説明

電源装置

【課題】本発明は、交流電力を多相の脈流または直流の電力に変換する電源装置に関し、負荷に適した電力を精度よく安定に供給し、かつ多様な系構成に柔軟に適応可能であることを目的とする。
【解決手段】交流電力の相数pより相数P(≧12)が大きく、かつ位相がユニークである多相交流電力に前記交流電力を変換する多相変換手段と、前記多相交流電力を並行して整流して複数Pの脈流電力を生成する脈流生成手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力を多相の脈流または直流の電力に変換する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電力によって駆動され、かつ停電時にも連続して稼働すべき装置やシステムの多くには、例えば、商用電源から供給される交流電力を一旦直流電力に変換してバッテリに蓄え、その直流電力を再び交流電力に変換して供給するUPS(Uninterruptible Power Supply)が採用されている。
【0003】
また、連続して稼働すべきサーバ等の駆動電力は、例えば、3相の交流電力が6相の多相交流電力に変換され、さらに全波整流されることによって得られた脈流電力が合成されて供給されていた。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献3がある。
【0005】
(1) 「三相交流電源から入力した三相交流を直流に変換する直結三相全波整流器と、これに並列して設けられる三組のリング変調波電力発生器と三相複巻線高周波多相変換変圧器と相数に対応して設けられる複数のリング変調波復調器兼補助三相全波整流器を有する高調波補正回路を備え、前記高調波補正回路の直流出力を前記直結三相全波整流器の直流出力と並列接続し、三相交流電源側から見て等価的に6n相(nは3〜7の整数)の多相全波整流回路を構成する」ことによって、「小型軽量化、低雑音、高効率化および低THDを同時に解決する」点に特徴がある高周波変復調多相整流装置…特許文献1
【0006】
(2) 「ダイオード素子からなり商用周波数の交流系統の電圧を整流して直流母線に出力する整流回路、半導体スイッチング素子からなり前記直流母線の電圧を交流に変換して負荷に供給するインバータ、前記直流母線間に接続されたスイッチと抵抗器との直列体からなる電圧クランプ回路、および前記直流母線間に所定の過電圧を超える電圧が発生しないよう前記直流母線間の電圧が前記所定の過電圧に達したときまたはその恐れがあるとき平常時開路状態にある前記スイッチを閉路するスイッチ制御回路を備える」ことによって、「多相整流回路を用いて高い受電力率を可能とすべく、平滑コンデンサの容量をある程度の大きさ以下に小さく設定しても、耐圧以上に直流母線電圧が上昇してインバータを破損する恐れがない電力変換装置を得る」点に特徴がある電力変換装置…特許文献2
【0007】
(3) 「ブリードレス型の航空機、即ち、空圧回路を備えない電力アーキテクチャを備えた航空機に搭載される発電、変換、配電および始動のためのシステムであって、前記ブリードレス型の航空機に特有のハイパワー負荷のための配電チャンネルと、航法装置、照明、燃料ポンプのような技術負荷および商業負荷を含む通常負荷のための配電チャンネルとが、分離され、且つ、前記航空機のエンジン(Eng1,Eng2)によって駆動される別個の発電機(SG−B,SG−Y;SG−G1,SG−G2)によって電力が供給される」ことによって、「高品質の電圧を必要とする負荷から、高調波汚染をもたらす負荷を分離することにより、より軽量(lighter)なアーキテクチャの設計を提案する」点に特徴がある航空機に搭載される発電、変換、配電及び始動のためのシステム…特許文献3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007/069556号公報
【特許文献2】特開2010−239736号公報
【特許文献3】特開2010−507526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したUPSは、増設され得る可能性が高いサーバ等に対して所望の電力が安定に供給されるためには、増設の単位となる所定の台数のサーバ毎に追加され、あるいは負荷となり得る最大の台数のサーバに必要な電力が供給可能となるように予め構成されなければならなかった。
【0010】
しかし、既述の脈流電力として電力を供給する従来例では、その脈流電力を合成するために整流される交流電力の相数が「6」と少ないために、リプル率が比較的高く、負荷の内部または前段において電圧の安定化や平滑化が必要となって、総合的な信頼性やコストが十分に高くは確保できなかった。
【0011】
本発明は、負荷に適した電力を精度よく安定に供給し、かつ多様な系構成に柔軟に適応可能である電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明では、多相変換手段は、交流電力の相数pより相数P(≧12)が大きく、かつ位相がユニークである多相交流電力に前記交流電力を変換する。脈流生成手段は、前記多相交流電力を並行して整流して複数Pの脈流電力を生成する。
【0013】
すなわち、上記相数Pが大きいほど、このようにして生成される脈流電力のリプル率が低くなり、しかも、供給先となる負荷に対する負荷分散が精度よく図られる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電源装置において、前記多相変換手段は、前記交流電力をユニークな移相量φ〜φに亘って個別に移相させ、k個の準交流電力をそれぞれ生成するk個の移相手段と、前記k個の準交流電力を個別に移相させ、前記多相交流電力の成分となるk個の準多相交流電力を生成するk個の部分多相変換手段とで構成される。
【0015】
すなわち、既述の整流の対象となる準交流電力の位相は、上記k個が大きいほど多様となる。しかも、これらの位相については、上記移相手段による個別の設定が可能である。
【0016】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の電源装置において、前記多相変換手段は、
前記交流電力を互いに直交する2つの交流電力に変換する直交変換手段と、前記2つの交流電力のベクトル和として、ユニークな位相θ〜θのk個の準交流電力を生成するk個の移相手段と、前記k個の準交流電力を個別に移相させ、前記多相交流電力の成分となるk個の準多相交流電力を生成するk個の部分多相変換手段とで構成される。
【0017】
すなわち、既述の整流の対象となる個々の準交流電力の位相は、これらに共通の直交する2つの交流電力のベクトル合成により多様に設定可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項2に記載の電源装置において、前記k個の移相手段と前記k個の部分多相変換手段との内、前記移相量φ〜φの全てまたは一部に対応する移相手段と部分多相変換手段との対が冗長化される。
【0019】
すなわち、負荷に供給可能な脈流電力の最大値と総合的なリプル率とは、既述の負荷分散だけではなく、冗長化の下でより高い確度で好適な値に維持される。
【0020】
請求項5に記載の発明では、請求項2に記載の電源装置において、前記k個の移相手段と前記k個の部分多相変換手段との内、前記移相量φ〜φの全てまたは一部に対応する移相手段と部分多相変換手段との対がN+1冗長化され、前記N+1冗長化のための予備に該当する移相手段は、移相量がφ〜φに切り替え可能に構成される。
【0021】
すなわち、負荷に供給可能な脈流電力の最大値と総合的なリプル率とは、既述の負荷分散だけではなく、N+1冗長化の下でより高い確度で好適な値に維持される。
【発明の効果】
【0022】
本発明が適用された装置やシステムでは、脈流電力により駆動される負荷の変動および系構成に対する柔軟な適応に併せて、良好な直流電力による安定な稼働が図られる。
また、本発明では、既述の脈流電力に含まれる各成分の位相の自由度が確保され、これらの位相の組み合わせに基づく所望の負荷分散やリプル率の確保が柔軟に達成される。
したがって、本発明が適用されたシステムや装置では、総合的な信頼性が高められ、かつ所望の性能や特性が安定に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態の原理を示す図である。
【図3】本実施形態の動作を説明する図である。
【図4】本発明の第二の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の第三の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の第四の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態を示す図である。
図において、3相交流電力を与える電源線は、移相器11-1〜11-kの対応する入力に接続される。移相器11-1〜11-kの出力はそれぞれ6相整流部20-1〜20-kの入力に接続され、これらの6相整流部20-1〜20-kの出力は並列に負荷30に接続される。
【0025】
ここに、移相器11-1は、上記3相交流電力の各相x、y、zに対応し、かつ特性および構成が共通である移相回路11-1x、11-1y、11-1zの組み合わせとして構成される。
【0026】
なお、移相器11-2〜11-kの構成については、移相器11-1の構成と同じであるので、以下では、対応する構成要素の符号に添え番号として「2」〜「k」を付与することとし、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0027】
さらに、以下では、移相器11-1〜11-kに共通の事項については、第一の添え番号として「1」〜「k」の何れにも該当し得ることを示す添え文字「C」を用いることとする。
【0028】
6相整流部20-1は、以下の要素から構成される。
(1) 移相器11-1x、11-1y、11-1zの出力に個別に接続された3つの一次巻線21-1cpx、21-1cpy、21-1cpzと、これらの一次巻線21-1cpx、21-1cpy、21-1cpzに個別に対応した2つずつの二次巻線(21-1csx1、21-csx2)、(21-1csy1、21-csy2)、(21-1csz1、21-1csz2)とを有すると共に、二次巻線21-1csx1、21-1csy1、21-1csz1がY結線され、かつ二次巻線21-1csz2、21-1csy2、21-1csz2がΔ結線されたトランス21T-1
【0029】
(2) 上記Y結線により構成されるΔ−Y変換回路の出力と、上記Δ結線により構成されるΔ−Δ変換回路の出力とにそれぞれ接続された6つの入力を有する全波整流回路22-1
(3) 全波整流回路22-1の後段に配置された逆流防止回路23-1
【0030】
なお、6相整流部20-2〜20-kの構成については、6相整流部20-1の構成と同じであるので、以下では、対応する構成要素の符号に第一の添え番号として「2」〜「k」を付与することとし、ここでは、その詳細な説明および図示を省略する。
【0031】
さらに、以下では、6相整流部20-1〜20-kに共通の事項については、第一の添え番号として「1」〜「k」の何れにも該当し得ることを示す添え文字「C」を用いることとする。
【0032】
以下、図1を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0033】
本実施形態では、移相器11-1〜11-kの台数kおよび6相整流部20-2〜20-kの台数kは、例えば、「4(=360度/(6相×15度))」に設定され、これらの移相器11-1〜11-kの移相量は、それぞれ「0度」、「15度」、「30度」、「45度」に設定される。
【0034】
さらに、これらの移相器11-1〜11-kは、総合的な利得(力率、入出力インピーダンスを含む。)が所望の精度で共通となる回路として構成される。
【0035】
したがって、6相整流部20-1〜20-kには、上記3相交流電力が15度ずつ異なる位相で並行して入力される。
【0036】
6相整流部20-Cでは、トランス21T-Cは、このようにして入力される3相交流電力をΔ−Δ変換およびΔ−Y変換することにより、図2に示すように、位相が60度間隔で異なる6相交流電力に変換する。
【0037】
6相整流分20-Cは、このような6相交流電力を全波整流することによりリプルを含む脈流電力を生成し、逆防止回路23-Cを介して負荷30に供給する。
【0038】
すなわち、負荷30には、図3に示すように、従来例に比べて大幅に小さな位相の間隔(=15度<60度(=360度/6相))でリプル率が少ない脈流電力が供給される。
【0039】
また、このようなリプル率は、上記台数kが多く設定され、かつ6相整流部20-1〜20-kに並行して入力される3相交流電力の間における位相の差が小さく設定されるほど、小さな値となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、負荷30に供給されるべき脈流電力のリプル率に対する余裕度が確保される程度に大きな値に上記台数kが設定されることにより、(位相器11-1、6相整流部20-1)〜(位相器11-k、6相整流部20-k)の各対による負荷分散が実現され、例えば、これらの対の何れかの稼働が停止し、あるいは保守や運用のために非実装となった状態であっても、負荷30に対する電力の供給が高い品質で継続して行われる。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、従来例のようにUPSが用いられず、しかも、アナログ回路のみで構成されるにもかかわらず、負荷の多様な系構成に柔軟に適しつつ所望の精度による電力の供給が安定に実現される。
【0042】
なお、本実施形態では、移相器11-1〜11-kは、所望の移相量が達成されるならば、例えば、一般的に力率の改善に供される進相コンデンサ等のリアクタンス素子で代替され、あるいはこれに代わる如何なる回路として構成されてもよい。
【0043】
図4は、本発明の第二の実施形態を示す図である。
図において、図1に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0044】
本実施形態と、図1に示す第一の実施形態との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) 移相器11-1〜11-kが備えられない。
(2) 6相整流部20-1〜20-kに代えて6相整流部40-1〜40-kが備えられ、これらの6相整流部40-1〜40-kには、上記移相器11-1〜11-kを介することなく3相交流電力が並行して入力される。
【0045】
なお、以下では、これらの6相整流部40-1〜40-kに共通の事項については、該当する構成要素の符号の第一の添え番号として、「1」〜「k」の何れにも該当し得ることを示す添え文字「C」を用いて記述する。
【0046】
6相整流部40-Cと図1に示す6相整流部20-Cとの構成の相違点は、トランス21T-Cに代えてトランス41T-Cが備えられた点にある。
【0047】
トランス41T-Cは、図1に示すトランス21T-Cと同様に、一次巻線41-1cpx、41-1cpy、41-1cpzに個別に対応した2つずつの二次巻線(41-1csx1、41-csx2)、(41-1csy1、41-csy2)、(41-1csz1、41-1csz2)とを有し、これらの二次巻線41-1csx1、41-1csy1、41-1csz1がY結線され、かつ二次巻線41-1csz2、41-1csy2、41-1csz2がΔ結線される。
【0048】
以下、本実施形態の動作を説明する。
本実施形態では、トランス41T-Cは、そのトランス41T-Cの一次巻線41-1cpx、41-1cpy、41-1cpzと二次巻線(41-1csx1、41-csx2)、(41-1csy1、41-csy2)、(41-1csz1、41-1csz2)との全てまたは一部に、例えば、以下の結線や巻線が単体であるいは好適な組み合わせで採用されることによって、全波整流回路22-Cに入力される6相交流電力の位相が図1に示す第一の実施形態と同様に設定される。
【0049】
(1) 千鳥結線
(2) Δ十字巻線
(3) 辺延長Δ巻線
【0050】
したがって、6相整流部40-1〜41-kの出力には、既述の第一の実施形態と同様に、従来例に比べて大幅に小さな位相の間隔でリプルが少ない脈流電力が供給される。
【0051】
しかも、このような脈流電力のリプル率は、6相整流部40-1〜41-kの台数kが多く設定されることによって、さらに小さな値となり得る。
【0052】
さらに、本実施形態は、リアクタンス素子等を含んで構成される移相器11-1〜11-kが備えられないため、部品点数が減少して実装上の制約が大幅に緩和され、かつ特性のバラツキや経年変化の軽減が図られる。
【0053】
なお、本実施形態では、トランス41T-Cの総合的な移相量は、一次巻線41-1cpx、41-1cpy、41-1cpzや二次巻線(41-1csx1、41-csx2)、(41-1csy1、41-csy2)、(41-1csz1、41-1csz2)の形態に応じて所望の値に予め設定されている。
【0054】
しかし、このような移相量は、例えば、トランス41T-Cのコアとして、複素透磁率が好適であるコアが採用されることによって、同様に設定されてもよい。
【0055】
図5は、本発明の第三の実施形態を示す図である。
図において、図4に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0056】
本実施形態と、図4に示す第二の実施形態との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) 6相整流部40-1〜40-kの台数kが1つ多い。
(2) これらの6相整流部40-1〜40-kが個別に有する監視出力および制御入力にそれぞれ接続された入出力ポートを有する制御部50が備えられる。
【0057】
本実施形態の特徴は、制御部50が主導的に行う系構成制御の下で、以下に列記するように6相整流部40-1〜40-kが(N+1)冗長化方式に基づいて稼働する点にある。
【0058】
6相整流部40-1〜40-(k-1)は、制御部50の配下で通常現用系として稼働し、既述の第二の実施形態と同様に機能することにより、負荷30に電力を供給する。
6相整流部40-kは、既述の系構成制御の下で常用冗長方式または待機冗長方式による予備系として機能する。
【0059】
なお、6相整流部40-Cが有する既述の監視出力は、例えば、逆流防止回路23-Cを介して負荷30に供給される電流の実効値が所定の閾値以上か否かを示す2値情報を出力する。また、同様に既述の制御入力には、上記2値情報に応じて制御部50が後述するように行う系構成制御によって与えられ、かつ6相整流部40-Cの稼働の許否を示す2値情報が入力される。
【0060】
すなわち、6相制御部40-kは、現用系として稼働する6相整流部40-1〜40-(k-1)の内、障害等が発生した特定の6相整流部40-fに代わって稼働する。
【0061】
また、このように予備系に相当する6相制御部40-kでは、トランス41T-kの移相量は、予め以下の何れかの値に設定される。
(1) トランス41T-1〜41T-(k-1)の何れか1つ(トランス41T-1〜41T-(k-1)の内、現用系として組み込まれていない、あるいは組み込まれる可能性が低い特定のトランスであってもよい。)と同じ移相量
(2) トランス41T-1〜41T-(k-1)の何れの移相量とも異なる移相量
【0062】
したがって、本実施形態によれば、負荷分散方式および(N+1)冗長化方式に基づいて、安定に精度よく負荷30に対する電力の供給が実現される。
【0063】
なお、本実施形態では、予備系に該当する6相整流部40-kは、例えば、図1に示す6相整流部20-1とその前段に配置された「可変移相器」とで代替され、このような「可変移相器」の位相量が制御部50の配下で好適な値(この時点における系構成の切り替えにより現用系から除外される6相整流部40-Sに備えられたトランス21T-Sの位相量と同じ値)に適宜設定されることにより、系構成の切り替えに伴って負荷30に供給される脈流電力のリプル率の無用な変動が回避され、あるいは軽減されてもよい。
【0064】
図6は、本発明の第四の実施形態を示す図である。
図において、図1に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
【0065】
本実施形態と図1に示す第一の実施形態との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) 移相器11-1〜11-kに代えて合成器60-1〜60-kが備えられる。
【0066】
(2) 図1において移相器11-1〜11-kに入力される3相交流電力の位相を上記合成器60-1〜60-kの第一の入力に引き渡す前置移相器61
(3) 図1において移相器11-1〜11-kに入力される3相交流電力の位相を上記合成器60-1〜60-kの第二の入力に引き渡す前置移相器62
【0067】
以下、本実施形態の動作を説明する。
前置移相器61、62は、それぞれ上述した3相交流電力の位相を互い直交した位相に設定し、合成器60-1〜60-kに並行して引き渡す。
【0068】
合成器60-1〜60-kは、これらの互いに直交した3相交流電力を合成することにより、図1に示す第一の実施形態と同様に、6相整流部20-1〜20-kにそれぞれ位相が15度間隔で異なる3相交流電力を引き渡す。
【0069】
なお、前置移相器61、62によって行われる移相処理と、合成器60-1〜60-kによってそれぞれ行われる移相処理とは、それぞれ以下の条件が成立する形態で実現される。
(1) 入力インピーダンス、出力インピーダンスおよび総合的な利得が好適な精度で同じ値となる。
(2) 力率の格差が許容される程度に小さい。
【0070】
したがって、本実施形態によれば、互いに直交する2つの3相交流電力のベクトル和として、6相整流部20-1〜20-kに入力される3相交流電力の位相が設定されることにより、構成および設計にかかわる標準化が図られ、かつ負荷30に供給される脈流電力のリプルが所望の小さな値に柔軟に設定可能となる。
【0071】
なお、上述した各実施形態では、3相交流電力が12相以上の多相交流電力に変換され、かつ全波整流された後に負荷30に供給されている。
【0072】
しかし、本発明に係る電源装置に入力される交流電力の相数は、如何なるものであってもよい。
【0073】
また、上記多相交流電力の整流は、全波整流に限定されず、例えば、半波整流、倍圧整流その他の如何なる方式による整流であってもよい。
【0074】
さらに、上記整流によって得られる脈流の瞬時値の先頭値は、負荷30内で偏差が補正されあるいは許容されるならば、必ずしも同じでなくてもよい。
【0075】
また、上述した各実施形態では、6相整流部20-1〜20-k(40-1〜40-k)の内、現用系として稼働するものは、それぞれ異なる位相の脈流電力を並行して生成することによって、負荷30に対する負荷分散を実現している。
【0076】
しかし、このように現用系として稼働するも6相整流部は、信頼性の向上が要求される場合には、例えば、図1、図4、図6に二点鎖線枠で示すように、冗長化(二重化)され、かつホットスタンバイあるいはコールドスタンバイ方式で稼働してもよい。
【0077】
さらに、このような冗長化の下で予備系となる6相整流部は、過負荷状態では、系構成制御の下で負荷電流の不足分を補うために常時あるいは適宜稼働してもよい。
【0078】
また、上述した各実施形態では、6相整流部20-1〜20-k(40-1〜40-k)には、トランス21T-1〜21T-k(41T-1〜41T-k)がそれぞれ備えられている。
【0079】
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、整流の対象となる所望の多相交流電力の生成は、トランスを介することなく生成されてもよい。
【0080】
さらに、上述した各実施形態では、6相整流部20-1〜20-k(40-1〜40-k)によって並行して出力される脈流電力は、負荷30に個別の電源線を介して供給され、その負荷30の内部で合成されてもよい。
【0081】
また、既述の逆流防止回路23-Cは、必ずしも6相整流部20-1〜20-k(40-1〜40-k)に備えられなくてもよく、例えば、負荷30の内部に備えられてもよい。
【0082】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0083】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に対する記載から除外した発明を「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0084】
[請求項6] 請求項2に記載の電源装置において、
前記k個の移相手段と前記k個の部分多相変換手段との内、前記移相量φ〜φの全てまたは一部にそれぞれ対応する移相手段と部分多相変換手段との対は、
トランスとして構成された
ことを特徴とする電源装置。
【0085】
このような構成の電源装置では、請求項2に記載の電源装置において、前記k個の移相手段と前記k個の部分多相変換手段との内、前記移相量φ〜φの全てまたは一部にそれぞれ対応する移相手段と部分多相変換手段との対は、トランスとして構成される。
【0086】
すなわち、k個の移相手段および部分多相変換手段の全てまたは一部は、上記トランスを構成する巻線の形態とコアの特性あるいは素材との全てもしくは一部によって代替される。
【0087】
したがって、位相量φ〜φの組み合わせが多く、あるいはこれらの位相量φ〜φの数kが大きい場合であっても、部品の点数が少なく抑えられ、安価に信頼性および実装性が高められると共に、電力効率の総合的な向上が図られる。
【0088】
[請求項7] 請求項1、2、3、6の何れか1項に記載の電源装置において、
前記相数Pは、
前記相数pの複数倍または偶数倍である
ことを特徴とする電源装置。
【0089】
このような構成の電源装置では、請求項1、2、3、6の何れか1項に記載の電源装置において、前記相数Pは、前記相数pの複数倍または偶数倍である。
【0090】
すなわち、負荷に供給されるべき多相交流電力の相数Pは、入力される交流電力の相数pの複数分の一または偶数分の一となる。
【0091】
したがって、上記相数Pと相数pとの比が複数や偶数等のような整数ではない場合に比べて、構成の複雑化が回避される。
【0092】
[請求項8] 請求項2、3、6、7の何れか1項に記載の電源装置において、
前記k個の移相手段と前記k個の部分多層変換手段との個数kと、 前記多相交流電力に含まれる成分の位相の組み合わせとの双方または何れか一方は、
前記複数Pの脈流電力の和に含まれるリプルが許容される形態に設定された
ことを特徴とする電源装置。
【0093】
このような構成の電源装置では、請求項2、3、6、7の何れか1項に記載の電源装置において、前記k個の移相手段と前記k個の部分多層変換手段との個数kと、 前記多相交流電力に含まれる成分の位相の組み合わせとの双方または何れか一方は、前記複数Pの脈流電力の和に含まれるリプルが許容される形態に設定される。
【0094】
すなわち、移相手段と部分多層変換手段との数kと、これらの移相手段および部分多層変換手段の構成とについては、何れも、上記リプルが許容される限度内において設定される。
【0095】
したがって、本発明に係る電源装置は、無用に構成が複雑化し、あるいは規模が増大することなく構成可能となる。
【0096】
[請求項9] 請求項1、2、3、6、7、8の何れか1項に記載の電源装置において、
前記複数Pの脈流電力を合成する合成手段を備えた
ことを特徴とする電源装置。
【0097】
このような構成の電源装置では、請求項1、2、3、6、7、8の何れか1項に記載の電源装置において、合成手段は、前記複数Pの脈流電力を合成する。
【0098】
すなわち、既述の複数Pの脈流電力は、合成されることによってリプルが少ない直流電力として負荷に供給される。
【0099】
したがって、本発明に係る電源装置は、上記複数Pの脈流電力が個別に入力される端子を有しない装置や負荷に対しても、これらの脈流電力を駆動電力として供給することができる。
【符号の説明】
【0100】
11 移相器
20,40 6相整流部
21T,41T トランス
22 全波整流回路
23 逆流防止回路
30 負荷
50 制御部
60 合成器
61,62 前置移相器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力の相数pより相数P(≧12)が大きく、かつ位相がユニークである多相交流電力に前記交流電力を変換する多相変換手段と、
前記多相交流電力を並行して整流して複数Pの脈流電力を生成する脈流生成手段と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記多相変換手段は、
前記交流電力をユニークな移相量φ〜φに亘って個別に移相させ、k個の準交流電力をそれぞれ生成するk個の移相手段と、
前記k個の準交流電力を個別に移相させ、前記多相交流電力の成分となるk個の準多相交流電力を生成するk個の部分多相変換手段とで構成された
ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源装置において、
前記多相変換手段は、
前記交流電力を互いに直交する2つの交流電力に変換する直交変換手段と、
前記2つの交流電力のベクトル和として、ユニークな位相θ〜θのk個の準交流電力を生成するk個の移相手段と、
前記k個の準交流電力を個別に移相させ、前記多相交流電力の成分となるk個の準多相交流電力を生成するk個の部分多相変換手段とで構成された
ことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電源装置において、
前記k個の移相手段と前記k個の部分多相変換手段との内、前記移相量φ〜φの全てまたは一部に対応する移相手段と部分多相変換手段との対が冗長化された
ことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項2に記載の電源装置において、
前記k個の移相手段と前記k個の部分多相変換手段との内、前記移相量φ〜φの全てまたは一部に対応する移相手段と部分多相変換手段との対がN+1冗長化され、前記N+1冗長化のための予備に該当する移相手段は、移相量がφ〜φに切り替え可能に構成された
ことを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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