説明

電動式サムターン錠

【課題】メンバーによる解錠を一時的に制限できる電動式サムターン錠を提供することである。
【解決手段】電動モータを駆動するマイクロコンピュータ8の制御回路16に、電動モータによる解錠を禁止するロックアウトプログラム16aを組み込んで、ロックアウトプログラム16aを作動状態と不作動状態に誘導する静電スイッチ12を設け、作動誘導状態または不作動誘導状態でリーダ11がICチップの特定者であることを識別する特定の固有情報を読み取ったときに、ロックアウトプログラム16aを作動状態または不作動状態とすることにより、ロックアウトプログラム16aを作動状態としたときに、メンバーによる解錠を一時的に制限できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サムターンを電動アクチュエータで操作する電動式サムターン錠に関する。
【背景技術】
【0002】
デッドボルトを出没させて解施錠するサムターンと、サムターンを操作する電動モータ等の電動アクチュエータを備えた電動式サムターン錠には、セキュリティ性能を高めるために、IC(Integrated Circuit)チップに書き込まれた固有情報を読み取るリーダを設けて、リーダで読み取られた固有情報を照合し、電動アクチュエータを駆動する制御装置を設けて、ICチップを装着したICカード等のデバイスの所持者のみが解錠できるようにしたものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
前記ICチップを装着したICカード等のデバイスには、リーダに接触させて固有情報を読み取らせる接触型のものと、リーダに接触させずに固有情報を読み取らせる非接触型のものとがあり、特許文献1、2に記載されたものは、いずれも非接触型のICカードや携帯電話等のデバイスを用いるようにしている。特許文献2に記載されたものは、電子マネーや定期券等として使用されるICカードも使用できるようにしている。
【0004】
前記非接触型のデバイスを用いる電動式サムターン錠は、リーダを露出しないように配置することができるので、リーダを露出させる必要のある接触型のデバイスを用いるものよりもシステム破壊等に対する安全性が高く、耐久性も優れている。このため、近年は、新設のものの他に手動式のサムターン錠を改造するものも含めて、非接触型のデバイスを用いるものが増加している。なお、手動式のサムターン錠を改造する場合は、解施錠するシリンダ錠を組み込んだ把手を流用することも多い。
【0005】
前記非接触型のデバイスに装着されるICチップは、固有情報が書き込まれた電子回路と、リーダから発信される電波を受信して、電子回路に書き込まれた固有情報を送信するアンテナ素子とからなり、ICチップを装着したICカード等のデバイスをリーダに向けて翳すことにより、リーダによって固有情報が読み取られ、サムターン錠が解錠される。なお、施錠については、解錠と同様に、ICカード等のデバイスを翳すことにより行うものと、扉を閉じたときに自動的に施錠されるオートロック式のものとがある。通常、ICカード等のデバイスは、電動式サムターン錠を取り付けた建屋や部屋を利用する社員や家族等の複数のメンバーが所持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−364220号公報
【特許文献2】特開2009−270366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載された従来の電動式サムターン錠は、ICカード等のデバイスを所持するメンバー全員がいつでも解錠することができる。このため、例えば、会社等で夜間や休日等の立ち入りを禁止するときに、メンバーによる解錠を阻止することができず、機密管理等に支障を来たす問題がある。近年、このように、メンバーによる解錠を一時的に制限したいという要求が増加している。
【0008】
そこで、本発明の課題は、メンバーによる解錠を一時的に制限できる電動式サムターン錠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、デッドボルトを出没させて解施錠するサムターンと、サムターンを操作する電動アクチュエータと、ICチップに書き込まれた固有情報を読み取るリーダと、このリーダで読み取られた固有情報を照合して、少なくとも解錠するように前記電動アクチュエータを駆動する制御装置とを設けた電動式サムターン錠において、前記電動アクチュエータを駆動する制御装置の制御回路に、電動アクチュエータによる解錠を禁止するロックアウトプログラムを組み込み、このロックアウトプログラムを作動状態に誘導する作動誘導スイッチと、ロックアウトプログラムを不作動状態に誘導する不作動誘導スイッチを設け、前記作動誘導スイッチが入りの状態で前記リーダが前記ICチップの特定の固有情報を読み取ったときに、前記ロックアウトプログラムを作動状態とし、前記不作動誘導スイッチが入りの状態で前記リーダが前記特定の固有情報を読み取ったときに、前記ロックアウトプログラムを不作動状態とする構成を採用した。
【0010】
すなわち、電動アクチュエータを駆動する制御装置の制御回路に、電動アクチュエータによる解錠を禁止するロックアウトプログラムを組み込み、このロックアウトプログラムの作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチを設け、作動誘導スイッチまたは不作動誘導スイッチが入りの状態でリーダがICチップの特定の固有情報を読み取ったときに、ロックアウトプログラムを作動状態または不作動状態とすることにより、必要に応じて、特定の固有情報が書き込まれたICチップを装着したデバイスの所持者がロックアウトプログラムを作動状態または不作動状態として、ロックアウトプログラムを作動状態としたときに、メンバーによる解錠を一時的に制限できるようにした。
【0011】
前記ICチップを、前記リーダと接触させない非接触型のデバイスに装着することにより、システム破壊等に対する安全性と耐久性が優れたものとすることができる。非接触型のデバイスとしては、ICカードの他に携帯電話等も用いることができる。
【0012】
前記作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチの少なくともいずれかを、扉の外側に向けられて触れられる静電スイッチとすることにより、静電スイッチに扉の外側から触れるのみで、作動誘導スイッチや不作動誘導スイッチを入れることができる。
【0013】
前記作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチを共通の前記静電スイッチとし、これらの作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチを入りとするときに、前記静電スイッチに触れるパターンを互いに異なるものとすることにより、スイッチの数を減らして、コンパクトに設計することができる。
【0014】
前記静電スイッチに触れるパターンは、触れる回数、触れる時間、またはこれらの回数と時間を組み合わせたものに設定するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電動式サムターン錠は、電動アクチュエータを駆動する制御装置の制御回路に、電動アクチュエータによる解錠を禁止するロックアウトプログラムを組み込み、このロックアウトプログラムの作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチを設け、作動誘導スイッチまたは不作動誘導スイッチが入りの状態でリーダがICチップの特定の固有情報を読み取ったときに、ロックアウトプログラムを作動状態または不作動状態とするようにしたので、必要に応じて、特定の固有情報が書き込まれたICチップを装着したデバイスの所持者がロックアウトプログラムを作動状態または不作動状態として、ロックアウトプログラムを作動状態としたときに、メンバーによる解錠を一時的に制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電動式サムターン錠の実施形態を示す一部切欠き縦断面図
【図2】図1の扉の外側からの斜視図
【図3】図1の電動式サムターン錠の電気系統図
【図4】図3のマイクロコンピュータの制御ブロック図
【図5】(a)、(b)は、それぞれ図4の制御回路のロックアウトプログラムを作動状態と不作動状態とするときのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この電動式サムターン錠は手動式のサムターン錠を改造したものであり、図1および図2に示すように、シリンダ錠1が組み込まれた把手2と、扉Aのフロント面から出没するデッドボルト3を備え、扉Aの内側に取り付けられた駆動ケース4に、デッドボルト3を出没させて解施錠するサムターン5と、サムターン5を操作する電動アクチュエータとしての電動モータ6が設けられ、その上側に取り付けられた制御ケース7に、電動モータ6を駆動する制御装置としてのマイクロコンピュータ8と、電源となる電池9が組み込まれている。なお、この電動式サムターン錠はオートロック式とすることができ、その場合は扉Aが閉じたときに自動的に施錠される。
【0018】
前記電動モータ6は、デッドボルト3を出没させるサムターン5の駆動軸5aに、歯車伝達機構(図示省略)で回転を伝達する。サムターン5の駆動軸5aにはシリンダ錠1も連結されており、電池切れ等の非常時には、シリンダ錠1で解施錠することもできる。通常時は、シリンダ錠1の鍵は別途に保管され、使用されない。
【0019】
前記扉Aの外側の把手2の周りを覆う樹脂製の把手カバー10の中には、RFID(Radio Frequency Identification)アンテナ11aを有するリーダ11が収納され、図2中に一点鎖線で示すように、非接触型のデバイスであるICカード20をリーダ11に向けて翳すことにより、ICカード20に埋設して装着されたICチップ(図示省略)に書き込まれた固有情報が無線で読み取られるようになっている。また、把手カバー10の前面上側には、後述するマイクロコンピュータ8の制御回路16に組み込まれたロックアウトプログラム16aを作動状態または不作動状態とするように誘導する静電スイッチ12が組み込まれている。リーダ11と静電スイッチ12は、信号ケーブル13で扉Aの内側の制御ケース7内のマイクロコンピュータ8に接続されている。
【0020】
前記ICカード20は各メンバーが所持できるように複数枚用意され、そのICチップにはメンバーであることを識別するための固有情報が書き込まれている。また、特定の者が所持するICカード20aの特定の固有情報は、後述する照合プログラム16bによって、所持者が特定者であることを識別されるようになっている。
【0021】
図3は、上述した電動式サムターン錠の電気系統図を示す。前記マイクロコンピュータ8には、リーダ11と静電スイッチ12の出力が入力され、電動モータ6に解錠信号を出力するようになっている。また、電池9の電力は、電源回路14を介して、電動モータ6、マイクロコンピュータ8、リーダ11および静電スイッチ12に供給される。電源回路14には、外部電源供給回路15も接続できるようになっている。
【0022】
図4は、前記マイクロコンピュータ8の制御ブロック図を示す。マイクロコンピュータ8には、電動モータ6を解錠するように駆動する制御回路16と、リーダ11で読み取られる固有情報を照合するためのデータを記憶するメモリ17が設けられている。制御回路16には、電動モータ6による解錠を禁止するロックアウトプログラム16aと、リーダ11で読み取られた固有情報をメモリ17に記憶されたデータと照合する照合プログラム16bが組み込まれている。
【0023】
前記ロックアウトプログラム16aは、通常時は不作動状態とされ、ICカード20を所持する一般のメンバーによる解錠を制限するときのみ、後述するように作動状態とされる。従って、通常時は照合プログラム16bのみが作動し、リーダ11で読み取られたICカード20の固有情報がメモリ17に記憶されたデータと合致すれば、マイクロコンピュータ8は電動モータ6に解錠信号を出力する。
【0024】
図5(a)は、前記ロックアウトプログラム16aを作動状態とするときの制御フローチャートを示す。まず、静電スイッチ12に3回(2回目は2秒以上)触れると、ロックアウトプログラム16aが作動誘導状態となり、この状態で特定の固有情報が書き込まれたICチップを装着したICカード20aをリーダ11に翳すと、リーダ11で読み取られたICカード20aの特定の固有情報が照合プログラム16bによって照合され、特定の固有情報がメモリ17に記憶されたデータと合致すると、ロックアウトプログラム16aが作動状態となる。従って、このときは一般のメンバーのICカード20による解錠ができなくなる。
【0025】
図5(b)は、前記ロックアウトプログラム16aを不作動状態とするときの制御フローチャートを示す。この場合は、まず、静電スイッチ12に2回(2回目は2秒以上)触れると、ロックアウトプログラム16aが不作動誘導状態となり、この状態で、同様に特定の固有情報が書き込まれたICチップを装着したICカード20aをリーダ11に翳すと、リーダ11で読み取られたICカード20aの特定の固有情報が照合プログラム16bによって照合され、特定の固有情報がメモリ17に記憶されたデータと合致すると、ロックアウトプログラム16aが不作動状態となって、いずれのICカード20、20aによっても解錠が可能になる。
【0026】
なお、前記ロックアウトプログラム16aを作動誘導状態と不作動誘導状態とするときに、静電スイッチ12に触れるパターンは、互いに異なるパターンであればよく、任意に設定することができる。
【0027】
上述した実施形態では、電動式サムターン錠を、手動式のサムターン錠を改造したオートロックが可能なものとし、解錠のときにのみICカードを使用するようにしたが、オートロック式でなく、施錠のときにもICカードを使用するようにしてもよい。また、新設する場合は、把手にシリンダ錠を組み込まなくてもよい。
【0028】
上述した実施形態では、ICチップを装着したデバイスを鍵専用のICカードとしたが、このICカードは電子マネーや定期券等に使用されるICカードと共用のものとすることもでき、ICカードの他に携帯電話等とすることもできる。
【0029】
上述した実施形態では、ロックアウトプログラムを作動状態と不作動状態に誘導する各スイッチを共通の静電スイッチとしたが、これらのスイッチは押し釦スイッチ等の他のスイッチとすることもでき、各スイッチを別々のスイッチとすることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 シリンダ錠
2 把手
3 デッドボルト
4 駆動ケース
5 サムターン
5a 駆動軸
6 電動モータ
7 制御ケース
8 マイクロコンピュータ
9 電池
10 把手カバー
11 リーダ
11a RFIDアンテナ
12 静電スイッチ
13 信号ケーブル
14 電源回路
15 外部電源供給回路
16 制御回路
16a ロックアウトプログラム
16b 照合プログラム
17 メモリ
20、20a ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッドボルトを出没させて解施錠するサムターンと、サムターンを操作する電動アクチュエータと、ICチップに書き込まれた固有情報を読み取るリーダと、このリーダで読み取られた固有情報を照合して、少なくとも解錠するように前記電動アクチュエータを駆動する制御装置とを設けた電動式サムターン錠において、前記電動アクチュエータを駆動する制御装置の制御回路に、電動アクチュエータによる解錠を禁止するロックアウトプログラムを組み込み、このロックアウトプログラムを作動状態に誘導する作動誘導スイッチと、ロックアウトプログラムを不作動状態に誘導する不作動誘導スイッチを設け、前記作動誘導スイッチが入りの状態で前記リーダが前記ICチップの特定の固有情報を読み取ったときに、前記ロックアウトプログラムを作動状態とし、前記不作動誘導スイッチが入りの状態で前記リーダが前記特定の固有情報を読み取ったときに、前記ロックアウトプログラムを不作動状態とするようにしたことを特徴とする電動式サムターン錠。
【請求項2】
前記ICチップを、前記リーダと接触させない非接触型のデバイスに装着した請求項1に記載の電動式サムターン錠。
【請求項3】
前記作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチの少なくともいずれかを、扉の外側に向けられて触れられる静電スイッチとした請求項1または2に記載の電動式サムターン錠。
【請求項4】
前記作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチを共通の前記静電スイッチとし、これらの作動誘導スイッチと不作動誘導スイッチを入りとするときに、前記静電スイッチに触れるパターンを互いに異なるものとした請求項3に記載の電動式サムターン錠。
【請求項5】
前記静電スイッチに触れるパターンを、触れる回数、触れる時間、またはこれらの回数と時間を組み合わせたものに設定した請求項4に記載の電動式サムターン錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226120(P2011−226120A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95920(P2010−95920)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名 SECURITY SHOW 2010(第18回セキュリティ・安全管理総合展) 主催者名 日本経済新聞社 開催日 2010年3月9日(火)〜12日(金)
【出願人】(505149044)株式会社シーズンテック (10)
【Fターム(参考)】