説明

電気機器の樹脂製キャビネット

【課題】ネジの長さに拘わらず、ネジ止めを可能とすることのできるボスを具えた電気機器の樹脂製キャビネットを提供する。
【解決手段】電気機器の樹脂製キャビネット20であって、内面から突設された立壁60と、該立壁60からネジ70の挿入される筒体32を突設し、該筒体32の底33が立壁60の一部により構成されるボス30と、を有し、ボス30の底33は、挿入されるネジ70により貫通可能としたものである。立壁60は、ボスの底33となる部分が他の部分よりも薄肉に形成することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器等の樹脂製キャビネットに関するものであり、より具体的には、他の部材をネジの長さに拘わりなくネジ止めすることのできるネジ止め用ボスを有する樹脂製キャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄型液晶表示装置の如き電気機器の筺体には、樹脂製キャビネットが用いられている。
樹脂製キャビネットは、キャビネットどうしをネジ止めしたり、内部の部材をネジ止めするためのボスが設けられている。
【0003】
ネジ止め用ボスは、キャビネットの内面に直接形成すると、樹脂製キャビネットの外面にひけ等が生じることがある。特に、外面に光沢を有する樹脂製キャビネットでは、光沢にムラが生じてしまうことがある。そこで、一般的に、ネジ止め用のボスは、樹脂製キャビネットの内面に突設された立壁からネジ穴を有する筒体を一体に成形することで設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−256607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネジ止めにより取り付けられる部材の取付面の厚さが異なると、その厚さに適したネジを夫々準備する必要があり、取付作業が煩雑となる。そこで、すべてのネジ止め用ボスを長く形成することも考えられるが、樹脂製キャビネットの大型化に繋がるため望ましくない。
【0006】
本発明の目的は、ネジの長さに拘わらず、ネジ止めを可能とすることのできるボスを具えた電気機器の樹脂製キャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電気機器の樹脂製キャビネットは、
電気機器の樹脂製キャビネットであって、
内面から突設された立壁と、
該立壁からネジの挿入される筒体を突設し、該筒体の底が立壁の一部により構成されるボスと、
を有し、ボスの底は、挿入されるネジにより貫通可能としたものである。
【発明の効果】
【0008】
ボスの底をネジで貫通可能としたことにより、ボスに他の樹脂製キャビネットや他の部材をネジ止めする際に、ボスの長さよりも侵入長さの長いネジを用いることができる。
従って、樹脂製キャビネットどうしや他の部材をネジ止めするために必要なネジを共通化することができ、部品種類の削減、組立工程の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施例である樹脂製キャビネットを背面側から見た部分斜視図である。
【図2】図2は、図1の樹脂製キャビネットを線A−Aに沿って切断し、矢印方向に見た断面図である。
【図3】図3は、肉厚の部材をボスに取り付けた断面図である。
【図4】図4は、薄肉の部材をボスに取り付けた断面図であって、ネジがボス底を貫通している状態を示している。
【図5】本発明の一実施例である樹脂製キャビネットを用いた電気機器の縦断面図である。
【図6】図5の線B−Bで切断し、矢印方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例について、電気機器として薄型液晶表示装置(10)、樹脂製キャビネットとして薄型液晶表示装置(10)の筺体を構成する前キャビネット(20)を用いて説明を行なう。なお、本発明は、薄型液晶表示装置(10)の前キャビネット(20)に限定されるものではなく、その他の電気機器の樹脂製キャビネットに適用できることは勿論である。
【0011】
薄型液晶表示装置(10)は、図1、図2、図5及び図6に示すように、液晶パネル(11)(図5及び図6)を視認可能な矩形の窓(21)が形成された矩形のフレーム(22)からなる前キャビネット(20)と、該前キャビネット(20)の背面側に係合、ネジ止め等により係合される後キャビネット(16)から構成することができる。
【0012】
本発明の一実施例である前キャビネット(20)について、図1及び図2を用いてさらに詳細に説明する。
前キャビネット(20)は、フレーム(22)のフラットな前面(23)と、該前面(23)の窓(21)側と外側が夫々後方に向けて屈曲した内枠(24)と外枠(25)を具えている。
前面(23)の裏面には、図1及び図2に示すように複数のボス(30)(40)(50)や係合穴(52)、係止用プレート(54)が形成されており、これらボス(30)(40)(50)や係合穴(52)、係止用プレート(54)には、図5及び図6に示すように、液晶パネル(11)やスピーカ(12)、その他の部材(13)(14)が取り付けられ、また、後キャビネット(16)がネジ止めされている。
【0013】
前キャビネット(20)の外部から視認可能な面、即ち、フレーム(22)の前面(23)、内枠(24)及び外枠(25)は、光沢を有する面となるよう鏡面仕上げ等の光沢仕上げを施すことができる。例えば、光沢仕上げは、成形金型を研磨することで行なうことができる。
【0014】
図1及び図2に示すように、一部のボス(30)(40)は、フレーム(22)の裏面から突設された立壁(60)に形成されている。立壁(60)には係止用プレート(54)がさらに設けられている。
【0015】
具体的実施例として、図示の立壁(60)は、フレーム(22)から突設された両側壁(61)(61)と、該両側壁(61)(61)どうしの下端を連繋するようフレーム(22)から略垂直に突設された垂直壁(62)と、該垂直壁(62)の先端から斜め上方に向けて傾斜するよう形成された傾斜壁(63)とを有する形状であり、上面側が開口している。
【0016】
ボス(30)(40)は、図1及び図2に示すように、内周にボス穴(31)(41)の形成された筒体(32)(42)であって、その下端は、立壁(60)を構成する傾斜壁(63)から一体に立設されている。
【0017】
なお、上記では、立壁(60)は傾斜壁(63)を有する構造とし、図2に示すように、傾斜壁(63)にボス(30)(40)を形成しているが、これは、立壁(60)を成形する金型を抜きやすくするためである。傾斜壁(63)を垂直壁(62)からフレーム(12)と平行となるよう形成し、ボス(30)(40)を設けることができることは勿論である。
【0018】
また、ボス(30)(40)は、複数のリブ(38)(48)により立壁(60)と連繋し、強度を高めるようにしている。
【0019】
一方のボス、即ち図2に断面して示すボス(30)の底面となるボス底(33)は、立壁(60)の一部により構成している。このボス底(33)は、立壁(60)の他の部分に比して肉厚が薄くなるように形成される。
具体的実施例として、図2に示すように、立壁(60)の厚さをd1、ボス底(33)の厚さをd2としたときに、d1>d2となる関係にある。
【0020】
立壁(60)の厚さd1は、ボス(30)や係止用プレート(54)に部材が取り付けられたときに破損しない厚さとすることが好適であり、望ましくは、厚さd1は2mm以上とする。
【0021】
ボス底(33)の厚さd2は、ボス(30)の高さよりも侵入長さの長いネジ(70)を螺合したときに、図4に示すように、ネジ(70)の先端がボス底(33)を突き破り貫通可能な厚さとする。
より具体的には、ボス底(33)の厚さd2は、1mm以下とすることが好適であり、0.2mm以上0.5mm以下とすることが望ましい。0.2mm未満に構成することも可能であるが、0.2mm未満とすると、前キャビネット(20)を金型で成形する際に、溶融樹脂がボス底(33)に流れ込み難く、また、金型どうしが接触し、金型が損傷してしまう虞があるからである。さらに、ボス底(33)が1mm、場合によっては0.5mmを超える厚さとなると、ネジ(70)によってボス底(33)を貫通することができないことがあり、無理にネジ締めした結果、ボス(30)や立壁(60)に亀裂等の破損を生じる虞があるからである。
【0022】
前キャビネット(20)は、射出成形により作製することができる。本発明に好適な樹脂材料として、ABS樹脂、ポリカABS樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂を例示できるが、これら樹脂材料に限定されるものではない。
【0023】
上記構成の前キャビネット(20)は、射出成形機(図示せず)を用いて成形することができ、1又は複数の固定金型と可動金型との間に形成された空間に溶融樹脂を射出、冷却し、樹脂材料を硬化することにより成形することができる。
【0024】
図3及び図4は、上記により作製された前キャビネット(20)に部材(13)(14)をネジ(70)により固定した状態を示している。
【0025】
部材(13)(14)の取付けに用いられるネジ(70)は、タップネジを例示することができる。これにより、ボス穴(31)にネジ溝が刻設されていない場合でも、ネジ溝を形成しつつネジ止めを行なうことができる。
【0026】
図3は、肉厚の部材(13)をボス(30)に取り付けた状態を示しており、ネジ(70)の侵入長さに比して、ボス穴(31)の方が深いから、ネジ(70)の先端はボス底(33)に接することなく、部材(13)をネジ止めできる。
【0027】
図4は、薄肉の部材(14)をボス(30)に取り付けた状態を示しており、ネジ(70)の侵入長さが、ボス穴(31)よりも長いため、ネジ(70)の先端がボス底(33)を貫通していることがわかる。ネジ(70)により突き破られたボス底(33)は、脱落するか、図4中、符号(34)で示すように貫通した孔(35)の周囲に残留する。また、何れの場合も、貫通した孔(35)には、ネジ(70)により突き破られた痕跡(36)が残る。
【0028】
図4の如く、部材(14)が薄肉であるために、ネジ(70)の侵入長さが、ボス穴(31)よりも長くなった場合でも、ネジ(70)の先端がボス底(33)を突き破って貫通する構成としているから、部材(14)のネジ止めに複数種類のネジを準備する必要がなく、部品の共通化を図ることができる。
【0029】
図5及び図6は、薄型液晶表示装置(10)の要部断面図であり、図に示すように、同じ長さのネジ(70)を用いて、薄肉の部材(14)、具体的には操作ボタンの配備された基板や、肉厚の部材(13)、具体的には後キャビネット(16)をボス(30)(40)に取り付けできていることがわかる。
【0030】
なお、図5では、立壁(60)の開口側の先端(64)にスピーカ(12)等の内装される部品が、収容した金属フレーム部材(12a)により位置決めされている。
【0031】
この立壁(60)の先端(64)は、図1に示すように、全体的に同じ高さではなく、一部に突片(65)が延設された形状とすることが望ましい。図示の実施例では、突片(65)は、立壁(60)の両側壁(61)(61)と傾斜壁(63)の一部に設けられている。
【0032】
立壁(60)を全体的に同じ高さにしておくのではなく、一部に突片(65)を形成しておくことで、前キャビネット(20)の成形のばらつきや歪み等によって、立壁(60)の高さを変更する場合、突片(65)の部分のみを修正したり、突片(65)に該当する金型の高さを変えるだけで調整が可能とできる利点がある。
【0033】
勿論、突片(65)は、立壁(60)の傾斜壁(63)に被らないように両側壁(61)(61)のみに形成することもできるし、傾斜壁(63)の先端のみに形成することもできる。また、立壁(60)の形状は、図示のものに限定されるものではなく、瘤状の突起等とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ネジの長さに拘わりなくネジ止めすることのできるネジ止め用ボスを有する電気機器の樹脂製キャビネットとして有用である。
【符号の説明】
【0035】
(10) 液晶表示装置
(13) 肉厚の部材
(14) 薄肉の部材
(20) 前キャビネット
(22) フレーム
(30) ボス
(31) ボス穴
(32) 筒体
(33) ボス底
(36) 痕跡
(60) 立壁
(61) 側壁
(62) 垂直壁
(63) 傾斜壁
(65) 突片
(70) ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の樹脂製キャビネットであって、
内面から突設された立壁と、
該立壁からネジの挿入される筒体を突設し、該筒体の底が立壁の一部により構成されるボスと、
を有し、ボスの底は、挿入されるネジにより貫通可能である、
ことを特徴とする電気機器の樹脂製キャビネット。
【請求項2】
立壁は、ボスの底となる部分が他の部分よりも薄肉に形成される請求項1に記載の電気機器の樹脂製キャビネット。
【請求項3】
立壁は、厚さは2mm以上であり、ボスの底となる部分の厚さは0.2mm以上1mm以下である請求項1又は請求項2に記載の電気機器の樹脂製キャビネット。
【請求項4】
立壁の先端は、内装される部品に当接するよう構成されており、前記立壁の先端に突片を形成してなる請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電気機器の樹脂製キャビネット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−178522(P2012−178522A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41771(P2011−41771)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】