説明

雨水ます用フィルター

【課題】小径の合成樹脂製の雨水ます等においても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口のみを覆うことができる簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することを目的とする。
【解決手段】雨水ますの中へ固定するための、少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる下部固定手段および前記下部固定手段より小さな曲率を有し、且つ少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる上部固定手段と、上部及び下部固定手段の間で内部から流出口のみを覆うように上部及び下部固定手段により直接的に又は間接的に支持されるフィルター本体と、そして雨水ますに対する着脱を容易にするために上部固定手段の対抗する2点のそれぞれに独立して接続される第1および第2の吊り手手段とからなる雨水ます用フィルターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等を集めて排水するための雨水ますに使用されるフィルターに関し、特に雨水ますの流出口へ設置するために、上下1対の上部および下部固定手段により支持されているフィルター本体において、上部固定手段は雨水ますへの着脱時、外力を加えることにより雨水ますの内壁面より大きな曲率を有するように縮径することができ、そして雨水ますへの装着後は前記外力を解放することにより雨水ますの内壁面へ付勢するように拡径して、それによりフィルター本体を雨水ますの内壁面へ固定することができる雨水ます用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
雨水ますでは、雨水ますの外部又は上流から砂利や泥、木の葉などの異物が流入してくるため、コンクリート製の大型雨水ますでは、例えば実開昭59−80582号公報(特許文献1)、特開平7−82790号公報(特許文献2)および特開平8−296271号公報(特許文献3)に開示されているように、その開口部や浸透出口などにかご型のフィルターを設け、若しくはその流出口にキャップ式のドーム型フィルター等を設けることにより、雨水ますにおいて前記異物を除去する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、かご型のフィルターは上から下へと鉛直方向に流れる排水の異物除去には適しているが、水平方向に流れる排水の異物除去に対しては殆んど効果的に機能することができず、実際には有益に利用できるものではなかった。このため、水平方向の流れを形成する雨水ますの流出口などに対しては、フィルターの背面に数本の脚が伸びたキャップ式のドーム型フィルター等を使用して、フィルターの脚を流出口の中に挿入して固定することより使用していた(特許文献1の図1,2参照)。
【0004】
しかしながら、水平方向の流れを形成する雨水ますの流出口は、一般に雨水ますの上部開口部から遠く離れた深い位置に配置されているため、上述のようなフィルターの脚を流出口の中に挿入することにより固定しなければならないキャップ式のドーム型のフィルタータイプでは、流出口への着脱が極めて困難となり作業性が悪くなるという問題があった。特に、大径のコンクリート製の大型雨水ますの場合、作業者が雨水ますの中へ入ることにより上記ドーム型フィルターの着脱が可能となる場合があるが、作業者が中へ入ることができない小径の合成樹脂製の雨水ますでは、実質上、上述のような脚付きのフィルターを使用することができなかった。
【0005】
なお、雨水ますの流入口に対してフィルターを設置すると、流入口へ接続される枝管の出口(雨水ますとの接続部)で配管詰まり生じ易くなるため、通常、雨水ますの流入口にはフィルターは設置されない。
【0006】
一方、小径の合成樹脂製の雨水ますでは、特開平8−311983号公報(特許文献4)に記載されているように雨水ますの外部又は上流から流入してくる砂利や泥、木の葉などの異物を除去するため、異物の通過を阻止する程度の間隙を有する網目又はスリット等が適用されたバケツ状の泥溜め部およびその中に土砂捕捉用バスケットを配置する技術が知られている。
【0007】
しかしながら、このようなタイプの小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますにおいても、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物を更に下流側の排水設備へ排出するのを防止するためのフィルターは使用されておらず、また、雨水ますの流出口に簡単に着脱でき、かつ上述したような従来の問題点を克服したフィルター技術を教えるものではなかった。
【特許文献1】実開昭59−80582号公報
【特許文献2】特開平7−82790号公報
【特許文献3】特開平8−296271号公報
【特許文献4】特開平8−311983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物が更に下流側の排水設備へ排出されるのを防止する目的で、小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますにおいても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口のみを覆うことができる、簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者等は、従来技術のように雨水ますの流出口毎に脚付きのキャップ式ドーム型フィルターを適用するのではなく、フィルター本体を雨水ますの内壁面の形状に適合させて、雨水ますの内壁面に沿うように雨水ますの上部開口部から出し入れ可能とすることにより、雨水ますの流出口のみを覆って装着することが可能な簡易構造の雨水ます用フィルターを発明した。
【0010】
また、この場合、フィルターの着脱性のみを考慮してフィルター本体を雨水ますの内壁面と略同じ曲率を有する筒型形状とすると、フィルターは強力な排水の流れや一時的にフィルター表面に付着した枯葉等の異物により排水の抵抗を受けて周方向へ回転してしまう(流出口からズレてしまう)ことが考えられる。
【0011】
そこで、本発明者等は、フィルター本体を上下1対の固定手段により支持し、且つその上部固定手段には、着脱時、外力を加えることにより雨水ますの内壁面より大きな曲率を有するように縮径することができるが、装着後は前記外力を解放することにより雨水ますの内壁面へ付勢してフィルター本体を固定する機能及び構造を付加することにより本発明の雨水ます用フィルターを完成させるに至った。
【0012】
具体的には、本発明によれば、雨水ますの中へ固定するための、少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる下部固定手段および前記下部固定手段より小さな曲率を有し、且つ少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる上部固定手段と、前記上部固定手段と下部固定手段との間で前記雨水ますの内部から流出口のみを覆うように、前記上部固定手段および下部固定手段により直接的に又は間接的に支持される網目状又はスリット状のフィルター本体と、前記雨水ますに対する着脱を容易にするために、前記上部固定手段の対抗する2点のそれぞれに独立して接続される第1および第2の吊り手手段と、からなり、そして前記上部固定手段は、雨水ますへの着脱時、第1および第2の吊り手手段を介して外力を加えることにより雨水ますの内壁面より大きな曲率を有するように縮径することができ、そして雨水ますへの装着後は前記外力を解放することにより雨水ますの内壁面へ付勢するように拡径して、それにより前記フィルター本体を前記雨水ますの内壁面へ固定することを特徴とする雨水ます用フィルターが提供される。
【0013】
したがって、本発明ではフィルター本体は上部および下部固定手段を介して支持されるため、前記上部および下部固定手段間の距離を大きく採ることにより、雨水ますの流出口が上部開口部から遠く離れた深い位置に配置されている場合であっても、雨水ますの上部開口部からフィルター本体を容易に着脱することができるようになる。
【0014】
また、本発明の雨水ます用フィルターは上部および下部固定手段を介して雨水ますの中へ取り付けられるため、フィルター本体の形状に影響されることなく、様々な形状を有するフィルターを雨水ますの流出口へ装着することができる。例えば、フィルター本体の形状は、雨水ますの内壁面に接するように配置することができる曲面形状を有するフィルターの他に、ドーム型に立体成形されたフィルターや有底の筒型フィルターなど、雨水ますの流出口を覆うことができる形状であれば、特に制限されることなく様々な形状を有するフィルターを使用することができる。
【0015】
さらに、フィルター本体の大きさも目的とする雨水ますの流出口を覆うことができる大きさであれば、特に制限されることなく任意の大きさに設定することができる。したがって、例えばフィルター本体の上縁および下縁の長さが雨水ますの流出口を覆うことができる長さを有していれば、それを支持する上部および下部固定手段の円弧長より短い長さであってもよい。
【0016】
また、フィルター本体の高さも上部固定手段と下部固定手段との間を直接的に連結する長さが確保されている必要はなく、例えば雨水ますの流出口の口径よりは大きいが上部固定手段と下部固定手段との間の距離よりは短い長さの直径を有する円形の形状であってもよい。ただし、このような場合、円形形状のフィルター本体は上部および下部固定手段を高さ方向に連結する棒状の補助部材等を使用して間接的に支持する必要がある。
【0017】
本発明において、フィルター本体は上部および下部固定手段と一体的な構造を形成するものであるが、上部および下部固定手段の大きさとは関係なく流出口を覆うことができる任意の形状および任意の大きさを設定することができ、且つ上部および下部固定手段により雨水ます内の任意の位置に配置することもできるため、雨水ますの流入口を避けて流出口のみへ選択的に設置することができる。
【0018】
したがって、本発明の雨水ます用フィルターは、1つのフィルター本体で複数の流出口を覆うこともできるし、複数の流出口をそれぞれに対応する複数のフィルターを用いて覆うこともでき、それ故、複数の流出口及び/又は複数の流入口を有する合流タイプの雨水ますに対しても適用することができる。例えば、1つのフィルター本体で複数のすべての流出口を覆うことを意図する場合、1つのフィルター本体から雨水ますの流入口に相対する部分のみを取り去れば、1つのフィルター本体で流入口のみを避けて複数のすべての流出口を覆うことができる。
【0019】
なお、本発明において、フィルター本体を雨水ますの流出口のみへ設置することとしているのは、雨水ますの流入口に対してフィルターを設置すると、流入口へ接続される枝管の出口(雨水ますとの接続部)で配管詰まりが生じ易くなることを考慮したからである。
【0020】
フィルター本体は、雨水ますの外部又は上流から流入してくる砂利や泥、木の葉などの異物を除去するのに適した網目又はスリットなどの間隙を有するものであればよく、金属製やプラスチック製など様々な種類のフィルターを使用することができる。ただし、コスト面、加工のし易さ等を考慮すると、フィルター本体は金属製の金網フィルターであることが好ましい。
【0021】
本発明において、上部および下部固定手段に使用される材料の種類や形状、性状に特に制限はないが、着脱時は外力を加えることにより雨水ますの内壁面より大きな曲率を有するように縮径することができ、且つ装着後は前記外力を解放することにより雨水ますの内壁面へ付勢するように拡径しなければならないため、金属などの弾性を有する棒状部材から作られていることが好ましい。
【0022】
また、フィルター本体の雨水ますへの円滑な出し入れと装着後の強力な固定との両機能を両立させるためには、下部固定手段は少なくとも180度以上の中心角を有する円弧形状を有しており、一方、下部固定手段の上側に配置される上部固定手段は前記下部固定手段より小さな曲率を有し、且つ少なくとも180度以上の中心角を有する円弧形状を有していることが好ましい。
【0023】
そして、下部固定手段には、雨水ますの中でガタ付かない程度の安定性をもって設置することができる大きさを有するもの、すなわち、使用時、雨水ますの内壁面の曲率と略同等若しくはやや小さめの曲率を有する下部固定手段を選択することにより上記の目的が達成される。
【0024】
また、本発明において、上部および下部固定手段が少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状である必要があるとしている理由は、もし上部および下部固定手段の中心角が180度未満であると、上部および下部固定手段およびこれにより支持されるフィルター本体が雨水ますの中で内壁面から離れるように傾倒してしまうおそれがあるからである。
【0025】
なお、フィルター本体が金属製の金網フィルターであり、上部および下部固定手段がフィルター本体の上縁および下縁に用いられている金網部材と実質的に同一の棒状部材からできており、且つ前記金網部材を代替することができる場合は、フィルター本体の上縁および下縁の金網部材を上部および下部固定手段で兼用して共通化することができる。すなわち、本発明の雨水ます用フィルターでは、フィルター本体の上縁および下縁に用いられている網目部材に上部および下部固定手段の機能も担わせ(共通化し)、見掛け上は上部および下部固定手段が省略されたような形態を有する雨水ます用フィルターを提供することができる。
【0026】
フィルター本体を下部から支持する下部固定手段は、雨水ます用フィルター装着後の安定性を考慮して、雨水ますの流出口下部に設けられた内壁面の段差に当接させることにより支持させてもよい。
【0027】
この場合、特に特許文献4に記載されているような底部にバケツ状の泥溜め部およびその中に土砂捕捉用バスケットが配置されているタイプの雨水ますでは、雨水ますの開口部を横断するように配置されるフィルターの第1および第2の吊り手手段と土砂捕捉用バスケットの上縁とが協働することにより、土砂捕捉用バスケットをその上部に配置される雨水ます用フィルターと共に着脱することが可能となり、雨水ます内部の掃除や点検などの作業性が向上するという利点がある。
【0028】
本発明では、雨水ますに対する着脱を容易にするために、上部固定手段の対抗する2点のそれぞれに独立して接続される第1および第2の吊り手手段が配置される。
【0029】
第1および第2の吊り手手段は、例えば棒状部材のような簡単な構造であってよく、また、人手により第1および第2の吊り手手段を相対的に動かして上部固定手段へ外力を加える場合は、その操作が容易となるように第1および第2の吊り手手段にその端部を略直角に折り曲げるなどして持ち手を形成させてもよい。
【0030】
さらに、フック等を用いてフィルターを出し入れする場合は、そのフック等とのズレを防止(バランスを保つ)しつつ、第1および第2の吊り手手段を同時に吊り上げることにより上部固定手段へ曲げ荷重を加えられるようにするために、例えば第1の吊り手手段および第2の吊り手手段を互いに上向きに延ばして山形を形成するように交差させてもよい。また、第1および第2の吊り手手段を、ヒンジ機構又はピボット機構などを有する回動手段により互いに回動可能に連結することによっても同様の目的を達成することができる。
【0031】
これらの場合、フック等を介して第1および第2の吊り手手段へ加えられた上向きの吊り荷重は、第1および第2の吊り手手段を介して上部固定手段の曲率を大きくする(縮径する)方向に働く曲げ荷重へ転換されため、上部固定手段およびそれに支持されるフィルター本体は、第1および第2の吊り手手段を吊り上げる又は吊り下げる操作を行うのみで自動的に縮径するように弾性変形する。このため、本発明による雨水ます用フィルターは、雨水ますの中へ極めて容易に着脱することができるようになる。
【0032】
したがって、このような機能を達成するためには、第1および第2の吊り手手段は、それらに加えられる上向きの吊り荷重を上部固定手段へその曲率が大きくなる(縮径する)ように伝達することができるような構造を有しておればよく、必ずしも上述のような山形を形成するように交差している構造又は回動手段により互いに回動可能に連結されている構造などに限定されるものではない。
【0033】
以上の結果、上部固定手段は、雨水ますへの着脱時、第1および第2の吊り手手段を介して外力を加えることにより雨水ますの内壁面より大きな曲率を有するように縮径することができ、そして雨水ますへの装着後は第1および第2の吊り手手段から前記外力を解放することにより、雨水ますの内壁面へ付勢するように拡径してフィルター本体を雨水ますの内壁面へ強力に固定する。
【0034】
また、本発明による雨水ます用フィルターは、フィルター本体の周方向へ回転(ズレ)をより強固に防止するため、フィルター本体の外表面上で弾性変形可能な片持ち支持構造を形成するように、フィルター本体に固定される固定端とフィルター本体の表面から突出した自由端とを有する回転止め手段を備えていてもよい。
【0035】
回転止め手段は、フィルター本体が雨水ますの内壁面と相対する時は内壁面からの反力を受けてフィルター本体の表面へ向けて引っ込んでおり、そしてフィルター本体が前記雨水ますの流出口と相対する時はフィルター本体の表面から流出口の内部へ向けて突出することにより、フィルター本体の周方向の回転(ズレ)を強力に規制することができる。
【0036】
したがって、本発明の回転止め手段は、平面的に見た時、I型形状又はII型形状のような1つ固定端に対し1つの自由端を有する片持ち支持構造であってもよく、若しくはY型形状、V型形状又はT型形状のような1つ固定端に対し2つの自由端を有する片持ち支持構造であってもよい。これらの形状は構造が簡単で且つ棒状部材から作製するのに適しており、さらに本発明の雨水ます用フィルターを着脱する際の上下方向の動きは規制することなく周方向の回転のみを規制するのに極めて効果的である。
【0037】
また、回転止め手段は、本発明のフィルターを取り外す際、雨水ますの流出口の中へ突出した部分が流出口の内壁へ引っ掛からないようにするため、突出した部分にR又は流出口の内壁面に対して傾斜角度を付けることが好ましい。回転止め手段は、その自由端近傍においてこのような形状を有することにより雨水ます用フィルターの着脱容易性を向上させる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物が更に下流側の排水設備へ排出されるのを防止する目的で、小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますであっても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口を覆うことができる、簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することができる。
【0039】
特に、強力な排水の流れや一時的にフィルター表面に付着した枯葉等の異物により排水の抵抗を受けた場合、フィルターが雨水ますの流出口から回転して(ズレて)しまうことが考えられるが、本発明によればフィルター本体を上下1対の固定手段により支持し、且つその上部固定手段には、着脱時、外力を加えることにより雨水ますの内壁面より大きな曲率を有するように縮径することができるが、装着後は前記外力を解放することにより雨水ますの内壁面へ付勢してフィルター本体をしっかりと固定することができる。
【0040】
また、本発明の雨水ます用フィルターでは、フィルター本体を支持し、且つ雨水ますの中へ固定するための専用の上部および下部固定手段を配置しため、ドーム型に立体成形されたフィルターや有底の筒型フィルターなど様々な形状や大きさを有するフィルター本体を雨水ますの流出口へ装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の一実施形態に係る縮径及び拡径構造を有する雨水ます用フィルターについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0042】
図1には、本発明による実施例1の雨水ます用フィルター1の正面図(a)、側面図(b)、平面図(c)が示されている。
【0043】
図1を参照して理解されるように、本発明による雨水ます用フィルター1は、雨水ますの内壁面に固定するための上部固定手段2および下部固定手段3と、上部および下部固定手段2,3の間で直接的に支持される金属製の金網からなるフィルター本体4と、雨水ますに対する着脱を容易にするために上部固定手段の対抗する2点のそれぞれに独立して接続される第1および第2の吊り手手段5a,5bとから構成されている。また、本発明による雨水ます用フィルター1は、フィルター本体4の外表面上に図7に示されるような周方向の回転(ズレ)を強固に規制するための弾性変形可能な片持ち支持構造を有する回転止め手段6を備えていてもよい。
【0044】
図2には、図1に示された実施例1の雨水ます用フィルター1を、底部にバケツ状の泥溜め部11および土砂捕捉用バスケット12を備えるタイプの雨水ます10の中へ取り付けた場合の平面図(a)および図2(a)に示される雨水ます10をA−A断面で切り取った場合の断面図(b)が示されている。
【0045】
図2(b)より、フィルター本体4を下部から支持する下部固定手段3は、雨水ますの流出口14の下部に設けられた内壁面の段差15に当接することにより支持される。このように底部にバケツ状の泥溜め部11および土砂捕捉用バスケット12を備えているタイプの雨水ます10へ本発明によるフィルター1を適用すると、雨水ます10の開口部16を横断するように配置されるフィルターの第1および第2の吊り手手段5a,5bと土砂捕捉用バスケット12の上縁とが協働することにより、土砂捕捉用バスケット12をその上部に配置される雨水ます用フィルター1と共に着脱することが可能となり、雨水ます内部の掃除や点検などの作業性が向上するという利点がある。
【0046】
また、図1および図2の中に示されるフィルター本体4は上部および下部固定手段2,3と一体的な構造を形成するものであるが、上部および下部固定手段2,3の大きさとは関係なく流出口14を覆うことができる任意の形状および任意の大きさを設定することができ、且つ上部および下部固定手段2,3により雨水ます10内の任意の位置に配置することもできるため、雨水ます10の流入口を避けて流出口14のみへ選択的に設置することができる。
【0047】
本発明において、上部および下部固定手段2,3に使用される材料の種類や形状、性状に特に制限はないが、着脱時は外力を加えることにより雨水ます10の内壁面13より大きな曲率を有するように縮径することができ、且つ装着後は前記外力を解放することにより雨水ます10の内壁面13へ付勢するように拡径しなければならないため、金属などの弾性を有する棒状部材から作られていることが好ましい。
【0048】
また、フィルター本体4の雨水ますへの円滑な出し入れと装着後の強力な固定との両機能を両立させるためには、下部固定手段3は少なくとも180度以上の中心角を有する円弧形状を有しており、一方、下部固定手段3の上側に配置される上部固定手段2は前記下部固定手段3より小さな曲率を有し、且つ少なくとも180度以上の中心角を有する円弧形状を有していることが好ましい。
【0049】
そして、下部固定手段3には、使用時、雨水ます10の中でガタ付かない程度の安定性をもって設置することができる大きさを有するもの、すなわち、雨水ます10の内壁面13の曲率と略同等若しくはやや小さめの曲率を有する下部固定手段3を選択することにより上記の目的が達成される。
【0050】
また、本発明において、上部および下部固定手段2,3が少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状である必要があるとしている理由は、もし上部および下部固定手段2,3の中心角が180度未満であると、上部および下部固定手段2,3およびこれにより支持されるフィルター本体4が雨水ます10の中で内壁面13から離れるように傾倒してしまうおそれがあるからである。
【0051】
なお、実施例1の雨水ます用フィルター1は、上部および下部固定手段2,3と、金属製の金網からなるフィルター本体4の上縁および下縁に用いられている金網部材とが実質的に同一の棒状部材からできているため、上部および下部固定手段2,3がフィルター本体4の上縁および下縁の金網部材を兼用して共通化されている(図1(a),(b)参照)。
【0052】
さらに、実施例1のフィルター本体4では、図8に示されるように、第1および第2の固定手段2,3の後端部において対応する上下後端部を連結するように縦方向に延びた金網部材を配設してもよい。この場合、フィルター着脱の際の第1および第2の固定手段2,3の後端部の引っ掛かりが防止され、さらに上部および下部固定手段2,3が連動して縮径及び拡径されるようになるため、実施例1の雨水ます用フィルター1のよりスムーズな着脱が保証される。
【0053】
このように、本発明の雨水ます用フィルター1は上部および下部固定手段2,3を介して雨水ます10の中へ取り付けられるため、フィルター本体4の形状に影響されることなく、様々な形状を有するフィルター本体を雨水ます10の流出口14へ装着することができる。
【0054】
例えば、フィルター本体4の形状は、図1に示される雨水ます用フィルター1のように、フィルター本体が雨水ます10の内壁面13に接するように配置することができる曲面形状を有するものの他に、図3(a)に示されるようなドーム型に立体成形されたフィルター本体40や図3(b)に示される有底の筒型フィルター41など、雨水ますの流出口を覆うことができる形状であれば、特に制限されることなく様々な形状を有するフィルターを使用することができる。
【0055】
図3(a)に示されるようなドーム型形状のフィルター本体40を使用する場合、必要最小限のフィルター材料の使用により雨水ますの流出口を覆うことが可能となり、また立体化によるフィルター面積の拡大により枯葉等の異物の付着によるフィルター詰まりの危険性が低減されるというメリットがある。
【0056】
また、図3(b)に示されるような有底の筒型フィルター41を使用する場合、雨水ますの中から更に下流側へ流れ出ようとする枯葉等の異物は筒型フィルター41の外周で除去し、雨水は筒型フィルター41を透過またはオーバーフローさせて筒型フィルター41の内部から確実に下流側へ流出させることができるため、雨水ます用フィルターの点検及びメンテナンスサイクルを延ばすことができるというメリットがある。
【0057】
ただし、ドーム型形状のフィルター本体40のように、フィルター本体40の高さ(直径)が上部固定手段2と下部固定手段3との間の距離より短い場合は、図3(a)に示されるように上部および下部固定手段2,3を高さ方向に連結する棒状の補助部材20を用いてドーム型形状のフィルター本体40を間接的に支持する必要がある。
【0058】
本発明の雨水ます用フィルター1は、図1に示されるように、フィルター本体1の雨水ます10に対する着脱を容易にするために、上部固定手段2の対抗する2点21,22のそれぞれに独立して接続される第1および第2の吊り手手段5a,5bを備えている。したがって、吊り手手段5a,5bを利用すれば、本発明の雨水ます用フィルター1は、雨水ます10の流出口14が上部開口部16から遠く離れた深い位置に配置されている場合であっても、雨水ます10の上部開口部16から容易にフィルター本体4を着脱することができる。
【0059】
図4には、1および第2の吊り手手段5a,5bの吊り手部分を拡大した他の変形例が示されている。第1および第2の吊り手手段5a,5bは、例えば棒状部材のような簡単な構造であってよく、また、人手により第1および第2の吊り手手段5a,5bを相対的に動かして上部固定手段2へ外力を加える場合は、その操作が容易となるように第1および第2の吊り手手段5a,5bにその端部を略直角に折り曲げるなどして持ち手を形成させてもよい(図4(a)〜(e)参照)。
【0060】
さらに、フック等を用いてフィルターを出し入れする場合は、そのフック等とのズレを防止(バランスを保つ)しつつ、第1および第2の吊り手手段5a,5bを同時に吊り上げることにより上部固定手段2へ曲げ荷重を加えられるようにするために、例えば第1の吊り手手段5aおよび第2の吊り手手段5bを互いに上向きに延ばして山形を形成するように交差させてもよい(図5参照)。また、第1および第2の吊り手手段5a,5bを、ヒンジ機構又はピボット機構などを有する回動手段50により互いに回動可能に連結することによっても同様の目的を達成することができる(図6参照)。
【0061】
これらの場合、フック等を介して第1および第2の吊り手手段5a,5bへ加えられた上向きの吊り荷重は、第1および第2の吊り手手段5a,5bを介して上部固定手段2の曲率を大きくする(縮径する)方向に働く曲げ荷重へ転換されため、上部固定手段2およびそれに支持されるフィルター本体4は、第1および第2の吊り手手段5a,5bを吊り上げる又は吊り下げる操作を行うのみで自動的に縮径するように弾性変形する。このため、本発明による雨水ます用フィルター1は、雨水ます10の内部へ極めて容易に着脱することができるようになる。
【0062】
したがって、このような機能を達成するためには、第1および第2の吊り手手段5a,5bは、それらに加えられる上向きの吊り荷重を上部固定手段2へその曲率が大きくなる(縮径する)ように伝達することができるような構造を有しておればよく、必ずしも図1,4〜6に示される実施例のような構造に限定されるものではない。
【0063】
以上の結果、上部固定手段2は、雨水ますへの着脱時、第1および第2の吊り手手段5a,5bを介して外力を加えることにより雨水ます10の内壁面13より大きな曲率を有するように縮径することができ、そして雨水ます10への装着後は第1および第2の吊り手手段5a,5bから前記外力を解放することにより、雨水ます10の内壁面13へ付勢するように拡径してフィルター本体4を雨水ます10の内壁面13へ強力に固定する。
【0064】
また、本発明による雨水ます用フィルター1は、フィルター本体4の周方向へ回転(ズレ)をより強固に防止するため、フィルター本体4の外表面上で弾性変形可能な片持ち支持構造を形成するように、フィルター本体4に固定される固定端とフィルター本体の表面から突出した自由端とを有する回転止め手段6を備えていてもよい(図7参照)。
【0065】
回転止め手段6は図示しないが、フィルター本体4が雨水ます10の内壁面13と相対する時は内壁面13からの反力を受けてフィルター本体4の表面へ向けて引っ込んでおり、そしてフィルター本体4が前記雨水ます10の流出口14と相対する時はフィルター本体4の表面から流出口14の内部へ向けて突出することにより、フィルター本体4の周方向の回転(ズレ)を強力に規制することができる。
【0066】
回転止め手段6の形状は、フィルター本体4に対し固定端と自由端を有する片持ち支持構造を有していることが好ましく、平面的に見た時、I型形状又はII型形状のような1つ固定端に対し1つの自由端を有する片持ち支持構造、若しくはY型形状、V型形状又はT型形状のような1つ固定端に対し2つの自由端を有する片持ち支持構造であると、構造が簡単で且つ棒状部材から作製するのに適しており、さらに雨水ます用フィルター1の周方向の回転(ズレ)をより強固に防止するのに極めて効果的である。
【0067】
また、回転止め手段6は、本発明のフィルター1を取り外す際、雨水ます10の流出口14の中へ突出した部分が流出口14の内壁へ引っ掛からないようにするため、この部分にR又は流出口14の内壁面に対して傾斜角度を付けることが好ましい(図7(b)参照)。
【0068】
図7には、本発明による実施例2の雨水ます用フィルター1の正面図(a)、側面図(b)、平面図(c)が示されている。
【0069】
実施例2の雨水ます用フィルター1’は、金属製の金網からなるフィルター本体4が上部および下部固定手段と同じ長さだけ周方向に延びており、それ以外は実施例1の雨水ます用フィルター1と同じ構造、同じ構成を有する。したがって、実施例2の雨水ます用フィルター1’においても、上部および下部固定手段2,3とフィルター本体4の上縁および下縁に用いられている金網部材とが実質的に同一の棒状部材から形成され、そのため上部および下部固定手段2,3は、フィルター本体4の上縁および下縁の金網部材を兼用して共通化されている(図7(a),(b)参照)。
【0070】
このように、実施例2の雨水ます用フィルター1’では、1つのフィルター本体4で複数の流出口を覆うこともでき、それ故、複数の流出口及び/又は複数の流入口を有する合流タイプの雨水ます(図示せず)に対しても適用することができる。
【0071】
以上の結果、本発明によれば、雨水ますの中へ流れ込んできた砂利や泥、木の葉などの異物が更に下流側の排水設備へ排出されるのを防止する目的で、小径の合成樹脂製の雨水ます又は雨水浸透ますであっても着脱が極めて容易であり、かつ装着後は所定の位置から動くことなく安定的に雨水ますの流出口を覆うことができる、簡易構造の雨水ます用フィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1の雨水ます用フィルターの正面図(a)、側面図(b)及び平面図(c)である。
【図2】実施例1の雨水ます用フィルターを泥溜め部付き雨水ますへ装着した状態での平面図(a)及びA−A断面図(b)である。
【図3】本発明による雨水ます用フィルターのフィルター本体の変形例を示す模式図である。
【図4】本発明による雨水ます用フィルターの吊り手手段の変形例を示す吊り手部分を拡大した模式図である。
【図5】本発明による雨水ます用フィルターの吊り手手段が山形を形成するように交差している変形例を示す模式図である。
【図6】本発明による雨水ます用フィルターの吊り手手段が回動手段により連結されている変形例を示す模式図である。
【図7】実施例2の雨水ます用フィルターの正面図、側面図及び平面図である。
【図8】実施例1の雨水ます用フィルターの変形例の正面図(a)、側面図(b)及び平面図(c)である。
【符号の説明】
【0073】
1,1’・・・・・・・・・ 雨水ます用フィルター
2 ・・・・・・・・・・・・・ 上部固定手段
3 ・・・・・・・・・・・・・ 下部固定手段
4,40,41・・・ フィルター本体
5a,5b・・・ 吊り手手段
6 ・・・・・・・・・・・・・ 回転止め手段
10・・・・・・・・・・・・・ 雨水ます
11・・・・・・・・・・・・・ 泥溜め部
12・・・・・・・・・・・・・ 土砂捕捉用バスケット
13・・・・・・・・・・・・・ 内壁面
14・・・・・・・・・・・・・ 流出口
15・・・・・・・・・・・・・ 段差
16・・・・・・・・・・・・・ 開口部
20・・・・・・・・・・・・・ 補助部材
21,22・・・・・・・ 対抗する点
50・・・・・・・・・・・・・ 回動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水ますの中へ固定するための、少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる下部固定手段および前記下部固定手段より小さな曲率を有し、且つ少なくとも180度以上の中心角を有する円弧状の棒状部材からなる上部固定手段と、
前記上部固定手段と下部固定手段との間で前記雨水ますの内部から流出口のみを覆うように、前記上部固定手段および下部固定手段により直接的に又は間接的に支持される網目状又はスリット状のフィルター本体と、
前記雨水ますに対する着脱を容易にするために、前記上部固定手段の対抗する2点のそれぞれに独立して接続される第1および第2の吊り手手段と、
からなり、そして
前記上部固定手段は、雨水ますへの着脱時、第1および第2の吊り手手段を介して外力を加えることにより雨水ますの内壁面より大きな曲率を有するように縮径することができ、そして雨水ますへの装着後は前記外力を解放することにより雨水ますの内壁面へ付勢するように拡径して、それにより前記フィルター本体を前記雨水ますの内壁面へ固定することを特徴とする雨水ます用フィルター。
【請求項2】
前記フィルター本体は、金属製の金網フィルターであることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項3】
前記棒状部材からなる前記第1および下部固定手段は、前記フィルター本体の上縁および下縁の金網部材を兼用して共通化されていることを特徴とする請求項2に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項4】
前記第1および第2の吊り手手段は、それらと略直交する持ち手を備えていることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用のフィルター。
【請求項5】
前記第1および第2の吊り手手段は、両者を同時に吊り上げることにより、前記上部固定手段へ曲げ荷重を加えられるように互いに上向きに延びて山形を形成するように交差していることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項6】
前記第1および第2の吊り手手段は、回動手段により互いに回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項7】
前記第1および第2の吊り手手段は、それらに加えられる上向きの吊り荷重を前記上部固定手段へ、その曲率が大きくなる(縮径する)ように伝達することができることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項8】
前記雨水ます用フィルターは、弾性変形可能な片持ち支持構造を形成するように前記フィルター本体の外表面上に設けられており、そして前記フィルター本体が前記雨水ますの内壁面と相対する時、前記内壁面からの反力を受けて前記フィルター本体の表面へ向けて引っ込んでおり、そして前記フィルター本体が前記雨水ますの流出口と相対する時、前記フィルター本体の表面から前記流出口の中へ向けて突出することにより、前記フィルター本体の周方向の回転を防止する、棒状部材からなる回転止め手段をさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項9】
前記回転止め手段は、1つ固定端に対し1つの自由端を有するように一体的に連結された構造又は1つ固定端に対し2つの自由端を有するように一体的に連結された構造を有することを特徴とする請求項4に記載の雨水ます用フィルター。
【請求項10】
前記雨水ます用フィルターは、前記下部固定手段が前記雨水ますの流出口下部に設けられた内壁面の段差部に当接することにより支持されることを特徴とする請求項1に記載の雨水ます用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−112102(P2010−112102A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286848(P2008−286848)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】