部材と実質的に同一の棒状部材からできており、且つ前記金網部材を代替することができる場合は、フィルター本体の上縁および下縁の金網部材を第1および第2の位置決め手段で兼用して共通化することができる。すなわち、本発明の雨水ます用フィルターでは、フィルター本体の上縁および下縁に用いられている金網部材に第1および第2の位置決め手段の機能も担わせ(共通化し)、見掛け上は第1および第2の位置決め手段が省略されたような形態を有する雨水ます用フィルターを提供することができる。
【0023】
なお、雨水ますの中で雨水ます用フィルターを位置決めするとは、本発明による雨水ます用フィルターを雨水ますの中でガタ付かない程度の安定性をもって所定の位置に設置すること意味し、この目的は、使用時、雨水ますの内壁面の曲率と略同等の曲率を有する第1および第2の位置決め手段を選択することにより達成される。
【0024】
また、本発明において、第1および第2の位置決め手段が少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状である必要があるとしている理由は、もし第1および第2の位置決め手段の中心角が180度未満であると、第1および第2の位置決め手段およびこれにより支持されるフィルター本体が雨水ますの中で内壁面から離れるように傾倒してしまうおそれがあるからである。
【0025】
さらに、第1および第2の位置決め手段を360度の中心角を有するリング形状としなかった理由は、第1および第2の位置決め手段が円形のリング形状であると、フィルター着脱時の第1および第2の位置決め手段の弾性変形が阻害されて雨水ますの中への円滑な着脱ができなくなる場合があるからである。そこで、本発明では、第1および第2の位置決め手段をリング形状とはせず、両端が自由な円弧形状とすることにより、第1および第2の位置決め手段の弾性変形による柔軟性を確保して、雨水ます内部への着脱の容易化および雨水ますの内壁面への形状の追従性を向上させている。
【0026】
フィルター本体を下部から支持する第2の位置決め手段は、雨水ます用フィルター装着後の安定性を考慮して、雨水ますの流出口下部に設けられた内壁面の段差に当接させることにより支持させてもよい。
【0027】
この場合、特に特許文献4に記載されているような底部にバケツ状の泥溜め部およびその中に土砂捕捉用バスケットが配置されているタイプの雨水ますでは、雨水ますの開口部を横断するように配置されるフィルターの吊り手手段と土砂捕捉用バスケットの上縁とが協働することにより、土砂捕捉用バスケットをその上部に配置される雨水ます用フィルターと共に着脱することが可能となり、雨水ます内部の掃除や点検などの作業性が向上するという利点がある。
【0028】
本発明では、雨水ます用フィルターの過剰な変形を防止し、且つ雨水ますに対する着脱を容易にするために第1の位置決め手段の対抗する2点の間で連結される吊り手手段が配置される。
【0029】
したがって、吊り手手段は、例えば棒状部材のような簡単な構造であってよく、フック等を用いてフィルターを出し入れする場合はそのフック等とのズレを防止する(バランスを保つ)ことにより吊り位置を安定化させるため、その中央部にはフック等を引っ掛けるための上向きに屈曲した部分または全体として上向きに凸状となった形状を備えていてもよい。
【0030】
また、吊り手手段は、第1の位置決め手段の強度を補強しつつ、第1の位置決め手段が雨水ますの内壁面の形状に追従することを許容する適度な柔軟性を維持する構造および材料からできていることが好ましい。
【0031】
したがって、第1の位置決め手段の強度よりも雨水ますの内壁面の形状に対する追従性、適合性および着脱の容易性等を重要視する場合、吊り手手段は第1の位置決め手段の対抗する2点の間で2つの吊り手要素へ切り離すことができる。そのような構成を採ることにより、吊り手手段は切り離された2つの吊り手要素を相対的に動かすことにより第1の位置決め手段へ曲げ荷重を加えて、第1の位置決め手段の曲率が大きくなる(縮径する)ように容易に弾性変形させることが可能となる。
【0032】
また、分離された2つの吊り手要素は、ヒンジ機構又はピボット機構などを有する回動手段を用いて回動可能に接続してもよい。この場合、第1の位置決め手段は吊り手手段の回動手段又はその隣接区域を吊り上げ又は吊り下げることにより、吊り手手段を介して曲げ荷重が加えられ、曲率が大きくなる(縮径する)ように自動的に弾性変形する。このため、本発明による雨水ます用フィルターは、雨水ますの中へ極めて容易に着脱することができるようになる。
【0033】
本発明において、フィルター本体の外表面上に設けられる回転止め手段は棒状部材から製作されていることが好ましく、そして例えば弾性変形可能な片持ち支持構造を形成するようにフィルター本体又は第1若しくは第2の位置決め手段に固定される固定端とフィルター本体の表面から突出した自由端とを有していることが好ましい。
【0034】
この場合、回転止め手段は、フィルター本体が雨水ますの内壁面と相対する時は内壁面からの反力を受けてフィルター本体の表面へ向けて引っ込んでおり、そしてフィルター本体が前記雨水ますの流出口と相対する時はフィルター本体の着脱のための上下方向の動きは規制しないが周方向の回転は規制するようにフィルター本体の表面から流出口の内部へ向けて突出する。
【0035】
このように回転止め手段では、フィルター本体に対し固定端と自由端を有する片持ち支持構造を採用すると上記目的に対し有利に機能する。
【0036】
したがって、本発明の回転止め手段は、平面的に見た時、I型形状又はII型形状のような1つ固定端に対し1つの自由端を有する片持ち支持構造であってもよく、若しくはY型形状、V型形状又はT型形状のような1つ固定端に対し2つの自由端を有する片持ち支持構造であってもよい。これらの形状は構造が簡単で且つ棒状部材から作製するのに適しており、さらに本発明の雨水ます用フィルターを着脱する際の上下方向の動きは規制することなく周方向の回転のみを規制するのに極めて効果的である。
【0037】
また、回転止め手段は、本発明のフィルターを取り外す際、雨水ますの流出口の中へ突出した部分が流出口の内壁へ引っ掛からないようにするため、突出した部分にR又は流出口の内壁面に対して傾斜角度を付けることが好ましい。回転止め手段は、その自由端近傍においてこのような形状を有することにより雨水ます用フィルターの着脱容易性を向上させる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物が更に下流側の排水設備へ排出されるのを防止する目的で、小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますであっても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口を覆うことができる、簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することができる。
【0039】
特に、強力な排水の流れや一時的にフィルター表面に付着した枯葉等の異物により排水の抵抗を受けた場合、フィルターが雨水ますの流出口から回転して(ズレて)しまうことが考えられるが、本発明によればフィルター本体の回転止め手段により、フィルター本体の着脱のための上下方向の動きを規制することなく周方向の回転のみをしっかりと規制することができる。
【0040】
また、本発明の雨水ます用フィルターでは、フィルター本体を支持し、且つ雨水ますの中で位置決めするための専用の第1および第2の位置決め手段を設けたため、ドーム型に立体成形されたフィルターや有底の筒型フィルターなど様々な形状や大きさを有するフィルター本体を雨水ますの流出口へ装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の一実施形態に係る回転止め構造を有する雨水ます用フィルターについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0042】
図1には、本発明による実施例1の雨水ます用フィルター1の正面図(a)、側面図(b)、平面図(c)が示されている。
【0043】
図1を参照して理解されるように、本発明による雨水ます用フィルター1は、雨水ますの中で位置決めするための円弧状の第1の位置決め手段2およびその下側に配置される第2の位置決め手段3と、そして第1および第2の位置決め手段2,3の間で直接的に支持される金属製の金網からなるフィルター本体4と、フィルター本体の過剰な変形を防止し且つ雨水ますに対する着脱を容易にするために第1の位置決め手段2に装着された吊り手手段5とから構成されている。また、本発明による雨水ます用フィルター1は、フィルター本体4の外表面上にその周方向の回転を規制するための弾性変形可能な片持ち支持構造を有する回転止め手段6を備えている。
【0044】
図2には、図1に示された実施例1の雨水ます用フィルター1を、底部にバケツ状の泥溜め部11および土砂捕捉用バスケット12を備えるタイプの雨水ます10の中へ取り付けた場合の平面図(a)および図2(a)に示される雨水ます10をA−A断面で切り取った場合の断面図(b)が示されている。
【0045】
図2(b)より、フィルター本体4を下部から支持する第2の位置決め手段3は、雨水ますの流出口14の下部に設けられた内壁面の段差15に当接することにより支持される。このように底部にバケツ状の泥溜め部11および土砂捕捉用バスケット12を備えているタイプの雨水ます10へ本発明によるフィルター1を適用すると、雨水ます10の開口部16を横断するように配置されるフィルターの吊り手手段5と土砂捕捉用バスケット12の上縁とが協働することにより、土砂捕捉用バスケット12をその上部に配置される雨水ます用フィルター1と共に着脱することが可能となり、雨水ます内部の掃除や点検などの作業性が向上するという利点がある。
【0046】
図1および図2を参照して理解されるように、雨水ます用フィルター1は、雨水ます10の中で位置決めするための、少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる第1の位置決め手段2と第2の位置決め手段3を有する。そしてフィルター本体4は、第1の位置決め手段2と第2の位置決め手段3の間に直接的に支持される。
【0047】
図1および図2の中に示される金属製の金網からなるフィルター本体4は、第1および第2の位置決め手段2,3と一体的な構造を形成するものであるが、第1および第2の位置決め手段2,3の大きさとは関係なく流出口14を覆うことができる任意の形状および任意の大きさを設定することができ、且つ第1および第2の位置決め手段2,3により雨水ます10内の任意の位置に配置することもできるため、雨水ます10の流入口を避けて流出口14のみへ選択的に設置することができる。
【0048】
また、実施例1の雨水ます用フィルター1では、第1および第2の位置決め手段2,3とフィルター本体4の上縁および下縁に用いられている金網部材とが実質的に同一の棒状部材からできているため、第1および第2の位置決め手段2,3がフィルター本体4の上縁および下縁の金網部材を兼用して共通化されている(図1(a),(b)参照)。
【0049】
さらに、実施例1のフィルター本体4では、図9に示されるように、第1および第2の位置決め手段2,3の後端部において対応する上下後端部を連結するように縦方向に延びた金網部材を配設してもよい。この場合、フィルター着脱の際の第1および第2の位置決め手段2,3の後端部の引っ掛かりが防止されるため、実施例1の雨水ます用フィルター1のよりスムーズな着脱が保証される。
【0050】
このように、本発明の雨水ます用フィルター1は第1および第2の位置決め手段2,3を介して雨水ます10の中へ取り付けられるため、フィルター本体4の形状に影響されることなく、様々な形状を有するフィルター本体を雨水ます10の流出口14へ装着することができる。
【0051】
例えば、フィルター本体4の形状は、図1に示される雨水ます用フィルター1のように、フィルター本体が雨水ます10の内壁面13に接するように配置することができる曲面形状を有するものの他に、図3(a)に示されるようなドーム型に立体成形されたフィルター本体40や図3(b)に示される有底の筒型フィルター41など、雨水ますの流出口を覆うことができる形状であれば、特に制限されることなく様々な形状を有するフィルターを使用することができる。
【0052】
図3(a)に示されるようなドーム型形状のフィルター本体40を使用する場合、必要最小限のフィルター材料の使用により雨水ますの流出口を覆うことが可能となり、また立体化によるフィルター面積の拡大により枯葉等の異物の付着によるフィルター詰まりの危険性が低減されるというメリットがある。
【0053】
また、図3(b)に示されるような有底の筒型フィルター41を使用する場合、雨水ますの中から更に下流側へ流れ出ようとする枯葉等の異物は筒型フィルター41の外周で除去し、雨水は筒型フィルター41を透過またはオーバーフローさせて筒型フィルター41の内部から確実に下流側へ流出させることができるため、雨水ます用フィルターの点検及びメンテナンスサイクルを延ばすことができるというメリットがある。
【0054】
ただし、ドーム型形状のフィルター本体40のように、フィルター本体40の高さ(直径)が第1の位置決め手段2と第2の位置決め手段3との間の距離より短い場合は、図3(a)に示されるように第1および第2の位置決め手段2,3を高さ方向に連結する棒状の補助部材20を用いてドーム型形状のフィルター本体40を間接的に支持する必要がある。
【0055】
本発明の雨水ます用フィルター1は、図1(c)および図2(a)に示されるように、フィルター本体1の過剰な変形を防止し且つ雨水ます10に対する着脱を容易にするために第1の位置決め手段2の対抗する2点21,22の間で連結される吊り手手段5を備えている。したがって、吊り手手段5を利用すれば、本発明の雨水ます用フィルター1は、雨水ます10の流出口14が上部開口部16から遠く離れた深い位置に配置されている場合であっても、雨水ます10の上部開口部16から容易にフィルター本体4を着脱することができる。
【0056】
図4には、吊り手手段5の他の変形例が示されている。吊り手手段5は、例えば棒状部材のような簡単な構造であってよく、フック等を用いてフィルターを出し入れする場合はそのフック等とのズレを防止する(バランスを保つ)ことにより吊り位置を安定化させるためにその中央部にフック等を引っ掛けるための上向きに屈曲した部分または全体として上向きに凸状の形状を備える吊り手手段50,51,52(図3(a)〜(c)参照)であってもよい。ただし、吊り手手段5は、第1の位置決め手段2の強度を補強しつつ、第1の位置決め手段2が雨水ます10の内壁面13の形状に追従することを許容する適度な柔軟性を維持する構造および材料からできていることが好ましい。
【0057】
したがって、第1の位置決め手段2の強度よりも雨水ます10の内壁面13の形状に対する追従性、適合性および着脱の容易性等を重要視する場合は、図5に示されるように吊り手手段53を第1の位置決め手段2の対抗する2点21,22の間で2つの吊り手要素55,56へ切り離すことができる。そのような構成を採ることにより、吊り手手段53は切り離された2つの吊り手要素55,56を相対的に動かすことにより第1の位置決め手段2へ曲げ荷重の加えて、第1の位置決め手段2の曲率を大きくする(縮径する)ように容易に弾性変形させることが可能となる。
【0058】
また、分離された2つの吊り手要素55,56は、図5に示されるようにヒンジ機構又はピボット機構などを有する回動手段57を用いて回動可能に接続してもよい。この場合、第1の位置決め手段2は吊り手段54の回動手段57又はその隣接区域を吊り上げ又は吊り下げることにより、吊り手手段54を介して曲げ荷重が加えられ、曲率が大きくなる(縮径する)ように自動的に弾性変形する。このため、本発明による雨水ます用フィルター1は、雨水ます10の中へ極めて容易に着脱することができるようになる。
【0059】
本発明の雨水ます用フィルター1は、強力な排水の流れや一時的にフィルター表面に付着した枯葉等の異物により排水の抵抗を受けた場合においても雨水ます10の流出口14からフィルター1が回転しない(ズレない)ようにするため、フィルター本体4の外表面上に回転止め手段6を備えている(図1参照)。
【0060】
回転止め手段6は、一の端がフィルター本体4に固定された固定端60を有しているのに対し、他の2つの端はフィルター本体4の表面から突出した自由端61,62を形成するY型形状を有している。このため、回転止め手段6は弾性変形可能な片持ち支持構造を有しており、フィルター本体4が雨水ます10の内壁面13と相対する時は、内壁面13からの反力を受けてフィルター本体4の表面へ向けて引っ込んでおり、そしてフィルター本体4が雨水ます10の流出口14と相対する時は、フィルター本体4の表面から流出口14の中へ向けて突出することにより、フィルター本体4の着脱のための上下方向の動きを規制することなく周方向の回転のみをしっかりと規制する(図2参照)。
【0061】
このように回転止め手段6の形状は、フィルター本体4に対し固定端と自由端を有する片持ち支持構造を有していることが好ましく、したがって、図7(a)〜(d)に示されるように、回転止め手段6を平面的に見た時、I型形状64(a)又はII型形状65(b)のように1つ固定端に対し1つの自由端を有する片持ち支持構造であってもよく、若しくはY型形状6(図1参照)、V型形状66(c)又はT型形状67(d)のような1つ固定端に対し2つの自由端を有する片持ち支持構造であってもよい。これらの形状は構造が簡単で且つ棒状部材から作製するのに適しており、さらに本発明の雨水ます用フィルター1を着脱する際の上下方向の動きは規制することなく周方向の回転のみを規制するのに極めて効果的である。
【0062】
また、回転止め手段6は、雨水ます10の流出口14の中へ突出した部分が流出口14の内壁と引っ掛からないようにするために、本発明のフィルター1を取り外す際、流出口の内壁面と接する部分にRと、そして流出口の内壁面に対して傾斜角度が付けられている(図1(b)参照)
【0063】
図8には、本発明による実施例2の雨水ます用フィルター1の正面図(a)、側面図(b)、平面図(c)が示されている。
【0064】
実施例2の雨水ます用フィルター1’は、金属製の金網からなるフィルター本体4が第1および第2の位置決め手段と同じ長さだけ周方向に延びており、それ以外は実施例1の雨水ます用フィルター1と同じ構造、同じ構成を有する。したがって、実施例2の雨水ます用フィルター1’においても、第1および第2の位置決め手段2,3とフィルター本体4の上縁および下縁に用いられている網目部材とが実質的に同一の棒状部材から形成され、そのため第1および第2の位置決め手段2,3は、フィルター本体4の上縁および下縁の網目部材を兼用して共通化されている(図8(a),(b)参照)。
【0065】
このように、実施例2の雨水ます用フィルター1’では、1つのフィルター本体4で複数の流出口を覆うこともでき、それ故、複数の流出口及び/又は複数の流入口を有する合流タイプの雨水ます(図示せず)に対しても適用することができる。
【0066】
以上の結果、本発明によれば、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物が更に下流側の排水設備へ排出されるのを防止する目的で、小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますであっても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口を覆うことができる、簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1の雨水ます用フィルターの正面図(a)、側面図(b)及び平面図(c)である。
【図2】実施例1の雨水ます用フィルターを泥溜め部付き雨水ますへ装着した状態での平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図3】本発明による雨水ます用フィルターのフィルター本体の変形例を示す模式図である。
【図4】本発明による雨水ます用フィルターの吊り手手段の変形例を示す模式図である。
【図5】本発明による雨水ます用フィルターの吊り手手段が2つの部品に分離された変形例を示す模式図である。
【図6】2つの部品に分離された吊り手手段が回転手段により連結されている変形例を示す模式図である。
【図7】本発明による雨水ます用フィルターの回転止め手段の変形例を示す模式図である。
【図8】実施例2の雨水ます用フィルターの正面図(a)、側面図(b)及び平面図(c)である。
【図9】実施例1の雨水ます用フィルターの変形例の正面図(a)、側面図(b)及び平面図(c)である。
【符号の説明】
【0068】
1,1’・・・・・・・・・ 雨水ます用フィルター
2 ・・・・・・・・・・・・・ 第1の位置決め手段
3 ・・・・・・・・・・・・・ 第2の位置決め手段
4,40,41・・・ フィルター本体
5,50,51,52,53,54・・・ 吊り手手段
6,64,65,66,67・・・・・・・・・ 回転止め手段
10・・・・・・・・・・・・・ 雨水ます
11・・・・・・・・・・・・・ 泥溜め部
12・・・・・・・・・・・・・ 土砂捕捉用バスケット
13・・・・・・・・・・・・・ 内壁面
14・・・・・・・・・・・・・ 流出口
15・・・・・・・・・・・・・ 段差
16・・・・・・・・・・・・・ 開口部
20・・・・・・・・・・・・・ 補助部材
21,22・・・・・・・ 対抗する点
55,56・・・・・・・ 吊り手要素
57・・・・・・・・・・・・・ 回動手段
60・・・・・・・・・・・・・ 固定端
61,62・・・・・・・ 自由端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水ますの中で位置決めするための、少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる第1の位置決め手段およびその下側に配置される第2の位置決め手段と、
前記第1の位置決め手段と第2の位置決め手段との間で前記雨水ますの内部から流出口のみを覆うように、前記第1の位置決め手段および第2の位置決め手段により直接的に又は間接的に支持される網目状又はスリット状のフィルター本体と、
前記フィルター本体の過剰な変形を防止し、且つ雨水ますに対する着脱を容易にするために前記第1の位置決め手段の対抗する2点の間で連結される吊り手手段と、そして
フィルター本体の回転を止めるための手段であって、前記フィルター本体が前記雨水ますの内壁面と相対する時、前記内壁面からの反力を受けて前記フィルター本体の表面へ向けて引っ込んでおり、そして前記フィルター本体が前記雨水ますの流出口と相対する時、前記フィルター本体の表面から前記流出口の中へ向けて突出することにより、前記フィルター本体の着脱のための上下方向の動きは規制しないが周方向の回転は規制する、前記フィルター本体の外表面上に設けられた前記回転止め手段と、からなる雨水ます用フィルター。
【請求項2】
前記回転止め手段は、弾性変形可能な片持ち支持構造を形成するように前記フィルター本体又は前記第1若しくは第2の位置決め手段に固定された固定端と前記フィルター本体の表面から突出した自由端とを有する棒状部材からなることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項3】
前記フィルター本体は、金属製の金網フィルターであることを特徴とする請求項1又は2に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項4】
前記棒状部材からなる前記第1および第2の位置決め手段は、前記フィルター本体の上縁および下縁の金網部材を兼用して共通化されていることを特徴とする請求項3に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項5】
平面的に見た時、前記回転止め手段は、I型形状、II型形状、Y型形状、V型形状又はT型形状を有していることを特徴とする請求項2に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項6】
前記回転止め手段は、1つ固定端に対し1つの自由端を有するように一体的に連結された構造又は1つ固定端に対し2つの自由端を有するように一体的に連結された構造を有することを特徴とする請求項2に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項7】
前記回転止め手段は、雨水ます用フィルターを取り外す時、前記流出口の中へ突出した部分が前記流出口の内壁へ引っ掛からないようにR又は流出口の内壁面に対して傾斜角度が付けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項8】
前記吊り手手段は吊り位置を安定化させるため、その中央部に上向きに屈曲した部分または全体として上向きに凸状となった形状を備えていることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項9】
前記吊り手手段は、前記第1の位置決め手段へ曲げ荷重の加えることにより前記第1の位置決め手段の曲率を大きくすることができるように、前記対抗する2点の間で切り離されていることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項10】
前記切り離された吊り手手段は、回動手段により互いに回動可能に連結されていることを特徴とする請求項9に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項11】
前記雨水ます用フィルターは、前記第2の位置決め手段を前記雨水ますの流出口下部に設けられた内壁面の段差部に当接させることにより支持されることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−112101(P2010−112101A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286844(P2008−286844)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】