説明

静電容量検出回路

プロセス変数(PROC.VAR.)を検出する回路(100)は、第1キャパシタ(102)および第2キャパシタ(104)を含む分圧器(106)を備える。静電容量の少なくとも1つは、プロセス変数により変化する。分圧器の両端(128、130)は被変調電圧(E1、E2)を受け取り、分圧器の中央タップ(108)は検出器に接続される。検出器は、搬送波周波数範囲成分を表す検出器の出力(118)を有する。制御回路(120)は検出器出力の関数として被変調電圧のベースバンドの包絡線を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロセス変数の静電容量式検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造の製造プロセスが向上するに伴い、プロセス変数の静電容量式センサは、このような静電容量式センサを含む製品のサイズおよびコストを低減するために、ますます小さいサイズで製作できるようになった。静電容量式センサのサイズが減少するに伴い、静止静電容量(rest Capacitance)は同様により小さくなりつつある。例えば、約15pFの静止静電容量を備える静電容量式センサは積層サファイア構造で、静電容量を増加する絶縁油を使用することなく構成できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような小さな静止静電容量では、静電容量式センサにノイズを結合する浮遊静電容量は静止静電容量に対してより大きくなる。信号対ノイズ比は低下し、ノイズはセンサ出力における全体誤差の大きな部分を占めることになる。また、容量プロセスセンサの精度向上に対する要求が増加している。これらの要求が増すと、静電容量式センサの非線形性がセンサの誤差仕様を制限する。静電容量式センサの精度向上を実現する方法および装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
プロセス変数を検出する回路が開示される。
【0005】
回路は、第1および第2キャパシタを含む分圧器を備える。第1および第2キャパシタのうちの少なくとも1つは、ベースバンド周波数範囲においてプロセス変数により変化する静電容量を有する。
【0006】
分圧器は被変調電圧を受け取る分圧器の両端を有する。被変調電圧は搬送波周波数範囲において変調される。被変調電圧はベースバンドの包絡線を有する。分圧器は検出器の入力部を提供する中央タップ接続部を有する。
【0007】
回路は検出器出力を提供する検出器を備える。検出器出力は検出器入力の搬送波周波数範囲成分を表す。
【0008】
回路は制御回路を備える。制御回路は被変調電圧のベースバンド包絡線を検出器出力の関数として制御する。制御回路はベースバンド周波数範囲におけるプロセス変数出力を提供する。
【0009】
一実施形態では、検出静電容量はプロセス変数に対して非線形に変化する。制御回路は、被変調電圧の少なくとも1つを検出器の出力の非線形制御関数として制御する。非線形制御関数は、プロセス変数に関する非線形性に対してプロセス変数の出力を補償する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に開示される実施形態では、プロセス変数検出回路はプロセス変数を静電容量式に検出する。プロセス変数検出回路は直列に接続した検出キャパシタおよび基準キャパシタを備え、これにより静電容量分圧器を形成している。検出キャパシタはベースバンド周波数におけるプロセス変数の変化を検出する。静電容量分圧器の両端は、搬送波周波数で変調された被変調電圧を受け取る。検出キャパシタと基準キャパシタとの間の接続点は検出器入力を提供する。検出器回路は検出器入力を検出し、検出器出力を提供する。検出器回路は搬送波周波数帯域で動作し、復調された検出器出力を提供する。制御回路は、検出器出力の関数として被変調電圧の振幅を制御する。制御回路はベースバンド周波数のプロセス変数出力を提供する。
【0011】
低レベルの検出器入力はスイッチに接続されない。検出器は変調周波数範囲内で動作し、変調周波数範囲外のノイズを除去する。一実施形態では、検出キャパシタは非線形であり被変調電圧の1つは、検出キャパシタの非線形性の部分を補償する、検出器出力の非線形関数を備える。回路は閉ループ方式で動作し、被変調電圧の振幅を変化させて検出器入力をゼロに近い平均値にするように作用する。検出器入力は誤差信号を含む。
【0012】
本出願で用いられる用語「検出器」はベースバンドプロセス変数の変化により変調される搬送波を受け取り、かつ、ベースバンドプロセス変数変化を再生する検出器出力を提供する回路を指す。本出願で用いられる用語「ベースバンド」は、プロセス変数の変化における有用な情報により占められる周波数帯域を指す。本出願で用いられる用語「変調」は、より高い周波数搬送波に対してベースバンド情報を加えることを指す。本出願で用いられる用語「搬送波」はベースバンド周波数より高い、変調のために用いられる周波数を指す。本出願で用いられる用語「包絡線」は、振幅変調された信号の搬送波が含まれるベースバンド変調波形、すなわち、搬送波の波形の連続サイクルのピークを結ぶ曲線を指す。
【0013】
図1はプロセス変数の静電容量式検出に有効な回路100のブロック図である。第1キャパシタ102は、プロセス変数の関数として変化する静電容量(Csense)を有する。検出されるプロセス変数は、圧力、力、加速度、勾配、温度または静電容量式に検出できる他のプロセス変数であってもよい。第2キャパシタ104は、第1キャパシタ102により検出されるプロセス変数から実質的に独立している静電容量(Cref)を有する。一実施形態では、静電容量Csenseは検出されるプロセス変数に対して全体的に線形関係を有するが、典型的には少量の非線形性の影響を受ける。プロセス変数に関する有用な情報を保有するプロセス変数(およびCsense)の変化は、ベースバンド周波数範囲内にある。一実施形態では、ベースバンド周波数範囲は0から400Hzである。
【0014】
一実施形態では、キャパシタ102、104は、構造材料および形状の点では相互に類似に構成され、この結果、望ましくない環境影響に対する第1および第2キャパシタ102、104の応答は類似または相互に追尾する。別の実施形態では、キャパシタ102、104は共通の支持構造体で製造され、追尾を強化する。さらに別の実施形態では、第1キャパシタ102は圧力を検出し、および相互に直接結合されるサファイア層から形成された共通の支持構造体の第2キャパシタ104と共に製造される。
【0015】
キャパシタ102、104を直列に接続して、静電容量分圧器106を形成している。分圧器接続点108は、両キャパシタ102、104に共通の中央タップである。接続点108は検出器回路110への検出器入力として作用する。静電容量分圧器106の分圧器端の導体112は抵抗R10を介してスイッチSW3に接続される。分圧器端の導体114は抵抗R11を介してスイッチSW4に接続される。スイッチSW3、SW4は単極双投(single pole,double throw)固体MOSスイッチである。スイッチSW3は、分圧器端112をライン126上のベースバンド電圧E1または基準電圧VSに交互に接続する。スイッチSW4は、分圧器端114をベースバンド電圧E2または基準電圧VSに交互に接続する。基準電圧VSは電圧測定における基準であり、0ボルトにされる。
【0016】
スイッチSW3、SW4は、クロック発生器116により生成される駆動クロックPH0により制御される。駆動クロックPH0が第1クロックフェーズ115の間において「低」の場合、図示されているとおり分圧器端112はスイッチSW3によりE1に接続され、分圧器端114はSW4によりVSに接続される。駆動クロックPH0が、第2クロックフェーズ117の間において「高」の場合、分圧器端112はスイッチSW3によりVSに接続され、分圧器端114はSW4によりE2に接続される(図示せず)。
【0017】
スイッチSW3、SW4は低電圧信号経路でなく高電圧信号経路内にある。低電圧検出器入力108に接続されているスイッチはない。この構成は、低電圧信号がスイッチに接続されている静電容量式センサの測定のためのシグマデルタ型アーキテクチャと比較して低ノイズを提供する。
【0018】
駆動クロックPH0が第1クロックフェーズ115の間において「低」の場合、静電容量分圧器106はE1とVSとの間に接続され、駆動クロックPH0が第2クロックフェーズ117の間において「高」の場合、静電容量分圧器106はVSとE2との間に接続される。抵抗R10、R11は駆動クロックフェーズ間の切り換え後のピーク電流を制限する。抵抗R10、R11はピーク電流を制限するのに十分高い抵抗値を有するが、接続点108における検出器の入力電圧が、各クロックフェーズの間にこの入力電圧の最終値を決定するには低い値である。一実施形態では、静電容量CsenseおよびCrefは約15ピコファラッドであり、抵抗R10、R11は300オームであり、駆動クロックPH0は1メガヘルツの周波数を有する。駆動クロックのこの周波数は搬送波周波数と呼ぶ。
【0019】
第1クロックフェーズの間、分圧器106は、分圧器端導体112、114間の電圧差(E1−VS)を分割する。第2クロックフェーズの間、分圧器106は、分圧器端導体112、114間の電圧差(VS−E2)を分割する。分割器106は検出器入力108に分割された電圧を提供する。したがって、検出器入力108は一連の交番極性パルス(VSに対して)である。検出器入力108は実質的に搬送波周波数の方形波である。検出器入力108の最高最低振幅は静電容量Csense、Crefおよび電圧E1、E2の関数である。検出器入力108は、ベースバンドのノイズおよび搬送波周波数範囲以外の他のノイズに対して劣った信号対ノイズ比を有する、低レベルの誤差信号である。
【0020】
検出器回路110は搬送波周波数近傍の帯域内の検出器入力108を検出する。検出器回路110は制御回路120に検出器出力118を提供する。制御回路120は検出器出力118の振幅の関数として電圧E2を生成する。制御回路120はスイッチSW4へのライン121上に電圧E2を供給する。制御回路120はライン132上にプロセス変数を表す出力を提供する。静電容量Csenseが非線形である例では、制御回路120は線形性補正回路124へのライン122上に制御電圧を提供する。線形性補正回路124は電源電圧VDおよび電圧E2の関数として電圧E1を生成する。線形性補正回路124はスイッチSW3へのライン126上に電圧E1を提供する。電圧E1およびE2の変化はベースバンド周波数範囲内にある。スイッチSW3はライン128上に第1被変調電圧を提供する。ライン128上の第1被変調電圧は、ベースバンド周波数のE1により変調され、かつ実質的に固定の搬送波周波数であるピーク振幅(包絡線)を有する。スイッチSW4は、ベースバンド周波数のE2により変調され、実質的に固定の搬送波周波数である、ピーク振幅(包絡線)を有するライン130上に第2被変調電圧を提供する。
【0021】
クロック発生器116は第1サンプリングクロックPH1を発生する。第1サンプリングクロックPH1は、図示されるとおり、駆動クロックPH0の第1クロックフェーズ115中の後半部分の間は「高」である。クロック発生器116は第2サンプリングクロックPH2を発生する。第2サンプリングクロックPH2は、図示されるとおり、駆動クロックPH0の第2クロックフェーズ117の後半部分の間は「高」である。サンプリングクロックPH1、PH2は駆動クロックPH0と同期している。第1および第2サンプリングクロックPH1およびPH2は図示されるとおり検出器110に接続される。一実施形態では、検出器110は同期復調のためにサンプリングクロックPH1、PH2を利用する。同期復調は、駆動クロックと相互に関連していないノイズを大幅に除去する。
【0022】
このように、回路100は、第1キャパシタ102の静電容量を変化させるプロセス変数を検出する。回路100は、検出されるプロセス変数を表すライン132上におけるベースバンドの出力を提供する。第1および第2キャパシタ102、104は、スイッチSW3、SW4により搬送波周波数で変調される振幅E1、E2を有するライン128、130上の第1および第2の被変調電圧を受け取る。第1および第2キャパシタ102、104は検出器入力108に接続される。第1および第2キャパシタ102、104のうちの一方は、ベースバンド周波数のプロセス変数により変化する静電容量を有する。検出器回路110は、搬送波周波数範囲内で検出される検出器の入力108の成分を表す検出器出力118を提供する。制御回路120は検出器の出力118の関数として被変調電圧128、130のベースバンド振幅E1、E2を制御する。制御回路120はベースバンド周波数におけるプロセス変数を表す出力132を提供する。一実施形態では、ライン132、121、122は全てベースバンド電圧E2に接続される。
【0023】
ベースバンドと搬送波周波数間との関係は、図2に示される例に関連して以下により詳細に説明される。クロック発生器116は、図3に示される例に関連して以下により詳細に説明される。検出器回路110は、図4〜図5に示される例に関連して以下により詳細に説明される。制御回路120は、図6に示される例に関連して以下により詳細に説明される。線形性補正回路124は、図7に示される例に関連して以下により詳細に説明される。
【0024】
図2はベースバンドおよび搬送波周波数の範囲の例を示している。図2では、横軸202は周波数を表す。検出されるプロセス変数における有用情報は、ベースバンド周波数の206における0周波数(例えばDC、安定状態のプロセス変数)から上限208まで広がる、ベースバンド周波数範囲204内にある。検出されるプロセス変数はベースバンド周波数範囲内に有用情報を有する。ベースバンド情報は搬送波で変調されて被変調電圧を生成する。このとき、有用情報は、全体に搬送波周波数212近傍に中心を有し、変調周波数範囲210内にある。検出器(例えば図1の検出器110)は、図示されるとおり、変調周波数範囲210とほぼ一致する周波数帯域特性214を有する。検出器110は、検出器の帯域214内の所望の情報を検出し、検出器の帯域214外である、ノイズおよびベースバンド信号を除去する。その結果、検出器出力(例えば図1の検出器出力118)は、プロセス環境において発生する、センサによりピックアップされる漂遊ノイズの大部分の影響を受けない。
【0025】
図3はクロック発生器回路300の例を示している。クロック発生器回路300は水晶制御発振器302を備える。発振器302は利得を有するインバータ304とインバータ304の入力と出力との間に接続されるフィードバック抵抗306を含む。フィードバック抵抗306はアナログ増幅に対してある範囲でインバータ304にバイアスをかける。周波数制御水晶308および一連の抵抗310は、インバータ304の入力と出力との間に接続されてフィードバック経路を形成する。水晶発振器302は水晶308により決定される周波数で振動する。発振器は発振器出力310を発生する。発振器出力310は方形波に極めて近い波形を備える。一実施形態では、水晶発振器302の振動周波数は2MHzである。
【0026】
クロック発生器回路300は周波数分割回路312を備える。分割器回路312はフリップフロップ314(またクロックDラッチと称される)を備える。/Q(not Q)出力は、フリップフロップ314が2による除算回路として作動するようにD入力に接続される。フリップフロップ314のQ出力は、固体スイッチ(例えば図1のスイッチSW3、SW4)の制御入力を駆動するために、駆動クロック(PH0)としてライン316に接続される。一実施形態では、駆動クロックPH0は1MHzの周波数を有する。1MHzといった極めて高いスイッチング速度を用いる能力は、水分により発生する絶縁抵抗の低下および漏れに起因する誤差を低減する。高い周波数クロックを用いると、回路はプロセス変数の階段状変化に対する高速応答時間を達成することができる。応答時間は2.5ミリ秒の高速にできる。
【0027】
クロック発生器300は2入力NORゲート318、320を備える。NORゲート318の一方の入力は発振器の出力310に接続され、NORゲート318の他方の入力はフリップフロップ314のQ出力に接続される。NORゲート318の出力は、同期復調を実行するスイッチを制御するために、検出器(例えば図1の検出器110)に接続するサンプリングクロック1(PH1)を備える。サンプリングクロック1は駆動クロックフェーズ1の後半の間は「高」である。NORゲート320の一方の入力は発振器の出力310に接続され、NORゲート318の他方の入力はフリップフロップ314の/Q出力に接続される。NORゲート320の出力は、同期復調を実行するスイッチを制御するために検出器(例えば図1の検出器110)に接続するサンプリングクロック2(PH2)を備える。サンプリングクロック2は駆動クロックフェーズ2の後半の間は「高」である。
【0028】
図4〜図5は、併せて、検出器回路400の例を示している。検出器回路400は図4の左側に検出器入力402を備える。検出器回路400は図5の右側に検出器出力404を備える。図4の右側のテストポイントTP1は図5の左側のテストポイントTP1に接続されている。検出器入力402は、抵抗R16、抵抗R17およびキャパシタC2を備える、トランジスタ入力バイアス回路403に接続される。トランジスタ入力バイアス回路403は、アナログ増幅器として作用するトランジスタQ1のゲート405に接続される。トランジスタ入力バイアス回路403は搬送波周波数範囲より高い周波数を含むノイズを除去する、低域通過特性を有する。一実施形態では、トランジスタQ1はNチャネルJFETを備える。別の実施形態では、NチャネルJFETはPhillips社のタイプBF861を含む。Phillips社のBF861は1MHz動作周波数および低静電容量において、ルートヘルツ当たりわずか1.5ナノボルトのノイズレベルの望ましい特性を有する。検出器回路400は、抵抗R35、R18およびC3を含むトランジスタ出力バイアス回路407を備える。トランジスタ出力バイアス回路407はトランジスタQ1の出力バイアスを提供する。
【0029】
トランジスタQ1の出力406はキャパシタC4および抵抗R21を含む段間結合回路409に接続される。段間結合回路409は、搬送波周波数範囲より低い周波数を含むノイズを除去する高域通過特性を有する。段間結合回路409は高速増幅器410の入力408に出力406を接続する。一実施形態では、高速増幅器はAnalog Device形AD8005を備える。Analog Device社のタイプAD8005は1MHzにおいてルートヘルツ当たり6ナノボルトの低ノイズ電圧を有する。増幅器410は増幅器出力412を備える。増幅器出力412は、キャパシタC10およびレジスタR24を含む高域通過回路411に接続される。高域通過回路411は搬送波周波数範囲より低い周波数のノイズを除去する。詳細には、高域通過回路411は、増幅器出力412に存在する全てのDCオフセットを除去する。高域通過回路411は、図5のTP1に接続される414に出力TP1を提供する。
【0030】
図5では、出力414(図4)は、図示されているTP1においてスイッチSW1およびSW2に接続される。スイッチSW1はサンプリングクロックPH1により制御され、スイッチSW2はサンプリングクロックPH2により制御される。スイッチSW1は第1駆動クロックフェーズの後半の間に閉じるように制御される。スイッチSW1が閉じられると、出力414はスイッチSW1を介して、抵抗R25およびキャパシタC12を含む第1低域通過フィルタ回路に接続される。スイッチSW2は第2駆動クロックフェーズの後半の間に閉じるように制御される。スイッチSW2が閉じられると、出力414はスイッチSW2を介して、抵抗R26およびキャパシタC13を含む第2低域通過フィルタ回路に接続される。スイッチSW1、SW2および第1および第2積分器はベースバンド検出器出力404に同期復調を提供する。検出器出力404は、第1および第2低域通過フィルタのRC時定数により制限される周波数応答を備えるベースバンド電圧である。検出器出力404は、図6の制御回路600におけるTP3およびTP2に接続されるテストポイントTP3とTP2との間の差動電圧(図5)である。
【0031】
図6はベースバンド電圧E2を制御する制御回路600の例を示している。テストポイントTP3とTP2との間の差動電圧(検出器出力404)は、図6の抵抗R28、R29にそれぞれ接続されている。差動電圧は、抵抗R28、R29を介して集積回路増幅器606の入力602、604に供給される。増幅器606の出力608はキャパシタC18およびキャパシタC15に抵抗R30を介して接続される。キャパシタC15はフィードバックループ方式で増幅器606の反転入力604に接続される。キャパシタC18は電圧VSに接続される。増幅器606および関連する回路要素の構成は、ベースバンド電圧E2を出力として有する積分増幅器を備える。ベースバンド電圧E2は、例えば図7に示される線形性回路などの線形性回路にライン610を介して接続される。ベースバンド電圧E2は、例えば図8に示されるスケーリング回路800などのスケーリング回路にライン612を介して接続される。ベースバンド電圧E2は図1のスイッチS4にライン614を介して接続される。
【0032】
図7は線形性補正回路700の例を示している。線形性補正回路は、抵抗R7、R8およびR9を含む抵抗回路702を備える。抵抗R7、R8は、電圧差(VD−VS)間に直列に接続された抵抗分圧器を形成し、この分圧器は出力ノード704を有する。抵抗R9は分圧器の出力ノードとベースバンドの電圧E2との間を接続する(図6のライン610)。
【0033】
一実施形態では、抵抗R7は25キロオームの抵抗値を有し、抵抗R8は68キロオームの抵抗値を有する。電圧差(VD−VS)のほぼ73%は抵抗R8の両端に生じ、電圧差(VD−VS)のほぼ27%は抵抗R7の両端に生じる。この実施形態では、抵抗R9は432キロオームの抵抗値を有する。抵抗R9の抵抗値は、約18キロオームである抵抗ブリッジのソース抵抗の約24倍である。ベースバンド電圧E2の変化は、R9によって抵抗分圧器に接続され、これによりノード704の電圧を極わずかだけ「引き込む」ことができる。増幅器706は入力としてノード704の電圧を受け取る。増幅器706は抵抗R27、R5、R6およびキャパシタC14、C11と接続され、非反転増幅器708として作用する。増幅器706はライン710上にベースバンド電圧E1を生成する。ベースバンド電圧E1はVDおよびE2の関数である。ライン710はスイッチSW3に接続される(図1)。線形性補正が必要ではない場合は、抵抗R9は省略され、ノード704からE2への接続は開放回路のままである。
【0034】
図8〜図10は図1に示される回路に接続できる回路の概略図である。図8〜図10に示される回路は、電力を供給し、且つセンサ回路からの有用な出力を受け取る制御システムとインタフェース接続される。図8に示されるスケーリング回路800はプロセス変数を表す出力を受け取る(図1のライン132)。スケーリング回路800は、反転、ゼロ点調整、および拡大縮小して、増加する検出されたプロセス変数と共に増加する拡大縮小された出力を提供する。図9に示されるスパン回路900は、スケーリング回路800からの拡大縮小された出力を受け取る。スパン回路900は、スパン設定の粗調整を提供する。図10のレギュレータ回路1000は出力スパンの精密設定を提供し、出力スパンにおける温度補償を提供する。
【0035】
図8はスケーリング回路800の例を示している。スケーリング回路800はライン802上のベースバンド電圧E2(図6のライン612から)を受け取る。スケーリング回路はライン804上に拡大縮小された出力を提供する。ライン804上の拡大縮小された出力は図9のライン902に接続される。
【0036】
スケーリング回路は反転増幅器806を備える。反転増幅器806は、集積回路増幅器812、抵抗R1、R2、R37およびキャパシタC30を含む。一実施形態では、R1=R2であり、増幅器回路は「−1」の利得を有する。
【0037】
増幅器812はライン810を介してゼロ設定回路808に接続される正入力を有する。ゼロ設定回路は調整可能な抵抗816、818を含む抵抗回路を備える。一実施形態では、調整可能な抵抗816、818は電子ポテンショメータを含む。別の実施形態では、調整可能な抵抗816、818はUSA、Arizona、ChandlerのMicrochip Technology社により製造される不揮発性ディジタルポットのタイプMCP4021を含む。ゼロ設定回路は、例えば、検出されるプロセス変数が圧力である場合、圧力ゼロでゼロ出力を提供するように使用できる。別の実施形態では、抵抗R52はサーミスタを含み、温度誤差をゼロにするための温度補償を提供する。
【0038】
図9はスパン設定回路900の例を示している。スパン設定回路900は利得を調整して、プロセス変数の選択された測定範囲に対するフルスケール電気出力を提供する。例えば、プロセス変数が圧力である場合、スパンを設定して、100psiのプロセス変数の変化に対して5ボルトの出力変化を提供するようにしてもよい。
【0039】
スパン設定回路900はスケーリング回路800の出力(図8のライン804)を受け取る。スパン設定回路900は904、906においてユーザ出力を提供する。スパン設定回路900は集積回路増幅器908を備える。集積回路増幅器908は抵抗R47、R55、R56、T57、R58、R41およびキャパシタC6、C33、C36、C38と接続され、調整可能な利得を有する非反転増幅器を形成する。抵抗R41は利得を調整するための調整可能なポテンショメータを含む。一実施形態では、抵抗R41は不揮発性ディジタルポットのタイプMCP4021を含む。
【0040】
スパン設定回路900の利得は利得の粗い設定を提供する。一方、利得の精密な設定は、図10に示されている例に関連して以下により詳細に説明されるとおり、VDのレベルを調整することにより実行できる。VDのレベルが調整されると、線形性補正回路(図7)の動作点がシフトし、プロセス変数を検出する利得を精密に調整する。線形性補正回路はVDの関数として電圧E1を出力する。線形性補正を備える実施形態では、E1はまたE2の関数である。
【0041】
図10はレギュレータ回路1000の例を示している。レギュレータ回路1000はリード線1002、1004を介して外部制御システム電力バスから電力を受け取る。一実施形態では、供給電力は約7ボルト以上の、3.45から3.65ミリアンペアの範囲の電流である。
【0042】
レギュレータ回路1000は、導体1002、1004から電力供給されるVDレギュレータ1006を備える。VDレギュレータ1006は、ライン1010上の基準電源電圧VSを基準にしてライン1008上のDC電源電圧VDを発生する。一実施形態では、VDは公称5.5ボルトである。電源電圧VDはサーミスタR20、R44により温度補償される。電源電圧VDは調整可能な抵抗R39により調整可能である。一実施形態では、調整可能な抵抗R39は不揮発性ディジタルポットのタイプMCP4021を含む。電圧VDは集積回路レギュレータ1020により調節される。一実施形態では、集積回路レギュレータ1020は、USA、California、MilpitasのLinear Technology Corporationの電圧レギュレータのタイプLT1121を含む。
【0043】
レギュレータ回路1000はアナロググラウンド電圧レギュレータ1012を含む。アナロググラウンド電圧レギュレータ1012はライン1014上にアナロググラウンド電圧を生成する。ライン1014上のアナロググラウンドは抵抗R33、R34を含む分圧器により設定されるレベルに維持される。
【0044】
レギュレータ回路1000は、VD−VS電源システムを通過する電流により駆動されるVWレギュレータ1016を備える。VWレギュレータ1016はライン1018上に電源電圧VWを発生する。電圧VWはVS基準に対して負である。VWレギュレータ1016はVD−VS電力システムに直列に接続される。一実施形態では、VWレギュレータ1016は、USA、Maine、South PortlandのFairchild Semiconductor社のBAV99ダイオードを備え、電圧VWは基準電圧VSに対して約−0.7Vである。
【0045】
図11は、室温における圧力検出回路に対する、プロセス変数の関数としての電圧E2の百分率誤差のグラフを示している。横軸1102はポンド/平方インチ絶対圧力(PSIA)の単位の圧力を表す。縦軸1104は8個のサンプル圧力検出回路に対する、電圧E2の百分率誤差(非線形性)を表す。図11に示される結果では、図示されている百分率誤差はフルスケール誤差のパーセントである。図11で明らかなとおり、線形性補正回路は大きな非線形性を補正し、個々のサンプル回路は全体として約+/−0.1%のオーダの室温百分率誤差を有する。
【0046】
図12は−40℃以上+85℃までの動作温度範囲の圧力検出回路に対する、プロセス変数の関数としての電圧E2の百分率誤差のグラフである。横軸1202はポンド/平方インチ絶対圧力(PSIA)の単位の圧力を表す。縦軸1204は8個のサンプル圧力検出回路に対する電圧E2の百分率誤差(非線形性)を表す。図12に示される結果では、図示されている百分率誤差はフルスケール誤差のパーセントである。図12で明らかなとおり、線形性補正回路は大きい非線形性を補正し、個々のサンプル回路は全体に約+/−0.5%のオーダの温度百分率誤差を有する。
【0047】
動作中は、ベースバンド電圧E1、E2の比は、例えばE2/E1=Csense/Creferenceになるように制御される。比のE2/E1は基準としてE1を用い、信号としてE2を用いることによりA/Dコンバータによりディジタル化できる。
【0048】
検出回路は、例えば加速度計、傾斜計、静電容量式センサを備える温度センサおよび荷重計といった静電容量式センサの全ての種類に対して使用できる。ADコンバータおよび超小型デバイスの追加により、システムの精度を向上でき、センサの全体特性を達成できる。
【0049】
静電容量式センサでは、検出静電容量CsキャパシタはCs=Co/(l−a*p/Pfs)により近似される関数に従う。ただしPfsはフルスケールの静電容量であり、Coはゼロ圧力での静電容量である。aは約0.5である。回路はE2/El=Cr/Csの関係を与える。これはE2/El=Cr*(l−a*p/Pfs)/Coに変換でき、基本的に圧力との線形関係を示す。しかし、実際の静電容量式圧力センサはフルスケール(範囲の上限、URL)の約0.75%の非線形性有し、放物線状ではない。回路の線形性補正は放物線状であり、いくらかの3次誤差0.1%は補正後に残される。
【0050】
回路は、2つの単極双投スイッチがE1(ほぼ固定)とVsとの間のCrおよびCsの直列接続を、E2(変数)およびVsに切り換えることにより始動する。2つのキャパシタ間のタップは信号であり、E2はAC信号ポイントをゼロボルトにするように調整される。
【0051】
検出器入力は最初にNチャネルJFETソースフォロワを通過して、高速増幅器に入力するためにインピーダンスを低減する。JFET出力上の高域通過フィルタはDCを除去し、全ての低周波数ノイズをフィルタで除去する。復調はPH0の各サイクルの後半で動作し、サイクル切換の間に発生するスイッチング過渡現象を除去する。
【0052】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されているが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明の形態および細部に様々な変更が実施されてもよいことは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】プロセス変数の静電容量式検出に有用な回路のブロック図を示している。
【図2】ベースバンドおよび搬送波周波数範囲の例を示している。
【図3】クロック発生器回路の例を示している。
【図4】図5と併せて検出器回路の例を示している。
【図5】図4と併せて検出器回路の例を示している。
【図6】ベースバンドの電圧を制御する制御回路の例を示している。
【図7】線形性補正回路の例を示している。
【図8】スケーリング回路およびゼロ調整回路の例を示している。
【図9】スパン設定回路の例を示している。
【図10】レギュレータ回路の例を示している。
【図11】室温における圧力検出回路に対するプロセス変数の関数としての百分率誤差のグラフを示している。
【図12】動作温度範囲全体にわたる圧力検出回路に対するプロセス変数の関数としての百分率誤差のグラフを示している。
【符号の説明】
【0054】
102…第1キャパシタ、104…第2キャパシタ、106…分圧器、110…搬送周波周波数範囲の検出器、116…クロック発生器、120…制御回路、124…線形性補正回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2キャパシタを含む分圧器であって、前記第1および第2キャパシタの少なくとも一方が、ベースバンド周波数範囲におけるプロセス変数により変化する静電容量を有し、前記分圧器が、搬送波周波数範囲において変調され、且つベースバンドの包絡線を有する被変調電圧を受け取る分圧器両端を有し、前記分圧器が検出器入力を提供する中央タップ接続点を有する分圧器と、
前記検出器入力の搬送波周波数範囲成分を表す検出器出力を有する検出器と、
前記検出器出力の関数として前記被変調電圧の前記ベースバンドの包絡線を制御する制御回路であって、前記制御回路が前記ベースバンド周波数範囲におけるプロセス変数出力を提供する制御回路とを備えるプロセス変数検出回路。
【請求項2】
前記制御回路が、前記検出器出力の非線形関数として前記被変調電圧の少なくとも1つを制御して、前記プロセス変数に関する非線形性に対して前記プロセス変数の出力を補償する請求項1の回路。
【請求項3】
前記被変調電圧の前記包絡線が、前記検出器の入力を生成するベースバンド周波数における前記静電容量の変化と結合している前記ベースバンド周波数における変化を有し、前記プロセス変数が前記ベースバンド内で安定しているときに平衡状態に向かうように再度平衡を取るようにする請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項4】
前記検出入力がベースバンドノイズを含み、前記検出器が前記ベースバンドノイズを除去する請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項5】
前記検出器が、
フィルタ出力を有し、前記搬送波周波数を含む通過帯域を有するフィルタと、
前記フィルタの出力を受け取り、前記フィルタ出力を復調して前記検出器出力を提供する同期復調器とを備える請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項6】
クロック出力を発生するクロック発生器を備え、
前記同期復調器は前記クロック出力の少なくとも1つの関数として復調する請求項5のプロセス変数検出回路。
【請求項7】
前記被変調電圧を変調する前記クロック出力の少なくとも1つにより制御されるスイッチを備える請求項6のプロセス変数を検出する回路。
【請求項8】
前記フィルタが多段増幅器である請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項9】
前記第1キャパシタが第1基板に配置された第1電極を備え、前記第2キャパシタが前記第1基板に配置された第2電極を備える請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項10】
前記第1および第2キャパシタが、前記検出器入力への電極接続を含む請求項9のプロセス変数検出回路。
【請求項11】
前記検出器入力への前記電極接続が、スイッチに接続されない請求項10のプロセス変数検出回路。
【請求項12】
前記第1キャパシタがプロセス変数検出静電容量を備え、前記第2キャパシタが、実質的にプロセス変数の影響を受けない静電容量を備える請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項13】
前記搬送波周波数が、固定の搬送波周波数である請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項14】
前記ベースバンド周波数が10Hz未満であり、前記搬送波周波数が1KHzより大きい請求項1のプロセス変数検出回路。
【請求項15】
前記プロセス変数検出静電容量が、少なくとも400Hzまでのベースバンドプロセス変数の変化に対応し、前記プロセス変数出力が少なくとも400Hzまでのプロセス変数の変化に対応する請求項14のプロセス変数検出回路。
【請求項16】
搬送波周波数で被変調電圧を変調することと、
検出器入力に接続された第1および第2キャパシタに前記被変調電圧を供給することと、
ベースバンド周波数で変化するプロセス変数を加えることにより前記第1および第2キャパシタの一方の静電容量を変化させることと、
前記搬送波周波数における前記検出器入力の検出される表示を検出することと、
前記検出される表示の関数として前記被変調電圧のベースバンドの包絡線を制御することとを含むプロセス変数検出方法。
【請求項17】
前記検出される表示の非線形関数として前記被変調電圧の少なくとも1つを制御することにより、前記静電容量の非線形性に対して、前記プロセス変数の関数として前記検出される表示を補償することを含む請求項16のプロセス変数検出方法。
【請求項18】
ベースバンド周波数における前記静電容量変化と結合するように、前記ベースバンド周波数における前記被変調電圧の前記振幅を変化させることにより、前記プロセス変数が前記ベースバンド内で安定しているときに前記検出器入力が平衡するようにする、請求項16のプロセス変数検出方法。
【請求項19】
前記検出出力がベースバンドノイズを含み、検出中に前記ベースバンドノイズを除去する請求項16のプロセス変数検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−531713(P2009−531713A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502910(P2009−502910)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/007395
【国際公開番号】WO2007/126731
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】