説明

電子機器保持具、電子機器保持構造、及び電子機器

【課題】グリップベルトとハンドストラップとの状態移行が容易で本体からの突出部位がなく係合解除が意図せず行われ難い電子機器保持具(7)を提供する。
【解決手段】電子機器(50)の本体部(1)に一方が着脱可能構造を有するよう設けられた2箇所の保持部(8)(9)の双方に装着されて電子機器(50)のグリップベルトとして機能し、一方のみに装着されて電子機器のハンドストラップとして機能し、ベルト(7b)とそれが挿通され着脱可能構造を有して設けられた保持部(9)に着脱可能に装着されるフック部(7c)とを備える。フック部は、ベルトが挿通される孔(7c1)を有する基部(7k)と開口部(7c3)を有し基部から突出形成されたブラケット部(7c2)と開口部に進退するよう移動可能とされたスライダ(7c5)とスライダを開口部の開口面積を最も小さくする方向に移動させるよう付勢する付勢部材(7c6)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器保持具、電子機器保持構造、及び電子機器に係り、特に、電子機器保持具が、電子機器を把持する際にはグリップベルトとして、また、電子機器を手で運ぶ際にはハンドストラップとして機能する電子機器保持具と、その電子機器保持具を用いた電子機器保持構造、及び電子機器保持具と電子機器保持構造とを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
機器を保持する際に、グリップベルト状態からハンドストラップ状態への移行、またはその逆への移行を容易に行うことができるグリップベルト兼ハンドストラップ装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
具体的には、装置が例えばビデオカメラであって、ビデオカメラの後方端部側にグリップベルト本体の一端側を固定し、ビデオカメラの前方端部側において、その端部に設けた突起部とグリップベルト本体の他端側に設けた挿通部との係合及びその解除で、グリップベルト本体を着脱自在としたものである。
これによれば、グリップベルト状態からハンドストラップ状態への移行を簡単に行い、グリップベルト状態では筐体を安全かつ安定して保持ができ、また簡単な構造で安価に製作することができるという効果が得られるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−230094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された装置では、突起部は装置本体から前方(被写体側)に突出して張り出しているので、装置をケースなどに収める際のおさまりが良好とは言えない。
また、突起部が突出しているために、装置が撮像装置の場合、接写において被写体側の物体の形状によっては、その物体に干渉して撮影に支障が生じる可能性がある。
【0006】
一方、係合の解除では、図8に示されるように、挿通部をF方向に回動(弾性変形)させた後O(オー)方向に抜く操作を必要とするものの、変形させる部材と抜く部材とが同じ部材(挿通部)であるので、外部からの衝撃や予期せぬ力の付与で係合が解除されてしまう可能性は否定できない。係合が意図せず解除されると装置を落下させてしまう虞があるので、係合は意図した場合にのみ解除されて安全性が一段と向上していることが望まれる。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、グリップベルト状態とハンドストラップ状態との状態移行が容易であって、装置本体から突出する部位がなく、係合の解除が意図せず行われ難いことにより、一段と安全な電子機器保持具、電子機器保持構造、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は手段として次の1)〜4)の構成を有する。
1) 電子機器(50)の本体部(1)に少なくとも一方が着脱可能構造を有するよう設けられた2箇所の保持部(8)(9)の双方に装着された状態で前記電子機器(50)のグリップベルトとして機能し、一方のみに装着された状態で前記電子機器(50)のハンドストラップとして機能する電子機器保持具(7)であって、
ベルト(7b)と、前記ベルト(7b)が挿通されると共に前記着脱可能構造を有して設けられた保持部(9)に着脱可能に装着されるフック部(7c)と、を備え、
前記フック部(7c)は、
前記ベルト(7b)が挿通される孔(7c1)を有する基部(7k)と、
開口部(7c3)を有し前記基部(7k)から突出するよう形成されたブラケット部(7c2)と、
前記開口部(7c3)内に進退するよう移動可能とされたスライダ(7c5)と、
前記スライダ(7c5)を、前記開口部(7c3)の開口面積を最も小さくする方向に移動させるよう付勢する付勢部材(7c6)と、を備えたことを特徴とする電子機器保持具(7)である。
2) 電子機器(50)にベルト(7b)を有する保持具(7)を装着して前記電子機器(50)を保持する電子機器保持構造であって、
前記電子機器(50)は第1の係合手段(9)を備え、
前記保持具(7)は前記第1の係合手段(9)に係合する第2の係合手段(7c)を備え、
前記第1の係合手段(9)は、前記第2の係合手段(7c)との係合を維持する位置と開放する位置との間で移動可能なロック手段(10)と、前記ロック手段(10)を前記維持する位置に向け付勢する第1の付勢手段(11)を有し、
前記第2の係合手段(7c)は、前記第1の係合手段(9)との係合を維持する位置と開放する位置との間で移動可能なスライダ(7c5)と、前記スライダ(7c5)を前記維持する位置に付勢する第2の付勢手段(7c6)と、を有し、
前記第1及び第2の係合手段(9)(7c)は、
互いに係合している状態で前記第1及び第2の付勢手段(11)(7c6)の付勢力により係合を維持する方向に付勢されると共に、前記第1の付勢手段(11)に抗して前記ロック手段(10)が前記開放する位置に移動されると共に前記第2の付勢手段(7c6)に抗して前記スライダ(7c5)が前記開放する位置に移動されて係合が開放されるよう構成されていることを特徴とする電子機器の保持構造である。
3) 電子機器(50)の本体部(11)に少なくとも一方が着脱可能構造を有するよう設けられた2箇所の保持部(8)(9)の内の前記着脱可能構造を有する保持部(9)に、前記2箇所の保持部(8)(9)に掛け渡されて装着された状態で前記電子機器(50)のグリップベルトとして機能し、一方のみの保持部(8)に装着された状態でハンドストラップとして機能する電子機器保持具(7)、を着脱可能に装着して前記電子機器(50)を保持する電子機器保持構造であって、
前記着脱可能構造を有する保持部(9)は、
前記本体部(1)の外面に開口し内方に向かって凹状に形成された挿入部(9a)と、
前記挿入部(9a)内に進退するロック片(10b)と、
前記ロック片(10b)を前記挿入部(9a)内に進入させる方向に付勢する第1の付勢部材(11)と、を備え、
前記電子機器保持具(7)は、
ベルト(7b)と、前記ベルト(7b)が挿通されると共に前記着脱可能構造を有する保持部(9)に着脱可能に装着されるフック部(7c)と、を備え、
前記フック部(7c)は、
前記ベルト(7b)が挿通される孔(7c1)を有する基部(7k)と、
開口部(7c3)を有し前記基部(7k)から突出するよう形成されて前記挿入部(9a)に挿入可能なブラケット部(7c2)と、
前記開口部(7c3)内に進退するよう前記開口部(7c3)の開口面と平行な方向に移動可能とされたスライダ(7c5)と、
前記スライダ(7c5)を、前記開口部(7c3)の開口面積を最も小さくする方向に移動させるよう付勢する第2の付勢部材(7c6)と、を備え、
前記ブラケット部(7c2)を前記挿入部(9a)に挿入した状態で、前記第1の付勢部材(11)の付勢力により前記ロック片(10)が前記ブラケット部(7c2)の前記開口部(7c3)内に進入して前記ブラケット部(7c2)の前記挿入部(9a)からの抜去を禁止し、
前記スライダ(7c5)を前記第2の付勢手段(7c6)の付勢力に抗して移動させて前記ブラケット部(7c2)の前記開口面積を広げると共に、前記ロック片(10)を前記第1の付勢手段(11)の付勢力に抗して移動させて前記ブラケット部(7c2)の前記開口部(7c3)から抜くことで前記ブラケット部(7c2)の前記挿入部(9a)からの抜去が許容されるよう構成されていることを特徴とする電子機器の保持構造である。
4) 前記本体部(1)は、前記2箇所の保持部(8)(9)の間に位置し前記ロック片(10)の一部を外部に露出させる開口部(9b)を有することを特徴とする3)に記載の電子機器の保持構造である。
5) 2)〜3)のいずれかに記載の電子機器の保持構造と撮像素子(4)とを備えた電子機器(51)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置本体から突出する部位がなく、係合の解除が意図せず行われ難いことにより一段と安全である、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電子機器の実施例に適用されるビデオカメラを説明するための三面図である。
【図2】本発明の電子機器保持具の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明の電子機器の実施例の要部を説明するための部分平面図である。
【図4】本発明の電子機器の実施例に用いられる要部部品を説明するための三面図である。
【図5】本発明の電子機器保持具の実施例に用いられる要部部品を示す三面図である。
【図6】本発明の電子機器の実施例を示す三面図である。
【図7】本発明の電子機器の実施例における要部を説明するための部分断面図である。
【図8】本発明の電子機器の保持構造の実施例を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の電子機器の保持構造の実施例を説明するための他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図9を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の電子機器保持具が取り付けられる電子機器の三面図である。
【0013】
以下、電子機器の例としてビデオカメラ50を説明する。
ビデオカメラ50は、本体部1と、本体部に対して開閉可能なモニターパネル部2と、本体部1の前面側に内蔵されたレンズ部3とレンズ部3の結像を電気信号に変換する撮像素子4と、を備えている。
図1では、モニターパネル部2は本体部1側に閉じた状態を示し、レンズ部3の最前側のレンズがレンズバリア5で覆われた状態を示している。
【0014】
本体部1の前面部の下方には、内蔵された図示しない一対のマイクそれぞれに対応して外部の音を収音するための開口部である一対の収音孔6a,6bが設けられている。
本体部1の後面の右下方側には、このビデオカメラを保持するための保持具7(図2参照)の一端側を着脱不可に支持する保持具支持部8が設けられている。
一方、本体部1の右側面1hsの前下方側には、保持具7の他端側を着脱自在に保持する保持具装着部9が設けられている。
【0015】
図2は、保持具7の斜視図である。
【0016】
保持具7は、一端側が輪状部7aとされ他端側にパッド部7pが取り付けられたベルト7bと、ベルト孔7c1を有しそのベルト孔7c1にベルト7bが挿通され輪状部7aとパッド部7pとの間に位置するフック部7cと、を有して構成されている。
フック部7cは、基部7kと、基部7kから突出しているブラケット部7c2と、を有して構成されている。ブラケット部7c2は外部に露出した部分が角形のロ字状とされ、開口部7c3が形成されている。
輪状部7aは、ビデオカメラ50の保持具固定部8に挿通されるなどして着脱不可の状態で支持される(図6参照)。
【0017】
図2において、ベルト7bは、輪状部7aとフック部7cとの間の内面に、一対をなす面ファスナの一方の面ファスナ7d1が取り付けられている。
また、パッド部7pに対応する位置の内面には他方の面ファスナ7d2が取り付けられている。
これにより、この面ファスナ7d1,7d2を着脱することで、ベルト7bのパッド部7pが取り付けられている他端側が、図2の矢印DR1方向に着脱可能になっている。
【0018】
一対の面ファスナ7d1,7d2を添着する位置は、図2のDR2方向に自由に調整できる。
これにより、輪状部7aとフック部7c間のベルト7bの長さを調節でき、この保持具7を、輪状部7aとフック部7cとの双方をビデオカメラ50に装着してビデオカメラ50のグリップベルトとして使用する際の手の締め付け具合を調節することができる。
また、ベルト7bは、フック部7cを保持具装着部9から離脱させると、保持具支持部8のみでビデオカメラ50に支持される。この状態では、面ファスナの添着で形成された輪の中に腕を通してハンドストラップとして使用することができるようになっている。
そして面ファスナの添着位置を図2のDR2方向に変えることでハンドストラップとして使用する際に腕を通す輪の大きさを調節することができる。
【0019】
図3(a),(b)は、図1の右側面図における保持具装着部9近傍の拡大図である。
【0020】
図3(a),(b)において、保持具装着部9は、本体部1の前面側において図の上下方向の縦長に開口した挿入口9aと、挿入口9aに対して後方側において前後方向にやや横長に開口したノブ用孔9bと、を有している。
挿入口9aには、保持具7のブラケット部7c2が挿入可能になっている。
挿入口9aの前方側内面には、挿入口9a内に向け突出するリブ9a1が形成されている。
また、挿入口9aの前方側の縁部の土手は、後述するスライダ7c5が当接する当接部9cとされている。
【0021】
ブラケット部7c2には、挿入口9aへの挿入において、1つの向き(姿勢)でのみリブ9a1を許容する凹部7c4〔図5(a)参照〕が設けられているので、挿入口9aに対し挿入可能なブラケット部7c2の向きはただ1つ決まる。
すなわち、図2に示すように、フック部7cは、ベルト孔7c1が前方になる向き(姿勢)で挿入口9aに挿入可能になっている。
【0022】
本体部1における保持具装着部9の内部側には。図3(a),(b)における前後方向に移動可能なロックノブ10が配置されている。
【0023】
図4は、このロックノブ10の三面図である。
【0024】
図4に示されるように、ロックノブ10は、ノブ用孔9bから露出するノブ部10aと、移動に伴い挿入口9a内に進退するロック片部10bとを有して形成されている。
ロック片部10bの先端部は、その一面に傾斜部10b1が形成され、他面に突出片10b2が形成されている。
ノブ部10aには、指が良好に掛かるように平目のローレット10a1が形成されている。
【0025】
ロックノブ10の腕部10uには付勢手段であるコイルばね11が嵌められる。このコイルばね11は、その一端側が本体部1に位置規制され、使用状態においてロックノブ10は前方側に付勢されるようになっている。
付勢手段の種類は限定されない。板ばね、コイルばね、等種々適用することができる。
図3(a)は、ロックノブ10がコイルばね11の付勢力に従って前方側に移動した状態を示す。この状態でロックノブ10の前方への移動に規制がかかっている。
また、挿入口9aには、ロック片部10bが進入している。
図3(b)は、コイルばね11の付勢力に抗して後方側に移動させた状態を示している。この位置でロックノブ10の後方への移動に規制がかっている。
挿入口9aから、ロック片部10bは退出している。
【0026】
ロックノブ10をコイルばね11の付勢力に抗して後方側に移動させ得るように、ロックノブ10には、上述のようにノブ用孔9aから露出するノブ部10aが形成されている。
そして、ノブ部10aを指などで図10(a)から図10(b)の状態に移動させることが可能になっている。指による抗力を除去すれば、付勢手段の付勢力により、ノブ部10aは前方側に移動する。
【0027】
図5(a)〜(c)は、フック部7cの三面図である。
【0028】
図5(a)が天面図、図5(b)が正面図、図5(c)が右側面図であり、図5(a)は、図2の矢視YS1図に相当する。
【0029】
図5(a)において、ブラケット部7c2には、そのブラケット部7c2に係合して図の上下方向(矢印DR2の方向)に移動可能なスライダ7c5が備えられている。
スライダ7c5は、開口部7c3の一部を塞ぐ形状に形成されていて、この移動により開口部7c5の開口面積を変えるようになっている。
そして、スライダ7c5は、付勢手段であるコイルばね7c6により、図5(a)の上方に常に付勢されるようになっている。
【0030】
この構成において、スライダ7c5は、コイルばね7c6により図5(a)の上方に付勢されている自然状態で開口部7c3を最も広く塞ぎ、その開口部7c3の開口面積を最小にする。
また、スライダ7c5が付勢力に抗して図5(a)の下方に移動させられた状態で、開口部7c3内から一部または全部が退避して開口部7c3の開口面積が最大になる。
【0031】
図6は、実施例の電子機器を示す図であり、具体的には、実施例の保持具7をビデオカメラ50の本体部1に取り付けた状態の電子機器51を示す三面図である。この図6は、図1に対応して右側面図,正面図,及び底面図が示されている。
この電子機器51は、上述のビデオカメラ50に保持具7を取り付けたものである。
【0032】
図6において、ビデオカメラ50の本体部1の後方側に設けられた保持具固定部8に、保持具7の輪状部が取り付けられており、前方側に設けられた保持具装着部9に、フック部7cが装着されている。この状態がグリップベルト状態である。
また、保持具装着部9からフック部7cを外し、保持具7を保持具工程部8のみで支持されるようにすれば、ハンドストラップ状態になる。
【0033】
次に、フック部7cと保持具装着部9との着脱について説明する。
【0034】
まず、フック部7cの保持具装着部9への装着について図3、図5、図7などを用いて詳述する。図7は、フック部7cが保持具装着部9に装着された状態を示す断面図である。
【0035】
フック部7cを保持具装着部9に装着するには、まず、図3(b)に示すように、ロックノブ10aを指などでコイルばね11の付勢力に抗して後方側に移動させる。
この状態で、挿入口9a内からロック片部10bは退避しているので、挿入口9aにフック部7cのブラケット部7c2を挿入することができる。
【0036】
挿入可能な向きは、上述のように、ブラケット部7c2の凹部7c4と、挿入口9aのリブ9a1とが嵌合する向きである。
【0037】
挿入口9aへブラケット部7c2を挿入したら、ロックノブ10aから指などを離す。
すると、ロック片部10bは、コイルばね11の付勢力によりブラケット部7c2の開口部7c3を貫通する方向に移動し、その傾斜部10b1が開口部7c3を一部塞いでいるスライダ7c5に当接する。
【0038】
ロック片部10bの移動する力は、スライダ7c5をコイルばね7c6の付勢力に抗するように設定されているので、スライダ7c5を図5(a)の下方向へ押し下げる。
スライダ7c5を押し下げることで開口部7c3は、ロック片部10bが貫通するに足る開口形状に拡張するので、ロック片部10bは突出片10b2を含めて開口部7c3を通過する。
【0039】
突出片10b2が通過すると、スライダ7c5は、コイルばね7c6の付勢力により、天面7c5aが保持具装着部9の当接部9c〔図3(a)参照〕に当接してそれを内側へ付勢する。
これにより、フック部7cは、本体部1から離れる方向に付勢されるので、開口部7c3の縁部7c7(図5参照)と突出片10b2とがしっかりと引っ掛かって、フック部7cとロック片部10bとが確実に係合する。
【0040】
この係合に対しては、ロック片部10bはコイルばね11により本体部1の前方に向け付勢され、かつ、スライダ7c5はコイルばね7c6によって突出片10b2が縁部7c7に強く係止される方向に付勢される、という異なる方向の2つの力が寄与しているので、より確実に係合状態が維持される。
【0041】
図8は、フック部7cが保持具装着部9に係合装着されている状態を示す斜視図である。分かりやすくするために保持具7を除外して示している。
【0042】
次に、フック部7cの保持具装着部9からの離脱について詳述する。
【0043】
フック部7cを保持具装着部9から離脱させるには、まず、フック部7cの基部7kを本体部1側に指などで押し込む。
この押し込みにより、図5(a),(c)に示されるスライダ7c5の天面7c5aが、図3(c)に示される当接面10b3に当接する。
基部7kをさらに押し込むと、コイルばね7c6の付勢力に抗して基部7kは押し込まれる。
【0044】
図9は、フック部7cを矢印DR8の方向に押し込んだ状態を示している。分かりやすくするために保持具7を除外して示している
【0045】
スライダ7c5の天面7c5aが本体部1の当接面10b3に当接して相対的に基部7k側に移動していることがわかる。
【0046】
フック部7cが押し込まれることで、相対的にスライダ7c5は開口部7c3から退避し、開口部7c3の開口面積が拡張しロック片部10bが通過可能となる。
この状態では、ロック片部10bは、コイルばね11により開口部7c3へ挿入される方向に付勢されているので、フック部7cが保持具装着部9から外れることはない。
【0047】
次に、ロックノブ10のノブ部10aを、指などでコイルばね11の付勢力に抗する方向である本体部1の後方側に移動させると、ロック片部10bが開口部7c3から抜けるので、ノブ部10aに抗力を与えながらその後方側に移動した状態を維持させつつフック部7cを挿入口9aから抜き取る。
【0048】
以上の手順を経ることで、フック部7cは保持具装着部9から離脱できる。
【0049】
すなわち、実施例において、フック部7cを保持具装着部9から離脱するためには、2つの異なる部材に対し異なる方向の力をそれぞれ加えること、一方の部材に対して力を加えつつ他方の部材に力を加えること、が必要になる。
従って、フック部7cと保持具装着部9との係合は、意図して離脱操作を行わない限り解除されないので、実施例は、保持具による装置の保持をより安全に行うことができる。
【0050】
また、ノブ用孔9bは、本体部1の二箇所の保持部8,9の間に位置するよう設けられている。これにより、ロックノブ10は、フック部7cを保持具装着部9に装着した状態で、外方から見てベルト7bに隠れる位置にある。
従って、ロックノブ10はベルト7bに防がれてロックノブ10に意図せず触ってしまう可能性は極めて低くなっており、離脱操作が意図せずに行われることをさらに効果的に防止している。
【0051】
また、実施例では、図8で示されるように、この離脱作業の手順を使用者に分かりやすく知らせるため、実施例では、最初に行う基部7cの押し込み手順に対応して、基部7kに番号「1」(M1で示す)を表示し、次に行うロック片10bの抜去方向の移動手順に対応して、ノブ用孔9bの近傍に移動方向を示す三角マークと番号「2」(M2)とを表示している。
【0052】
上述したように、実施例によれば、保持具7を着脱可能に装着する保持具装着部9を本体部1において突出させずに設けることができるので、本体部1の表面形状をほぼフラットな状態にすることができる。
これにより、本体部1を有する装置をケースなどに収まりよく良好に収納することができ、また、装置が撮像装置の場合、接写において被写体側の物体に干渉する可能性が極めて少ないので、良好な撮影をすることができる。
【0053】
保持具装着部9からの保持具7の離脱においては、力を付与する部材が独立した別部材(フック部7cとロックノブ10)であるので、意図せず離脱が行われる可能性が大変少なくなっている。
【0054】
離脱のために付与が必要な二つの力の方向も、最初の手順では、基部7kを本体部1へ押し込む方向であり、次の手順では、ロックノブ10を本体部1の前方に移動させる方向であるので、二つの力の方向は異なり、両者は90°ずれている。
【0055】
また、いずれの力も、付勢手段7c6,11により通常付勢されている方向とは反対の方向に、その付勢力に抗して付与する必要があるので、離脱が容易には行われないようになっている。
【0056】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1 本体部
2 モニターパネル部
3 レンズ部
4 撮像素子
5 レンズバリア
6a,6b 収音孔
7 保持具
7a 輪状部
7b ベルト
7c フック部
7c1 ベルト孔
7c2 ブラケット部
7c3 開口部
7c4 凹部
7c5 スライダ
7c5a 天面
7c6 コイルばね(付勢手段)
7c7 縁部
7d1,7d2 面ファスナ
7k 基部
7p パッド部
8 保持具固定部
9 保持具装着部
9a 挿入口
9a1 リブ
9b ノブ用孔
9c 当接部
10 ロックノブ
10a ノブ部
10a1 ローレット
10b ロック片部
10b1 傾斜部
10b2 突出片
10b3 当接面
11 コイルばね(付勢手段)
50 ビデオカメラ
51 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の本体部に少なくとも一方が着脱可能構造を有するよう設けられた2箇所の保持部の双方に装着された状態で前記電子機器のグリップベルトとして機能し、一方のみに装着された状態で前記電子機器のハンドストラップとして機能する電子機器保持具であって、
ベルトと、前記ベルトが挿通されると共に前記着脱可能構造を有して設けられた保持部に着脱可能に装着されるフック部と、を備え、
前記フック部は、
前記ベルトが挿通される孔を有する基部と、
開口部を有し前記基部から突出するよう形成されたブラケット部と、
前記開口部内に進退するよう移動可能とされたスライダと、
前記スライダを、前記開口部の開口面積を最も小さくする方向に移動させるよう付勢する付勢部材と、を備えたことを特徴とする電子機器保持具。
【請求項2】
電子機器にベルトを有する保持具を装着して前記電子機器を保持する電子機器保持構造であって、
前記電子機器は第1の係合手段を備え、
前記保持具は前記第1の係合手段に係合する第2の係合手段を備え、
前記第1の係合手段は、前記第2の係合手段との係合を維持する位置と開放する位置との間で移動可能なロック手段と、前記ロック手段を前記維持する位置に向け付勢する第1の付勢手段を有し、
前記第2の係合手段は、前記第1の係合手段との係合を維持する位置と開放
する位置との間で移動可能なスライダと、前記スライダを前記維持する位置に付勢する第2の付勢手段と、を有し、
前記第1及び第2の係合手段は、
互いに係合している状態で前記第1及び第2の付勢手段の付勢力により係合を維持する方向に付勢されると共に、前記第1の付勢手段に抗して前記ロック手段が前記開放する位置に移動されると共に前記第2の付勢手段に抗して前記スライダが前記開放する位置に移動されて係合が開放されるよう構成されていることを特徴とする電子機器の保持構造。
【請求項3】
電子機器の本体部に少なくとも一方が着脱可能構造を有するよう設けられた2箇所の保持部の内の前記着脱可能構造を有する保持部に、前記2箇所の保持部に掛け渡されて装着された状態で前記電子機器のグリップベルトとして機能し、一方のみの保持部に装着された状態でハンドストラップとして機能する電子機器保持具、を着脱可能に装着して前記電子機器を保持する電子機器保持構造であって、
前記着脱可能構造を有する保持部は、
前記本体部の外面に開口し内方に向かって凹状に形成された挿入部と、
前記挿入部内に進退するロック片と、
前記ロック片を前記挿入部内に進入させる方向に付勢する第1の付勢部材と、を備え、
前記電子機器保持具は、
ベルトと、前記ベルトが挿通されると共に前記着脱可能構造を有する保持部に着脱可能に装着されるフック部と、を備え、
前記フック部は、
前記ベルトが挿通される孔を有する基部と、
開口部を有し前記基部から突出するよう形成されて前記挿入部に挿入可能なブラケット部と、
前記開口部内に進退するよう前記開口部の開口面と平行な方向に移動可能とされたスライダと、
前記スライダを、前記開口部の開口面積を最も小さくする方向に移動させるよう付勢する第2の付勢部材と、を備え、
前記ブラケット部を前記挿入部に挿入した状態で、前記第1の付勢部材の付勢力により前記ロック片が前記ブラケット部の前記開口部内に進入して前記ブラケット部の前記挿入部からの抜去を禁止し、
前記スライダを前記第2の付勢手段の付勢力に抗して移動させて前記ブラケット部の前記開口面積を広げると共に、前記ロック片を前記第1の付勢手段の付勢力に抗して移動させて前記ブラケット部の前記開口部から抜くことで前記ブラケット部の前記挿入部からの抜去が許容されるよう構成されていることを特徴とする電子機器の保持構造。
【請求項4】
前記本体部は、前記2箇所の保持部の間に位置し前記ロック片の一部を外部に露出させる開口部を有することを特徴とする請求項3記載の電子機器の保持構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の電子機器の保持構造と撮像素子とを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−107330(P2011−107330A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261067(P2009−261067)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】