説明

電子機器の蓋構造

【課題】蓋を開けるためのスプリングを抹消して部品点数を少なくでき、コストダウンが図れ、スプリングを抹消することによりラインでの工程を減らせ作業性を向上できる。
【解決手段】機器本体1に設けた縦溝部1aにSDカード等のメディア2が出し入れされ、機器本体の上部に蓋3が配置される開口部を設け、奥側の両側にスライド溝を形成し、スライド溝に蓋の両端部から突設した軸部が挿入され、スライド溝を蓋の両側の軸部がスライドされて蓋が奥側に向けてスライドされ、蓋が閉められる電子機器の蓋構造であり、蓋の裏面側の奥部に肉厚部3cが形成されると共に蓋の裏面に曲線形の凹部3dが形成されており、蓋が手前側にスライドされたときにメディアの飛び出しによってこのメディアの上端が蓋の肉厚部を押して蓋が開けられ、蓋が奥側にスライドされて閉められるときにメディアの上端が蓋の裏面の曲線形の凹部に滑らかに案内されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器本体に設けられた縦溝部にSDカード等のメディアが出し入れされ、前記機器本体の上部に蓋が配置される開口部が設けられると共に、奥側の両側にスライド溝が形成され、これらのスライド溝に蓋の両端部から突設された軸部が挿入されて、スライド溝を蓋の両側の軸部がスライドされることによって蓋が奥側に向けてスライドされて蓋が閉められ、蓋の端部の略中央に設けられたスプリング取付部にスプリングが巻回されていて、蓋が前方にスライドされたときにスプリングの付勢力で蓋が開けられるようにした電子機器の蓋構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器の蓋構造は、図5に示すように、機器本体101に設けられた縦溝部102にSDカード等のメディア103が出し入れされ、機器本体101の上部に蓋104が配置される開口部105が設けられると共に、奥側の両側にスライド溝106が形成されている。更に、これらのスライド溝106に蓋104の両端部の軸部107が挿入されて、スライド溝106を蓋104の両側の軸部107がスライドされて蓋104が閉められるようになっている。また、蓋104の端部の略中央に設けられたスプリング取付部108にスプリング109が巻回されている。そして、蓋104が前方にスライドされたときに、スプリング109の付勢力で蓋104が開けられるようになっている。
【0003】
ところが、蓋104を開けるためのスプリング109を必要とするために、部品点数が多くなるという問題があり、さらに蓋104を開けた後、メディア103を取り出すため、手でメディアを押す必要があり、閉めるときには手でメディア103を縦溝部102内に押し込み、その後に蓋104をスライドさせていたために、この作業が面倒で手間がかかるという問題があった。
【0004】
第1の従来技術を図6に示す。この従来の電子機器は、図6に示すように、蓋203をスライドさせると、蓋203の後端部に配置された凸型の押し出し部207が、メモリカード204の後端と当接され、メモリカード204を押し出す。そして、蓋203の移動に伴いメモリカード204も同時に移動することとなり、本体ベース202よりメモリカード204が突出し、指等により取り出し可能となる。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところが、これは、蓋203をスライドさせているだけであって、蓋203を回転して上向きに開けるものではなかった。
【0006】
第2の従来技術を図7に示す。この従来の電子機器装置は、図7に示すように、開口部311、312を設けた筐体本体313に蓋体部314を回動自在に取り付けて構成した構造において、筐体本体313の開口部側に閉蓋状態にロック可能な凹状ロック部340とこれに隣接したロック突部341を配置し、蓋体部314にばね部と弧状突起からなる係止片360を配置し、蓋体部314が開口部を開閉する時の回動時に、弧状突起をばね部によりロック突部341に押圧接触させて、ロック突部を移行する前後で回動方向に相反する力が付与され、蓋体部を開、閉の二状態に保持する。蓋体部の閉状態時に機器のスイッチを動作させる。(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
ところが、これは、蓋体部314をスライドするものではなく、しかも、SDカード等のメディアを蓋体部314で押すものでなかった。
【特許文献1】特開2002−83268号公報
【特許文献2】特開2004−13396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、蓋を開けるためのスプリングを抹消して部品点数を少なくでき、コストダウンが図れ、スプリングを抹消することによりラインでの工程を減らすことができて作業性を向上させることができる電子機器の蓋構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、請求項1に記載の発明は、機器本体に設けられた縦溝部にSDカード等のメディアが出し入れされ、前記機器本体の上部に蓋が配置される開口部が設けられると共に、奥側の両側にスライド溝が形成され、これらのスライド溝に前記蓋の両端部から突設された軸部が挿入されて、前記スライド溝を前記蓋の両側の軸部がスライドされることによって前記蓋が奥側に向けてスライドされて蓋が閉められ、前記蓋の端部の略中央に設けられたスプリング取付部にスプリングが巻回されていて、前記蓋が前方にスライドされたときに前記スプリングの付勢力で蓋が開けられるようにした電子機器の蓋構造において、前記スプリングが省かれ、前記蓋の裏面側の奥部に肉厚部が形成されると共に前記蓋の裏面に曲線形の凹部が形成されており、前記蓋が手前側にスライドされたときに前記メディアの飛び出しによってこのメディアの上端が前記蓋の肉厚部を押して前記蓋が開けられ、前記蓋が奥側にスライドされて閉められるときに前記メディアの上端が前記蓋の裏面の曲線形の凹部に滑らかに案内されるようにしたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、機器本体に設けられた縦溝部にSDカード等のメディアが出し入れされ、前記機器本体の上部に蓋が配置される開口部が設けられると共に、奥側の両側にスライド溝が形成され、これらのスライド溝に前記蓋の両端部から突設された軸部が挿入されて、前記スライド溝を前記蓋の両側の軸部がスライドされることによって前記蓋が奥側に向けてスライドされて蓋が閉められ、前記蓋の端部の略中央に設けられたスプリング取付部にスプリングが巻回されていて、前記蓋が前方にスライドされたときに前記スプリングの付勢力で蓋が開けられるようにした電子機器の蓋構造において、前記スプリングが省かれ、前記蓋の裏面側の奥部に肉厚部が形成されており、前記蓋が手前側にスライドされたときに前記メディアの飛び出しによってこのメディアの上端が前記蓋の肉厚部を押して前記蓋が開けられるようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、蓋を開けるためのスプリングを省くことができるから、部品点数を少なくでき、コストダウンが図れ、スプリングを省くことによりラインでの工程を減らすことができて作業性を向上させることができる。また、蓋を手前側に引くと蓋の肉厚部がメディアの上端に当接し、メディアの飛び出しによって蓋を容易に開くことができる。更に、蓋の裏面に曲線型の凹部が形成されているから、蓋を開け閉めするときに、この蓋の曲線形の凹部にメディアの上端が滑らかに当接しながら蓋が移動することによりメディアの上端が損傷することを防ぐことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、蓋を開けるためのスプリングを省くことができるから、部品点数を少なくでき、コストダウンが図れ、スプリングを省くことによりラインでの工程を減らすことができて作業性を向上させることができる。また、蓋を手前側に引くと蓋の肉厚部がメディアの上端に当接し、メディアの飛び出しによって蓋を容易に開くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子機器の蓋構造の実施の形態について、図を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態の電子機器の蓋構造を示し、蓋が開く状態の部分斜視図、図2は図1の状態から蓋を閉めた状態の部分斜視図、図3は蓋の手前側への移動による蓋が開くときの状態を示し、(a)は蓋を手前側に引く前の状態の断面図、(b)はメディアの上端が蓋の肉厚部に当接した状態の断面図、(c)はメディアの飛び出しにより蓋が開いた上体の断面図、図4は蓋を閉める状態を示し、(a)は蓋を閉める前の状態の断面図、(b)は蓋の肉厚部にメディアの上端が当接した状態の断面図、(c)は蓋が閉められた状態の断面図である。
【0015】
本実施形態の電子機器の蓋構造は、図1に示すように、機器本体1に設けられた縦溝部1aにSDカード等のメディア2が出し入れされるようになっており、機器本体1の上部に蓋3が配置される開口部4が設けられている。更にこの開口部4の奥側の両側にスライド溝5、5が形成され、これらのスライド溝5、5に蓋3の奥側の突出部3a、3aの両端部の両側から外向きに突出された軸部3b、3bが挿入されて、スライド溝5、5を蓋3の両側の軸部3b、3bがスライドされることによって蓋3が奥側にスライドされて、図2に示すように、蓋3が閉められるようになっている。また、図3(a)(b)(c)に示すように、蓋3の裏面側の奥部に肉厚部3cが形成されていると共にこの肉厚部3cから手前側に曲線形の凹部3dが形成されている。
【0016】
図3(a)の状態から蓋3が手前側にスライドされると、図3(b)に示すように、メディア2の上端部が蓋3の裏面側の肉厚部3cに当接する。ここで、機器本体1の縦溝部1aの底部に板ばね6が配置されており、この板ばね6の上向きの付勢力でメディア2が上向きに飛び出すように付勢されている。メディア2の上端部が蓋3の裏面側の肉厚部3cに当接すると、図1(c)に示すように、メディア2が上向きに飛び出して蓋3が開けられる。蓋3を閉めるときには、図4(a)に示すように、蓋3を下向きに押すと、図4(b)に示すように、メディア2の上端が蓋3の裏面側の肉厚部3cに当接してメディア2が機器本体1の縦溝部1a内を下向きに移動する。この状態で蓋3を奥側にスライドさせると図4(c)に示すように、メディア2の上端は蓋3の裏面側の曲線形の凹部3dに当接して緩やかに滑り、蓋3が閉められる。
【0017】
従って、本実施形態によれば、蓋3を開けるために従来使用されていたスプリングを省くことができるから、部品点数を少なくでき、コストダウンが図れ、スプリングを省くことによりラインでの工程を減らすことができて作業性を向上させることができる。また、蓋3を手前側に引くと蓋3の肉厚部3cがメディア2の上端に当接し、板ばね6の上向きの付勢力によるメディア2の飛び出しによって蓋3を容易に開くことができる。更に、蓋3の裏面に曲線型の凹部3dが形成されているから、蓋3を開け閉めするときに、この蓋3の曲線形の凹部3dにメディア2の上端が滑らかに当接しながら蓋3が移動することによりメディア2の上端が損傷することを防ぐことができる。
【0018】
尚、蓋3の裏面側に曲線形の凹部3dを設けることなく、肉厚部3cを設けるだけでもよいことは勿論である。また、機器本体1の縦溝部1aの底部に板ばね6に限らず、スプリング等の他の弾性体を配置してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の電子機器の蓋構造を示し、蓋が開く状態の部分斜視図である。
【図2】図1の状態から蓋を閉めた状態の部分斜視図である。
【図3】蓋の手前側への移動による蓋が開くときの状態を示し、(a)は蓋を手前側に引く前の状態の断面図、(b)はメディアの上端が蓋の肉厚部に当接した状態の断面図、(c)はメディアの飛び出しにより蓋が開いた上体の断面図である。
【図4】蓋を閉める状態を示し、(a)は蓋を閉める前の状態の断面図、(b)は蓋の肉厚部にメディアの上端が当接した状態の断面図、(c)は蓋が閉められた状態の断面図である。
【図5】従来の電子機器の蓋構造を示し部分斜視図である。
【図6】従来の電子機器における蓋が若干開いた状態の断面図である。
【図7】従来の電子機器装置における蓋部材を開いた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 機器本体
1a 縦溝部
2 メディア
3 蓋
3a 突出部
3b 軸部
3c 肉厚部
3d 曲線形の凹部
4 開口部
5 スライド溝
6 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に設けられた縦溝部にSDカード等のメディアが出し入れされ、前記機器本体の上部に蓋が配置される開口部が設けられると共に、奥側の両側にスライド溝が形成され、これらのスライド溝に前記蓋の両端部から突設された軸部が挿入されて、前記スライド溝を前記蓋の両側の軸部がスライドされることによって前記蓋が奥側に向けてスライドされて蓋が閉められ、前記蓋の端部の略中央に設けられたスプリング取付部にスプリングが巻回されていて、前記蓋が前方にスライドされたときに前記スプリングの付勢力で蓋が開けられるようにした電子機器の蓋構造において、前記スプリングが省かれ、前記蓋の裏面側の奥部に肉厚部が形成されると共に前記蓋の裏面に曲線形の凹部が形成されており、前記蓋が手前側にスライドされたときに前記メディアの飛び出しによってこのメディアの上端が前記蓋の肉厚部を押して前記蓋が開けられ、前記蓋が奥側にスライドされて閉められるときに前記メディアの上端が前記蓋の裏面の曲線形の凹部に滑らかに案内されるようにしたことを特徴とする電子機器の蓋構造。
【請求項2】
機器本体に設けられた縦溝部にSDカード等のメディアが出し入れされ、前記機器本体の上部に蓋が配置される開口部が設けられると共に、奥側の両側にスライド溝が形成され、これらのスライド溝に前記蓋の両端部から突設された軸部が挿入されて、前記スライド溝を前記蓋の両側の軸部がスライドされることによって前記蓋が奥側に向けてスライドされて蓋が閉められ、前記蓋の端部の略中央に設けられたスプリング取付部にスプリングが巻回されていて、前記蓋が前方にスライドされたときに前記スプリングの付勢力で蓋が開けられるようにした電子機器の蓋構造において、前記スプリングが省かれ、前記蓋の裏面側の奥部に肉厚部が形成されており、前記蓋が手前側にスライドされたときに前記メディアの飛び出しによってこのメディアの上端が前記蓋の肉厚部を押して前記蓋が開けられるようにしたことを特徴とする電子機器の蓋構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−90589(P2008−90589A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270637(P2006−270637)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】