説明

電磁波抑制板材

【課題】電磁波による様々な弊害を防止又は低減するための電磁波抑制板材を提供する。
【解決手段】複数枚の透明板材10と、該複数の透明板材10の間に液密空間を形成する密閉部材と、液密空間内に充填された液状の電磁波吸収材とを備えることを特徴とする電磁波抑制板材100。前記密閉部材は、例えば、透明板材10の端部を囲む枠20と、該枠20と透明板材10の間を液密にするシール材とを含む。前記電磁波吸収材は、例えば、透明又は半透明である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁波による様々な弊害を防止又は低減するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波による様々な弊害が指摘されている。例えば、建造物等においては、太陽からの熱線(電磁波)が窓を介して室内に侵入して室内温を上昇させるので、快適な居住空間を得るのが困難であるといという問題がある。また、室内等に設置されたテレビ受像機やOA機器等からの電磁波が人間の健康に影響を及ぼす(ストレス誘発や脳や眼球等の部分的温度上昇等)おそれがあるという問題もある。なお、本発明に関連すると思われるものとして次のものがある(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】「テクノストレスに効く55の処方箋」、著者:佐藤恵里、洋泉社発行(発行日:2002年8月21日)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、電磁波による様々な弊害を防止又は低減するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上のような目的は、以下の本発明によって達成される。
【0005】
(1)複数枚の透明板材と、該複数の透明板材の間に液密空間を形成する密閉部材と、液密空間内に充填された液状の電磁波吸収材とを備えることを特徴とする電磁波抑制板材。
【0006】
(2)前記密閉部材は、透明板材の端部を囲む枠と、該枠と透明板材の間を液密にするシール材とを含むことを特徴とする(1)に記載の電磁波抑制板材。
【0007】
(3)前記電磁波吸収材は、透明又は半透明であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電磁波抑制板材。
【0008】
(4)前記電磁波吸収材は水であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電磁波抑制板材。
【0009】
(5)前記水には、不凍剤、抗菌剤、又は着色剤の少なくとも一つが添加されていることを特徴とする(4)に記載の電磁波抑制板材。
【0010】
(6)前記透明板材は、透明又は半透明のガラス板、透明又は半透明の樹脂板であることを特徴とする(1)に記載の電磁波抑制板材。
【0011】
(7)二枚の透明板材を、その表面を向かい合わせ、かつ、一定間隔をおいて配置するとともに、透明板材の周囲をシールすることによって、透明板材間に空間を形成し、該空間に電磁波抑制液を充填してなることを特徴とする電磁波抑制板材。
【0012】
(8)透明板材、電磁波抑制液層、透明板材の順に積層されて構成されることを特徴とする電磁波抑制板材。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、透明板材間に形成される液密空間に充填された液状の電磁波吸収剤の作用により、電磁波の影響を防止又は低減することができる。従って、例えば、本発明の電磁波抑制板材を建造物の窓として用いれば、太陽からの熱線(電磁波)がその窓を介して室内に侵入することを防止又は低減できるから、室内温が上昇することなく、快適な居住空間を得ることが可能となる。また、例えば、本発明の電磁波抑制板材を室内等に設置されたテレビ受像機等の前に設置すれば、テレビ受像機等からの電磁波を防止又は低減できるから、人間の健康に影響を及ぼす(ストレス誘発や脳や眼球等の部分的温度上昇等)おそれを防止又は低減することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、透明板材の端部を囲む枠と、該枠と透明板材の間を液密にするシール材とを含むから、透明板材間に形成される液密空間に液状の電磁波吸収剤を良好に保持できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、電磁波吸収材は透明又は半透明であるから、例えば建造物の窓として用いることが可能である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、電磁波吸収材は水であるから、電磁波抑制板材を極めて廉価に製造できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、前記水には、不凍剤、抗菌剤、又は着色剤の少なくとも一つが添加されているから、水が凍って膨張することによる透明板材の破損、水に細菌等が繁殖することによる腐敗を防止できる。また、着色剤の作用により電磁波抑制板材の色を様々に変化させることが可能である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、前記透明板材は、透明又は半透明のガラス板、透明又は半透明の樹脂板であるから、例えば建造物の窓として用いることが可能である。
請求項7に記載の発明によれば、透明板材間に形成される空間に充填された電磁波抑制液の作用により、電磁波の影響を防止又は低減することができる。従って、例えば、本発明の電磁波抑制板材を建造物の窓として用いれば、太陽からの熱線(電磁波)がその窓を介して室内に侵入することを防止又は低減できるから、室内温が上昇することなく、快適な居住空間を得ることが可能となる。また、例えば、本発明の電磁波抑制板材を室内等に設置されたテレビ受像機等の前に設置すれば、テレビ受像機等からの電磁波を防止又は低減できるから、人間の健康に影響を及ぼす(ストレス誘発や脳や眼球等の部分的温度上昇等)おそれを防止又は低減することが可能となる。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、透明板材間の電磁波抑制層の作用により、電磁波の影響を防止又は低減することができる。従って、例えば、本発明の電磁波抑制板材を建造物の窓として用いれば、太陽からの熱線(電磁波)がその窓を介して室内に侵入することを防止又は低減できるから、室内温が上昇することなく、快適な居住空間を得ることが可能となる。また、例えば、本発明の電磁波抑制板材を室内等に設置されたテレビ受像機等の前に設置すれば、テレビ受像機等からの電磁波を防止又は低減できるから、人間の健康に影響を及ぼす(ストレス誘発や脳や眼球等の部分的温度上昇等)おそれを防止又は低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の好適実施形態について説明する。この実施形態は、建造物の窓等に適用される電磁波抑制板材である。図1は、本実施形態の電磁波抑制板材の斜視図である。図2は、図1に示される電磁波抑制板材の枠と透明板材との結合関係を説明するための部分断面図である。
【0021】
以下、図面を参照しながらこの電磁波抑制板材100の構成について説明する。
【0022】
電磁波抑制板材100は、二枚の透明板材10、透明板材10の間に液密空間Kを形成する密閉部材としての枠20及びシール材30、及びその液密空間K内に充填された液状の電磁波吸収材40を備える。
【0023】
透明板材10は、透明又は半透明のガラス板(すりガラスや凹凸面を持つガラスやワイヤー入りのガラス等であってもよい)や、透明又は半透明のアクリル板等の樹脂板である。
【0024】
液密空間Kは各種の方法で構成することが可能である。例えば、図2に示されるように、枠20にその長手方向に伸びる2本の凹部21を設け、各凹部21にシール材30をはめ込み、さらに透明板材10の端縁をはめ込むことで、その透明板材10の周囲にシール材30を配置するとともに、透明板材10を、その表面11を向かい合わせ、かつ、一定間隔(例えば2mm)をおいて配置する。
【0025】
これにより、透明板材10、枠20、及びシール材30によって、シールされた液密空間Kが構成される。また、図3に示されるように、枠20にその長手方向に伸びる1本の凹部22を設け、この凹部22に透明板材10の端部をその間にシール材30を介在させた状態ではめ込むことも考えられる。これによってもシールされた液密空間Kが構成される。また、図4に示されるように、枠20にその長手方向に伸びる1本の凹部22を設け、この凹部22に透明部材10の端部を固定し、各透明部材10と枠20との間をそれぞれシール材30でシールすることも考えられる。これによってもシールされた液密空間Kが構成される。
【0026】
電磁波吸収材40は、透明又は半透明の液体であり、例えば水(アルコールあるいはホルマリン液等も考えられる)である。この水には、エチレングリコール等の不凍剤、抗菌剤(又は防腐剤)、又は染料や顔料等の着色剤の少なくとも一つを添加するのが望ましい。不凍材を添加すれば水が凍って膨張することによる透明板材10の破損を防止できる(特に透明板材10がガラス板の場合)。また、抗菌剤(又は防腐剤)を添加すれば腐敗菌等微生物の繁殖による腐敗を防止できる。また、着色剤を添加すれば電磁波抑制板材100の色を様々に変化させることができる。
【0027】
液密空間Kには各種の方法で電磁波吸収材30を充填できる。例えば、液密空間Kと外部を連通する図示されない貫通穴を電磁波抑制板材100に設け(例えば上部に位置する枠20及びシール材30部分に設け)、この貫通穴を介して、電磁波吸収材30を充填することが考えられる。なお、充填のしやすさを考慮すれば、空気抜き用の穴を電磁波抑制板材100に設けるのが望ましい。また、電磁波吸収材30に気泡が残るのを防止する観点からは、電磁波抑制板材100に(手動又は自動で)振動を与えながら充填するのが望ましい。
【0028】
本出願人は、上記のように構成される電磁波抑制板材100による電磁波抑制効果を実証するために実験を行った。次に、その実験結果等について説明する。
【0029】
この実験は、図5に示すように、上記のように構成される電磁波抑制板材100を組み合わせたボックスA(6面すべてが電磁波抑制板材100)と、断熱板材(二枚のガラス板を、その表面を向かい合わせ、かつ、一定間隔(例えば25mm)をおいて配置するとともに、ガラス板間に発泡系断熱材(発泡スチロール)を配置した板材。6面すべてがこの板材)を組み合わせたボックスBを用いた。ボックスAとボックスBの容積はほぼ同一である。
【0030】
ボックスA及びB内部にはそれぞれ温度センサを設け、これに測定温度を観察するために表示装置を接続した。従って、ボックス外部から各ボックス内部温度を観察できるようになっている。
【0031】
平成17年6月24日(晴れ)に、上記ボックスA及びBを屋外に設置し、8:00から22:00まで一時間ごとに、外気温、ボックスA内温度、ボックスB内温度を観察した。その結果、図6に示される結果を得た。
【0032】
この結果を考察すると次のことがいえる。ボックスA内温度は19℃から始まり、最高25℃に達している。外気温との最大温度差は、最も外気(熱線)の影響を受けやすい14:00の7℃である。一方、ボックスB内温度は22℃から始まり、最大30.5℃に達している。また外気温との最大温度差2℃である。この結果から見て、ボックスAの方が明らかに熱線(電磁波)の影響を防止又は低減できていることが分かる。これは、電磁波抑制板材100の電磁波吸収材30、すなわち水分により、熱線(電磁波)を防御した結果であるといえる。
【0033】
また、熱線の影響が緩和し外気が冷えてきた18:00には、ボックスA内温度もそれにつれて急激に低下した。つまりボックスA内温度と外気温とが同化したことを示している。一方、同18:00には、ボックスB内温度は28.5℃を示しておりそれほど低下していない。つまり、ボックスB内温度と外気温とが同化していない。これは、発泡系断熱材が熱線の影響を受けやすい熱伝播遅効型素材(又は熱吸収素材)であることが原因と考えられる。また、22:00の外気温が16℃であるのに対し、ボックスB内温度は、22℃である。このように、発泡系断熱材では、熱線を防ぐことはできず、さらに外気が冷えてもそれに追随しない。発泡系断熱材は、熱帯夜に拍車をかける要因を有する素材といえる。
【0034】
一方、電磁波抑制板材100によれば、熱線(電磁波)の影響を防止又は低減でき、かつ、外気温に追随できることが明らかである。電磁波抑制板材100は快適な居住空間を得るのに適した素材であるといえる。
【0035】
また、上記ボックスA内に携帯電話を入れ、外部からこの携帯電話に接続できるか否かの実験も行ったが、外部からこの携帯電話に接続できなかった。これは、電磁波抑制板材100の作用により、電磁波による影響が防止又は低減されていることを意味する。さらに、OA機器等の画面前に電磁波抑制板材100を配置して電磁波を測定したところ、30キロヘルツ以下の低周波電磁波が計測不能となることも確認した。これも、電磁波抑制板材100の作用により、電磁波による影響が防止又は低減されていることを意味する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の電磁波抑制板材100によれば、透明板材10間に形成される液密空間Kに充填された液状の電磁波吸収剤40の作用により、電磁波の影響を防止又は低減することができる。従って、例えば、電磁波抑制板材100を建造物の窓として用いれば、太陽からの熱線(電磁波)がその窓を介して室内に侵入することを防止又は低減できるから、室内温が上昇することなく、快適な居住空間を得ることが可能となる。
【0037】
また、例えば、電磁波抑制板材100にテレビ受像機へ装着するためのアダプターを設ける等によって、室内等に設置されたテレビ受像機等の前に設置すれば、テレビ受像機等からの電磁波を防止又は低減できるから、人間の健康に影響を及ぼす(ストレス誘発や脳や眼球等の部分的温度上昇等)おそれを防止又は低減することが可能となる。
【0038】
次に、上記実施形態の電磁波抑制板材100の変形例について説明する。
【0039】
上記実施形態の電磁波抑制板材100は、枠20を備えているように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7にその概観が示されるように、電磁波抑制板材100は、枠20を設けることなく、二枚の透明板材10、シール材30、及び電磁波吸収材40によって構成することもできる。
【0040】
この場合も、液密空間Kは各種の方法で構成することが可能である。例えば、図8に示されるように、透明板材10の端縁間にその縁に沿って延びるシール材30を介在させる。透明板材10とシール材30との接続を接着剤あるいはねじ止め等により行うことで、その透明板材10の周囲にシール材30を配置するとともに、透明板材10を、その表面11を向かい合わせ、かつ、一定間隔(例えば2mm)をおいて配置する。これにより、透明板材10、及びシール材30によって、シールされた液密空間Kが構成される。
【0041】
また、図9又は図10に示されるように、透明板材10の端縁間にその縁に沿って延びるスペーサSを介在させることも考えられる。透明部材10とスペーサSとの接続は接着剤あるいはねじ止め等により行う。そして、各透明部材10とスペーサSとの間を液密空間Kの外側から又は内側から(あるいは両側から)それぞれシール材30でシールすることも考えられる。これによっても、シールされた液密空間Kが構成される。なお、液密空間Kへの電磁波吸収材30の充填方法や他の構成については、上記実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0042】
さらに、他の構成として、既述のように、枠体20又はスペーサSを用い、一対の透明板材10の間に空間を形成する。この空間内には、空間内壁に密着する、透明(又は半透明)なシート材で構成されたバルーンを収容し、該バルーン内に透明液体からなる電磁波吸収材40を充填した構成としてもよい。
【0043】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。このため、上記の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明が限定的に解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態である電磁波抑制板材の斜視図である。
【図2】図1に示される電磁波抑制板材の枠と透明板材との結合関係を説明するための部分断面図である。
【図3】図1に示される電磁波抑制板材の枠と透明板材との他の結合関係を説明するための部分断面図である。
【図4】図1に示される電磁波抑制板材の枠と透明板材との他の結合関係を説明するための部分断面図である。
【図5】本発明の一実施形態である電磁波抑制板材による電磁波抑制効果を実証するために行った実験システムを説明するための図である。
【図6】図5に示される実験システムによる実験結果を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態である電磁波抑制板材の変形例を説明するための図である。
【図8】図7に示される電磁波抑制板材の枠と透明板材との他の結合関係を説明するための部分断面図である。
【図9】図7に示される電磁波抑制板材の枠と透明板材との他の結合関係を説明するための部分断面図である。
【図10】図7に示される電磁波抑制板材の枠と透明板材との他の結合関係を説明するための部分断面図である。
【符号の説明】
【0045】
100 電磁波抑制板材
10 透明部材
20 枠
21 凹部
22 凹部
30 シール材
40 電磁波吸収材(水)
K 液密空間
S スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の透明板材と、
該複数の透明板材の間に液密空間を形成する密閉部材と、
液密空間内に充填された液状の電磁波吸収材とを備えることを特徴とする電磁波抑制板材。
【請求項2】
前記密閉部材は、透明板材の端部を囲む枠と、該枠と透明板材の間を液密にするシール材とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制板材。
【請求項3】
前記電磁波吸収材は、透明又は半透明であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波抑制板材。
【請求項4】
前記電磁波吸収材は水であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波抑制板材。
【請求項5】
前記水には、不凍剤、抗菌剤、又は着色剤の少なくとも一つが添加されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁波抑制板材。
【請求項6】
前記透明板材は、透明又は半透明のガラス板、透明又は半透明の樹脂板であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波抑制板材。
【請求項7】
二枚の透明板材を、その表面を向かい合わせ、かつ、一定間隔をおいて配置するとともに、透明板材の周囲をシールすることによって、透明板材間に空間を形成し、該空間に電磁波抑制液を充填してなることを特徴とする電磁波抑制板材。
【請求項8】
透明板材、電磁波抑制液層、透明板材の順に積層されて構成されることを特徴とする電磁波抑制板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−32058(P2007−32058A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215826(P2005−215826)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(591208814)株式会社佐武 (4)
【Fターム(参考)】