説明

電源装置

【課題】交流電源のゼロクロス検出の高精度化を図ることで、入力力率を維持した電源装置を提供する。
【解決手段】交流電源1をリアクタ2を介して短絡する短絡手段3と、交流電源の交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する2値信号出力手段7と、2値信号出力手段からの2値信号を用いた演算により算出されたゼロクロス点情報に基づいて短絡手段を駆動する制御部8を備えた電源装置であって、演算は、ゼロクロス点の算出および次の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の算出を行うものであり、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の間の一部の期間は、2値信号を無視することで、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができ、高力率を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源からの交流電圧を整流して負荷へ直流電圧を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源電圧のゼロクロス時刻を算出する方法として、2値信号の立ち上がり時刻と立ち下がり時刻を用いて電源電圧のゼロクロス時刻を算出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図6は、コンバータ回路における従来のゼロクロス時刻の算出方法を示している。図6から明らかなように、電源電圧波形の立ち上がり時刻ton(2)と立ち下がり時刻toff(2)の中間時刻tpは電源電圧のピーク時刻となる。したがって、ピーク時刻tpから90度(tac/4)遅れの時刻が立ち下がりのゼロクロス時刻であり、ピーク時刻tpから270度(3・tac/4)遅れの時刻が立ち上がりのゼロクロス時刻となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−45763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電源装置は比較的良好な特性を有し、図6に示すような2値信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジからゼロクロス点を算出する方式は、ゼロクロス点を正確に得ることはできていたが、電源電圧の歪みや2値信号のチャタリングに対しては、不十分であるという課題を有していた。
【0005】
本発明の電源装置は、前記のような従来の課題を解決するもので、瞬時停電によって図3に示すような2値信号になっても交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の電源装置は、交流電源をリアクタを介して短絡する短絡手段と、交流電源の交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する2値信号出力手段と、2値信号出力手段からの2値信号を用いた演算により算出されたゼロクロス点情報に基づいて短絡手段を駆動する制御部を備えた電源装置であって、演算は、ゼロクロス点の算出および次の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の算出を行うものであり、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の間の一部の期間は、2値信号を無視するものである。
【0007】
これによって、瞬時停電によって不正規な立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが発生しても、そのエッジは無視されることとなるので、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができ、高力率を維持することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電源装置は、瞬時停電によって不正規な立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが発生しても、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができ、高力率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における電源装置の主回路構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電源装置の各部動作説明図
【図3】本発明の実施の形態2における電源装置の各部動作説明図
【図4】本発明の実施の形態3における電源装置の各部動作説明図
【図5】本発明の実施の形態4における電源装置の各部動作説明図
【図6】従来のコンバータ回路の一例に係る構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、交流電源をリアクタを介して短絡する短絡手段と、交流電源の交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する2値信号出力手段と、2値信号出力手段からの2値信号を用いた演算により算出されたゼロクロス点情報に基づいて短絡手段を駆動する制御部を備えた電源装置であって、演算は、ゼロクロス点の算出および次の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の算出を行うものであり、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の間の一部の期間は、2値信号を無視することにより、瞬時停電によって不正規な立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが発生しても、そのエッジは無視されることとなるので、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明のゼロクロス点および演算タイミングの算出は、2値信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに対応する各時刻の中点と、交流電源の周期とを用いて行うとしたもので、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができる。
【0012】
第3の発明は、特に第1から第2の発明の2値信号の立ち上がりエッジあるいは立ち下がりエッジが発生しなかったら、立ち上がりエッジあるいは立ち下がりエッジの予測値に対応する各時刻の中点と交流電源の周期を用いてゼロクロス点を算出するものであり、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができる。
【0013】
第4の発明は、特に第1〜3の発明の一部の期間は、ゼロクロス点から交流電源の周期の概略1/4に相当する時間だけ加算した時刻の前後の所定の区間であり、交流電源のピーク時刻付近は2値信号の立ち上がりエッジあるいは立ち下がりエッジが発生しないことを想定し、所定の区間内は2値信号を無視することで、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができる。
【0014】
第5の発明は、特に第1〜第4の発明の演算タイミングは、1周期前に算出されたゼロクロス点から交流電源の周期の概略3/4に相当する時間だけ加算した時刻であり、交流電源のピーク時刻付近で演算を行なうことで、正規の2値信号のエッジに近すぎて誤った時刻を用いて演算してしまう可能性が低くなるので、最も周波数変動に対応できる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明にかかる第1の実施の形態の電源装置を示す構成図である。図1において、交流電源1の出力端からリアクタ2を経由して4個のダイオード4a、4b、4c、4dからなるブリッジ回路に入力される。ブリッジ整流回路の出力には平滑コンデンサ5、負荷6が接続されている。また、交流電源1の出力端からリアクタ2を介して交流電源1を短絡する短絡手段3が接続されることで、電源装置の力率を改善するようになっている。
【0017】
また、交流電源1の両端には交流電源1の電源電圧の位相を2値信号で出力し、この2値信号を制御部8に供給する2値信号出力手段7が接続されている。
【0018】
この2値信号出力手段7は、図2に示すように、電源電圧に応じてON−OFF信号を出力するように構成されており、例えば、電源電圧がある基準値以上になるとON信号を出力し、基準値以下になるとOFFになるものである。例えば、フォトカプラ等で組まれる構成があり、本実施の形態1の所定の基準電圧は極めて0Vに近い値、または0Vも含まれる。また、図2には交流電源1の正サイクルに2値信号が出力される波形を示しているが、負サイクルに2値信号が出力される波形でも本実施の形態1を利用できる。
【0019】
図2に、本実施の形態における電源装置の各部動作説明図を示す。まず、次のゼロクロス点O(1)の算出方法を説明する。演算タイミングP(0)の時刻付近にて立ち上がりエッジTon(0)と立ち下がりエッジToff(0)の時刻からゼロクロス点O(1)を算出するものであり、ゼロクロス点O(1)の直近の立ち上がりエッジTon(0)と立ち下がりエッジToff(0)の中間時刻は電源電圧のピーク時刻tpとなる。したがって、ピーク時刻tpから270度(3・tac/4)遅れの時刻が立ち上がりのゼロクロス点O(1)となる。さらに、立ち上がりエッジTon(0)から周期tac遅れの時刻が次の立ち上がりエッジの予測値Ton(1)’、立ち下がりエッジToff(0)から周期tac遅れの時刻が次の立ち下がりエッジの予測値Toff(1)’となる。
【0020】
ここでのtacは交流電源1の周期であり、例えば50Hz電源の場合は20ms、60Hz電源の場合は16.667msのような所定の値である。また、図2では立ち上がりのゼロクロス点を算出していたが、ピーク時刻tpから450度(5・tac/4)遅れの時刻となる立ち下がりのゼロクロス点、さらには2周期目以降のゼロクロス点も同様に算出することもできる。
【0021】
次に、図2に示すように演算タイミングP(1)の直近に不正規の立ち上がりエッジTon(err)と立ち下がりエッジToff(err)が発生した場合を示す。あらかじめ、前周期にて算出した立ち上がりエッジの予測値Ton(1)’と立ち下がりエッジの予測値Toff(1)’の間に期間twを設け、期間tw内に発生した立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを無視するようにする。立ち上がりエッジの予測値Ton(1)’と立ち下がりエッジの予測値Toff(1)’が正規なエッジ相当、それより狭い期間は不正規なエッジ相当と見なすものであり、期間twはTon(1)’とToff(1)’の間より狭く設定されていればよい。そうすることで、立ち上がりエッジTon(err)または立ち下がりエッジToff(err)が発生しても、そのエッジは無視されることとなり、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができる。
【0022】
すなわち、交流電源1の概略1周期毎に行われる演算タイミングにて、2値信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに対応する各時刻の中点と交流電源の周期を用いてゼロクロス点の算出と、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の算出を行い、ゼロクロス点に同期した信号に基づいて短絡手段3を駆動する。
【0023】
以上のように、算出された正確なゼロクロス点の情報を使用することで、短絡手段3の制御が正確に行え、電源装置の力率を改善することができる。
【0024】
(実施の形態2)
図3は、本発明にかかる第2の実施の形態の電源装置を示す各部動作説明図である。ゼロクロス点O(1)の算出は、本実施の形態1と同様に、演算タイミングP(0)の時刻付近にて、直近の立ち上がりエッジTon(0)と立ち下がりエッジToff(0)の時刻から算出するものである。
【0025】
図3に示すような長い瞬時停電により本来得られるはずの立ち下がりエッジが発生しなかった場合を示す。あらかじめ、前周期にて算出した立ち上がりエッジの予測値Ton(1)’と立ち下がりエッジの予測値Toff(1)’の間に期間twを設け、期間tw内に発生した立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを無視するようにする。そうすることで、不正規な立ち下がりエッジToff(err)が発生しても、そのエッジは無視されることとなる。すなわち、演算タイミングP(1)の直近に立ち下がりエッジが発生していない状態となる。
【0026】
さらに、演算タイミングP(0)の時刻付近にて、立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが発生していない場合は、前周期にて算出した立ち上がりエッジの予測値Ton(1)’または立ち下がりエッジの予測値Toff(1)’を用いて次のゼロクロス点を算出するようにする。そうすることで、長い瞬時停電により本来得られるはずの立ち下がりエッジが発生しなかった場合でも、立ち下がりエッジの予測値Toff(1)’を用いることで、次のゼロクロス点O(2)を算出することができる。
【0027】
また、立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジどちらか発生しなかった方に対応した予測値を用いてゼロクロス点を算出するか、立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジどちらかが発生しなかったら、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジ双方の予測値を用いてゼロクロス点を算出することで、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0028】
(実施の形態3)
図4は、本発明にかかる第3の実施の形態の電源装置を示す各部動作説明図である。ゼロクロス点O(1)の算出は、本実施の形態1と同様に、演算タイミングP(0)の時刻付近にて、直近の立ち上がりエッジTon(0)と立ち下がりエッジToff(0)の時刻から算出するものであり、ゼロクロス点O(0)から90度(tac/4)遅れの時刻となるピーク時刻tp’を算出する。
【0029】
ここで、ピーク時刻tp’を中心にその前後に期間twを設け、期間tw内に発生した立ち上がりエッジと立ち下がりエッジを無視するようにする。ピーク時刻付近には正規なエッジは発生しないと見なすものであり、正規なエッジが発生するだろう位相θonと位相θoffに重ならないように期間twはある程度マージンを持った設定にすればよい。そうすることで、立ち上がりエッジTon(err)または立ち下がりエッジToff(err)が発生しても、そのエッジは無視されることとなり、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0030】
(実施の形態4)
図5は、本発明にかかる第4の実施の形態の電源装置を示す各部動作説明図である。演算タイミングP(0)は、ゼロクロス点O(1)の手前にあればよいが、正規の2値信号のエッジに近すぎると誤った時刻を用いて演算してしまう可能性がある。例えば、図5に示すように1周期前のゼロクロス点O(0)から約3/4tacだけ加算した時刻、つまり交流電源1のピーク時刻付近で算出することで、誤った時刻を用いて演算してしまう可能性は低くなるので、最も周波数変動に対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる電源装置は、瞬時停電によって不正規な立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが発生しても、交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができるので、空気調和器や冷蔵庫をはじめ、洗濯機などの電化製品の電源装置、さらに交流電源の入力電圧の位相を検出する検出装置として適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 交流電源
2 リアクタ
3 短絡手段
4a、4b、4c、4d ダイオード
5a、5b 電解コンデンサ
6 負荷
7 2値信号出力手段
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源をリアクタを介して短絡する短絡手段と、前記交流電源の交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する2値信号出力手段と、前記2値信号出力手段からの2値信号を用いた演算により算出されたゼロクロス点情報に基づいて前記短絡手段を駆動する制御部を備えた電源装置であって、前記演算は、前記ゼロクロス点の算出および次の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの予測値の算出を行うものであり、立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの前記予測値の間の一部の期間は、前記2値信号を無視することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記ゼロクロス点および前記予測値の算出は、前記2値信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに対応する各時刻の中点と、前記交流電源の周期を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記2値信号の立ち上がりエッジあるいは立ち下がりエッジが発生しなかったら、立ち上がりエッジあるいは立ち下がりエッジの前記予測値に対応する各時刻の中点と、前記交流電源の周期を用いて前記ゼロクロス点を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記一部の期間は、前記ゼロクロス点から前記交流電源の周期の概略1/4に相当する時間だけ加算した時刻の前後の所定の区間であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記演算タイミングは、1周期前に算出された前記ゼロクロス点から前記交流電源の周期の概略3/4に相当する時間だけ加算した時刻であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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