電波腕時計
【課題】電池電圧の低下を警告する警告表示の機能を備える場合において、不要な警告表示を避けることのできる電波腕時計を提供する。
【解決手段】時刻情報を含む電波を受信し、受信した電波に含まれる時刻情報に応じた時刻を表示し、内蔵する電池の電圧が低下した場合に、当該電圧の低下を警告する表示を行う電波腕時計であって、電波の受信処理の終了後、所定の条件を満たすまでの間、電圧低下の警告の表示を制限する電波腕時計である。
【解決手段】時刻情報を含む電波を受信し、受信した電波に含まれる時刻情報に応じた時刻を表示し、内蔵する電池の電圧が低下した場合に、当該電圧の低下を警告する表示を行う電波腕時計であって、電波の受信処理の終了後、所定の条件を満たすまでの間、電圧低下の警告の表示を制限する電波腕時計である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の時刻情報供給源から受信した電波に基づいて時刻の修正を行う電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
内蔵されている電池が供給する電池電圧により動作する腕時計がある。このような腕時計においては、電池電圧が低下すると高負荷の処理に支障が出る場合がある(例えば特許文献1参照)。そこで、電池電圧が低下した場合に、例えば2秒運針などによって警告表示を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−337380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
腕時計の中には、時刻情報を含んだ電波を外部の時刻情報供給源(例えばGPS衛星等)から受信して時刻の修正を行う電波腕時計がある。このような電波腕時計は、電波の受信処理を行うと一時的に電池電圧が低下することがある。この場合の電池電圧の低下は一時的なものだが、このような電池電圧の低下が生じた場合にも前述した警告表示を行うこととすると、電池に何らかの問題が生じていると使用者に誤解させるおそれがある。また、警告表示が解除されるまで腕時計が備える機能の一部が制限され、使用できなくなる場合もあり得る。
【0005】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであって、その目的の一つは、電池電圧の低下を警告する警告表示の機能を備える場合において、不要な警告表示を避けることのできる電波腕時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電波腕時計は、時刻情報を含む電波を受信する電波受信手段と、前記受信した電波に含まれる時刻情報に応じた時刻を表示する時刻表示手段と、内蔵する電池の電圧が低下した場合に、当該電圧の低下を警告する表示を行う電圧警告表示手段と、を含み、前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了後、所定の条件を満たすまでの間、前記警告の表示を制限することを特徴とする。
【0007】
前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が実行する受信処理の種類に応じて決定することとしてもよい。
【0008】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が前記受信処理の実行に要した時間に応じて決定することとしてもよい。
【0009】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が成功した場合、前記警告の表示を制限し、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示を制限しないこととしてもよい。
【0010】
さらに、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示として、前記受信処理が行われていない場合における警告の表示とは異なる種類の表示を行うこととしてもよい。
【0011】
また、前記電波腕時計において、前記電波受信手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した状態で前記電波の受信の指示を使用者から受け付けた場合、前記電池の電圧が所定の閾値以上に回復するのを待ってから、前記指示に応じた受信処理を実行することとしてもよい。
【0012】
また、前記電波腕時計は前記電池の温度を検出する温度センサをさらに含み、前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記温度センサが検出した温度に応じて決定することとしてもよい。
【0013】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に、前記警告の表示を行い、前記電波受信手段による受信処理の終了後、前記電池の電圧が前記所定の閾値以上に回復するまでの間、前記警告の表示を制限することとしてもよい。
【0014】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了時における前記電池の電圧の値を取得し、当該取得した電圧の値に応じて、前記警告の表示を制限する期間を決定することとしてもよい。
【0015】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が行われていないときには、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に前記警告の表示を行い、前記受信処理の終了後は、前記電池の電圧が前記所定の閾値よりも小さな制限時閾値未満に低下した場合だけ前記警告の表示を行うことにより、前記警告の表示を制限することとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、時刻情報を含んだ電波の受信が完了してから所定の条件を満たすまでの間は、電池電圧の低下を警告する警告表示を抑制するので、電池に問題が生じていない場合に電池電圧に関する警告表示を行ってしまわないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る電波腕時計の外観の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電波腕時計の内部構成を示す構成ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電波腕時計が実現する機能を示す機能ブロック図である。
【図4】受信処理に伴う電池電圧の変化を示す図である。
【図5】複数回の受信処理が行われた場合の電池電圧の変化を示す図である。
【図6】所要時間の異なる受信処理のそれぞれに応じて設定される警告制限期間を示す図である。
【図7】警告制限期間を設定する処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電波腕時計が実行する処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電波腕時計が実行する処理の流れの別の例を示すフロー図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る電波腕時計の外観の一例を示す平面図である。
【図11】図10における状態表示針の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る電波腕時計1は、時刻情報を含んだ電波を受信し、当該受信した電波に含まれる時刻情報を用いて自身が計時している時刻の修正を行う。図1は、本実施形態に係る電波腕時計1の外観の一例を示す平面図であり、図2は、電波腕時計1の内部構成を示す構成ブロック図である。これらの図に示されるように、電波腕時計1は、アンテナ10と、受信回路20と、制御回路30と、二次電池40と、電池電圧検出部41と、スイッチ42と、太陽電池43と、温度センサ44と、駆動機構50と、時刻表示部51と、操作部60と、を含んで構成される。
【0020】
アンテナ10は、時刻情報を含んだ電波として、衛星から送信される衛星信号を受信する。特に本実施形態では、アンテナ10は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される周波数約1.6GHzの電波を受信するパッチアンテナである。GPSは、衛星測位システムの一種であって、地球の周囲を周回する複数のGPS衛星によって実現されている。これらのGPS衛星は、それぞれ高精度の原子時計を搭載しており、原子時計によって計時された時刻情報を含んだ衛星信号を周期的に送信している。
【0021】
受信回路20は、アンテナ10によって受信された衛星信号を復号して、復号の結果得られる衛星信号の内容を示すビット列(受信データ)を出力する。具体的に、受信回路20は、高周波回路(RF回路)21及びデコード回路22を含んで構成されている。
【0022】
高周波回路21は、高周波数で動作する集積回路であって、アンテナ10が受信したアナログ信号に対して増幅、検波を行って、ベースバンド信号に変換する。デコード回路22は、ベースバンド処理を行う集積回路であって、高周波回路21が出力するベースバンド信号を復号してGPS衛星から受信したデータの内容を示すビット列を生成し、制御回路30に対して出力する。
【0023】
制御回路30は、マイクロコンピュータ等であって、演算部31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、RTC(Real Time Clock)34と、モータ駆動回路35と、を含んで構成される。
【0024】
演算部31は、ROM32に格納されたプログラムに従って各種の情報処理を行う。本実施形態において演算部31が実行する処理の詳細については、後述する。RAM33は、演算部31のワークメモリとして機能し、演算部31の処理対象となるデータが書き込まれる。特に本実施形態では、受信回路20によって受信された衛星信号の内容を表すビット列(受信データ)が、RAM33内のバッファ領域に順次書き込まれる。RTC34は、電波腕時計1内部での計時に使用されるクロック信号を供給する。本実施形態に係る電波腕時計1では、演算部31が、RTC34から供給される信号によって計時された内部時刻を、受信回路20によって受信された衛星信号に基づいて修正して、時刻表示部51に表示すべき時刻(表示時刻)を決定する。さらに、モータ駆動回路35が、この決定された表示時刻に応じて、後述する駆動機構50に含まれるモータを駆動する駆動信号を出力する。これにより、制御回路30によって生成された表示時刻が時刻表示部51に表示される。
【0025】
二次電池40は、リチウムイオン電池等であって、太陽電池43によって発電された電力を蓄積する。そして、蓄積された電力を、受信回路20や制御回路30に対して供給する。電池電圧検出部41は、例えば抵抗器等を含んで構成される。制御回路30は、二次電池40から電池電圧検出部41に流れる電流を計測するなどの方法で、二次電池40の電圧(以下、電池電圧という)を検出する。
【0026】
二次電池40から受信回路20への電力供給路の途中にはスイッチ42が設けられており、このスイッチ42のオン/オフは制御回路30が出力する制御信号によって切り替えられる。制御回路30がスイッチ42のオン/オフを切り替えることで、受信回路20の動作タイミングが制御される。受信回路20は、スイッチ42を介して二次電池40から電力が供給されている間だけ動作し、その間にアンテナ10が受信した衛星信号の復号を行う。
【0027】
太陽電池43は、文字板53の下に配置されており、電波腕時計1に対して照射される太陽光などの外光によって発電し、発電した電力を二次電池40に供給する。
【0028】
温度センサ44は、電波腕時計1内に配置されており、二次電池40周辺の温度を検出し、検出結果を制御回路30に入力する。制御回路30は、温度センサ44による温度の検出結果を用いて、例えば温度が所定の範囲外にあるときは二次電池40への充電を制限する制御を行う。
【0029】
駆動機構50は、前述したモータ駆動回路35から出力される駆動信号に応じて動作するステップモータと、輪列と、を含んで構成され、ステップモータの回転を輪列が伝達することによって、指針52を回転させる。時刻表示部51は、指針52及び文字板53によって構成される。指針52は、時針52a、分針52b、及び秒針52cからなり、これらの指針52が文字板53上を回転することによって、現在時刻が表示される。なお、文字板53上には、時刻表示のための目盛だけでなく、時刻情報受信の成否をユーザに示すためのマーカーなどが表示されてもよい。
【0030】
操作部60は、例えば竜頭や操作ボタン等であって、電波腕時計1の使用者による操作を受け付けて、その操作内容を制御回路30に対して出力する。制御回路30は、操作部60が受け付けた操作入力の内容に応じて各種の処理を実行する。特に本実施形態では、制御回路30は、使用者による操作部60に対する操作入力に応じて、電波の受信処理を行う。
【0031】
以下、本実施形態において制御回路30の演算部31が実行する処理の具体例について、説明する。演算部31は、ROM32に格納されたプログラムを実行することにより、機能的に、図3に示すように、衛星信号受信部31aと、時刻修正部31bと、電圧警告表示部31cと、を実現する。
【0032】
衛星信号受信部31aは、GPS衛星から送信される衛星信号を受信することにより、その中に含まれる時刻情報のデータを取得する。なお、衛星信号受信部31aは、定期的にこのような時刻情報の取得処理を実行してもよいし、使用者の操作部60に対する指示操作に応じてこれらの処理を実行してもよい。また、電波腕時計1は、自身の電波受信環境(信号強度など)に応じて、衛星信号の受信タイミングを決定してもよい。特に使用者の指示操作に応じて電波の受信処理を行った場合、衛星信号受信部31aは、その受信結果(受信処理に成功したか否か)を表示してもよい。この場合、衛星信号受信部31aは、例えば秒針52cを回転させて、文字板53上に配置された受信の成否を示すマーカーのいずれかを指し示すことによって、受信処理に成功したか否かを使用者に対して提示する。
【0033】
時刻修正部31bは、衛星信号受信部31aがGPS衛星から受信した情報を用いて、電波腕時計1の内部で計時されている内部時刻の修正を行う。
【0034】
電圧警告表示部31cは、電池電圧が低下した場合に、そのことを使用者に警告する警告表示を行う。具体的に、電圧警告表示部31cは、定期的に電池電圧検出部41により電池電圧を測定し、その測定結果が所定の閾値Vthを下回るときに警告表示を行う。電圧警告表示部31cは、例えば時刻表示用の指針52を変則運針させたり、状態表示用の針を用いて表示するなど、各種の方法で警告表示を行うことができる。以下では一例として、電圧警告表示部31cは、秒針52cを2秒運針(秒針52cを2秒毎に2秒分回転させる運針)させることにより電池電圧低下の警告表示を行うこととする。このような警告表示を行うことにより、二次電池40の充電が必要な場合に、電波腕時計1はそのことを使用者に知らせることができる。
【0035】
さらに本実施形態において、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aによる衛星信号の受信処理終了後、所定の条件が満たされるまで、上述した警告表示の実施を制限することとする。これは、以下のような理由による。受信処理の際には受信回路20が動作して二次電池40から大きな電流が流れるため、受信処理の実行中、及び実行直後は、一時的に電池電圧が低下する。図4は、このような受信処理に伴う電池電圧の変化を示すグラフであって、横軸は時間経過を、縦軸は電池電圧の大きさを、それぞれ示している。また、時刻t0及びt1は、それぞれ受信処理の開始タイミング及び終了タイミングを示している。同図に示されるように、受信処理に伴って電池電圧は閾値Vth未満にまで低下するが、このような電池電圧の低下は一時的なものであって、通常、受信処理が終了してしばらく時間が経つと電池電圧は再び閾値Vthを超えて受信開始前のレベル近くまで回復する。なお、図4の時刻t2は、受信処理の後、電池電圧が閾値Vthまで回復するタイミングを示している。このような受信処理に伴う一時的な電池電圧の低下が生じた場合にも警告表示を行うこととすると、本来的には電池電圧に問題がないにも関わらず、利用者に対して電池電圧の低下に対する対処が必要であるかのような表示が行われてしまう。特に二次電池40がリチウムイオン電池の場合、電池電圧の回復には比較的時間がかかるため、このような警告表示を行うことは問題となる。また、電池電圧が回復してもある一定時間警告表示が継続するような場合、受信処理を実行するたびに再度の受信処理などの高負荷処理が一定時間制限されてしまう可能性もある。そこで電圧警告表示部31cは、少なくとも受信処理の終了から所定の条件が満たされるまでの期間、電池電圧低下の警告表示を制限することとする。以下では、警告表示の制限が行われる期間を警告制限期間という。
【0036】
具体的に、電圧警告表示部31cは、警告制限期間中は電池電圧の値に関わらず必ず警告表示を行わないこととしてもよい。あるいは、警告制限期間の終了までは、警告表示を行うための判断基準となる閾値を、通常時の閾値Vthよりも低い制限時閾値Vth2に変更してもよい。この場合の制限時閾値Vth2は、図4に示されるように、通常の受信処理により一時的に低下した際の電池電圧の値よりも低い値に設定される。こうすれば、通常時であれば警告表示が行われるような値(Vth未満の値)まで電池電圧が低下しても、警告制限期間中は警告表示が行われないようにすることができる。一方で、受信処理に伴う一時的な低下を超える値(Vth2未満)まで電池電圧が低下した場合には、警告制限期間中であっても警告表示を行うことができる。
【0037】
以下、警告制限期間の終了タイミングの決定方法のいくつかの例について、説明する。電圧警告表示部31cは、受信処理の終了から予め定められた時間が経過するまでの間を警告制限期間としてもよい。さらに、この例において警告制限期間が終了する前に衛星信号受信部31aによって再度受信処理が実行された場合、最後に実施された受信処理の終了から予め定められた時間が経過するまでの間を警告制限期間としてもよい。図5はこの場合の電池電圧の時間変化を示している。この図においては、時刻t0で開始された1回目の受信処理が時刻t1で終了し、その時点で時刻t3が警告制限期間の終了タイミングとして決定されている。しかし、時刻t3が到来するよりも前に、時刻t4において2回目の受信処理が開始され、時刻t5で終了している。この時点で、時刻t6が新たな警告制限期間の終了タイミングとして決定されている。この例では、受信処理の終了後、警告制限期間内に直前の受信処理が成功したか否かを表示してもよい。
【0038】
あるいは、電圧警告表示部31cは、電池電圧が予め定められた値(例えば閾値Vth)以上に回復するまでの時間を警告制限期間としてもよい。この例において予め定められた値が閾値Vthであるとした場合、図4における時刻t2が警告制限期間の終了タイミングとなる。なお、この例においても、電池電圧が低下を続けるような場合に備えて、警告制限期間の上限値(最大時間)を予め定めておいてもよい。この場合、最大時間が経過するか、又は電池電圧が予め定められた値以上に回復するまでの間、警告表示が制限されることになる。
【0039】
また、電圧警告表示部31cは、温度センサ44による温度の検出結果に応じて警告制限期間の長さを変更してもよい。二次電池40の充放電特性は温度に依存して変化するため、受信処理開始時の温度に応じて警告制限期間の終了タイミングを決定することによって、警告制限期間を最適化できる。
【0040】
また、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが実行する受信処理の内容に応じて警告制限期間の長さを変更してもよい。衛星信号受信部31aは、時刻情報の取得だけでなく、その他の目的のためにも受信処理を実行する。具体的に、GPS衛星からの衛星信号を受信する場合、時刻情報の受信を行う前に予めGPS衛星からの衛星信号を捕捉するために受信処理を実行する。また、GPS衛星が送信するGPS時刻は、協定世界時に対して閏秒に起因するずれがあり、GPS衛星は、このずれを補正するための閏秒情報も送信している。そのため、電波腕時計1は、GPS衛星から時刻情報だけでなく、この閏秒情報も受信する。また、GPS衛星が送信する時刻情報は、週の始まり(日曜日の午前0:00)を起点とした現在時刻を示すTOW(Time Of Week)と、所定の基準時点から数えて現在が第何週かを示す週番号WNと、から構成されている。そのため、電波腕時計1は、場合によって、TOWだけを受信することもあれば、TOWと週番号WNとを併せて受信することもある。つまり、衛星信号受信部31aは、場合によって、GPS衛星捕捉のための受信処理、TOWのみの受信処理、TOW及び週番号WNの受信処理、並びに閏秒情報取得のための受信処理などを行う。このような受信処理の種類(受信モード)によって、受信処理に要する処理時間や受信処理時の処理負荷も変化するため、消費電流にも違いが生じる。そこで電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが受信処理を実行する際には、当該受信処理の種類を示す情報を衛星信号受信部31aから受け取り、受信処理の種類に応じて警告制限期間の終了タイミングを決定する。こうすれば、受信処理の種類ごとに警告制限期間を最適化することができる。
【0041】
また、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが受信処理の実行に要した所要時間に応じて警告制限期間の長さを決定してもよい。受信処理の所要時間は、図4における時刻t0(受信処理開始タイミング)から時刻t1(受信処理終了タイミング)までの時間であって、前述した受信処理の種類の違いになどに応じて、この時間は変化する。そして、受信処理の所要時間が長いほど、その間に電池電圧は大きく低下するため、電池電圧の回復に時間を要すると推定される。そこで電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aから受信処理の開始及び終了タイミングにそれぞれ通知を受け取ることによって、受信処理の所要時間をカウントする。そして、カウントされた受信処理の所要時間が長いほど警告制限期間が長くなるように警告制限期間の終了タイミングを決定する。これにより、警告制限期間の長さを最適化することができる。図6は、このような手法を用いて警告制限期間を設定する場合において、所要時間の異なる受信処理のそれぞれに応じて設定される警告制限期間を示す図である。図中、実線は比較的短い所要時間の受信処理(例えばTOWのみの受信処理)が行われた場合の電池電圧の時間変化を示しており、時刻t0から時刻t1までの期間T1が受信処理の所要時間を、時刻t1から時刻t3までの期間T2がこの期間T1に応じて決定される警告制限期間を、それぞれ示している。また、破線は比較的長い所要時間の受信処理(例えばTOW及び週番号WN双方の受信処理)が行われた場合の電池電圧の時間変化を示しており、時刻t0から時刻t1′までの期間T3が受信処理の所要時間を、時刻t1′から時刻t3′までの期間T4がこの期間T3に応じて決定される警告制限期間を、それぞれ示している。この図から分かるように、T1<T3であることに応じて、設定される警告制限期間の長さがT2<T4の関係になっている。なお、電圧警告表示部31cは、受信処理の種類、及び所要時間の双方を考慮して警告制限期間の長さを決定してもよい。例えば電圧警告表示部31cは、受信処理の種類ごとに予め定められている基準値に対して、受信処理の所要時間の長さに応じて決定される補正値を加減するなどの方法で、警告制限期間の長さを決定してもよい。図7はこの場合の処理フローを示している。同図に示すように、電圧警告表示部31cは、まず衛星信号受信部31aによる受信処理の開始時に衛星信号受信部31aから受信処理の種類を示す情報を取得する(S101)。その後、衛星信号受信部31aによる受信処理の実行中にその所要時間をカウントすることによって、受信処理の終了時に所要時間のカウント値を得る(S102)。そして電圧警告表示部31cは、このS101及びS102のそれぞれで取得した情報に基づいて、警告制限期間の終了タイミングt3を決定する(S103)。なお、電圧警告表示部31cは、前述したように、受信処理の種類のみ、又は受信処理の所要時間のカウント値のみに基づいて警告制限期間の終了タイミングt3を決定してもよい。
【0042】
また、電圧警告表示部31cは、受信処理の終了タイミングで電池電圧検出部41による電池電圧の検出を行い、当該検出された電池電圧の値に応じて警告制限期間の長さを決定してもよい。この場合、受信処理終了時の電池電圧の値が低ければ低いほど、電池電圧の回復に時間がかかると予測されるので、警告制限期間が長くなるように警告制限期間の終了タイミングを決定する。
【0043】
また、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが受信処理に成功したか否かに応じて、警告表示の制限を行うか否かを変更してもよい。なお、ここでの受信処理の成功とは、受信処理の目的とする情報(時刻情報や閏秒情報など)の受信が完了することを指す。特に使用者の指示操作に応じて時刻情報の受信処理を実行した場合、受信処理に成功すれば一時的に電池電圧が低下してもそれほど問題とならないため、これまで説明したように警告表示の制限を行ってよい。これに対して、受信処理に失敗してその旨が表示された場合、使用者は再度受信処理の実行を指示することが考えられる。しかしながら、前述したように受信処理には大きな消費電流が必要となるため、電池電圧の低下中に再度受信処理を実行することはできない。そのため、受信処理に失敗した場合には、当該受信処理により電池電圧が低下しており、電池電圧が回復するまでは受信処理が実行できないことを使用者に提示する必要がある。
【0044】
このように受信処理の結果に応じて警告表示の制限を行うか否か変更する場合の具体的な処理フローの例について、図8のフロー図を用いて説明する。
【0045】
使用者から受信処理の指示があった場合、まず衛星信号受信部31aは、電池電圧が所定値以上あるか否かを判定する(S1)。なお、この場合の所定値は、警告表示を行うか否かの判断基準となる閾値Vthであってよい。電池電圧が所定値以上ない場合、受信処理は実行できないので、衛星信号受信部31aは処理を終了する。
【0046】
一方、電池電圧が所定値以上ある場合、衛星信号受信部31aは受信処理を行い、その結果(受信処理が成功したか否か)を電圧警告表示部31cに対して出力する(S2)。S2の処理後、電圧警告表示部31cは、電池電圧が閾値Vth未満か否かを判定する(S3)。電池電圧が閾値Vth未満でなければ、電池電圧に関する警告表示は不要なので、電圧警告表示部31cは処理を終了する。一方、電池電圧が閾値Vth未満の場合、電圧警告表示部31cはS2の受信処理が成功したか否かを判定し(S4)、その判定結果に応じて処理を分岐させる。すなわち、受信処理に成功した場合(S4の判定が「Y」の場合)、電圧警告表示部31cは電池電圧低下の警告表示を制限する(S5)。
【0047】
一方、受信処理に失敗した場合(S4の判定が「N」の場合)、電圧警告表示部31cは電池電圧低下の警告表示を制限しない。その結果、電池電圧が閾値Vth未満に低下したことを示す警告表示(ここでは2秒運針)が行われる(S6)。
【0048】
S5及びS6のいずれの場合にも、電圧警告表示部31cは、電池電圧が閾値Vth以上に回復するのを待って(S7)、警告表示の制限、又は警告表示を終了する(S8)。なお、ここでは電池電圧が閾値Vth以上に回復したタイミングを警告制限期間の終了タイミングとしている。
【0049】
以上の処理によれば、受信処理に失敗した場合、2秒運針が行われているか否かによって、使用者は電波腕時計1に再度受信処理を指示できる状態にあるか否かを把握できる。一方で、受信処理に成功した場合、電池電圧が低下したとしても、使用者が再度受信処理を指示することは通常想定されないので、警告表示を行わない。そのため、使用者に対して不要な警告表示を行わないようにすることができる。
【0050】
なお、電池電圧が低下している間に使用者が受信処理を指示する操作を操作部60に対して実行した場合、衛星信号受信部31aは、当該指示操作を無視するのではなく、電池電圧が回復して受信可能な状態になってから受信処理を実行することとしてもよい。この場合の処理フローの例について、図9のフロー図を用いて説明する。
【0051】
使用者から受信処理の指示があった場合、まず衛星信号受信部31aは、図8のフローの場合と同様に、電池電圧が所定値以上あるか否かを判定する(S11)。そして、電池電圧が所定値以上ある場合には、直ちに受信処理を実行する(S12)。
【0052】
一方、電池電圧が所定値以上ない場合には、受信指示を受け付けたことを示すフラグ(受信指示受付フラグ)をオンに設定して(S13)、電池電圧の上昇を待つ(S14)。受信指示受付フラグがオンになっている状態で電池電圧が所定値以上となっていることを検知した場合、衛星信号受信部31aは受信処理を実行する(S12)。このとき、衛星信号受信部31aは受信指示受付フラグをオフに戻す。
【0053】
その後は、図8のS3以降と同様の処理が実行される。すなわち、電圧警告表示部31cは、まず電池電圧が閾値Vth未満か否かを判定し(S15)、電池電圧が閾値Vth以上であれば処理を終了する。一方、電池電圧が閾値Vth未満の場合、電圧警告表示部31cは、さらにS12の受信処理が成功したか否かを判定する(S16)。判定の結果、受信処理に成功した場合(S16の判定が「Y」の場合)、電圧警告表示部31cは電池電圧低下の警告表示を制限し(S17)、受信処理に失敗した場合(S16の判定が「N」の場合)には、電池電圧の低下を示す警告表示を行う(S18)。そして、電池電圧が閾値Vth以上に回復するのを待って(S19)、警告表示の制限、又は警告表示を終了する(S20)。
【0054】
この例では、電池電圧の低下を示す警告表示が行われている間にも、使用者は受信処理の実行を指示することができる。電波腕時計1は、受信処理の実行指示を受け付けたことを受信指示受付フラグによって記憶しておき、受信処理の実行に必要な条件(電池電圧が所定値以上という条件)が満たされると、受信処理を開始する。なお、このような受信指示受付フラグによる制御は、警告表示の制限と無関係に行われてもよい。すなわち、図9のフローの例では受信処理の失敗時に警告表示の制限を行わないこととしたが、電圧警告表示部31cは受信処理の失敗時にも警告表示の制限を行ってもよい。この場合、一時的な電圧低下が使用者に提示されないため、使用者は受信処理の再実行を指示する可能性が高くなるが、このときにも以上説明したS11〜S14の制御を実行することで、衛星信号受信部31aは、電池電圧の回復を待って受信処理を実行することができる。
【0055】
また、この図9のフローの例において、受信指示受付フラグがオンになっており、受信処理を実行可能な状態を待機している間は、そのことを示す表示を行ってもよい。この場合の表示方法は、例えば2秒運針以外の変則運針など、電圧警告表示部31cによる電圧警告表示と区別可能な各種の方法であってよい。
【0056】
以上の説明においては、警告制限期間の開始タイミングは受信処理の終了時であることとしたが、受信処理の開始時から電池電圧の低下は始まるので、受信処理の開始時を警告制限期間の開始タイミングとしてもよい。この場合、電圧警告表示部31cは、受信処理の開始時を基準として、前述した各種の方法で警告制限期間の終了タイミングを決定してもよい。あるいは、受信処理の終了時を基準として警告制限期間の終了タイミングを決定してもよい。
【0057】
また、以上の説明では、受信処理の失敗時には通常の電池電圧低下時と同様の警告表示を行うこととしたが、これに限らず、電圧警告表示部31cは、別の種類の警告表示を行うこととしてもよい。すなわち、電圧警告表示部31cは、受信処理が行われていないときに電池電圧が低下した場合には、通常の警告表示を行い、受信処理の失敗後、警告制限期間が経過するまでの間に電池電圧が低下している場合には、通常の警告表示とは別の、一時的な電圧低下が生じていることを示す警告表示を行う。こうすれば、電波腕時計1は、通常の警告表示によって二次電池40の充電が必要であることを使用者に提示するとともに、受信処理の失敗時には、これとは別の警告表示を行うことにより、一時的な電池電圧の低下が生じており、二次電池40の充電が必要なわけではないが、しばらくの間受信処理の再実行を指示することができないことを使用者に提示できる。
【0058】
図10及び図11は、このような受信処理に伴う一時的な電池電圧の低下を示す警告表示の一例を示す図である。図10は、図1とは別の電波腕時計1の外観の例を示しており、この図の例では、電池電圧の状態を示すために専用の状態表示針54が文字板53上に配置されている。図11は、この状態表示針54の拡大図である。状態表示針54は、電池電圧の変動に応じて扇形の電池電圧表示範囲54aの間で回転するよう制御されており、電圧警告表示部31cは、この状態表示針54の位置によって、電池電圧の低下を使用者に提示する。そして、電圧警告表示部31cは、受信処理の成功時には、警告制限期間が経過するまでの間、この状態表示針54の位置を変化させないようにして、一時的な電池電圧の変動を表示しないようにする。一方、受信処理の失敗によって電池電圧が低下している時には、電圧警告表示部31cは、電池電圧表示範囲54aの一方の外側に配置された受信不可表示位置54bを指し示すように状態表示針54を回転させる。これにより、電圧警告表示部31cは、二次電池40の充電状態が悪化しているわけではないが、一時的に電池電圧が低下して受信処理が実行できない状態になっていることを、使用者に明示的に表示することができる。
【0059】
また、前述したように、受信指示受付フラグがオンになっている間、その旨の表示を行う場合には、このような状態表示針54を用いて受信指示受付フラグがオンになっていることの表示を行ってもよい。この場合、受信指示受付フラグがオンになると、状態表示針54を電池電圧表示範囲54a外であって、かつ受信不可表示位置54bとは別の所定位置を指し示すように回転させることによって、電波腕時計1は受信指示受付フラグがオンになっていることを示す表示を行う。
【0060】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば以上の説明では電波腕時計1は二次電池40を内蔵し、この二次電池40が供給する電力によって動作するものとしたが、電波腕時計1は二次電池40の代わりに一次電池を内蔵することとしてもよい。この場合も、電波の受信処理により一時的に一次電池の電池電圧が低下するのであれば本発明を適用することができる。また、以上の説明では電波腕時計1はGPS衛星からの電波を受信して時刻修正を行うこととしたが、本発明の実施の形態に係る電波腕時計はGPS衛星に限らず、標準電波の送信局等、各種の時刻情報源から電波を受信して時刻の修正を行う電波腕時計であってよい。
【符号の説明】
【0061】
1 電波腕時計、10 アンテナ、20 受信回路、21 高周波回路、22 デコード回路、30 制御回路、31 演算部、31a 衛星信号受信部、31b 時刻修正部、31c 電圧警告表示部、32 ROM、33 RAM、34 RTC、35 モータ駆動回路、40 二次電池、41 電池電圧検出部、42 スイッチ、43 太陽電池、44 温度センサ、50 駆動機構、51 時刻表示部、52 指針、52a 時針、52b 分針、52c 秒針、53 文字板、54 状態表示針、60 操作部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の時刻情報供給源から受信した電波に基づいて時刻の修正を行う電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
内蔵されている電池が供給する電池電圧により動作する腕時計がある。このような腕時計においては、電池電圧が低下すると高負荷の処理に支障が出る場合がある(例えば特許文献1参照)。そこで、電池電圧が低下した場合に、例えば2秒運針などによって警告表示を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−337380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
腕時計の中には、時刻情報を含んだ電波を外部の時刻情報供給源(例えばGPS衛星等)から受信して時刻の修正を行う電波腕時計がある。このような電波腕時計は、電波の受信処理を行うと一時的に電池電圧が低下することがある。この場合の電池電圧の低下は一時的なものだが、このような電池電圧の低下が生じた場合にも前述した警告表示を行うこととすると、電池に何らかの問題が生じていると使用者に誤解させるおそれがある。また、警告表示が解除されるまで腕時計が備える機能の一部が制限され、使用できなくなる場合もあり得る。
【0005】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであって、その目的の一つは、電池電圧の低下を警告する警告表示の機能を備える場合において、不要な警告表示を避けることのできる電波腕時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電波腕時計は、時刻情報を含む電波を受信する電波受信手段と、前記受信した電波に含まれる時刻情報に応じた時刻を表示する時刻表示手段と、内蔵する電池の電圧が低下した場合に、当該電圧の低下を警告する表示を行う電圧警告表示手段と、を含み、前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了後、所定の条件を満たすまでの間、前記警告の表示を制限することを特徴とする。
【0007】
前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が実行する受信処理の種類に応じて決定することとしてもよい。
【0008】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が前記受信処理の実行に要した時間に応じて決定することとしてもよい。
【0009】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が成功した場合、前記警告の表示を制限し、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示を制限しないこととしてもよい。
【0010】
さらに、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示として、前記受信処理が行われていない場合における警告の表示とは異なる種類の表示を行うこととしてもよい。
【0011】
また、前記電波腕時計において、前記電波受信手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した状態で前記電波の受信の指示を使用者から受け付けた場合、前記電池の電圧が所定の閾値以上に回復するのを待ってから、前記指示に応じた受信処理を実行することとしてもよい。
【0012】
また、前記電波腕時計は前記電池の温度を検出する温度センサをさらに含み、前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記温度センサが検出した温度に応じて決定することとしてもよい。
【0013】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に、前記警告の表示を行い、前記電波受信手段による受信処理の終了後、前記電池の電圧が前記所定の閾値以上に回復するまでの間、前記警告の表示を制限することとしてもよい。
【0014】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了時における前記電池の電圧の値を取得し、当該取得した電圧の値に応じて、前記警告の表示を制限する期間を決定することとしてもよい。
【0015】
また、前記電波腕時計において、前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が行われていないときには、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に前記警告の表示を行い、前記受信処理の終了後は、前記電池の電圧が前記所定の閾値よりも小さな制限時閾値未満に低下した場合だけ前記警告の表示を行うことにより、前記警告の表示を制限することとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、時刻情報を含んだ電波の受信が完了してから所定の条件を満たすまでの間は、電池電圧の低下を警告する警告表示を抑制するので、電池に問題が生じていない場合に電池電圧に関する警告表示を行ってしまわないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る電波腕時計の外観の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電波腕時計の内部構成を示す構成ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電波腕時計が実現する機能を示す機能ブロック図である。
【図4】受信処理に伴う電池電圧の変化を示す図である。
【図5】複数回の受信処理が行われた場合の電池電圧の変化を示す図である。
【図6】所要時間の異なる受信処理のそれぞれに応じて設定される警告制限期間を示す図である。
【図7】警告制限期間を設定する処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電波腕時計が実行する処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電波腕時計が実行する処理の流れの別の例を示すフロー図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る電波腕時計の外観の一例を示す平面図である。
【図11】図10における状態表示針の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る電波腕時計1は、時刻情報を含んだ電波を受信し、当該受信した電波に含まれる時刻情報を用いて自身が計時している時刻の修正を行う。図1は、本実施形態に係る電波腕時計1の外観の一例を示す平面図であり、図2は、電波腕時計1の内部構成を示す構成ブロック図である。これらの図に示されるように、電波腕時計1は、アンテナ10と、受信回路20と、制御回路30と、二次電池40と、電池電圧検出部41と、スイッチ42と、太陽電池43と、温度センサ44と、駆動機構50と、時刻表示部51と、操作部60と、を含んで構成される。
【0020】
アンテナ10は、時刻情報を含んだ電波として、衛星から送信される衛星信号を受信する。特に本実施形態では、アンテナ10は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される周波数約1.6GHzの電波を受信するパッチアンテナである。GPSは、衛星測位システムの一種であって、地球の周囲を周回する複数のGPS衛星によって実現されている。これらのGPS衛星は、それぞれ高精度の原子時計を搭載しており、原子時計によって計時された時刻情報を含んだ衛星信号を周期的に送信している。
【0021】
受信回路20は、アンテナ10によって受信された衛星信号を復号して、復号の結果得られる衛星信号の内容を示すビット列(受信データ)を出力する。具体的に、受信回路20は、高周波回路(RF回路)21及びデコード回路22を含んで構成されている。
【0022】
高周波回路21は、高周波数で動作する集積回路であって、アンテナ10が受信したアナログ信号に対して増幅、検波を行って、ベースバンド信号に変換する。デコード回路22は、ベースバンド処理を行う集積回路であって、高周波回路21が出力するベースバンド信号を復号してGPS衛星から受信したデータの内容を示すビット列を生成し、制御回路30に対して出力する。
【0023】
制御回路30は、マイクロコンピュータ等であって、演算部31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、RTC(Real Time Clock)34と、モータ駆動回路35と、を含んで構成される。
【0024】
演算部31は、ROM32に格納されたプログラムに従って各種の情報処理を行う。本実施形態において演算部31が実行する処理の詳細については、後述する。RAM33は、演算部31のワークメモリとして機能し、演算部31の処理対象となるデータが書き込まれる。特に本実施形態では、受信回路20によって受信された衛星信号の内容を表すビット列(受信データ)が、RAM33内のバッファ領域に順次書き込まれる。RTC34は、電波腕時計1内部での計時に使用されるクロック信号を供給する。本実施形態に係る電波腕時計1では、演算部31が、RTC34から供給される信号によって計時された内部時刻を、受信回路20によって受信された衛星信号に基づいて修正して、時刻表示部51に表示すべき時刻(表示時刻)を決定する。さらに、モータ駆動回路35が、この決定された表示時刻に応じて、後述する駆動機構50に含まれるモータを駆動する駆動信号を出力する。これにより、制御回路30によって生成された表示時刻が時刻表示部51に表示される。
【0025】
二次電池40は、リチウムイオン電池等であって、太陽電池43によって発電された電力を蓄積する。そして、蓄積された電力を、受信回路20や制御回路30に対して供給する。電池電圧検出部41は、例えば抵抗器等を含んで構成される。制御回路30は、二次電池40から電池電圧検出部41に流れる電流を計測するなどの方法で、二次電池40の電圧(以下、電池電圧という)を検出する。
【0026】
二次電池40から受信回路20への電力供給路の途中にはスイッチ42が設けられており、このスイッチ42のオン/オフは制御回路30が出力する制御信号によって切り替えられる。制御回路30がスイッチ42のオン/オフを切り替えることで、受信回路20の動作タイミングが制御される。受信回路20は、スイッチ42を介して二次電池40から電力が供給されている間だけ動作し、その間にアンテナ10が受信した衛星信号の復号を行う。
【0027】
太陽電池43は、文字板53の下に配置されており、電波腕時計1に対して照射される太陽光などの外光によって発電し、発電した電力を二次電池40に供給する。
【0028】
温度センサ44は、電波腕時計1内に配置されており、二次電池40周辺の温度を検出し、検出結果を制御回路30に入力する。制御回路30は、温度センサ44による温度の検出結果を用いて、例えば温度が所定の範囲外にあるときは二次電池40への充電を制限する制御を行う。
【0029】
駆動機構50は、前述したモータ駆動回路35から出力される駆動信号に応じて動作するステップモータと、輪列と、を含んで構成され、ステップモータの回転を輪列が伝達することによって、指針52を回転させる。時刻表示部51は、指針52及び文字板53によって構成される。指針52は、時針52a、分針52b、及び秒針52cからなり、これらの指針52が文字板53上を回転することによって、現在時刻が表示される。なお、文字板53上には、時刻表示のための目盛だけでなく、時刻情報受信の成否をユーザに示すためのマーカーなどが表示されてもよい。
【0030】
操作部60は、例えば竜頭や操作ボタン等であって、電波腕時計1の使用者による操作を受け付けて、その操作内容を制御回路30に対して出力する。制御回路30は、操作部60が受け付けた操作入力の内容に応じて各種の処理を実行する。特に本実施形態では、制御回路30は、使用者による操作部60に対する操作入力に応じて、電波の受信処理を行う。
【0031】
以下、本実施形態において制御回路30の演算部31が実行する処理の具体例について、説明する。演算部31は、ROM32に格納されたプログラムを実行することにより、機能的に、図3に示すように、衛星信号受信部31aと、時刻修正部31bと、電圧警告表示部31cと、を実現する。
【0032】
衛星信号受信部31aは、GPS衛星から送信される衛星信号を受信することにより、その中に含まれる時刻情報のデータを取得する。なお、衛星信号受信部31aは、定期的にこのような時刻情報の取得処理を実行してもよいし、使用者の操作部60に対する指示操作に応じてこれらの処理を実行してもよい。また、電波腕時計1は、自身の電波受信環境(信号強度など)に応じて、衛星信号の受信タイミングを決定してもよい。特に使用者の指示操作に応じて電波の受信処理を行った場合、衛星信号受信部31aは、その受信結果(受信処理に成功したか否か)を表示してもよい。この場合、衛星信号受信部31aは、例えば秒針52cを回転させて、文字板53上に配置された受信の成否を示すマーカーのいずれかを指し示すことによって、受信処理に成功したか否かを使用者に対して提示する。
【0033】
時刻修正部31bは、衛星信号受信部31aがGPS衛星から受信した情報を用いて、電波腕時計1の内部で計時されている内部時刻の修正を行う。
【0034】
電圧警告表示部31cは、電池電圧が低下した場合に、そのことを使用者に警告する警告表示を行う。具体的に、電圧警告表示部31cは、定期的に電池電圧検出部41により電池電圧を測定し、その測定結果が所定の閾値Vthを下回るときに警告表示を行う。電圧警告表示部31cは、例えば時刻表示用の指針52を変則運針させたり、状態表示用の針を用いて表示するなど、各種の方法で警告表示を行うことができる。以下では一例として、電圧警告表示部31cは、秒針52cを2秒運針(秒針52cを2秒毎に2秒分回転させる運針)させることにより電池電圧低下の警告表示を行うこととする。このような警告表示を行うことにより、二次電池40の充電が必要な場合に、電波腕時計1はそのことを使用者に知らせることができる。
【0035】
さらに本実施形態において、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aによる衛星信号の受信処理終了後、所定の条件が満たされるまで、上述した警告表示の実施を制限することとする。これは、以下のような理由による。受信処理の際には受信回路20が動作して二次電池40から大きな電流が流れるため、受信処理の実行中、及び実行直後は、一時的に電池電圧が低下する。図4は、このような受信処理に伴う電池電圧の変化を示すグラフであって、横軸は時間経過を、縦軸は電池電圧の大きさを、それぞれ示している。また、時刻t0及びt1は、それぞれ受信処理の開始タイミング及び終了タイミングを示している。同図に示されるように、受信処理に伴って電池電圧は閾値Vth未満にまで低下するが、このような電池電圧の低下は一時的なものであって、通常、受信処理が終了してしばらく時間が経つと電池電圧は再び閾値Vthを超えて受信開始前のレベル近くまで回復する。なお、図4の時刻t2は、受信処理の後、電池電圧が閾値Vthまで回復するタイミングを示している。このような受信処理に伴う一時的な電池電圧の低下が生じた場合にも警告表示を行うこととすると、本来的には電池電圧に問題がないにも関わらず、利用者に対して電池電圧の低下に対する対処が必要であるかのような表示が行われてしまう。特に二次電池40がリチウムイオン電池の場合、電池電圧の回復には比較的時間がかかるため、このような警告表示を行うことは問題となる。また、電池電圧が回復してもある一定時間警告表示が継続するような場合、受信処理を実行するたびに再度の受信処理などの高負荷処理が一定時間制限されてしまう可能性もある。そこで電圧警告表示部31cは、少なくとも受信処理の終了から所定の条件が満たされるまでの期間、電池電圧低下の警告表示を制限することとする。以下では、警告表示の制限が行われる期間を警告制限期間という。
【0036】
具体的に、電圧警告表示部31cは、警告制限期間中は電池電圧の値に関わらず必ず警告表示を行わないこととしてもよい。あるいは、警告制限期間の終了までは、警告表示を行うための判断基準となる閾値を、通常時の閾値Vthよりも低い制限時閾値Vth2に変更してもよい。この場合の制限時閾値Vth2は、図4に示されるように、通常の受信処理により一時的に低下した際の電池電圧の値よりも低い値に設定される。こうすれば、通常時であれば警告表示が行われるような値(Vth未満の値)まで電池電圧が低下しても、警告制限期間中は警告表示が行われないようにすることができる。一方で、受信処理に伴う一時的な低下を超える値(Vth2未満)まで電池電圧が低下した場合には、警告制限期間中であっても警告表示を行うことができる。
【0037】
以下、警告制限期間の終了タイミングの決定方法のいくつかの例について、説明する。電圧警告表示部31cは、受信処理の終了から予め定められた時間が経過するまでの間を警告制限期間としてもよい。さらに、この例において警告制限期間が終了する前に衛星信号受信部31aによって再度受信処理が実行された場合、最後に実施された受信処理の終了から予め定められた時間が経過するまでの間を警告制限期間としてもよい。図5はこの場合の電池電圧の時間変化を示している。この図においては、時刻t0で開始された1回目の受信処理が時刻t1で終了し、その時点で時刻t3が警告制限期間の終了タイミングとして決定されている。しかし、時刻t3が到来するよりも前に、時刻t4において2回目の受信処理が開始され、時刻t5で終了している。この時点で、時刻t6が新たな警告制限期間の終了タイミングとして決定されている。この例では、受信処理の終了後、警告制限期間内に直前の受信処理が成功したか否かを表示してもよい。
【0038】
あるいは、電圧警告表示部31cは、電池電圧が予め定められた値(例えば閾値Vth)以上に回復するまでの時間を警告制限期間としてもよい。この例において予め定められた値が閾値Vthであるとした場合、図4における時刻t2が警告制限期間の終了タイミングとなる。なお、この例においても、電池電圧が低下を続けるような場合に備えて、警告制限期間の上限値(最大時間)を予め定めておいてもよい。この場合、最大時間が経過するか、又は電池電圧が予め定められた値以上に回復するまでの間、警告表示が制限されることになる。
【0039】
また、電圧警告表示部31cは、温度センサ44による温度の検出結果に応じて警告制限期間の長さを変更してもよい。二次電池40の充放電特性は温度に依存して変化するため、受信処理開始時の温度に応じて警告制限期間の終了タイミングを決定することによって、警告制限期間を最適化できる。
【0040】
また、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが実行する受信処理の内容に応じて警告制限期間の長さを変更してもよい。衛星信号受信部31aは、時刻情報の取得だけでなく、その他の目的のためにも受信処理を実行する。具体的に、GPS衛星からの衛星信号を受信する場合、時刻情報の受信を行う前に予めGPS衛星からの衛星信号を捕捉するために受信処理を実行する。また、GPS衛星が送信するGPS時刻は、協定世界時に対して閏秒に起因するずれがあり、GPS衛星は、このずれを補正するための閏秒情報も送信している。そのため、電波腕時計1は、GPS衛星から時刻情報だけでなく、この閏秒情報も受信する。また、GPS衛星が送信する時刻情報は、週の始まり(日曜日の午前0:00)を起点とした現在時刻を示すTOW(Time Of Week)と、所定の基準時点から数えて現在が第何週かを示す週番号WNと、から構成されている。そのため、電波腕時計1は、場合によって、TOWだけを受信することもあれば、TOWと週番号WNとを併せて受信することもある。つまり、衛星信号受信部31aは、場合によって、GPS衛星捕捉のための受信処理、TOWのみの受信処理、TOW及び週番号WNの受信処理、並びに閏秒情報取得のための受信処理などを行う。このような受信処理の種類(受信モード)によって、受信処理に要する処理時間や受信処理時の処理負荷も変化するため、消費電流にも違いが生じる。そこで電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが受信処理を実行する際には、当該受信処理の種類を示す情報を衛星信号受信部31aから受け取り、受信処理の種類に応じて警告制限期間の終了タイミングを決定する。こうすれば、受信処理の種類ごとに警告制限期間を最適化することができる。
【0041】
また、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが受信処理の実行に要した所要時間に応じて警告制限期間の長さを決定してもよい。受信処理の所要時間は、図4における時刻t0(受信処理開始タイミング)から時刻t1(受信処理終了タイミング)までの時間であって、前述した受信処理の種類の違いになどに応じて、この時間は変化する。そして、受信処理の所要時間が長いほど、その間に電池電圧は大きく低下するため、電池電圧の回復に時間を要すると推定される。そこで電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aから受信処理の開始及び終了タイミングにそれぞれ通知を受け取ることによって、受信処理の所要時間をカウントする。そして、カウントされた受信処理の所要時間が長いほど警告制限期間が長くなるように警告制限期間の終了タイミングを決定する。これにより、警告制限期間の長さを最適化することができる。図6は、このような手法を用いて警告制限期間を設定する場合において、所要時間の異なる受信処理のそれぞれに応じて設定される警告制限期間を示す図である。図中、実線は比較的短い所要時間の受信処理(例えばTOWのみの受信処理)が行われた場合の電池電圧の時間変化を示しており、時刻t0から時刻t1までの期間T1が受信処理の所要時間を、時刻t1から時刻t3までの期間T2がこの期間T1に応じて決定される警告制限期間を、それぞれ示している。また、破線は比較的長い所要時間の受信処理(例えばTOW及び週番号WN双方の受信処理)が行われた場合の電池電圧の時間変化を示しており、時刻t0から時刻t1′までの期間T3が受信処理の所要時間を、時刻t1′から時刻t3′までの期間T4がこの期間T3に応じて決定される警告制限期間を、それぞれ示している。この図から分かるように、T1<T3であることに応じて、設定される警告制限期間の長さがT2<T4の関係になっている。なお、電圧警告表示部31cは、受信処理の種類、及び所要時間の双方を考慮して警告制限期間の長さを決定してもよい。例えば電圧警告表示部31cは、受信処理の種類ごとに予め定められている基準値に対して、受信処理の所要時間の長さに応じて決定される補正値を加減するなどの方法で、警告制限期間の長さを決定してもよい。図7はこの場合の処理フローを示している。同図に示すように、電圧警告表示部31cは、まず衛星信号受信部31aによる受信処理の開始時に衛星信号受信部31aから受信処理の種類を示す情報を取得する(S101)。その後、衛星信号受信部31aによる受信処理の実行中にその所要時間をカウントすることによって、受信処理の終了時に所要時間のカウント値を得る(S102)。そして電圧警告表示部31cは、このS101及びS102のそれぞれで取得した情報に基づいて、警告制限期間の終了タイミングt3を決定する(S103)。なお、電圧警告表示部31cは、前述したように、受信処理の種類のみ、又は受信処理の所要時間のカウント値のみに基づいて警告制限期間の終了タイミングt3を決定してもよい。
【0042】
また、電圧警告表示部31cは、受信処理の終了タイミングで電池電圧検出部41による電池電圧の検出を行い、当該検出された電池電圧の値に応じて警告制限期間の長さを決定してもよい。この場合、受信処理終了時の電池電圧の値が低ければ低いほど、電池電圧の回復に時間がかかると予測されるので、警告制限期間が長くなるように警告制限期間の終了タイミングを決定する。
【0043】
また、電圧警告表示部31cは、衛星信号受信部31aが受信処理に成功したか否かに応じて、警告表示の制限を行うか否かを変更してもよい。なお、ここでの受信処理の成功とは、受信処理の目的とする情報(時刻情報や閏秒情報など)の受信が完了することを指す。特に使用者の指示操作に応じて時刻情報の受信処理を実行した場合、受信処理に成功すれば一時的に電池電圧が低下してもそれほど問題とならないため、これまで説明したように警告表示の制限を行ってよい。これに対して、受信処理に失敗してその旨が表示された場合、使用者は再度受信処理の実行を指示することが考えられる。しかしながら、前述したように受信処理には大きな消費電流が必要となるため、電池電圧の低下中に再度受信処理を実行することはできない。そのため、受信処理に失敗した場合には、当該受信処理により電池電圧が低下しており、電池電圧が回復するまでは受信処理が実行できないことを使用者に提示する必要がある。
【0044】
このように受信処理の結果に応じて警告表示の制限を行うか否か変更する場合の具体的な処理フローの例について、図8のフロー図を用いて説明する。
【0045】
使用者から受信処理の指示があった場合、まず衛星信号受信部31aは、電池電圧が所定値以上あるか否かを判定する(S1)。なお、この場合の所定値は、警告表示を行うか否かの判断基準となる閾値Vthであってよい。電池電圧が所定値以上ない場合、受信処理は実行できないので、衛星信号受信部31aは処理を終了する。
【0046】
一方、電池電圧が所定値以上ある場合、衛星信号受信部31aは受信処理を行い、その結果(受信処理が成功したか否か)を電圧警告表示部31cに対して出力する(S2)。S2の処理後、電圧警告表示部31cは、電池電圧が閾値Vth未満か否かを判定する(S3)。電池電圧が閾値Vth未満でなければ、電池電圧に関する警告表示は不要なので、電圧警告表示部31cは処理を終了する。一方、電池電圧が閾値Vth未満の場合、電圧警告表示部31cはS2の受信処理が成功したか否かを判定し(S4)、その判定結果に応じて処理を分岐させる。すなわち、受信処理に成功した場合(S4の判定が「Y」の場合)、電圧警告表示部31cは電池電圧低下の警告表示を制限する(S5)。
【0047】
一方、受信処理に失敗した場合(S4の判定が「N」の場合)、電圧警告表示部31cは電池電圧低下の警告表示を制限しない。その結果、電池電圧が閾値Vth未満に低下したことを示す警告表示(ここでは2秒運針)が行われる(S6)。
【0048】
S5及びS6のいずれの場合にも、電圧警告表示部31cは、電池電圧が閾値Vth以上に回復するのを待って(S7)、警告表示の制限、又は警告表示を終了する(S8)。なお、ここでは電池電圧が閾値Vth以上に回復したタイミングを警告制限期間の終了タイミングとしている。
【0049】
以上の処理によれば、受信処理に失敗した場合、2秒運針が行われているか否かによって、使用者は電波腕時計1に再度受信処理を指示できる状態にあるか否かを把握できる。一方で、受信処理に成功した場合、電池電圧が低下したとしても、使用者が再度受信処理を指示することは通常想定されないので、警告表示を行わない。そのため、使用者に対して不要な警告表示を行わないようにすることができる。
【0050】
なお、電池電圧が低下している間に使用者が受信処理を指示する操作を操作部60に対して実行した場合、衛星信号受信部31aは、当該指示操作を無視するのではなく、電池電圧が回復して受信可能な状態になってから受信処理を実行することとしてもよい。この場合の処理フローの例について、図9のフロー図を用いて説明する。
【0051】
使用者から受信処理の指示があった場合、まず衛星信号受信部31aは、図8のフローの場合と同様に、電池電圧が所定値以上あるか否かを判定する(S11)。そして、電池電圧が所定値以上ある場合には、直ちに受信処理を実行する(S12)。
【0052】
一方、電池電圧が所定値以上ない場合には、受信指示を受け付けたことを示すフラグ(受信指示受付フラグ)をオンに設定して(S13)、電池電圧の上昇を待つ(S14)。受信指示受付フラグがオンになっている状態で電池電圧が所定値以上となっていることを検知した場合、衛星信号受信部31aは受信処理を実行する(S12)。このとき、衛星信号受信部31aは受信指示受付フラグをオフに戻す。
【0053】
その後は、図8のS3以降と同様の処理が実行される。すなわち、電圧警告表示部31cは、まず電池電圧が閾値Vth未満か否かを判定し(S15)、電池電圧が閾値Vth以上であれば処理を終了する。一方、電池電圧が閾値Vth未満の場合、電圧警告表示部31cは、さらにS12の受信処理が成功したか否かを判定する(S16)。判定の結果、受信処理に成功した場合(S16の判定が「Y」の場合)、電圧警告表示部31cは電池電圧低下の警告表示を制限し(S17)、受信処理に失敗した場合(S16の判定が「N」の場合)には、電池電圧の低下を示す警告表示を行う(S18)。そして、電池電圧が閾値Vth以上に回復するのを待って(S19)、警告表示の制限、又は警告表示を終了する(S20)。
【0054】
この例では、電池電圧の低下を示す警告表示が行われている間にも、使用者は受信処理の実行を指示することができる。電波腕時計1は、受信処理の実行指示を受け付けたことを受信指示受付フラグによって記憶しておき、受信処理の実行に必要な条件(電池電圧が所定値以上という条件)が満たされると、受信処理を開始する。なお、このような受信指示受付フラグによる制御は、警告表示の制限と無関係に行われてもよい。すなわち、図9のフローの例では受信処理の失敗時に警告表示の制限を行わないこととしたが、電圧警告表示部31cは受信処理の失敗時にも警告表示の制限を行ってもよい。この場合、一時的な電圧低下が使用者に提示されないため、使用者は受信処理の再実行を指示する可能性が高くなるが、このときにも以上説明したS11〜S14の制御を実行することで、衛星信号受信部31aは、電池電圧の回復を待って受信処理を実行することができる。
【0055】
また、この図9のフローの例において、受信指示受付フラグがオンになっており、受信処理を実行可能な状態を待機している間は、そのことを示す表示を行ってもよい。この場合の表示方法は、例えば2秒運針以外の変則運針など、電圧警告表示部31cによる電圧警告表示と区別可能な各種の方法であってよい。
【0056】
以上の説明においては、警告制限期間の開始タイミングは受信処理の終了時であることとしたが、受信処理の開始時から電池電圧の低下は始まるので、受信処理の開始時を警告制限期間の開始タイミングとしてもよい。この場合、電圧警告表示部31cは、受信処理の開始時を基準として、前述した各種の方法で警告制限期間の終了タイミングを決定してもよい。あるいは、受信処理の終了時を基準として警告制限期間の終了タイミングを決定してもよい。
【0057】
また、以上の説明では、受信処理の失敗時には通常の電池電圧低下時と同様の警告表示を行うこととしたが、これに限らず、電圧警告表示部31cは、別の種類の警告表示を行うこととしてもよい。すなわち、電圧警告表示部31cは、受信処理が行われていないときに電池電圧が低下した場合には、通常の警告表示を行い、受信処理の失敗後、警告制限期間が経過するまでの間に電池電圧が低下している場合には、通常の警告表示とは別の、一時的な電圧低下が生じていることを示す警告表示を行う。こうすれば、電波腕時計1は、通常の警告表示によって二次電池40の充電が必要であることを使用者に提示するとともに、受信処理の失敗時には、これとは別の警告表示を行うことにより、一時的な電池電圧の低下が生じており、二次電池40の充電が必要なわけではないが、しばらくの間受信処理の再実行を指示することができないことを使用者に提示できる。
【0058】
図10及び図11は、このような受信処理に伴う一時的な電池電圧の低下を示す警告表示の一例を示す図である。図10は、図1とは別の電波腕時計1の外観の例を示しており、この図の例では、電池電圧の状態を示すために専用の状態表示針54が文字板53上に配置されている。図11は、この状態表示針54の拡大図である。状態表示針54は、電池電圧の変動に応じて扇形の電池電圧表示範囲54aの間で回転するよう制御されており、電圧警告表示部31cは、この状態表示針54の位置によって、電池電圧の低下を使用者に提示する。そして、電圧警告表示部31cは、受信処理の成功時には、警告制限期間が経過するまでの間、この状態表示針54の位置を変化させないようにして、一時的な電池電圧の変動を表示しないようにする。一方、受信処理の失敗によって電池電圧が低下している時には、電圧警告表示部31cは、電池電圧表示範囲54aの一方の外側に配置された受信不可表示位置54bを指し示すように状態表示針54を回転させる。これにより、電圧警告表示部31cは、二次電池40の充電状態が悪化しているわけではないが、一時的に電池電圧が低下して受信処理が実行できない状態になっていることを、使用者に明示的に表示することができる。
【0059】
また、前述したように、受信指示受付フラグがオンになっている間、その旨の表示を行う場合には、このような状態表示針54を用いて受信指示受付フラグがオンになっていることの表示を行ってもよい。この場合、受信指示受付フラグがオンになると、状態表示針54を電池電圧表示範囲54a外であって、かつ受信不可表示位置54bとは別の所定位置を指し示すように回転させることによって、電波腕時計1は受信指示受付フラグがオンになっていることを示す表示を行う。
【0060】
なお、本発明の実施の形態は、以上説明したものに限られない。例えば以上の説明では電波腕時計1は二次電池40を内蔵し、この二次電池40が供給する電力によって動作するものとしたが、電波腕時計1は二次電池40の代わりに一次電池を内蔵することとしてもよい。この場合も、電波の受信処理により一時的に一次電池の電池電圧が低下するのであれば本発明を適用することができる。また、以上の説明では電波腕時計1はGPS衛星からの電波を受信して時刻修正を行うこととしたが、本発明の実施の形態に係る電波腕時計はGPS衛星に限らず、標準電波の送信局等、各種の時刻情報源から電波を受信して時刻の修正を行う電波腕時計であってよい。
【符号の説明】
【0061】
1 電波腕時計、10 アンテナ、20 受信回路、21 高周波回路、22 デコード回路、30 制御回路、31 演算部、31a 衛星信号受信部、31b 時刻修正部、31c 電圧警告表示部、32 ROM、33 RAM、34 RTC、35 モータ駆動回路、40 二次電池、41 電池電圧検出部、42 スイッチ、43 太陽電池、44 温度センサ、50 駆動機構、51 時刻表示部、52 指針、52a 時針、52b 分針、52c 秒針、53 文字板、54 状態表示針、60 操作部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻情報を含む電波を受信する電波受信手段と、
前記受信した電波に含まれる時刻情報に応じた時刻を表示する時刻表示手段と、
内蔵する電池の電圧が低下した場合に、当該電圧の低下を警告する表示を行う電圧警告表示手段と、
を含み、
前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了後、所定の条件を満たすまでの間、前記警告の表示を制限する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が実行する受信処理の種類に応じて決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項3】
請求項1に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が前記受信処理の実行に要した時間に応じて決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が成功した場合、前記警告の表示を制限し、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示を制限しない
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項5】
請求項4に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示として、前記受信処理が行われていない場合における警告の表示とは異なる種類の表示を行う
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電波受信手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した状態で前記電波の受信の指示を使用者から受け付けた場合、前記電池の電圧が所定の閾値以上に回復するのを待ってから、前記指示に応じた受信処理を実行する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電池の温度を検出する温度センサをさらに含み、
前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記温度センサが検出した温度に応じて決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に、前記警告の表示を行い、前記電波受信手段による受信処理の終了後、前記電池の電圧が前記所定の閾値以上に回復するまでの間、前記警告の表示を制限する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了時における前記電池の電圧の値を取得し、当該取得した電圧の値に応じて、前記警告の表示を制限する期間を決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が行われていないときには、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に前記警告の表示を行い、前記受信処理の終了後は、前記電池の電圧が前記所定の閾値よりも小さな制限時閾値未満に低下した場合だけ前記警告の表示を行うことにより、前記警告の表示を制限する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項1】
時刻情報を含む電波を受信する電波受信手段と、
前記受信した電波に含まれる時刻情報に応じた時刻を表示する時刻表示手段と、
内蔵する電池の電圧が低下した場合に、当該電圧の低下を警告する表示を行う電圧警告表示手段と、
を含み、
前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了後、所定の条件を満たすまでの間、前記警告の表示を制限する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が実行する受信処理の種類に応じて決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項3】
請求項1に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記電波受信手段が前記受信処理の実行に要した時間に応じて決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が成功した場合、前記警告の表示を制限し、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示を制限しない
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項5】
請求項4に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が失敗した場合、前記警告の表示として、前記受信処理が行われていない場合における警告の表示とは異なる種類の表示を行う
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電波受信手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した状態で前記電波の受信の指示を使用者から受け付けた場合、前記電池の電圧が所定の閾値以上に回復するのを待ってから、前記指示に応じた受信処理を実行する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電池の温度を検出する温度センサをさらに含み、
前記電圧警告表示手段は、前記警告の表示を制限する期間を、前記温度センサが検出した温度に応じて決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に、前記警告の表示を行い、前記電波受信手段による受信処理の終了後、前記電池の電圧が前記所定の閾値以上に回復するまでの間、前記警告の表示を制限する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記電波受信手段による受信処理の終了時における前記電池の電圧の値を取得し、当該取得した電圧の値に応じて、前記警告の表示を制限する期間を決定する
ことを特徴とする電波腕時計。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電波腕時計において、
前記電圧警告表示手段は、前記受信処理が行われていないときには、前記電池の電圧が所定の閾値未満に低下した場合に前記警告の表示を行い、前記受信処理の終了後は、前記電池の電圧が前記所定の閾値よりも小さな制限時閾値未満に低下した場合だけ前記警告の表示を行うことにより、前記警告の表示を制限する
ことを特徴とする電波腕時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−207939(P2012−207939A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71768(P2011−71768)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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