説明

電子機器ユニット及び連結機構

【課題】電子機器同士の連結、分離が容易であり連結力が確保された電子機器ユニット、スライドレール同士の連結、分離が容易であり連結力が確保された連結機構を提供することを課題とする。
【解決手段】本実施例の電子機器ユニットは、第1スライドレール部を有した第1電子機器と、前記第1スライドレール部に係合可能な第2スライドレール部を有した第2電子機器と、を備え、前記第1スライドレール部は、鏡面加工された第1鏡面部を有し、前記第2スライドレール部は、前記第1及び第2スライドレール部が係合した時に前記第1鏡面部に当接すると共に鏡面加工された第2鏡面部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器ユニット及び連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電子機器をラックに搭載可能なラックシステムが知られている。ラックの2つの支柱間に2つの電子機器を搭載する場合、一般的に、一方の電子機器を一方の支柱に連結し、他方の電子機器を他方の支柱に連結し、電子機器同士は他の連結機構により連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−258322号公報
【特許文献2】特許第3165412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような場合、電子機器同士の連結を安定させるためには、連結力が大きいことが望ましい。しかしながら、連結力を確保するために連結機構の構造が複雑化した場合、互いに連結された電子機器の一方を容易に取外すことは困難であった。
【0005】
本発明は、電子機器同士の連結、分離が容易であり連結力が確保された電子機器ユニット、スライドレール同士の連結、分離が容易であり連結力が確保された連結機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示の電子機器ユニットは、第1スライドレール部を有した第1電子機器と、前記第1スライドレール部に係合可能な第2スライドレール部を有した第2電子機器と、を備え、前記第1スライドレール部は、鏡面加工された第1鏡面部を有し、前記第2スライドレール部は、前記第1及び第2スライドレール部が係合した時に前記第1鏡面部に当接すると共に鏡面加工された第2鏡面部を有している。
【0007】
本明細書に開示の連結機構は、第1スライドレールと、前記第1スライドレールと係合可能な第2スライドレールと、を備え、前記第1スライドレールは、鏡面加工された第1鏡面部を有し、前記第2スライドレールは、前記第1及び第2スライドレール部が係合した時に前記第1鏡面部に当接すると共に鏡面加工された第2鏡面部を有している。
【発明の効果】
【0008】
電子機器同士の連結、分離が容易であり連結力が確保された電子機器ユニット、スライドレール同士の連結、分離が容易であり連結力が確保された連結機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、電子機器ユニットの説明図である。
【図2】図2は、連結機構周辺の拡大図である。
【図3】図3A、3Bは、電子機器の斜視図である。
【図4】図4は、連結機構による電子機器同士の連結の説明図である。
【図5】図5は、スライド途中での連結機構周辺の拡大図である。
【図6】図6は、本実施例の連結機構とは異なる構造を有した連結機構の説明図である。
【図7】図7A、7Bは、本実施例の連結機構とは異なる構造を有した連結機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、電子機器ユニットの説明図である。電子機器ユニットは、電子機器10、20を含む。この電子機器ユニットは、ラックシステムに搭載されている。具体的には、ラックシステムの支柱70、80の間に、2つの電子機器10、20が搭載されている。支柱70には鉛直方向に延びた連結片72が形成されており、連結片72には鉛直方向に並んだ複数の孔74が形成されている。支柱80も支柱70と同様の構造である。
【0011】
電子機器10、20は、大きさが略同一である。電子機器10、20は、例えば、エンコーダや、ルータ、スイッチ等であるが、これらの種別は問わない。電子機器10の筐体11、電子機器20の筐体21には、例えば不図示のプリント基板や、このプリント基板に実装された電子部品が収納されている。電子部品としては、例えばCPU、ROM、RAM等である。筐体11、21の正面側には、複数のスイッチやポートが設けられている。電子機器10の筐体11の正面側の一方の側面には連結部材50が固定されている。連結部材50により電子機器10が支柱70に連結されている。同様に電子機器20の筐体21の正面側の一方の側面には、連結部材50と同じ構造の連結部材60が連結されている。連結部材60により電子機器20が支柱80に連結されている。連結部材50、60は、金属製であり略L字状である。
【0012】
電子機器10、20との間には連結機構Aが設けられている。連結機構Aは、スライドレール30、40を含む。スライドレール30、40は、それぞれ、電子機器10の筐体11、電子機器20の筐体21に固定されている。スライドレール30、40は係合している。スライドレール30、40は、金属製であり、例えば鉄、アルミ、ステンレスなどであるがこれに限定されない。スライドレール30、40はプラスチック製であってもよい。スライドレール30、40がプラスチック製の場合には、電子機器10、20からの熱による変形量が少ない耐熱性のプラスチック製であることが望ましい。電子機器10、20がそれほど加熱するものではない場合には、スライドレール30、40は一般的なプラスチックであってもよい。
【0013】
図2は、連結機構A周辺の拡大図である。図2に示すように、スライドレール30、40は互いに係合するように、スライドレール30の側面は凹状であり、スライドレール40の側面はスライドレール30の側面の凹状に対応するように凸状である。このような形状により、スライドレール30、40が分離しにくくなっている。
【0014】
図3Aは、電子機器10の斜視図であり、図3Bは、電子機器20の斜視図である。スライドレール30は、鏡面部32、突部34を有している。スライドレール40は、鏡面部42、溝部44を有している。鏡面部32、42は、平面状である。図2に示したように、スライドレール30、40が係合している時に鏡面部32、42は当接する。ここで、鏡面部32、42は、互いに鏡面加工がなされている。これにより、鏡面部32、42の表面の粗さは小さい。例えば、鏡面部32、42の面粗度は、約0.01〜約0.1μm程度である。鏡面部32、42の加工方法としては例えばハブ研磨後に電解研磨を行なうが、これに限定されない。
【0015】
鏡面部32、42と当接することにより、鏡面部32と鏡面部42との間が真空状態又は真空状態に近い状態となり、鏡面部32、42が密着する。これは、鏡面部32と鏡面部42との間が真空状態又は真空状態に近い状態となると、鏡面部32と鏡面部42との間の圧力が大気圧以下となり、スライドレール30、40の外部から大気圧が作用してスライドレール30とスライドレール40との連結が維持されるからである。これにより、スライドレール30とスライドレール40との連結力が向上する。
【0016】
また、突部34は、鏡面部32の上下に一対設けられている。同様に、溝部44は、鏡面部42の上下に一対設けられている。突部34、溝部44は、電子機器10、20の手前から奥側に延びている。突部34、溝部44は、スライドレール30、40のスライド方向を規定する機能を有している。突部34、溝部44は互いに係合することにより、鏡面部32、42が滑ってスライドレール30、40が不用意に分離することを防止している。
【0017】
尚、図3A、3Bに示すように、スライドレール30、40は、ネジS2により、それぞれ、筐体11、21に固定されている。従って、スライドレール30、40は、筐体11、21とは別部材である。このように、スライドレール30、40を、筐体11、21とは別部材にすることにより、鏡面部32、42の加工作業等が容易になる。尚、スライドレール30、40は、それぞれ、筐体11、21に一体的に設けられていてもよい。
【0018】
図4は、連結機構Aによる電子機器10、20の連結、分離の説明図である。尚、理解を容易にするために支柱80については一部省略してある。図5は、スライド途中での連結機構A周辺の拡大図である。まず、電子機器10、20の分離について説明する。図1に示すように連結機構Aにより電子機器10、20が連結されてラックに搭載された状態から、電子機器20のみをラックから取外す場合について説明する。最初に、連結部材60と支柱80と連結しているネジを取外す。次に、電子機器20を手前又は奥側に押すことにより、スライドレール30に対してスライドレール40がスライドする。ここで、スライドレール30、40のそれぞれの鏡面部32、42は、互いに鏡面加工がなされているため、両者間の摩擦抵抗は小さい。このため、スライドレール30、40は容易にスライドする。これにより、スライドレール30、40を容易に分離でき、電子機器20のみをラックから容易に取外すことができる。
【0019】
次に、電子機器10に電子機器20を連結する場合について説明する。最初に、電子機器10に固定された連結部材50を支柱70に固定する。その状態で、電子機器10に固定されたスライドレール30と、電子機器20に固定されたスライドレール40とが係合させる。次に、スライドレール30に対してスライドレール40がスライドするように、電子機器20をラックの奥側へと挿入して、電子機器20に固定された連結部材60を支柱80に連結する。鏡面部32、42は鏡面加工されているので、スライドレール30、40を容易にスライドさせることができ、電子機器10、20を容易に連結することができる。
【0020】
次に、本実施例の連結機構Aとは異なる構造を有した連結機構Xについて説明する。図6、7A、7Bは、本実施例の連結機構Aとは異なる構造を有した連結機構Xの説明図である。図6に示すように、連結機構Xも、連結機構Aと同様に、電子機器10、20を連結するものである。連結機構Xは、連結片30x、40xを含む。連結片30x、40xは、それぞれ、電子機器10の筐体11、電子機器20の筐体21に固定さている。連結片30x、40xは、それぞれ筐体11、21の側面に沿って延びている。連結片30x、40xは、上述した連結機構Aとは異なる方法により連結されている。
【0021】
図7A、7Bは、連結機構X周辺の拡大図であり、図7Aは、斜視図、図7Bは、正面図である。連結片30x、40xのそれぞれは、正面からみて略コ字状である。連結片30x、40xは、複数のネジS4により、それぞれ筐体11、21に固定されている。連結片30x、40xの互いに重なった部分を複数のネジS3により固定することにより、連結片30x、40xは連結されている。
【0022】
このように、連結片30x、40xは複数のネジS3により連結されている。このため、連結機構Xにより連結されている電子機器10、20の一方のみを取外すことは困難である。具体的には、連結片30x、40xを連結しているネジS3を工具を用いて分離させる必要がある。図6に示すように、電子機器10、20の間隔が小さいため、このような作業は困難である。また、電子機器10、20の上部又は下部に他の電子機器が既に搭載されている場合には、連結片30x、40xの分離は更に困難となる。このような場合には、連結片30x、40xが連結した状態で連結部材50、60をラックから取外して電子機器10、20をラックから取外し、その後に連結片30x、40xを分離させる必要がある。このように連結機構Xでは、電子機器10、20がラックに搭載された状態で一方の電子機器のみを取り外すことは困難である。
【0023】
しかしながら、スライドレール30、40は、ネジ等の他の部材を用いて連結したものではなく、大気圧の作用により連結している。このためスライドレール30、40は、スライドにより容易に分離できる。例えば、図1に示した状態から電子機器10のみを取外すのであれば、連結部材50と支柱70とを連結しているネジS1を取外して、電子機器10を手前に引く。これにより、スライドレール30がスライドレール40に対してスライドし、電子機器10のみをラックから容易に取外すことができる。
【0024】
また、例えば連結する電子機器の間隔が狭い場合には、スライドレール30、40を薄型化することにより、このような電子機器同士を連結できる。一方、連結片30x、40xは、ネジS3により連結されているため、ネジS3が貫通する孔の大きさよりも薄くすることはできない。このように、本実施例の連結機構Aは、連結機構Xと比較して薄型化も容易である。
【0025】
スライドレール30、40との連結が維持される条件について説明する。
応力σと、曲げモーメントMと、断面係数Zとの関係は、
σ=M/Z…(1)
で示される。
曲げモーメントMと、電子機器10、20の横方向の合計の長さLと、電子機器10、20の横方向での単位長さあたりの荷重wとの関係は、
M=wL/12…(2)
で示される。
電子機器10、20の横方向での単位長さあたりの荷重wと、電子機器10、20の合計の重量Wとの関係は、
w=W/L…(3)
で示される。
(2)の式に(3)を代入すると、
M=WL/12…(4)
で表される。
断面係数Zと、連結機構Aの高さhと、連結機構Aの奥行bと関係は、
Z=bh/6…(5)
で示される。
(1)の式に、(4)(5)の式を代入すると
σ=WL/(2bh)…(6)
で示される。
【0026】
ここで、例えば、連結機構Aの奥行b=29.9cmであり、連結機構Aの高さh=3.4cmであり、電子機器10、20の横方向の長さL=45cmであり、電子機器10、20の合計の重量W=4.6Kgの場合、応力σ≒0.3Kg/cmとなる。このため、連結機構Aには、鉛直下方向にσ≒0.3Kg/cmの応力が作用していることになる。
【0027】
ここで、上述したようにスライドレール30、40は大気圧により密着している。大気圧は1kg/cmである。このため、大気圧のほうが連結機構Aの鉛直下方向に作用する応力よりも大きいため、スライドレール30、40の連結が維持される。
【0028】
また、例えば地震などにより電子機器10、20に振動が加えられた場合、電子機器10、20に装用する重力加速度は、振動していない場合での2倍程度となる。このため、電子機器10、20に振動が加わった場合での連結機構Aの鉛直下方向に作用する応力はσ≒0.6Kg/cm程度となる。この状態においても、この応力よりも大気圧のほうが大きいため、スライドレール30、40の連結を維持できる。
【0029】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0030】
上記実施例では、鏡面部32、42は、平面であるが、これに限定されない。例えば、鏡面部32、42は、鏡面加工された曲面同士であってもよい。その場合、例えば鏡面部32が凸状であれば、鏡面部42は、鏡面部32の凸状に対して相補状となる凹状であればよい。
【符号の説明】
【0031】
A 連結機構
10、20 電子機器
30、40 スライドレール
32、42 鏡面部
34 突部
44 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スライドレール部を有した第1電子機器と、
前記第1スライドレール部に係合可能な第2スライドレール部を有した第2電子機器と、を備え、
前記第1スライドレール部は、鏡面加工された第1鏡面部を有し、
前記第2スライドレール部は、前記第1及び第2スライドレール部が係合した時に前記第1鏡面部に当接すると共に鏡面加工された第2鏡面部を有している、電子機器ユニット。
【請求項2】
前記第1及び第2電子機器は、第1及び第2柱部にそれぞれ固定されており、前記第1及び第2スライドレール部を介して互いに連結される、請求項1の電子機器ユニット。
【請求項3】
前記第1スライドレール部は、凹状であり、
前記第2スライドレール部は、凸状であり、
前記第1鏡面部は、前記凹部の底面であり、
前記第2鏡面部は、前記凸部の頂面である、請求項1又は2の電子機器ユニット。
【請求項4】
第1スライドレールと、
前記第1スライドレールと係合可能な第2スライドレールと、を備え、
前記第1スライドレールは、鏡面加工された第1鏡面部を有し、
前記第2スライドレールは、前記第1及び第2スライドレール部が係合した時に前記第1鏡面部に当接すると共に鏡面加工された第2鏡面部を有している、連結機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129401(P2012−129401A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280537(P2010−280537)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】