説明

電子部品用ソケット

【課題】 ICチップなどの電子部品が装着されるハウジングの内部にコンデンサを装備した電子部品用ソケットを提供する。
【解決手段】 ハウジング2に、第1の電極板11と第2の電極板12の間に誘電体層13が挟まれてコンデンサとして機能する支持板10が保持されている。支持板10に支持穴14,15が貫通して形成されており、端子20を保持する保持部材25が支持穴14,15に挿入されて保持されている。第1の電極板11に、支持穴14の内部に突出する第1の導通突起14aが設けられて、この第1の導通突起14aが接地電位に設定される端子20に接触している。第2の電極板12に、支持穴15の内部に突出する第2の導通突起15aが設けられ、この第2の導通突起15aが電源電位などに設定される端子20に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの電子部品の電極部に接触する複数の端子を備えた電子部品用ソケットに係り、特に、端子に導通するコンデンサを備えた電子部品用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2に、ICチップなどの電子部品を支持するソケットが開示されている。
【0003】
引用文献1と特許文献2に記載されたソケットは、半導体基板の表面に複数のコンタクトが配置されており、半導体基板の上に設置されたICの電極部が前記コンタクトに接続されている。
【0004】
また、半導体基板に実装されたICの上にカバーが重ねられ、このカバーが2枚の金属板の間に誘電体層が挟まれてデカップリングコンデンサとして機能している。さらにこれら特許文献には、デカップリングコンデンサである前記カバーの上にヒートシンクが載せられた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4050700号公報
【特許文献2】特許第4133819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1と特許文献2に記載されたソケットは、デカップリングコンデンサがICの上に設置されているため、デカップリングコンデンサを設置することで、全体が大型となる。また、デカップリングコンデンサがICの上に設置されているため、ICに設けられた複数の電極部のうちのいずれかを選択してコンデンサに接続させることが難しく、ICの内部の回路を変更したときに、デカップリングコンデンサの端子構造などを変えることが必要になる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、コンデンサを組み込んでも構造が大型化しない電子部品用ソケットを提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、コンデンサと接続される端子をどの位置に配置するかなどの回路設計の変更に対応しやすい構造の電子部品用ソケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子部品が設置されるハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記電子部品の底面に設けられた複数の部品電極部に接触する複数の端子とが設けられた電子部品用ソケットにおいて、
絶縁性の前記ハウジングに、複数の支持穴を有する支持板が固定され、前記端子を保持した絶縁性の保持部材が前記支持穴に挿入されて保持されており、
前記支持板は、第1の電極板および第2の電極板とその間に挟まれた誘電体層とを有しており、複数の端子のいずれかが前記第1の電極板に導通し、他の端子が前記第2の電極板に導通していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の電子部品用ソケットは、端子を支持している支持板がコンデンサとして機能するため、外部にコンデンサを設置するスペースが不要になり、薄型で小型に構成することができる。
【0011】
本発明は、前記第1の電極板に、前記支持穴の内部に突出する第1の導通突起が設けられ、前記第2の電極板に、前記支持穴の内部に突出する第2の導通突起が設けられており、前記第1の導通突起と前記第2の導通突起が、異なる端子に接触しているものとして構成できる。
【0012】
本発明の電子部品用ソケットでは、前記導通突起を設ける場所を変更することで、第1の電極板と第2の電極板をどの端子に導通させるかのを選択することができる。よって、電子部品の内部回路が変更となったときに、支持板の構造を変更するだけで対応することが可能である。
【0013】
さらに、本発明は、前記保持部材に、前記支持穴への挿入方向に向く先端部から後方に向けて連続する凹部が形成され、前記凹部内に前記端子が露出しており、前記保持部材が前記支持穴に挿入されると、前記第1の導通突起または前記第2の導通突起が前記凹部に入り込んで、前記端子に接触するものが好ましい。
【0014】
上記構造では、保持部材を支持穴に差し込むだけで、第1の導通突起または第2の導通突起を端子に導通させることができる。
【0015】
また、本発明は、全ての前記凹部の先端部から後方への深さ寸法が同じであることが好ましい。
【0016】
上記構成では、第1の導通突起または第2の導通突起に接触させる端子を保持する保持部材と、前記導通突起に接触しない端子を保持する保持部材を全て同じ構造にできる。
【0017】
本発明は、複数の端子のうちの接地用端子が前記第1の電極板に導通し、前記第1の電極板がシールド板として機能する構造にできる。また、例えば、複数の端子のうちの電源用端子または信号用端子が前記第2の電極板に導通している。
【0018】
また、前記第1の電極板の側部が折り曲げられて、前記端子が側方から覆われている構造とすることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、端子と導通させるコンデンサをハウジングの内部において端子を支持する構造物として配置できるため、コンデンサを配置することによってハウジングが極端に大型化するのを避けることができる。
【0020】
また、本発明は、支持板の構造を変えるだけで、どの端子をコンデンサに接続するかの変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電子部品用ソケットの斜視図、
【図2】本発明の第1の実施の形態の電子部品用ソケットと、中継部材を示すものであり、図1のII−II線の断面図、
【図3】本発明の第1の実施の形態の電子部品用ソケットに中継部材が装着された状態を示す断面図、
【図4】コンデンサを構成する支持板と、中継部材とを示す分解斜視図、
【図5】第1の電極板の平面図、
【図6】複数の端子を保持した保持部材と、支持板とを示す分解斜視図、
【図7】支持板に保持された保持部材と端子の詳細を示す図2の一部分の拡大図、
【図8】本発明の第2の実施の形態の電子部品用ソケットを示す断面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1ないし図3に示すように、本発明の実施の形態の電子部品用ソケット1は、絶縁性のハウジング2を有し、このハウジング2にコンデンサとして機能する支持板10が保持されている。図4に分解して示すように、支持板10は、第1の電極板11と第2の電極板12、および両電極板11,12の間に挟まれた誘電体層13とで構成されている。ハウジング2は、いわゆるインサート成型法によって形成されており、第1の電極板11と第2の電極板12および誘電体層13とが積層された支持板10が、金型のキャビティの内部に設置された状態で、キャビティ内に溶融樹脂が射出されて、支持板10を保持したハウジング2が成形される。
【0023】
図1ないし図3に示すように、ハウジング2の上部に支持側壁部2aが形成されており、この支持側壁部2aで4面が囲まれた上側凹部5が形成されている。4面の支持側壁部2aのそれぞれの内側面に段差底部2bが形成されており、上側凹部5は、段差底部2bよりも上側の部分が部品支持部5aとなり、段差底部2bよりも下側の部分が端子変形空間5bとなっている。
【0024】
図2と図3に示すように、ハウジング2には、支持側壁部2aの下部からさらに4方向の外側に張り出す天井壁部2cが形成され、天井壁部2cの周囲から下側に延びる装着側壁部2dが一体に形成されて、装着側壁部2dで4面が囲まれた下側凹部6が形成されている。下側凹部6は、天井壁部2cの下面2eよりも下側の部分が中継部材装着部6aとなり、前記下面2eよりも上側の部分が端子接続空間6bとなっている。ハウジング2は、中継部材装着部6aが部品支持部5aよりも外周側に張り出した構造である。
【0025】
ハウジング2は、上側凹部5と下側凹部6とが連続して一体に形成され、上側凹部5と下側凹部6とが、支持板10で仕切られた構造である。
【0026】
支持板10を構成する第1の電極板11と第2の電極板12は、導電性を有する金属板で構成されており、例えば、鋼板、表面に低抵抗の金属膜がメッキされた鋼板、または銅版などで形成されている。
【0027】
図4と図5に示すように、第1の電極板11は、平面で見た形状が矩形状である。第1の電極板11の中央部に、小さな面積の矩形状の中央開口部11aが形成され、中央開口部11aを囲む矩形状の領域が、端子保持領域11bとなっている。
【0028】
図4と図5に示すように、第1の電極板11には、端子保持領域11bと同一面でさらに側方へ向けて4方向に延びる天井面11cが設けられている。天井面11cには支持穴14が形成されていない。端子保持領域11bから4方向の側方へ離れた位置に、天井面11cからほぼ直角に折り曲げられた4面の折り曲げ側面11dが形成されている。
【0029】
図4に示すように、第2の電極板12は平板であり、第1の電極板11と同じ導電性の金属板で形成されている。第2の電極板12は矩形状であり、第1の電極板11から折り曲げ側面11dを削除したものと同じ形状で同じ大きさである。第2の電極板12は、中央部に矩形状の中央開口部12aが形成されている。中央開口部12aの周囲の矩形状の領域が端子保持領域12bであり、その外周部に天井面12cが一体に形成されている。中央開口部12aおよび端子保持領域12bの形状と大きさは、第1の電極板11の中央開口部11aならびに端子保持領域11bと同じである。
【0030】
図5および図6と図7に示すように、第1の電極板11の端子保持領域11bに、複数の第1の支持穴14が形成されている。第1の支持穴14は端子保持領域11bの全域に規則的に並んで配列している。個々の第1の支持穴14は矩形状である。第2の電極板12の端子保持領域12bに、複数の第2の支持穴15が貫通して形成されている。第2の支持穴15は、第1の支持穴14と同じ形状で同じ大きさ矩形状の穴であり、第1の電極板11と第2の電極板12とが重ねられると、第1の支持穴14と第2の支持穴15が上下に一致する。
【0031】
図4に示す誘電体層13は合成樹脂フィルムで形成されており、第2の電極板12と同じ形状で同じ大きさである。誘電体層13の中央部に中央開口部13aが開口している。中央開口部13aの形状および大きさは、それぞれの電極板11,12の前記中央開口部11a,12aと同じである。図6と図7に示すように、誘電体層13の中央開口部13aの周囲の内側領域13bには、それぞれの電極板11,12に開口する支持穴14,15と同じ大きさの矩形状の逃げ穴13dが形成されている。なお、前記中央開口部13aの開口面積が、電極板11,12の中央開口部11a,12aよりも大きくてもよく、同様に、逃げ穴13dの開口面積が、支持穴14,15よりも大きくてもよい。
【0032】
また、第1の電極板11の端子保持領域11bと第2の電極板12の端子保持領域12bに対向する部分に誘電体層13を設けずに、それぞれの電極板11,12の天井面11c,12cに対向する外側領域13cにのみ誘電体層13を設けてもよい。
【0033】
または、誘電体層13を合成樹脂フィルムで構成せずに、第1の電極板11と第2の金属板12とを接合する接着剤層を誘電体層13としてもよい。
【0034】
図1ないし図3に示すように、電子部品用ソケット1の構造は、第1の電極板11と第2の電極板12および誘電体層13から成る支持板10の外周領域がハウジング2に保持されており、第1の電極板11の中央開口部11aおよび端子保持領域11bと、第2の電極板12の中央開口部12aおよび端子保持領域12bとが、ハウジング2の上側凹部5と下側凹部6との境界部に位置している。
【0035】
第1の電極板11の天井面11c、および第2の電極板12の天井面12cは、ハウジング2の天井壁部2cの上に位置し、第1の電極板11の天井面11cが天井壁部2cの最表面に現れている。また、第1の電極板11の折り曲げ側面11dが、装着側壁部2dの表面に現れている。すなわち、部品支持部5aよりも周囲に張り出した形状の中継部材装着部6aは、天井部と4面の側部が第1の電極板11の一部で覆われている。
【0036】
ハウジング2には、複数の端子20が設けられている。端子20は、第1の電極板11の端子保持領域11bおよび第2の電極板12の端子保持領域12bの全域に規則的に並んで配置されているが、図2と図3などでは、図示の都合上一部の端子20のみが示されている。
【0037】
図6と図7に示すように、複数の端子20は、合成樹脂材料で形成された保持部材25(端子ホルダー)に保持されている。
【0038】
保持部材25は、基部側に位置する嵌合部26と、嵌合部26の上方に位置するストッパ部28とが一体に形成されている。嵌合部26は、平面形状が矩形状であり、第1の電極板11に形成された第1の支持穴14と第2の電極板12に形成された第2の支持穴15に圧入することが可能である。
【0039】
保持部材25に複数の端子20が保持されている。複数の端子20は、保持部材25の長手方向へ向けて一定のピッチで配列している。図6に示す例では、それぞれの保持部材25に端子20が3個ずつ保持されている。端子20と保持部材25は、インサート成型法で一体化されている。あるいは、端子20が保持部材25に圧入されて固定されている。
【0040】
保持部材25は、嵌合部26の先端部26aを下に向けて支持穴14,15に対して下向きに挿入して嵌合させる。図7に示すように、嵌合部26が支持穴14,15に挿入されると、ストッパ部28が第1の電極板11の表面に突き当てられて、それぞれの保持部材25の保持高さが均一となるように決められる。複数の保持部材25が、2つの電極板11,12のそれぞれの支持穴14,15の内部に挿入されて保持されると、第1の電極板11の端子保持領域11bと第2の電極板12の端子保持領域12bの全域において、端子20が一定のピッチで配列する。
【0041】
それぞれの端子20は、リン青銅板などの板ばね材料で形成され、表面にニッケルメッキ層が形成され、さらにその表面に金メッキ層が形成されている。
【0042】
図7に拡大して示すように、端子20の中間片21が保持部材25に埋設されて保持されている。端子20には、中間片21と連続して上方に延びる弾性片22が設けられており、弾性片22が、保持部材25のストッパ部28の表面28aから上方へ突出している。弾性片22に外力が作用していないとき、図7において破線で示すように、弾性片22の先端の接触部22aが、ハウジング2の部品支持部5aの内部まで延びている。
【0043】
端子20には、嵌合部26の先端部26aよりも下方へ突出する基端片23が一体に設けられ、基端片23の下端部は直角に折り曲げられて、導通片23aが形成されている。導通片23aは、ハウジング2の端子接続空間6bの内部に位置している。
【0044】
図6に示すように、保持部材25の嵌合部26の側面26bに凹部27が形成されており、凹部27の内部に端子20の中間片21が露出している。保持部材25には、保持されている端子20の全てを個別に露出させることができるように、凹部27が端子20と同じ数だけ形成されている。全ての凹部27は、嵌合部26の先端部26aから後方(図示上方)に向けての開口深さ寸法Dが同じである。
【0045】
図6に示すように、第1の電極板11に、一部の支持穴14の内部に向けて突出する第1の導通突起14aが一体に形成されている。第2の電極板12にも、一部の支持穴15の内部に向けて突出する第2の導通突起15aが一体に形成されている。
【0046】
全ての保持部材25は、先端部26aが支持穴14,15に向けられて挿入されるが、このとき、第1の導通突起14aと第2の導通突起15aが、保持部材25に形成された凹部27の内部に入り込んで、端子20の中間片21に接触して導通する。
【0047】
図7に示すように、第1の導通突起14aは、第2の導通突起15aよりも上方に位置しているが、保持部材25のストッパ部28が第1の電極板11の表面に突き当てられたときに、第1の導通突起14aが凹部27に入り込めるように前記開口深さ寸法Dを決めておくことで、保持部材25を支持穴14,15に挿入する作業のみで、全ての第1の導通突起14aと全ての第2の導通突起15aを、端子20の中間片21の表面に接触させて導通させることが可能である。
【0048】
複数の端子20のうちの、接地端子として使用される端子20に第1の導通突起14aを接触させることで、第1の電極板11を接地電位に設定することができる。電源端子として使用される端子20に第2の導通突起15aを接触させることで、第2の電極板12を電源電位に設定することができる。この場合、支持板10をデカップリングコンデンサとして機能させて、この電子部品用ソケット1に装着されるICなどの電子部品30に供給される電源電圧の変動を抑制することができる。
【0049】
または、ICなどの電子部品30に信号を供給する信号伝達用の端子20に第2の導通突起15aを接触させることにより、支持板10で構成されているコンデンサをノイズ除去用コンデンサとして機能させることも可能である。
【0050】
第1の電極板11における第1の導通突起14aの形成位置と、第2の電極板12における第2の導通突起15aの形成位置を変更するだけで、同じ保持部材25を使用したとしても、複数の端子20のうちの第1の電極板11に導通させる端子20と第2の電極板12に導通させる端子20とを選択することができる。したがって、このソケット1に装着される電子部品30の内部回路の構造に応じて、第1の導通突起14aの位置と第2の導通突起15aを決めることで、どのような内部回路にも対応させることができる。すなわち、支持板10の構造を変更するだけで、同じ保持部材25を使用しても、装着される電子部品30の種類に対応した電子部品用ソケット1を構成することができる。
【0051】
なお、支持板10をハウジング2に組み付ける工程としては、先に第1の電極板11と第2の電極板12および誘電体層13とが積層された支持板10の支持穴14,15に、保持部材25の嵌合部26が圧入された後に、保持部材25を保持した支持板10が金型のキャビティ内に保持されて、溶融樹脂が射出されてハウジング2が形成される。あるいは、インサート成型法により、支持板10を保持したハウジング2が成型された後の工程で、支持穴14,15に保持部材25の嵌合部26が挿入されて保持されてもよい。
【0052】
図2と図3に示すように、電子部品用ソケット1の中継部材装着部6aに、中継部材40が保持される。
【0053】
中継部材40は、上面40aに複数の上部接続電極部41が配列し、下面40bに複数の下部接続電極部42が配列している。上部接続電極部41は、表面に球形状の半田層を有している。下部接続電極部42も表面に球形状の半田層を有している。
【0054】
図4に示すように、中継部材40の上面40aに、矩形状の電極配列領域40cが形成され、この電極配列領域40cに複数の上部接続電極部41が規則的に配列している。電極配列領域40cの形状および面積は、第1の電極板11の端子保持領域11bおよび第2の電極板12の端子保持領域12bの形状ならびに面積と同等である。また、上部接続電極部41の配列状態が、端子20の配列状態と一致し、上部接続電極部41の配列ピッチP1が、端子20の配列ピッチP1と一致している。
【0055】
中継部材40はいわゆる多層基板であり、厚さ方向に重ねられた複数の絶縁層によって構成されている。図2に示すように、中継部材40の内部の各層の表面に内部配線層43がパターン形成されており、上部接続電極部41と下部接続電極部42とが、内部配線層43を介して一対一の関係で導通している。そして、下部接続電極部42の配列ピッチP2が、上部接続電極部41の配列ピッチP1よりも広く形成されている。
【0056】
図3に示すように、中継部材40は、ハウジング2の中継部材装着部6aの内部に挿入される。中継部材40を装着側壁部2dの内部に挿入し、天井壁部2cの下面2eに突き当てることで、ハウジング2に対して中継部材40が位置決めされ、それぞれの端子20の導通片23aと中継部材40の上部接続電極部41とが当接させられる。この状態で加熱炉に供給されると、上部接続電極部41の表面の半田層が溶融し、上部接続電極部41と端子20の導通片23aとが個別に半田付けされて、ハウジング2に中継部材40が保持される。
【0057】
次に、上記電子部品用ソケット1の実装方法について説明する。
電子部品用ソケット1が実装されるメイン基板(マザーボード)は、その表面にメイン電極部を有しており、メイン電極部は、中継部材40の下部接続電極部42の配列ピッチP2と同じピッチで配置されている。中継部材40の下部接続電極部42と、メイン電極部とを個別に対面させ、下部接続電極部42の半田層を溶融させることで、下部接続電極部42とメイン電極部とが個別に半田付けされ、電子部品用ソケット1が中継部材40を介してメイン基板に実装される。
【0058】
端子20の配列ピッチP1に対し、下部接続電極部42の配列ピッチP2が広いため、メイン基板のメイン電極部のピッチを広くでき、多層基板であるメイン基板の層の数を少なくして、メイン基板の製造コストを削減することが可能である。
【0059】
図3および図7に示すように、メイン基板に実装された電子部品用ソケット1に、電子部品30が装着される。電子部品30は、ICのベアチップ、あるいはICパッケージである。電子部品30の底面30aに、複数の部品電極部31が形成されている。部品電極部31は表面が平坦面の金属層で形成されている。電子部品30の底面30aにおける部品電極部31の配列領域は、多数の端子20が配列している領域と同じである。部品電極部31の配列ピッチP1は、端子20の配列ピッチP1と同じである。
【0060】
電子部品30は、電子部品用ソケット1の部品支持部5aに挿入されて、支持側壁部2aで囲まれて平面方向へ動かないように位置決めされ、部品電極部31と端子20とが、上下に個別に対向する。そして、電子部品30が上方から図示しない押さえ部材で押さえられて固定される。
【0061】
電子部品30が部品支持部5aで位置決めされると、部品支持部5a内に突出している弾性片22の先部の接触部22aに電子部品30の部品電極部31が接触する。電子部品30が部品支持部5aの内部に押し込まれると、弾性片22が変形して、それぞれの端子20と部品電極部31とが導通させられる。
【0062】
この電子部品用ソケット1は、支持板10がコンデンサとして機能しているため、電源電圧の変動を抑制したり、伝送信号に重畳するノイズを低減させることができる。コンデンサが保持部材25を保持する支持板10であるため、電子部品用ソケット1にコンデンサを搭載するためのスペースを特別に設けることが不要になり、薄型化と小型化を実現できる。
【0063】
支持板10の第1の電極板11が、接地用端子として機能する端子20と導通していると、第1の電極板11をシールド板として機能させることが可能である。
【0064】
よって、支持板10に間隔を空けて保持されている端子20が相互にシールドされやすくなり、端子20で伝送される信号に外部ノイズが重畳されるのを防止しやすくなる。
【0065】
中継部材40は、上面が接地電位に設定された第1の電極板11の天井面11cで覆われ、4面の側部が折り曲げ側面11dで覆われる構造であるため、中継部材40の上部接続電極部41と端子20との導通部、および下部接続電極部42とメイン基板のメイン電極部との接続部、さらには内部配線層43をシールドすることができ、中継部材40を介して伝送される信号を外部ノイズから保護しやすくなる。
【0066】
図8に示す第2の実施の形態の電子部品用ソケット101は、合成樹脂製のハウジング102に上側凹部105が形成され、その内部が部品支持部105aと端子変形空間105bとなっている。第1の電極板11と第2の電極板12および両電極板11,12の間に挟まれた誘電体層13から成る支持板10がハウジング102の底部に保持されている。
【0067】
第1の電極板11に形成された支持穴14と第2の電極板12に形成された支持穴15に端子20を保持した保持部材25が保持されている。そして、図6と図7に示したのと同様に、第1の電極板11に設けられた第1の導通突起14aがいずれかの端子20に導通し、第2の電極板12に設けられた第2の導通突起15aがいずれかの端子20に導通している。
【0068】
図8に示す電子部品用ソケット101には、中継部材装着部6aが設けられておらず、端子20の基端片23が、ハウジング102の底部に現れている。この電子部品用ソケット101は、中継部材40を使用せずに、メイン基板(マザーボード)の上に直接に設置され、端子20の導通片23aが、メイン基板に設けられたメイン電極部に個別に半田付けされる。
【0069】
また、前記第1の実施の形態の電子部品用ソケット1と第2の実施の形態の電子部品用ソケット101において、接地電位に設定される第1の電極板11の周囲部分が上向きに折り曲げられて、端子20と電子部品30の部品電極部31ととの接触部がシールドされるように構成されてもよい。
【0070】
また、第1の実施の形態の電子部品用ソケット1において、第1の電極板11が下側で、第2の電極板12が上側に重ねられてもよい。
【0071】
また、前記第1の実施の形態の電子部品用ソケット1と第2の実施の形態の電子部品用ソケット101において、端子20に導通突起を一体に形成しておき、いずれかの端子の導通突起を第1の電極板11に接触させて導通させ、他の端子の導通突起を第2の電極板12に接触させて導通させてもよい。この場合は、高さ方向の異なる位置に導通突起が形成された端子を用い、上部に導通突起を有する端子が第1の電極板11に接触し、下部に導通突起を有する端子が第2の電極板12に接触する構造となる。
【符号の説明】
【0072】
1,101 電子部品用ソケット
2,102 ハウジング
5a 部品支持部
5b 端子変形空間
6a 中継部材装着部
6b 端子接続空間
10 支持板
11 第1の電極板
12 第2の電極板
13 誘電体層
14 第1の支持穴
14a 第1の導通突起
15 第2の支持穴
15a 第2の導通突起
20 端子
21 中間片
22 弾性片
23 基端片
25 保持部材
26 嵌合部
26a 先端部
27 凹部
30 電子部品
31 部品電極部
40 中継部材
41 上部接続電極部
42 下部接続電極部
43 内部配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が設置されるハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記電子部品の底面に設けられた複数の部品電極部に接触する複数の端子とが設けられた電子部品用ソケットにおいて、
絶縁性の前記ハウジングに、複数の支持穴を有する支持板が固定され、前記端子を保持した絶縁性の保持部材が前記支持穴に挿入されて保持されており、
前記支持板は、第1の電極板および第2の電極板とその間に挟まれた誘電体層とを有しており、複数の端子のいずれかが前記第1の電極板に導通し、他の端子が前記第2の電極板に導通していることを特徴とする電子部品用ソケット。
【請求項2】
前記第1の電極板に、前記支持穴の内部に突出する第1の導通突起が設けられ、前記第2の電極板に、前記支持穴の内部に突出する第2の導通突起が設けられており、前記第1の導通突起と前記第2の導通突起が、異なる端子に接触している請求項1記載の電子部品用ソケット。
【請求項3】
前記保持部材に、前記支持穴への挿入方向に向く先端部から後方に向けて連続する凹部が形成され、前記凹部内に前記端子が露出しており、前記保持部材が前記支持穴に挿入されると、前記第1の導通突起または前記第2の導通突起が前記凹部に入り込んで、前記端子に接触する請求項2記載の電子部品用ソケット。
【請求項4】
全ての前記凹部の先端部から後方への深さ寸法が同じである請求項3記載の電子部品用ソケット。
【請求項5】
複数の端子のうちの接地用端子が前記第1の電極板に導通し、前記第1の電極板がシールド板として機能する請求項1ないし4のいずれかに記載の電子部品用ソケット。
【請求項6】
複数の端子のうちの電源用端子または信号用端子が前記第2の電極板に導通している請求項5記載の電子部品用ソケット。
【請求項7】
前記第1の電極板の側部が折り曲げられて、前記端子が側方から覆われている請求項5または6記載の電子部品用ソケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−26174(P2013−26174A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162827(P2011−162827)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】