説明

電子レンジ用容器

【課題】 電子レンジによる加熱後の開封性が改善された電子レンジ用容器を提供する。
【解決手段】 容器本体30と、前記容器本体の開口部を封止する蓋体20とを備え、前記蓋体20が、基材層22,24と、マイクロ波の照射により発熱する発熱体層26と、前記容器本体の開口部と接着するシール層28とを有する積層体からなり、前記シール層が、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により、前記発熱体層の一方の面と接するように形成されており、且つ該シール層の厚さが1〜15μmであることを特徴とする電子レンジ用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジによる加熱後の開封性が改善された電子レンジ用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形食品や液状食品等の食品用容器として、電子レンジにて内容物を加熱可能な合成樹脂製容器が種々提案されている。このような電子レンジ用容器として、特開平2−152679号公報には、食品用パッケージにおいて、トレーとクロージャ一とを接着するヒートシール性樹脂層中に、フレーク状又は粉末状のマイクロ波相互作用性物質をブレンド、分散又は埋入しておくことで、電子レンジによるマイクロ波加熱の際に、マイクロ波相互作用性物質が発熱し、ヒートシール性樹脂層の剥離強度を低下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−152679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等が種々の調査を行なった結果、特開平2−152679号公報記載の電子レンジ用容器においては、ヒートシール性樹脂層中にマイクロ波相互作用性物質をブレンド、分散又は埋入するため、その分ヒートシール樹脂層の厚さが厚くなり、マイクロ波加熱時のマイクロ波相互作用性物質の発熱の際に、ヒートシール樹脂層が必要以上に溶融してしまい、むしろトレーのシール面と溶け合って開封が困難になる虞があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、電子レンジによる加熱後の開封性が改善された電子レンジ用容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる電子レンジ用容器は、容器本体と、前記容器本体の開口部を封止する蓋体とを備え、前記蓋体が、基材層と、マイクロ波の照射により発熱する発熱体層と、前記容器本体の開口部と接着するシール層とを有する積層体からなり、前記シール層が、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により、前記発熱体層の一方の面と接するように形成されており、且つ該シール層の厚さが1〜15μmであることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明にかかる電子レンジ容器は、前記発熱体層が、アルミニウム又はアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による蒸着膜により形成されており、且つ該発熱体層の厚さが30〜100nmであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明にかかる電子レンジ用容器は、前記シール層に含まれる熱可塑性樹脂の融点が130〜250℃の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、シール層が、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により、前記発熱体層の一方の面と接するように形成されており、且つシール層の厚さを1〜15μmとすることで、発熱体層の発熱による熱を直接シール層に作用させることができるため、効率的にシール層を溶融させることができるとともに、発熱体層の表面上に塗膜によるシール層を形成する際に、発熱体層の表面上の微細な凹凸に対して熱可塑性樹脂を隙間なく行き渡らせることができるので、発熱体層とシール層との密着性を向上することができ、その結果、容器の密封性や容器本体に対する蓋体の剥離強度を十分に確保できる。さらに、シール層の厚さが一般的なシーラントフィルムよりも薄いため、マイクロ波加熱により発熱体層が発熱した際に、シール層中の熱可塑性樹脂が溶融しても、熱可塑性樹脂の量が少ないのでシール層側の樹脂と容器本体側の樹脂層とが殆ど溶け合わず、効果的にシール層の樹脂を溶融させて接着強度を低下させることができ、その結果、容易に容器を開封することができる。
また、請求項2の発明によれば、前記発熱体層が、アルミニウム又はアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による蒸着膜により形成されており、且つ該発熱体層の厚さが30〜100nmとすることで、発熱体層による発熱を十分に生じさせることができるとともに、発熱体層の一面にシール層となる塗膜を形成する際、蒸着膜の損傷を防止することができる。
また、請求項3の発明によれば、シール層中の熱可塑性樹脂の融点が、130〜250℃の範囲とすることで、例えば、容器をレトルト処理した場合であっても、熱可塑性樹脂が溶融しないためシール層の接着強度が損なわれず、且つ電子レンジで加熱した際には、確実にシール層中の熱可塑性樹脂が溶融して接着強度を低下させ、開封性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電子レンジ用容器の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる電子レンジ用容器の蓋体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施形態を説明する。
本発明の一実施形態にかかる電子レンジ用容器の正面図を図1に、蓋体の断面図を図2に、それぞれ示す。
本発明の電子レンジ用容器10は、電子レンジでの加熱が可能な食品包装用の容器であって、容器本体30の開口部を、ヒートシール性を有する蓋体20により封止しているものである。
【0012】
本発明の電子レンジ用容器に用いられる蓋体20は、基材層22,24と、マイクロ波を吸収して発熱する発熱体層26と、容器本体との接着性を有するシール層28とが積層された多層のシート材から形成されている。また、蓋体20は、容器本体の開口部を封止する円板状の天板部20aと、天板部の周縁部から容器半径方向外方に突出するように形成された摘み部20bとを有している。
【0013】
基材層22,24は、公知の熱可塑性樹脂フィルムにより形成されている。熱可塑性樹脂フィルムとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等の単層フィルム又はこれらのフィルムを適宜積層した多層フィルムを好適に使用することができる。なお、電子レンジ加熱による発熱体層26の発熱によっても、基材層22,24自体が破損することのないように、基材層22,24の熱可塑性樹脂の種類やフィルム厚さを適宜設定する必要があるが、通常の場合、基材層22,24の厚さは合計で20〜50μmである。
【0014】
発熱体層26は、マイクロ波を吸収することによって発熱する導電性物質の蒸着膜、導電性インク金属箔等により薄膜状に形成されている。導電性物質としては、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅等の金属や、これら金属の酸化物の1種又は2種以上の混合物を使用することができる。特に、材料コストや生産性を鑑みると、アルミニウム単独、又はアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による蒸着膜を使用することが好ましく、混合物を使用する場合、アルミニウムと酸化アルミニウムとの質量比が4:1〜1:9であることがより好ましい。また、これらを使用することで、蒸着膜の表面に塗膜を形成する際、蒸着膜が損傷し難くなる。なお、電子レンジにより加熱した際の蒸着膜の発熱温度は、160〜300℃程度のものが好適に使用できる。蒸着膜の厚さとしては、30〜100nmが好ましく、この範囲に設定することで、電子レンジで必要以上に長時間加熱された場合に、蒸着膜にひび割れを生じさせて加熱を停止又は抑制させることができ、この結果、容器が過剰に加熱されることを防止できる。また、蒸着膜の厚さが、30nm未満では、蒸着膜の表面にシール層となる塗膜を形成する際に損傷しやすくなり、十分な発熱効果が得られない虞があり、他方100nmを超えると、蒸着膜が加熱によるひび割れを生じやすくなりすぎてしまい、蒸着膜の表面上に塗膜を形成するために塗布された塗料を焼き付ける際に、蒸着膜にひび割れが生じてしまう虞がある。
【0015】
シール層28は、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により、発熱体層26の一方の面と接するように直接形成されている。なお、このような塗膜は、例えば、熱可塑性樹脂の微粒子を溶媒に分散させた塗料を、公知の手段を用いて発熱体層26の表面上に塗布し、塗料を加熱して焼き付けることによって塗料中の樹脂が溶融させられ、薄膜状の塗膜として形成される。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレ一ト、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、MXD6ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を好適に使用することができる。また、熱可塑性樹脂微粒子を分散させる溶媒としては、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アジピン酸ジメチル等の二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、水、あるいはこれらの溶媒混合物等、公知の溶媒を使用することができる。熱可塑性樹脂の溶媒への配合量は、溶媒100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、配合量が、1質量部未満であると、塗膜を形成する際の生産性が悪くなり、他方30質量部を越えると、熱可塑性樹脂の微粒子同士が凝集して塗装性が悪くなる虞がある。また、熱可塑性樹脂の融点は、130〜250℃の範囲とすることが好ましい。なお、シール層28中の熱可塑性樹脂は、ヒートシール等の処理によって一部が溶融し、容器本体30の開口部に溶着される。
【0016】
シール層28の形成に用いられる熱可塑性樹脂微粒子の平均粒子径は、10nm〜100μmであることが好ましい。熱可塑性樹脂微粒子の平均粒子径が10nm未満では、塗料の粘度が高くなり過ぎて塗装性が悪くなる虞があり、他方100μmを越えると、均一な塗膜化が阻害される場合があり、その結果、密封性が損なわれたり、容器内圧上昇時の破裂強度が低下したりする虞がある。さらに、シール層28の厚さは1〜15μmの範囲に設定される。シール層28の厚さが、1μm未満では、容器との接着強度が十分に得られない虞がある。他方15μmを超えると、シール層28中の熱可塑性樹脂と容器本体とのシール面が溶け合ってしまうため、加熱後の剥離強度を十分に低下させることができない。すなわち、シール層28の厚さが15μmを越えると、シール層28側の熱可塑性樹脂の量が多くなるため、シール層28と容器本体30とを構成する熱可塑性樹脂の高分子同士が結びつきやすくなり、その結果、シール層28と容器本体30との界面が溶け合って、剥離強度を低下させにくくなる虞がある。
【0017】
本発明の容器本体30には、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料を射出成形や圧空成形等により成形した容器を好適に使用することができる。本実施形態において、容器本体30はカップ状の容器であり、円板状の底部と、底部の周縁部からテーパ状に拡径するように上方に延在する円筒状の胴部と、胴部上端により区画される開口部の周囲に形成され、且つ、容器半径方向外方に延在する環状のフランジ部30aを有している。そして、容器30のフランジ部30a上面に、蓋体20のシール層28がヒートシール等により溶着されることで、容器30内を密封するように構成されている。
【0018】
以上のような本発明の電子レンジ用容器10を電子レンジで加熱すると、発熱体層26がマイクロ波を吸収して発熱し、その熱によってシール層28を構成する塗膜中の熱可塑性樹脂が溶融する。この結果、シール層による蓋体と容器本体との接着性が低下することとなり、蓋体20の開封性が改善される。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の電子レンジ用容器の実施例について説明する。
[実施例1]
基材層となる厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの一方の面に、発熱体層となる厚さ50nmのアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による蒸着膜を積層したアルミ蒸着フィルム(VM−PET 1015HT:東レフィルム加工株式会社製)を積層した。また、上記基材層における発熱体層の反対側の面に、さらに基材層となる厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(エンブレット:ユニチカ株式会社製)を積層した。つづいて、発熱体層26の外側の面に、シール層となる熱可塑性樹脂(オレフィン樹脂)の微粒子を含有した塗料(Eipoc−1805:櫻宮化学株式会社製)をバーコーター#14を用いて1回塗布し、180℃で焼き付けることで、膜厚が1〜2μmのシール層(塗膜)を形成した蓋体を作成した。この蓋体のシール層を、水180gを充填したポリプロピレン樹脂製の圧空カップ容器(大和千葉製罐株式会社製)のフランジ部(外径70.2mm、内径61mm)にヒートシール(180℃−1.2秒×2回)することで、実施例1の電子レンジ用容器を得た。
【0020】
[実施例2]
実施例1と同様にして、基材層と発熱体層との積層体を作成し、発熱体層の外側の面に、実施例1と同様の熱可塑性樹脂微粒子含有塗料をバーコ一ター#30を用いて1回塗布し、180℃で焼き付けることによって、膜厚が5〜8μmのシール層(塗膜)を形成した蓋体を作成した。この蓋体のシール層を、実施例1と同様にカップ容器にヒートシールすることで、実施例2の電子レンジ用容器を得た。
【0021】
[実施例3]
実施例1と同様にして、基材層と発熱体層との積層体を作成し、発熱体層の外側の面に、実施例1と同様の熱可塑性樹脂微粒子含有塗料をバーコーター#65を用いて1回塗布し、180℃で焼き付けることによって、膜厚が10〜15μmのシール層(塗膜)を形成した蓋体を作成した。この蓋体のシール層を、実施例1と同様にカップ容器にヒートシールすることで、実施例3の電子レンジ用容器を得た。
【0022】
[比較例1]
実施例1と同様にして、基材層と発熱体層との積層体を作成し、発熱体層の外側の面に、実施例1と同様の熱可塑性樹脂微粒子含有塗料をバーコーター#65を用いて3回塗布し、180℃で焼き付けることによって、膜厚が30μmのシール層(塗膜)を形成し、蓋体を作成した。この蓋体のシール層を、実施例1と同様にカップ容器にヒートシールすることで、比較例1の電子レンジ用容器を得た。
【0023】
[比較例2]
実施例1と同様にして、基材層と発熱体層との積層体を作成し、発熱体層の外側の面に、シール層となる厚さ30μmのシーラントフィルム(アロマーU:オカモト株式会社製)を積層した蓋体を作成した。この蓋体のシール層を、実施例1と同様にカップ容器にヒートシールすることで、比較例2の電子レンジ用容器を得た。
【0024】
上記実施例1〜3及び比較例1,2の電子レンジ用容器を、定格高周波出力500Wの電子レンジで30秒間加熱し、その加熱前後でのピール強度を測定した結果を下記の表1に示す。なお、ピール強度の測定は、引張試験機(V10−C:株式会社東洋精機製作所製)を用い、速度300mm/min、角度90°(電子レンジ用容器を正立で置き、蓋体の摘み部を把持して真上に引き上げる、すなわち、蓋体の延在方向に対して90°の角度で上方に引き上げること)で測定した。
【0025】
【表1】

【0026】
上記表1の結果より、実施例1〜3の電子レンジ用容器は、いずれも電子レンジでの加熱によってピール強度が加熱前の1/10程度に低下していた。これに対して、比較例1のように、シール層として熱可塑性樹脂塗膜を用いてもその膜厚が厚い場合は、加熱前のピール強度が高くなるとともに、塗膜中の熱可塑性樹脂と容器本体とのシール面が溶け合ってしまうため、加熱後のピール強度も十分に低下していなかった。また、比較例2のように、シール層としてフィルムを用いた場合は、フィルムが溶融して容器本体のフランジ部と溶け合ってしまい、全く開封できない状態となっていた。
【0027】
以上、本発明の電子レンジ容器の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、2枚のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム同士を積層したものを基材層とし、その片面に発熱体層を積層し、さらにその発熱体層の表面に直接シール層を塗布しているが、蓋体の構成はこれに限られるものではなく、例えば、2枚のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの間に発熱体層を積層し、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの外面にシール層を塗布することで、発熱体層とシール層との間に基材層となる樹脂フィルムを介するように構成してもよい。また、基材層として、2枚のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム同士を積層したものを使用せずに、単層の樹脂フィルムを用いても良い。さらに、容器本体の形態についても、カップ型容器に限定されるものでなく、開口部に蓋体をヒートシールにて封止するような形態のものであれば形態は特に限定されない。
【0028】
以上説明したように、本発明の電子レンジ用容器によれば、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により、前記発熱体層の一方の面と接するように形成されており、且つシール層の厚さを1〜15μmとすることで、発熱体層の発熱による熱を直接シール層に作用させることができるため、効率的にシール層を溶融させることができるとともに、発熱体層の表面上に塗膜によるシール層を形成する際に、発熱体層の表面上の微細な凹凸に対して熱可塑性樹脂を隙間なく行き渡らせることができるので、発熱体層とシール層との密着性を向上することができ、その結果、容器の密封性や容器本体に対する蓋体の剥離強度を十分に確保できる。また、シール層の厚さを1〜15μmとすることで、シール層の厚さが一般的なシーラントフィルムよりも薄いため、マイクロ波加熱により発熱体層が発熱した際に、シール層中の熱可塑性樹脂が溶融しても、熱可塑性樹脂の量が少ないのでシール層側の樹脂と容器本体側の樹脂層とが殆ど溶け合わず、効果的にシール層の樹脂を溶融させて接着強度を低下させることができ、その結果、容易に容器を開封することができる。さらに、発熱体層の表面上にシール層を形成する際に、シール層の厚さが比較的薄いことから、塗布された塗料を焼き付けるための熱量が少なくてすむため、例えば、基材層に熱可塑性樹脂フィルムを用いた場合に樹脂フィルムの熱収縮を抑制することができ、その結果、基材層に積層された発熱体層の損傷を防止できる。
【0029】
さらに、本発明の電子レンジ用容器は、電子レンジで加熱することによって簡単に接着強度を低下できるため、加熱前の製品の状態においては比較的高い接着強度に設定しておくことで、製品の輸送時や保管時における製品の品質を十分に確保することができる。また、発熱体層を、アルミニウム又はアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による蒸着膜により形成し、蒸着膜の厚さを30〜100nmとすることで、発熱体層による発熱を十分に生じさせることができるとともに、蒸着膜の表面上に塗膜を形成する際に、蒸着膜の損傷を防止できる。さらに、蒸着膜の厚さをこの範囲に設定することで、電子レンジで必要以上に長時間加熱された場合に、蒸着膜にひび割れを生じさせて加熱を停止又は抑制させることができ、この結果、容器が過剰に加熱されることを防止することができる。なお、蒸着膜の厚さが、30nm未満では、蒸着膜の表面にシール層となる塗膜を形成する際に損傷しやすくなり、十分な発熱効果が得られない虞があり、他方100nmを超えると、蒸着膜が加熱によるひび割れを生じやすくなりすぎてしまい、蒸着膜の表面上に塗膜を形成するために塗布された塗料を焼き付ける際に、蒸着膜にひび割れが生じてしまう虞がある。また、シール層中の熱可塑性樹脂の融点を130〜250℃の範囲とすることで、例えば、容器をレトルト処理した場合であっても、熱可塑性樹脂が溶融しないためシール層の接着強度が損なわれず、且つ電子レンジで加熱した際には、確実にシール層中の熱可塑性樹脂が溶融して接着強度を低下させ、開封性を向上することができる。すなわち、熱可塑性樹脂の融点が、130℃未満であると、内容物充填後の容器をレトルト処理した場合に、レトルト処理時の加熱により、熱可塑性樹脂が溶融して密封性が損なわれる虞があり、他方250℃を越えると、発熱体層の発熱時に、熱可塑性樹脂が十分に溶融せず、シール層による接着強度を十分に低下できない虞がある。
【符号の説明】
【0030】
10 電子レンジ用容器
20 蓋体
22 基材層1(PETフィルム)
24 基材層2(PETフィルム)
26 発熱体層(蒸着膜)
28 シール層(熱可塑性樹脂塗膜)
30 容器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体の開口部を封止する蓋体とを備え、
前記蓋体が、基材層と、マイクロ波の照射により発熱する発熱体層と、前記容器本体の開口部と接着するシール層とを有する積層体からなり、
前記シール層が、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により、前記発熱体層の一方の面と接するように形成されており、且つ該シール層の厚さが1〜15μmである
ことを特徴とする電子レンジ用容器。
【請求項2】
前記発熱体層が、アルミニウム又はアルミニウムと酸化アルミニウムとの混合物による蒸着膜により形成されており、且つ該発熱体層の厚さが30〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用容器。
【請求項3】
前記シール層に含まれる熱可塑性樹脂の融点が130〜250℃の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子レンジ用容器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−6607(P2013−6607A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139634(P2011−139634)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】