説明

電波時計

【課題】電波受信機能とモータ駆動用機能とを備えているにもかかわらず、コンパクトで高密度な実装が可能な電波時計を得ること。
【解決手段】電波受信機能とモータ駆動用機能とを兼用した兼用コイル12bを備えた電磁構造体DK、使用者の操作によりスイッチ動作されるスイッチ部13、受信回路6、モータ駆動回路10b、このモータ駆動回路10bにより駆動される被駆動体Sを備えている。電波受信の際は、スイッチ部13の操作により兼用コイル12bを受信回路6に接続し、この接続された兼用コイル12bにより電波を受信するように制御する一方で、この電波受信が終了した後は兼用コイル12bをモータ駆動回路10bに接続し、この接続された兼用コイル12bによりモータ駆動回路10bを動作させて、被駆動体Sを駆動するようにCPU2により制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波受信機能とモータ駆動用機能とを備えた電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電波時計には時計表示のためのモータ用のコイル(モータコイル)と、電波受信のためのアンテナ用のコイル(アンテナコイル)とが別々に設けられ、それぞれ全く独立して使用されている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−301736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータコイルとアンテナコイルとを別々に設ける場合には次のような問題が生じる。
すなわち、コイルは線材を巻いただけのものであるが、部品コストは高く取り扱いにくいものである。したがって、多くのコイルを電波時計に組み込むとなると、コストが嵩むし、その取扱いも煩雑となる。また、多くのコイルを電波時計に組み込むとなると、電波時計においてコイルの占有容積が大きくなり、時計の小型化に支障を来すことになる。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、コイルの占有容積の低減を図ることができる電波時計を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
電波受信機能とモータ駆動用機能とを兼用した兼用コイルを備えた電磁構造体と、
使用者の操作によりスイッチ動作されるスイッチ部と、
受信回路と、
モータ駆動回路と、
このモータ駆動回路により駆動される被駆動体と、
電波受信の際は、前記スイッチ部の操作により前記兼用コイルを前記受信回路に接続し、この接続された兼用コイルにより電波を受信するように制御し、この電波受信が終了した後は前記兼用コイルを前記モータ駆動回路に接続し、この接続された前記兼用コイルにより前記モータ駆動回路を動作させて、前記被駆動体を駆動するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電波時計である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の電波時計において、前記電磁構造体は、前記被駆動体を回転駆動するロータを含み、電波受信の際に、前記モータ駆動回路により回転駆動されている前記ロータの停止状態を検出するロータ停止検出手段を備え、前記ロータ停止検出手段により前記ロータの停止状態が検出された後に電波受信を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の電波時計において、前記電磁構造体は、複数の兼用コイルと、この複数の兼用コイルが間をおいて巻装された単一のコアと、このコアの両端からそれぞれ延出された集磁部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電波時計において、複数の兼用コイルを備え、前記モータ駆動回路は、前記複数の兼用コイルに1対1で対応する複数のモータ駆動回路を備え、前記スイッチ手段によりモータ駆動回路が選択された際は、前記複数のコイルを前記複数のモータ駆動回路に対して1対1で接続し、前記スイッチ手段により電波受信回路が選択された際は、前記複数のコイルが前記受信回路に対し直列接続されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の電波時計において、前記コアは、短尺で厚肉の複数の第1のコア部分と、長尺で薄肉の1つの第2のコア部分とから構成され、前記複数の第1のコア部分は前記第2のコア部分に重畳された状態で互いに離れた位置に設けられ、前記複数の第1のコア部分と前記第2のコア部分との重畳部分には前記複数のコイルが1つずつ巻装されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載の電波時計において、前記第2のコア部分はアモルファス金属によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1から6記載の発明によれば、兼用コイルは、モータを駆動する際にはモータ駆動回路に接続され、受信の際には受信回路に接続されるので、モータ専用のコイルとアンテナ専用のコイルとを別々に設けなくても済むので、その分、コイルの占有容積の低減が図れ、時計の小型化、コストの低減が図れることとなる。
請求項2記載の発明によれば、ロータの停止状態が検出された後に電波受信を行うので、受信安定化を図ることができる。例えば、ロータが停止しないとそのノイズがアンテナへ回り込み受信回路を壊す可能性があるから、ロータの残振動がなくなるまで待って電波受信を行うことは極めて有益である。
請求項3記載の発明によれば、複数の兼用コイルが単一のコアに巻装されているので、全体として電磁構造体の構成が簡素となり、組立が容易となると共にコストの低減が図れることになる。
請求項4記載の発明によれば、電波受信の際には複数の兼用コイルが直列接続されるので、受信感度の向上が図れることになる。
請求項5記載の発明によれば、短尺で厚肉の複数の第1のコア部分と、長尺で薄肉の1つの第2のコア部分とからコアが形成されているので、コア材料が少なくて済み、その分コストの低減が図れることになる。
請求項6記載の発明によれば、第2のコア部分がアモルファス金属で形成されているため、加工が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の電波時計の制御構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の電波時計のメイン制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップ3の内容を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップ13の内容を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の電波時計の時計本体の裏蓋を外した状態の要部を示す図である。
【図6】図5のVI-VI線矢視図である。
【図7】第1実施形態の電波時計のコイルおよびコアを示す平面図である。
【図8】第1実施形態の電波時計のスイッチ部の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態の電波時計の制御構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態の電波時計が実行する図3のステップ12の内容を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の電波時計が実行する図3のステップ14の内容を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の電波時計の時計本体の裏蓋を外した状態の要部を示す図である。
【図13】第2実施形態の電波時計のコアを示す平面図である。
【図14】第2実施形態の電波時計のスイッチ部の構成を示す図である。
【図15】第3実施形態の電波時計の時計本体の裏蓋を外した状態の要部を示す図である。
【図16】図15のXVI-XVI線矢視図である。
【図17】第3実施形態の電波時計のコアを示す平面図である。
【図18】図18はコア部分の平面図であり、図18(A)は短尺のコア部分の平面図、図18(B)は長尺のコア部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電波時計の制御構成を示すブロック図、図2は、電波時計が実行するメイン制御処理の内容を示すフローチャート、図3は、電波時計が実行する回路制御処理の内容を示すフローチャート、図4は、電波時計が実行する電波受信処理の内容を示すフローチャートである。
【0016】
まず、図1および図8を用いて電波時計の制御構成を説明する。
本実施形態の電波時計の時計ムーブメント101は、電波受信機能とモータ駆動用機能とを兼用した兼用コイル12bを備えた電磁構造体DKと、使用者の操作によりスイッチ動作されるスイッチ部13と、受信回路6と、モータ駆動回路10bと、このモータ駆動回路10bにより駆動される被駆動体Sと、電波受信の際は、前記スイッチ部13の操作により前記兼用コイル12bを前記受信回路6に接続し、この接続された兼用コイル12bにより電波を受信するように制御し、この電波受信が終了した後は前記兼用コイル12bを前記モータ駆動回路10bに接続し、この接続された前記兼用コイル12bにより前記モータ駆動回路10bを動作させて、前記被駆動体Sを駆動するように制御する制御部であるCPU(Central Processing Unit)2とを備えている。
時計ムーブメント101は、このほかに、制御プログラムや制御データ等を格納したROM(Read Only Memory)1と、前記CPU2に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)3と、針位置を修正(補正)するために針位置を検出する針位置検出回路7と、現在時刻を表示する現在時刻表示部11と、回路制御部14と、ステッピングモータ9のロータ22(図5および図6)の停止状態を検出するロータ停止検出部15とを備えている。なお、図1において符号100はバスである。
受信回路6は、時刻コードが含まれる標準電波をアンテナ構造体5を通じて受信する。被駆動体Sは、秒針、分針および時針であり、ステッピングモータ8,9により駆動される。モータ駆動回路10bのほかに、モータ駆動回路10aも備える。
電磁構造体DKは、ステッピングモータ8、9とコア27とを備えている。
【0017】
ここで、時計ムーブメント101におけるCPU2について詳述すれば、CPU2はROM1に格納された制御プログラム等と共働して、例えば次のように機能する。
CPU2は、日付や時刻を計時する時刻カウンタを備え、時刻カウンタは、図示しない分周回路からのクロックによりカウントアップされてCPU時刻である現在時刻の計時を行う。
また、CPU2は、時計カウンタとは別に、針位置を計数する針位置検出回路(針位置カウンタ)7と接続され、この針位置検出回路7が上記ステッピングモータが作動するごとにカウントアップされたとき、そのカウンタ値に針位置を同期させることによって、現在時刻を針位置によって表示させる。
さらに、CPU2は、標準電波を受信する時刻になると、スイッチ部13を通じて、コイル12bをモータ駆動回路10bから切り離す一方でそのコイル12bを受信回路6に接続し、電波受信後には、スイッチ部13を通じて、コイル12bを受信回路6から切り離す一方でコイル12bをモータ駆動回路10bに接続する。なお、上記受信回路6はアンテナ利得部を備える。このアンテナ利得部は、コイルのインダクタンスに対して適正な受信周波数が得られるようなCとRが選択された周波数決定回路を含む。
また、CPU2は、針位置とCPU時刻とが一致しない場合には、公知の方法によって上記ステッピングモータを作動させて針位置を修正させる。
【0018】
次に、上記構成の時計モジュール101における制御処理についてフローチャートを参照しながら説明する。
【0019】
図2は、時計モジュールのCPUにより実行されるメイン制御処理のフローチャートである。
この実施形態の時計モジュール101においては電源投入時からメイン制御処理が開始される。
すなわち、CPU2は、現在時刻表示部11の表示駆動などの表示処理を行い(ステップ1)、現在時刻を計時する計時処理を行うとともに針位置検出回路7に針位置検出処理を行わせる(ステップ2)。そして、CPU2は後述の回路制御処理を行う(ステップ3)。この回路制御処理を行った後、CPU2は、CPU時刻と針位置が一致しているか否かを判断し(ステップ4)、CPU時刻と針位置が一致している場合(ステップ4でYESの場合)、各種エラー処理などのその他の機能処理を行い(ステップ5)、一方、CPU時刻と針位置とが一致していない場合(ステップ4でNOの場合)、公知の方法によって針位置修正処理を行い(ステップ6)、その後はステップ3からの処理を繰り返す。
【0020】
次に、メイン制御処理のステップ3で実行される回路制御処理を図3のフローチャートを用いて説明する。
この回路制御処理においては、CPU2は、電波受信スイッチの状態がONか否かを監視する(ステップ11)。電波受信スイッチがONの場合(ステップ11でYESの場合)、スイッチ部13を通じて、ステッピングモータ9とアンテナ構造体5とで兼用するコイル12bをモータ駆動回路10bから切り離す一方でそのコイル12bを受信回路6に接続する(ステップ12)。そして、CPU2は、後述の電波受信処理を行う(ステップ13)。電波受信処理の後、CPU2は、スイッチ部13を通じて、コイル12bを受信回路6から切り離す一方で、そのコイル12bをモータ駆動回路10bに接続する(ステップ14)。そして、CPU2はメイン制御処理に戻ってステップ4からの処理を実行する。
一方、CPU2は、電波受信スイッチがONでない場合(ステップ11でNOの場合)、電波受信スイッチの状態を継続して監視する。
【0021】
続いて、回路制御処理のステップ13で実行される電波受信処理を図4のフローチャートを用いて説明する。
電波受信処理においては、CPU2は、安定的な電波受信のため受信回路6の増幅率を調整し(ステップ21)。ロータ停止検出手段15にロータ停止検出処理を行わせる(ステップ22)。このロータ停止検出処理はノイズ除去のための処理であり、本実施形態においては、この処理は、CPU2がロータ停止検出手段15を通じてコイル12bに流れる電流を検出することにより行われる。ロータ停止検出処理を行う理由は、ロータ22が回転していると、受信した標準電波にノイズが乗ることになるからである。次に、CPU2は、受信した標準電波についてデコード処理を行って(ステップ23)、時刻コードを抽出する。次に、CPU2は、この時刻コードによって取得した時刻(検出時刻)とCPU時刻とが一致するか否かを判断する(ステップ24)。検出時刻とCPU時刻とが一致しない場合(ステップ24でNOの場合)、CPU時刻の修正を行い(ステップ25)、回路制御処理に戻りステップ14の処理を実行する。一方、検出時刻とCPU時刻とが一致する場合(ステップ24でYESの場合)、回路制御処理に戻りステップ14の処理を実行する。
【0022】
次に、ステッピングモータ9およびアンテナ構造体5の構造を図5から図7を用いて説明する。ここで、図5は、電波時計の時計本体の裏蓋を外した状態の要部を示す図である。図6は、図5のVI-VI線矢視図である。また、図7は、ステッピングモータおよびアンテナ構造体のコイルが巻回されたコアを示す平面図である。
【0023】
図5および図6において符号21は時計ケースであり、ステッピングモータ8,9を構成するロータ22、ステータ23およびコイル12a,12bはこの時計ケース21内に収納されている。
本実施形態では、ステッピングモータ8,9はほぼ同じ構成となっていることから、以下では、ステッピングモータ9について説明し、ステッピングモータ8についてはステッピングモータ9と同一構成部材には同一符号を付してその説明を適宜省略する。
【0024】
コア27としては例えば安価なフェライトが用いられる。ただし、コア27は、アモルファス金属等の比透磁率が高く、導電率が小さい磁性材料からなる複数の板状部材を積層して形成されたものを用いてもよい。この場合の板状部材としては、具体的には、アモルファス合金、Fe-Cu-Nb-Si-B系等のナノ結晶磁性合金、Fe-Si系磁性合金などの軟磁性金属箔が用いられる。しかし、これに限られるものではないことは言うまでもない。
コア27は、図7に示すように、長手方向中央部に位置する幅狭の直状部27aと、直状部27aの両側に張り出すコア張出部27b,27bと、コア張出部27b,27bより外側に延び出す延出部27c,27cとを有している。
ここで、直状部27aはコイル巻回部を構成し、そこにはコイル12bが巻回されている。また、コア張出部27b,27bにはステータ23が取り付けられている。また、延出部27c,27cは集磁部を構成している。そして、コア張出部27b,27bおよび延出部27c,27cの端縁の中で時計ケース21の内周面と対峙する外側部分はその時計ケース21の内周面に沿う形状に形成されている(図5)。
なお、この実施形態では、延出部27c,27cはコア27の一部を構成しているが、延出部27c,27cはコアと別体として構成されていてもよい。要は、延出部27c,27cとコアとが磁気的に連結されていることである。
【0025】
ロータ22は、図6に示すように、時計ケース21内に設けられた軸受部材24に支持されている。ロータ22の上端部は軸受部材24を貫通し、その上端部の軸受部材24から上方に突出する部分には歯車25aが設けられている。この歯車25aは指針を駆動するための歯車25bに噛合している。一方、ロータ22の下端部には永久磁石(図示せず)が設けられている。そして、このロータ22の下端部はステータ23の孔23a内に臨んでいる。
【0026】
ステータ23は、図5に示すように、上記孔23aに通ずるギャップ23bを有している。そして、ステータ23は、このギャップ23bの両側を磁極化することで、コイル12bから離間した位置でロータ22を回転させるようになっている。
【0027】
続いて、コア27およびステータ23の取付構造について説明する。
ステータ23は、基端部がコア張出部27b,27bに重ね合わされた状態とされる。
コア27は、ステータ取付ねじ28によって、時計ケース21に形成されたボス26に取り付けられる。コア27の取付位置はステータ23とボス26との間であり、コア27は、ステータ取付ねじ28によって、ボス26にステータ23と共締めされる。
【0028】
以上、ステッピングモータ9の構造について説明したが、本実施形態においては、コイル12bおよびコア27はアンテナコイルおよびアンテナコアにも使用可能となっている。そして、アンテナコイルおよびアンテナコアとしてコイル12bおよびコア27を使用する場合には、コイル12bがモータ駆動回路10bから切り離されて受信回路6に接続される。
【0029】
なお、本実施形態の電波時計では、ステッピングモータ8についても、上述したようにステッピングモータ9とほぼ同様の構成となっているが、ステッピングモータ8のモータコイル12aはアンテナコイルとしては使用できない。
【0030】
次に、コイル12bをモータ駆動回路10bまたは受信回路6に選択的に接続するためのスイッチ部13の構成を図8を用いて説明する。
スイッチ部13は二つの切換スイッチ13a,13bを備えている。そして、スイッチ部13は、二つの切換スイッチ13a,13bを動作させることによって、コイル12bをモータ駆動回路10bまたは受信回路6に選択的に接続するようになっている。
【0031】
本実施形態の電波時計によれば次のような効果が得られる。
コイル12bは、ステッピングモータ9を駆動する際にはモータ駆動回路10bに接続され、受信の際には受信回路6に接続されるので、モータ専用のコイルとアンテナ専用のコイルとを別々に設けなくても済むので、その分、コイルの占有容積の低減が図れ、時計の小型化、コストの低減が図れることとなる。
ロータ22の停止状態が検出された後に電波受信を行うので、受信安定化を図ることができる。例えば、ロータが停止しないとそのノイズがアンテナへ回り込み受信回路を壊す可能性があるから、ロータの残振動がなくなるまで待って電波受信を行うことは極めて有益である。
コア27においてコイル巻回部27aからコイル張出部27b,27bを超えて両側へ大きく突出する集磁部27c,27cが設けられていることから、集磁能力が高まり、電波が捉えやすくなる。
ステータ23が副磁路として機能するので、コイル12bの近くに金属がある場合(仮に図5のMの位置に金属がある場合)でも、コイル12bと金属との間にコア27に連なるステータ23が位置しているので、集磁能力の低下原因となる磁束ロスをなくすことができる。
【0032】
[第2実施形態]
図9および図14は、第1実施形態に係る電波時計の制御構成を示すブロック図である。
本実施形態の電波時計の時計ムーブメント201は、電波受信機能とモータ駆動用機能とを兼用した兼用コイル12a、12bを備えた電磁構造体DKと、使用者の操作によりスイッチ動作されるスイッチ部43と、受信回路6と、モータ駆動回路10a、10bと、 このモータ駆動回路により駆動される被駆動体S1,S2と、電波受信の際は、前記スイッチ部43の操作により前記兼用コイル12a、12bを前記受信回路6に接続し、この接続された兼用コイル12a、12bにより電波を受信するように制御し、この電波受信が終了した後は前記兼用コイル12a、12bを前記モータ駆動回路10a、10bに接続し、この接続された前記兼用コイル12a、12bにより前記モータ駆動回路10a、10bを動作させて、前記被駆動体を駆動するように制御する制御部であるCPU2とを備えている。
時計ムーブメント201は、このほかに、ROM(Read Only Memory)1と、RAM(Random Access Memory)3と、針位置検出回路7と、現在時刻を表示する現在時刻表示部11と、回路制御部14と、ステッピングモータ8,9のロータ22の停止状態を検出するロータ停止検出部15とを備えている。なお、図9において符号200はバスである。
受信回路6は、時刻コードが含まれる標準電波をアンテナ構造体5を通じて受信する。被駆動体S1、S2は、それぞれ秒針、分針および時針であり、ステッピングモータ8,9により駆動される。
電磁構造体DKは、ステッピングモータ8、9とコア47とを備えている。
【0033】
この第2実施形態の電波時計が第1実施形態の電波時計と異なる点は、二つのステッピングモータ8,9のモータコイルおよびモータコアをアンテナ構造体5のアンテナコイルおよびアンテナコアとして使用する点である。この第2実施形態の電波時計はその他の点では第1実施形態の電波時計と同様に構成されており、同一の構成部材については同一の符号を用い、適宜、その説明は省略する。
【0034】
本実施形態の電波時計においても、第1実施形態の電波時計と同様に、図2から図4の処理がなされる。
ただし、図3のステップ12のコイルの切離し・接続処理においては、図10に示すように、CPU2は、スイッチ部43を通じて二つのコイル12a,12bとモータ駆動回路10a,10bの切離しを行い(ステップS31)、さらに、スイッチ部43を通じて、二つのコイル12a,12bの直列接続を行うとともに二つのコイル12a,12bと受信回路6を接続する(ステップ32)。
また、図3のステップ14のコイルの切離し・接続処理においては、図11に示すように、CPU2は、スイッチ部43を通じて、二つのコイル12a,12bと受信回路6の切離しを行うとともに二つのコイル12a,12bの直列接続を解除し(ステップS41)、さらに、スイッチ部43を通じて二つのコイル12a,12bとモータ駆動回路10a,10bを接続する(ステップ42)。
【0035】
次に、ステッピングモータ9およびアンテナ構造体5の構造を図12および図13を用いて説明する。ここで、図12は、電波時計の時計本体の裏蓋を外した状態の要部を示す図である。また、図13はステッピングモータおよびアンテナ構造体のコイルが巻回されるコアを示す平面図である。
【0036】
本実施形態のコア37としては例えば安価なフェライトが用いられる。ただし、コア37は、アモルファス金属等の比透磁率が高く、導電率が小さい磁性材料からなる複数の板状部材を積層して形成されたものを用いてもよい。この場合の板状部材としては、具体的には、アモルファス合金、Fe-Cu-Nb-Si-B系等のナノ結晶磁性合金、Fe-Si系磁性合金などの軟磁性金属箔が用いられる。しかし、これに限られるものではないことは言うまでもない。
コア37は、本来は独立しているステッピングモータ8,9の二つのコアを一体化したものである。すなわち、コア37は、図13に示すように、ステッピングモータ8,9のコイル12a,12bが巻回される部分(コイル巻回部)である幅狭の直状部37a,37bと、ステッピングモータ8のステータ23の基端部に重ね合わされるコア張出部37c,37cと、ステッピングモータ9のステータ23の基端部に重ね合わされるコア張出部37d,37dと、隣り合うコア張出部37c,37dを繋ぐ繋ぎ部37eと、両端側のコア張出部37c,37dより外側に延び出す延出部37f,37fとを有している。この延出部37f,37fは集磁部を構成している。
なお、この実施形態では、延出部37f,37fはコア37の一部を構成しているが、延出部37f,37fはコアと別体であってもよい。要は、延出部37f,37fとコアとが磁気的に連結されていることである。
また、コア37の直状部37a,37bに巻回されるコイル12a,12bは直列接続可能となっており、アンテナコイルとして使用する場合には直列接続され、モータコイルとして使用する場合には直列接続が解除される。
【0037】
次に、コイル12a,12bをモータ駆動回路10a,10bまたは受信回路6に選択的に接続するためのスイッチ部43を図14を用いて説明する。
スイッチ部43はスイッチ43a,43b,43c,43d,43eを備えている。このうちスイッチ43a,43bはコイル12a,12bの各二つの端子の中の一方の端子をモータ駆動回路10a,10bまたは受信回路6に選択的に接続させるためのスイッチである。一方、スイッチ43c,43d,43eは電波受信の際にコイル12a,12bを直列に接続するとともにコイル12a,12bの各二つの端子の中の他方の端子をモータ駆動回路10a,10bから切り離すためのスイッチである。
【0038】
本実施形態の電波時計によれば次のような効果が得られる。
コイル12a,12bは、ステッピングモータ8,9を駆動する際にはモータ駆動回路10a,10bに接続され、受信の際には受信回路6に接続されるので、モータ専用のコイルとアンテナ専用のコイルとを別々に設けなくても済むので、その分、コイルの占有容積の低減が図れ、時計の小型化、コストの低減が図れることとなる。
ロータ22の停止状態が検出された後に電波受信を行うので、受信安定化を図ることができる。
複数のコイル12a,12bが単一のコア37に巻装されているので、全体として電磁構造体の構成が簡素となり、組立が容易となると共にコストの低減が図れることになる。
コア37のコア張出部37c,37dの外側に集磁部が設けられているので、電波が捉えやすくなり、電波の受信性能がより向上することになる。
アンテナコアとして使用されるステッピングモータ8,9のコア部分は一体化され一つのコアとなっているので、磁気がアンテナコイルにうまく流れていくため、十分な空中電力を捉えることが可能となる。
電波受信の際にコイル12a,12bを直列接続しているので大きな利得が得られ、電波受信感度が向上し、信頼性が増すことになる。
ステータ23が副磁路として機能するので、コイル12bの近くに金属がある場合でも、コイル12bと金属との間にステータ23が位置しているので、集磁能力の低下原因となる磁束ロスをなくすことができる。
【0039】
[第3実施形態]
図15から図17には第3実施形態の電波時計が示されている。図15は、電波時計の時計本体の裏蓋を外した状態の要部を示す図、図16は、図15のXVI−XVI線矢視図である。また、図17は、ステッピングモータおよびアンテナ構造体のコイルが巻回されたコア本体を示す平面図である。また、図18はコア部分の平面図であり、さらに詳しくは、図18(A)は短尺のコア部分の平面図、図18(B)は長尺のコア部分の平面図である。なお、本実施形態の制御構成は、図9に示す第2実施形態に係る電波時計の制御構成と同じであり、第2実施形態と同様に機能する。
【0040】
この第3実施形態の電波時計は、二つのステッピングモータ8,9のモータコイルおよびモータコアをアンテナ構造体5のアンテナコイルおよびアンテナコアとしても使用する点で第2実施形態の電波時計と同じである。しかし、コアの一部だけがコア張出部から外側に延出され当該延出部が集磁部を構成している点が第2実施形態の電波時計とは異なっている。その他の構成については、第1実施形態および第2実施形態と同様であるので、同一の構成部材については同一の符号を用い、適宜、その説明は省略する。
【0041】
本実施形態のコア47は、図16に示すように、短尺で厚肉のコア部分47a,47b(図18(A))と、長尺で薄肉のコア部分47c(図18(B))とから構成されている。そして、コア部分47a,47bおよびコア部分47cの材料は第2実施形態と同じとすることができる。例えば、コア部分47a,47bとコア部分47cの一方を焼結によるフェライトとし、他方を金属のプレスで形成することもできるし、その逆もできる。また、両者とも同じとすることもできる。しかし、コア部分47cの方は、薄く長尺なので加工が容易なアモルファス金属等によって形成されていることが好ましい。
短尺のコア部分47a,47bのうちコア部分47aは、ステッピングモータ8に対応するもので、図18(A)示すように、コイル12aが巻回される部分(コイル巻回部)である直状部47a−1と、直状部47a−1の両側に位置し直状部47a−1の外側に張り出すコア張出部47a−2,47a−2とから構成されている。このコア張出部47a−2,47a−2は、ステッピングモータ8のステータ23の基端部が重ね合わされる部分である。また、短尺のコア部分47bは、ステッピングモータ9に対応するもので、図18(A)に示すように、コイル12bが巻回されるコイル巻回部である直状部47b−1と、直状部47b−1の両側に位置し直状部47b−1の外側に張り出すコア張出部47b−2,47b−2とから構成されている。このコア張出部47b−2,47b−2は、ステッピングモータ9のステータ23の基端部が重ね合わされる部分である。
一方、長尺のコア部分47cは、ステッピングモータ8,9の双方に対応するもので、図18(B)に示すように、コイル12aが巻回される部分(コイル巻回部)である直状部47c−1と、直状部47c−1の両側に位置し直状部47c−1の外側に張り出すコア張出部47c−2,47c−2と、コイル12bが巻回される部分(コイル巻回部)である直状部47c−3と、直状部47c−3の両側に位置し直状部47c−3の外側に張り出すコア張出部47c−4,47c−4と、隣り合うコア張出部47c−2,47c−4を繋ぐ繋ぎ部47c−5と、両端側に位置するコア張出部47c−2,47c−4より外側に延び出す延出部47c−6,47c−6とから構成されている。この延出部47c−6,47c−6は集磁部を構成している。
そして、短尺のコア部分47a,47bと長尺のコア部分47cとは、コイル巻回部およびコイル張出部で重畳されるように重ね合わされ、コイル巻回部にはコイル12a,12bが巻回され、コイル張出部にはステッピングモータ8,9のステータ23が重ね合わされた状態で取り付けられる。この取付構造は第2実施形態の場合と同じである。
なお、この実施形態では、延出部47c−6,47c−6はコア47の一部を構成しているが、延出部47c−6,47c−6はコアと別体であってもよい。要は、延出部47c−6,47c−6とコアとが磁気的に連結されていることである。
また、第3実施形態では、長尺のコア部分47cを短尺のコア部分47a,47bとステータ23との間に設けたが、ステータ23とは逆の場所にあってもよい。
【0042】
本実施形態の電波時計によれば次のような効果が得られる。
コイル12a,12bは、ステッピングモータ8,9を駆動する際にはモータ駆動回路10a,10bに接続され、受信の際には受信回路6に接続されるので、モータ専用のコイルとアンテナ専用のコイルとを別々に設けなくても済むので、その分、コイルの占有容積の低減が図れ、時計の小型化、コストの低減が図れることとなる。
ロータ22の停止状態が検出された後に電波受信を行うので、受信安定化を図ることができる。
複数のコイル12a,12bがコア47に巻装されているので、全体として電磁構造体の構成が簡素となり、組立が容易となると共にコストの低減が図れることになる。
短尺で厚肉の複数のコア部分47a,47bと、長尺で薄肉の1つのコア部分47cとからコア47が形成されているので、コア材料が少なくて済み、その分コストの低減が図れることになる。
コア47のコア張出部の外側に集磁部が設けられているので、電波が捉えやすくなり、電波の受信性能がより向上することになる。
アンテナコアとして使用されるステッピングモータ8,9のコア部分は一体化され一つのコアとなっているので、磁気がアンテナコイルにうまく流れていくため、十分な空中電力を捉えることが可能となる。
電波受信の際にコイル12a,12bを直列接続しているので大きな利得が得られ、電波受信感度が向上し、信頼性が増すことになる。
ステータ23が副磁路として機能するので、コイル12bの近くに金属がある場合でも、コイル12bと金属との間にステータ23が位置しているので、集磁能力の低下原因となる磁束ロスをなくすことができる。
【符号の説明】
【0043】
5 アンテナ構造体
6 受信回路
8,9 ステッピングモータ
10,10b モータ駆動回路
12a,12b コイル
27,37,47 コア
13,43 スイッチ部
15 モータ停止検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波受信機能とモータ駆動用機能とを兼用した兼用コイルを備えた電磁構造体と、
使用者の操作によりスイッチ動作されるスイッチ部と、
受信回路と、
モータ駆動回路と、
このモータ駆動回路により駆動される被駆動体と、
電波受信の際は、前記スイッチ部の操作により前記兼用コイルを前記受信回路に接続し、この接続された兼用コイルにより電波を受信するように制御し、この電波受信が終了した後は前記兼用コイルを前記モータ駆動回路に接続し、この接続された前記兼用コイルにより前記モータ駆動回路を動作させて、前記被駆動体を駆動するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電波時計。
【請求項2】
前記電磁構造体は、前記被駆動体を回転駆動するロータを含み、電波受信の際に、前記モータ駆動回路により回転駆動されている前記ロータの停止状態を検出するロータ停止検出手段を備え、前記ロータ停止検出手段により前記ロータの停止状態が検出された後に電波受信を行うことを特徴とする請求項1に記載の電波時計。
【請求項3】
前記電磁構造体は、複数の兼用コイルと、この複数の兼用コイルとともに巻装された単一のコアと、このコアの両端からそれぞれ延出された集磁部とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の電波時計。
【請求項4】
前記兼用コイルとして複数のコイルを備えており、前記モータ駆動回路は、複数のモータ駆動回路を備え、前記スイッチ手段によりモータ駆動回路が選択された際は、前記複数のコイルを前記複数のモータ駆動回路に対して1対1で接続し、前記スイッチ手段により電波受信回路が選択された際は、前記複数のコイルが前記受信回路に対し直列接続されるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の電波時計。
【請求項5】
前記コアは、短尺で厚肉の複数の第1のコア部分と、長尺で薄肉の1つの第2のコア部分とから構成され、前記複数の第1のコア部分は前記第2のコア部分に重畳された状態で互いに離れた位置に設けられ、前記複数の第1のコア部分と前記第2のコア部分との重畳部分には前記複数のコイルが1つずつ巻装されていることを特徴とする請求項4に記載の電波時計。
【請求項6】
前記第2のコア部分はアモルファス金属によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−266302(P2010−266302A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117150(P2009−117150)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】