電気化学デバイス
【課題】積層体とこれを収容する封止体とのシール性を向上させ、かつ、生産性や信頼性のよい封止手段を採用できる電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】この電気化学デバイス10は、一対の電極13,13と、その間に介在されるセパレータ15と、一対の電極間に充填される電解質とを含む単位積層体を一層又は複数層積層して、封止体20に封入して構成されており、一対の電極13,13は、それぞれの電極の重なり部分16と、重なり部分16から突出する引き出し部分17とを有し、各電極13,13の引き出し部分17は対応する露出電極18,18にそれぞれ接続され、封止体20は、各露出電極18,18に対応する位置に開口部23,23が設けられており、この開口部23の内周縁が露出電極18に接合され、露出電極18が開口部23から露出して端子部をなしている。
【解決手段】この電気化学デバイス10は、一対の電極13,13と、その間に介在されるセパレータ15と、一対の電極間に充填される電解質とを含む単位積層体を一層又は複数層積層して、封止体20に封入して構成されており、一対の電極13,13は、それぞれの電極の重なり部分16と、重なり部分16から突出する引き出し部分17とを有し、各電極13,13の引き出し部分17は対応する露出電極18,18にそれぞれ接続され、封止体20は、各露出電極18,18に対応する位置に開口部23,23が設けられており、この開口部23の内周縁が露出電極18に接合され、露出電極18が開口部23から露出して端子部をなしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話,デジタルスチルカメラ,ノートパソコン等の電気機器や、ハイブリッド電気自動車においては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池、更に電気二重層キャパシタやレドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタなどの、電荷を蓄積することができる、いわゆる電気化学デバイスが広く用いられている。
【0003】
従来のこの種の電気化学デバイスとして、例えば、下記特許文献1には、リード端子が接続された正極シートと、セパレータと、同じくリード端子が接続された負極シートとを積層して構成された積層体を、非水電解液に含浸させた状態とし、この積層体を外装体に収納した電気化学デバイスが開示されている。図12には、特許文献1の電気化学デバイスが示されているが、前記外装体3は、2枚の金属ラミネート材1,2を貼り合わされると共に一側辺が開口した形状をなしており(図12(b)参照)、この外装体3に積層体のリード端子4を開口部から突出するように収納して、外装体3の開口部を熱溶着することにより、外装体3の左右両側片からリード端子4が引き出された状態で、開口部が封止されている(図12(a)参照)。
【0004】
また、下記特許文献2には、図13に示すように、一組の分極性電極5,5を、セパレータ6を介して相対向させると共に、各分極性電極5,5の外側に集電体5a,5aを介して、分極性電極5,5に重なるようにしてリード取り出し部材7,7を設け、これにシート部材8によって、リード取り出し部材7,7の一部が露出するようにラミネートして構成された電気二重層キャパシタが開示されている。
【特許文献1】特開2006−210201号公報
【特許文献2】特許第3005992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の電気化学デバイスの場合、外装体3の開口した一側辺からリード端子4を引き出した状態で、開口部が熱溶着されるので、図12(b)に示すように、リード端子4の左右両側部と、金属ラミネート材1,2内周との間に、段差のような隙間Sが生じ易く、外装体3の開口部をしっかりとシールさせることは難しい。そのため、この隙間Sから液漏れが生じ易く、また、外装体3内に水分等が浸入して性能が劣化するという不都合があった。
【0006】
また、上記特許文献2の場合は、電気化学デバイスとして機能する、分極性電極5,5及び集電体5a,5aに重なる部分に、リード取り出し部材7,7がそれぞれ設けられていて、これが露出するように構成されている。この場合、分極性電極5や集電体5aに対する悪影響を考慮すると、シート部材8のリード取り出し部材7の露出部分の周縁を、加熱加圧して溶着する手段を採用することは難しく、生産性や信頼性に問題が生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、積層体とこれを収容する封止体とを密閉状態で封止して、そのシール性を向上させることができると共に、生産性や信頼性のよい封止手段を採用することができる、電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電気化学デバイスは、一対の電極と、該一対の電極の間に介在されるセパレータと、一対の電極間に充填される電解質とを含む単位積層体を一層又は複数層積層して、封止体に封入してなる電気化学デバイスにおいて、前記一対の電極は、それぞれの電極の重なり部分と、該重なり部分から突出する引き出し部分とを有し、一方の極性の電極の引き出し部分と、他方の極性の電極の引き出し部分は、それぞれ異なる位置にあって、かつ、前記単位積層体が複数層積層されている場合には、同じ極性の電極の引き出し部分どうしが整合するように配置されており、前記各電極の引き出し部分は対応する露出電極にそれぞれ接続されており、前記封止体は、前記各露出電極に対応する位置に開口部が設けられていて、この開口部の内周縁が前記露出電極に接合され、前記露出電極が前記開口部から露出して端子部をなしていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、露出電極が、封止体の端縁から突出することなく、封止体の開口部から露出し、この開口部の内周縁が露出電極に接合されて気密性が保持されているので、露出電極の露出部における封止体と露出電極との間に段差のような隙間が生じにくく、高いシール性を得ることができ、封止体内に充填された電解液等が封止体から液漏れしたり、水分等が封止体内に侵入したりすることを防止できる。
【0010】
また、各露出電極が位置する部分は、電気化学デバイスとして機能する、一対の電極やセパレータが重なった部分ではないので、加熱加圧して溶着するなどの生産性や信頼性のよい封止手段を採用できる。
【0011】
本発明の電気化学デバイスにおいては、前記一方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の一方の主面に形成され、前記他方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の同一または他方の少なくとも一方の主面に形成されていることが好ましい。この態様によれば、一方の極性の露出電極と、他方の極性の露出電極とが、封止体のそれぞれ同一または異なる主面に露出しているので、電気化学デバイスを収容する電気部品や電気機器の接続端子を、収容部の同一または対向する面に配置することができる。
【0012】
本発明の電気化学デバイスにおいては、前記各露出電極を露出させる開口部が、各露出電極毎に、前記封止体の両主面に形成されていることが好ましい。この態様によれば、各露出電極がそれぞれ封止体の両主面に露出しているので、電気化学デバイスを収容する電気部品の接続端子の取付位置や構造の自由度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の電気化学デバイスにおいては、前記封止体が、前記各露出電極が配置される部分に開口部を有し、一辺が開口された袋状又は両端面が開口した筒状をなしていて、前記単位積層体又はその複数積層物を前記開口した一辺又は端面から挿入して前記電解質を充填した状態で、前記各露出電極が配置された部分の開口部内周縁を前記各露出電極に接合し、前記開口した一辺又は端面を封止して構成されていることが好ましい。この態様によれば、予め袋状又は筒状に形成された封止体に、単位積層体又はその複数積層物を挿入して、封止することにより構成されるので、封止体の接合不良による気密性不良が更に発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気化学デバイスによれば、露出電極が、封止体の端縁から突出することなく、封止体の開口部から露出し、この開口部の内周縁が露出電極に接合されて気密性が保持されているので、露出電極の露出部における封止体と露出電極との間に隙間が生じにくく、高いシール性を得ることができ、封止体内の電解液等が液漏れしたり、水分等が封止体内に侵入したりすることを防止できる。
【0015】
また、各露出電極が位置する部分は、電気デバイスとして機能する、一対の電極やセパレータが重なった部分ではないので、加熱加圧して溶着するなどの生産性や信頼性のよい封止手段を採用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の電気デバイスは、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池、更に電気二重層キャパシタやレドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタなどの、電荷を蓄積すると共に、その電荷を必要に応じて放出するためのもので、携帯電話,デジタルスチルカメラ,ノートパソコン等の電気機器や、ハイブリッド電気自動車等に、好適に利用される。
【0017】
以下、本発明を電気化学デバイスの一種である電気化学キャパシタに適用した実施形態を挙げて説明する。
【0018】
図1〜3には、電気二重層キャパシタに適用した本発明の電気化学デバイスの第1実施形態が示されている。
【0019】
図1,2に示すように、この電気化学デバイス10aは、集電体13bと、その表面に形成された分極性電極13aとで構成される電極13を有している。ここで、集電体13bとしては、例えばアルミニウム箔、分極性電極の表面にプラズマ溶射法や薄膜形成法により形成された金属層、導電性ゴム、導電性カーボンペースト、金属繊維、金属メッシュ等が用いられる。なお、金属としては、アルミニウム,タンタル,ニオブ,チタン,ハフニウム,ジルコニウム,亜鉛,タングステン,ビスマス,アンチモン等の、いわゆるバルブ金属(弁金属、バルブメタルともいう)を用いることができる。また、分極性電極13aとしては、表面積の大きな活性炭等の多孔質材料や、炭素繊維等が用いられる。
【0020】
各電極13間には、セパレータ15が配置されている。セパレータ15は、正極の分極性電極13aと負極の分極性電極13aとを絶縁すると共に、一対の電極13,13間の電解液中のイオンを移動可能とする部材で、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース、アラミド樹脂等、或いは、それらを混合させた多孔性ポリマーフィルムや不織布等が用いられる。
【0021】
また、一対の電極13間には、図示しない電解質が充填される。電解質としては、例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(Et4NBF4)、や下式(i)で表される化合物等が採用される。
【0022】
R1−R2−R3−R4−N・・・(i)
(式中、R1〜R4は、不飽和結合,エーテル結合,アミド結合,又はエステル結合を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、分子中に窒素原子を有してもよい炭素数4〜6のシクロアルキル基を表す)
上記電解質がプロピレンカーボネート(PC)、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、スルホラン、3−メチルスルホラン等の溶媒により溶解されることにより、電解液が形成されて、これが一対の電極13,13間に充填されるようになっている。なお、弗素を含む電解質は、水分が侵入すると弗酸を生じ、集電体13bを腐食させる虞れがあるため、後述する封止体20で厳密に封入する必要がある。
【0023】
そして、一対の電極13と、それらの間に配置されたセパレータ15と、一対の電極13間に充填された電解質とによって、単位積層体11が構成されている。一対の電極13間に正負の電圧を引加すると、電解液中のイオンが移動して、分極性電極13aの活性炭等の表面に集合し、電気二重層が形成される。この電気二重層がキャパシタとなり、充電がなされる。
【0024】
単位積層体11は、最低限1層有する必要があるが、充電容量を増大させるために、単位積層体11を複数層積層して、1個の電気化学デバイスを構成することが好ましい。この実施形態の場合は、最外層に配置された1対の集電体13bは、その内側となる片面のみに分極性電極13aが形成されているが、内側に配置された2枚の集電体13bは、それらの両面に分極性電極13aが形成されて、例えば下面の分極性電極13aは下方の単位積層体11の構成層となり、上面の分極性電極は上方の単位積層体11の構成層となっている。こうして積層された電極13は、交互に極性の異なる電極となり、一対の電極13の間にセパレータ15が配置された単位積層体11を構成している。この実施形態では、合計3層の単位積層体11が積層された構造をなしている。
【0025】
また、図1(b)及び図2に示すように、集電体13bは、重なり部分16と、長手方向の一方に突出した引き出し部分17とを有している。そして、分極性電極13aは、集電体13bの重なり部分16のみに形成されている。なお、セパレータ15は、上記重なり部分16よりもやや広く形成されているが、引き出し部分17よりは短くなっている。このため、各電極13は、集電体13bが交互に反対方向に突出してなる引き出し部分17を有している。
【0026】
長手方向の片方に突出した引き出し部分17どうしは、一方の極の露出電極18に溶接、半田付け等の手段によって接続され、上記と反対側に突出した引き出し部分17どうしは、他方の極の露出電極18に同じく溶接、半田付け等の手段によって接続されている。
【0027】
上記のように構成された複数の単位積層体11,11からなる積層物は、封止体20に封入されている。この実施形態の場合、図3(a)に示すように、封止体20は、少なくとも前記単位積層体11よりも長く、かつ、幅広とされた一対のフィルム部材21,21からなっており、一方のフィルム部材21の長手方向両端部には、略長方形状をなした開口部23,23がそれぞれ設けられている。各開口部23,23は、一対のフィルム部材21,21により、複数の単位積層体11,11を挟み込んだときに、各電極13から引き出された露出電極18,18に整合する位置に形成されている。したがって、封止体20内に上記の複数の単位積層体11,11からなる積層物を封入したときに、図1(a),(b)に示すように、封止体20の一側面に形成された開口部23,23から、露出電極18,18が露出するようになっており、これにより各種電気機器等の接続端子を接続可能な、端子部が形成されている。
【0028】
なお、各フィルム部材21は、非透湿性と十分な強度を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、金属箔をラミネートされた合成樹脂フィルムなどが好ましく使用される。金属箔としては、アルミニウム等が好ましく、合成樹脂フィルムとしては、例えばポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、あるいはこれらの積層物(例えば、ナイロンをベース材とし、シーラントとしてポリプロピレンを積層させ、これらをポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂等で挟み込んだ構成)が好ましく用いられる。フィルム部材21を溶着によって接合する場合には、少なくとも内面に熱溶着可能な樹脂層が設けられるようにすることが好ましい。
【0029】
次に、上記構成からなる本発明の電気化学デバイスの製造方法について説明すると、まず、所定の組成でペースト状に形成された分極性電極材料を、集電体13bの片面又は両面(最外層に配置されるものは片面、内側に配置されるものは両面)に所定厚さで塗布し、分極性電極13aを形成する。こうして電極13を構成すると共に、これらの電極13,13間に所定のセパレータ15を配置する。そして、図2に示すように、各構成部材を所定長さ重なり合うようして、積層させて重なり部分16を形成する。その後、集電体13bの同じ側に引き出された整合する引き出し部分17どうしを、対応する露出電極18に溶接、半田付け等の手段によって接合する。
【0030】
次に、上記工程により接合された複数の単位積層体からなる積層物を、図3(a)に示す一対のフィルム部材21,21によって挟み込んで、一方のフィルム部材21の開口部23,23に露出電極18,18をそれぞれ整合させると共に、一対のフィルム部材21,21の周縁部どうしを重ね合わせる。その状態で、図1(a)の二点鎖線で示すように、周縁部の左右両辺及び上辺を溶着すると共に、開口部23,23の内周縁も各露出電極18に接合させ、更に開口した下辺から電解液を注入して、これを各分極性電極13aに含浸させた後、同下辺を溶着する。これにより、封止体20の全周が封止されると共に、開口部23,23の内周縁も封止され、更に、同開口部23,23から露出電極18,18を露出させた状態にして、これを端子部とした電気化学デバイス10を製造することができる。
【0031】
なお、封止体20は、図3(b)に示すように、縦長の一枚のフィルム部材21aの中間部を、折曲線Fを介して折り曲げて、その周縁部を溶着して形成してもよい。
【0032】
上記のように製造された本発明の電気化学デバイス10aによれば、露出電極18が、封止体20の端縁から突出することなく、封止体20の開口部23から露出し、この開口部23の内周縁が露出電極18に接合されて気密性が保持されているので、前述した特許文献1のように(図12参照)、露出電極18の露出部における封止体20と露出電極18との間に段差のような隙間が生じにくく、高いシール性を得ることができ、封止体20内に充填された電解液等が封止体から液漏れしたり、水分等が封止体20内に侵入したりすることを防止できる。
【0033】
また、この電気化学デバイス10aにおいては、一対の電極13に重なり部分16と、引き出し部分17とを設けて、重なり部分16に重ならない位置に、露出電極18が配置されている。すなわち、各露出電極18が位置する部分は、電気化学デバイスとして機能する、一対の電極13,13やセパレータ15が重なった部分ではないので、加熱加圧して溶着するなどの生産性や信頼性のよい封止手段を採用することができる。
【0034】
更に、この実施形態においては、各露出電極18,18を露出させる開口部23,23が、封止体20の同じ主面に形成されているので、電気化学デバイスを収容する電気部品や電気機器の接続端子を、収容部の同じ面に配置することができる。
【0035】
なお、電気部品等の接続端子に端子部が接続された電気化学デバイス10aは、電界が印加されると、各単位積層体11の一対の分極性電極13a,13aの界面に、電解液中のプラスイオン又はマイナスイオンが吸着して、電気二重層が形成されて充電が行われることになる。
【0036】
図4及び図5には、本発明の電気化学デバイスの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0037】
この実施形態の電気化学デバイス10bは、前記第2実施形態の電気化学デバイス10aと比べて、露出電極18と封止体20の開口部の位置が異なるだけで、他の部分は同じである。
【0038】
すなわち、図4(a)、(b)に示すように、この電気化学デバイス10bの封止体20は、上面側のフィルム部材21の長手方向一端部(図中左側)に開口部23が形成されていると共に、下面側のフィルム部材21の長手方向他端部(図中右側)に開口部23が形成されている。
【0039】
また、図5を併せて参照すると、一方の露出電極18(図中左側)は、その下面に集電体13bの引き出し部17が接合されており、他方の露出電極18(図中右側)は、その上面に集電体13bの引き出し部17が接合されている。その結果、一方の極性の露出電極18と、他方の極性の露出電極18とが、封止体20のそれぞれ異なる主面に露出している。これによれば、電気化学デバイス10を収容する電気部品や電気機器の接続端子を、収容部の対向する面に配置することができる。
【0040】
図6(a),(b)には、本発明の電気化学デバイスの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0041】
この実施形態の電気化学デバイス10cは、前記第1,第2の実施形態の電気化学デバイス10a,10bと比べ、封止体20の形状が異なり他の部分は同じである。すなわち、この電気化学デバイス10cの封止体20は、一対のフィルム部材21,21の長手方向両端部にそれぞれ開口部23,23が設けられており、それにより各露出電極18がそれぞれ封止体20の両主面に露出するようになっている。その結果、電気化学デバイス10を収容する電気部品の接続端子の取付位置や構造の自由度を高めることができる。
【0042】
図7〜9には、本発明の電気化学デバイスの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0043】
この実施形態の電気化学デバイス10dは、前記第1〜3の電気化学デバイスに比べて、露出電極18の位置と、封止体の形状が異なっている。すなわち、図8に示すように、各集電体13bは、その上辺の右側部分又は左側部分が上方に突出して引き出し部17をなしており、その左右突出位置が1枚置きに交互に逆にされて、1枚置きに整合するようになっている。そして、右側部分に突出した引き出し部17どうしが対応する右側の露出電極18に接合され、左側部分に突出した引き出し部17どうしが対応する左側の露出電極18に接合されている。
【0044】
また、図7(a)に示すように、この電気化学デバイス10dの封止体20aは、一辺が開口した袋状をなしている。この袋状の封止体20aの開口部周縁には、その幅方向に沿って、2つの開口部23,23が並列して形成されている。
【0045】
そして、図8に示した複数の単位積層体からなる積層物を、封止体20aの開口した上辺から挿入した後、電解液Lを充填して上辺を溶着することにより、封止体20aの上辺が封止されて、図7(b)に示すような電気化学デバイス10dが製造される。
【0046】
この実施形態によれば、予め袋状に形成された封止体20aに、複数の単位積層体からなる積層物を挿入して、封止することにより構成されるので、封止体20aの接合不良による気密性不良が更に発生しにくくなる。
【0047】
また、袋状の封止体20aは、図9に示すように、長手方向両端部に開口部23,23をそれぞれ設けたものであってもよい。更に、封止体としては、図10に示すように、両端部が開口した円筒状の封止体20bを採用してもよい。
【0048】
図11には、本発明の電気化学デバイスの第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0049】
この実施形態の電気化学デバイス10eは、前述した他の実施形態と同様に、所定数の単位積層体11を封入してなる一方向に長く伸びる封止体20を有している。そして、この実施形態では、この封止体20の露出電極18,18がそれぞれ露出した長手向両端部を、図11に示すように、内側にそれぞれ折り返された形状をなしている。なお、この実施形態では、封止体20の長手方向両端部は、共に封止体20の表面側に折り返されているが、どちらか一方を封止体20の裏面側に折り返してもよい。この態様によれば、封止体20の長手方向両端部を折り返したことにより、封止体20をなるべく短くすることができ、電気化学デバイス10eのコンパクト化を図ることが可能となる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
単位積層体11の積総数が異なる他は、図1、2に示すものと同様な電気化学デバイスを作製した。
【0051】
すなわち、下記表1に示す組成の分極性電極材料を混練してペースト状にし、これに水を加えてペースト濃度を37%としたペーストを作製し、集電体13b上に100μmの厚みで塗工して、分極性電極13aを形成した。そして、集電体13bの片面に分極性電極13aを形成したものを2枚、集電体13bの両面に分極性電極13a,13aを形成したものを2枚作成した。そして、図5に示す配列で、分極性電極13aを形成した集電体13bをそれぞれ並べ、各集電体13bの引き出し部分17を所定の向きに配置した状態で、それらの間にセパレータ15を介在させて重ね合わせ、所定の接着剤で各構成部材をそれぞれ接合した。その後、各引き出し部分17,17の先端部を収束して、それに露出電極18,18を溶接によりそれぞれ接合させて、複数の単位積層体11からなる積層物を製造した。更に、この積層物を、150℃、0.01〜10Paの減圧下で、約10時間乾燥させた。
【0052】
封止体20は、長手方向両端部に開口部23,23をそれぞれ設けたフィルム部材21と、開口部23のないフィルム部材21とを用い、これを上記積層物の表裏両面に重ね合わせて、一対のフィルム部材21,21の周縁部の左右両辺及び上辺、更に、開口部23の内周縁を、120℃、30kgf/cm2(約3MPa)で1分間、加熱加圧して封止した。次いで、一対のフィルム部材21,21の開口した下辺から電解液を注入して、各分極性電極13aに同電解液を含浸させた後、余剰の電解液を封止体20内から排出して、開口した下辺を他辺と同様の条件で加熱加圧して封止した。こうして、封止体20の全周が封止されると共に、開口部23の内周縁も封止された、電気化学デバイスを製造することができた。
【0053】
【表1】
【0054】
(実施例2)
上記実施例1と同様の材料を用いると共に、一対のフィルム部材21,21の周縁部及び開口部23の内周縁を、150℃、10atm(約1MPa)で1分間、加熱加圧したところ、100個中、100個の電気化学デバイスを、電解液が漏れたりすることなく製造することができた。
【0055】
(比較例1)
実施例1と同様の材料を用いて、図12に示す構造体を製造したところ(外装体3の端部からリード端子を引き出されてなる)、100個中、90個のみ製造できた。10個は、開口部の隙間Sから電解液が漏れ出した。
【0056】
(比較例2)
実施例1と同様の材料を用いて、図13に示す構造体を製造したところ(分極性電極5及び集電体5aに重なる部分に、リード取り出し部材7が設けられている)、100個中、20個のみ製造できた。80個は、圧着時の圧力でリード取り出し部材7が露出した部分から、電解液が噴出した。
【0057】
以上のように本発明の電気化学デバイスは、高いシール性を有しており、製造時の歩留まりを向上させることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の電気化学デバイスの第1実施形態を示しており、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図2】同電気化学デバイスの内部に封入される積層物の構造を示す斜視図である。
【図3】同電気化学デバイスの封止体を示しており、(a)はその平面図、(b)は他の例を示す平面図である。
【図4】本発明の電気化学デバイスの第2実施形態を示しており、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図5】同電気化学デバイスの内部に封入される積層物の構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の電気化学デバイスの第3実施形態を示しており、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図7】本発明の電気化学デバイスの第4実施形態を示しており、(a)は積層物封入前の状態を示す説明図、(b)は積層物封入後の状態を示す説明図である。
【図8】同電気化学デバイスの内部に封入される積層物の構造を示す斜視図である。
【図9】同電気化学デバイスの封止体の他形状を示す説明図である。
【図10】同電気化学デバイスの封止体の更に他の形状を示す説明図である。
【図11】本発明の電気化学デバイスの第5実施形態を示す説明図である。
【図12】従来の電気化学デバイスを示しており、(a)は平面図、(b)は要部拡大図である。
【図13】従来の他の電気化学デバイスを示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10,10a,10b,10c,10d,10e 電気化学デバイス
11 単位積層体
13 電極
15 セパレータ
16 重なり部分
17 引き出し部分
18 露出電極
20 封止体
23 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話,デジタルスチルカメラ,ノートパソコン等の電気機器や、ハイブリッド電気自動車においては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池、更に電気二重層キャパシタやレドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタなどの、電荷を蓄積することができる、いわゆる電気化学デバイスが広く用いられている。
【0003】
従来のこの種の電気化学デバイスとして、例えば、下記特許文献1には、リード端子が接続された正極シートと、セパレータと、同じくリード端子が接続された負極シートとを積層して構成された積層体を、非水電解液に含浸させた状態とし、この積層体を外装体に収納した電気化学デバイスが開示されている。図12には、特許文献1の電気化学デバイスが示されているが、前記外装体3は、2枚の金属ラミネート材1,2を貼り合わされると共に一側辺が開口した形状をなしており(図12(b)参照)、この外装体3に積層体のリード端子4を開口部から突出するように収納して、外装体3の開口部を熱溶着することにより、外装体3の左右両側片からリード端子4が引き出された状態で、開口部が封止されている(図12(a)参照)。
【0004】
また、下記特許文献2には、図13に示すように、一組の分極性電極5,5を、セパレータ6を介して相対向させると共に、各分極性電極5,5の外側に集電体5a,5aを介して、分極性電極5,5に重なるようにしてリード取り出し部材7,7を設け、これにシート部材8によって、リード取り出し部材7,7の一部が露出するようにラミネートして構成された電気二重層キャパシタが開示されている。
【特許文献1】特開2006−210201号公報
【特許文献2】特許第3005992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の電気化学デバイスの場合、外装体3の開口した一側辺からリード端子4を引き出した状態で、開口部が熱溶着されるので、図12(b)に示すように、リード端子4の左右両側部と、金属ラミネート材1,2内周との間に、段差のような隙間Sが生じ易く、外装体3の開口部をしっかりとシールさせることは難しい。そのため、この隙間Sから液漏れが生じ易く、また、外装体3内に水分等が浸入して性能が劣化するという不都合があった。
【0006】
また、上記特許文献2の場合は、電気化学デバイスとして機能する、分極性電極5,5及び集電体5a,5aに重なる部分に、リード取り出し部材7,7がそれぞれ設けられていて、これが露出するように構成されている。この場合、分極性電極5や集電体5aに対する悪影響を考慮すると、シート部材8のリード取り出し部材7の露出部分の周縁を、加熱加圧して溶着する手段を採用することは難しく、生産性や信頼性に問題が生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、積層体とこれを収容する封止体とを密閉状態で封止して、そのシール性を向上させることができると共に、生産性や信頼性のよい封止手段を採用することができる、電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電気化学デバイスは、一対の電極と、該一対の電極の間に介在されるセパレータと、一対の電極間に充填される電解質とを含む単位積層体を一層又は複数層積層して、封止体に封入してなる電気化学デバイスにおいて、前記一対の電極は、それぞれの電極の重なり部分と、該重なり部分から突出する引き出し部分とを有し、一方の極性の電極の引き出し部分と、他方の極性の電極の引き出し部分は、それぞれ異なる位置にあって、かつ、前記単位積層体が複数層積層されている場合には、同じ極性の電極の引き出し部分どうしが整合するように配置されており、前記各電極の引き出し部分は対応する露出電極にそれぞれ接続されており、前記封止体は、前記各露出電極に対応する位置に開口部が設けられていて、この開口部の内周縁が前記露出電極に接合され、前記露出電極が前記開口部から露出して端子部をなしていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、露出電極が、封止体の端縁から突出することなく、封止体の開口部から露出し、この開口部の内周縁が露出電極に接合されて気密性が保持されているので、露出電極の露出部における封止体と露出電極との間に段差のような隙間が生じにくく、高いシール性を得ることができ、封止体内に充填された電解液等が封止体から液漏れしたり、水分等が封止体内に侵入したりすることを防止できる。
【0010】
また、各露出電極が位置する部分は、電気化学デバイスとして機能する、一対の電極やセパレータが重なった部分ではないので、加熱加圧して溶着するなどの生産性や信頼性のよい封止手段を採用できる。
【0011】
本発明の電気化学デバイスにおいては、前記一方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の一方の主面に形成され、前記他方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の同一または他方の少なくとも一方の主面に形成されていることが好ましい。この態様によれば、一方の極性の露出電極と、他方の極性の露出電極とが、封止体のそれぞれ同一または異なる主面に露出しているので、電気化学デバイスを収容する電気部品や電気機器の接続端子を、収容部の同一または対向する面に配置することができる。
【0012】
本発明の電気化学デバイスにおいては、前記各露出電極を露出させる開口部が、各露出電極毎に、前記封止体の両主面に形成されていることが好ましい。この態様によれば、各露出電極がそれぞれ封止体の両主面に露出しているので、電気化学デバイスを収容する電気部品の接続端子の取付位置や構造の自由度を高めることができる。
【0013】
また、本発明の電気化学デバイスにおいては、前記封止体が、前記各露出電極が配置される部分に開口部を有し、一辺が開口された袋状又は両端面が開口した筒状をなしていて、前記単位積層体又はその複数積層物を前記開口した一辺又は端面から挿入して前記電解質を充填した状態で、前記各露出電極が配置された部分の開口部内周縁を前記各露出電極に接合し、前記開口した一辺又は端面を封止して構成されていることが好ましい。この態様によれば、予め袋状又は筒状に形成された封止体に、単位積層体又はその複数積層物を挿入して、封止することにより構成されるので、封止体の接合不良による気密性不良が更に発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気化学デバイスによれば、露出電極が、封止体の端縁から突出することなく、封止体の開口部から露出し、この開口部の内周縁が露出電極に接合されて気密性が保持されているので、露出電極の露出部における封止体と露出電極との間に隙間が生じにくく、高いシール性を得ることができ、封止体内の電解液等が液漏れしたり、水分等が封止体内に侵入したりすることを防止できる。
【0015】
また、各露出電極が位置する部分は、電気デバイスとして機能する、一対の電極やセパレータが重なった部分ではないので、加熱加圧して溶着するなどの生産性や信頼性のよい封止手段を採用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の電気デバイスは、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池、更に電気二重層キャパシタやレドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタなどの、電荷を蓄積すると共に、その電荷を必要に応じて放出するためのもので、携帯電話,デジタルスチルカメラ,ノートパソコン等の電気機器や、ハイブリッド電気自動車等に、好適に利用される。
【0017】
以下、本発明を電気化学デバイスの一種である電気化学キャパシタに適用した実施形態を挙げて説明する。
【0018】
図1〜3には、電気二重層キャパシタに適用した本発明の電気化学デバイスの第1実施形態が示されている。
【0019】
図1,2に示すように、この電気化学デバイス10aは、集電体13bと、その表面に形成された分極性電極13aとで構成される電極13を有している。ここで、集電体13bとしては、例えばアルミニウム箔、分極性電極の表面にプラズマ溶射法や薄膜形成法により形成された金属層、導電性ゴム、導電性カーボンペースト、金属繊維、金属メッシュ等が用いられる。なお、金属としては、アルミニウム,タンタル,ニオブ,チタン,ハフニウム,ジルコニウム,亜鉛,タングステン,ビスマス,アンチモン等の、いわゆるバルブ金属(弁金属、バルブメタルともいう)を用いることができる。また、分極性電極13aとしては、表面積の大きな活性炭等の多孔質材料や、炭素繊維等が用いられる。
【0020】
各電極13間には、セパレータ15が配置されている。セパレータ15は、正極の分極性電極13aと負極の分極性電極13aとを絶縁すると共に、一対の電極13,13間の電解液中のイオンを移動可能とする部材で、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース、アラミド樹脂等、或いは、それらを混合させた多孔性ポリマーフィルムや不織布等が用いられる。
【0021】
また、一対の電極13間には、図示しない電解質が充填される。電解質としては、例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(Et4NBF4)、や下式(i)で表される化合物等が採用される。
【0022】
R1−R2−R3−R4−N・・・(i)
(式中、R1〜R4は、不飽和結合,エーテル結合,アミド結合,又はエステル結合を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、分子中に窒素原子を有してもよい炭素数4〜6のシクロアルキル基を表す)
上記電解質がプロピレンカーボネート(PC)、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、γ−ブチロラクトン、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、スルホラン、3−メチルスルホラン等の溶媒により溶解されることにより、電解液が形成されて、これが一対の電極13,13間に充填されるようになっている。なお、弗素を含む電解質は、水分が侵入すると弗酸を生じ、集電体13bを腐食させる虞れがあるため、後述する封止体20で厳密に封入する必要がある。
【0023】
そして、一対の電極13と、それらの間に配置されたセパレータ15と、一対の電極13間に充填された電解質とによって、単位積層体11が構成されている。一対の電極13間に正負の電圧を引加すると、電解液中のイオンが移動して、分極性電極13aの活性炭等の表面に集合し、電気二重層が形成される。この電気二重層がキャパシタとなり、充電がなされる。
【0024】
単位積層体11は、最低限1層有する必要があるが、充電容量を増大させるために、単位積層体11を複数層積層して、1個の電気化学デバイスを構成することが好ましい。この実施形態の場合は、最外層に配置された1対の集電体13bは、その内側となる片面のみに分極性電極13aが形成されているが、内側に配置された2枚の集電体13bは、それらの両面に分極性電極13aが形成されて、例えば下面の分極性電極13aは下方の単位積層体11の構成層となり、上面の分極性電極は上方の単位積層体11の構成層となっている。こうして積層された電極13は、交互に極性の異なる電極となり、一対の電極13の間にセパレータ15が配置された単位積層体11を構成している。この実施形態では、合計3層の単位積層体11が積層された構造をなしている。
【0025】
また、図1(b)及び図2に示すように、集電体13bは、重なり部分16と、長手方向の一方に突出した引き出し部分17とを有している。そして、分極性電極13aは、集電体13bの重なり部分16のみに形成されている。なお、セパレータ15は、上記重なり部分16よりもやや広く形成されているが、引き出し部分17よりは短くなっている。このため、各電極13は、集電体13bが交互に反対方向に突出してなる引き出し部分17を有している。
【0026】
長手方向の片方に突出した引き出し部分17どうしは、一方の極の露出電極18に溶接、半田付け等の手段によって接続され、上記と反対側に突出した引き出し部分17どうしは、他方の極の露出電極18に同じく溶接、半田付け等の手段によって接続されている。
【0027】
上記のように構成された複数の単位積層体11,11からなる積層物は、封止体20に封入されている。この実施形態の場合、図3(a)に示すように、封止体20は、少なくとも前記単位積層体11よりも長く、かつ、幅広とされた一対のフィルム部材21,21からなっており、一方のフィルム部材21の長手方向両端部には、略長方形状をなした開口部23,23がそれぞれ設けられている。各開口部23,23は、一対のフィルム部材21,21により、複数の単位積層体11,11を挟み込んだときに、各電極13から引き出された露出電極18,18に整合する位置に形成されている。したがって、封止体20内に上記の複数の単位積層体11,11からなる積層物を封入したときに、図1(a),(b)に示すように、封止体20の一側面に形成された開口部23,23から、露出電極18,18が露出するようになっており、これにより各種電気機器等の接続端子を接続可能な、端子部が形成されている。
【0028】
なお、各フィルム部材21は、非透湿性と十分な強度を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、金属箔をラミネートされた合成樹脂フィルムなどが好ましく使用される。金属箔としては、アルミニウム等が好ましく、合成樹脂フィルムとしては、例えばポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、あるいはこれらの積層物(例えば、ナイロンをベース材とし、シーラントとしてポリプロピレンを積層させ、これらをポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂等で挟み込んだ構成)が好ましく用いられる。フィルム部材21を溶着によって接合する場合には、少なくとも内面に熱溶着可能な樹脂層が設けられるようにすることが好ましい。
【0029】
次に、上記構成からなる本発明の電気化学デバイスの製造方法について説明すると、まず、所定の組成でペースト状に形成された分極性電極材料を、集電体13bの片面又は両面(最外層に配置されるものは片面、内側に配置されるものは両面)に所定厚さで塗布し、分極性電極13aを形成する。こうして電極13を構成すると共に、これらの電極13,13間に所定のセパレータ15を配置する。そして、図2に示すように、各構成部材を所定長さ重なり合うようして、積層させて重なり部分16を形成する。その後、集電体13bの同じ側に引き出された整合する引き出し部分17どうしを、対応する露出電極18に溶接、半田付け等の手段によって接合する。
【0030】
次に、上記工程により接合された複数の単位積層体からなる積層物を、図3(a)に示す一対のフィルム部材21,21によって挟み込んで、一方のフィルム部材21の開口部23,23に露出電極18,18をそれぞれ整合させると共に、一対のフィルム部材21,21の周縁部どうしを重ね合わせる。その状態で、図1(a)の二点鎖線で示すように、周縁部の左右両辺及び上辺を溶着すると共に、開口部23,23の内周縁も各露出電極18に接合させ、更に開口した下辺から電解液を注入して、これを各分極性電極13aに含浸させた後、同下辺を溶着する。これにより、封止体20の全周が封止されると共に、開口部23,23の内周縁も封止され、更に、同開口部23,23から露出電極18,18を露出させた状態にして、これを端子部とした電気化学デバイス10を製造することができる。
【0031】
なお、封止体20は、図3(b)に示すように、縦長の一枚のフィルム部材21aの中間部を、折曲線Fを介して折り曲げて、その周縁部を溶着して形成してもよい。
【0032】
上記のように製造された本発明の電気化学デバイス10aによれば、露出電極18が、封止体20の端縁から突出することなく、封止体20の開口部23から露出し、この開口部23の内周縁が露出電極18に接合されて気密性が保持されているので、前述した特許文献1のように(図12参照)、露出電極18の露出部における封止体20と露出電極18との間に段差のような隙間が生じにくく、高いシール性を得ることができ、封止体20内に充填された電解液等が封止体から液漏れしたり、水分等が封止体20内に侵入したりすることを防止できる。
【0033】
また、この電気化学デバイス10aにおいては、一対の電極13に重なり部分16と、引き出し部分17とを設けて、重なり部分16に重ならない位置に、露出電極18が配置されている。すなわち、各露出電極18が位置する部分は、電気化学デバイスとして機能する、一対の電極13,13やセパレータ15が重なった部分ではないので、加熱加圧して溶着するなどの生産性や信頼性のよい封止手段を採用することができる。
【0034】
更に、この実施形態においては、各露出電極18,18を露出させる開口部23,23が、封止体20の同じ主面に形成されているので、電気化学デバイスを収容する電気部品や電気機器の接続端子を、収容部の同じ面に配置することができる。
【0035】
なお、電気部品等の接続端子に端子部が接続された電気化学デバイス10aは、電界が印加されると、各単位積層体11の一対の分極性電極13a,13aの界面に、電解液中のプラスイオン又はマイナスイオンが吸着して、電気二重層が形成されて充電が行われることになる。
【0036】
図4及び図5には、本発明の電気化学デバイスの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0037】
この実施形態の電気化学デバイス10bは、前記第2実施形態の電気化学デバイス10aと比べて、露出電極18と封止体20の開口部の位置が異なるだけで、他の部分は同じである。
【0038】
すなわち、図4(a)、(b)に示すように、この電気化学デバイス10bの封止体20は、上面側のフィルム部材21の長手方向一端部(図中左側)に開口部23が形成されていると共に、下面側のフィルム部材21の長手方向他端部(図中右側)に開口部23が形成されている。
【0039】
また、図5を併せて参照すると、一方の露出電極18(図中左側)は、その下面に集電体13bの引き出し部17が接合されており、他方の露出電極18(図中右側)は、その上面に集電体13bの引き出し部17が接合されている。その結果、一方の極性の露出電極18と、他方の極性の露出電極18とが、封止体20のそれぞれ異なる主面に露出している。これによれば、電気化学デバイス10を収容する電気部品や電気機器の接続端子を、収容部の対向する面に配置することができる。
【0040】
図6(a),(b)には、本発明の電気化学デバイスの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0041】
この実施形態の電気化学デバイス10cは、前記第1,第2の実施形態の電気化学デバイス10a,10bと比べ、封止体20の形状が異なり他の部分は同じである。すなわち、この電気化学デバイス10cの封止体20は、一対のフィルム部材21,21の長手方向両端部にそれぞれ開口部23,23が設けられており、それにより各露出電極18がそれぞれ封止体20の両主面に露出するようになっている。その結果、電気化学デバイス10を収容する電気部品の接続端子の取付位置や構造の自由度を高めることができる。
【0042】
図7〜9には、本発明の電気化学デバイスの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0043】
この実施形態の電気化学デバイス10dは、前記第1〜3の電気化学デバイスに比べて、露出電極18の位置と、封止体の形状が異なっている。すなわち、図8に示すように、各集電体13bは、その上辺の右側部分又は左側部分が上方に突出して引き出し部17をなしており、その左右突出位置が1枚置きに交互に逆にされて、1枚置きに整合するようになっている。そして、右側部分に突出した引き出し部17どうしが対応する右側の露出電極18に接合され、左側部分に突出した引き出し部17どうしが対応する左側の露出電極18に接合されている。
【0044】
また、図7(a)に示すように、この電気化学デバイス10dの封止体20aは、一辺が開口した袋状をなしている。この袋状の封止体20aの開口部周縁には、その幅方向に沿って、2つの開口部23,23が並列して形成されている。
【0045】
そして、図8に示した複数の単位積層体からなる積層物を、封止体20aの開口した上辺から挿入した後、電解液Lを充填して上辺を溶着することにより、封止体20aの上辺が封止されて、図7(b)に示すような電気化学デバイス10dが製造される。
【0046】
この実施形態によれば、予め袋状に形成された封止体20aに、複数の単位積層体からなる積層物を挿入して、封止することにより構成されるので、封止体20aの接合不良による気密性不良が更に発生しにくくなる。
【0047】
また、袋状の封止体20aは、図9に示すように、長手方向両端部に開口部23,23をそれぞれ設けたものであってもよい。更に、封止体としては、図10に示すように、両端部が開口した円筒状の封止体20bを採用してもよい。
【0048】
図11には、本発明の電気化学デバイスの第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0049】
この実施形態の電気化学デバイス10eは、前述した他の実施形態と同様に、所定数の単位積層体11を封入してなる一方向に長く伸びる封止体20を有している。そして、この実施形態では、この封止体20の露出電極18,18がそれぞれ露出した長手向両端部を、図11に示すように、内側にそれぞれ折り返された形状をなしている。なお、この実施形態では、封止体20の長手方向両端部は、共に封止体20の表面側に折り返されているが、どちらか一方を封止体20の裏面側に折り返してもよい。この態様によれば、封止体20の長手方向両端部を折り返したことにより、封止体20をなるべく短くすることができ、電気化学デバイス10eのコンパクト化を図ることが可能となる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
単位積層体11の積総数が異なる他は、図1、2に示すものと同様な電気化学デバイスを作製した。
【0051】
すなわち、下記表1に示す組成の分極性電極材料を混練してペースト状にし、これに水を加えてペースト濃度を37%としたペーストを作製し、集電体13b上に100μmの厚みで塗工して、分極性電極13aを形成した。そして、集電体13bの片面に分極性電極13aを形成したものを2枚、集電体13bの両面に分極性電極13a,13aを形成したものを2枚作成した。そして、図5に示す配列で、分極性電極13aを形成した集電体13bをそれぞれ並べ、各集電体13bの引き出し部分17を所定の向きに配置した状態で、それらの間にセパレータ15を介在させて重ね合わせ、所定の接着剤で各構成部材をそれぞれ接合した。その後、各引き出し部分17,17の先端部を収束して、それに露出電極18,18を溶接によりそれぞれ接合させて、複数の単位積層体11からなる積層物を製造した。更に、この積層物を、150℃、0.01〜10Paの減圧下で、約10時間乾燥させた。
【0052】
封止体20は、長手方向両端部に開口部23,23をそれぞれ設けたフィルム部材21と、開口部23のないフィルム部材21とを用い、これを上記積層物の表裏両面に重ね合わせて、一対のフィルム部材21,21の周縁部の左右両辺及び上辺、更に、開口部23の内周縁を、120℃、30kgf/cm2(約3MPa)で1分間、加熱加圧して封止した。次いで、一対のフィルム部材21,21の開口した下辺から電解液を注入して、各分極性電極13aに同電解液を含浸させた後、余剰の電解液を封止体20内から排出して、開口した下辺を他辺と同様の条件で加熱加圧して封止した。こうして、封止体20の全周が封止されると共に、開口部23の内周縁も封止された、電気化学デバイスを製造することができた。
【0053】
【表1】
【0054】
(実施例2)
上記実施例1と同様の材料を用いると共に、一対のフィルム部材21,21の周縁部及び開口部23の内周縁を、150℃、10atm(約1MPa)で1分間、加熱加圧したところ、100個中、100個の電気化学デバイスを、電解液が漏れたりすることなく製造することができた。
【0055】
(比較例1)
実施例1と同様の材料を用いて、図12に示す構造体を製造したところ(外装体3の端部からリード端子を引き出されてなる)、100個中、90個のみ製造できた。10個は、開口部の隙間Sから電解液が漏れ出した。
【0056】
(比較例2)
実施例1と同様の材料を用いて、図13に示す構造体を製造したところ(分極性電極5及び集電体5aに重なる部分に、リード取り出し部材7が設けられている)、100個中、20個のみ製造できた。80個は、圧着時の圧力でリード取り出し部材7が露出した部分から、電解液が噴出した。
【0057】
以上のように本発明の電気化学デバイスは、高いシール性を有しており、製造時の歩留まりを向上させることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の電気化学デバイスの第1実施形態を示しており、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図2】同電気化学デバイスの内部に封入される積層物の構造を示す斜視図である。
【図3】同電気化学デバイスの封止体を示しており、(a)はその平面図、(b)は他の例を示す平面図である。
【図4】本発明の電気化学デバイスの第2実施形態を示しており、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図5】同電気化学デバイスの内部に封入される積層物の構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の電気化学デバイスの第3実施形態を示しており、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図7】本発明の電気化学デバイスの第4実施形態を示しており、(a)は積層物封入前の状態を示す説明図、(b)は積層物封入後の状態を示す説明図である。
【図8】同電気化学デバイスの内部に封入される積層物の構造を示す斜視図である。
【図9】同電気化学デバイスの封止体の他形状を示す説明図である。
【図10】同電気化学デバイスの封止体の更に他の形状を示す説明図である。
【図11】本発明の電気化学デバイスの第5実施形態を示す説明図である。
【図12】従来の電気化学デバイスを示しており、(a)は平面図、(b)は要部拡大図である。
【図13】従来の他の電気化学デバイスを示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10,10a,10b,10c,10d,10e 電気化学デバイス
11 単位積層体
13 電極
15 セパレータ
16 重なり部分
17 引き出し部分
18 露出電極
20 封止体
23 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、該一対の電極の間に介在されるセパレータと、一対の電極間に充填される電解質とを含む単位積層体を一層又は複数層積層して、封止体に封入してなる電気化学デバイスにおいて、
前記一対の電極は、それぞれの電極の重なり部分と、該重なり部分から突出する引き出し部分とを有し、
一方の極性の電極の引き出し部分と、他方の極性の電極の引き出し部分は、それぞれ異なる位置にあって、かつ、前記単位積層体が複数層積層されている場合には、同じ極性の電極の引き出し部分どうしが整合するように配置されており、前記各電極の引き出し部分は対応する露出電極にそれぞれ接続されており、
前記封止体は、前記各露出電極に対応する位置に開口部が設けられていて、この開口部の内周縁が前記露出電極に接合され、前記露出電極が前記開口部から露出して端子部をなしていることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記一方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の一方の主面に形成され、前記他方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の同一または他方の少なくとも一方の主面に形成されている請求項1記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記各露出電極を露出させる開口部が、各露出電極毎に、前記封止体の両主面に形成されている請求項1記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記封止体が、前記各露出電極が配置される部分に開口部を有し、一辺が開口された袋状又は両端面が開口した筒状をなしていて、前記単位積層体又はその複数積層物を前記開口した一辺又は端面から挿入して前記電解質を充填した状態で、前記各露出電極が配置された部分の開口部内周縁を前記各露出電極に接合し、前記開口した一辺又は端面を封止して構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の電気化学デバイス。
【請求項1】
一対の電極と、該一対の電極の間に介在されるセパレータと、一対の電極間に充填される電解質とを含む単位積層体を一層又は複数層積層して、封止体に封入してなる電気化学デバイスにおいて、
前記一対の電極は、それぞれの電極の重なり部分と、該重なり部分から突出する引き出し部分とを有し、
一方の極性の電極の引き出し部分と、他方の極性の電極の引き出し部分は、それぞれ異なる位置にあって、かつ、前記単位積層体が複数層積層されている場合には、同じ極性の電極の引き出し部分どうしが整合するように配置されており、前記各電極の引き出し部分は対応する露出電極にそれぞれ接続されており、
前記封止体は、前記各露出電極に対応する位置に開口部が設けられていて、この開口部の内周縁が前記露出電極に接合され、前記露出電極が前記開口部から露出して端子部をなしていることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記一方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の一方の主面に形成され、前記他方の極性の露出電極を露出させる開口部が前記封止体の同一または他方の少なくとも一方の主面に形成されている請求項1記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記各露出電極を露出させる開口部が、各露出電極毎に、前記封止体の両主面に形成されている請求項1記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記封止体が、前記各露出電極が配置される部分に開口部を有し、一辺が開口された袋状又は両端面が開口した筒状をなしていて、前記単位積層体又はその複数積層物を前記開口した一辺又は端面から挿入して前記電解質を充填した状態で、前記各露出電極が配置された部分の開口部内周縁を前記各露出電極に接合し、前記開口した一辺又は端面を封止して構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の電気化学デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−300467(P2008−300467A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142793(P2007−142793)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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