説明

電力変換装置

【課題】構成部品の特性のばらつきに伴って発生する変圧器の偏磁を抑えることができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】FET110〜113の特性にばらつきがあった場合、1次巻線100に流れる電流に、正又は負の直流成分が含まれるようになる。しかし、制御回路13は、出力側回路12の出力電圧と、2回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス電圧を決定する。つまり、1次巻線100に流れる正の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御する。また、負の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御する。そのため、最終的に直流成分を抑えることができる。従って、FET110〜113の特性のばらつきに伴って発生するトランスの偏磁を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧器を備えた電力変換装置として、例えば特許文献1に開示されているDC−DCコンバータがある。
【0003】
このDC−DCコンバータは、トランスと、インバータ回路と、整流平滑回路と、制御回路とを備えている。トランスは、1次コイルと、2次コイルとを備えている。トランスは、1次コイルに印加された交流電圧を降圧して2次コイルから出力する。インバータ回路は、ハイサイドスイッチと、ローサイドスイッチとを備えている。インバータ回路は、1次コイルと主バッテリの間に接続され、主バッテリの直流電圧を交流電圧に変換して1次コイルに印加する。整流平滑回路は、トランスの2次コイルに接続され、2次コイルから出力される降圧された交流電圧を整流するとともに平滑化し、直流電圧に変換する。そして、変換した直流電圧を補機バッテリに供給し、補機バッテリを充電する。制御回路は、整流平滑回路の出力電圧に基づいてパルス電圧を決定するとともに、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に1次コイルに印加されるように、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチをスイッチングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3615004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インバータ回路において構成部品の特性にばらつきがあった場合、1次コイルに流れる電流に、正又は負の直流成分が含まれるようになる。そのため、トランスの磁束が正側又は負側に偏る偏磁が発生してしまう。例えば、1次コイルに流れる電流に正の直流成分が含まれるようになると、正の電流の振幅が直流成分だけ増加する。一方、負の電流の振幅は直流成分だけ減少する。しかし、制御回路が、整流平滑回路の出力電圧と1次コイルに流れる電流に基づいてパルス電圧を決定する構成であれば、振幅が増加した正の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御するとともに、振幅が減少した負の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御することで、最終的に直流成分を抑えることができる。
【0006】
デジタル制御の場合、処理時間の関係から、1回前のパルス電圧を印加したときに1次コイルに流れる電流に基づいてパルス電圧を決定することが一般的であった。この場合、正の直流成分が発生すると、振幅が減少した負の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御するとともに、振幅が増加した正の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御することになる。そのため、直流成分が徐々に増大し、正の直流成分が増加してしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、構成部品の特性のばらつきに伴って発生する変圧器の偏磁を抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、第2変換回路の出力と偶数回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線に流れる電流に基づいてパルス電圧を決定することで、構成部品の特性のばらつきに伴って発生する変圧器の偏磁を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、1次巻線と2次巻線とを有する変圧器と、1次巻線と電源の間に接続され、電源の電圧を交流電圧に変換して1次巻線に印加する第1変換回路と、2次巻線に接続され、2次巻線の交流電圧を変換して出力する第2変換回路と、第2変換回路の出力と1次巻線に流れる電流に基づいて1次巻線に印加するパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に1次巻線に印加されるように第1変換回路を制御する制御回路と、を備えた電力変換装置において、制御回路は、第2変換回路の出力と、偶数回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線に流れる電流に基づいてパルス電圧を決定することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、1次巻線に流れる正の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御するとともに、負の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御することができる。そのため、第1変換回路における構成部品の特性のばらつきに伴って発生する変圧器の偏磁を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の電力変換装置は、制御回路は、第2変換回路の出力と電圧指令の比較結果に基づいて電流指令を決定するとともに、1次巻線に流れる電流と電流指令の比較結果に基づいてパルス電圧を決定することを特徴とする。この構成によれば、第2変換回路の出力と1次巻線に流れる電流に基づいて確実にパルス電圧を決定することができる。
【0012】
請求項3に記載の電力変換装置は、制御回路は、1次巻線に印加するパルス電圧のパルス幅を決定することを特徴とする。この構成によれば、第2変換回路の出力と1次巻線に流れる電流に応じた電圧を1次巻線に確実に印加することができる。
【0013】
請求項4に記載の電力変換装置は、制御回路は、第1変換回路に流れる電流に基づいて1次巻線に流れる電流を求めることを特徴とする。この構成によれば、1次巻線に流れる電流は、第1変換回路から供給される。そのため、1次巻線に流れる電流を確実に求めることができる。
【0014】
請求項5に記載の電力変換装置は、車両に搭載されることを特徴とする。この構成によれば、車両に搭載される電力変換装置において、構成部品の特性のばらつきに伴って発生する変圧器の偏磁を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。
【図2】図1におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】図1におけるDC−DCコンバータ装置において、1次巻線に流れる電流に直流成分を含むようになった場合の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】図1におけるDC−DCコンバータ装置のトランスの磁束の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載され、バッテリの電圧を絶縁して降圧し電子装置に供給するDC−DCコンバータ装置に適用した例を示す。
【0017】
次に、本実施形態のDC−DCコンバータ装置について説明する。まず、図1を参照して本実施形態のDC−DCコンバータ装置の構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態におけるDC−DCコンバータ装置の回路図である。なお、トランスの1次巻線、2次巻線に付された・印は、巻線の巻始めを示す。また、トランスの1次巻線に付された矢印は、印加される電圧の極性を示す。
【0018】
図1に示すDC−DCコンバータ装置1(電力変換装置)は、バッテリB1(電源)の出力する直流電圧を絶縁して降圧し、車両に搭載された電子装置S1に供給するフルブリッジ式コンバータである。DC−DCコンバータ装置は、トランス10(変圧器)と、入力側回路11(第1変換回路)と、出力側回路12(第2変換回路)と、制御回路13とを備えている。
【0019】
トランス10は、1次側に入力される交流電圧を降圧して2次側から出力する素子である。トランス10は、1次巻線100と、2次巻線101、102とを備えている。2次巻線101、102の巻数は、1次巻線100の巻数より少ない巻数に設定されている。1次巻線100の一端と他端は、入力側回路11に接続されている。2次巻線101、102は、直列接続されており、出力側回路12の入力に接続されている。2次巻線101の巻始め側である一端と、2次巻線102の巻終り側である一端は、出力側回路12にそれぞれ接続されている。
【0020】
入力側回路11は、1次巻線100とバッテリB1の間に接続され、バッテリB1の出力する直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加する回路である。入力側回路11は、FET110〜113を備えている。FET110〜113は、スイッチングすることで、バッテリB1の直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加するスイッチング素子である。FET110、111及びFET112、113は、それぞれ直列接続されている。具体的には、FET110、112のソースがFET111、113のドレインにそれぞれ接続されている。直列接続されたFET110、111及びFET112、113は、バッテリB1に並列接続されている。具体的には、FET110、112のドレインがバッテリB1の正極端に、FET111、113のソースがバッテリB1の負極端にそれぞれ接続されている。
【0021】
出力側回路12は、2次巻線101、102に接続され、2次巻線101、102の出力する交流電圧を整流するとともに平滑化し、直流電圧に変換して出力する回路である。出力側回路12は、ダイオード120、121と、コイル122と、コンデンサ123とを備えている。
【0022】
ダイオード120のアノードは、2次巻線101の巻始め側である一端に接続されている。また、カソードは、コイル122に接続され、コイル122を介して電子装置S1の正極端に接続されている。
【0023】
ダイオード121のアノードは、2次巻線102の巻終り側である一端に接続されている。また、カソードは、コイル122に接続され、コイル122を介して電子装置S1の正極端に接続されている。
【0024】
コンデンサ123の一端は、電子装置S1の正極端に接続されるコイル122の他端に接続されている。また、他端は、電子装置S1の負極端に接続される2次巻線101、102の接続点に接続されている。
【0025】
制御回路13は、出力側回路12の出力電圧が電圧指令と一致するように、入力側回路11を制御する回路である。具体的には、出力側回路12の出力電圧と1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス幅を決定し、決定したパルス幅のパルス電圧が時間に対して正負交互に1次巻線100に印加されるようにFET110〜113のスイッチングを制御する。より具体的には、出力側回路12の出力電圧と、2回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス幅を決定する。制御回路13は、電圧指令部130と、電圧検出部131と、誤差増幅部132と、電流検出部133と、制御部134とを備えている。
【0026】
電圧指令部130は、電圧指令を出力するブロックである。電圧指令部130は、誤差増幅部132に接続されている。
【0027】
電圧検出部131は、出力側回路12の出力電圧を検出し出力するブロックである。電圧検出部131は、出力側回路12の出力端に接続されている。また、誤差増幅部132に接続されている。
【0028】
誤差増幅部132は、電圧検出部131の出力と電圧指令部130の出力に基づいて電流指令を決定し出力するブロックである。具体的には、電圧検出部131の出力と電圧指令部130の出力の偏差を比例積分し電流指令として出力する。誤差増幅部132は、電圧指令部130と電圧検出部131にそれぞれ接続されている。また、制御部134に接続されている。
【0029】
電流検出部133は、トランス10の1次巻線100に流れる電流を検出し出力するブロックである。具体的には、入力側回路11の入力電流に基づいて1次巻線100に流れる電流を検出し出力する。電流検出部133は、電流センサを介して入力側回路11の入力端に接続されている。また、制御部134に接続されている。
【0030】
制御部134は、電流検出部133の出力と誤差増幅部132の出力の偏差を増幅してパルス幅を決定し、FET110〜113のスイッチングを制御するブロックである。具体的には、2回前のパルス電圧を印加したときの電流検出部133の出力と誤差増幅部132の出力の偏差を増幅してパルス幅を決定する。制御部134は、誤差増幅部132と電流検出部133に接続されている。また、FET110〜113のゲートにそれぞれ接続されている。
【0031】
次に、図1〜図4を参照してDC−DCコンバータ装置の動作について説明する。ここで、図2は、図1におけるDC−DCコンバータ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図3は、図1におけるDC−DCコンバータ装置において、1次巻線に流れる電流に直流成分を含むようになった場合の動作を説明するためのタイミングチャートである。図4は、図1におけるDC−DCコンバータ装置のトランスの磁束の波形図である。
【0032】
図2に示すように、制御部134は、周期T0、デューティ比50%の基準パルス信号に同期してFET110をスイッチングするとともに、FET111をFET110と相補的にスイッチングする。また、基準パルスの周期T0の1/2倍の制御周期毎に、1回前のパルス電圧印加中における出力側回路12の出力電圧と、2回前のパルス電圧印加中における1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス幅を決定する。そして、決定したパルス幅だけ基準パルス信号の位相をずらし、位相のずれた基準パルス信号に同期してFET112をスイッチングするとともに、FET113をFET112と相補的にスイッチングする。
【0033】
例えば、時刻t7においてパルス幅W3を決定する場合、1回前のパルス電圧印加中の時刻t5における出力側回路12の出力電圧と、2回前のパルス電圧印加中の時刻t2における1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス幅W3を決定する。具体的には、誤差増幅部132が、時刻t5における電圧検出部131の出力V2と電圧指令部130の出力の偏差を比例積分し電流指令として出力する。そして、制御部134が、時刻t2における電流検出部133の出力I1と誤差増幅部132の出力の誤差を増幅し、時刻t7においてパルス幅W3を決定する。
【0034】
また、時刻t10においてパルス幅W4を決定する場合、1回前のパルス電圧印加中の時刻t8における出力側回路12の出力電圧と、2回前のパルス電圧印加中の時刻t5おける1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス幅W3を決定する。具体的には、誤差増幅部132が、時刻t8における電圧検出部131の出力V3と電圧指令部130の出力の偏差を比例積分し電流指令として出力する。そして、制御部134が、時刻t5における電流検出部133の出力I2と誤差増幅部132の出力の誤差を増幅し、時刻t10においてパルス幅W4を決定する。
【0035】
これにより、時刻t1〜t3においてFET110、113がともにオンし、1次巻線100にパルス幅W1の正のパルス電圧が印加され、正の電流が流れる。時刻t4〜t6においてFET111、112がともにオンし、パルス幅W2の負のパルス電圧が印加され、負の電流が流れる。時刻t7〜t9においてFET110、113がともにオンし、パルス幅W3の正のパルス電圧が印加され、正の電流が流れる。時刻t10〜t12においてFET111、112がともにオンし、パルス幅W4の負のパルス電圧が印加され、負の電流が流れる。
【0036】
以降、同様にして1次巻線100に正負交互にパルス電圧が印加される。
【0037】
図1において1次巻線100に交流電圧が印加されると、2次巻線101、102から降圧された交流電圧が出力される。出力側回路12は、2次巻線101、102の出力する交流電圧を整流するとともに平滑化し、電子装置S1に供給する。
【0038】
ところで、図1に示すDC−DCコンバータ装置1において、FET110〜113の特性にばらつきがあった場合、1次巻線100に流れる電流に正又は負の直流成分が含まれるようになる。そのため、トランス10の磁束が正側又は負側に偏る偏磁が発生してしまう。例えば、1次巻線100に流れる電流に正の直流成分が含まれるようになると、正の電流の振幅が直流成分だけ増加する。一方、負の電流の振幅は直流成分だけ減少する。しかし、振幅が増加した正の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御するとともに、振幅が減少した負の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御することで、最終的に直流成分を抑えることができる。
【0039】
デジタル制御の場合、処理時間の関係から、1回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線に流れる電流に基づいてパルス電圧を決定することが一般的であった。この場合、正の直流成分が発生すると、振幅が減少した負の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御するとともに、振幅が増加した正の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御することになる。そのため、直流成分が徐々に増大し、正の直流成分が増加してしまう。
【0040】
しかし、DC−DCコンバータ装置1は、前述したように、2回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス電圧を決定する。つまり、振幅が増加した正の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御するとともに、振幅が減少した負の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御することができる。
【0041】
例えば、図3に示すように、1次巻線100に流れる電流に正の直流成分I0が含まれるようになった場合において、時刻t19においてパルス幅W7を決定する場合、1回前のパルス電圧印加中の時刻t17における出力側回路12の出力電圧と、2回前のパルス電圧印加中の時刻t14における1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス幅W7を決定する。具体的には、誤差増幅部132が、時刻t17における電圧検出部131の出力V6と電圧指令部130の出力の偏差を比例積分し電流指令として出力する。そして、制御部134が、時刻t14における電流検出部133の出力(I5+I0)と誤差増幅部132の出力の誤差を増幅し、時刻t19においてパルス幅W7を決定する。つまり、振幅が増加した正の電流(I5+I0)に基づいて正のパルス電圧のパルス幅W7を決定する。
【0042】
また、時刻t22においてパルス幅W8を決定する場合、1回前のパルス電圧印加中の時刻t20における出力側回路12の出力電圧と、2回前のパルス電圧印加中の時刻t17おける1次巻線100に流れる電流に基づいてパルス幅W8を決定する。具体的には、誤差増幅部132が、時刻t20における電圧検出部131の出力V7と電圧指令部130の出力の偏差を比例積分し電流指令として出力する。そして、制御部134が、時刻t17における電流検出部133の出力(I6−I0)と誤差増幅部132の出力の誤差を増幅し、時刻t10においてパルス幅W8を決定する。つまり、振幅が減少した負の電流(I6−I0)に基づいて負のパルス電圧のパルス幅W4を決定する。
【0043】
従って、最終的に正の直流成分を抑えることができる。負の直流成分が発生した場合も同様である。これにより、図4に示すように、FET110〜113の特性のばらつきに伴って発生するトランス10の偏磁を抑えることができる。
【0044】
次に、効果について説明する。
【0045】
本実施形態によれば、1次巻線100に流れる正の電流に基づいて正のパルス電圧を決定し、正の電流を制御するとともに、負の電流に基づいて負のパルス電圧を決定し、負の電流を制御することができる。そのため、車両に搭載されるDC−DCコンバータ装置1において、FET110〜113の特性にばらつきに伴って発生するトランス10の偏磁を抑えることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、制御回路13は、出力側回路12の出力電圧と電圧指令の比較結果に基づいて電流指令を決定するとともに、1次巻線100に流れる電流と電流指令の比較結果に基づいてパルス電圧を決定する。そのため、出力側回路12の出力電圧と1次巻線100に流れる電流に基づいて確実にパルス電圧を決定することができる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、制御回路13は、1次巻線100に印加するパルス電圧のパルス幅を決定する。そのため、出力側回路12の出力電圧と1次巻線100に流れる電流に応じた電圧を1次巻線100に確実に印加することができる。
【0048】
加えて、本実施形態によれば、制御回路13は、入力側回路11に流れる電流に基づいて1次巻線100に流れる電流を求める。1次巻線100に流れる電流は、入力側回路11から供給される。そのため、1次巻線100に流れる電流を確実に求めることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、2回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線に流れる電流に基づいてパルス幅を決定する例を挙げているが、これに限られるものではない。偶数回前のパルス電圧を印加したときに1次巻線に流れる電流に基づいてパルス幅を決定するようにすればよい。より以前の電流に基づいてパルス幅を決定すると、遅延が発生して、電流変化に対する応答性が低下する可能性がある。しかし、低ゲインの電流フィードバックを設けることで、応答性の低下の抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態では、出力側回路が、2次巻線の出力する交流電圧を直流電圧に変換する例を挙げているが、これに限られるものではない。出力側回路は、2次巻線の出力する交流電圧を、電圧の異なる交流電圧に変換する回路であってもよい。また、周波数の異なる交流電圧に変換する回路であってもよい。
【0051】
また、本実施形態では、出力側回路の出力電圧と電圧指令の偏差を比例積分して電流指令を決定するとともに、1次巻線に流れる電流と電流指令の偏差を増幅してパルス幅を決定する例を挙げているが、これに限られるものではない。偏差を比例積分してもよいし、さらに微分してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、1次巻線100に印加するパルス電圧のパルス幅を決定し、決定したパルス電圧が印加されるように入力側回路11を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。パルス電圧の振幅を決定し、決定したパルス電圧が印加されるように入力側回路を制御してもよい。また、所定パルス幅及び振幅のパルス電圧の時間に対する密度を決定し、決定したパルス電圧が印加されるように入力側回路を制御してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、直流電圧を交流電圧に変換して1次巻線100に印加する例を挙げているが、これに限られるものではない。交流電圧を形態の異なる交流電圧、例えば電圧や周波数の異なる交流電圧に変換して1次巻線に印加するようにしてもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では、電子装置S1に所定の電圧で電力を供給する例を挙げているが、これに限られるものではない。2次電池に所定の電圧で電力を供給し、2次電池を充電するようにしてもよい。
【0055】
加えて、本実施形態では、出力側回路12の出力電圧に基づいて入力側回路11を制御する例を挙げているが、これに限られるものではない。誘導加熱装置のように、出力側回路の出力に伴って変化する温度に基づいて入力側回路を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・DC−DCコンバータ装置(電力変換装置)、10・・・トランス(変圧器)、100・・・1次巻線、101、102・・・2次巻線、11・・・入力側回路(第1変換回路)、110〜113・・・FET、12・・・出力側回路(第2変換回路)、120、121・・・ダイオード、122・・・コイル、123・・・コンデンサ、13・・・制御回路、130・・・電圧指令部、131・・・電圧検出部、132・・・誤差増幅部、133・・・電流検出部、134・・・制御部、B1・・・バッテリ(電源)、S1・・・電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と2次巻線とを有する変圧器と、
前記1次巻線と電源の間に接続され、前記電源の電圧を交流電圧に変換して前記1次巻線に印加する第1変換回路と、
前記2次巻線に接続され、前記2次巻線の交流電圧を変換して出力する第2変換回路と、
前記第2変換回路の出力と前記1次巻線に流れる電流に基づいて前記1次巻線に印加するパルス電圧を決定し、決定したパルス電圧が時間に対して正負交互に前記1次巻線に印加されるように前記第1変換回路を制御する制御回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記制御回路は、前記第2変換回路の出力と、偶数回前のパルス電圧を印加したときに前記1次巻線に流れる電流に基づいてパルス電圧を決定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第2変換回路の出力と出力に対する指令の比較結果に基づいて電流指令を決定するとともに、前記1次巻線に流れる電流と電流指令の比較結果に基づいてパルス電圧を決定することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記1次巻線に印加するパルス電圧のパルス幅を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第1変換回路に流れる電流に基づいて前記1次巻線に流れる電流を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
車両に搭載されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−62916(P2013−62916A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198635(P2011−198635)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】