説明

電源装置

【課題】出力リプルを軽減すると共に浮遊インダクタンスや浮遊静電容量との共振現象を防止することで、出力電圧または出力電流を高精度に制御する電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング部51を備えた絶縁型直流−直流変換部5と、スイッチング素子を備えた非絶縁型直流−直流変換部8とを有し、非絶縁型直流−直流変換部8が出力する電圧、電流、または電力の値である後段側電気出力値の後段側制御目標値に基づいて絶縁型直流−直流変換部5が出力する電圧、電流、または電力の値である前段側電気出力値の前段側制御目標値を演算する。前段側電気出力値が前段側制御目標値に近づくようにスイッチング部51をオン/オフ制御すると共に、後段側電気出力値が前記後段側制御目標値に近づくように非絶縁型直流−直流変換部8とのスイッチング素子をオン/オフ制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源装置として、直流電圧を変換する直流−直流変換装置を有するものが知られている。一般に、直流−直流変換装置は、トランジスタ等のスイッチング素子を有しており、非絶縁型と絶縁型とに分類される。
非絶縁型の直流−直流変換装置は、スイッチング素子、チョークコイル、コンデンサ、およびダイオード等を組み合わせた簡易な回路で構成することができる。また、絶縁型の直流−直流変換装置は、トランスを用いることで入力側と出力側とを電気的に分離し、伝導ノイズの遮断や感電を防止することができる。
【0003】
直流−直流変換装置では、スイッチング素子が所定のスイッチング周期でオン/オフ制御されることで、入力された直流電圧が矩形波に変換される。この矩形波が平滑化されることで直流電圧の降圧または昇圧が行われる。
【0004】
このような、直流−直流変換装置による降圧または昇圧において、入力電圧に対して出力電圧を大きく変化させる場合、スイッチング周期に対するスイッチング素子がオンの時間の割合(デューティ比)が最も好適と考えられる0.5から外れて極端に小さな値となるか、または極端に大きな値となるため、スイッチング素子における電圧・電流の変化幅が大きくなり、大きな出力リプルを発生させてしまうという問題があった。
具体的には、入力電圧に対する出力電圧の比率が、例えば降圧チョッパにおいて20%を下回るか、または昇圧チョッパにおいて500%を超える場合には、デューティ比が0.2を下回るか、または0.8を上回り、出力リプルが大きくなるという問題があった。
【0005】
このような出力リプルを低減するものとして、特許文献1が公知である。
特許文献1には、出力電流指令値または出力電流検出値の大きさに応じて、非絶縁型直流−直流変換装置におけるスイッチング素子のスイッチング周波数を可変制御して、低出力領域においても出力リプルを小さくする直流電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−330581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の直流電源装置では、直流−直流変換装置のスイッチング素子が制御されることで、スイッチング周波数が変化する。すなわち、スイッチング周波数の可変レンジはスイッチング素子の性能に依存するため、スイッチング素子の性能によっては出力電圧の可変レンジが制限される。したがって、特許文献1の直流電源装置では、所望の電圧に降圧または昇圧できない可能性がある。
【0008】
また、特許文献1の直流電源装置では、スイッチング周波数が変更されるため、負荷回路に必然的に存在する浮遊インダクタンスや浮遊静電容量との共振現象が生じる虞がある。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、確実に出力リプルを軽減すると共に浮遊インダクタンスや浮遊静電容量との共振現象を防止することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電源装置は、負荷に直流電力を供給する電源装置であって、第1のスイッチング手段を有する絶縁型直流−直流変換手段と、前記絶縁型直流−直流変換手段の出力側に接続され、第2のスイッチング手段を有する非絶縁型直流−直流変換手段と、前記非絶縁型直流−直流変換手段が出力する電圧、電流、または電力の値である後段側電気出力値の後段側制御目標値に基づいて、前記絶縁型直流−直流変換手段が出力する電圧、電流、または電力の値である前段側電気出力値の前段側制御目標値を演算する演算手段と、前記前段側電気出力値が前記前段側制御目標値に近づくように前記第1のスイッチング手段をオン/オフ制御すると共に、前記後段側電気出力値が前記後段側制御目標値に近づくように前記第2のスイッチング手段をオン/オフ制御する制御手段と、を有していることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、直流−直流変換手段を2段階とし、後段の非絶縁型直流−直流変換手段が目標とする後段側制御目標値に基づいて、前段の絶縁型直流−直流変換手段における前段側制御目標値を演算し、前段側電気出力値が該前段側制御目標値に近づくように絶縁型直流−直流変換手段を制御するとともに、後段側電気出力値が後段側制御目標値に近づくように、非絶縁型直流−直流変換手段を制御する。
これにより、絶縁型直流−直流変換手段が出力する前段側電気出力値を後段の非絶縁型直流−直流変換手段において出力すべき電気量に対し適正な値とすることで、スイッチング手段における電圧、電流の変化幅を抑えることができる。例えば、前段側電気出力値を電圧とした場合には以下のとおりになる。
すなわち、降圧チョッパにおいて、後段側制御目標値(出力電圧)に基づいて前段の絶縁型直流−直流変換手段における前段側制御目標値を演算することで、前段の絶縁型直流−直流変換手段が出力する電圧を制御し、その値を低下させることにより、後段の非絶縁型直流−直流変換手段に入力される電圧を低下させることができる。その結果、電源装置全体では入力電圧に対する出力電圧の比率が20%を下回る場合でも、後段の非絶縁型直流−直流変換手段に入力される電圧に対する出力電圧の比率を20%以上とすることができる。
同様に、昇圧チョッパにおいて、後段側制御目標値(出力電圧)に基づいて前段の絶縁型直流−直流変換手段における前段側制御目標値を演算することで、前段の絶縁型直流−直流変換手段が出力する電圧を制御し、その値を上昇させることにより、後段の非絶縁型直流−直流変換手段に入力される電圧を上昇させることができる。その結果、電源装置全体では入力電圧に対する出力電圧の比率が500%を超える場合でも、後段の非絶縁型直流−直流変換手段に入力される電圧に対する出力電圧の比率を500%以下とすることができる。
これにより、デューティ比も0.5に近づける(0.2以上0.8以下)ことができ、第2のスイッチング手段における電流・電圧の変化幅を抑制し、出力リプルを確実に軽減することができる。
また、第1および第2のスイッチング手段のスイッチング周波数を変動させることはないため、負荷回路に必然的に存在する浮遊インダクタンスや浮遊静電容量との共振現象を防止することができる。
【0012】
また、本発明の電源装置は、Vを前段側制御目標電圧とし、Iを後段側制御目標電流とし、Lを負荷のインダクタンス、Rを負荷の抵抗成分、Kを前記前段側制御目標電圧Vの後段側制御目標電圧に対する比例係数としたとき、前記演算手段は、前段側制御目標電圧Vを、V=K{RI+L(dI/dt)}の関係式から前記前段側制御目標値を演算するものであってもよい。
【0013】
上記構成によれば、RI+L(dI/dt)で演算される後段側出力電圧に比例係数Kを乗じた前段側制御目標電圧Vを前段の絶縁型直流−直流変換手段から後段の非絶縁型直流−直流変換手段に供給することにより、後段側は低リプルとするのに好適なデューティ比で動作できる。
【0014】
また、本発明の電源装置は、Vを前段側制御目標電圧とし、Vを後段側制御目標電圧とし、Cを前記負荷の静電容量とし、Rを前記負荷の抵抗成分とし、ZおよびKを各負荷成分の前記前段側制御目標電圧Vの後段側制御目標電圧に対する比例係数としたとき、前記演算手段は、V=ZC(dV/dt)+KRIの関係式から前記前段側制御目標値を演算するものであってもよい。
なお、Zは抵抗の次元をもった比例係数である。
【0015】
上記構成によれば、負荷が静電容量Cの容量性負荷である場合、その電圧の後段側制御目標値を微分し、その静電容量に応じた係数を乗じた値と、抵抗成分による電力損失に対応した成分との和である前段側制御目標電圧Vを前段の絶縁型直流−直流変換手段から後段の非絶縁型直流−直流変換手段に供給することにより、後段側は低リプルとするのに好適なデューティ比で動作できる。
【0016】
また、本発明の電源装置における演算手段は、後段側制御目標値を上昇させる場合、負荷のインダクタンスLよりも大きいインダクタンスL’、および負荷の抵抗成分Rよりも大きい抵抗成分R’を用いて前段側制御目標値を演算し、また、後段側制御目標値を下降させる場合、負荷のインダクタンスLよりも小さいインダクタンスL’’、および負荷の抵抗成分Rよりも小さい抵抗成分R’’を用いて前段側制御目標値を演算するものであっても良い。
【0017】
上記構成によれば、出力上昇時における負荷および平滑コンデンサへの供給電力の不足を回避するとともに、出力下降時における絶縁型直流−直流変換手段への供給電力の過剰を回避することができる。
【0018】
また、本発明の電源装置において、絶縁型直流−直流変換手段は、正負両極の出力を有し、非絶縁型直流−直流変換手段は、絶縁型直流−直流変換手段の正負両極出力の夫々が入力される正負両極の対称型回路構成を有していてもよい。
【0019】
また、本発明の電源装置において、絶縁型直流−直流変換手段の入力部に並列接続された第1のコンデンサと、絶縁型直流−直流変換手段と非絶縁型直流−直流変換手段との間に並列接続された第2のコンデンサと、入力側が非絶縁型直流−直流変換手段の出力部と接続され、出力側が前記第1のコンデンサと絶縁型直流−直流変換手段との間に接続された電力回生手段と、をさらに有する構成としてもよい。
これにより、電気エネルギーを効率化することができる。
このとき、電力回生手段の入力部を短絡する半導体スイッチを有する構成としてもよい。
さらに、前記半導体スイッチは、偶数個の素子を直列接続しその中点を接地接続されてなる構成、または、複数個の素子を並列接続したユニットを偶数組直列接続しその中点を接地接続されてなる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、確実に出力リプルを軽減すると共に浮遊インダクタンスや浮遊静電容量との共振現象を防止することで、出力電圧または出力電流を高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に関する電源装置の概略構成図である。
【図2】本発明の電力回生動作を示す各種タイムチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に関する電源装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に関する電源装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の電源装置は、制御キャリア周波数リプル成分の極めて小さな物理学研究用、医療用、または放射光源用の粒子ビーム加速器の電磁石電源装置等に適用される。
【0023】
<第1の実施形態>
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る電源装置100を示す概略構成図である。
図1に示すように、電源装置100は、交流電源1から電力が供給され、負荷2に直流の電力を供給するようになっている。
【0025】
電源装置100は、整流部3と、整流手段出力平滑用コンデンサ4(本発明の「第1のコンデンサ」に相当)と、絶縁型直流−直流変換部5と、絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6(本発明の「第2のコンデンサ」に相当)と、非絶縁型直流−直流変換部8と、制御部20と、演算部101とを有している。
【0026】
整流部3は、交流電源1の出力側に接続され、交流電源1からの電力を整流するようになっている。
整流手段出力平滑用コンデンサ4は、プラス側が、整流部3と絶縁型直流−直流変換部5との間に接続される。
すなわち、整流手段出力平滑用コンデンサ4は、整流部3によって整流された電力を平滑化し、絶縁型直流−直流変換部5に出力する。
【0027】
絶縁型直流−直流変換部5は、スイッチング部51と、変圧器52と、整流器53とを有している。
スイッチング部51は、整流部3の出力側に接続され、制御部20によってスイッチングのオン/オフが制御され、デューティ比が変更される。
すなわち、スイッチング部51は、整流手段出力平滑用コンデンサ4によって平滑化された電力をスイッチング周期の矩形波に変換し、変圧器52に出力する。
【0028】
変圧器52は、スイッチング部51の出力側に接続され、スイッチング部51によって矩形波状の交流に変換された電圧を異なる電圧に変換し、整流器53に出力するようになっている。
【0029】
整流器53は、変圧器52の出力側に接続され、変圧器52によって変換された電圧を整流するようになっている。したがって、整流器53によって整流された電圧が絶縁型直流−直流変換部5の出力(前段側電気出力値)となる。
【0030】
絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6は、絶縁型直流−直流変換部5と非絶縁型直流−直流変換部8との間に接続される。
すなわち、絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6は、絶縁型直流−直流変換部5から出力された電力を平滑化し、非絶縁型直流−直流変換部8に出力する。
【0031】
非絶縁型直流−直流変換部8は、スイッチング素子、ダイオード、チョークコイル、および、コンデンサ(図示せず)を有し、チョッパ方式で降圧を行う直流−直流変換装置である。
非絶縁型直流−直流変換部8のスイッチング素子は、制御部20によってスイッチングのオン/オフ制御が行われ、デューティ比が変更される。
すなわち、非絶縁型直流−直流変換部8のスイッチング素子は、絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6によって平滑化された電力をスイッチング周期の矩形波に変換する。
この矩形波が整流および平滑化された直流電力(後段側電気出力値)が、負荷2に出力されるようになっている。
【0032】
制御部20は、絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ電圧測定部7と、負荷電流測定部9と、絶縁型直流−直流変換制御部102と、非絶縁型直流−直流変換制御部103とを有している。
【0033】
絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ電圧測定部7は、非絶縁型直流−直流変換部8への入力電圧を測定する。すなわち、上記出力平滑用コンデンサ電圧測定部7は、絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6(第2のコンデンサ)に接続され、該出力平滑用コンデンサ6によって平滑化された電圧値を取得するようになっている。
また、上記出力平滑用コンデンサ電圧測定部7は、絶縁型直流−直流変換制御部102へ、取得した電圧値に基づく信号を出力する。
【0034】
絶縁型直流−直流変換制御部102は、上記出力平滑用コンデンサ電圧測定部7からの信号と、演算部101からの前段側制御目標値信号とに基づき、スイッチング部51をオン/オフ制御し、デューティ比を変更する。
【0035】
負荷電流測定部9は、負荷2への入力電圧を測定する。上記負荷電流測定部9は、非絶縁型直流−直流変換部8の出力側に接続され、負荷2に入力される電流値を取得するようになっている。また、負荷電流測定部9は、非絶縁型直流−直流変換制御部103へ、取得した電流値に基づく信号を出力する。
すなわち、負荷電流測定部9は、後段側電気出力値を取得し、後段側電気出力値を示す信号を出力する。
【0036】
非絶縁型直流−直流変換制御部103は、負荷電流測定部9からの信号と、演算部101からの後段側制御目標値信号とに基づき、非絶縁型直流−直流変換部8におけるスイッチング素子をオン/オフ制御し、デューティ比を変更する。
【0037】
演算部101は、演算増幅器を用いたアナログ演算回路、およびデジタルシグナルプロセッサ(DSP)やマイクロコンピュータを用いたデジタル演算回路等から適宜選択して使用することができる。
【0038】
演算部101は、負荷2に出力する後段側制御目標値に基づいて絶縁型直流−直流変換部5が出力する前段側制御目標値を演算する。
具体的に、演算部101は、負荷2および後段側制御目標値の関係式を示す下記の式(1)に基づいて、前段側制御目標値を演算する。
【0039】
=K{RI+L(dI/dt)}=KV ・・・ 式(1)
ここで、Vを前段側制御目標電圧とし、Vを後段側制御目標電圧とし、Iを後段側制御目標電流とし、Lを負荷2のインダクタンスとし、Rを負荷2の抵抗成分とする。また、Kは、前段側制御目標電圧Vの後段側制御目標電圧Vに対する比例係数である。
【0040】
例えば、後段側制御目標値が電流値で与えられる場合は、式(1)で演算されるVが絶縁型直流−直流変換部5の出力すべき電圧値(前段側制御目標値)となる。
また、例えば、後段側制御目標値が電圧値で与えられる場合は、その電圧値に比例係数Kを乗算した値が絶縁型直流−直流変換部5の出力すべき電圧値(前段側制御目標値)となる。
【0041】
また、適用される負荷2の種類により、演算内容が異なる。
例えば、負荷2が、抵抗である場合、または、上記の式(1)のインダクタンスの項は無視されて、演算式はV=KRIとなる。
また、例えば、負荷2が、電動機や電磁石のような誘導性負荷の場合、等価回路としてインダクタンスLと抵抗Rの直列回路で表現でき、演算式は上記の式(1)で示される。
また、例えば、負荷2が、静電容量Cの容量性負荷の場合、その電圧の後段側制御目標値を微分し、その静電容量に応じた係数を乗じた値と、抵抗成分による電力損失に対応した成分の和とするのが望ましく、Rを負荷の抵抗成分とし、ZおよびKを各負荷成分の前記前段側制御目標電圧Vの後段側制御目標電圧に対する比例係数(Zは抵抗の次元をもった比例係数)としたとき、
演算式は、V=ZC(dV/dt)}+KRIとなる。
【0042】
なお、演算部101は、後段側制御目標値が変更される場合、上記の式(1)におけるインダクタンスL、抵抗成分R、または比例係数Kを変更するものであってもよい。
例えば、後段側制御目標値を上昇させる場合、負荷のインダクタンスLよりも大きいインダクタンスL’、および負荷の抵抗成分Rよりも大きい抵抗成分R’を用いて前段側制御目標値を演算するものであっても良いし、後段側制御目標値を下降させる場合、負荷のインダクタンスLよりも小さいインダクタンスL’’、および負荷の抵抗成分Rよりも小さい抵抗成分R’’を用いて前段側制御目標値を演算するものであってもよい。
【0043】
このように、電源装置100では、直流−直流変換手段が2段階とされ、後段の非絶縁型直流−直流変換部8が目標とする後段側制御目標値に基づいて、前段の絶縁型直流−直流変換部5における前段側制御目標値を演算し、該前段側制御目標値を出力するように絶縁型直流−直流変換部5を制御する。
【0044】
これにより、絶縁型直流−直流変換部5が出力する前段側電気出力値を後段側非絶縁型直流−直流変換手段において出力すべき電気量に対し適正な値とすることができる。その結果、非絶縁型直流−直流変換部8におけるスイッチング素子のデューティ比を0.5に近づけることができるため、スイッチング素子における電流・電圧の変化幅を抑制し、出力リプルを確実に軽減することができる。
また、スイッチング部51および非絶縁型直流−直流変換部8のスイッチング素子のスイッチング周波数を変動させることはないため、負荷2に必然的に存在する浮遊インダクタンスや浮遊静電容量との共振現象を防止することができる。
【0045】
このような、後段側制御目標値は、負荷2を配設する際に、演算部101に初期値として与えられる。すなわち、演算部101は記憶領域を有していてもよい。また、電源装置100は、後段側制御目標値を入力するための入力装置を備えるものであってもよい。
【0046】
また、図1に示すように、電源装置100は、電力の効率化を図るべく、電力回生部10と、半導体スイッチ11と、電力回生制御部104とを有している構成であってもよい。
【0047】
電力回生部10は、入力回路が非絶縁型直流−直流変換部8の出力部と直列に接続されている。具体的に、非絶縁型直流−直流変換部8は、出力が二端子あり、一方が負荷2を介して電力回生部10の一方の入力に接続され、他方が直接、電力回生部10の他方の入力に接続されている。
また、電力回生部10は、出力部が、整流手段出力平滑用コンデンサ4と絶縁型直流−直流変換手段との間に接続されている。
【0048】
半導体スイッチ11は、電力回生部10の入力回路を短絡するように接続されている。
半導体スイッチ11は、これに限定されず、例えば偶数個の素子を直列接続しその中点を接地接続したものであってもよいし、複数個の素子を並列接続した偶数組の半導体スイッチユニットを直列接続しその中点を接地接続したものであってもよい。
【0049】
電力回生制御部104は、電力回生部10および半導体スイッチ11の制御を行うものである。電力回生制御部104は、非絶縁型直流−直流変換制御部103からの信号を受信すると共に、電力回生部10および半導体スイッチ11に対して制御信号を出力する。
【0050】
ここで、電力回生動作について、図2を参照して説明する。
図2は、電力回生動作を示す各種タイムチャートであり、図2(a)は、負荷2における電流の変化を示し、図2(b)は、負荷2における電圧の変化を示し、図2(c)は、絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6における電圧の変化を示し、図2(d)は、半導体スイッチ11のオン/オフ制御変化を示し、図2(e)は、電力回生手段の出力電流の変化を示し、図2(f)は、整流手段出力平滑用コンデンサ4の電圧の変化を示す。
【0051】
先ず、図2(a)に示すように、負荷2に流れる電流は、時間tから時間tまで増加し続け、その後時間tまで一定となっている。そして、時間tから時間tまで減少し続け、時間t以降は時間t以前の電流値が保持される。
【0052】
そして、図2(b)に示すように、負荷2の電圧は、電流に応じて、時間tにおいて瞬間的に上昇し、時間tまで緩やかに上昇し続けた後時間tにおいて瞬間的に下降する。そして、時間tまで一定となった後、時間tにおいてマイナス値まで瞬間的に下降し、時間tまで緩やかに下降し続けた後時間t以前の電流値が保持される。
【0053】
図2(c)に、絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6における電圧を示す。絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ6の電圧は、負荷2の電圧に対応した変化を示す。
【0054】
ここで、非絶縁型直流−直流変換制御部103は、負荷電流測定部9が測定した電流に基づいて、時間tにおいて、負荷2の電圧がマイナス値となったことを検出する。
非絶縁型直流−直流変換制御部103は、負荷2の電圧がマイナス値となった場合、電力回生制御部104へ信号を出力する。
【0055】
電力回生制御部104は、非絶縁型直流−直流変換制御部103からの信号を受け取ると、半導体スイッチ11をオフに制御する(図2(d):時間t〜時間t)とともに、電力回生部10を駆動させる。これにより、半導体スイッチ11による電力回生部10の入力回路の短絡が時間tから時間tまで解除され、電力回生部10において負荷2からのマイナスの電力がプラスに回生される(図2(e):時間t〜時間t)。
【0056】
図2(f)は、整流手段出力平滑用コンデンサ4の電圧の変化が示されている。時間tからの期間において、負荷2にて電流の消費が増加したため、同期間において電圧が減少している。
しかしながら、整流手段出力平滑用コンデンサ4は、電力回生部10からの回生電力を時間tから蓄えることができるため、時間tから時間tにかけて電圧が上昇していることが分かる。
【0057】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。本実施の形態において、上述したのと同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図3は、本実施形態に係る電源装置200を示す概略構成図である。
上述した第1の実施形態と異なる点は、電力の回生を行う電力回生部10と、半導体スイッチ11と、電力回生制御部104とを有していない構成にされた点である。
さらに、本実施形態に係る電源装置200は、絶縁型直流−直流変換部5が、正負両極の出力を有し、非絶縁型直流−直流変換部8が、絶縁型直流−直流変換部5の正負両極出力の夫々が入力される正負両極の対称型回路構成を有している構成にされた点で第1の実施の形態と異なる。
このような構成であっても第1の実施の形態と同様の効果を有することができる。
【0059】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。本実施の形態において、上述したのと同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図4は、本実施形態に係る電源装置300を示す概略構成図である。
上述した第2の実施形態と異なる点は、電力の回生を行う電力回生部10と、半導体スイッチ11と、電力回生制御部104とを有している構成にされた点である。
さらに、本実施形態に係る電源装置300は、半導体スイッチ11が、偶数個(本実施形態では2個)直列接続され、その中点が接地接続されてなる構成にされた点で第1の実施の形態と異なる。
【0061】
なお、半導体スイッチ11は、このような構成に限定されない。図示しないが、例えば、半導体スイッチ11が複数個ユニットになった半導体スイッチユニットが、偶数個直列接続され、その中点が接地接続されてなる構成にされていてもよい。
このような構成であっても上述の実施の形態と同様の効果を有することができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその趣旨を超えない範囲
において変更が可能である。
例えば、第1の実施形態において、電力を回生するための構成を設けたがこれに限定されず、電力回生部10、半導体スイッチ11、および、電力回生制御部104等がない構成であってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、電圧を降圧させるものであったがこれに限定されず、昇圧を行うものであっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 交流電源
2 負荷
3 整流部
4 整流手段出力平滑用コンデンサ(第1のコンデンサ)
5 絶縁型直流−直流変換部
6 絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ(第2のコンデンサ)
7 絶縁型直流−直流変換手段出力平滑用コンデンサ電圧測定部
8 非絶縁型直流−直流変換部
9 負荷電流測定部
10 電力回生部
11 半導体スイッチ
20 制御部
51 スイッチング部
52 変圧器
53 整流器
101 演算部
102 絶縁型直流−直流変換制御部
103 非絶縁型直流−直流変換制御部
104 電力回生制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に直流電力を供給する電源装置であって、
第1のスイッチング手段を有する絶縁型直流−直流変換手段と、
前記絶縁型直流−直流変換手段の出力側に接続され、第2のスイッチング手段を有する非絶縁型直流−直流変換手段と、
前記非絶縁型直流−直流変換手段が出力する電圧、電流、または電力の値である後段側電気出力値の後段側制御目標値に基づいて、前記絶縁型直流−直流変換手段が出力する電圧、電流、または電力の値である前段側電気出力値の前段側制御目標値を演算する演算手段と、
前記前段側電気出力値が前記前段側制御目標値に近づくように前記第1のスイッチング手段をオン/オフ制御すると共に、前記後段側電気出力値が前記後段側制御目標値に近づくように前記第2のスイッチング手段をオン/オフ制御する制御手段と、
を有していることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
を前段側制御目標電圧とし、Iを後段側制御目標電流とし、Lを前記負荷のインダクタンスとし、Rを前記負荷の抵抗成分とし、Kを前記前段側制御目標電圧Vの後段側制御目標電圧に対する比例係数としたとき、
前記演算手段は、V=K{RI+L(dI/dt)}の関係式から前記前段側制御目標値を演算することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
を前段側制御目標電圧とし、Vを後段側制御目標電圧とし、Cを前記負荷の静電容量とし、Rを前記負荷の抵抗成分とし、ZおよびKを各負荷成分の前記前段側制御目標電圧Vの後段側制御目標電圧に対する比例係数としたとき、
前記演算手段は、V=ZC(dV/dt)+KRIの関係式から前記前段側制御目標値を演算することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記演算手段は、
前記後段側制御目標値を上昇させる場合、前記負荷のインダクタンスLよりも大きいインダクタンスL’、および前記負荷の抵抗成分Rよりも大きい抵抗成分R’を用いて前記前段側制御目標値を演算し、
前記後段側制御目標値を下降させる場合、前記負荷のインダクタンスLよりも小さいインダクタンスL’’、および前記負荷の抵抗成分Rよりも小さい抵抗成分R’’を用いて前記前段側制御目標値を演算することを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記絶縁型直流−直流変換手段は、正負両極の出力を有し、
前記非絶縁型直流−直流変換手段は、前記絶縁型直流−直流変換手段の正負両極出力の夫々が入力される正負両極の対称型回路構成を有することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記絶縁型直流−直流変換手段の入力部に並列接続された第1のコンデンサと、
前記絶縁型直流−直流変換手段と前記非絶縁型直流−直流変換手段との間に並列接続された第2のコンデンサと、
入力側が前記非絶縁型直流−直流変換手段の出力部と接続され、出力側が前記第1のコンデンサと前記絶縁型直流−直流変換手段との間に接続された電力回生手段と、
をさらに有していることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記電力回生手段の入力部を短絡する半導体スイッチを有することを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記半導体スイッチは、偶数個の素子を直列接続しその中点を接地接続されてなる構成、または、複数個の素子を並列接続したユニットを偶数組直列接続しその中点を接地接続されてなる構成であることを特徴とする請求項7に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−130180(P2012−130180A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280439(P2010−280439)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】