説明

電子時計およびその処理方法とプログラム

【課題】クロノグラフ機能を備えた時計等、複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計において、指針の運針のムラを除去することのできる電子時計を提供する。
【解決手段】クロノグラフ針の駆動タイミング信号を出力した際に読み取った内部カウンタがカウントした値と、カウント値記憶部に予め記憶されているカウント値とを比較して一致する場合に、時刻針の駆動タイミング信号とクロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定し、時刻針の駆動タイミングを遅らせるか早めるかの何れかの処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計およびその処理方法とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモータにより複数の指針(秒針や時分針)それぞれを駆動する電子時計において、第1モータの駆動パルス出力中に第2モータの駆動パルスが出力された場合、第1モータの駆動パルス出力後まで第2駆動パルスを待たせから出力させパルスが重ならないようにし、指針の運針見栄えの向上を計ったものが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−233617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ストップウオッチのように針(以下、クロノグラフ針と呼ぶ)の発進・停止を自由にできるクロノグラフ機能を備えた時計においても、当該クロノグラフ針の動作タイミングが、秒針や分針など(以下、時刻針と呼ぶ)の動作タイミングと重なる場合、電池電圧が低下して正常な動作が行えない。従って、従来、クロノグラフ針の動作タイミングと、時刻針の動作タイミングとが重なる場合、どちらかの動作タイミングをずらして動作タイミングが重ならないように制御していた。
【0005】
しかしながら、上述のような制御手法であると、例えばクロノグラフ針の動作タイミングが途中で一瞬停止するため、運針にムラが生じてしまうという問題が発生している。
【0006】
そこでこの発明は、クロノグラフ機能を備えた時計等、複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計において、指針の運針のムラを除去することのできる電子時計およびその処理方法とプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計であって、1秒当たりの基準周期数に基づいて、当該基準周期ごとに前記針の運針の基準を示す基準クロックを出力する基準クロック出力部と、前記複数の針の内、時刻針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づく時刻針駆動周期ごとに出力する時刻針駆動タイミング発生部と、前記複数の針の内、クロノグラフ針の動作開始信号を検出する動作検出部と、前記動作開始信号の検出後、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づくクロノグラフ針駆動周期ごとに出力するクロノグラフ針駆動タイミング発生部と、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なるかを判定するタイミング重複判定部と、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定した場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、または前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記クロノグラフ針駆動タイミング発生部へ送信するか、または、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、の何れかの処理を行う駆動タイミング信号変更部と、を備えることを特徴とする電子時計である。
【0008】
また本発明は、上述の電子時計において、1秒当たりの前記基準クロックの出力数を1秒ごとに繰り返しカウントする内部カウンタと、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を出力した際に、前記内部カウンタがカウントした値を読み取るカウント値読み取り部と、前記時刻針の駆動タイミングと一致する前記内部カウンタのカウント値を予め記憶するカウント値記憶部と、を備え、前記タイミング重複判定部は、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を出力した際に読み取った前記内部カウンタがカウントした値と、前記カウント値記憶部に予め記憶されているカウント値とを比較して一致する場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述の電子時計において、前記駆動タイミング信号変更部は、前記時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅分の時間と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅分の時間とを加算した時間以上で、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の送信間隔の時間から時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅を引いた時間もしくはクロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅を引いた時間未満の時間分、遅らせるまたは早める駆動タイミング変更要求を送信することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計の処理方法であって、基準クロック出力部が、1秒当たりの基準周期数に基づいて、当該基準周期ごとに前記針の運針の基準を示す基準クロックを出力し、時刻針駆動タイミング発生部が、前記複数の針の内、時刻針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づく時刻針駆動周期ごとに出力し、動作検出部が、前記複数の針の内、クロノグラフ針の動作開始信号を検出し、クロノグラフ針駆動タイミング発生部が、前記動作開始信号の検出後、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づくクロノグラフ針駆動周期ごとに出力し、タイミング重複判定部が、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なるかを判定し、駆動タイミング信号変更部が、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定した場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、または前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記クロノグラフ針駆動タイミング発生部へ送信するか、または、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、の何れかの処理を行うことを特徴とする処理方法である。
【0011】
また本発明は、複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計のコンピュータを、1秒当たりの基準周期数に基づいて、当該基準周期ごとに前記針の運針の基準を示す基準クロックを出力する基準クロック出力手段、前記複数の針の内、時刻針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づく時刻針駆動周期ごとに出力する時刻針駆動タイミング発生手段、前記複数の針の内、クロノグラフ針の動作開始信号を検出する動作検出手段、前記動作開始信号の検出後、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づくクロノグラフ針駆動周期ごとに出力するクロノグラフ針駆動タイミング発生手段、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なるかを判定するタイミング重複判定手段、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定した場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生手段へ送信するか、または前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記クロノグラフ針駆動タイミング発生手段へ送信するか、または、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生手段へ送信するか、の何れかの処理を行う駆動タイミング信号変更手段、として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クロノグラフの動作の開始を検出後、直ちに時刻針とクロノグラフ針の駆動タイミングが重なるかを当該重なる事象が発生する前に判定して、重なる場合には、時刻針、またはクロノグラフ針の一方を他方の駆動タイミングと重ならないようにずらすため、どのようなタイミングでクロノグラフの動作開始が指示されても、各指針の運針動作のムラが軽減でき、見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子時計の機能構成を示す第1のブロック図である。
【図2】タイミング変更前の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す図である。
【図3】タイミング変更後の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す第1の図である。
【図4】タイミング変更後の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す第2の図である。
【図5】電子時計の動作のフローを示す図である。
【図6】電子時計の機能構成を示す第2のブロック図である。
【図7】タイミング変更後の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による電子時計を図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による電子時計の機能構成を示す第1のブロック図である。
この図において、符号1は電子時計である。そして電子時計1は、時間針や分針や秒針などの時刻針を駆動する時刻用モータ11、時刻用モータを制御する時刻用モータ駆動部12、時刻針の駆動タイミング信号を時刻針駆動周期ごとに発生させる時刻針駆動タイミング発生部13、基準クロックをカウントする内部カウンタ14、クロノグラフ針を駆動するクロノグラフ用モータ15、クロノグラフ用モータを制御するクロノグラフ用モータ駆動部16、クロノグラフ針の駆動タイミング信号を発生させるクロノグラフ針駆動タイミング発生部17、制御部18、クロノグラフ針の動作開始または動作停止をユーザが入力するためのスイッチ19、1秒間に32,768Hzの信号を発振する発振回路20、発振回路20の発振した信号に基づいて所定周波数の時刻計時用クロック信号を生成する分周回路21、を備えている。
【0015】
また、制御部18は、1秒当たりの基準周期数に基づいて、当該基準周期ごとに前記針の運針の基準を示す基準クロックを出力する基準クロック出力部181、スイッチ19の押下に基づいてクロノグラフ機能の動作開始または動作停止を検出する動作検出部182、内部カウンタ14のカウントする値を読み取るカウント値読み取り部183、時刻針の駆動タイミング信号とクロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なるかを判定するタイミング重複判定部184、時刻針の駆動タイミング信号とクロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定した場合に、時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる、または時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める、またはクロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を、時刻針駆動タイミング発生部へ送信する駆動タイミング信号変更部185、時刻針の駆動タイミングと一致する内部カウンタのカウント値を予め記憶するカウント値記憶部186、を備えている。
【0016】
そして、本実施形態による電子時計1は、クロノグラフ針の駆動タイミング信号を出力した際に読み取った内部カウンタがカウントした値と、カウント値記憶部186に予め記憶されているカウント値とを比較して一致する場合に、時刻針の駆動タイミング信号とクロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定し、時刻針の駆動タイミングを遅らせるか早めるかの何れかの処理を行う。
これにより、本実施形態における電子時計1は、指針の運針のムラを除去する動作を行う。
【0017】
図2はタイミング変更前の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す図である。
図3はタイミング変更後の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す第1の図である。
図4はタイミング変更後の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す第2の図である。
図5は電子時計の動作のフローを示す図である。
次に、図2〜図5を用いて電子時計1の動作の詳細について説明する。
電子時計1においては、まず、発振回路20によって発振される周波数に基づいて分周回路21が時刻計時用クロック信号を生成する。そして、その信号に基づいて、基準クロック出力部181が、図2に示すように、例えば1/10秒ごとに繰り返す基準クロックを出力する。そして時刻針駆動タイミング発生部13は、基準クロックを入力すると、例えば秒針であれば、その基準クロック10回の入力のうち1回の時刻針駆動タイミング信号を出力する。なお、基準クロックが1/1000秒ごとに繰り返し出力されるような場合には、時刻針駆動タイミング発生部13は、秒針であれば、例えば、1秒間のうちの1000回の基準クロックの入力のうち最初の1回目から100回目までの基準クロックの入力期間に1回の時刻針駆動タイミング信号を出力するようにすればよい(基準クロックの入力のうち最初の1回目から100回目までの基準クロックの入力期間でなく、101回目から200回目までの基準クロックの入力期間に1回の時刻針駆動タイミング信号を出力してもよい)。このような状態において、ユーザのスイッチ19の押下により動作検出部182がクロノグラフの動作開始を検出すると(ステップS101)、動作検出部182は動作開始信号をクロノグラフ針駆動タイミング発生部17およびカウント値読み取り部183へ出力する。
【0018】
すると、カウント値読み取り部183は、内部カウンタ14からカウント値を読み取る(ステップS102)。ここで内部カウンタ14におけるカウント値は、基準クロック出力部181から出力される基準クロックを時刻針駆動タイミング発生部13で入力した際の、1秒当たりの基準クロックの数を、1秒ごとに繰り返しカウントした値である。つまり、基準クロック出力部181が1/10秒に1回の基準クロックを出力するような場合には、内部カウンタ14は1秒間に0〜9までのカウントを行い、1秒ごとにそのカウントを繰り返している。そして、動作開始検出時における、内部カウンタ14がカウントしたこの値を、カウント値読み取り部183が読み取る。そしてカウント値読み取り部183は読み取ったカウント値をタイミング重複判定部184へ出力する。またタイミング重複判定部184は次に、カウント値記憶部186から当該カウント値記憶部186の記憶するカウント値を読み取る(ステップS103)。そして、タイミング重複判定部184は、カウント値読み取り部183から入力したカウント値と、カウント値記憶部186から読み取ったカウント値が一致するかを判定する(ステップS104)。そして、タイミング重複判定部184は、カウント値が一致する場合には、時刻針動作タイミングとクロノグラフ針動作タイミングとが一致すると判定する。
【0019】
ここで、時刻針の駆動タイミング(秒針の場合は1秒)と、クロノグラフ針の駆動タイミング(本実施形態においては1/5秒)とが、予め定められたタイミングであり、クロノグラフ針駆動タイミングも基準クロックのタイミングに基づいて計られる。したがって、内部カウンタ14においてカウントする基準クロックのカウント値のうち、動作開始信号により最初のクロノグラフ針の駆動タイミング信号が出力されるのと同時刻にカウントされるカウント値が、どのカウント値であれば、時刻針の駆動タイミングと一致してしまうかが分かる。たとえば、本実施形態のように、時刻針の駆動タイミング信号が1秒ごとであり、クロノグラフ針の駆動タイミング信号が1/5秒であれば、1/10秒ごとに出力される基準クロックの0〜9のカウント値のうち、0,2,4,6,8の偶数のカウント値のカウント時に、動作開始信号により最初のクロノグラフ針の駆動タイミング信号が出力される場合に、当該クロノグラフ針と時刻針の駆動タイミングが一致してしまう。従って、予めカウント値記憶部186には、クロノグラフ針と時刻針の駆動タイミングが一致すると予め分かっている基準クロックの内部カウンタ14におけるカウント値を記憶している。そして、タイミング重複判定部184は、図2で示すように、動作開始信号に基づいて出力される最初のクロノグラフ針の駆動タイミング信号が、内部カウンタ14における基準クロックのカウント値の0,2,4,6,8の何れかのカウント時刻と同時刻である場合、つまり、タイミング重複判定部184は、カウント値読み取り部183から入力したカウント値と、カウント値記憶部186から読み取ったカウント値が一致する場合、時刻針動作タイミングとクロノグラフ針動作タイミングとが一致すると判定する。
【0020】
そして、時刻針動作タイミングとクロノグラフ針動作タイミングとが一致すると判定した場合、タイミング重複判定部184は駆動タイミング信号変更部185に対して、タイミング信号変更指示を出力する。すると、駆動タイミング信号変更部185は、時刻針駆動タイミング発生部13へ、時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を送信する(ステップS105)。すると、時刻針駆動タイミング発生部13は、図3で示すように、所定の時間遅らせて、時刻針の駆動タイミング信号を出力する。ここで、タイミングを遅らせる所定の時間は、例えば、時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅の時間とクロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅の時間とを加算した時間以上、クロノグラフ針の駆動タイミング信号の送信間隔から時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅を引いた時間未満であればよい。
【0021】
他方、ステップS104において時刻針動作タイミングとクロノグラフ針動作タイミングとが一致しないと判定した場合、スイッチ19の再押下に基づくクロノグラフの動作停止の検出まで待機する。また、動作検出部182は、スイッチ19の再押下によって動作停止を検出したかを判定し(ステップS106)、動作停止を検出した場合には、駆動タイミング信号変更部185へ時刻針の駆動タイミング信号の出力を初期に戻す駆動タイミング解除を通知する。すると、駆動タイミング信号変更部185は、駆動タイミング解除信号を時刻針駆動タイミング発生部13へ出力する(ステップS107)。これにより、時刻針駆動タイミング発生部13は、時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる動作解除して(タイミング不一致により遅らせる動作をしていない場合には駆動タイミング解除信号を破棄する)、クロノグラフ針の動作前のタイミングで、時刻針を駆動させる駆動タイミング信号を時刻用モータ駆動部12へ出力する。
【0022】
なお、図4で示すように、制御部18は、時刻針の駆動タイミングを早めるような動作を行うようにしてもよい。この場合、ステップS104において時刻針動作タイミングとクロノグラフ針動作タイミングとが一致すると判定した場合、ステップS105において、駆動タイミング信号変更部185は、時刻針駆動タイミング発生部13へ、時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める駆動タイミング変更要求を送信する。すると、時刻針駆動タイミング発生部13は、図4で示すように、所定の時間早めて、時刻針の駆動タイミング信号を出力する。ここで、タイミングを早める所定の時間は、例えば、時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅の時間とクロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅の時間とを加算した時間以上、クロノグラフ針の駆動タイミング信号の送信間隔の時間から時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅を引いた時間未満であればよい。
【0023】
図6は同実施形態による電子時計の機能構成を示す第2のブロック図である。
図7はタイミング変更後の電子時計内部の各信号のタイミング状態を示す第3の図である。
図6で示す電子時計1の機能構成は、図1で示す電子時計1の機能構成と、駆動タイミング信号変更部185の出力がクロノグラフ針駆動タイミング発生部17へ出力されている点で異なっている。
このように、電子時計1は、駆動タイミング信号変更部185の出力、つまり駆動タイミング変更要求をクロノグラフ針駆動タイミング発生部17へ出力してクロノグラフ針の駆動タイミングを遅らせるようにしてもよい。より具体的には、上述のステップS104の処理において、時刻針動作タイミングとクロノグラフ針動作タイミングとが一致すると判定した場合、ステップS105において、駆動タイミング信号変更部185は、クロノグラフ針駆動タイミング発生部17へ、クロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を送信する。すると、クロノグラフ針駆動タイミング発生部17は、図7で示すように、所定の時間遅らせて、クロノグラフ針の駆動タイミング信号を出力する。ここで、タイミングを遅らせる所定の時間は、例えば、時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅の時間とクロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅の時間とを加算した時間以上、クロノグラフ針の駆動タイミング信号の送信間隔の時間からクロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅を引いた時間未満であればよい。
【0024】
以上の処理によれば、クロノグラフの動作の開始を検出後、直ちに時刻針とクロノグラフ針の駆動タイミングが重なるかを当該重なる事象が発生する前に判定して、重なる場合には、時刻針、またはクロノグラフ針の一方を他方の駆動タイミングと重ならないようにずらすため、どのようなタイミングでクロノグラフの動作開始が指示されても、各指針の運針動作のムラが軽減でき、見栄えを良くすることができる。
【0025】
なお、上述の処理によれば、クロノグラフの動作開始検出時に内部カウンタ14がカウントしたカウント値と、予めカウント値記憶部186に記録されているカウント値が一致する場合には、時刻針とクロノグラフ針の駆動タイミングが一致すると判定している。しかしながら、基準クロックが1/1000秒周期で出力される場合等には、クロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅の時間内に、その基準クロックが複数回、基準クロック出力部181から出力されることとなる。例えばクロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅が3ミリ秒であった場合、その駆動タイミング信号の出力時には3回の基準クロックが出力されることとなる。このような場合には、カウント値記憶部186にはパルス幅分の連続したカウント値を予め記憶しておくようにすればよい。例えば、基準クロックが1/1000秒周期で出力され、ロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅が3ミリ秒である場合、カウント値記憶部186には0〜3,200〜203,400〜403,600〜603,800〜803のカウント値が予め記憶され、このカウント値のカウントが内部カウンタ14で行われた時刻に、動作開始を検出した場合には、時刻針とクロノグラフ針の駆動タイミングが一致すると判定されることとなる。
【0026】
なお、上述の電子時計は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。
【0027】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0028】
1・・・電子時計
11・・・時刻用モータ
12・・・時刻用モータ駆動部
13・・・時刻針駆動タイミング発生部
14・・・内部カウンタ
15・・・クロノグラフ用モータ
16・・・クロノグラフ用モータ駆動部
17・・・クロノグラフ針駆動タイミング発生部
18・・・制御部
19・・・スイッチ
20・・・発振回路
21・・・分周回路
181・・・基準クロック出力部
182・・・動作検出部
183・・・カウント値読み取り部
184・・・タイミング重複判定部
185・・・駆動タイミング信号変更部
186・・・カウント値記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計であって、
1秒当たりの基準周期数に基づいて、当該基準周期ごとに前記針の運針の基準を示す基準クロックを出力する基準クロック出力部と、
前記複数の針の内、時刻針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づく時刻針駆動周期ごとに出力する時刻針駆動タイミング発生部と、
前記複数の針の内、クロノグラフ針の動作開始信号を検出する動作検出部と、
前記動作開始信号の検出後、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づくクロノグラフ針駆動周期ごとに出力するクロノグラフ針駆動タイミング発生部と、
前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なるかを判定するタイミング重複判定部と、
前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定した場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、または前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記クロノグラフ針駆動タイミング発生部へ送信するか、または、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、の何れかの処理を行う駆動タイミング信号変更部と、
を備えることを特徴とする電子時計。
【請求項2】
1秒当たりの前記基準クロックの出力数を1秒ごとに繰り返しカウントする内部カウンタと、
前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を出力した際に、前記内部カウンタがカウントした値を読み取るカウント値読み取り部と、
前記時刻針の駆動タイミングと一致する前記内部カウンタのカウント値を予め記憶するカウント値記憶部と、を備え、
前記タイミング重複判定部は、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を出力した際に読み取った前記内部カウンタがカウントした値と、前記カウント値記憶部に予め記憶されているカウント値とを比較して一致する場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記駆動タイミング信号変更部は、前記時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅分の時間と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅分の時間とを加算した時間以上で、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の送信間隔の時間から時刻針の駆動タイミング信号のパルス幅を引いた時間もしくはクロノグラフ針の駆動タイミング信号のパルス幅を引いた時間未満の時間分、遅らせるまたは早める駆動タイミング変更要求を送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の電子時計。
【請求項4】
複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計の処理方法であって、
基準クロック出力部が、1秒当たりの基準周期数に基づいて、当該基準周期ごとに前記針の運針の基準を示す基準クロックを出力し、
時刻針駆動タイミング発生部が、前記複数の針の内、時刻針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づく時刻針駆動周期ごとに出力し、
動作検出部が、前記複数の針の内、クロノグラフ針の動作開始信号を検出し、
クロノグラフ針駆動タイミング発生部が、前記動作開始信号の検出後、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づくクロノグラフ針駆動周期ごとに出力し、
タイミング重複判定部が、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なるかを判定し、
駆動タイミング信号変更部が、前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定した場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、または前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記クロノグラフ針駆動タイミング発生部へ送信するか、または、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生部へ送信するか、の何れかの処理を行う
ことを特徴とする処理方法。
【請求項5】
複数の針と当該針をそれぞれ運針させる複数のモータとを備えた電子時計のコンピュータを、
1秒当たりの基準周期数に基づいて、当該基準周期ごとに前記針の運針の基準を示す基準クロックを出力する基準クロック出力手段、
前記複数の針の内、時刻針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づく時刻針駆動周期ごとに出力する時刻針駆動タイミング発生手段、
前記複数の針の内、クロノグラフ針の動作開始信号を検出する動作検出手段、
前記動作開始信号の検出後、前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号を、前記基準クロックに基づくクロノグラフ針駆動周期ごとに出力するクロノグラフ針駆動タイミング発生手段、
前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なるかを判定するタイミング重複判定手段、
前記時刻針の駆動タイミング信号と前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号が重なると判定した場合に、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生手段へ送信するか、または前記クロノグラフ針の駆動タイミング信号の出力を遅らせる駆動タイミング変更要求を前記クロノグラフ針駆動タイミング発生手段へ送信するか、または、前記時刻針の駆動タイミング信号の出力を早める駆動タイミング変更要求を前記時刻針駆動タイミング発生手段へ送信するか、の何れかの処理を行う駆動タイミング信号変更手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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