説明

電子回路および電子機器

【課題】動作させる対象への必要な電源供給の確実な実施を簡易な構成にて実現する。
【解決手段】電源回路から出力された第1電源電圧の供給を受ける第1電源系統と、電源回路から出力された第1電源電圧とは値が異なる第2電源電圧の供給を受ける第2電源系統とを有し、第1電源系統により第1回路へ電源供給を行い、第2電源系統により第1回路とは異なる第2回路へ電源供給を行なう電子回路であって、第1電源系統において、第1電源電圧を第1回路を動作させるために必要な第1動作電圧に変換するコンバータと、第2電源系統における電圧を入力電圧とする抵抗分圧回路と、抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合に、第1電源系統から第2電源系統に対して、第2回路を動作させるために必要な電圧を供給する電圧補給回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
動作に必要な電圧が異なる複数の動作部(回路など)を備える電子機器においては、一つの電源回路から値の異なる複数の電源電圧(直流DC)を生成し、複数の電源系統にこれら電源電圧を供給し、各電源系統から各動作部に対して必要な電源供給を行なう。
関連技術として、動作電圧の異なるLSIに対応した電圧を供給する電源供給制御方式であって、前記各電圧を監視し、一の電圧の異常時に、他の正常な電圧の電源から前記異常な電圧に対応するLSIの動作電圧に変えた電圧を当該異常な電圧に対応するLSIに供給する方法が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、電源トランス出力に第1の平滑回路と第2の平滑回路を設け、第2の平滑回路によりマイコンに電力を供給し、電源電圧が低下したときに第1の平滑回路からマイコンに電力供給をする技術が知られている(特許文献2参照。)。また、BS回路のみを動作させる軽負荷モードから地上波を受信する全負荷モードに切り替えた場合にBSチューナの電源電圧の一瞬低下を防止するために、軽負荷モードから全負荷モードへの切り替え信号の立ち上がり部分を微分して作ったスイッチングパルスで電圧補正回路を駆動し、他の電源電圧からBS電源電圧を供給する構成が知られている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004‐240509号公報
【特許文献2】特開平10‐150723号公報
【特許文献3】特開平11‐146302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のよう一つの電源回路から各電源系統へ所定の電源電圧を供給する場合、それぞれの電源系統に対する負荷の変動に伴って、電源回路から電源系統へ供給される電源電圧の値が変動することがある。このような変動は、動作するために予め決められた電源電圧を必要とする動作部の稼働に影響を与え、動作部が正常に稼働できないこともあり得る。このような状況に鑑み、動作部に対する安定した電源電圧の供給をより確実かつ簡易な構成にて実現することが望まれている。なお上記文献1は、他の正常な電圧の電源から異常な電圧に対応するLSIの動作電圧に変えた電圧を生成するに際し、スイッチングレギュレータを使用するが、電源電圧の変動検知および電源電圧の変動があった電源系統に対する適切な電源供給の実現のためには、具体性や簡易化の点で大いに改善の余地があった。
【0006】
また上記文献2は、電源回路から複数の電源系統へ電源電圧を供給して複数の動作部を動作させる際の電源系統に対する負荷変動に伴う電源電圧の変動への対策を講じたものではない。また上記文献3は、BS回路のみを動作させる軽負荷モードから地上波を受信する全負荷モードに切り替えた場合のBSチューナの電源電圧の一瞬低下防止に特化した技術であり、これも同様に、電源回路から複数の電源系統へ電源電圧を供給して複数の動作部を動作させる際の電源系統に対する負荷の変動に伴う電源電圧の変動への対策を講じたものではない。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、動作させる対象への必要な電源供給の確実な実施を、簡易な構成にて実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様の一つは、電源回路から出力された第1電源電圧の供給を受ける第1電源系統と、電源回路から出力された第1電源電圧とは値が異なる第2電源電圧の供給を受ける第2電源系統とを有し、第1電源系統により第1回路へ電源供給を行い、第2電源系統により第1回路とは異なる第2回路へ電源供給を行なう電子回路であって、第1電源系統において、第1電源電圧を第1回路を動作させるために必要な第1動作電圧に変換するコンバータと、第2電源系統における電圧を入力電圧とする抵抗分圧回路と、抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合に、第1電源系統から第2電源系統に対して、第2回路を動作させるために必要な電圧を供給する電圧補給回路と、を備える構成としてある。
【0009】
当該構成によれば、抵抗分圧回路を含む簡易な構成により、第1電源系統から第2電源系統に対して第2回路を動作させるために必要な電圧の供給を確実に実行することができ、結果、動作部としての第1回路および第2回路いずれについても正常に稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電子機器の構成の一部を概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態として、上記電圧補給回路は、第1電源系統の上記コンバータの出力側と第2電源系統との間に配設されたトランジスタであってベースと抵抗分圧回路の出力側とを接続したトランジスタを備え、当該トランジスタは、抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合にオン状態となり第1電源系統から第2電源系統への電圧の供給を実現する、としてもよい。
また、本発明の実施形態として、RCC方式の電源回路から出力された第1電源電圧の供給を受ける第1電源系統と、当該電源回路から出力された第1電源電圧よりも値が低い第2電源電圧の供給を受ける第2電源系統とを有し、第1電源系統によりメインICへ電源供給を行い、第2電源系統によりメインICとは異なるサブICへ電源供給を行なう電子回路、を含む電子機器であって、第1電源系統において、第1電源電圧をメインICを動作させるために必要な第1動作電圧に変換するDC‐DCコンバータと、第2電源系統における電圧を入力電圧とする抵抗分圧回路と、抵抗分圧回路を構成する第1抵抗と第2抵抗との間の電位である出力電圧が、第1動作電圧より所定値以上低い場合に、第1電源系統から第2電源系統に対して、サブICを動作させるために必要な上記第1動作電圧よりも低い第2動作電圧を供給する電圧補給回路とを備え、上記電圧補給回路は、第1電源系統のDC‐DCコンバータの出力側と第2電源系統との間に配設されたPNP型トランジスタであってエミッタをDC‐DCコンバータの出力側に接続しコレクタを第2電源系統に接続しベースを抵抗分圧回路の第1抵抗と第2抵抗との間に接続したトランジスタを備え、当該トランジスタは、抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合にオン状態となることにより第2電源系統に対して第2動作電圧を供給する構成としてもよい。
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態をより詳細に説明する。
図1は、電子機器10の構成の一部(電子回路)を概略的に示す回路図である。ここで言う電子機器10とは、電源回路を内蔵する電化製品であればあらゆる製品が該当し、例えば、テレビジョン、モニター、DVDやブルーレイディスクのプレーヤ/レコーダ等である。電子機器10は、いわゆるリンギングチョークコンバータ方式の電源回路(RCC回路20)を有し、電源回路は、外部の商用電源を直流DCの電源電圧に変換し、二次側へ出力する。図1の例では、RCC回路20は、電源電圧V1(第1電源電圧)と、電源電圧V2(第2電源電圧)とを生成し出力している。電源電圧V1は電源系統L1(第1電源系統)へ出力され、電源電圧V2は電源系統L2(第2電源系統)へ出力される。電源電圧V1は、例えば、+15Vに維持されており、電源電圧V2は、+5Vが理想の値となっている。図1から判るように、当該図に示した回路では、抵抗やコンデンサやコイルやダイオード等、種々の素子が表されているが、ここでは本実施形態の説明に特に関わる箇所について符号を付している。
【0013】
電源系統L1、電源系統L2はそれぞれ異なる動作部に対して必要な電源を供給するための経路であり、図1では例として、電源系統L1は電子機器10が備えるメインIC(Integrated Circuit)40(第1回路)へ電源供給し、電源系統L2は電子機器10が備えるサブIC50(第2回路)へ電源供給する。メインIC40は、電子機器10全体をコントロールするためのICであり、例えば電子機器10がテレビジョンであれば、メインIC40は、放送信号の受信から、信号の復調処理、映像音声に対する各種処理、表示パネルの駆動制御等、種々の制御を実行する。また、サブIC50は、例えば、ユーザによるリモコン操作の受け付けや、電子機器10に設けられた各種ボタンに対する操作の受け付けや、メインIC40に対する所定の通信等を実行する。また、電源系統L2は、電子機器10が備える所定の外部インターフェイス(例えば、USBインターフェイス)に対する電源供給を担うとしてもよい。
【0014】
電源系統L1においては、電源電圧V1を、メインIC40を動作させるために必要な第1動作電圧(例えば+5.2V)に変換するDC‐DCコンバータ30が設けられている。DC‐DCコンバータ30は、DC‐DCコンバータ30の中心的役割を果たす制御IC31を含む回路である。制御IC31は、電解コンデンサ等によりリップルが除去される等して平坦化された電源電圧V1を入力端子Vinから入力し、出力端子SWから所定のデューティ比のパルス信号を出力する。すると、このパルス信号のデューティ比に応じて降圧(変換)された直流DCがチョークコイルLの後段に出力され、この結果、DC‐DCコンバータ30の出力側(P2)に、所望の第1動作電圧が取り出される。メインIC40は、第1動作電圧を入力することにより稼働する。図1の電子機器10内においてDC‐DCコンバータ30と呼ぶべき範囲は固定的である必要はなく、少なくとも制御IC31を含む電源系統L1上の回路をDC‐DCコンバータ30と呼ぶことができる。
【0015】
電源系統L2においては、電源電圧V2を整流しつつ、サブIC50を動作させるための第2動作電圧としてサブIC50へ供給する。ここでは、第2動作電圧はサブIC50を稼働する上で+5Vに保たれていることが理想としている。しかしながら、RCC回路20は、電源供給先となる各動作部(メインIC40やサブIC50)における負荷の変動に伴い、電源系統L2への出力値を変動させる特性を持っている。例えば、電子機器10がスタンバイモードであるが故にメインIC40の負荷が比較的少なく、一方、サブIC50の負荷(処理量)が比較的多い場合等に、RCC回路20が電源系統L2に出力する電源電圧V2は5Vよりも低い値となる。本実施形態では、電源電圧V2が本来理想とされている値より低い場合であっても、電源系統L2による電源供給先にとって必要な値の電源(第2動作電圧)を確実に供給するための構成を採っている。
【0016】
具体的には、電源系統L2においては、電源系統L2とグラウンドGNDとの間に、直列接続された抵抗R1(第1抵抗)と抵抗R2(第2抵抗)とからなる抵抗分圧回路が設けられている。抵抗分圧回路は、電源系統L2における電圧を入力電圧とする。また、電源系統L1におけるDC‐DCコンバータ30の出力側と電源系統L2との間には、PNP型のトランジスタQからなる電源補給回路が設けられている。トランジスタQは、エミッタをDC‐DCコンバータ30の出力側(P2)に接続し、コレクタを電源系統L2に接続している。また、トランジスタQのベースは、抵抗R3を介在して、抵抗分圧回路の抵抗R1と抵抗R2との間の点(P1)と接続している。
【0017】
このような構成においては、抵抗分圧回路の出力電圧(P1の電位)が、ある値以下となった場合(例えば、P1の電位が予め決められた第1動作電圧の値(5.2V)から0.7V以上低い値となった場合)に、トランジスタQのベース電圧が、トランジスタQをオン状態とさせる値にまで低下するように抵抗R3が設定されている。つまり、トランジスタQは、抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合にオン状態となり、エミッタ‐コレクタ間が導通する。この結果、電源系統L1側から電源系統L2側へ電圧が供給される。
【0018】
一例として上述したように、電源系統L1で取り出される第1動作電圧が5.2Vで、第2動作電圧の理想値が5Vである場合は、エミッタ‐コレクタ間での電圧降下が0.2V程度となるような特性を持ったトランジスタQを設定することで、電源系統L2において理想的な第2動作電圧が確実に得られる。
【0019】
このように本実施形態によれば、電源回路で生成された異なる値の電源電圧V1,V2を異なる電源系統L1,L2に出力し、各電源系統L1,L2から各動作部に対して必要な動作電圧を供給する構成において、抵抗分圧回路および電源補給回路を含む簡易な構成を追加することで、電源系統L2における電圧が落ち込んだときに電源系統L1から電源系統L2に対して電源系統L2が対応する動作部を動作させるために必要な第2動作電圧を確実に供給することができる。そのため、電源系統L1,L2がそれぞれ対応する各動作部のいずれについても正常に稼働させることができる。
【符号の説明】
【0020】
10…電子機器、20…RCC回路、30…DC‐DCコンバータ、31…制御IC、40…メインIC、50…サブIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回路から出力された第1電源電圧の供給を受ける第1電源系統と、電源回路から出力された第1電源電圧とは値が異なる第2電源電圧の供給を受ける第2電源系統とを有し、第1電源系統により第1回路へ電源供給を行い、第2電源系統により第1回路とは異なる第2回路へ電源供給を行なう電子回路であって、
第1電源系統において、第1電源電圧を第1回路を動作させるために必要な第1動作電圧に変換するコンバータと、
第2電源系統における電圧を入力電圧とする抵抗分圧回路と、
抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合に、第1電源系統から第2電源系統に対して、第2回路を動作させるために必要な電圧を供給する電圧補給回路と、を備えることを特徴とする電子回路。
【請求項2】
上記電圧補給回路は、第1電源系統の上記コンバータの出力側と第2電源系統との間に配設されたトランジスタであってベースと抵抗分圧回路の出力側とを接続したトランジスタを備え、当該トランジスタは、抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合にオン状態となり第1電源系統から第2電源系統への電圧の供給を実現することを特徴とする請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
RCC方式の電源回路から出力された第1電源電圧の供給を受ける第1電源系統と、当該電源回路から出力された第1電源電圧よりも値が低い第2電源電圧の供給を受ける第2電源系統とを有し、第1電源系統によりメインICへ電源供給を行い、第2電源系統によりメインICとは異なるサブICへ電源供給を行なう電子回路、を含む電子機器であって、
第1電源系統において、第1電源電圧をメインICを動作させるために必要な第1動作電圧に変換するDC‐DCコンバータと、
第2電源系統における電圧を入力電圧とする抵抗分圧回路と、
抵抗分圧回路を構成する第1抵抗と第2抵抗との間の電位である出力電圧が、第1動作電圧より所定値以上低い場合に、第1電源系統から第2電源系統に対して、サブICを動作させるために必要な上記第1動作電圧よりも低い第2動作電圧を供給する電圧補給回路とを備え、
上記電圧補給回路は、第1電源系統のDC‐DCコンバータの出力側と第2電源系統との間に配設されたPNP型トランジスタであってエミッタをDC‐DCコンバータの出力側に接続しコレクタを第2電源系統に接続しベースを抵抗分圧回路の第1抵抗と第2抵抗との間に接続したトランジスタを備え、当該トランジスタは、抵抗分圧回路の出力電圧が第1動作電圧より所定値以上低い場合にオン状態となることにより第2電源系統に対して第2動作電圧を供給することを特徴とする、電子機器。

【図1】
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【公開番号】特開2012−203502(P2012−203502A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65497(P2011−65497)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】