説明

電池

【課題】内部抵抗を低減させる電池を提供する。
【解決手段】電池は、正極7と、正極7に対向する負極8と、正極7および負極8に接触する電解質9とを有する。正極7および負極8のうちの少なくとも一方は、導電性をもつ導電基体1と、導電基体1に積層された炭素材料を基材とする活物質層2と、導電基体1と活物質層2との間に介在すると共に導電基体1および活物質層2よりも厚みが薄いカーボン皮膜3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素材料を活物質として用いる電池に関する。電池はキャパシタなどの物理電池、一次電池や二次電池等の化学電池を含む。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ポリスチレンスルホン酸を有する導電性高分子を含む非絶縁性バインダを活性炭粉末に添加し、内部抵抗を低下させる技術を開示している。特許文献2は、平均粒径が1マイクロメートル以下の第1活性炭と、平均粒径が1マイクロメートル以上の第2活性炭とを併用し、活性炭粒子間の接触頻度を高め、電極内部の抵抗を低下させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−107048号公報
【特許文献2】特開2009−130066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した技術によれば、導電基体と活物質層との界面抵抗を低減させるには、必ずしも充分ではない。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、導電材料を基材とする導電基体と炭素材料を基材とする活物質層との界面抵抗を低減させることができ、電池の内部抵抗を低減させる電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電池は、正極と、正極に対向する負極と、正極および負極に接触する電解質とを具備しており、正極および負極のうちの少なくとも一方は、導電性をもつ導電基体と、導電基体に積層された炭素材料を基材とする活物質層と、導電基体と活物質層との間に介在すると共に導電基体および活物質層よりも厚みが薄いカーボン皮膜とを有する。
【0006】
導電基体および活物質層よりも厚みが薄い導電性を有するカーボン皮膜が導電基体と活物質層との間に介在する。このため、導電基体と活物質層との界面抵抗を低減させることができる。ひいては電池の内部抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1に係り、正極および負極を形成する電極の概念を断面にして示す断面図である。
【図2】実施例2に係り、正極および負極を形成する電極の概念を断面にして示す断面図である。
【図3】正極および負極を形成する電極の抵抗を測定する測定装置の概念を示す図である。
【図4】適用例1に係り、キャパシタの断面図である。
【図5】適用例2に係り、キャパシタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
電池は、正極と、正極に対向する負極と、正極および負極に接触する電解質とを有する。電池としては、キャパシタなどの物理的電池、一次電池や二次電池等の化学電池が挙げられる。電解質としては水系電解液、非水系電解液または固体ポリマーが挙げられる。非水系電解液の溶媒としては、非水系電解液の溶媒としては以下のものが好ましく例示される。これらの溶媒はそれぞれ単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。プロピレンカーボネート、プロピレンカーボネート誘導体、エチレンカーボネート、エチレンカーボネート誘導体、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキソラン、リン酸トリエステル、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、1,3−プロパンスルトン、4,5−ジヒドロピラン誘導体、ニトロベンゼン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン誘導体、シドノン化合物、アセトニトリル、ニトロメタン、アルコキシエタン、トルエン。
【0009】
正極と負極との間に、正極および負極の短絡を抑えるセパレータが設けられていることが好ましい。セパレータは不織布、織布等で形成できるが、正極および負極の短絡を抑えるものであれば何でも良い。
【0010】
正極および負極のうちの少なくとも一方は、導電性をもつ導電基体と、導電基体に積層された炭素材料を基材とする活物質層と、導電基体と活物質層との間に介在すると共に導電基体および活物質層よりも厚みが薄いカーボン皮膜とを有する。カーボン皮膜はカーボン原子で形成された皮膜を意味する。カーボン皮膜はCVD処理により形成できる。この場合、炭素源としては炭化水素系のガス、あるいは、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールを採用できる。炭化水素系のガスとしては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタンガスなどが例示される。導電基体の材質としては、チタン、チタン合金、銅、銅合金、鉄、鉄合金(ステンレス鋼を含む)、アルミニウム、アルミニウム合金が例示される。炭素源、基板、要請されるカーボン皮膜の性質等によっても相違するが、CVD(chemical vapor deposition)処理における基板の温度の下限値としては、400℃、500℃、600℃が挙げられる。CVD処理における基板の温度の上限値としては、600℃、700℃、800℃、1000℃が挙げられる。
【0011】
また必要であれば、カーボン皮膜と導電基体との境界には、種触媒をもつ触媒層を設けることができる。この場合、カーボン皮膜の改質が図られる。種触媒としては遷移金属が例示される。特に、V〜VIII族の金属が例示される。カーボン皮膜の改質の程度などによっても相違するが、種触媒は鉄単体でも良いが、A−B系の合金が例示され、A−B系の鉄合金が例示される。ここで、Aは鉄、コバルト、ニッケルのうちの少なくとも1種であり、Bはチタン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタルのうちの少なくとも1種が例示される。この場合、鉄−チタン系合金、鉄−バナジウム系合金のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。更に、コバルト−チタン系合金、コバルト−バナジウム系合金、ニッケル−チタン系合金、ニッケル−バナジウム系合金、鉄−ジルコニウム系合金、鉄−ニオブ系合金が挙げられる。鉄−チタン系合金の場合には、質量比でチタンが10%以上、20%以上、30%以上、残部が鉄の組成が例示される。鉄−バナジウム系合金の場合には、質量比でバナジウムが10%以上、20%以上、30%以上、残部が鉄の組成が例示される。
【0012】
活物質層は炭素材料を基材とする。炭素材料としては、活性炭、黒鉛のうちの少なくとも1種が挙げられる。活性炭としては、やしがら系活性炭、石油コークス系活性炭、生物系活性炭等が例示される。また活性炭の賦活処理の方法には、水蒸気賦活処理法、溶融KOH賦活処理法等の公知の賦活方法が挙げられる。活性炭としては粉末状活性炭、粒状活性炭でも良い。活性炭の平均粒径および比表面積は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択できる。活物質層には、活性炭や黒鉛等の炭素材料の他に、導電剤やバインダ等を必要に応じて配合することができる。導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、金属ファイバー、酸化チタン、酸化ルテニウムが例示される。
【0013】
従来では、金属導電基体の表面に炭素材料を基材とする活物質層を堆積させ、電極を形成している。しかし、通常、金属導電基体の表面に絶縁性の高い酸化皮膜が生成されており、更に堆積している活物質層と金属導電基体の表面とは接触のみによって導通を取っているため、活物質層と金属導電基体の表面との界面抵抗は非常に大きくなってしまい、電流が流れる時のIR損失の原因となってしまう。また、作動環境においては、金属導電基体がイオン化してしまう恐れがあり、その金属イオンが電解液及び電極に混入することにより、電池の性能劣化の原因となり得る。そこで、金属導電基体表面の酸化皮膜を取り除いた上、カーボン原子を析出させ、カーボン皮膜を形成させることにより、金属導電基体表面で酸化皮膜の生成を抑制し、且つ、活物質層との親和性が向上することにより界面抵抗を低減させるだけではなく、金属導電基体からの金属イオン溶出も抑えられ、電池の耐久性向上にも期待できる。カーボン皮膜は電気伝導性に優れ且つ作動環境において安定しており、また、万が一、酸化されてもカチオンになることがなく、電池の性能劣化に繋がる恐れを低減できる。
【0014】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について、概念図を示す図1を参照して説明する。本実施例によれば、導電基体を構成する基板1としてチタン板を用いた。基板1は、鏡面研磨されており、所定のサイズをもつ(0.5ミリメートル×10ミリメートル×10ミリメートル)。鉄合金系の種触媒(Fe−Ti合金,質量比でFeが80%,Ti20%)で形成された触媒層4を基板1の表面1aを含む全表面に設けた。この場合、脱水ヘキサン中に鉄合金(鉄チタン合金)の粒子を種触媒粒子(粒径:1〜6ナノメートル)として分散させたコーティング液を用意した。そして、可視光度計(WPA社製:CO7500)で波長680ナノメールの測定条件で、吸光度(Abs.)が0.3となるようにコーティング液の濃度を調製した。コーティング液における鉄チタン合金の粒子における合金比率としては、質量比で、鉄:チタン=80:20とした。このように種触媒粒子においては、鉄の質量%はチタンの質量%よりも高い。このコーティング液に基板1を所定時間(30分間)浸漬させた後、コーティング液に基板1を引き上げ、自然乾燥させた。これにより鉄チタン合金の薄膜で形成された触媒層4を種触媒として、基板1の表面1aを含む全表面に形成した。
【0015】
その後、CVD成膜装置を用い、まず、反応容器内に基板1を保持した状態で、反応容器内を真空引きして反応容器内の圧力を4KPaに調整し、620℃において5分間保持した。その後、反応容器内の基板1を650℃に加熱した状態で、炭素源として炭化水素系のガスであるアセチレンガスを反応容器内に流し(単位時間あたりの流量:5リットル/min)、アセチレンガスの雰囲気において6分間、成膜処理した。これにより基板1の表面1aの触媒層4の上にカーボン皮膜3(厚み:2μm)を形成した。触媒層4は、カーボン皮膜3のカーボンを改質させる機能をもつと考えられる。
【0016】
その後、多数のポアを有する活性炭の粒子(平均粒径:12マイクロメートル、比表面積:1731m/g,クレハ株式会社,A-BAC PW15 M アルミタイ)、バインダ(ポリフッ化ビニリデン)、導電剤(ケッチェンブラック)を混合し、更に溶媒(N-メチル-2-ピロリドン,NMP)と混合させてインクを形成した。配合割合としては、質量比で、活性炭:バインダ:導電剤=86:10:4)とした。次に基板1のうち触媒層4が設けられ表面1aにインクを塗布し、乾燥させて、炭素材料として機能する活性炭を基材とする活物質層2を基板1の表面に形成した電極5を得た。
【0017】
図1に示すように、実施例1に係る電極5は電池(物理電池または化学電池)の正極および負極のうちの一方または双方を構成できるものである。電極5は、導電性をもつ導電基体として機能する基板1と、基板1の表面1aに積層された活性炭を基材とする活物質層2と、基板1と活物質層2との間に介在するカーボン皮膜3とを有する。カーボン皮膜3は、基板1と活物質層2との境界全体に形成されている。カーボン皮膜3と活物質層2との境界に、鉄合金の薄膜が触媒層4として設けられている。従って図1に示すように、基板1、触媒層4、カーボン皮膜3,活物質層2の順に積層されている。なお、カーボン皮膜3の厚みは基板1の厚み、活物質層2の厚みよりも薄い。ここで、基板1の厚みt1は0.5ミリメートル、活物質層2の厚みt2は0.1ミリメートル、カーボン皮膜3の厚みt3は2マイクロメートルであった。触媒層4の厚みは100ナノメートル以下と考えられる。この電極5は正極および負極のうちの一方または双方を形成することができる。
【0018】
図3に示すように、この電極5を厚み方向において第1抵抗測定治具61および第2抵抗測定治具62で挟み、荷重(10kgf/cm)を電極5の厚み方向にかけながら、電流(3アンペア)を電極5の厚み方向に流し、電圧を測定した。この場合、電流印加1分後の電圧を測定した。R=V/Iの式に基づいて、抵抗値を求めた。その結果を表1に示す。カーボン皮膜3が形成されている実施例1によれば、抵抗値は2.0mΩ・cm2とされており、極めて小さかった。これにより基板1の表面1aと活物質層2との界面抵抗が小さいものと考えられる。なお、第1抵抗測定治具61および第2抵抗測定治具62の表面は金メッキされている。
【0019】
(実施例2)
実施例2は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。但し、基板1の表面には触媒層を設けなかった。本実施例によれば、実施例1と同様に、導電基体を構成する基板1としてチタン板を用いた。基板1は、鏡面研磨されており、所定のサイズをもつ(0.5ミリメートル×10ミリメートル×10ミリメートル)。基板1の表面1aには鉄系種触媒を設けなかった。そして実施例1と同様に、反応容器内に基板1を保持した状態で、反応容器内を真空引きして反応容器内の圧力を4KPaに調整し、620℃において5分間保持した。これにより基板1の表面1aに形成されていた酸化膜は除去される。
【0020】
その後、反応容器内の基板1を650℃に加熱した状態で、炭素源として炭化水素系のガスであるアセチレンガスを反応容器内に流し(単位時間あたりの流量:5リットル/min)、アセチレンガスの雰囲気において6分間、成膜処理した。これにより基板1の表面1aにカーボン皮膜3(厚み:2μm)を形成した。その後、実施例1と同じ条件で、活性炭粒子、バインダ、導電剤(ケッチェンブラック)を混合し、更に溶媒(NMP)と混合させインクを形成した。実施例1と同じ条件で、基板1の表面1aのカーボン皮膜3の上にインクを塗布し、乾燥させて活物質層2を形成し、電極5を得た。図2に示すように、実施例2に係る電極5は、電池(物理電池または化学電池)の正極および負極のうちの一方または双方を構成できるものである。電極5は、導電性をもつ導電基体としての基板1(チタン基板)と、基板1に積層された活性炭を基材とする活物質層2と、基板1と活物質層2との間に介在するカーボン皮膜3とを有する。カーボン皮膜3は基板1の表面1aと活物質層2との境界全体に形成されている。カーボン皮膜3と活物質層2との境界には、鉄合金の薄膜の触媒層が設けられていない。従って図2に示すように、基板1、カーボン皮膜3,活物質層2の順に積層されている。
【0021】
なお、カーボン皮膜3の厚みは基板1の厚み、活物質層2の厚みよりも薄い。ここで、基板1の厚みt1は0.5ミリメートル、活物質層2の厚みt2は0.1ミリメートル、カーボン皮膜3の厚みt3は2マイクロメートルであった。この電極5は正極および負極のうちの一方または双方を形成することができる。そして、実施例1と同様な条件で、この電極5を第1抵抗測定治具61および第2抵抗測定治具62で挟み、電極5の厚み方向に荷重をかけながら、電極5の厚み方向に電流(3アンペア)を流し、電圧を測定した。R=V/Iの式に基づいて、電極5の厚み方向における抵抗値を求めた。その結果を表1に示す。カーボン皮膜3が形成されている実施例2によれば、抵抗値は2.3mΩ・cm2とされており、極めて小さかった。これにより基板1の表面1aと活物質層2との界面抵抗が小さいものと考えられる。
【0022】
(比較例1)
比較例1は基板1と活物質層2が積層されている。比較例1は、基板1として実施例1と同様のチタン板を用いた。基板1の表面には鉄系種触媒の触媒層およびカーボン皮膜を設けなかった。そして実施例1と同様な条件で、活性炭粒子、バインダ、導電剤(ケッチェンブラック)を混合し、更に溶媒(NMP)と混合させインクを形成した。実施例1と同様な条件で、基板1の表面にインクを塗布し、乾燥させて活物質層2を形成し、比較例1に係る電極を得た。そして実施例1と同様な条件で、この電極を抵抗測定治具で挟み、荷重をかけながら、電流(3アンペア)を流し、電圧を測定した。R=V/Iの式に基づいて、抵抗値を求めた。その結果を表1に示す。活物質層2と基板1との界面にカーボン皮膜3が形成されていない比較例1によれば、抵抗値は331.16mΩ・cm2とされていた。これは、活物質層2と基板1との界面にカーボン皮膜3が形成されている実施例1,実施例2(2.0mΩ・cm2,2.3mΩ・cm2)に比較して200倍程度であり、かなり大きかった。比較例1では、活物質層2と基板1との界面にカーボン皮膜3が形成されていないため、基板1と活物質層2との間における界面抵抗が大きくなったものと推察される。
【0023】
(比較例2)
比較例2は、基板1、触媒層4、活物質層2の順に積層されている。比較例2は、カーボン皮膜3を基板1に形成しなかった。すなわち、比較例2によれば、実施例1と同様に、基板1としてチタン基板を用いた。そして実施例1と同様な条件で、基板1の表面に鉄合金系の種触媒(Fe−Ti合金,質量比でFeが80%,Ti20%)を設けた。しかしカーボン皮膜3を基板1に形成しなかった。その後、実施例1と同様な条件で、活性炭粒子、バインダ、導電剤を混合し、更に溶媒(NMP)と混合させインクを形成した。配合割合は実施例1と同様にした。そして実施例1と同様な条件で、基板1のうち鉄系種触媒が設けられている表面にインクを塗布し、乾燥させて活物質層2を形成し、電極を得た。実施例1と同様な条件で、比較例2に係る電極を抵抗測定治具で挟み、荷重をかけながら、電流(3アンペア)を流し、電圧を測定した。R=V/Iの式に基づいて、抵抗値を求めた。その結果を表1に示す。活物質層2と基板1との界面にカーボン皮膜が形成されていない比較例2によれば、抵抗値は183.7mΩ・cm2とされており、活物質層2と基板1との界面にカーボン皮膜3が形成されている実施例1,実施例2(2.0mΩ・cm2,2.3mΩ・cm2)と比較してかなり大きかった。活物質層2と基板1との界面にカーボン皮膜3が形成されていないため、基板1と活物質層2との間における界面抵抗が大きいものと推察される。
【0024】
【表1】

【0025】
表1から理解できるように、基板1と活物質層2との界面にカーボン皮膜3が積層されていると、電極5の厚み方向の抵抗が大きく低下することがわかる。基板1の表面1aとカーボン皮膜3との界面抵抗の低下が貢献しているものと考えられる。実施例1と実施例2とを比較すれば、基板1、カーボン皮膜3、活物質層2が積層されているときであっても、種触媒の触媒層4を基板1の表面1aとカーボン皮膜3との間に設けただけでも、抵抗値が13%程度((2.3−2.0)/2.3≒0.13)低下することがわかる。基板1の表面1aとカーボン皮膜3との界面抵抗の低下が貢献しているものと考えられる。
【0026】
(実施例3)
本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1を準用できる。本発明者らが実施している他の試験例に基づけば、基板1の表面に鉄系の種触媒としてFe−V合金(質量比でFeが85%,V15%)の触媒層4を、CVD処理に先立って、設けることも有益であると考えられる。この場合、大気中において、基板1をディップコーターによりコーティング液に所定時間(例えば30秒間)浸漬する。その後、大気雰囲気において、常温下で、基板1をコーティング液から引き上げ、コーティング液が基板1の表面に付着した状態で、自然乾燥にて基板1のヘキサンを乾燥させる。これにより鉄−バナジウム合金の薄膜(厚み:例えば5〜100ナノメートル)を形成し、これにより触媒層4を形成することが好ましい。ここで、コーティング液は、ヘキサン中に鉄−バナジウム合金粒子を分散させて形成できる。鉄−バナジウム合金粒子については、質量比で鉄85%,バナジウム15%にでき、鉄の含有量はバナジウム含有量よりも多くすることが好ましい。コーティング液については、可視光度計(WPA社製:CO7500)にて波長680ナノメートルの測定条件で、吸光度が0.3となるように濃度調整することができる。その後、実施例1,2と同様に、基板1のうちの鉄系種触媒の薄膜で形成された触媒層4の上にカーボン皮膜3を形成することが好ましい。
【0027】
本実施例に係る電極は、図1に示すように、導電性をもつ導電基体としての基板1と、基板1に積層された活性炭を基材とする活物質層2と、基板1と活物質層2との間に介在するカーボン皮膜3とを有する。カーボン皮膜3は基板1と活物質層2との境界全体に形成されている。カーボン皮膜3と活物質層2との境界に、鉄合金の薄膜で形成された触媒層4が設けられている。なお、触媒層4の厚みは100ナノメートル以下であることが好ましい。
【0028】
(実施例4)
本実施例は実施例1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1を準用できる。本発明者らが実施している他の試験例に基づけば、基板1の表面にスパッタリングで鉄単体の種触媒を形成することも有益と考えられる。そこで、アルゴンガスを用い、スパッタリング法により、鉄単体の薄膜で形成されている触媒層4を基板1の表面1aに形成する。その後実施例1と同様な条件で、CVD成膜装置を用い、反応容器内に保持されている基板1を650℃に加熱した状態で、炭素源としてアセチレンガスを反応容器内に流し、アセチレンガスの雰囲気において成膜処理する。これにより基板1の表面1aの触媒層4にカーボン皮膜3を形成する。更に、実施例1と同様な条件で、多数のポアを有する活性炭粒子、バインダ、導電剤を混合し、更に溶媒と混合させてインクを形成する。更に基板1のカーボン皮膜3の上にインクを塗布し、乾燥させて、活性炭を基材とする活物質層2を基板1の表面に形成した電極5を得る。
【0029】
図1に示すように、本実施例に係る電極5は、導電性をもつ基板1と、基板1の表面1aに積層された活性炭を基材とする活物質層2と、基板1と活物質層2との間に介在するカーボン皮膜3とを有する。カーボン皮膜3と活物質層2との境界に、鉄合金の薄膜が触媒層4として設けられている。カーボン皮膜3の厚みは基板1の厚み、活物質層2の厚みよりも薄い。
【0030】
(実施例5)
本実施例は実施例1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1,図2を準用できる。本発明者らが実施している他の試験例に基づけば、基板1としてチタン単体に代えて、ステンレス鋼(例えばSUS304系)を採用することもできる。従って、本実施例に係る電極は、図1,図2に示すように、導電性をもつ導電基体としての基板1と、基板1に積層された活性炭を基材とする活物質層2と、基板1と活物質層2との間に介在するカーボン皮膜3とを有する。カーボン皮膜3は基板1と活物質層2との境界全体に形成されている。
【0031】
図1に示すように、カーボン皮膜3と活物質層2との境界に、鉄単体または鉄合金(Fe−Ti,Fe−V等)の薄膜が触媒層4として設けられていても良い。場合によっては、図2に示すように、カーボン皮膜3と活物質層2との境界に鉄合金の薄膜が触媒層4として設けられていなくても良い。
【0032】
(実施例6)
本実施例は実施例1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1,図2を準用できる。本発明者らが実施している他の試験例を参照すれば、基板1としてチタン単体板に代えて、導電性が高い銅を採用することもできる。従って、本実施例に係る電極は、図1,図2に示すように、導電性をもつ基板1と、基板1の表面1aに積層された活性炭を基材とする活物質層2と、基板1と活物質層2との間に介在するカーボン皮膜3とを有する。カーボン皮膜3は基板1と活物質層2との境界全体に形成されている。図1に示すように、カーボン皮膜3と活物質層2との境界に、鉄単体または鉄合金(Fe−Ti,Fe−V等)鉄合金の薄膜が触媒層4として設けられていても良い。場合によっては、図2に示すように、カーボン皮膜3と活物質層2との境界に、鉄合金の薄膜が触媒層4として設けられていなくても良い。
【0033】
(試験例)
所定の厚み(50μm)をもつ基板をチタン、ステンレス鋼(SUS304)、銅とした場合について抵抗値を実際に求めた。材質がチタン、ステンレス鋼等と異なっても、基板のサイズは同じとした。この試験例では、基板に触媒層、活物質層を形成しなかったものの、カーボン皮膜を形成するCVD処理を実行した。この場合、基板温度を750℃、500℃、410℃と変更させてCVD処理し、カーボン皮膜を基板の表面に形成した。この場合について、実施例1と同様な条件で抵抗値を測定した。測定結果を表2に示す。
【0034】
表2から理解できるように、基板のみを測定した場合に比較して、CVD処理を施してカーボン皮膜を基板に形成した場合には、CVD処理における基板温度が410℃と低温であったとしても、抵抗は低減されていた。カーボン皮膜が形成されたため界面抵抗が低減したためと推定される。基板1の材質がチタン、SUSである場合には、CVD処理における基板温度が410℃と低温であったとしても、基板のみの場合に比較して、抵抗は良好であった。CVD処理における基板温度が500℃、750℃と昇温させれば、抵抗は低めとなり、良好であった。従って、界面抵抗を低下させるためには、CVD処理における基板温度が500℃以上であることが好ましい。
【0035】
【表2】

【0036】
(適用例1)
図4は適用例1の概念図を示す。図4に示すように、物理的電池として機能するキャパシタは、正極7と、正極7に対向する負極8と、正極7および負極8に接触する電解質9(電解液)と、正極7および負極8が短絡しないように仕切る電気絶縁性をもつセパレータ6とを有する。電解質9の漏れを防止するシール部材62が設けられている。正極7は、容器を兼用する導電基体100と、導電基体100に積層された活性炭を基材とする活物質層2と、導電基体100と活物質層2との間に介在すると共に導電基体100および活物質層2よりも厚みが薄いカーボン皮膜3とを有する。
【0037】
負極8は、容器を兼ねる導電基体101と、導電基体101に積層された活性炭を基材とする活物質層2と、導電基体101と活物質層2との間に介在すると共に導電基体101および活物質層2よりも厚みが薄いカーボン皮膜3とを有する。カーボン皮膜3は上記したCVD処理により形成されている。なお、カーボン皮膜3と導電基体100との間に触媒層4を必要に応じて設けることができる。
【0038】
(適用例2)
図5は適用例2の概念図を示す。図5に示すように、物理的電池として機能するキャパシタは、正極7と、正極7に対向する負極8と、正極7および負極8に接触する電解質9(電解液)と、正極7および負極8が短絡しないように仕切るセパレータ6とを有する。正極7は、容器を兼ねる導電基体100と、導電基体100に積層された活性炭を基材とする活物質層2と、導電基体100と活物質層2との間に介在すると共に導電基体100および活物質層2よりも厚みが薄いカーボン皮膜3とを有する。負極8は、容器を兼ねる導電基体101と、導電基体101に積層された黒鉛を基材とする活物質層2Wと、導電基体101と活物質層2Wとの間に介在すると共に導電基体101および活物質層2Wよりも厚みが薄いカーボン皮膜3Wとを有する。カーボン皮膜3と導電基体100との間、あるいは、カーボン皮膜3Wと導電基体101との間に、触媒層4を必要に応じて設けることができる。カーボン皮膜3は上記したCVD処理により形成されている。なお、負極8の活物質層2Wを構成する黒鉛材料には、リチウムイオンおよび/または金属リチウムがドープされており、負極8の電位を低下させ、キャパシタの動作電圧を増加させている。従ってキャパシタはリチウムイオンキャパシタとされている。
【0039】
(界面抵抗の低減機構について)
界面抵抗が低減できる機構として、基板等の基体の表面に置ける酸化皮膜が取り除かれた上に、導電性に優れたカーボン皮膜が接合され、そのカーボン皮膜と活物質層とが接触することによると考えられる。カーボン皮膜として現段階では必ずしも明確ではないが、カーボンナノチューブ(CNT)またはグラファイトであると推定される。この場合には、CNT間には隙間があるが、仮にその隙間の基板等の基体が酸化されたとしても、基体−(触媒粒子)−CNT−活物質層と電流が流れるので、界面抵抗が低減されると考えられる。グラファイトが多孔質である場合にも同様である。多孔質の方が、むしろ、活物質層の接合強度を大きくでき、かつカーボン皮膜との接触面積も大きいため電気抵抗も小さくできると考えられる。なお、カーボン皮膜に求められる特性の一つとして、基体との接合強度(密着強度)がある。また電解液を使用するタイプの電池の場合には耐電解液性が求められる。ここでカーボン皮膜を形成するカーボンは基本的に耐薬品性に優れているため耐電解液性に優れている。
【0040】
(その他)カーボン皮膜の形成方法としては、熱CVD、プラズマCVDなどのCVD(化学蒸着)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着などのPVD(物理蒸着)などが挙げられる。電池はキャパシタなどの物理電池、一次電池や二次電池等の化学電池を含む。
【0041】
以上、記載した内容から下記の技術思想も把握できる。
[付記項1] 正極と、前記正極に対向する負極と、前記正極および前記負極に接触する電解質とを具備する電池の製造方法において、前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方は、導電性をもつ導電基体を準備する導電基体準備工程と、前記導電基体の一方面にCDV処理によりカーボン皮膜を形成するカーボン皮膜形成工程と、前記カーボン皮膜の上に炭素材料を基材とする活物質層を形成する活物質層形成工程により製造されることを特徴とする電池の製造方法。
[付記項2] 付記項1において、前記導電基体準備工程の前に、前記導電基体の少なくとも一方面に前記カーボン皮膜を形成するために種触媒を塗布する種触媒塗布工程が設けられていることを特徴とする電池の製造方法。塗布方法として公知の方法を採用できる。
【符号の説明】
【0042】
1は基板(導電基体)、2は活物質層、3はカーボン皮膜、4は触媒層、7は正極、8は負極、9は電解質、100は導電基体を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、前記正極に対向する負極と、前記正極および前記負極に接触する電解質とを具備しており、前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方は、導電性をもつ導電基体と、前記導電基体に積層された炭素材料を基材とする活物質層と、前記導電基体と前記活物質層との間に介在すると共に前記導電基体および前記活物質層よりも厚みが薄いカーボン皮膜とを有する電池。
【請求項2】
請求項1において、前記導電基体は、チタン、チタン合金、銅、銅合金、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金のうちの一種である電池。
【請求項3】
請求項1または2において、前記導電基体と前記カーボン皮膜との境界には、種触媒を有する触媒層が設けられている電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記カーボン皮膜は、CDV処理により形成されたCVDカーボン皮膜である電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−233564(P2011−233564A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99904(P2010−99904)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】