説明

非常用照明システム

【課題】非常用照明システムにおいて、2次電池の点検作業の自動化、省力化を実現し、また装置施工が容易なものとする。
【解決手段】誘導灯(照明装置)1は、誘導表示用ランプ12とこれを点灯させる点灯回路部13、停電時に電源となる2次電池14を電源線3からの電力により充電する充電回路14a、点検時間を計測するタイマ回路部(内部タイマ)16、一定点検時間毎に2次電池14による点灯動作を行い、電流や電圧が基準値以上であるかどうかを判断する点検回路部15、自己アドレスや点検結果を記憶する記憶部17、及びリモコンとの送受信用通信部11を備えている。照明装置は、内部タイマに基づき所定の点検を行い、その点検結果を記憶し、点検者からの要求により、リモコンに送信する。点検者は、数ヶ月に1回巡回を行うだけで、照明装置の目の前で点検結果を確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導灯や非常灯のように常用の電源が停電したときに2次電池などの非常用の電源でランプを点灯する非常用照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非常用の照明装置には常用電源(商用電源)からランプへの電力供給を強制的に停止して擬似的な停電状態とするためのスイッチが設けられており、点検者が装置本体から垂下されている引き紐を操作して上記スイッチをオンさせることによって、2次電池から電力供給してランプを非常点灯させることで2次電池の点検が行われている。誘導灯や非常灯のような非常用の照明装置は、火災や地震等による停電時に2次電池からなる非常用電源でランプを点灯(非常点灯)させるものであり、2次電池による非常点灯が正常に行われるか否かの点検を定期的に行うように消防庁告示及び建築基準法等で義務づけられている。消防庁や建築基準法の規定では、2次電池からの電力供給による誘導灯の場合には、20分間、又は60分間、また、非常灯の場合には30分間、それぞれランプを有効に非常点灯させなければならないことになっている。点検者は、上記引き紐に重りを吊り下げたりして上記規定期間中スイッチをオンとし、その期間にランプが有効に非常点灯可能か否かを監視する必要がある。しかも、一般に誘導灯や非常灯は建物内の複数箇所に設置されているから、それら複数の照明装置を一つ一つ見て回って点検しなければならないから、点検者にとって非常に手間の掛かる作業である。そこで、上述のような2次電池の点検作業の自動化や省力化を図った照明装置が種々提案されている。
【0003】
従来、一定期間ごとに点検開始信号を出力するタイマ手段と電源の切り替え手段と充電電流や誘導灯の電流を測定する点検手段を有した誘導灯装置が知られており、この装置は一定期間ごとに自動的に点検を行うものである(例えば、特許文献1参照)。また、中央監視制御ユニットと複数の個別非常照明ユニットをループ状に配線接続し、各個別非常照明ユニットの制御ユニットは電圧、電流検出手段を含む診断回路を有し、過去の診断結果を各制御ユニットが記憶し、中央監視制御ユニットの要求に応じて過去の診断結果を送信するシステムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2744185号公報
【特許文献2】特開平3−228497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような誘導灯装置は、装置単体で点検を行うことが可能であるものの、その点検結果を確認する点検者は、通常数ヶ月に一度巡回するのが通例であり、その間に異常が発生していた場合、いつ異常が発生したか、また、点検行為自体が正常に行われていたかどうかまでは確認することができず、点検行為に対する信頼性が低い装置となっている。
【0005】
また、特許文献2に示されるような非常照明ユニットの診断通信システムは、複数の個別非常照明ユニットをループ状に配線接続するものであり、配線施工時に多大な手間が必要であり、また、各個別非常照明ユニットの位置を中央制御監視ユニットで確認する為には、配置図とアドレスの対応表が必要である。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、2次電池の点検作業の自動化や省力化を実現でき、また装置施工が容易な非常用照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、光源となるランプと、前記ランプに電力供給する2次電池と、外部の常用電源から電力供給を受けて前記2次電池を充電する充電手段と、少なくとも常用電源が停電したときに前記2次電池からの電力供給で前記ランプを点灯させる点灯手段と、前記2次電池の所定の点検を行う点検手段と、無線の通信部とを備えた照明装置と、前記通信部を介して前記照明装置と通信を行う通信部を有したリモコンとを備え、前記照明装置は、照明装置に異常が発生したとき、異常を前記リモコンに送信する非常用照明システムである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の非常用照明システムにおいて、前記照明装置は複数備えられ、これら複数の照明装置の各々には、点検の必要性の優先順位が付与されており、照明装置に異常が発生したとき、優先順位の順に異常をリモコンに送信するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、照明装置に異常が発生したとき、異常をリモコンに送信するので、点検者は、誘導灯を通信線で結合することなく、リモコンを介して誘導灯の異常を迅速に検知することが可能となる。また、点検者は、点検手段による点検結果をリモコンを介して確認することにより保守を容易に行うことができる。また、点検が確実に行われているかどうかの確認ができ、システムに対する信頼が得られる。さらには、照明装置の目の前で、点検結果を確認することができるので、ビルの配置図を参照し、位置を確認する必要はない。また、照明装置は信号線で接続されることがないため、信号線の工事が不要であり、既存のビルに簡単に付け替え可能であり、施工性が良い。また、点検者は、照明装置からの異常発生の送信がない場合においても、数ヶ月に1回巡回を行い、リモコンを用いることにより各照明装置の状態を把握できるため、点検の手間も省力化できる。
【0010】
請求項2の発明によれば、優先順位の高い照明装置の異常を優先的に検知して迅速に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した非常用照明システムの一実施形態について図面を参照して説明する。図1は非常用照明システムの構成を示す。本実施形態における照明システムは、双方向通信が可能な通信部11を内蔵した複数台の誘導灯(照明装置)1と、各誘導灯と双方向通信が可能な通信部24や表示部23を備えたリモコン2から構成される。各誘導灯1は、電源線(常用電源、商用電源)3だけが接続されている。
【0012】
図2は誘導灯1の構成を示す。誘導灯1は、誘導表示を行うランプ12、ランプ12を点灯させる点灯回路部13、停電時に電源となる2次電池14、2次電池14を電源線3からの電力により充電する充電回路(充電手段)14a、一定の点検時間の間に2次電池14による点灯動作を行った後に、ランプ12及び2次電池14の電流や電圧が基準値以上であるかどうかを判断する点検回路部(点検手段)15、点検時間を計測するタイマ回路部(内部タイマ)16、誘導灯1の自己アドレスや点検結果を記憶する記憶部17、及びリモコンとの送受信を行う通信部11を備えている。
【0013】
図3はリモコン2の構成を示す。リモコン2は、誘導灯1に点検命令などを送信するための操作を行う操作部21、操作部21からの指令に基づいて送信命令等の動作を制御する制御部22、例えば点検結果を表示する表示部23、及び誘導灯1との双方向通信を行う通信部24から構成されている。この双方向通信の媒体は、例えば、赤外線を用いればよく、誘導灯の通信部11、及びリモコンの通信部24は、共に赤外線発光部と赤外線受光部とを有している。
【0014】
上述の誘導灯1を設置した直後に行われる非常用照明システムにおけるアドレス設定について説明する。本システムにおいて、誘導灯1が施工された時点では、各誘導灯1は電源線3で接続されただけの状態となっている。このため、まず、各誘導灯1を識別するため、各誘導灯1のアドレスの設定が行われる。誘導灯1のアドレスは、例えば、グループ名とグループ内の個別番号とからなっている。アドレスの設定は、リモコン2の表示部23にグループ名と個別番号を表示してリモコン内で設定した後、そのアドレス情報を誘導灯1に送信して行われる。アドレスを受信した誘導灯1は、送信されたアドレスを誘導灯内の記憶部17に記憶し、設定完了したことをリモコン2に返信する。このような設定動作を各誘導灯1について行い、各誘導灯1のアドレスが設定される。
【0015】
誘導灯1における2次電池14の性能点検の動作について説明する。図4は点検動作のフローチャートを示す。各誘導灯1の点検は、点検者がリモコンを用いて誘導灯1に最初の点検命令を送信することによって開始される(#1)。点検命令を受信した誘導灯1は、誘導灯1の電源が投入されてから一定の充電時間(例えば24時間)が経過しているかどうかの確認を行う(#2)。充電時間が経過していなければ(#2でNo)、誘導灯1から点検不可信号がリモコン2に送信され、点検フローが終了する(#3)。これは、電池が一定時間以上充電されていないと正確に点検できないことによる。
【0016】
充電時間が経過していれば(#2でYes)、電源が電源線3から2次電池駆動に切り替えられ(#4)、点検のために必要な時間経過を計測するため、タイマ回路部16における点検時間タイマ(T1)が時間計測を開始する(#5)。誘導灯1の点検回路部15は、点検時間タイマの計測値T1が所定の点検時間として20分以上経過するまで待機状態となり(#6でNo)、20分が経過して点検時間タイマが終了すると(#6でYes)、2次電池14の電圧を測定し(#7)、測定電圧値が基準値以上であるかどうかを判断して、その合否を記憶部17に記憶する(#8)。次に、タイマ回路部16における検査間隔タイマ(T2)の時間計測が開始される(#9)。その後、誘導灯1の点検回路部は、検査間隔タイマの計測値T2が検査間隔である3ヶ月以内である場合(#10でNo)、点検待機状態となり、計測値T2が3ヶ月経過した時点で(#10でYes)、上記点検を繰り返す。
【0017】
点検者は、例えば、半年に1回リモコン2を用いて各誘導灯1から点検結果の収集を行う。リモコン2からの点検結果要求信号を受けた誘導灯1の点検回路部15は、記憶部17に記憶している点検結果を通信部11を介してリモコン2に送信する。点検者は、送信された内容がリモコン2の表示部23に表示されるのを見て、巡回に来ていない間に誘導灯1の点検回路部15によって行われた点検の結果、及び点検そのものが確実に行われたかどうかについて把握することができる。このような非常用照明システムによれば、点検が確実に行われているかどうかを、巡回によって把握でき、システムに対する信頼を確保することができる。また、点検のために巡回する回数を低減できるので、点検費用を削減できるという効果がある。
【0018】
次に、本発明に係る非常用照明システムの他の実施形態について説明する。本実施形態のシステム構成は、前述の図1に示したものと同様である。前述のシステムとの違いは、点検の内容が1種類ではなく複数の点検が実施される点であり、誘導灯1の点検回路部15のソフトが異なる。図5は点検のフローチャートを示す。誘導灯1にリモコン2から点検命令が送信されると(#11)、点検回路部15は、誘導灯1の電源が投入されてから24時間経過しているかどうかの確認を行い、経過していなければ待機状態となり(#12でNo)、経過していれば(#12でYes)、定期点検を開始する(#13)。ここで、定期点検とは、例えば、20分間の電池からの放電を伴う点検である。
【0019】
定期点検が開始されると、誘導灯1の電源が電源線3から2次電池14に切り替えられ、タイマ回路部16の定期放電タイマ(TH)が時間計測を開始する(#14)。点検回路部15は、計測値THが20分経過するまで待機し(#15でNo)、20分経過すると(#15でYes)、2次電池14の電圧を測定し、電圧値が基準値以上であるかどうか合否判定をして、電源を2次電池14から電源線3に切り替え、その後、合否判定結果を定期点検結果として記憶部17に記憶する(#16)。
【0020】
続いて、タイマ回路部16の定期間隔タイマ(TK)が時間計測を開始する(#17)。計測値TKが検査間隔である3ヶ月以内の場合は(#18でNo)、日常点検を開始する(#19)。ここで、日常点検とは、例えば、1週間に1度の頻度で、例えば1分間の短時間放電を行うものであり、電池寿命末期を検知するための点検である。この日常点検が開始されると、電源が電源線3から2次電池14に切り替えられ、タイマ回路部16の日常放電タイマ(NH)が時間計測を開始する(#20)。点検回路部15は、計測値NHが1分経過するまで待機し(#21でNo)、1分経過すると(#21でYes)、2次電池14の電圧を測定し、電圧値が基準値以上であるかどうか合否判定をして、電源を2次電池14から電源線3に切り替え、その後、合否判定結果を定期点検結果として記憶部17に記憶する(#22)。
【0021】
続いて、タイマ回路部16の日常間隔タイマ(NK)が時間計測を開始する(#23)。計測値NKが、検査間隔である、例えば1週間以内の場合は(#24でNo)、常時監視を行う(#25)。ここで、常時監視とは、誘導灯への通電中に常に行われる監視であり、ランプ電流、及び2次電池14の充電電流と充電電圧を測定し、測定結果に異常があれば、異常内容を記憶部17に記憶する動作である。また、同時に、前出の定期間隔タイマ(TK)をチェックし(#26)、計測値TKが検査間隔である3ヶ月以内である場合は(#26でNo)、日常間隔タイマ(NK)が引き続きチェックされる(#24)。計測値TKが3ヶ月経過している場合は(#26でYes)、定期点検が実施される(#13)。また、日常間隔タイマ(NK)をチェック中に、1週間が経過すれば(#24でYes)、日常点検を開始する(#19)。
【0022】
上述のような点検動作を、誘導灯1が行うことにより、点検時間間隔及び点検内容の異なる複数の点検を行うことができる。点検者は、例えば、半年に1回リモコン2を用いて点検結果の収集を行う。リモコン2からの点検結果要求信号を受けた誘導灯1の点検回路部15は、記憶部17に記憶している点検結果を通信部11を介してリモコン2に送信する。点検者は、送信された複数種類の点検内容がリモコン2の表示部23に表示されるのを見て、巡回に来ていない間に誘導灯の点検回路部15によって行われた複数種類の点検の結果、及び点検そのものが確実に行われたかどうかについて把握することができる。このような非常用照明システムによれば、短い時間間隔で点検が行われるため、いつの時点で異常が発生したかを、前述の実施形態による非常用照明システムによるよりも、時間精度を上げて確実に把握することができる。
【0023】
次に、本発明に係る非常用照明システムのさらに他の実施形態について説明する。本実施形態のシステム構成は、前出の図1に示したものと同様である。本実施形態におけるリモコンについて説明する。図6はリモコン2の構成を示す。このリモコン2は、前出の図2に示したリモコンにデータ記憶用の記憶部25を制御部22に接続して付加した構成となっている。リモコン2は、各誘導灯1のアドレス情報に基づいて各誘導灯1の過去の履歴をこの記憶部25に記憶することができる。本実施形態における誘導灯1は、点検命令がリモコン2から送信された時点から、上述した点検内容と同様の点検を開始する。
【0024】
図7及び図8は、リモコン2の表示部23にタッチパネル方式にて表示された画面及び操作部を示す。リモコン2が通電されたとき、図7に示すように、表示部23にテーブル31及び操作用の各種ボタンが表示される。操作用のボタンは、例えば、アドレス設定ボタン32、点検結果確認ボタン33,履歴確認ボタン34、矢印ボタン35,及び決定ボタン36であり、表示されたボタンに触ることによって操作が行われる。アドレス設定ボタン32は誘導灯の施工時にアドレスを設定するために用いるボタンである。点検結果確認ボタン33は誘導灯の近くで操作することによって誘導灯が記憶している点検結果を受信し、リモコンに表示して確認するボタンである。履歴確認ボタン34はリモコン2の記憶部25に記憶された検査履歴を表示させて確認するボタンである。矢印ボタン35及び決定ボタン36は表示部におけるカーソル35cの移動及び選択決定をするボタンである。
【0025】
テーブル31は、各誘導灯のアドレスを示しており、既にアドレス設定が行われた誘導灯1のアドレスのみがグループ名とグループ内の個別番号によって示されている。点検者が巡回時に、このようなリモコン2を持って誘導灯1の近くに行き、点検結果確認ボタン33を操作することによって誘導灯1から点検結果が受信され記憶部25に記憶される。その時、誘導灯1の報告した点検内容が異常を示す内容である場合、その誘導灯1を示すアドレスの個別番号が点滅して、誘導灯1の異常が点検者に知らされる。このような異常を示す点滅があるとき、点検者が操作部の矢印ボタン35を用いて、点滅するアドレスの個別番号にカーソル35cを移動させ、決定ボタン36を用いてそのアドレスを選択し、さらに履歴確認ボタン34を押すと、図8に示す履歴表示画面37となる。
【0026】
履歴表示画面37には、指定された誘導灯のアドレスと点検履歴が表示される。結果表示画面ボタン38は点検結果内容が多い場合に画面スクロールしたり、後述の他の画面からこの履歴表示画面を表示するためのボタンである。履歴変更ボタン39は履歴を点検者が追加記入などにより書き換える場合に用いるボタンである。表示される履歴内容は、例えば点検日時と点検内容とその結果である。これらの履歴は、リモコン2の記憶部25に記憶されており、誘導灯1の記憶部17から取得した点検結果であり、点検結果受信時にアドレスに基づいてリモコンの記憶部25にある過去の履歴に追加されたたものである。点検者は、前回巡回時以降の点検状態だけでなく、器具を施工したときからの履歴を確認できるため、より詳細な器具状態を理解でき、この履歴をもとに、例えば2次電池14の次回交換時期を推測できる。このように、点検者は、点検の手間を省略できるばかりでなく、より詳細な点検状況を把握できるため、部品の交換時期を予測でき、誘導灯1の保守において迅速な対応が可能となる。
【0027】
次に、本発明に係る非常用照明システムのさらに他の実施形態について説明する。本実施形態のシステム構成は、前出の図1に示したものと同様である。本システムにおいては、点検結果として、誘導灯1の電気的な特性だけでなく外観上の点検項目が点検履歴に記憶される。リモコンは、図6に示したものと同様であり、データ記憶用の記憶部25を有する。誘導灯1は、点検命令がリモコン2から送信された時点から前述のいずれかと同様の点検を開始する。
【0028】
図9乃至図11は、リモコン2の表示部23にタッチパネル方式にて表示された画面及び操作部を示す。点検者は、巡回時に各誘導灯から電気的な点検結果(例えば、2次電池電圧の計測による合否判定結果、ランプ電流の確認結果など)を受信して、図9に示すように履歴画面37により各誘導灯の状態を把握できる。また、リモコンの制御部22は、点検者による誘導灯の外観上の確認内容を手動で入力するための検査処理手段を有している。この検査処理手段を機能させるために、点検者は、外観検査ボタン40を押し、図10に示す画面に移行して、カーソル35cを操作し、点権者が行った外観チェックの内容を手順に沿って履歴に記憶させることができる。すなわち、外観検査ボタン40が押されたとき、リモコンの表示画面には図10に示す検査手順41が表示される。点検者が外観検査を行い、表示画面の矢印ボタン25でカーソル35cを動かしてYESかNOを選択し、決定ボタン36又は設定ボタン42で確定すると、その結果が、自動的にリモコン2の当該誘導灯1の履歴に追加される。
【0029】
また、前出の図7における点検結果確認ボタン33を操作することによって誘導灯1が記憶している点検結果を受信時に、誘導灯1の点検結果内容に、例えば2次電池の測定電圧値が規準値以下であるなどの異常の判断があった場合は、図11に示す交換手順44が表示される。点権者は、部品交換などの所定の保守作業を行い、この交換手順に沿って、前記同様にYESかNOを選択すると、その結果が、自動的にリモコンの当該誘導灯の履歴に追加される。
【0030】
このような非常用照明システムによれば、リモコンが記憶する照明装置の履歴として、誘導灯が行う電気的な検査結果だけでなく、点検者が手動で行う外観上の点検結果を履歴に追記でき、より詳細な器具の情報が把握される。また、点検者は、画面に表示される手順に沿って点検を行えばよいので、検査漏れがなく、より確実な点検ができる。
【0031】
次に、本発明に係る非常用照明システムのさらに他の実施形態について説明する。図12は本システムの誘導灯配置施工例を示す。本実施形態におけるリモコンは、図6に示したものと基本構成は同様であるが、通常はフロアの一角に設置されている(リモコン60)点、及び後述するように電波による通信部を有する点が異なる。図12中に示される黒丸●が、施工された各誘導灯を示す。各誘導灯はグループ名と個別番号からなるアドレスにより、例えばアドレス7−1の誘導灯1ように、識別して表示されている。誘導灯1には、その配置場所に応じて、優先順位が設けられている。例えば、アドレス2−6、5−3、7−1、1−1の誘導灯は、出入口Eに設けられているため、非常時に人が集中する場所であり、他の誘導灯よりも重点的に検査して保守が行われる必要がある。
【0032】
本システムにおいて、優先順位の高い誘導灯1は、誘導灯1に異常が発生した場合、自らリモコン60に異常を知らせる機能を有している。そのため、優先順位の高い誘導灯1は、通信部11に電波による小電力無線の送受信部を備えており、リモコン60も通信部24に電波による小電力無線の送受信部を備えている。また、これらの誘導灯1は、点検命令がリモコン60から送信された時点から前述のいずれかと同様の点検を行っている。そして、例えば、優先順位の高いアドレス2−6、5−3、7−1、1−1の誘導灯1は、点検結果が異常であると自発的に異常を示す信号電波を発信し、図12に示されるフロアの端に配置された、電波受信機を内蔵しているリモコン60に送信する。異常信号を受信したリモコン60の表示部23は、図13に示されるように、誘導灯のアドレステーブル31において異常信号を送信した誘導灯のアドレス部分に例えば点滅表示●をすると共に、異常があったことを音声で点検者に知らせるようになっている。本非常用照明システムによれば、誘導灯1を通信線で結合することなく、誘導灯1の異常を迅速に検知することが可能となる。
【0033】
なお、本願発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上記各実施例では、リモコンと各誘導灯の間で双方向通信を行い、各誘導灯のアドレス情報及び点検結果情報を含むものを示したが、リモコンを各誘導灯の位置する場所に持っていき、通信する場合には、少なくとも点検結果が通信されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る非常用照明システムの構成図。
【図2】同上システムを構成する誘導灯の構成図。
【図3】同上システムを構成するリモコンの構成図。
【図4】同上システムにおける点検動作のフローチャート。
【図5】本発明の他の実施形態に係る非常用照明システムにおける点検動作のフローチャート。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係る非常用照明システムを構成するリモコンの構成図。
【図7】同上リモコンの表示画面を示す図。
【図8】同上リモコンの表示画面を示す図。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係る非常用照明システムを構成するリモコンの表示画面を示す図。
【図10】同上リモコンの表示画面を示す図。
【図11】同上リモコンの表示画面を示す図。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係る非常用照明システムにおける誘導灯配置施工図。
【図13】同上システムにおけるリモコンの表示画面を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1 誘導灯(照明装置)
2,60 リモコン
3 電源線(常用電源)
11 通信部
12 ランプ
13 点灯回路部(点灯手段)
14 2次電池
14a 充電回路部(充電手段)
15 点検回路部(点検手段)
16 タイマ回路部(内部タイマ)
24 通信部
25 記憶部(記録手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源となるランプと、前記ランプに電力供給する2次電池と、外部の常用電源から電力供給を受けて前記2次電池を充電する充電手段と、少なくとも常用電源が停電したときに前記2次電池からの電力供給で前記ランプを点灯させる点灯手段と、前記2次電池の所定の点検を行う点検手段と、無線の通信部とを備えた照明装置と、
前記通信部を介して前記照明装置と通信を行う通信部を有したリモコンとを備え、
前記照明装置は、照明装置に異常が発生したとき、異常を前記リモコンに送信することを特徴とする非常用照明システム。
【請求項2】
前記照明装置は複数備えられ、これら複数の照明装置の各々には、点検の必要性の優先順位が付与されており、照明装置に異常が発生したとき、優先順位の順に異常をリモコンに送信することを特徴とする請求項1に記載の非常用照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−220688(P2007−220688A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126529(P2007−126529)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【分割の表示】特願2003−55906(P2003−55906)の分割
【原出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】