説明

電磁比例制御弁

【課題】 スプールのストローク端において、電流ディザでヒステリシスを低減し、ストローク端を含む全制御範囲においてスプールを安定して制御することができる電磁比例制御弁を提供すること。
【解決手段】 電磁比例ソレノイド3で駆動するスプール5を電磁比例ソレノイド3の駆動方向Vと逆方向に付勢するスプール復帰バネ4で付勢し、前記スプール5のストローク端にメカストッパ11を配設し、前記電磁比例ソレノイド3を駆動する制御電流を電流ディザで微振動させるように構成し、前記メカストッパ11は、前記スプール5がメカストッパ11に当接した状態においても前記電流ディザにより前記スプール5を振動させるストッパ付勢バネ12を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁比例流量制御弁、電磁比例圧力制御弁等の電磁比例制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁比例ソレノイドを用いた電磁比例制御弁では、スプール等の可動部品(以下、総称する場合は「可動部品」という)をバネ力や油圧力に対抗する方向にソレノイドの駆動力で駆動し、可動部品の位置や力のバランスを制御することで、流量や圧力を制御している。
【0003】
上記電磁比例ソレノイドは、図6に示すように、印加される電流値(制御電流値)と比例した駆動力を発生するようになっており、上記流量や圧力は印加電流に応じて制御される。図では、印加電流が定格値の時に、ソレノイド駆動力F3を発生する例を示している。また、例えば、図7(a),(b) に示す第1例の電磁比例方向流量制御弁101の場合、(a) に示すように、弁本体102に設けられたスプール孔106内を軸方向に移動する可動部品であるスプール105が待機状態の中立位置から、(b) に示すように電磁比例ソレノイド103が駆動されると、この電磁比例ソレノイド103で発生した駆動力とスプール復帰バネ104のバネ力が釣合うようにスプール105が駆動方向Vに移動する。これにより、ポンプポートPと出力ポートAとの開口量が制御され、ポンプポートPから出力ポートAに流れる流量が、印加電流に応じて制御される。上記スプール105が待機状態に戻ると、出力ポートAはタンクポートTと連通するようになっている。このことは、例えば、図8(a),(b) に示す第2例のように両側に電磁比例ソレノイド123が設けられた両側駆動方式の電磁比例制御弁121でも同様であり、電磁比例ソレノイド123で発生した駆動方向Vの駆動力と、スプール復帰バネ124のバネ力が釣合う位置にスプール125が駆動する。上記図7と同一の構成には「20」を加えた符号を付し、その説明は省略する。
【0004】
また、例えば、大流量に対応したパイロット型の電磁比例流量制御弁の場合には、印加電流に応じて圧力を制御する電磁比例減圧弁によって生じた制御圧力をパイロット圧力としてメインスプールのバネ室に導き、このパイロット圧力による力と、対抗する側のスプール復帰バネのバネ力とが釣合う位置にメインスプールが駆動される。このようにしてメインスプールを軸方向に駆動し、これによって油通路の開口量が制御されて印加電流に応じた流量に制御される。
【0005】
一方、図9に示すように、このような電磁比例制御弁の比例ソレノイドに印加する電流は一般的に振動波が用いられており、時間に対して電流値が変化している。この振動した電流は、電流ディザと呼ばれており、所定の振幅を持った振動波となっている。このような電流ディザを与えることで、ソレノイド内部の可動部品、及びソレノイドによって駆動される可動部品を常に軸方向に微振動させ、可動部品の摺動摩擦を低減させ、ヒステリシスの低減を図っている。
【0006】
また、電流ディザによってスプールを常に軸方向に微振動させ、ハイドロリックロックの発生を抑止し、可動部品が常に良好な動作をするようにしている。ハイドロリックロックとは、スプールがスプール孔に対して偏心し、その偏心したスプールが油圧によりさらにスプール孔の側面に押付けられ、この偏心方向の押付によりスプールが軸方向に作動できなくなる、スプールの動作不良(復帰不良)を言う。このことは、上記パイロット型の電磁比例制御弁の場合にも、電磁比例減圧弁の可動部品が微振動することでパイロット圧力が振動し、このパイロット圧力の振動によってメインスプールが微振動するので、これにより上記可動部品の摺動摩擦低減効果とハイドロリックロックの抑止効果が得られる。
【0007】
このように、電磁比例制御弁においては、制御特性のヒステリシス低減や動作不良の防止のために印加電流に電流ディザが与えられている。
【0008】
なお、この種の先行技術として、主スプールを比例電磁減圧弁で制御する電磁制御弁において、ヒステリシス性能を良好とするために、主スプールを軽金属製とし、表面に硬化処理を施すようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、他の先行技術として、弁本体に設けられたスプールを駆動する電磁比例減圧弁を設けた操作弁もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−148650号公報
【特許文献2】特開平6−193767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記図7に示す電磁比例制御弁101では、通常、スプール105のストローク端にメカストッパ111が設けられている。この例では、閉鎖部材107の内側端面がメカストッパ111となっている。そのため、スプール105がストローク端でメカストッパ111に当接すると、電流ディザによって制御電流を微振動させたとしてもスプール105は振動せずメカストッパ111に当接して止まった状態となってしまう。
【0012】
このことは、図8に示す電磁比例ソレノイド123が両側に設けられた電磁比例制御弁121の場合も同様であり、スプール125がストローク端に達してスプール復帰バネ124の復帰バネ座130がメカストッパ131に当接すると、電流ディザによって制御電流を微振動させたとしてもスプール125は振動せずメカストッパ131に当接して止まった状態となってしまう。
【0013】
このように、スプール105,125がストローク端においてメカストッパ111,131に当接すると、印加電流が電流ディザによって微振動していてもスプール105,125はメカストッパ111,131に当接して止まった状態となり、ストローク端付近でのヒステリシスの増大や、スプール105,125の動作不良が生じるおそれがある。特にスプールの駆動力(バネ力、パイロット圧力、ソレノイド力)が弱い場合は、駆動力に対して摺動抵抗やハイドロリックロックの力の影響が大きく、上記したような不具合が起りやすい。
【0014】
この対策として、例えば、駆動力を大きくすると、ソレノイドが大きくなり、制御弁のサイズが大きくなってしまう。また、スプールのメカストッパを設けない構造とすることもできるが、その場合には、スプールのオーバーシュートなどによりスプール復帰バネが許容たわみ域以上にたわみ、バネのヘタリ(バネ力低下)やバネ破損のおそれが生じる。さらに、ソレノイド自身のストロークが有限であるため、スプール復帰バネ力よりもソレノイド駆動力の方が大きくなると、ソレノイド内部の駆動部材がメカストッパに接触する。スプール復帰バネを強くしてメカストッパに接触しない設定とすることもできるが、その場合には、バネの設計が限られ、スプールの制御特性が限定されたものとなり、設計の自由度が制限される。
【0015】
なお、上記いずれの先行技術も、スプールがストローク端においてメカストッパに当接した時のヒステリシスの増大や、スプールの復帰不良が発生するおそれについて解決できるものではない。
【0016】
そこで、本発明は、駆動部材又は可動部品のストローク端において、電流ディザでヒステリシスを低減し、可動部品の動作不良を抑止することができる電磁比例制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、印加電流によって駆動する駆動部材を有する駆動手段と、前記駆動部材によって可動する可動部品と、その内部に前記可動部品が可動する摺動孔を有する弁本体と、前記可動部品を前記駆動部材の駆動方向と逆方向に付勢する復帰バネとを備え、前記駆動手段への印加電流を電流ディザで微振動させるように構成した電磁比例制御弁であって、前記駆動部材又は前記可動部品の変位を制限するメカストッパを備え、前記メカストッパは、前記駆動部材又は前記可動部品がメカストッパに当接した状態において前記電流ディザにより前記駆動部材又は前記可動部品を振動可能にさせる弾性部材を有していることを特徴とする。この構成により、駆動部材又は可動部品がメカストッパに当接した状態でも、弾性部材によって電流ディザによる駆動部材又は可動部品の微振動を保つことができるので、ヒステリシスを低減し、可動部品の動作不良を抑止することができる。
【0018】
また、前記弾性部材は、前記駆動部材の駆動方向と逆方向の付勢力を作用させるストッパ付勢バネで構成されていてもよい。このように構成すれば、設計が容易なストッパ付勢バネの伸縮により、駆動部材又は可動部品がメカストッパに当接した状態でも電流ディザによって駆動部材又は可動部品が微振動した状態を保つことができる。
【0019】
また、前記ストッパ付勢バネのバネ定数と取付荷重は、電流ディザにより前記駆動部材又は前記可動部品の振動振幅が確保できるように設定されていてもよい。このように構成すれば、電流ディザによる駆動部材又は可動部品の微振動を保つことができるので、ヒステリシスを低減し、可動部品の動作不良を抑止することができる。
【0020】
また、前記電磁比例制御弁は、前記可動部品の片側端部に前記駆動手段を備えた片側駆動方式で構成され、前記可動部品一端部と前記弁本体との間に、前記メカストッパとストッパ付勢バネとを備えていてもよい。このように構成すれば、片側駆動方式の電磁比例制御弁において、駆動力を作用させたストローク端付近でのヒステリシス低減と、可動部品の動作不良を抑止することができる。
【0021】
また、前記電磁比例制御弁は、前記可動部品の両端部に前記駆動手段を備えた両側駆動方式で構成され、前記可動部品の両端部と前記弁本体との間に、前記メカストッパとストッパ付勢バネとを備えていてもよい。このように構成すれば、両側駆動方式の電磁比例制御弁において、いずれの方向に駆動力を作用させても、可動部品のストローク端付近でのヒステリシス低減と、可動部品の動作不良を抑止することができる。
【0022】

また、前記電磁比例制御弁は、前記駆動手段内に前記メカストッパとストッパ付勢バネとを備えていてもよい。このように構成すれば、駆動手段内にメカストッパとストッパ付勢バネとが設けられるので、駆動部材のストローク端付近でのヒステリシス低減と、可動部品の動作不良を抑止することができる。
【0023】
また、電磁比例減圧弁と、該電磁比例減圧弁で減圧したパイロット圧力で駆動する主可動部品と、その内部に前記主可動部品が可動する摺動孔を有する弁本体と、前記主可動部品を前記パイロット圧力が作用する方向と逆方向に付勢する復帰バネとを備え、前記電磁比例減圧弁への印加電流を電流ディザで微振動させるように構成したパイロット型電磁比例制御弁であって、前記主可動部品の変位を制限するメカストッパを備え、前記メカストッパは、前記主可動部品がメカストッパに当接した状態において前記電流ディザにより前記主可動部品を振動可能にさせる弾性部材を有していることを特徴とするパイロット型電磁比例制御弁であってもよい。このように構成すれば、パイロット型の電磁比例制御弁においても、主可動部品がストローク端でメカストッパに当接しても電流ディザによる微振動を保つことができるので、電磁比例減圧弁からのパイロット圧力で制御される主可動部品は電流ディザによる微振動を保ってヒステリシスを低減し、主可動部品の動作不良を抑止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、駆動部材又は可動部品はストローク端においても電流ディザによる微振動を保つことができるので、ヒステリシスが低減し、可動部品の動作不良を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁比例制御弁のスプール部分を示す図面であり、(a) は待機状態の断面図、(b) は動作状態(スプールがストローク端の状態)の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電磁比例制御弁のスプール部分を示す図面であり、(a) は待機状態の断面図、(b) は動作状態(スプールがストローク端の状態)の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る電磁比例制御弁のスプール部分を示す図面であり、(a) は待機状態の断面図、(b) は動作状態(スプールがストローク端の状態)の断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る電磁比例制御弁の駆動部分を示す図面であり、(a) は待機状態の断面図、(b) は動作状態(駆動部材がストローク端の状態)の断面図である。
【図5】本発明におけるソレノイド駆動力とスプールストロークの関係を示す図面である。
【図6】電磁比例制御弁の印加電流と駆動力の関係を示す図面である。
【図7】従来の第1例に係る電磁比例制御弁のスプール部分を示す図面であり、(a) は待機状態の断面図、(b) は動作状態(スプールがストローク端の状態)の断面図である。
【図8】従来の第2例に係る電磁比例制御弁のスプール部分を示す図面であり、(a) は待機状態の断面図、(b) は動作状態(スプールがストローク端の状態)の断面図である。
【図9】電磁比例制御弁の印加電流における電流ディザを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、電磁比例制御弁として流量制御弁を例にし、その可動部品であるスプールの動作部分のみを図示して説明する。また、以下の実施形態では、弾性部材としてコイルバネを用いたストッパ付勢バネを例に説明する。さらに、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における左右方向の概念は、図1に示す状態における左右方向の概念と一致するものとする。
【0027】
図1(a),(b) に示す第1実施形態の電磁比例制御弁1は、弁本体2の一方(右側)に電磁比例ソレノイド(駆動手段)3が設けられ、他方(左側)にスプール復帰バネ(復帰バネ)4が設けられた片側駆動方式となっている。
【0028】
図1(a) に示す待機状態の電磁比例制御弁1は、弁本体2に設けられたスプール孔(摺動孔)6内を軸方向に移動するスプール5が、一端に設けられた電磁比例ソレノイド3の駆動部材3aで駆動方向Vに作用させる駆動力と、この駆動力と対抗するように他端に設けられたスプール復帰バネ4のバネ力とが釣合う位置に駆動制御されるようになっている。この例では、弁本体2にポンプポートP、出力ポートA及びタンクポートTが設けられ、スプール5に形成されたノッチ5a,5bの開口量によって各ポートP,A,Tの間の流量が制御されている。
【0029】
上記弁本体2のスプール5のストローク端部である左側端部には、スプール端面5cが当接するメカストッパ11(以下、単に「ストッパ」ともいう)が設けられている。
【0030】
そして、この実施形態では、上記ストッパ11の反スプール側に、電磁比例ソレノイド3の付勢方向と逆方向にストッパ11を付勢するストッパ付勢バネ12が設けられている。このストッパ付勢バネ12は、弁本体2に固定された閉鎖部材7によって取付けられており、ストッパ11を弁本体2に設けられたストッパ係止部8に向けて付勢している。
【0031】
図1(b) に示す動作状態では、上記電磁比例制御弁1の電磁比例ソレノイド3に定格電流が印加され、この電磁比例ソレノイド3の駆動力でスプール5が駆動方向Vに駆動されてストローク端に達し、スプール端面5cがストッパ11に当接している。この状態のスプール5は、スプール復帰バネ4とともにストッパ11を電磁比例ソレノイド3の駆動方向Vと逆方向に付勢するストッパ付勢バネ12によって駆動方向Vと逆方向に付勢される。そのため、ストッパ11に当接したスプール5は、ストッパ付勢バネ12の伸縮によってストッパ11と共に電流ディザによって軸方向に微振動させられる。そのため、スプール5は、ストッパ11に当接したとしても、そのストッパ11と共に軸方向に微振動した状態が保たれる。図では、ストッパ11がストッパ係止部8から離れた状態を誇張して示している。図示する二点鎖線矢印は、流体の流れを示している。
【0032】
従って、スプール5がストローク端に達した状態でも、ストッパ11に当接したスプール5はストッパ11と共に電流ディザによって軸方向に微振動した状態が保たれるので、ストローク端においてもヒステリシスを低減し、スプール5の動作不良を抑止することができる。
【0033】
図2(a),(b) に示す第2実施形態の電磁比例制御弁21は、弁本体22に設けられたスプール孔26内で軸方向に移動するスプール25にメカストッパ31とストッパ付勢バネ32とを設けた片側駆動方式の実施形態である。なお、上記第1実施形態と同一の構成には「20」を加えた符号を付し、その説明は省略する。
【0034】
図2(a) に示す待機状態の電磁比例制御弁21のスプール25の電磁比例ソレノイド側には、スプール25と一体のツバ部33が設けられている。また、スプール25の段部25eには、リング状のメカストッパ31が設けられている。このメカストッパ31は、スプール25の軸方向に移動可能となっている。
【0035】
そして、上記ツバ部33とストッパ31との間に、ストッパ付勢バネ32が設けられている。このストッパ付勢バネ32により、ストッパ31はスプール25の段部25eに向けて付勢されている。また、弁本体22のスプール孔26の端部がストッパ係止部28となっている。このストッパ係止部28は、スプール25がストローク端に達するとストッパ31が当接する位置となっている。
【0036】
図2(b) に示す動作状態では、上記電磁比例制御弁21の電磁比例ソレノイド23に定格電流が印加され、この電磁比例ソレノイド23の駆動力でスプール25が駆動方向Vに駆動されてストローク端に達し、ストッパ31が弁本体22のストッパ係止部28に当接している。このストッパ31がストッパ係止部28に当接した状態においても、ストッパ付勢バネ32の伸縮によりスプール25は軸方向に振動可能であるため、スプール25は電流ディザによって微振動した状態が保たれる。図では、ストッパ31がスプール25の段部25eから離れた状態を誇張して示している。
【0037】
従って、スプール25がストローク端に位置する状態でも、スプール25は電流ディザによって軸方向に微振動した状態が保たれるので、ヒステリシスを低減し、スプール25の動作不良を抑止することができる。
【0038】
図3(a),(b) に示す第3実施形態の電磁比例制御弁41は、弁本体42の両方(左右両側)に電磁比例ソレノイド43が設けられた両側駆動方式となっている。なお、上記第1実施形態と同一の構成には「40」を加えた符号を付し、その説明は省略する。
【0039】
図3(a) に示す待機状態の電磁比例制御弁41は、弁本体42に設けられたスプール孔46内で軸方向に移動するスプール45が、両端に設けられた電磁比例ソレノイド43の駆動部材43aで駆動方向Vに作用させる駆動力と、この駆動力と対抗するように両端部に設けられたスプール復帰バネ44のバネ力とが釣合う位置に駆動制御されるようになっている。この例では、弁本体42に復帰バネ係止部49が設けられており、スプール45の段部45eに設けられたリング状の復帰バネ座50が、電磁比例ソレノイド43と復帰バネ座50との間に設けられたスプール復帰バネ44のバネ力によって復帰バネ係止部49に向けて付勢されている。この復帰バネ座50は、スプール45の段部45eに係止されており、スプール45の軸方向に移動可能となっている。
【0040】
この例では、弁本体42の中央部にポンプポートPが設けられ、その両外側に第1出力ポートA、第2出力ポートBが設けられ、それらの外側にタンクポートTがそれぞれ設けられている。両側部に設けられた電磁比例ソレノイド43の一方を制御することにより、ポンプポートPと第1出力ポートA又は第2出力ポートBとが連通するようになっている。各ポート間の流量は、スプール45に形成されたノッチ45a,45bの開口量によって制御される。
【0041】
そして、図3(a) に示すように、この実施形態では、弁本体42にリング状のメカストッパ51を係止するストッパ係止部48を設け、このストッパ係止部48に向けてメカストッパ51を電磁比例ソレノイド43との間に設けたストッパ付勢バネ52で付勢している。このように、この実施形態では、電磁比例ソレノイド43側から弁本体42のストッパ係止部48に向けてメカストッパ51をストッパ付勢バネ52で付勢している。
【0042】
図3(b) に示す動作状態では、例えば、電磁比例制御弁41の右側の電磁比例ソレノイド43に電流を印加すると、電磁比例ソレノイド43に駆動方向Vの駆動力が生じ、この駆動力によってスプール45が左側のスプール復帰バネ44のバネ力に抗して左方向に駆動される。そして、定格電流を印加してスプール45がストローク端に達すると、スプール45の復帰バネ係止部49に係止された復帰バネ座50がストッパ係止部48に係止されたストッパ51に当接する。
【0043】
このようにスプール45が復帰バネ座50を介してストッパ51に当接した状態でも、ストッパ付勢バネ52の伸縮によりスプール45は復帰バネ座50及びストッパ51と共に軸方向に振動可能であるため、スプール45は電流ディザによって微振動した状態が保たれる。図では、ストッパ51がストッパ係止部48から離れた状態を誇張して示している。
【0044】
従って、スプール45がストローク端に達した状態でも、スプール45は電流ディザによって軸方向に微振動した状態が保たれるので、ヒステリシスを低減し、スプール45の動作不良を抑止することができる。
【0045】
図4(a),(b) に示す第4実施形態の電磁比例制御弁61は、電磁比例ソレノイド63の内部にメカストッパ71とストッパ付勢バネ72を設けた実施形態である。この実施形態の場合、メカストッパ71が電磁比例制御弁61の可動部のストッパとなり、スプール65は他のストッパに接触しない構成とすることで、弁本体62、スプール65等は上述した図7,8に示す従来の構成であってもよい。この実施形態では、電磁比例ソレノイド63の部分のみを図示して説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成には「60」を加えた符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
図4(a) に示す待機状態の電磁比例ソレノイド63は、励磁コイル63cが周囲に設けられ、その中央部分には励磁電流の大きさに応じて軸方向に吸引力を発生する固定磁極63bと、この固定磁極63bに吸引されて軸方向に移動する可動鉄心63dが設けられている。この可動鉄心63dは、中心部に設けられた駆動部材63aと一体的に固定磁極63bに向けて移動する。
【0047】
そして、上記可動鉄心63dのストローク端に円盤状のメカストッパ71が設けられている。このメカストッパ71は、電磁比例ソレノイド63内に設けられたストッパ係止部68に係止するように設けられており、上記固定磁極63bとの間に設けられたストッパ付勢バネ72によってストッパ係止部68に向けて付勢されている。
【0048】
図4(b) に示す動作状態では、励磁コイル63cに電流が印加されると、固定磁極63bに駆動方向Vに向けて吸引力が発生し、この吸引力によって可動鉄心63dとともに駆動部材63aが駆動方向Vに駆動される。そして、定格電流を印加すると可動鉄心63dがストローク端に達し、メカストッパ71に当接する。
【0049】
このように可動鉄心63dがメカストッパ71に当接した状態でも、ストッパ付勢バネ72の伸縮により可動鉄心63d及び駆動部材63aは軸方向に振動可能であるため、この可動鉄心63d及び駆動部材63aとともにスプール65も電流ディザによって微振動した状態が保たれる。図では、ストッパ71がストッパ係止部68から離れた状態を誇張して示している。
【0050】
従って、電磁比例ソレノイド63の可動鉄心63dがストローク端に達した状態、すなわち、スプール65がストローク端に達した状態でも、スプール65は電流ディザによって軸方向に微振動した状態が保たれるので、ヒステリシスを低減し、スプール65の動作不良を抑止することができる。
【0051】
次に、図5に基づいて、上記電磁比例制御弁1,21,41における電磁比例ソレノイド3,23,43の駆動力と、スプール5,25,45のストロークとの関係について説明する。以下の説明では、上記第1実施形態における電磁比例制御弁1の符号を用いて説明する。
【0052】
なお、図示する記号は、
Ka:スプール復帰バネのバネ定数、
Kb:ストッパ付勢バネのバネ定数、
X1:中立位置からストッパまでのスプールストローク、
X2:ソレノイド定格電流印加時のスプールストローク、
F0:スプール復帰バネの取付荷重、
F1=F0+Ka・X1:ストッパ当接時のスプール復帰バネ荷重、
F2:ストッパ付勢バネの取付荷重、
F3:ソレノイド定格電流印加時のソレノイド駆動力、
ΔF:電流ディザによるソレノイド駆動力の振幅、
ΔX:駆動力の振幅によるスプールストロークの振幅、
である。
【0053】
図5に示すように、電磁比例ソレノイド3に制御電流を印加して駆動力が上昇したとしても、スプール復帰バネ4の取付荷重(初期荷重)F0の位置まではスプール5は動作しない。そして、この取付荷重F0を越えると、スプール復帰バネ4のバネ定数Kaに応じた傾き(1/Ka)でソレノイド駆動力に対してスプール5のストロークが変化する。
【0054】
その後、スプール5が中立位置からストッパ11に当接するスプールストローク(ストローク端)X1でメカストッパ11に当接すると、その時のソレノイド駆動力が、スプール復帰バネ荷重F1にストッパ付勢バネ12の取付荷重(初期荷重)F2を加えた力(F1+F2)に達するまでは、スプール5のストローク変化量は「0」となる。
【0055】
そして、ソレノイド駆動力が「F1+F2」の力に達すると、スプール復帰バネ4のバネ定数Kaに加えてストッパ付勢バネ12のバネ定数Kbが作用した傾き(1/(Ka+Kb))でスプール5のストロークが変化する。
【0056】
その後、定格電流が印加されてソレノイド駆動力が最大駆動力(定格電流印加時)F3となったときには、ストッパ11を介してストッパ付勢バネ12を所定量撓ませたスプールストロークX2となる。このスプールストロークX2は、スプール5がストッパ11に当接したストローク端X1後、必要以上にストロークしないように設定される。
【0057】
また、このスプールストロークX2に位置するスプール5は、電流ディザによるソレノイド駆動力の振幅ΔFによりスプールストロークX2の位置でストローク振幅ΔXが確保される。このような2つの振幅ΔF,ΔXを満足するように、上記ストッパ付勢バネ12の取付荷重F2と、ストッパ付勢バネ12のバネ定数Kbとが設定される。
【0058】
さらに、上記図5に示すストッパ付勢バネの取付荷重F2は、F2=0とした方がストローク振幅ΔXが大きくなり、大きな電流ディザ効果が得られるため、ストッパ付勢バネ12の設計によりF2=0としてもよい。このF2を「0」とすることにより、スプール復帰バネ4がストローク端に達するまで撓んだ後、連続するようにストッパ付勢バネ12を撓ますことができ(図5に示す二点鎖線)、スプール5のストローク端における電流ディザによる微振動の振幅ΔXをより大きくすることができる。
【0059】
以上のように、上記実施形態における電磁比例制御弁1,21,41,61によれば、スプール5,25,45,65がストローク端に位置する状態においても、スプール5,25,45,65は、ストッパ付勢バネ12,32,52,72によって電流ディザで微振動した状態が保たれる。
【0060】
従って、電磁比例制御弁1,21,41,61において、スプール(可動部品)5,25,45,65のストローク端付近でのヒステリシス低減効果を発揮することができるとともに、スプール5,25,45,65に動作不良(復帰不良)が生じないようにすることができ、安定した動作の電磁比例制御弁1,21,41,61を構成することができる。
【0061】
また、ヒステリシスの増大や動作不良は駆動力の弱い構造で発生し易いが、駆動力の弱い小型の電磁比例ソレノイドで電磁比例制御弁を構成しても、ヒステリシス増大やスプール復帰不良を改善することができ、電磁比例制御弁をコンパクトに構成することができる。
【0062】
さらに、パイロット型の電磁比例制御弁であっても、メインスプールを低いパイロット圧力で駆動するようにしたスプール駆動力が小さい制御弁を構成することができるので、バネや電磁比例減圧弁を小さくしたコンパクトなパイロット型電磁比例制御弁を実現することができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、電磁比例制御弁1,21,41,61として流量制御弁を例に説明したが、電磁比例制御弁は圧力制御弁でもよく、流量制御弁に限定されるものではない。
【0064】
さらに、上記実施形態では、弾性部材たるストッパ付勢バネ12,32,52,72としてコイルバネを採用しているが、弾性部材はコイルバネに限らず、例えば皿バネやバネ効果のある他の部材であってもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0065】
また、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る電磁比例制御弁は、スプールのストローク端を含む全制御範囲において安定した制御が必要な電磁比例制御弁として利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 電磁比例制御弁
2 弁本体
3 電磁比例ソレノイド(駆動手段)
3a 駆動部材
4 スプール復帰バネ(復帰バネ)
5 スプール(可動部品)
6 スプール孔(摺動孔)
7 閉鎖部材
8 ストッパ係止部
11 メカストッパ
12 ストッパ付勢バネ
21 電磁比例制御弁
22 弁本体
23 電磁比例ソレノイド(駆動手段)
24 スプール復帰バネ(復帰バネ)
25 スプール(可動部品)
26 スプール孔(摺動孔)
28 ストッパ係止部
31 メカストッパ
32 ストッパ付勢バネ
33 ツバ部
41 電磁比例制御弁
42 弁本体
43 電磁比例ソレノイド(駆動手段)
44 スプール復帰バネ(復帰バネ)
45 スプール(可動部品)
46 スプール孔(摺動孔)
48 ストッパ係止部
49 復帰バネ係止部
50 復帰バネ座
51 メカストッパ
52 ストッパ付勢バネ
61 電磁比例制御弁
63 電磁比例ソレノイド(駆動手段)
65 スプール(可動部品)
71 メカストッパ
72 ストッパ付勢バネ
P ポンプポート
A 出力ポート
B 出力ポート
T タンクポート
V 駆動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電流によって駆動する駆動部材を有する駆動手段と、前記駆動部材によって可動する可動部品と、その内部に前記可動部品が可動する摺動孔を有する弁本体と、前記可動部品を前記駆動部材の駆動方向と逆方向に付勢する復帰バネとを備え、前記駆動手段への印加電流を電流ディザで微振動させるように構成した電磁比例制御弁であって、
前記駆動部材又は前記可動部品の変位を制限するメカストッパを備え、
前記メカストッパは、前記駆動部材又は前記可動部品がメカストッパに当接した状態において前記電流ディザにより前記駆動部材又は前記可動部品を振動可能にさせる弾性部材を有していることを特徴とする電磁比例制御弁。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記駆動部材の駆動方向と逆方向の付勢力を作用させるストッパ付勢バネで構成されている請求項1に記載の電磁比例制御弁。
【請求項3】
前記ストッパ付勢バネのバネ定数と取付荷重は、電流ディザにより前記駆動部材又は前記可動部品の振動振幅が確保できるように設定されている請求項2に記載の電磁比例制御弁。
【請求項4】
前記電磁比例制御弁は、前記可動部品の片側端部に前記駆動手段を備えた片側駆動方式で構成され、前記可動部品一端部と前記弁本体との間に、前記メカストッパとストッパ付勢バネとを備えている請求項2又は3に記載の電磁比例制御弁。
【請求項5】
前記電磁比例制御弁は、前記可動部品の両端部に前記駆動手段を備えた両側駆動方式で構成され、
前記可動部品の両端部と前記弁本体との間に、前記メカストッパとストッパ付勢バネとを備えている請求項2又は3に記載の電磁比例制御弁。
【請求項6】
前記電磁比例制御弁は、前記駆動手段内に前記メカストッパとストッパ付勢バネとを備えている請求項2又は3に記載の電磁比例制御弁。
【請求項7】
電磁比例減圧弁と、該電磁比例減圧弁で減圧したパイロット圧力で駆動する主可動部品と、その内部に前記主可動部品が可動する摺動孔を有する弁本体と、前記主可動部品を前記パイロット圧力が作用する方向と逆方向に付勢する復帰バネとを備え、前記電磁比例減圧弁への印加電流を電流ディザで微振動させるように構成したパイロット型電磁比例制御弁であって、
前記主可動部品の変位を制限するメカストッパを備え、
前記メカストッパは、前記主可動部品がメカストッパに当接した状態において前記電流ディザにより前記主可動部品を振動可能にさせる弾性部材を有していることを特徴とするパイロット型電磁比例制御弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24254(P2013−24254A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156430(P2011−156430)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】