説明

露光装置

【課題】基板とフォトマスクとを、全面領域に渡って特異点なく連続した所望の湾曲状に変形させ、露光する。
【解決手段】露光装置は、基板支持部材2を基板1とともに湾曲状に変形させるための変形手段6,7を備える。変形手段は、基板支持部材2に対して少なくともひとつの力の作用点14を有する第二の駆動機構6と、基板支持部材2の上下方向の移動を規制するとともに傾斜および横方向の移動を許容する連結機構7とを備える。露光装置はさらに、基板支持部材2を横方向に関して位置規制する基板支持部材位置規制機構8a,8bと、基板1に対して接触および離反する方向へのフォトマスク4の移動を許容するフォトマスク支持部材5と、フォトマスク支持部材5に対してフォトマスク4を横方向に関して位置規制するフォトマスク位置規制機構9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが描かれたフォトマスクと、表面に感光層が形成された基板とを重ねて配置し、フォトマスクを通して基板に光を照射することにより、パターンを基板に転写する露光方法および露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント回路基板等の表面に導電パターン等を成形するために、表面に感光層が形成された基板と、パターンが描かれたフォトマスクとを重ねて配置し、フォトマスクを通して基板に光を照射することにより、パターンを基板表面の感光層に転写する露光方法が広く行われてきた。
この露光方法において、フォトマスクに描かれたパターンを基板に転写するためには、基板の略全面にあらかじめ設けられた多数の導電孔等と、フォトマスクに描かれたパターンとの位置合わせを行うため、フォトマスクと基板との互いに対応する位置に、それぞれ複数の位置合わせマークが付されている。
【0003】
このフォトマスクと基板とのそれぞれに付された位置合わせマークを、CCDカメラ等の光センサによって読み取り、そのデータに基づいて、基板またはフォトマスクのいずれかをX・Y・θ方向(基板またはフォトマスクの面内に含まれる方向)に移動させて、フォトマスクと基板との位置合わせを行う。
フォトマスクと基板との位置合わせを行った後、フォトマスクを通して基板に光を照射することにより、フォトマスクに描かれたパターンを基板表面の感光層に転写して、露光処理が完了する。
しかし、位置合わせを行うために、フォトマスクと基板とに付された複数の位置合わせマーク間の距離、即ち位置合わせマーク間ピッチは、製作誤差や温度、湿度の変化、あるいは露光工程に至るまでの加熱処理などによる基板の収縮等によって変化する。
このためフォトマスクと基板それぞれに付された複数の位置合わせマーク間ピッチに誤差が生じる。その結果、フォトマスクと基板との位置合わせマークをすべて完全に合わすことは困難である。
そこで、従来は、このフォトマスクと基板との対応する位置に付された複数の位置合わせマーク間ピッチ誤差に起因するずれ量を按分するように、基板とフォトマスクとの位置合わせを行なっていた。
従来の基板では、たとえこのようなずれ量が生じても、求められる精度が低かったため、問題とはならなかった。しかし、半導体の小型化や基板のファインパターン化が進むに従って、このずれ量が問題となってきた。
したがって、フォトマスクと基板との各位置合わせマークのずれ量をできるだけ小さくして、フォトマスクに描かれたパターンを基板の定められた位置に精度良く転写することが望まれていた。
【0004】
これに関する従来の主な対策として、フォトマスクに付された位置合わせマークのマーク間ピッチのスケールを、基板の各位置合わせマークに合うように変更したフォトマスクを作成して対応していた。
【0005】
もちろん、フォトマスクに付された位置合わせマークのマーク間ピッチのスケールを変えることは、位置合わせマークと同時に描かれたパターンのスケールも比例して変わることになるため、フォトマスクのパターンを基板の定められた位置に、より精度よく転写することが可能となる。
【0006】
しかしながら、フォトマスクに付された位置合わせマークのマーク間ピッチのスケールを変えたフォトマスクを作成して対応しようとしても、基板の位置合わせマーク間ピッチの寸法は、先に述べた理由で、基板ごとに異なるため、高い位置合わせ精度を実現するには、異なるスケールを有する複数枚のフォトマスクを準備し、フォトマスクと基板との位置合わせ精度が許容範囲内におさまるよう、フォトマスクを選択して交換する必要があった。
【0007】
この露光方法においては、許容範囲内の転写精度が得られたとしても、複数枚のフォトマスクを作成することによるコスト上昇や、フォトマスクの交換時間が増加することによる生産性の低下等、多くの問題があった。
【0008】
そこで次に考えられたのが、フォトマスクと基板とを互いに均一に接触させ、且つ、フォトマスクと基板とが凹状または凸状に湾曲させられた状態を作り出し、それによって、フォトマスク上のパターンの寸法を実質的に変化させ、パターンのスケールを基板のスケールに一致させる方法である。この状態で、フォトマスクを通して基板上の感光層に光を照射することにより、寸法が実質的に変化したパターンが、基板の導電孔等と位置合わせされた状態で基板上に転写される。
【0009】
この露光方法によれば、基板の位置合わせマーク間ピッチの寸法が、基板ごとに異なっていても、一枚のフォトマスクの位置合わせマーク間ピッチの寸法を基板に合わせることができるので、生産性を損なわず、且つ、コスト上昇を抑えて、フォトマスクに描かれたパターンを基板の定められた位置に精度良く転写することが可能となる。
【0010】
この方法において、基板全面領域にわたっての正確なスケーリングを達成するには基板ならびにフォトマスクを全面領域に渡って特異点なく、連続した所望の湾曲形状に変形させる必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、基板とフォトマスクとを全面領域に渡って特異点なく、連続した所望の湾曲状に変形させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、
パターンが描かれたフォトマスクを、表面に感光層が形成された基板を覆う位置に配置し、基板をフォトマスクに対して凹または凸の所望の湾曲状に変形させ、基板の感光層が形成された面とフォトマスクのパターンが描かれた面とを互いに均一に接触させることによりフォトマスクも基板に倣うように変形した状態で、フォトマスクを通して基板に光を照射することによって、フォトマスクに描かれたパターンの寸法を実質的に変化させて基板に転写する露光方法に用いられる露光装置であって、
基板を支持するための基板支持部材と、
フォトマスクと基板とを互いに接触および離反させるための第一の駆動機構と、
前記基板支持部材を支持するためのベース部材と、
前記基板支持部材を基板とともに湾曲状に変形させるための変形手段にして、前記基板支持部材に対して少なくともひとつの力の作用点を有する第二の駆動機構と、前記基板支持部材と前記ベース部材との間にて前記力の作用点から離れた複数の位置に設けられ、前記力の作用方向と同じ方向に関して前記基板支持部材の前記ベース部材に対する相対移動を規制するとともに、前記基板支持部材の湾曲変形に伴う該基板支持部材の傾斜および前記力の作用方向と垂直方向の移動を許容する連結機構とを備えた変形手段と、
前記ベース部材に対して前記基板支持部材を前記力の作用方向と垂直な方向に関して位置規制する基板支持部材位置規制機構と、
フォトマスクの外縁部を支持するためのフォトマスク支持部材にして、基板に対して接触および離反する方向へのフォトマスクの移動を許容するフォトマスク支持部材と、
該フォトマスク支持部材に対してフォトマスクを前記力の作用方向と垂直な方向に関して位置規制するフォトマスク位置規制機構と、
前記基板支持部材と前記フォトマスク支持部材との相対移動を案内するガイド機構と、
フォトマスクを通して基板の感光層に光を照射するための光照射装置と、
を備えている、露光装置が提供される。
【0013】
露光装置は、前記基板支持部材と前記ベース部材との間の所望の位置に設けられた力付与手段にして、
前記基板支持部材の変形形状を補完的に制御すべく該基板支持部材に付加的な力を作用させる力付与手段をさらに備えることができる。
【0014】
前記力付与手段は、バネを含む手段とすることができる。
【0015】
前記連結機構は、球面接触によるすべり運動をなす面対偶と、平面接触によるすべり運動をなす面対偶または球面接触によるすべり運動をなすもうひとつの面対偶とを有することができる。
【0016】
あるいはまた前記連結機構は、球面接触によるすべり運動をなす面対偶と、点接触によるころがり運動をなす点対偶とを有するものとすることができる。
【0017】
あるいはまた前記連結機構は、前記基板支持部材と前記ベース部材との間に設けられた鋼線を含むものとすることができる。
【0018】
前記連結機構の少なくとも一部を弾性体からなるものとしてもよい。
【0019】
前記第二の駆動機構の前記少なくともひとつの力の作用点を、前記基板支持部材の中央領域に配置し、前記連結機構を、前記少なくともひとつの力の作用点を囲む複数の位置に設けることができる。
【0020】
あるいはまた、前記第二の駆動機構が複数の力の作用点を有するものとし、該複数の力の作用点を、前記基板支持部材の周辺領域に配置し、前記連結機構を、前記複数の力の作用点によって囲まれた位置に少なくともひとつ設けるようにしてもよい。
【0021】
前記第二の駆動機構の力の作用点は、前記基板支持部材の中央を中心とした円周上に複数配置することができる。
【0022】
前記連結機構は、前記基板支持部材の中央を中心とした円周上に複数配置することができる。
【0023】
前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、該基板支持部材の厚みが場所によって変化しているようにしてもよい。
【0024】
また、前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、該基板支持部材の所望の箇所に溝を形成するようにしてもよい。
【0025】
前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、前記連結機構が、前記力の作用方向と垂直な方向に移動可能なように設けられるようにしてもよい。
【0026】
また、前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、前記第二の駆動機構が、前記力の作用方向と垂直な方向に移動可能なように設けられるようにしてもよい。
【0027】
前記第二の駆動機構が、複数の力の作用点を有しており、且つ、一つの駆動装置が前記複数の力の作用点のそれぞれを介して前記基板支持部材に力を作用させるようにしてもよい。
【0028】
前記フォトマスク支持部材は、フォトマスクと基板とを互いに接触させようとする力によって撓む弾性要素を含むことができる。
【0029】
前記弾性要素は板バネとしてもよい。
【0030】
露光装置は、基板とフォトマスクと前記基板支持部材とによって囲まれる空間領域内を減圧する手段をさらに備えていてもよい。
【0031】
前記第二の駆動機構は、前記基板支持部材と前記ベース部材との間に設けることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、基板支持部材に対して少なくともひとつの力の作用点を有する第二の駆動機構と、基板支持部材とベース部材との間に設けられた複数の連結機構とによって基板支持部材が支持される。さらに、連結機構は、基板支持部材の湾曲変形に伴う基板支持部材の傾斜およびXY方向移動を許容するようになされているので、基板支持部材および基板は、特異点を形成することなく変形することができる。一方、フォトマスクの外縁部を支持するフォトマスク支持部材は、基板に対して接触および離反する方向へのフォトマスクの移動を許容するようになされているので、フォトマスクが変形するときにフォトマスク支持部材による支持が支障となることはないので、第一の駆動機構によってフォトマスクを基板に接触させることで、フォトマスクも基板に倣って特異点なく変形することができる。
【0033】
このように本発明によれば、基板支持部材およびこれに支持された基板ならびにフォトマスクを、全面領域に渡って特異点なく、連続した所望の湾曲状に変形させることができる。したがって、基板の全面領域にわたって正確なスケーリングを行うことができ、よって、基板の全面領域にわたってフォトマスクのパターンを基板の定められた位置に、より精度よく転写することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の一実施形態による作動前の露光装置の概略側断面図である。露光装置は、基板1を支持するための基板支持部材2と、基板支持部材を支持するためのベース部材3と、フォトマスク4の外縁部を支持するフォトマスク支持部材5とを備える。
【0035】
フォトマスク支持部材5は、接続された第一の駆動機構(図示せず)によって、基板支持部材2に対して図1で見て上下方向に移動できる構造となっている。基板支持部材2とフォトマスク支持部材5との相対移動は、ガイド機構(図示せず)によって、X,Y方向の移動(図1で見て水平面内における移動)が生じないように案内されている。これにより、フォトマスク4は、基板1に対して接触および離反するよう移動可能である。
【0036】
第一の駆動機構は、露光装置の一部を構成する。
【0037】
基板1を取り囲むようにして基板支持部材2上に設けられた真空シール(封止)用チューブ10は、後述するように、基板1とフォトマスク4とを互いに均一に密着させるために機能する。したがって、チューブ10もまた、フォトマスク4と基板1とを互いに接触および離反させるための第一の駆動機構の一部に含まれるものとしてもよい。
【0038】
露光装置はまた、基板支持部材2を基板1とともに湾曲状に変形させるための変形手段を備える。
【0039】
変形手段は、基板支持部材2とベース部材3との間に設けられた第二の駆動機構6と、同じく基板支持部材2とベース部材3との間に設けられた連結機構7とを備える。露光装置はさらに、基板支持部材位置規制機構8と、フォトマスク位置規制機構9と、光照射装置(図示せず)とを備える。
【0040】
基板支持部材2は、基板1の露光面1aとは反対側の面に当接し、真空吸引孔11を通して作用する負圧によって基板1を吸着保持し、また、負圧を解放することによって基板1の吸着保持を解除することができる。
【0041】
第二の駆動機構6は、上下動するロッド12と、該ロッド12の拡大ヘッド12aに対して枢動可能に結合されている受け部13aを有する押圧部材13とを備えている。
押圧部材13は、ロッド12が上下動する際、該ロッド12に対してわずかに傾斜することを許容されながら該ロッド12とともに上下動することができる。押圧部材13は、上面に少なくともひとつ(たとえば4個)の突起14を有している。これらの突起14が、基板支持部材2の中央領域に押圧力を作用させる作用点となる。
【0042】
第二の駆動機構6は、ロッド12を上下動させるための駆動装置(図示せず)を備える。この駆動装置は、たとえば、モータ、歯車およびスクリューシャフトを組み合わせたものでもよい。他の任意の駆動装置が採用可能である。
【0043】
押圧部材13の複数の突起14は、一つの駆動装置が複数の力の作用点のそれぞれを介して基板支持部材2に力を作用させることを可能にしている。複数の突起14は、力を均等に与えるため、円周上に等間隔で配置することができる。
【0044】
基板支持部材2とベース部材3との間にて両者を連結する連結機構7は、第二の駆動機構6における突起14を取り囲むようにして複数の位置(たとえば4カ所)に設けられている。
連結機構7は、突起14から離れた位置において、第二の駆動機構6から受ける力の反作用力を基板支持部材2に与える。すなわち、連結機構7は、第二の駆動機構6による力の作用方向と同じ方向に関して、基板支持部材2のベース部材3に対する相対移動を規制する。一方で連結機構7は、後述するように、基板支持部材2の湾曲変形に伴う基板支持部材2の傾斜および、第二の駆動機構6から受ける力の作用方向と垂直方向の移動を許容する機構となっている。
【0045】
図示する実施形態では、第二の駆動機構6と連結機構7とによって、基板支持部材2およびそれに支持される基板1は、フォトマスク4に対して凸状に湾曲変形される。
【0046】
複数の連結機構7もまた、力の反作用を均等に与えるために、円周上に等間隔で配置することができる。図4は、連結機構7が、一点鎖線Cで示す円上に配置されている状態を示している。
【0047】
しかしながら、長方形の基板および該基板を支持する長方形の基板支持部材を変形させるに際しては、基板全体を所望の状態、たとえば均一に湾曲した状態に変形させるためには、第二の駆動機構6および連結機構7の利用だけでは難しい場合がある。そこで、基板支持部材2とベース部材3との間の所望の位置に、基板支持部材2の変形形状を補完的に制御するための力付与手段を設け、基板支持部材2に付加的な力を作用させるようにしてもよい。図4および図6には、かかる力付与手段としてのバネ15が示されている。バネ15は、基板支持部材2の各辺部の中央に設けられている。バネ15の強さは、経験上必要と思われる力を与えるように選択される。また、力付与手段として、バネに代わる手段、たとえばエアシリンダ装置15aのようなアクチュエータを採用してもよい。さらに、図6に示すように、バネ15とエアシリンダ装置15aとを組み合わせて用いてもよい。
【0048】
図10は、本発明の別の実施形態による作動前の露光装置の概略側断面図である。
【0049】
第二の駆動機構6の力の作用点を、基板支持部材2の周辺領域に複数配置し、連結機構7を、これら複数の力の作用点によって囲まれた中央領域の位置に少なくともひとつ設けている。この場合もまた、複数の力の作用点および複数の連結機構7のそれぞれを、円周上に等間隔で配置することができる。
【0050】
図10に示すように、第二の駆動機構6が基板支持部材2の周辺領域に設けられ、基板支持部材2およびそれに支持される基板1をフォトマスク4に対して凸状に湾曲変形させるためには、第二の駆動機構6は、基板支持部材2に対して押圧力ではなく、引張力を与えるように構成される。このように、第二の駆動機構6と連結機構7との相対位置関係および凹凸いずれの形状に基板支持部材2を変形させるかに依存して、第二の駆動機構6が基板支持部材2に対して押圧力を与えるように構成されるか、引張力を与える用に構成されるかが決まる。
【0051】
図7ないし図9に、連結機構7の3種の具体例をそれぞれ示す。図7の連結機構7aは、球面接触によるすべり運動をなす面対偶と、平面接触によるすべり運動をなす面対偶とを有している。球面接触による面対偶は、ベース部材3から上方に突出した直立部材16の先端の球状部17と、これと嵌合すべく基板支持部材2に取り付けられたソケット部18とから形成されている。一方、平面接触によるすべり運動をなす面対偶は、直立部材の底部に形成されたスライド部19と、該スライド部19に対してスライド移動可能に接触する面を有するベース部材3とから形成されている。スライド部19は、ベース部材3の上面に設けたキャップ部材20が形成する空間内に収容され、該キャップ部材20に制限された範囲内をXY方向にスライド移動可能である。
【0052】
図8の連結機構7bは、球面接触によるすべり運動をなす面対偶を2つ有している。2つの面対偶は、棒状部材21の両端に設けられた球状部22,23と、該球状部22,23とそれぞれ嵌合するソケット部24,25とによって形成されている。ソケット部24,25は、それぞれ基板支持部材2およびベース部材3に取り付けられている。
【0053】
図9の連結機構7cは、球面接触によるすべり運動をなす面対偶と、点接触によるころがり運動をなす点対偶とを有している。球面接触による面対偶は、ベース部材3から上方に突出するフック部材26の先端に取り付けられたソケット部27と、このソケット部27に嵌合するボール28とによって形成されている。点接触による点対偶は、基板支持部材2から下方に突出するフック部材29の先端と、ボール28とによって形成されている。フック部材29の先端とボール28とは、バネ30のような弾性体による付勢力を受けて互いに接触を維持している。バネ30のような弾性体もまた、連結機構7cの一部を構成する。
【0054】
図7ないし図9に例示したもののほか、連結機構はさまざまな形態をとることができる。たとえば連結機構が、基板支持部材2とベース部材3との間に設けられた適切な長さの金属製部材を含んでいてもよい。この金属製部材は、たとえば鋼線とすることができる。鋼線の端部は基板支持部材2およびベース部材3にそれぞれ取り付けられる。鋼線は、基板支持部材2を介して第二の駆動機構6による力を受け、該基板支持部材2に反作用力を与える。
【0055】
あるいは連結機構が、基板支持部材2とベース部材3との間に設けられた他の形態の金属製部材を含んでいてもよい。たとえば中央部分の断面積を減じたり中央部分にスリットを形成することによって曲げ剛性を調整された、鋼のような金属製部材を利用することができる。
【0056】
あるいはまた連結機構が、基板支持部材2とベース部材3との間に設けられた、金属以外の物質からなる弾性体から構成されるようにしてもよい。
【0057】
上述した連結機構のいずれも、少なくともその一部に弾性体を含むことができる。
【0058】
上述した連結機構の例は、いずれも、第二の駆動機構6による力の作用方向と同じ方向に関して基板支持部材2のベース部材3に対する相対移動を規制する一方で、基板支持部材2の湾曲変形に伴う基板支持部材2の傾斜および、第二の駆動機構6による力の作用方向と垂直方向の移動を許容する機構となっている。
【0059】
第二の駆動機構6による力を受けた基板支持部材2を所望の形状に湾曲させるためには、第二の駆動機構6が与える力の作用点または連結機構7が与える力の反作用点の位置を調節できると都合がよい。そこで、第二の駆動機構6または連結機構7あるいはその双方を、第二の駆動機構6による力の作用方向と垂直な方向に移動可能なように設けるようにしてもよい。
【0060】
また、第二の駆動機構6による力を受けた基板支持部材2を所望の形状に湾曲させるための別の手段として、基板支持部材2の厚みを場所によって変えてもよい。あるいは、基板支持部材2の所望の箇所に溝を形成してもよい。これらの手段はいずれも、基板支持部材2の曲げ剛性を場所によって変化させ、全面領域に渡って特異点なく連続した湾曲形状に調整しようとするものである。
【0061】
ベース部材3に対して基板支持部材2を、第二の駆動機構による力の作用方向と垂直な方向に関して位置規制するための基板支持部材位置規制機構8は、図1ないし図4に開示されている。この基板支持部材位置規制機構8は、基板支持部材2を第二の駆動機構による力の作用方向と垂直な方向に付勢するためにベース部材3と基板支持部材2との間で作用するバネ8aのような付勢手段と、基板支持部材2の、第二の駆動機構による力の作用方向と垂直な方向への移動を制限する位置規制ピン8bのようなストッパとから構成されている。かかる基板支持部材位置規制機構8によって、湾曲変形前後の基板支持部材2は、常に一定の位置を維持するよう制御される。
【0062】
同様にして、第二の駆動機構による力の作用方向と垂直な方向に関しての、湾曲変形前後のフォトマスク4の位置は、図1ないし図3および図5に示すフォトマスク位置規制機構9によって制御され、一定に維持される。フォトマスク位置規制機構9は、フォトマスク4を第二の駆動機構による力の作用方向と垂直な方向に付勢するためにフォトマスク支持部材5とフォトマスク4との間で作用するバネ9aのような付勢手段と、フォトマスク4の、第二の駆動機構による力の作用方向と垂直な方向への移動を制限する位置規制ピン9bのようなストッパとから構成されている。
【0063】
フォトマスク支持部材5は、図1ないし図3および図5に示すように、フレーム5aと、押さえ板バネ5bのような弾性要素と、フレーム5aおよび押さえ板バネ5b間を接続するスペーサ5cとから構成されている。押さえ板バネ5bは、フォトマスク4が変形される前は(図1および図2)、フレーム5aと協働してフォトマスク4を挟持している。しかしながら、後述するように真空力によって基板1に倣って、フォトマスク4が湾曲状に変形され密着する段階になると、(図3)、押さえ板バネ5bは、フォトマスク4の周辺部の自然な変形に対してこれに実質的に抵抗することなく撓むことができる。フォトマスク4の変形が解除される段階では、押さえ板バネ5bはフォトマスク4の周辺部を押し上げ、再びフレーム5aと協働してフォトマスク4を挟持し、所定の位置に戻す。この際、前述したフォトマスク支持部材位置規制機構9の働きにより、フォトマスク4の、第二の駆動機構による力の作用方向と垂直な方向に関する位置は変形の前後を通して所定の位置に維持される。このように基板1に対して接触および離反する方向へのフォトマスク4の移動を許容すると共に、離反した際にフォトマスク支持部材に対するフォトマスクの位置を定位置に戻す機構は、押さえ板バネ5b以外の手段を利用するものであってもよい。
【0064】
また、本実施例では、基板支持部材およびフォトマスク支持部材の位置規制をそれぞれ側辺部を基準として行っているが、基板支持部材またはフォトマスク支持部材の位置規制を各々の中心を基準として行ってもよい。
【0065】
図1ないし図3を参照して、本発明による露光装置の基本的な作用を説明する。まず、基板1およびフォトマスク4の対応した位置にそれぞれ設けられた位置あわせマークをCCDカメラ31で読み取る。
【0066】
次にCCDカメラ31で読み取ったデータを基に、基板1とフォトマスク4との位置合わせを行う(図1)。このとき、基板1またはフォトマスク4のXYθ方向の位置が調節される。
【0067】
次に、CCDカメラ31で読み取ったデータを基に第二の駆動機構6を作動させ、基板支持部材2およびそれに支持される基板1をフォトマスク4に対して凸状に湾曲変形させる(図2)。このとき連結機構7は、基板支持部材2がベース部材3に対して相対的に上下動することに対してはこれを規制するが、基板支持部材2が自然な形で湾曲変形することに対してはこれを妨げず、基板支持部材2の傾斜および第二の駆動機構6から受ける力の作用方向と垂直な方向の移動を許容する。
【0068】
基板支持部材2およびそれに支持された基板1を所望の湾曲状に変形させた後、フォトマスク支持部材5を第一の駆動機構(図示せず)によって、基板1に向けて降下させる。それによって、基板1を取り囲むようにして基板支持部材2上に設けられた真空シール(封止)用チューブ10の頂部とフォトマスク4とを接触させる。すると、基板1とフォトマスク4と基板支持部材2とによって囲まれる空間領域が、チューブ10によって封止される。次に、この空間領域内を真空ポンプ(図示しない)などの手段で減圧することで、まずフォトマスク4の中央部を、基板1の突出した中央部に接触させ、それからフォトマスク4を基板1に倣うように変形させる(図3)。フォトマスク4は、中央領域から周辺領域に向かって徐々に基板1に密着してゆき、前述したように、フォトマスク支持部材5の押さえ板バネ5bが下方に撓んでフォトマスク4の周辺部の自然な変形移動を許容するため、基板1とフォトマスク4とは、両者の間に空間が残ることなく全域にわたって均一に接触する。
【0069】
このようにして、基板支持部材2に支持された基板1とフォトマスク4とは、全面領域にわたって特異点なく、連続した所望の湾曲形状に変形され、基板全面領域にわたっての正確なスケーリングを達成することができる。
【0070】
湾曲変形したフォトマスク4の下面に描かれているパターンは、中立面よりも内側にあるので、フォトマスク4が湾曲したことによりスケールは小さくなる。この状態で再びCCDカメラ31を用いて位置合わせを行い、十分な位置合わせ精度が得られていることを確認したら、光照射装置(図示せず)からの光32をフォトマスク4を通して基板1に照射し、パターンを基板1上に転写する。
また、基板支持部材2およびそれに支持された基板1をフォトマスク4に対して凸の所望の湾曲状に変形させ、フォトマスク4を基板1に密着させて基板1に倣うように変形させた後、基板支持部材2を、フォトマスク4に対して凹の湾曲状となるように変形させることにより、基板1およびフォトマスク4のスケーリングを一致させ、その状態で露光を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態による露光装置の概略断面図であり、基板が変形される前の状態を示す。
【図2】本発明の一実施形態による露光装置の概略断面図であり、基板が変形された状態を示す。
【図3】本発明の一実施形態による露光装置の概略断面図であり、変形された基板に倣ってフォトマスクが変形された状態を示す。
【図4】基板、基板支持部材およびベース部材を示す平面図。
【図5】フォトマスクおよびフォトマスク支持部材を示す底面図。
【図6】図1と同様の図であるが、力付与手段を備えた露光装置を示す概略断面図。
【図7】連結機構の一例を示す拡大断片断面図。
【図8】連結機構の別の例を示す拡大断片断面図。
【図9】連結機構のさらに別の例を示す拡大断片断面図。
【図10】本発明の別の実施形態による露光装置の概略断面図であり、基板が変形される前の状態を示す。
【符号の説明】
【0072】
1 基板、1a 露光面、2 基板支持部材、3 ベース部材、4 フォトマスク、5 フォトマスク支持部材、5a フレーム、5b 押さえ板バネ、5c スペーサ、6 第二の駆動機構、7,7a,7b,7c 連結機構、8 基板支持部材位置規制機構、8a バネ、8b 位置規制ピン、9 フォトマスク位置規制機構、9a バネ、9b 位置規制ピン、10 真空シール用チューブ、11 真空吸引孔、12 ロッド、12a 拡大ヘッド、13 押圧部材、13a 受け部、14 突起、15 バネ、15a エアシリンダ装置、16 直立部材、17 球状部、18 ソケット部、19 スライド部、20 キャップ部材、21 棒状部材、22 球状部、23 球状部、24,25 ソケット部、26 フック部材、27 ソケット部、28 ボール、29 フック部材、30 バネ、31 CCDカメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが描かれたフォトマスクを、表面に感光層が形成された基板を覆う位置に配置し、基板をフォトマスクに対して凹または凸の所望の湾曲状に変形させ、基板の感光層が形成された面とフォトマスクのパターンが描かれた面とを互いに均一に接触させることによりフォトマスクも基板に倣うように変形した状態で、フォトマスクを通して基板に光を照射することによって、フォトマスクに描かれたパターンの寸法を実質的に変化させて基板に転写する露光方法に用いられる露光装置であって、
基板を支持するための基板支持部材と、
フォトマスクと基板とを互いに接触および離反させるための第一の駆動機構と、
前記基板支持部材を支持するためのベース部材と、
前記基板支持部材を基板とともに湾曲状に変形させるための変形手段にして、前記基板支持部材に対して少なくともひとつの力の作用点を有する第二の駆動機構と、前記基板支持部材と前記ベース部材との間にて前記力の作用点から離れた複数の位置に設けられ、前記力の作用方向と同じ方向に関して前記基板支持部材の前記ベース部材に対する相対移動を規制するとともに、前記基板支持部材の湾曲変形に伴う該基板支持部材の傾斜および前記力の作用方向と垂直方向の移動を許容する連結機構とを備えた変形手段と、
前記ベース部材に対して前記基板支持部材を前記力の作用方向と垂直な方向に関して位置規制する基板支持部材位置規制機構と、
フォトマスクの外縁部を支持するためのフォトマスク支持部材にして、基板に対して接触および離反する方向へのフォトマスクの移動を許容するフォトマスク支持部材と、
該フォトマスク支持部材に対してフォトマスクを前記力の作用方向と垂直な方向に関して位置規制するフォトマスク位置規制機構と、
前記基板支持部材と前記フォトマスク支持部材との相対移動を案内するガイド機構と、
フォトマスクを通して基板の感光層に光を照射するための光照射装置と、
を備えている、露光装置。
【請求項2】
前記基板支持部材と前記ベース部材との間の所望の位置に設けられた力付与手段にして、
前記基板支持部材の変形形状を補完的に制御すべく該基板支持部材に付加的な力を作用させる力付与手段を備える、請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記力付与手段がバネを含む手段である、請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記連結機構が、球面接触によるすべり運動をなす面対偶と、平面接触によるすべり運動をなす面対偶または球面接触によるすべり運動をなすもうひとつの面対偶とを有している、請求項1ないし3のいずれかに記載の露光装置。
【請求項5】
前記連結機構が、球面接触によるすべり運動をなす面対偶と、点接触によるころがり運動をなす点対偶とを有している、請求項1ないし3のいずれかに記載の露光装置。
【請求項6】
前記連結機構が、前記基板支持部材と前記ベース部材との間に設けられた鋼線を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の露光装置。
【請求項7】
前記連結機構の少なくとも一部が弾性体からなる、請求項1ないし6のいずれかに記載の露光装置。
【請求項8】
前記第二の駆動機構の前記少なくともひとつの力の作用点が、前記基板支持部材の中央領域に配置されており、前記連結機構が、前記少なくともひとつの力の作用点を囲む複数の位置に設けられている、請求項1ないし7のいずれかに記載の露光装置。
【請求項9】
前記第二の駆動機構が複数の力の作用点を有しており、該複数の力の作用点が、前記基板支持部材の周辺領域に配置されており、前記連結機構が、前記複数の力の作用点によって囲まれた位置に少なくともひとつ設けられている、請求項1ないし7のいずれかに記載の露光装置。
【請求項10】
前記第二の駆動機構の力の作用点が、前記基板支持部材の中央を中心とした円周上に複数配置されている、請求項1ないし9のいずれかに記載の露光装置。
【請求項11】
前記連結機構が、前記基板支持部材の中央を中心とした円周上に複数配置されている、請求項1ないし10のいずれかに記載の露光装置。
【請求項12】
前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、該基板支持部材の厚みが場所によって変化している、請求項1ないし11のいずれかに記載の露光装置。
【請求項13】
前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、該基板支持部材の所望の箇所に溝が形成されている、請求項1ないし12のいずれかに記載の露光装置。
【請求項14】
前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、前記連結機構が、前記力の作用方向と垂直な方向に移動可能なように設けられている、請求項1ないし13のいずれかに記載の露光装置。
【請求項15】
前記第二の駆動機構による力を受けたときに前記基板支持部材が所望の形状に湾曲されるように、前記第二の駆動機構が、前記力の作用方向と垂直な方向に移動可能なように設けられている、請求項1ないし14のいずれかに記載の露光装置。
【請求項16】
前記第二の駆動機構が、複数の力の作用点を有しており、且つ、一つの駆動装置が前記複数の力の作用点のそれぞれを介して前記基板支持部材に力を作用させるようになされている、請求項1ないし15のいずれかに記載の露光装置。
【請求項17】
前記フォトマスク支持部材が、フォトマスクと基板とを互いに接触させようとする力によって撓む弾性要素を含んでいる、請求項1ないし16のいずれかに記載の露光装置。
【請求項18】
前記弾性要素が板バネである、請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
基板とフォトマスクと前記基板支持部材とによって囲まれる空間領域内を減圧する手段を備えている、請求項1ないし18のいずれかに記載の露光装置。
【請求項20】
前記第二の駆動機構が前記基板支持部材と前記ベース部材との間に設けられている、請求項1ないし19のいずれかに記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−170775(P2008−170775A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4391(P2007−4391)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000106162)サンエー技研株式会社 (19)
【Fターム(参考)】