説明

電池均等化装置および方法

【課題】複数の電池セルを接続して構成される組電池において、電力損失が少なくかつ所定の精度で電圧を均等に追い込むための収束時間を短かくできる均等化制御を実現する。
【解決手段】組電池100は、複数の電池セル101を例えば直列に接続して構成される。第1の均等化制御部102は、複数の電池セル101のうちの1つ以上の電池セル101から放電される電力を1つ以上の他の電池セル101に充電させることによって複数の電池セル101の電圧または電力を均等化させる。第2の均等化制御部103は、複数の電池セル101から選択した1つ以上の電池セル101の電力を放電消費させることによって複数の電池セル101の電圧または電力を均等化させる。電池監視部104は、複数の電池セル101の状態を監視する。均等化切替制御部105は、電池監視部104が監視した複数の電池セル101の状態に基づいて、第1の均等化制御部102または第2の均等化制御部103のいずれかを選択して動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを接続して構成される組電池の電圧または蓄電量の均等化を制御する電池均等化装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、あるいはハイブリッドビークル、ハイブリッドエレクトリックビークルなどと呼ばれる、エンジンに加えてモータ(電動機)を動力源として備えた車両または輸送機械(以下、「車両等」と称する)が実用化されている。さらには、エンジンを備えずモータのみで車両を駆動する電気自動車も実用化されつつある。それらのモータを駆動する電源として、小型、大容量の特徴を有するリチウムイオン電池などが多く使用されるようになってきている。そして、このような用途においては、複数の電池セルが例えば直列に接続されて電池ブロックが構成され、さらにこの電池ブロックを組み合わして接続される組電池として供給される場合がある。電池セルの直列接続により車両のモータを駆動するのに必要な高電圧が得られ、電池ブロックをさらに直列や並列に組み合わして接続することにより必要な電流容量やさらなる高電圧が得られる。
【0003】
この場合、リチウムイオン電池などは温度による特性の変化が大きく、電池が使用される環境の温度によって電池の残存容量や充電効率も大きく変化する。自動車のような使用環境ではなおさらである。
【0004】
この結果、電池ブロックを構成する電池セル等において、各セル等の残存容量および出力電圧にばらつきが生じる。各セル等が発生する電圧にばらつきが発生すると、1つのセルの電圧が駆動可能な閾値を下回ったような場合に、全体の電源供給を止めたり抑制したりする必要が生じ、電力効率が低下してしまう。このため、各セルの電圧または蓄電量の均等化を行う電池均等化制御が必要となる。さらには、電池ブロック間でも電圧または容量の均等化を行う必要も生じる。
【0005】
電池均等化制御の第1の従来技術として、過充電(または過放電)になった電池セルを電池セルと並列に接続した抵抗にバイパスさせ放電させることで各電池セルの電圧をそろえる、いわゆるパッシブ方式の電池均等化制御技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献3、特許文献4に記載の技術)。
【0006】
この第1の従来技術は、抵抗バイパスによって電力を消費させて放電を行うため、電池セルの電圧を短い時間で目的の電圧まで降下させることができる。しかし、放電された電力は抵抗によって消費されてしまうため、電力損失が大きいという問題点を有していた。
【0007】
電池均等化制御の第2の従来技術として、放電が必要な電池セルからの放電電力を、インダクタまたはトランスを用いて構成されるコンバータ回路によって、充電が必要な電池セルに充電させる、いわゆるアクティブ方式の電池均等化制御技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2に記載の技術)。
【0008】
この第2の従来技術では、ある電池セルからの放電電力が他の電池セルへの充電電力として使用されるため、電力損失が少ないという特徴を有する。しかし、放電側の電池セルの電圧と充電側の電池セルの電圧を所定の精度で均等に追い込むためには、長い収束時間が必要になってしまうという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−333762号公報
【特許文献2】特開2008−35680号公報
【特許文献3】特開2010−517504号公報
【特許文献4】特開2010−148353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電力損失が少なくかつ所定の精度で電圧を均等に追い込むための収束時間を短かくできる組電池の均等化制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
態様の一例は、複数の電池セルを接続して構成される組電池における複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる電池均等化装置として構成され、複数の電池セルのうちの1つ以上の電池セルから放電される電力を複数の電池セルのうちの1つ以上の他の電池セルに充電させることによって複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる第1の均等化制御部と、複数の電池セルから選択した1つ以上の電池セルの電力を放電消費させることによって複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる第2の均等化制御部と、複数の電池セルの状態を監視する電池監視部と、電池監視部が監視した複数の電池セルの状態に基づいて、第1の均等化制御部または第2の均等化制御部のいずれかを選択して動作させる均等化切替制御部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力損失が少なくかつ所定の精度で電圧を均等に追い込むための収束時間が短い組電池の均等化制御を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の基本構成図である。
【図2】本実施形態の動作説明図である。
【図3】本実施形態の全体システム構成図である。
【図4】本実施形態の詳細構成図である。
【図5】本実施形態の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】アクティブバランス回路の他の実施形態の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の基本構成図である。
組電池100は、複数の電池セル101を接続して構成される。具体的な構成例は、図3において後述するが、複数の電池セル101が例えば直列に接続されて電池ブロックが構成され、さらにこの電池ブロックを組み合わして組電池100が構成されてよい。
【0015】
第1の均等化制御部102は、複数の電池セル101のうちの1つ以上の電池セル101から放電される電力を1つ以上の他の電池セル101に充電させることによって複数の電池セル101の電圧または電力を均等化させる。この第1の均等化制御部102は例えば、複数の電池セル101のうちの1つ以上の電池セル101から放電される電力を、スイッチング素子、トランス、および整流回路を介して、複数の電池セル101のうちの1つ以上の他の電池セル101に充電させるコンバータ回路である。あるいは、この第1の均等化制御部102は例えば、複数の電池セル101のうちの1つ以上の電池セル101から放電される電力を、スイッチング素子、インダクタ、および整流回路を介して、複数の電池セル101のうちの1つ以上の他の電池セル101に充電させるコンバータ回路である。
【0016】
第2の均等化制御部103は、複数の電池セル101から選択した1つ以上の電池セル101の電力を放電消費させることによって複数の電池セル101の電圧または電力を均等化させる。この第2の均等化制御部は例えば、複数の電池セルにそれぞれ並列に接続され、それぞれバイパススイッチおよび抵抗素子とからなる複数のバイパス放電回路である。
【0017】
電池監視部104は、複数の電池セル101の状態を監視する。この電池監視部104は、例えば各電池セル101の両端の電圧を測定する。
均等化切替制御部105は、電池監視部104が監視した複数の電池セル101の状態に基づいて、第1の均等化制御部102または第2の均等化制御部103のいずれかを選択して動作させる。より具体的には、均等化切替制御部105は例えば、次のような動作を実行する。すなわち、均等化切替制御部105は、複数の電池セル101の電圧または電力が均等でない度合いが第1の閾値および第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であって均等化が必要であると判定した後に、第1の均等化制御部102を動作させる。その後、均等化切替制御部105は、均等でない度合いが第2の閾値よりも小さくなったときに第1の均等化制御部102の動作を停止させて第2の均等化制御部103を動作させる。その後、均等化切替制御部105は、均等でない度合いが第1の閾値よりも小さくなったときに第2の均等化制御部の動作を停止させて均等化制御を終了する。ここで、均等化の度合いは例えば、電池監視部104において監視された各電池セル101の電圧値の最大値と最小値の差である。この場合、均等化切替制御部105は、第2の均等化制御部103を動作させるときに、上記最大値に対応する電池セル101を選択的に放電消費させる。より具体的には、均等化切替制御部105は例えば、第2の均等化制御部104を動作させるときに、電池監視部104において監視された電圧値が最大値を示す電池セルに対応する前述のバイパス放電回路内のスイッチ素子をオンする。
【0018】
以上のように、本実施形態では例えば、複数の電池セル101の電圧または電力が均等でない度合いが大きい(第2の閾値以上である)ときには、第1の均等化制御部102が動作する。第1の均等化制御部102は、1つ以上の電池セル101から放電される電力を1つ以上の他の電池セル101に充電させる方式で均等化制御を実施するため、電力損失が少ない状態で電池セル101の均等化を実施することができる。
【0019】
この動作により、均等でない度合いが小さくなる(第1の閾値以上第2の閾値未満になる)と、第1の均等化制御部102の動作が停止させられて第2の均等化制御部103が動作させられる。第2の均等化制御部103は例えば、放電すべき電池セル101の電力を抵抗素子等を介してバイパス放電させる回路であるため、急速な放電動作が可能であると共に制御が容易であるため、精度が良くなる。。
【0020】
第2の均等化制御部103は原理的には電力損失が大きい方式であるが、第2の均等化制御部103が動作するのは均等でない度合いが小さく電池セル101間の電圧または電力容量の差が小さい期間であるため、本実施形態においては、第2の均等化制御部103の動作による電力損失は小さく抑えることが可能となる。
【0021】
図2は、本実施形態の動作説明図である。
図2(a)は、本実施形態における第1の均等化制御部102に相当するいわゆるアクティブ方式の均等化制御のみを実施した場合の従来技術における動作を示す図である。電池セル101の電圧差(最大値と最小値の差)が大きい状態から均等化制御が開始された後、電圧差が均等化の目標範囲201に到達するまでの時間、すなわち、電圧差が第1の閾値(図中、「閾値1」)になるまでの時間tend は、長時間を要する。これは、電圧差が第2の閾値(図中、「閾値2」)付近まで収束した付近から、放電されるべき電池セル101からの放電量が少なくなってくるために充電されるべき電池セル101への充電量が少なくなり、目標範囲201に完全に収束するまでに長い時間がかかるためである。
【0022】
また、図示はしていないが、本実施形態における第2の均等化制御部102に相当するいわゆるパッシブ方式の均等化制御のみを実施した場合の従来技術では、電池セル101の電圧差が均等化の目標範囲に到達するまでの時間は比較的短くすむが、電圧差が大きい場合に大きな放電電力が失われるため、組電池が車両を駆動する時間性能等が低下してしまう。
【0023】
図2(b)は、図1の構成を基本とする本実施形態における動作を示す図である。前述したように、本実施形態では、電池セル101の電圧差が大きい第2の閾値(図中「閾値2」)に達するまでは第1の均等化制御部102によるいわゆるアクティブ方式による均等化制御が実施される。これにより、電圧差が大きい期間での電力損失を回避することが可能となる。そして、電圧差が第2の閾値(図中、「閾値2」)付近まで収束した時点tchangeで、均等化制御が、第1の均等化制御部102による制御から第2の均等化制御部103による制御に切り替えられる。これにより、第2の均等化制御部103によって急速な放電が実行される結果、電圧差が急速に第1の閾値(図中、「閾値1」)より小さくなって目標範囲201に到達する。すなわち、本実施形態において均等化制御が終了するまでの図2(b)の時間tend ′は、従来のアクティブ方式による制御において均等化制御が終了するための図2(a)の時間tend よりも、図2(b)中の矢印202で示されるように、大幅に短縮することが可能となる。しかも、本実施形態では、第2の均等化制御部103は電圧差が小さい範囲でのみ動作するため、第2の均等化制御部103の動作による電力損失を抑えることが可能となる。
【0024】
図3は、図1の基本構成に基づく、本実施形態の全体システム構成図である。
図3(a)において、電池パック301は、組電池302と、電池監視部303と、制御部304と、電流測定部305を含む。
【0025】
組電池302は、図1の組電池100に対応し、例えば図3(b)の構成を有する。図3(b)において、組電池100は、複数(図では4個)の電池ブロック308が直列および並列に接続される構成を有する。このような複数構成により、所望の電圧および電流容量が得られる。電池ブロック308は、複数の電池セル309が直列に接続される構成を有する。電池セル309は、図1の電池セル101に対応する。また、各電池ブロック308は、遮断器310を有する。遮断器310は、制御部304によって遮断されて、過電流時の回路保護や電池ブロック308の破損時の切り離し等を行う。本実施形態では、図4で後述するように、電池ブロック308の単位で均等化制御を実施することができる。
【0026】
図3(a)において、電池監視部303および制御部304はそれぞれ、図1の電池監視部104および均等化切替制御部105に対応する。
図3(a)において、電池パック301の外部に設けられる電池制御部306は、電池監視部303、および電池監視部303を介して電流測定部305と通信をすることにより、均等化制御以外の各種監視制御や温度制御等を実行する。電池制御部306はさらに上位の走行制御部307との間で、各種走行制御のための情報を通信する。
【0027】
図4は、図3のシステム構成をベースにした、本実施形態のさらに詳細な構成を示す図である。
図4(a)において、電池監視部303は、電池ブロック308内の各電池セル309の両端の電圧をマルチプレクサ402を使って収集し、A/D変換器403でデジタル値に変換して制御部304に通知する電圧測定部401を有する。電流測定部305の出力は電池監視部303を介して制御部304に通知される。電流測定部305は、電池ブロック308の出力電流を測定する。電池ブロック308は、図3の電池セル309の直列接続構成のほか、均等化制御を実施するバランス回路404を有する。バランス回路404は、スイッチ制御部405を含み、スイッチ制御部405は制御部304から制御される。
【0028】
図4(b)は、図4(a)のバランス回路404の詳細な構成図である。バランス回路404は、スイッチ制御部405と、アクティブバランス回路406と、抵抗バランス回路407を含む。アクティブバランス回路406は、図1の第1の均等化制御部102に対応する。抵抗バランス回路407は、図1の第2の均等化制御部103に対応する。
【0029】
アクティブバランス回路406は、トランス408と、スイッチング素子409と、整流用ダイオードDを含む。電池ブロック308の2つの出力端子は、片方がスイッチング素子409を介してトランス408の1次側コイルC1に接続される。トランス408の2次側コイルC2は、電池ブロック308内の各電池セル309に対応する数を有し、2次側コイルC2の2つの出力端子は片方が整流用ダイオードDを介して対応する電池セル309の2つの出力端子に接続される。
【0030】
抵抗バランス回路407は、電池ブロック308内の各電池セル309に対応して、各電池セル309の2つの出力端子に並列に接続される抵抗素子RとバイパススイッチSWの直列接続回路を有する。
【0031】
以上の図3および図4の本実施形態のシステム構成において、制御部304は、前述したように図1の均等化切替制御部105として動作し、組電池302内の各電池ブロック308(図3)に対して、電池均等化制御を実施する。
【0032】
制御部304は、電池ブロック308内の各電池セル309に対して、前述した図1の第1の均等化制御部102に対応するバランス回路404内のアクティブバランス回路406を動作させるときは、次のような制御を行う。制御部304は、バランス回路404内のスイッチ制御部405を制御して、アクティブバランス回路406内のスイッチング素子409を動作させる。スイッチング素子409は、例えばFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)によって構成され、所定周波数(例えば十〜数十キロヘルツ程度)の断続(PWM:パルス波変調)動作をデューティー比を制御しながら実施させる。これにより、電圧値が相対的に高い電池セル309から放電された電力が、トランス408の1次側コイルC1から電圧値が相対的に低い電池セル309に接続されるトランス408の2次側コイルC2に伝達されて、その電池セル309に充電される。この動作が断続的に繰り返されることにより、図1の第1の均等化制御部102による均等化制御動作が実施される。
【0033】
制御部304は、電池ブロック308内の所望の電池セル309に対して、前述した図1の第2の均等化制御部103に対応するバランス回路404内の抵抗バランス回路407を動作させるときは、次のような制御を行う。制御部304は、バランス回路404内のスイッチ制御部405を制御して、急速放電を行わせる電池セル309に並列に接続されているバイパススイッチSWをオンさせる。これにより、所望の電池セル309からの放電が急速に実行されることにより、図1の第2の均等化制御部103による均等化制御動作が実施される。
【0034】
図5は、図3または図4の制御部304が実行する図1の均等化切替制御部105の制御動作を示すフローチャートである。この制御動作は例えば、制御部304内の特には図示しないCPUが同じく特には図示しないメモリに記憶された制御プログラムを実行する動作として実現される。この制御動作は、制御部304が一定時間毎に実行する。
【0035】
まず、制御部304は、図3の電池監視部303内の電圧測定部401を介して、電池ブロック308内の各電池セル309の電圧を測定する(ステップS401)。
制御部304は、化電池セル309の電圧の最大値と最小値の電圧差を計算する(ステップS402)。
【0036】
制御部304は、上記電圧差が閾値1(図2参照)以上であるか否かを判定する(ステップS403)。
上記電圧差が閾値1よりも小さい場合には、制御部304は、均等化制御は実施する必要がないとして、今回の均等化制御動作を終了する。
【0037】
上記電圧差が閾値1以上である場合には、制御部304は、均等化制御を実施する。
まず、制御部304は、上記電圧差が閾値1よりも大きな値である閾値2(図2参照)以上であるか否かを判定する(ステップS404)。
【0038】
上記電圧差が閾値2以上である場合には、制御部304は、図4のバランス回路404内のスイッチ制御部405に対して、バランス回路404内のアクティブバランス回路406を動作させて、PWM動作を実行させる(ステップS405)。これにより、図1の第1の均等化制御部102の動作が実行される。
【0039】
この動作とともに、制御部304は、ステップS402で電圧の最大値と最小値を取得した電池セル309の対の電圧差を、図3の電池監視部303内の電圧測定部401を介して取得する(ステップS406)。
【0040】
制御部304は、ステップS406で取得した電圧差が閾値2未満になったか否かを判定する(ステップS407)。
制御部304は、ステップS406で取得した電圧差が閾値2未満になっていないときには、ステップS405に戻って、アクティブバランス回路406の動作を継続させる。これは、図1の第1の均等化制御部102の動作が継続している状態である。
【0041】
制御部304は、ステップS406で取得した電圧差が閾値2未満になったとき、または前述したステップS404で始めから電圧差が閾値2未満であると判定されたときには、次の動作を実行する。このタイミングは、図2の時点tchangeに対応する。制御部304は、スイッチ制御部405を制御して、アクティブバランス回路406の動作を停止させる。そして、制御部304は、スイッチ制御部405を制御して、バランス回路404内の抵抗バランス回路407において、ステップS402で電圧の最大値を取得した電池セル309に対応するバイパススイッチSWをオンさせて、その電池セル309に対して急速放電を行わせる(ステップS408)。これにより、図1の第2の均等化制御部103による動作が実現され、図2(b)の時点tchange以降の急速放電の動作が実現される。
【0042】
制御部304は、ステップS408の動作の後、ステップS401の動作に戻って、均等制御を続行する。通常は、ステップS408の動作により均等化が完了するため、ステップS401、S402、S403を介して、均等化制御の処理を終了する。
【0043】
以上のようにして、本実施形態のシステムにより、電力損失が少なくかつ所定の精度で電圧を均等に追い込むための収束時間が短い組電池の均等化制御が実現される。
以上説明した本実施形態において、アクティブバランス回路406の例として、図4の406として示される回路例を示したが、アクティブバランス回路406としては、様々な構成のものを採用することができる。
【0044】
図6(a)、(b)、および(c)は、トランスを用いたアクティブバランス回路406の回路構成例を示した図である。また(d)はインダクタを用いたアクティブバランス回路406の回路構成例を示した図である。基本的には、図3または図4の電池セル309群に対して、1つ以上の電池セル309から放電される電力を1つ以上の他の電池セル309に充電させることができるアクティブバランス構成が、トランス、インダクタ、整流用ダイオード、スイッチング素子等を用いて実現されればよい。そして、そのスイッチング素子409が、図4のスイッチ制御部405によってスイッチング制御されることにより、図1の第1の均等化制御部102の動作が実現されればよい。
【符号の説明】
【0045】
100、302 組電池
101、309 電池セル
102 第1の均等化制御部
103 第2の均等化制御部
104、303 電池監視部
105 均等化切替制御部
301 電池パック
304 制御部
305 電流測定部
306 電池制御部
307 走行制御部
308 電池ブロック
310 遮断スイッチ
401 電圧測定部
402 マルチプレクサ
403 A/D変換器
404 バランス回路
405 スイッチ制御部
406 アクティブバランス回路
407 抵抗バランス回路
408 トランス
409 スイッチング素子
D ダイオード
R 抵抗
SW バイパススイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを接続して構成される組電池における前記複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる電池均等化装置であって、
前記複数の電池セルのうちの1つ以上の電池セルから放電される電力を前記複数の電池セルのうちの1つ以上の他の電池セルに充電させることによって前記複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる第1の均等化制御部と、
前記複数の電池セルから選択した1つ以上の電池セルの電力を放電消費させることによって前記複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる第2の均等化制御部と、
前記複数の電池セルの状態を監視する電池監視部と、
前記電池監視部が監視した前記複数の電池セルの状態に基づいて、前記第1の均等化制御部または前記第2の均等化制御部のいずれかを選択して動作させる均等化切替制御部と、
を備えることを特徴とする電池均等化装置。
【請求項2】
前記均等化切替制御部は、前記複数の電池セルの電圧または電力が均等でない度合いが第1の閾値および該第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であって均等化が必要であると判定した後に前記第1の均等化制御部を動作させ、その後前記均等でない度合いが前記第2の閾値よりも小さくなったときに前記第1の均等化制御部の動作を停止させて前記第2の均等化制御部を動作させ、その後前記均等でない度合いが前記第1の閾値よりも小さくなったときに前記第2の均等化制御部の動作を停止させて均等化制御を終了する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池均等化装置。
【請求項3】
前記均等化の度合いは、前記電池監視部において監視された前記各電池セルの電圧値の最大値と最小値の差であり、
前記均等化切替制御部は、前記第2の均等化制御部を動作させるときに、前記最大値に対応する電池セルを選択的に放電消費させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の電池均等化装置。
【請求項4】
前記第2の均等化制御部は、前記複数の電池セルにそれぞれ並列に接続され、それぞれバイパススイッチおよび抵抗素子とからなる複数のバイパス放電回路であり、
前記均等化切替制御部は、前記第2の均等化制御部を動作させるときに、前記電池監視部において監視された電圧値が最大値を示す電池セルに対応する前記バイパス放電回路内の前記スイッチ素子をオンする、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電池均等化装置。
【請求項5】
前記第1の均等化制御部は、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の電池セルから放電される電力を、スイッチング素子、トランス、および整流回路を介して、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の他の電池セルに充電させる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電池均等化装置。
【請求項6】
前記第1の均等化制御部は、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の電池セルから放電される電力を、スイッチング素子、インダクタを介して、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の他の電池セルに充電させる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電池均等化装置。
【請求項7】
複数の電池セルを接続して構成される組電池における前記複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる電池均等化方法であって、
前記複数の電池セルの状態を監視し、
前記監視した前記複数の電池セルの状態に基づいて、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の電池セルから放電される電力を前記複数の電池セルのうちの1つ以上の他の電池セルに充電させることによって前記複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる第1の均等化制御部、または前記複数の電池セルから選択した1つ以上の電池セルの電力を放電消費させることによって前記複数の電池セルの電圧または電力を均等化させる第2の均等化制御部のいずれかを選択して動作させる、
ことを特徴とする電池均等化方法。
【請求項8】
前記複数の電池セルの電圧または電力が均等でない度合いが第1の閾値および該第1の閾値よりも大きい第2の閾値以上であって均等化が必要であると判定した後に前記第1の均等化制御部を動作させ、
その後前記均等でない度合いが前記第2の閾値よりも小さくなったときに前記第1の均等化制御部の動作を停止させて前記第2の均等化制御部を動作させ、
その後前記均等でない度合いが前記第1の閾値よりも小さくなったときに前記第2の均等化制御部の動作を停止させて均等化制御を終了する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電池均等化方法。
【請求項9】
前記均等化の度合いは、前記電池監視部において監視された前記各電池セルの電圧値の最大値と最小値の差であり、
前記第2の均等化制御部を動作させるときに、前記最大値に対応する電池セルを選択的に放電消費させる、
ことを特徴とする請求項8に記載の電池均等化方法。
【請求項10】
前記第2の均等化制御部を、前記複数の電池セルにそれぞれ並列に接続され、それぞれバイパススイッチおよび抵抗素子とからなる複数のバイパス放電回路で構成し、
前記第2の均等化制御部を動作させるときに、前記電池監視部において監視された電圧値が最大値を示す電池セルに対応する前記バイパス放電回路内の前記スイッチ素子をオンする、
ことを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の電池均等化方法。
【請求項11】
前記第1の均等化制御部を、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の電池セルから放電される電力を、スイッチング素子、トランスを介して、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の他の電池セルに充電させるように構成する、
ことを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の電池均等化方法。
【請求項12】
前記第1の均等化制御部を、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の電池セルから放電される電力を、スイッチング素子、インダクタ、および整流回路を介して、前記複数の電池セルのうちの1つ以上の他の電池セルに充電させるように構成する、
ことを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の電池均等化方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−116006(P2013−116006A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262729(P2011−262729)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】