説明

電子装置及びその製造方法

【課題】 信頼性の高い電子装置を提供すること。
【解決手段】 配線基板2と、配線基板2の一方主面2Aにおいて、互いに対向する一対の辺に沿って設けられた一対の脚部3と、配線基板2の一方主面2Aであって一対の脚部3の間に実装された電子部品4とを有する電子装置1であって,一対の脚部3の内壁は、電子部品2から広がるように傾斜している電子装置1である。配線基板2の一方主面2Aと一対の脚部3の内壁とで形成される角部が鈍角となるので、この部分に繰り返し応力が集中するのを緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子装置は、配線基板の一方主面に、一対の脚部が設けられていた。この一対の脚部は、配線基板の一方主面の互いに対向する一対の辺に沿って設けられていた。この一対の脚部の間に、電子部品が実装されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-260598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子装置は、一対の脚部を、他の回路基板に接合させることによって実装される。実装された電子装置は、温度変化の大きい環境化で使用されることがある。この場合、他の回路基板と一対の脚部との間で、熱膨張の差が生じる。よって、一対の脚部は、互いに引き離される方向に、繰り返し応力が加えられる。ここで、配線基板の一方主面と一対の脚部の内壁とで形成される角部が略直角なので、この部分に繰り返し応力が集中しやすくなる。その結果、一対の脚部が、配線基板から剥離しやすいという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子装置は、配線基板と、該配線基板の一方主面において、互いに対向する一対の辺に沿って設けられた一対の脚部と、前記配線基板の一方主面であって前記一対の脚部の間に実装された電子部品とを有する電子装置であって,前記一対の脚部の内壁は、前記電子部品から広がるように傾斜していることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の電子装置の製造方法は、母基板を準備する工程と、前記母基板の一方側主面における、一方の辺から該一方の辺に対向する他方の辺にかけて、先端にいくほど幅が狭くなっている切削工具によって溝状に切削加工を施し、前記溝を介して対向する一対の脚部と、これが一方主面に設けられた配線基板とを形成する工程と、前記配線基板の一方主面における前記一対の脚部の間に電子部品を実装する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子装置によれば、配線基板と、配線基板の一方主面において、互いに対向する一対の辺に沿って設けられた一対の脚部と、配線基板の一方主面であって一対の脚部の間に実装された電子部品とを有する電子装置であって,一対の脚部の内壁は、電子部品から広がるように傾斜していることから、配線基板の一方主面と一対の脚部の内壁とで形成される角部が鈍角となるので、この部分に繰り返し応力が集中するのを緩和することができる。その結果、一対の脚部が、配線基板から剥離しにくい電子装置を提供することができる。
【0008】
本発明の電子装置の製造方法によれば、母基板を準備する工程と、母基板の一方側主面における、一方の辺からこの一方の辺に対向する他方の辺にかけて、先端にいくほど幅が狭くなっている切削工具によって溝状に切削加工を施し、溝を介して対向する一対の脚部と、これが一方主面に設けられた配線基板とを形成する工程と、配線基板の一方主面にお
ける一対の脚部の間に電子部品を実装する工程とを含むことから、一対の脚部の間であって電子部品を実装するための空間を、切削加工によって簡易に形成することができる。よって、電子装置の製作効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の電子装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の電子装置の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明の電子装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の電子装置の製造方法の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の電子装置の実施の形態の一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示す電子装置1は、基本的な構成として、配線基板2と、一対の脚部3と、電子部品4とを有する。
【0011】
図1に示す例においては、配線基板2は、基板本体21と、パッド電極22と、貫通導体23と、配線(図示せず。)とを有している。
【0012】
基板本体21は、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、ガラスセラミックス焼結体等のセラミック材料が用いられる。また、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂材料を用いてもよい。また、セラミックスまたはガラス等の無機材料をエポキシ樹脂等の有機樹脂材料に混合させて成る複合材等を用いてもよい。
【0013】
図1に示す例において、配線基板2は、複数の基板本体21で構成されている。また、配線基板2は、単数の基板本体21で構成されていてもよい。配線基板2の寸法は、縦が2〜6mm程度であり、横が2〜6mm程度であり、厚みが0.5〜2mm程度である。
【0014】
図1に示す例において、基板本体21の一方主面2Aとは反対側の主面(以下、他方主面とする。)2Bに、パッド電極22が設けられている。また、パッド電極22は、基板本体21の一方主面2Aであって、後述する一対の脚部3の間にも設けられている。また、パッド電極22は、一対の脚部3上にも設けられている。この部分のパッド電極22が、他の回路基板に電子装置1を実装する際の、電気的接続部となる。
【0015】
また、基板本体21の内部には、基板本体21の一方主面2Aのパッド電極22と、基板本体21の他方主面2Bのパッド電極22とを接続する貫通導体23が設けられている。また、基板本体21の一方主面2Aのパッド電極22と、一対の脚部3上のパッド電極22とを接続する貫通導体23も設けられている。
【0016】
配線基板2の内部、他方主面2B等には、配線(図示せず。)が設けられている。これらの配線によって、配線基板2の他方主面2Bに実装される各種の電子部品5が電気的に接続されることとなる。この電子部品5としては、コンデンサ、抵抗、ダイオード、コイル、IC又はトランジスタ等が例示できる。
【0017】
これらのパッド電極22、貫通導体23及び配線(図示せず。)は、例えば、W、Cu、Ag、Au等の金属材料で形成されている。また、パッド電極22がW、Cu、Agで形成されている場合には、パッド電極22の表面に、Niメッキ、及びその上からAuメッキを施
すことが好ましい。
【0018】
図1に示す例において、電子部品4は、配線基板2の一方主面2Aであって、後述する一対の脚部3の間に実装されている。この電子部品4は、電極パッド22と電気的に接続されている。この電子部品4としては、コンデンサ、抵抗、ダイオード、コイル、IC又はトランジスタ等が例示できる。また、電子部品4としては、SAW素子、セラミック振動子、水晶振動子等であってもよい。
【0019】
一対の脚部3は、配線基板2の一方主面2Aにおいて、互いに対向する一対の辺に沿って設けられている。この一対の脚部3の内壁は、電子部品4から広がるように傾斜している。このような構成によって、配線基板2の一方主面2Aと一対の脚部3の内壁とで形成される角部が鈍角となるので、この部分に繰り返し応力が集中するのを緩和することができる。その結果、一対の脚部3が、配線基板2から剥離しにくい電子装置1を提供することができる。
【0020】
この一対の脚部3は、厚みが0.3〜1mm程度である。また、一方主面2Aの一対の辺
に沿った方向を縦とし、これに直交する方向を横とすると、縦の寸法が2〜6mm程度である。また、一方主面2A側の面における、横の寸法が1〜3mm程度である。また、他の回路基板に接続する側の面における、横の寸法が0.9〜2.9mm程度である。配線基板2の一方主面2Aと一対の脚部3の内壁とで形成される角部は、100°〜150°程度である。
【0021】
この一対の脚部3は、前述した基板本体21と同様の材料を用いることができる。特に、基板本体21と同一の材料を選択することが、両者間での接合力等の点で好ましい。
【0022】
以下に、図6、図7を用いて電子装置1の製造方法を示す。また、以下に示す説明では、1つの母基板9から1つの電子装置1を製造する方法を示しているが、1つの母基板9から多数個の電子装置1を製造してもよい。
【0023】
まず、図6(a)、図7(a)に示す例のように、母基板9を準備する。ここで、母基板9にパッド電極22及び配線(図示せず。)を形成する方法としては、メタライズ層、めっき層、蒸着等の金属を薄膜層として被着させる手段を用いることができる。例えば、W及びAgのペーストを、母基板9の各基板となるグリーンシートにメタライズ層として印刷する。そして、このペーストをグリーンシートとともに焼成することにより、前述したパッド電極22等を形成できる。また、所定の形状を有する金属箔をグリーンシートに転写して同時焼成を行う方法も採用できる。
【0024】
次に、図6(b)、図7(b)に示す例のように、母基板9の一方側主面における、一方の辺から、この一方の辺に対向する他方の辺にかけて、先端にいくほど幅が狭くなっている切削工具によって溝状に切削加工を施し、この溝を介して対向する一対の脚部3と、これが一方主面2Aに設けられた配線基板2とを形成する。図6(b)、図7(b)に示す例においては、切削工具としてダイシングブレードvを用いている。切削工具は、ダイシングブレード以外にも、エンドミル等が用いられる。ここで用いられる切削工具は、図に示すように、先端にいくほど幅が狭くなっている。このような工具により、図6(c)、図7(c)に示す例のように、一対の脚部3は、後で実装される電子部品4から広がるように傾斜する構成となる。また、この切削によって、母基板9は、脚部3と配線基板2とから成る構造体となる。
【0025】
なお、この切削加工は、電子部品4を実装する電極パッド22が露出するまで行うようにする。また、貫通導体23の途中の部分が露出するまで切削加工を施しておき、その後に、露出した貫通導体23に、電極パッド22を設けてもよい。
【0026】
また、この母基板9を多数個取り基板として、複数個の電子装置1を製造するようにしてもよい。この場合には、切削工具によって、1つの母基板9に対して所定の間隔をもって複数の溝を形成するように加工すればよい。このような加工によって、脚部3を有する配線基板2を、複数効率よく作製することができる。
【0027】
次に、図6(d)に示す例のように、配線基板2の一方主面2Aにおける一対の脚部3の間に電子部品4を実装する。電子部品4と電極パッド22との接続は、バンプを介して接続されている。また、バンプによる接続以外に、ボンディングワイヤによって両者を電気的に接続してもよい。また、図6(d)に示す例のように、配線基板2の他方主面2Bにも、一方主面2Aと同様に各種電子部品5を実装する。
【0028】
また、母基板9を多数個取り基板とした場合、母基板9を分割して複数の配線基板2とした後で電子部品4、5を実装してもよいし、分割前の母基板9に電子部品4、5を実装した後で、母基板9を分割してもよい。
【0029】
以上のような工程によって、電子装置1を得ることができる。このような製造方法によれば、一対の脚部3の間であって電子部品4を実装するための空間を、切削加工によって簡易に形成することができる。よって、電子装置1の製作効率を向上させることができる。
【0030】
また、例えば、一対の脚部3に相当する部分を、グリーンシートの積層等によって形成する必要がなくなるので、積層ずれ等によって、一対の脚部3の内壁に凹凸ができることを抑制することができる。これによって、一対の脚部3間が所定の間隔を有するように、精度良く電子装置1を作製することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良等が可能である。
【0032】
例えば、図2に示す例のように、一対の脚部3上に、電子部品4を覆うように蓋体6を設けることが好ましい。電子装置1の外部の回路基板への実装は、一対の脚部3上の電極パッド22を、半田等の接合材を介して回路基板上に接続させることによって行われる。この場合、前述した蓋体6を設けることによって、半田等の接合材が、一対の脚部3の内壁を伝って電子部品4に付着することを抑制することができる。
【0033】
この蓋体6の材料としては、金属材料又は、樹脂材料等が用いられる。金属材料としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、金、銀、アルミニウム、錫、ステンレス、鉛、及びこれらの合金等が挙げられる。また、樹脂材料としては、例えば、ポリミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フエノール系樹脂等が挙げられる。蓋体6の厚みは、50〜300μm程度である。
【0034】
また、例えば、図3に示す例のように、一対の脚部3の内壁は、一方主面2Aに漸近していることが好ましい。この場合には、一対の脚部3の内壁と一方主面2Aとで形成される角部が存在しないこととなる。よって、電子装置1が実装された回路基板と一対の脚部3との間の熱膨張の差によって生じる繰り返し応力の集中が更に緩和される。
【0035】
また、例えば、図4に示す例のように、一方主面2Aに、電子部品4を封止するようにケース7が設けられていることが好ましい。この場合には、電子部品4を気密封止することが可能となる。よって、電子部品4として水晶振動子等を用いた場合であっても、電子部品4の正確な作動を保証することができる。このケース7の材料としては、前述した蓋
体6と同様の材料が用いられる。ケース7の厚みは、50〜300μm程度である。
【0036】
また、例えば、図5に示す例のように、他方主面2Bに、電子部品5を封止するように、封止樹脂8を設けることが好ましい。これによって、電子部品5を保護できるので、外部からの衝撃が電子部品5に直接加わることを防ぐことができる。この封止樹脂8は、例えば、ポリミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フエノール系樹脂等が用いられる。
【符号の説明】
【0037】
1:電子装置
2:配線基板
21:基板本体
22:電極パッド
23:貫通導体
3:脚部
4:電子部品(一方主面側)
5:電子部品(他方主面側)
6:蓋体
7:ケース
8:封止樹脂
9:母基板
v:ダイシングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
該配線基板の一方主面において、互いに対向する一対の辺に沿って設けられた一対の脚部と、
前記配線基板の一方主面であって前記一対の脚部の間に実装された電子部品とを有する電子装置であって,
前記一対の脚部の内壁は、前記電子部品から広がるように傾斜していることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記一対の脚部の内壁は、前記一方主面に漸近していることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記一方主面に、前記電子部品を封止するようにケースが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
母基板を準備する工程と、
前記母基板の一方側主面における、一方の辺から該一方の辺に対向する他方の辺にかけて、先端にいくほど幅が狭くなっている切削工具によって溝状に切削加工を施し、前記溝を介して対向する一対の脚部と、これが一方主面に設けられた配線基板とを形成する工程と、
前記配線基板の一方主面における前記一対の脚部の間に電子部品を実装する工程とを含む、電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−209505(P2012−209505A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75553(P2011−75553)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】