説明

電子機器、表示パネル制御装置および表示パネル制御方法

【課題】表示パネルに映像が表示されていない状態から表示パネルに映像が表示される状態への遷移に要する時間を低減することができる電子機器を実現する。
【解決手段】実施形態によれば、制御手段は、電子機器が電源オンされた後、表示パネルを電源オンする処理と、表示パネルからホットプラグ検出信号を受信する処理と、リンクトレーニング処理と、リンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号を表示パネルに送信する処理とを実行する。制御手段は、映像信号が表示パネルに送信された後に表示オフ要求イベントが発生した場合、表示パネルを電源オン状態に維持した状態で表示パネルへの映像信号の送信を停止し、表示パネルが電源オン状態であり且つ表示パネルへの映像信号の送信が停止されている状態で、表示オン要求イベントが発生した場合、前記決定された前記映像信号伝送形式で映像信号を表示パネルに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示パネルを備えた電子機器、表示パネルを制御するための表示パネル制御装置および表示パネル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブルパーソナルコンピュータ、デジタルTVといった様々な電子機器が開発されている。この種の電子機器の多くは、液晶ディスプレイ(LCD)パネルのような表示パネルを備えている。
【0003】
表示パネルを備えた電子機器では、表示パネルを制御するための内部ビデオインターフェースとしてLVDS I/F (Low voltage difference signal Interface)が用いられている。LVDS I/Fを有するLCDパネルの制御においては、LCDパネルに電力を供給した後に映像信号をLCDパネルに送信することによって、LCDパネルに映像を表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−89366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、LVDS I/F に代わる新たな内部ビデオインタフェースであるeDP (Embedded Display Port) I/Fが利用され始めている。eDP (Embedded Display Port) I/F は、LVDS I/Fの信号線数よりも少ない信号線数で高速信号伝送を実現することができる。このため、eDP I/Fは、今後、表示パネルのための信号伝送方式の主流になりつつある。
【0006】
しかし、eDP I/Fは、外部ビデオインタフェースであるDisplayPort I/Fをベースとした規格であるため、LCDパネルが電源オンされてからLCDパネルに映像信号を送信するまでの間に、ホットプラグ信号処理およびリンクトレーニング処理というプロセスを実行することが必要となる。したがって、eDP I/Fを用いた電子機器においては、LCDパネルが電源ONされてからLCDパネルに実際に映像が表示されるようになるまでに比較的多くの時間を要する。このことは、ユーザ操作性を低下させる要因となる。
【0007】
本発明は、表示パネルに映像が表示されていない状態から表示パネルに映像が表示される状態への遷移に要する時間を低減することができる電子機器、表示パネル制御装置および表示パネル制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、電子機器は、表示パネルを備えている。さらに、前記電子機器は、前記表示パネルを電源オンまたは電源オフする電源制御手段と、制御手段とを具備する。前記制御手段は、前記電子機器が電源オンされた後、前記電源制御手段を用いて前記表示パネルを電源オンする処理と、前記表示パネルからホットプラグ検出信号を受信する処理と、映像信号伝送形式を決定するためのリンクトレーニング処理と、前記リンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信する処理とを実行する。前記制御手段は、前記映像信号が前記表示パネルに送信された後に表示オフ要求イベントが発生した場合、前記表示パネルを電源オン状態に維持した状態で前記表示パネルへの前記映像信号の送信を停止し、前記表示パネルが電源オン状態であり且つ前記表示パネルへの前記映像信号の送信が停止されている状態で、表示オン要求イベントが発生した場合、前記決定された前記映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る電子機器の外観を示す斜視図。
【図2】同実施形態の電子機器のシステム構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の電子機器に設けられた表示パネル制御部の構成例を示すブロック図。
【図4】表示パネル制御シーケンスの例を示すタイミングチャート。
【図5】同実施形態の電子機器によって実行される表示パネル制御シーケンスの例を示すタイミングチャート。
【図6】同実施形態の電子機器によって実行される表示パネル制御処理の手順の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器の外観を示す斜視図である。この電子機器は表示パネルを備えた様々な機器、たとえば、ノートブックタイプのパーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、スレートPC、デジタルTV、等として実現され得る。以下では、この電子機器がノートブックタイプのパーソナルコンピュータ10として実現されている場合を想定する。
【0011】
図1に示すように、本コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成される。ディスプレイユニット12には、LCD16(Liquid Crystal Display)から構成される表示装置が組み込まれている。LCD16はEmbedded Display Port Standard に準拠した表示パネルであり、eDP (Embedded Display Port) I/Fを有している。
【0012】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面を覆う閉塞位置との間を回動自在にコンピュータ本体11に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、本コンピュータ10をパワーオン/オフするためのパワーボタン14、およびタッチパッドのようなポインティングデバイス15が配置されている。ポインティングデバイス15としては、マウスや、タッチパネルを用いてもよい。
【0013】
図2は、本コンピュータ10のシステム構成を示している。
本コンピュータ10は、CPU111、ブリッジデバイス112、主メモリ113、グラフィクスコントローラ114、ハードディスクドライブ(HDD)116、ネットワークコントローラ117、BIOS−ROM118、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)119、および電源回路120等を備えている。
【0014】
CPU111は、本コンピュータ10の各コンポーネントの動作を制御するプロセッサである。このCPU111は、フラッシュBIOS−ROM118に格納されたBIOSを実行する。BIOSは、LCD16を自動的に非表示状態に設定するためのLCD表示オートオフ機能を有している。例えば、キー入力またはポインティング操作といった入力イベントがない期間が閾値時間以上継続した時、BIOSは、LCD16を非表示状態に設定することを要求する表示オフ要求(LCD表示オフ要求)をグラフィクスコントローラ114に送信する。LCD16が非表示状態のときに入力イベントが発生した時、BIOSは、LCD16を表示状態に戻すために、表示オン要求(LCD表示オフ要求)をグラフィクスコントローラ114に送信する。
【0015】
さらに、BIOSは、映像を表示するディスプレイを内部ディスプレイ(LCD16)とコンピュータ10に接続された外部ディスプレイとの間で切り替えるディスプレイ切り替え機能を有している。ユーザは、例えばキーボード13上の所定のキー(ホットキー)を押下することにより、映像を表示するディスプレイを内部ディスプレイ(LCD16)と外部ディスプレイとの間で切り替えることができる。たとえば、表示対象ディスプレイは、ホットキーが押されるたびに、例えば、内部ディスプレイモード→外部ディスプレイモード→同時表示モード→内部ディスプレイモード→外部ディスプレイモード…の順で切り替えられる(トグル)。映像を表示するディスプレイが内部ディスプレイから外部ディスプレイに切り替えるイベント、例えば、内部ディスプレイモードから外部ディスプレイモードに切り替えるイベント、または同時表示モードから外部ディスプレイモードに切り替えるイベント、が発生した時、BIOSは、LCD16を非表示状態に設定することを要求する上述の表示オフ要求(LCD表示オフ要求)をグラフィクスコントローラ114に送信する。映像を表示するディスプレイが外部ディスプレイから内部ディスプレイに切り替えるイベント、たとえば、外部ディスプレイモードから内部ディスプレイモードに切り替えるイベント、または同時表示モードから内部ディスプレイモードに切り替えるイベント、が発生した時、BIOSは、LCD16を表示状態に戻すために、上述の表示オン要求(LCD表示オン要求)をグラフィクスコントローラ114に送信する。
【0016】
CPU111は、さらに、HDD116から主メモリ113にロードされる、オペレーティングシステム、各種アプリケーションプログラムおよび各種ユーティリティプログラムを実行する。上述のLCD表示オートオフ機能は、ユーティリティプログラムに実装してもよい。
【0017】
ブリッジデバイス112は、グラフィクスコントローラ114との通信を実行する機能を有している。さらに、ブリッジデバイス112には、主メモリ113を制御するメモリコントローラも内蔵されている。またさらに、ブリッジデバイス112は、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス上の各デバイスおよびLPC(Low PIN Count)バ上の各デバイスとの通信も実行する。
【0018】
グラフィクスコントローラ114は、本コンピュータ10のディスプレイモニタとして使用されるLCD16を制御する表示コントローラである。グラフィクスコントローラ114とLCD16との間の映像信号インタフェースとしては、上述のeDP (Embedded Display Port) I/Fが用いられる。さらに、グラフィクスコントローラ114は、コンピュータ10に接続された上述の外部ディスプレイに映像信号を送信することもできる。
【0019】
本実施形態では、グラフィクスコントローラ114とブリッジデバイス112とが、LCD16を制御するための表示パネル制御部100として機能する。
【0020】
この表示パネル制御部100は、LCD16に映像が表示されていない非表示状態からLCD16に映像が表示される表示状態への遷移に要する時間を低減するために、LCD16(eDP I/F LCDパネル)に対する電源シーケンス(表示オンシーケンス)において、システム起動後1回目のみ、ホットプラグ信号処理とリンクトレーニング処理とを実行し、2回目以降の電源シーケンス(表示オンシーケンス)においてはホットプラグ信号処理とリンクトレーニング処理の実行を省略するように構成されている。換言すれば、表示パネル制御部100は、1回目の電源シーケンス(表示オンシーケンス)を実行した後は、たとえ表示オフ要求(LCD表示オフ要求)のイベントが発生しても、LCD16を電源オン状態に維持する。つまり、表示オフ要求(LCD表示オフ要求)のイベントが発生した時、表示パネル制御部100は、LCD16を電源オン状態に維持した状態で、LCD16への映像信号の送信を停止する。
【0021】
より詳しくは、表示パネル制御部100によって実行されるLCD16制御シーケンスの手順は以下の通りである。
【0022】
(1)コンピュータ10が電源オンされた後の1回目の電源シーケンス(表示オンシーケンス)において、表示パネル制御部100は、LCD16を電源オンする処理と、LCD16からホットプラグ検出信号を受信する処理(ホットプラグ信号処理)と、映像信号伝送形式を決定するためのリンクトレーニング処理と、このリンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号をLCD16に送信する処理と実行する。
【0023】
(2)映像信号がLCD16に送信された後に、表示オフ要求イベントが発生した場合、表示パネル制御部100は、LCD16を電源オン状態に維持した状態でLCD16への映像信号の送信を停止する。
【0024】
(3)コンピュータ10が電源オンされた後の2回目以降の各電源シーケンス(2回目以降の各表示オンシーケンス)においては、表示パネル制御部100は、1回目の電源シーケンス(表示オンシーケンス)においてすでに決定されている映像信号伝送形式で、映像信号をLCD16に送信する。2回目以降の各電源シーケンス(2回目以降の各表示オンシーケンス)は、LCD16への映像信号の送信が停止されている状態で表示オン要求イベントが発生した時に実行される。つまり、LCD16が電源オン状態であり且つLCD16への映像信号の送信が停止されている状態で、表示オン要求イベントが発生した場合、表示パネル制御部100は、LCD16を電源オンする処理、ホットプラグ信号処理、およびリンクトレーニング処理の実行をスキップし、すでに決定されている映像信号伝送形式で映像信号をLCD16に送信する。
【0025】
(4)LCD16へ映像信号が送信されている状態でコンピュータ10の電源オフを要求するシステム電源オフ要求イベントが発生した場合、またはLCD16が電源オン状態であり且つLCD16への映像信号の送信が停止されている状態でシステム電源オフ要求イベントが発生した場合、表示パネル制御部100は、LCD16を電源オフする。もしこの時、LCD16へ映像信号が送信されている状態であるならば、表示パネル制御部100は、LCD16へ映像信号が送信も停止する。
【0026】
以上の処理により、2回目以降の各電源シーケンス(表示オンシーケンス)においては、ホットプラグ信号処理とリンクトレーニング処理とが省略される。よって、2回目以降の各電源シーケンスにおいては、LCD16に映像が表示されていない状態からLCD16に映像が表示される状態への遷移に要する時間を低減することができる。
【0027】
エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)119は、電力管理のためのエンベデッドコントローラと、キーボード(KB)13およびポインティングデバイス15などを制御するキーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。EC/KBC119は、電源回路120と共同して、ユーザによるパワーボタンスイッチ14の操作に応じて本コンピュータ10を電源オン/電源オフする。電源回路120は、コンピュータ本体11に内蔵されたバッテリ121またはACアダプタ122を介して供給される外部電源を用いて、本コンピュータ10の各コンポーネントに供給すべきシステム電源を生成する。
【0028】
次に、図3を参照して、表示パネル制御部100の構成例について説明する。
図3に示されているように、表示パネル制御部100は、電源スイッチ回路101、ブリッジデバイス112、グラフィクスコントローラ(GPU)114等によって構成されている。電源スイッチ回路101は、電源端子VCCとLCD16との間に接続されたスイッチ(例えばFET)から構成されている。
【0029】
ブリッジデバイス112は、電源スイッチ回路101をオンまたはオフすることによってLCD16を電源オンまたは電源オフする電源制御部として機能する。このブリッジデバイス112がグラフィクスコントローラ(GPU)114からLCDパネル電源オン要求を受信した時、ブリッジデバイス112は、LCDパネル電源イネーブル(EN)信号をアクティブ状態に設定することによって、LCD16を電源オン、つまりLCD16にLCDパネル電源(電力)を供給する。またブリッジデバイス112がグラフィクスコントローラ(GPU)114からLCDパネル電源オフ要求を受信した時、ブリッジデバイス112は、LCDパネル電源イネーブル(EN)信号をインアクティブ状態に設定することによって、LCD16を電源オフする。
【0030】
グラフィクスコントローラ(GPU)114は、eDP (Embedded Display Port) I/Fを介してLCD16を制御する。eDP I/Fには、メインデータチャネル201(4レーン)と、補助(AUX)チャンネルと称されるサイドチャンネル202(1レーン)と、ホットプラグ検出信号線203とが定義されている。メインデータチャネル201はグラフィクスコントローラ(GPU)114からLCD16への映像信号の送信に用いられる。メインデータチャネル201の1レーン当りのデータ転送レートは可変設定することができる。サイドチャンネル202は映像信号伝送形式を決定するためのリンクトレーニング処理等に用いられるチャンネルである。グラフィクスコントローラ(GPU)114はサイドチャンネル202を介してLCD16との通信を実行することによって、映像信号伝送形式(使用すべきメインデータチャネルのレーン数、1レーン当りのデータ転送レート、映像信号の振幅、等)を決定する(リンクトレーニング処理)。
【0031】
ホットプラグ検出信号線203は、LCD16からグラフィクスコントローラ(GPU)114にホットプラグ検出信号を送信するために用いられる。ホットプラグ検出信号は、LCD16が動作可能状態になったことをLCD16からグラフィクスコントローラ(GPU)114に通知するための信号である。グラフィクスコントローラ(GPU)114は、LCD16からアクティブステートのホットプラグ検出信号を受信する処理(ホットプラグ信号処理)を実行した後、上述のリンクトレーニング処理を実行する。
【0032】
グラフィクスコントローラ(GPU)114は、映像信号を生成するグラフィクス処理部に加え、制御部114Aを含んでいる。この制御部114Aはブリッジデバイス112と共同して上述の電源シーケンス(表示オンシーケンス)を制御する。
【0033】
次に、図4および図5を参照して、制御部114Aによって実行される電源シーケンス(表示オンシーケンス)について説明する。
【0034】
図4は、電源シーケンスの度に、つまり表示オン要求イベントが発生する度に、ホットプラグ信号処理とリンクトレーニング処理とを実行する場合のタイミング制御を示している。図5は、1回目の電源シーケンスにおいてのみホットプラグ信号処理とリンクトレーニング処理とを実行し、2回目以降の電源シーケンスにおいてはホットプラグ信号処理とリンクトレーニング処理とが省略される場合のタイミング制御を示している。本実施形態では、図5のタイミング制御が実行される。
【0035】
まず、図4のタイミング制御(通常のタイミング制御)について説明する。
システム電源(VCC)がオンすることによってコンピュータ10が電源オンされる。この場合、グラフィクスコントローラ(GPU)114、ブリッジデバイス112等の各コンポーネントも電源オンされる。LCD16は電源オフされている。そして、システム処理化処理、GPU114の初期化処理等が実行される。そして、例えば、BIOSから表示オン要求を受信した時、またはGPU114の初期化処理が終了した時に、グラフィクスコントローラ(GPU)114は電源シーケンス(LCD表示オン処理)を開始する。
【0036】
電源シーケンス(LCD表示オン処理)では、LCDパネル電源イネーブル(EN)信号がアクティブ状態に設定され、これによってLCDパネル電源がオン、つまりLCD16が電源オンされる。LCD16が電源オンされてから時間(T1)だけ経過した時、ホットプラグ検出信号(ホットプラグ信号ともいう)がLCD16によってアクティブ状態に設定される。GPU114はホットプラグ検出信号を受信するための処理を実行した後、リンクトレーニング処理を実行する。リンクトレーニング処理が完了した後、GPU114は、映像信号をLCD16に送信する。この結果、LCD16の画面上には、映像(例えば、ロゴ、デスクトップ画面、等)が表示される。
【0037】
システムが稼働状態の間に表示オフ要求イベントが発生したならば、LCDパネル電源がオフされると共に、LCD16への映像信号の送信が停止される。そして、LCD16がオフされている状態で表示オン要求イベントが発生したならば、上述の電源シーケンス(LCD表示オン処理)と同じ電源シーケンスが再び実行される。
【0038】
なお、図4のタイミング制御におけるT1、T2、T3、Ton1、Ton2は以下の通りである。
T1 = 0ms(min), 200ms(max)
T2 = 10〜20ms (typ)
T3 = 0ms(min), 50ms(max)
Ton1 = Ton2 = T1 + T2 + T3 = 10ms(min), 270ms (max)
ここで、“min”は最小値を示し、“max”は最大値を示し、“typ”は典型的な値を示している。Ton1は、LCDパネル電源オン(LCD表示ON処理開始)からLCDパネルに映像データが表示されるまでの時間(システム起動後1回目のLCDパネル電源シーケンス時)を示している。また、Ton2は、LCDパネル電源オン(LCD表示ON処理開始)からLCDパネルに映像データが表示されるまでの時間(システム起動後2回目以降のLCDパネル電源シーケンス時)を示している。Ton1=Ton2であり、Ton1(= Ton2)の最小値は10ms(min)、Ton1(= Ton2)の最大値は270ms(max)である。
【0039】
次に、図5を参照して、本実施形態のタイミング制御について説明する。
システム起動後の1回目のLCDパネルの電源シーケンスは、図4の電源シーケンスと同じである。1回目のLCDパネルの電源シーケンスが完了した後は、LCDパネル電源は、LCD表示オフ要求イベントが発生しても常にオン状態に維持される。このため、システム起動後の2回目以降のLCDパネルの電源シーケンスにおいては、LCDパネル電源オンが発生しないため、ホットプラグ信号処理とリンクトレーニング処理の実行を省略できる。この結果、LCDパネル電源オン(LCD表示ON処理開始)からLCDパネルに映像データが表示されるまでの時間(システム起動後2回目以降のLCDパネル電源シーケンス時)を低減することができる。
【0040】
以下、本実施形態のタイミング制御の詳細を説明する。
【0041】
システム電源(VCC)がオンすることによってコンピュータ10が電源オンされる(システムパワーオン)。この場合、グラフィクスコントローラ(GPU)114、ブリッジデバイス112等の各コンポーネントも電源オンされる。LCD16は電源オフされている。そして、システム処理化処理、GPU114の初期化処理等が実行される。そして、例えば、BIOSから表示オン要求(LCDパネル表示オン要求)を受信した時、またはGPU114の初期化処理が終了した時に、グラフィクスコントローラ(GPU)114は電源シーケンス(LCD表示オン処理)を開始する。
【0042】
電源シーケンス(LCD表示オン処理)では、グラフィクスコントローラ(GPU)114の制御部114Aはブリッジデバイス112にLCDパネル電源オンを要求する。これにより、LCDパネル電源イネーブル(EN)信号がブリッジデバイス112によってアクティブ状態に設定され、LCDパネル電源がオン、つまりLCD16が電源オンされる。LCD16が電源オンされてから時間(T1)だけ経過した時、ホットプラグ検出信号(ホットプラグ信号ともいう)がLCD16によってアクティブ状態に設定される。GPU114の制御部114Aは、ホットプラグ検出信号を受信するための処理(ホットプラグ信号処理)を実行した後、サブチャンネル202を介してLCD16との通信を実行することによって、リンクトレーニング処理を実行する。リンクトレーニング処理では、GPU114の制御部114AとLCD16との間のネゴシエーションが行われ、これによって、上述したように、メインデータチャネル201を介して送信すべき映像信号の映像信号伝送形式(使用すべきメインデータチャネルのレーン数、1レーン当りのデータ転送レート、映像信号の振幅、等)が決定される。
【0043】
リンクトレーニング処理が完了した後、GPU114の制御部114Aは、リンクトレーニング処理で決定された映像信号伝送形式で映像信号をメインデータチャネル201を介してLCD16に送信する。この結果、LCD16の画面上には、映像(例えば、ロゴ、デスクトップ画面、等)が表示される。
【0044】
システムが稼働状態の間に表示オフ要求イベントが発生したならば、つまり、BIOSから表示オフ要求を受信したならば、制御部114Aは、LCDパネル電源をオン状態に維持したまま、LCD16への映像信号の送信を停止する。LCD16への映像信号の送信が停止されている間、LCD16は黒画面を表示するように構成されている。なお、LCD16への映像信号の送信が停止されている間、制御部114Aは、LCD16のバックライトをオフ(消灯)してもよい。
【0045】
そして、LCD16がオフされている状態で表示オン要求イベントが発生したならば、つまりBIOSから表示オフ要求を受信したならば、制御部114Aは、1回目の電源シーケンスのリンクトレーニング処理で決定された映像信号伝送形式で映像信号をLCD16に送信する。
【0046】
システム電源のオフを要求するイベントが発生したならば、つまりBIOSからシステム電源オフ要求を受信したならば、制御部114Aは、ブリッジデバイス112にLCDパネル電源オフを要求する。これにより、LCDパネル電源イネーブル(EN)信号がブリッジデバイス112によってインアクティブ状態に設定され、LCDパネル電源がオフ、つまりLCD16が電源オフされる。
【0047】
なお、図5のタイミング制御におけるT1、T2、T3、Ton1、Ton2は以下の通りである。
T1 = 0ms(min), 200ms(max)
T2 = 10〜20ms (typ)
T3 = 0ms(min), 50ms(max)
Ton1 = T1 + T2 +T3 = 10ms(min), 270ms (max)
Ton2 = T3 = 0ms(min), 50ms (max)
以上のように、LCDパネル電源オン(LCD表示ON処理開始)からLCDパネルに映像データが表示されるまでの時間(システム起動後2回目以降のLCDパネル電源シーケンス時)、つまり、Ton2は、その最小値が0ms(min)であり、その最大値が50ms(max)である。よって、システム起動後2回目以降のLCDパネル電源シーケンス時においては、LCD16に映像が表示されていない状態からLCD16に映像が表示される状態への遷移に要する時間を低減することができる。
【0048】
次に、図6のフローチャートを参照して、本実施形態の表示パネル制御処理の手順について説明する。
【0049】
コンピュータ10が電源オンされた後、制御部114Aは、ブリッジデバイス112を用いて、LCD16を電源オンする(ステップS11)。より詳しくは、例えば、システムパワーオン後の1回目の表示オン要求(LCDパネル表示オン要求)をBIOSから受信した時、制御部114Aは、ブリッジデバイス112を用いて、LCD16を電源オンする。
【0050】
そして、制御部114Aは、ホットプラグ検出信号をLCD16から受信する(ステップS12)。ステップS12では、制御部114Aは、LCD16が動作状態になったことを示すアクティブ状態のホットプラグ検出信号がLCD16から出力されるのを待つ。そして、制御部114Aは、アクティブ状態のホットプラグ検出信号をLCD16から受信すると、LCD16が動作状態になったことを認識し、ステップS13に進む。ステップS13では、制御部114Aは、映像信号伝送形式を決定するための上述のリンクトレーニング処理を実行する。
【0051】
リンクトレーニング処理が完了すると、制御部114Aは、リンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号をLCD16に送信する(ステップS14)。これにより、LCD16に映像が表示される。
【0052】
映像信号がLCD16に送信された後にBIOSから表示オフ要求またはシステム電源オフ要求(システムパワーオフ要求)を受信すると、制御部114Aは、以下の処理を実行する。
【0053】
すなわち、制御部114AがBIOSから表示オフ要求を受信したならば(ステップS16のYES)、制御部114Aは、LCD16を電源オン状態に維持した状態で、LCD16への映像信号の送信を停止する(ステップS16)。この場合、LCD16は黒画面を表示する。一方、制御部114AがBIOSからシステムパワーオフ要求を受信したならば(ステップS20のYES)、制御部114Aは、LCD16への映像信号の送信を停止すると共に、ブリッジデバイス112を用いてLCD16を電源オフする(ステップS21)。
【0054】
LCD16が電源オン状態に維持され且つLCD16への映像信号の送信が停止されている状態で、制御部114AがBIOSから表示オン要求を受信したならば(ステップS17のYES)、制御部114Aは、ステップS13ですでに決定されている映像信号伝送形式で、映像信号をLCD16に送信する(ステップS14)。
【0055】
一方、LCD16が電源オン状態に維持され且つLCD16への映像信号の送信が停止されている状態で、制御部114AがBIOSからシステムパワーオフ要求を受信したならば(ステップS18のYES)、制御部114Aは、ブリッジデバイス112を用いてLCD16を電源オフする(ステップS19)。
【0056】
以上のように、本実施形態では、コンピュータ10が電源オンされた後に、LCD16を電源オンする処理と、LCD16からホットプラグ検出信号を受信する処理と、映像信号伝送形式を決定するためのリンクトレーニング処理と、リンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号をLCD16に送信する処理とが実行される。そして、映像信号がLCD16に送信された後に表示オフ要求イベントが発生した場合には、LCD16を電源オン状態に維持した状態でLCD16への映像信号の送信が停止される。さらに、LCD16が電源オン状態であり且つLCD16への映像信号の送信が停止されている状態で、表示オン要求イベントが発生した場合には、すでに決定された映像信号伝送形式で映像信号がLCD16に送信される。したがって、表示オン要求イベントが発生する度に、LCD16を電源オンする処理、LCD16からホットプラグ検出信号を受信する処理、およびリンクトレーニング処理を実行する必要がなくなり、LCD16に映像が表示されていない状態からLCD16に映像が表示される状態への遷移に要する時間(平均時間)を低減することができる。
【0057】
なお、本実施形態の表示パネル制御処理は、コンピュータのみならず、他の様々な電子機器にも適用することができる。また、本実施形態では、表示パネル制御部100がグラフィクスコントローラ(GPU)114を用いて実現されている場合を例示したが、グラフィクスコントローラ(GPU)114とは独立した専用の表示パネル制御部100を設けてもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
16…LCD、100…表示パネル制御部、112…ブリッジデバイス、114…グラフィクスコントローラ、114A…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを備えた電子機器であって、
前記表示パネルを電源オンまたは電源オフする電源制御手段と、
前記電子機器が電源オンされた後、前記電源制御手段を用いて前記表示パネルを電源オンする処理と、前記表示パネルからホットプラグ検出信号を受信する処理と、映像信号伝送形式を決定するためのリンクトレーニング処理と、前記リンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信する処理とを実行する制御手段とを具備し、
前記制御手段は、前記映像信号が前記表示パネルに送信された後に表示オフ要求イベントが発生した場合、前記表示パネルを電源オン状態に維持した状態で前記表示パネルへの前記映像信号の送信を停止し、前記表示パネルが電源オン状態であり且つ前記表示パネルへの前記映像信号の送信が停止されている状態で、表示オン要求イベントが発生した場合、前記決定された前記映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信するように構成されている電子機器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記表示パネルが電源オン状態であり且つ前記表示パネルへ前記映像信号が送信されている状態で、前記電子機器の電源オフを要求するイベントが発生した場合、前記表示パネルへの前記映像信号の送信を停止すると共に、前記電源制御手段を用いて前記表示パネルを電源オフするように構成されている請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記表示パネルは、前記表示パネルへの前記映像信号の送信が停止されている間、黒画面を表示するように構成されている請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記表示パネルは、Embedded Display Port Standardに準拠している請求項1記載の電子機器。
【請求項5】
電子機器に設けられた表示パネルを制御する表示パネル制御装置であって、
前記表示パネルを電源オンまたは電源オフする電源制御手段と、
前記電子機器が電源オンされた後、前記電源制御手段を用いて前記表示パネルを電源オンする処理と、前記表示パネルからホットプラグ検出信号を受信する処理と、映像信号伝送形式を決定するためのリンクトレーニング処理と、前記リンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信する処理とを実行する制御手段とを具備し、
前記制御手段は、前記映像信号が前記表示パネルに送信された後に表示オフ要求イベントが発生した場合、前記表示パネルを電源オン状態に維持した状態で前記表示パネルへの前記映像信号の送信を停止し、前記表示パネルが電源オン状態であり且つ前記表示パネルへの前記映像信号の送信が停止されている状態で、表示オン要求イベントが発生した場合、前記決定された前記映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信するように構成されている表示パネル制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記表示パネルが電源オン状態であり且つ前記表示パネルへ前記映像信号が送信されている状態で、前記電子機器の電源オフを要求するイベントが発生した場合、前記表示パネルへの前記映像信号の送信を停止すると共に、前記電源制御手段を用いて前記表示パネルを電源オフするように構成されている請求項5記載の表示パネル制御装置。
【請求項7】
電子機器に設けられた表示パネルを制御する表示パネル制御方法であって、
前記電子機器が電源オンされた後、前記表示パネルを電源オンする処理と、前記表示パネルからホットプラグ検出信号を受信する処理と、映像信号伝送形式を決定するためのリンクトレーニング処理と、前記リンクトレーニング処理によって決定された映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信する処理とを実行し、
前記映像信号が前記表示パネルに送信された後に表示オフ要求イベントが発生した場合、前記表示パネルを電源オン状態に維持した状態で前記表示パネルへの前記映像信号の送信を停止し、
前記表示パネルが電源オン状態であり且つ前記表示パネルへの前記映像信号の送信が停止されている状態で、表示オン要求イベントが発生した場合、前記決定された前記映像信号伝送形式で映像信号を前記表示パネルに送信する表示パネル制御方法。
【請求項8】
前記表示パネルが電源オン状態であり且つ前記表示パネルへ前記映像信号が送信されている状態で、前記電子機器の電源オフを要求するイベントが発生した場合、前記表示パネルへの前記映像信号の送信を停止する請求項7記載の表示パネル制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3274(P2013−3274A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132700(P2011−132700)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【特許番号】特許第5058361号(P5058361)
【特許公報発行日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】