説明

非接触データキャリア読み取りシステム

【課題】低コストかつ簡単な構成で、電界強度を電波法の制約の範囲内に保ち、かつ、応答性を損なうことなく、データキャリアに対し同じタイミングで交信可能な領域を拡大することが可能な非接触データキャリア読み取りシステムを提供する。
【解決手段】質問情報を生成し、応答電磁波から所定の識別情報を認識する読み取り駆動制御部3と、読み取り駆動制御部3で生成された質問情報を電磁波としてデータキャリア11に送信し、データキャリア11からの応答電磁波を受信する送受信アンテナ2を有する非接触データキャリア読み取りシステムにおいて、送受信アンテナ2を複数備えるとともに読み取り駆動制御部3で生成された質問情報を分配して複数の送受信アンテナ2に送信する分配器5を有する。複数の送受信アンテナ2と相互誘導可能な位置に該送受信アンテナと同一の周波数で共振する誘導アンテナ7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)システムにおいて用いられる電磁波を介して非接触でデータキャリアに記録された情報の読み取り等を行う非接触データキャリア読み取りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6はRFIDシステムの基本構成の一例を示すブロック図である。
RFIDシステムは、質問器であるデータキャリア読み取り装置1と、応答器であるデータキャリア11を有して構成されている。
データキャリア11は、質問電磁波を受信すると共に応答電磁波を送信する送受信アンテナ12と、送受信回路部13aとデータを書き換え可能なメモリ13部bとを有するICチップ13とを、軽薄短小で携帯可能に形成された合成樹脂製外装体(図示省略)に内蔵して構成されている。
送受信アンテナ12は、例えば、巻き線コイルやループ状のもの、又はプリント基板に形成されたものなどで指向性を有するように構成されている。
送受信回路部13aは、送信回路13a−1と、受信回路13a−2と、送受信アンテナ12を介して送信及び受信するための回路(図示省略)や送信信号および受信信号を処理するための回路(図示省略)を備えている。
【0003】
データキャリア読み取り装置1は、質問電磁波を送信すると共に応答電波を受信する送受信アンテナ2と、送受信回路部3aとコントローラ3bとを有する読み取り駆動制御部3とを有して構成されている。
送受信アンテナ2は、例えば巻き線コイルやループ状のもの、又はプリント基板に形成されたものなどで指向性を有するように構成されている。
送受信回路部3aは、送信回路3a−1と、受信回路3a−2と、送受信アンテナ2を介して送信及び受信するための回路(図示省略)や送信信号および受信信号を処理するための回路(図示省略)を備えている。
【0004】
コントローラ3bは、データキャリアに記録されている情報の入力をするためのアンテナ駆動を制御するプログラムが組み込まれたマイクロコンピュータで構成されている。
そして、データキャリア読み取り装置1は、ホストコンピュータ等の上位の関連設備4と接続され、識別情報を取得するための端末装置として固定した状態で設けられている。
【0005】
そして、RFIDシステムでは、データキャリア読み取り装置1は、コントローラ3bからの制御信号に基づいて、送信回路3a−1を介して質問信号を送受信アンテナ2に出力し、送受信アンテナ2が質問信号を電磁波として送信する。
データキャリア11は、送受信アンテナ2からの質問電磁波を送受信アンテナ12で受信し、受信回路13a−2を介して質問信号を抽出しメモリ13bから質問信号の内容に応答するデータを読み出し、送信回路13a−1を介して応答信号を送受信アンテナ12に出力し、送受信アンテナ12が応答信号を電磁波として送信する。
データキャリア読み取り装置1は、データキャリア11から送信された応答電磁波を送受信アンテナ2で受信し、受信回路3a−2を介して応答信号をコントローラ3bに送信する。
コントローラ3bは応答信号から所定の識別情報及びその他の関連情報を抽出し、上位の関連設備4からの入出力命令に応じて情報を送信する。
【0006】
しかるに、従来、RFIDシステムにおけるデータキャリア読み取り装置においては、例えば図7に示すように、1つの読み取り駆動制御部3に対し1本の送受信アンテナ2を備えて構成されたものが多い。このようなデータキャリア読み取り装置では、データキャリアとの交信可能な範囲は、送受信アンテナ2の大きさや読み取り駆動制御部3を介して送受信アンテナ2で出力する電界強度に依存する。
【0007】
上記のような構成のデータキャリア読み取り装置において、データキャリアとの交信可能な領域を拡大するためには、ループ状に配線されたアンテナの径を大きくすることが考えられる。しかし、アンテナ形状を大きくすると、ループアンテナの電界強度が強くなりすぎて電波法における「誘導式読み書き通信設備」に適合できなくなる。質問電磁波の電界強度は電波法の規定される値を上回るようにすることはできず、アンテナからの電界強度で制限されてくる。
このため、RFIDシステムに適用可能なアンテナの1本あたりの大きさは、1m×50〜60cm程度である。RFIDシステムにおいてそれを上回る大きさのアンテナを用いることは難しい。
従って、送受信アンテナを1本設けて構成したデータキャリア読み取り装置では、広範囲な交信領域を得ることができない。
【0008】
また、データキャリアとの交信可能な領域を拡大するための他の方策としては、例えば図8に示すように、読み取り駆動制御部3及び送受信アンテナ2を複数組設けることが考えられる。
しかるに、読み取り駆動制御部及び送受信アンテナを複数組設けたデータキャリア読み取り装置が、例えば、次の特許文献1の図7に開示されている。
【特許文献1】特開2003−84063号公報
【0009】
特許文献1の図7に開示のデータキャリア読み取り装置によれば、送受信アンテナを1本設けて構成したデータキャリア読み取り装置に比べて、アンテナ本数倍の交信領域が得られる。
【0010】
しかし、特許文献1の図7に開示のデータキャリア読み取り装置では、送受信アンテナを1本設けて構成したデータキャリア読み取り装置に比べて、製造コストが増大してしまう。また、各送受信アンテナの入出力の切り替え制御の負担も増大する。
このため、特許文献1の図7に開示されたデータキャリア読み取り装置では、コスト面で不利である。
【0011】
また、データキャリア読み取り装置において、図9に示すように、1つの読み取り駆動制御部3に対して複数本の送受信アンテナ2を設けるとともに、アンテナ分配器5を設けて、読み取り駆動制御部3からの質問信号を複数本の送受信アンテナ2に分配することが考えられる。
しかし、アンテナ分配器を用いた場合、各アンテナから放射される電力は、分配した本数分の一に低減される。このため、分配器を介して分配する送受信アンテナの本数を所定数以上増やすと、交信距離が大幅に縮減されてしまい、データキャリアとの交信が可能となる送受信アンテナの利得を得ることができなくなる。
このため、送受信アンテナを複数本設け、アンテナ分配器で質問信号を複数の送受信アンテナに分配する構成では、データキャリアとの交信領域の拡大には限界がある。
【0012】
そこで、図10に示すように、アンテナ切替器6を用いて、交信領域内における所定領域ごとに別個の送受信アンテナを設け、それぞれの送受信アンテナを切り替えることが考えられる。
しかるに、例えば、上記した特許文献1の図1には、1つの読み取り駆動制御部に対し、送受信アンテナを複数本設けると共に送受信アンテナを時間制御で切り替える切替器を設け、時間制御で切り替えた送受信アンテナに対し、最大電力の質問電磁波を出力するデータキャリア読み取り装置が提案されている。
【0013】
そして、特許文献1の図1に開示のデータキャリア読み取り装置は、時間分割で順次、複数の送受アンテナのそれぞれに最大出力の質問信号を出力するようになっている。このため、特許文献1の図1に開示のデータキャリア読み取り装置によれば、データキャリアとの交信領域を拡大することができ、しかも、1本の送受信アンテナを設けた構成と同等の交信距離を維持できる。
【0014】
しかし、特許文献1の図1に開示のデータキャリア読み取り装置では、送受信アンテナの駆動を時間差を設けて切り替え制御しなければならず、交信領域全域に対して同じタイミングで送受信アンテナから質問電磁波を送信することができない。このため、交信領域内の位置によっては、時間のずれを原因としてデータキャリアとの交信ができない場合が生じる可能性があり、安定した交信ができない。
また、特許文献1の図1に開示のデータキャリア読み取り装置のように、複数のアンテナを時間分割で切り替え制御するのでは構成が複雑化してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、従来のRFIDシステムにおける非接触データキャリア読み取りシステムでは、低コストかつ簡単な構成で、データキャリアに対し時間のずれなく交信可能な領域を拡大することが難しかった。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、低コストかつ簡単な構成で、電界強度を電波法の制約の範囲内に保ち、かつ、応答性を損なうことなく、データキャリアに対し同じタイミングで交信可能な領域を拡大することが可能な非接触データキャリア読み取りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明による非接触データキャリア読み取りシステムは、質問情報を生成するとともに応答電磁波から所定の識別情報を認識する読み取り駆動制御部と、前記読み取り駆動制御部で生成された質問情報を電磁波としてデータキャリアに送信するとともに該データキャリアからの応答電磁波を受信して前記読み取り駆動制御部に送信する送受信アンテナを有する非接触データキャリア読み取りシステムにおいて、前記送受信アンテナを複数備えるとともに、前記読み取り駆動制御部で生成された質問情報を分配して前記複数の送受信アンテナに送信する分配器を有し、さらに、前記複数の送受信アンテナと相互誘導可能な位置に該送受信アンテナと同一の周波数で共振する誘導アンテナを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明の非接触データキャリア読み取りシステムにおいては、前記誘導アンテナによる電磁波の誘起レベルを制御する誘導アンテナ制御手段を備えるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の非接触データキャリア読み取りシステムにおいては、前記読み取り駆動制御部が、送信回路と受信回路を有し、前記複数の送受信アンテナが、前記送信回路に接続するアンテナと、前記受信回路に接続するアンテナとで構成され、前記誘導アンテナが、前記送信回路に接続するアンテナ及び前記受信回路に接続するアンテナと相互誘導可能な位置に一本以上設けられているのが好ましい。
【0020】
また、本発明の非接触データキャリア読み取りシステムにおいては、前記誘導アンテナ制御手段が、前記誘導アンテナのQ、共振周波数、偏波面、又は位相を制御する機能を備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、低コストかつ簡単な構成で、電界強度を電波法の制約の範囲内に保ち、かつ、応答性を損なうことなく、データキャリアに対し同じタイミングで交信可能な領域を拡大することが可能な非接触データキャリア読み取りシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施形態の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。
アンテナを用いた送受信において、アンテナの交信領域の近傍に金属部材が存在すると、アンテナから発する磁界により電流が誘起され、磁界が乱れて交信が阻害され易くなってしまう。
例えば、複数のアンテナを並べて配置すると、各アンテナからの電磁波が干渉しあうことで、データキャリアの読み取りが制限されることがある。このため、従来のRFIDシステムにおいては、アンテナ同士を個々にシールドし、あるいは各アンテナ間の距離を離してアンテナによる干渉を避けるようにしていた。
【0023】
しかるに本発明では、敢えてこの交信阻害の原因となりうる金属部材を交信領域の近傍に配置し、送受信アンテナの発する磁界により電流が誘起される現象を逆に交信領域の拡大に利用したものである。即ち、本件出願人は、電流が誘起される金属部材を送信アンテナと同じ周波数で共振する誘導アンテナで構成すれば、交信が阻害されることなく、交信領域を拡大することができるという着想に至った。
なお、電磁波の干渉の度合いは、マイクロコンピュータを用いて制御したり、個別の部品で調整して干渉の度合いを最適化することで、データキャリアとの交信状態を最適化することが可能である。
【0024】
本発明の非接触データキャリア読み取りシステムのように、データキャリア読み取り装置に分配器および複数の送受信アンテナを設けるとともに、各送信アンテナと相互誘導可能な位置に同一の周波数で共振する誘導アンテナを設ければ、複数の送受信アンテナから発する電磁波に誘導アンテナが共振して送受信アンテナと同じ周波数の電磁波を発する。このため、データキャリアとの交信可能な領域を拡大することができる。
【0025】
また、本発明の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、複数の送受信アンテナから電磁波を発すると同時に誘導アンテナが共振する。従って、交信領域内において電磁波の送信が時間制御される従来の特許文献1の図1に開示されたシステムとは異なり、広い交信可能領域内のいずれの場所においても、常時一定の質問電磁波を送信しデータキャリアとの交信を行うことができる。
【0026】
また、本発明の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、複数本の送受信アンテナに対し分配器と誘導アンテナを設ければよく、読み取り駆動制御部を複数個設ける必要がなく、複数本の送受信アンテナを時間分割制御で切り替えるための手段を設ける必要もない。このため、交信領域を拡大するための構成が簡単でコストも抑えることができる。
【0027】
また、本発明のデータキャリア読み取りシステムにおいて、前記誘導アンテナのQ、共振周波数、偏波面、又は位相など前記誘導アンテナによる電磁波の誘起レベル(即ち、干渉の度合い)を制御する誘導アンテナ制御手段を備えれば、必要に応じてデータキャリアとの交信領域や誘導の干渉具合を調整することができる。
【0028】
誘導アンテナ制御手段としては、マイクロコンピュータや、パーソナルコンピュータなどCPUを搭載した装置を用い、誘導アンテナのQや共振周波数をRFIDシステムが必要とする通信範囲に最適となるように制御するとよい。なお、誘導アンテナの制御を手動制御とし、個別の部品を調整することで干渉の度合いを調整してもよい。
【0029】
誘導アンテナのQや共振周波数を変化させるとアンテナのゲインや選択性が変化する。
理論上は, Q=ωL/R で表わされる。このため、R(抵抗)を変化させるとある範囲でQが制御出来る。
また、アンテナは、特定の周波数を最適に送受信するように設計されていて、共振周波数fは、

で表される。
このことから誘導アンテナのL(インダクタ)やC(コンデンサ)を変化させると共振周波数は変化する。
具体的には、Rを切り替えたりCを可変させると共振周波数やQは変化する。
マイクロコンピュータ等を使用して制御する場合は、Cを可変容量(バリキャップ)として共振周波数を可変にできる。また、手動制御の場合は、Cは可変トリマーとし、Rはボリュームを使用する。
【0030】
また、偏波面を制御する場合は、ギアやモータ等を介して誘導アンテナの配置を垂直方向や平行方向に調整すれば、磁界方向を変えることができる。
さらには、誘導アンテナの位相を制御する場合は、アンテナに流れる高周波電流の位相を制御する。
【0031】
また、本発明の非接触データキャリア読み取りシステムにおいて、前記読み取り駆動制御部が、送信回路と受信回路を有し、前記複数の送受信アンテナが、前記送信回路に接続するアンテナと、前記受信回路に接続するアンテナとで構成され、前記誘導アンテナが、前記送信回路に接続するアンテナ及び前記受信回路に接続するアンテナと相互誘導可能な位置に一本以上設けられるように構成すれば、誘導アンテナを含めて各アンテナは相互誘導されるため、いずれのアンテナもデータキャリアとの送受信が可能である一方、送信時に読み取り駆動制御部から出力する電気エネルギーは送信回路に接続されたアンテナのみで足りる。このため、読み取り駆動制御部からの送受信アンテナへの出力を増大させることなく、データキャリアとの交信可能な領域をより一層増大させることができる。
【0032】
なお、本発明のシステムに用いるデータキャリア読み取り装置は、データキャリアに対する読み込み機能を備えた装置に限定されるものではなく、読み込み及び書き込み機能を備えた装置も含まれる。
また、データキャリア読み取り装置の内部の構成は、図示の構成に限定されるものではなく、既知のデータキャリア読み取り装置のいずれの構成も適用できる。
なお、本発明の非接触データキャリア読み取りシステムにおいては、誘導アンテナは、送受信アンテナと相互誘導可能な位置であれば、送受信アンテナの間に限定されず、どのような位置に配置してもよい。また、誘導アンテナの配置は2次元配置に限定されず3次元配置でもよいが、反射波を少なくするような配置が望ましい。
【0033】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。なお、図6〜図10に示したシステムにおける構成と同じ構成の部材については、同じ符号を付し、その部材内部の構成の図示及び説明は省略する。
【実施例1】
【0034】
図1は本発明の実施例1にかかる非接触データキャリア読み取りシステムの概略構成を示すブロック図である。
実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムは、読み取り駆動制御部3と、アンテナ分配器5と、複数の送受信アンテナ21〜2nと、誘導アンテナ71〜7nを有して構成されている。
【0035】
アンテナ分配器5は、複数の送受信アンテナ21〜2nと接続されている。そして、図1において省略した送信回路からの出力を各送受信アンテナ21〜2nに分配するとともに、各送受信アンテナ21〜2nで受信した出力を合成して図1において省略した受信回路に送信するように構成されている。
なお、送受信アンテナ21〜2nの本数は、アンテナ分配器5を介して分配される個々の送受信アンテナへの電力の出力レベルが、データキャリア11と交信可能な利得を維持可能な範囲内で設定されている。
誘導アンテナ71〜7nは、送受信アンテナ21〜2nと相互誘導可能な位置に配置されている。また、誘導アンテナ71〜7nは、送受信アンテナ21〜2nで生じた磁界により電界が誘起され、送受信アンテナ21〜2nと同じ周波数で共振するようになっている。
関連設備4は、パーソナルコンピュータ等、CPUを搭載した装置からなり、読み取り駆動制御部3に接続し、図1において省略した送信回路による質問信号の生成駆動を制御するとともに、図1において省略した受信回路からの応答信号から識別情報を含む所望の情報を抽出する機能を備えている。
【0036】
このように構成された実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムでは、読み取り駆動制御部3内の図1において省略した送信回路を介して生成された質問信号が、分配器5を介して各送受信アンテナ21〜2nに分配される。各送受信アンテナ21〜2nに質問信号が出力されると、各送受信アンテナ21〜2nの発する磁界により、それらのアンテナと相互誘導可能な位置に配置された誘導アンテナ71〜7nに電流が誘起される。誘導アンテナ71〜7nは、送受信アンテナ21〜2nと同じ周波数で共振して電磁波を発する。
このため、データキャリア11に対しては、送受信アンテナ21〜2n及び誘導アンテナ71〜7nから質問電磁波を送信する。
【0037】
一方、データキャリア11からの応答電磁波は、送受信アンテナ21〜2n及び誘導アンテナ71〜7nのいずれかのアンテナで受信される。誘導アンテナ71〜7nで受信された場合、送受信アンテナ21〜2nは、誘導アンテナ71〜7nと同じ周波数で共振して応答電磁波を受信する。応答電磁波は、分配器5を通り、読み取り駆動制御部3内の図1において省略した受信回路に出力され、受信回路を介して応答信号に信号処理される。応答信号は、図1において省略したコントローラを介して所定の識別情報及びその他の関連情報が抽出され、関連設備4からの入出力命令に応じて送信される。
【0038】
このため、実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、データキャリアとの交信可能領域を複数の送受信アンテナ及び誘導アンテナの本数分拡大することができる。
他方、実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムでは、誘導アンテナ71〜7nは、読み取り駆動制御部3と接続しておらず、送信回路からのアンテナ駆動のための電力が出力されない。このため、電界強度は電波法で規定されている値を超えることはない。
【0039】
また、実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、送受信アンテナと誘導アンテナが配置された電磁波の交信領域内であればいずれの場所においても、同じタイミングでデータキャリアと交信することができる。
また、実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、読み取り駆動制御部を送受信アンテナ及び誘導アンテナの本数に合わせて設ける必要がなく、複数本の送受信アンテナを時間分割制御で切り替えるための手段を設ける必要もない。このため、交信領域を拡大するための構成が簡単でコストも抑えることができる。
【実施例2】
【0040】
図2は本発明の実施例2にかかる非接触データキャリア読み取りシステムの概略構成を示すブロック図である。
実施例2の非接触データキャリア読み取りシステムでは、誘導アンテナ71〜7nが関連設備4と接続されている。
関連設備4は、送信回路による質問信号の生成駆動の制御、受信回路からの応答信号から識別情報を含む所望の情報の抽出をするCPU搭載装置に加えて、誘導アンテナ71〜7nのQ、共振周波数、偏波面、又は位相等の制御をする装置を備えている。なお、誘導アンテナ71〜7nのQ、共振周波数、偏波面、又は位相等の制御をする装置は、CPU搭載装置内に一体に備えても、あるいはCPU搭載装置とは別体に備えてもよい。その他の構成は実施例1のデータキャリア読み取り装置とほぼ同じである。
【0041】
実施例2の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、関連設備4に設けられた制御装置を介して、誘導アンテナ71〜7nのQや共振周波数、偏波面等の調整を行うことができる。これにより、誘導アンテナ71〜7nの誘起レベルが調整され、データキャリアとの交信距離及び交信領域が所望の距離及び範囲に調整される。
その他の作用効果は、実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムとほぼ同じである。
【実施例3】
【0042】
図3は本発明の実施例3にかかる非接触データキャリア読み取りシステムの概略構成を示すブロック図である。
実施例3の非接触データキャリア読み取りシステムでは、複数の送受信アンテナが、アンテナ分配器5を介して読み取り制御駆動部3内に設けられた送信回路3a−1に接続されたアンテナ21〜2nと、第2のアンテナ分配器5’またはアンテナ切替器6を介して読み取り駆動制御部3内に設けられた受信回路3−2に接続されたアンテナ2n+1〜2n+nとで構成されている。
また、誘導アンテナ71〜7n,7n+1〜7n+nが、これらの送受信アンテナ21〜2n,2n+1〜2n+nと相互誘導可能な位置に設けられている。誘導アンテナ71〜7n,7n+1〜7n+nは、送受信アンテナ21〜2n,2n+1,2n+nで生じた磁界により電界が誘起され、送受信アンテナ21〜2n,2n+1,2n+nと同じ周波数で共振するようになっている。
その他の構成は、実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムとほぼ同じである。
【0043】
このように構成された実施例3の非接触データキャリア読み取りシステムでは、送受信回路部3a内の送信回路3a−1を介して生成された質問信号が、分配器5を介して各送受信アンテナ21〜2nに分配される。各送受信アンテナ21〜2nに質問信号が出力されると、各送受信アンテナ21〜2nの発する磁界により、それらのアンテナと相互誘導可能な位置に配置された誘導アンテナ71〜7nに加えて、送受信アンテナ2n+1〜2n+n、誘導アンテナ7n+1〜7n+nに電流が誘起され、誘導アンテナ71〜7n、送受信アンテナ2n+1〜2n+n、誘導アンテナ7n+1〜7n+nは、送受信アンテナ21〜2nと同じ周波数で共振して電磁波を発する。
このため、データキャリア11に対しては、送受信アンテナ21〜2n,2n+1〜2n+n及び誘導アンテナ71〜7n,7n+1〜7n+nから質問電磁波を送信する。
【0044】
一方、データキャリア11からの応答電磁波は、送受信アンテナ21〜2n,2n+1〜2n+n及び誘導アンテナ71〜7n,7n+1〜7n+nのいずれかのアンテナで受信される。いずれかのアンテナで受信された場合、各アンテナ21〜2n,2n+1〜2n+n,71〜7n,7n+1〜7n+nは、同じ周波数で共振して応答電磁波を受信する。応答電磁波は、分配器5’を通り、読み取り駆動制御部3内の受信回路3a−2に出力され、受信回路3a−2を介して応答信号に信号処理される。応答信号は、図1において省略したコントローラを介して所定の識別情報及びその他の関連情報が抽出され、関連設備4からの入出力命令に応じて送信される。
【0045】
このため、実施例3の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、データキャリアとの交信可能領域を複数の送受信アンテナ21〜2n及び誘導アンテナ71〜7nに加えて、複数の送受信アンテナ2n+1〜2n+n及び誘導アンテナ7n+1〜7n+nの本数分拡大することができる。
他方、実施例3の非接触データキャリア読み取りシステムでは、誘導アンテナ71〜7nに加えて、送受信アンテナ2n+1〜2n+n、誘導アンテナ7n+1〜7n+nは、読み取り駆動制御部3内の送信回路3a−1と接続しておらず、送信回路3a−1からのアンテナ駆動のための電力が出力されない。このため、電界強度は電波法で規定されている値を超えることはない。
【0046】
また、送信時に読み取り駆動制御部3から出力する電気エネルギーは送信回路3a−1に分配器5を介して接続された送受信アンテナ21〜2nのみで足りる。
このため、実施例3の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、読み取り駆動制御部からの送受信アンテナへの出力を増大させることなく、データキャリアとの交信可能な領域を実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムに比べてより一層増大させることができる。
【0047】
なお、実施例3の非接触データキャリア読み取りシステムにおいて、誘導アンテナ71〜7n,7n+1〜7n+nを、実施例2の非接触データキャリア読み取りシステムと同様、誘導アンテナ71〜7n,7n+1〜7n+nのQ、共振周波数、偏波面、又は位相等の制御をする装置に接続してもよい。
その他の作用効果は、実施例1の非接触データキャリア読み取りシステムとほぼ同じである。
【実施例4】
【0048】
図4は本発明の実施例4にかかる非接触データキャリア読み取りシステムにおけるアンテナの一配置例を示す説明図である。なお、図4では便宜上、関連設備は省略してある。
実施例4の非接触データキャリア読み取りシステムでは、テーブル面8の周辺部に沿って、実施例1〜3のいずれかの非接触データキャリア読み取りシステムにおける4本の送受信アンテナ21〜24と4本の誘導アンテナ71〜74が、交互に配設されている。
なお、送受信アンテナ21〜24は、夫々が読み取り駆動制御部3内の送信回路と受信回路のいずれにも接続した構成、あるいは、実施例3のように読み取り駆動制御部3内の送信回路と受信回路のいずれか一方に接続した構成のいずれであってもよい。
また、図示省略した関連設備は、テーブル面8上でも、テーブル面8とは離れた位置のいずれに配置してもよい。
【0049】
このように構成した実施例4の非接触データキャリア読み取りシステムによれば、2次元方向にデータキャリアとの交信領域を拡大することができる。
なお、図4に示す構成例では、複数の送受信アンテナ及び誘導アンテナを矩形状のテーブルに沿って矩形状に配設したが、円形状のテーブルに沿って円形状に配設して構成してもよい。
また、図4に示す構成例では、複数の送受信アンテナ及び誘導アンテナをテーブル面上に2次元方向に配設したが、立体的な壁面に3次元方向に配設して構成してもよい。
【実施例5】
【0050】
図5は本発明の実施例5にかかる非接触データキャリア読み取りシステムにおけるアンテナの他の配置例を示す説明図である。なお、図5では便宜上、アンテナ以外の構成部材を省略して示してある。アンテナ以外の構成部材は、例えば、実施例1〜実施例3のいずれの構成であってもよい。
実施例5の非接触データキャリア読み取りシステムは、送受信アンテナ及び誘導アンテナを立体的な壁面に3次元方向に配設して構成した例であり、このような構成の非接触データキャリア読み取りシステムは、例えば、ファイル類保管管理システムに好適である。
実施例5の非接触データキャリア読み取りシステムでは、図5に示すように、送受信アンテナ21,22と誘導アンテナ71〜75が、例えば高さが約30cm、奥行きが約25〜30cm、幅が約90cm程度の箱又は棚などの立体形状部材9に水平方向及び垂直方向にデータキャリアの読み取りを最適に行なうことのできる距離をおいて3次元に配置されている。
【0051】
なお、図5の構成において、データキャリアの読み取り感度が低下しないのであれば、誘導アンテナ73を設けないで構成することも可能である。
あるいは、送受信の感度を高くするには、誘導アンテナ73の代わりに送受信アンテナを設けて構成するとよい。
また、図5では立体形状部材9の幅が約90cmの場合についてアンテナの配置構成を示したが、箱状部材の幅が約60cm程度の場合には、立体形状部材9の上下に誘導アンテナをそれぞれ1枚ずつ設けて構成してもよい。
また、図5の構成は、3次元配置の一例を示したものに過ぎず、複数の送受信アンテナと相互誘導可能な位置に送受信アンテナと同一の周波数で共振する誘導アンテナを配置した構成であればその他の配置であっても勿論よい。
【0052】
その他、上記各実施例の非接触データキャリア読み取りシステムにおいて、誘導アンテナと送受信アンテナとの間が離れすぎていると磁界の発生方向や出力の大きさによっては、送受信アンテナと誘導アンテナとの間で磁界の誘導ができずに途切れてしまい、全ての送受信アンテナに連続した交信データの誘導ができない場合が起こり得る。
そこで、上記各実施例の非接触データキャリア読み取りシステムにおいて、送受信アンテナの間に誘導アンテナを極く近接させ、あるいはオーバーラップさせた状態に配置すれば、誘導アンテナを介して各送受信アンテナ間に連続した状態で磁界を誘導することができ、データキャリアの読み取り率をより向上させることができるのでより一層好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1にかかる非接触データキャリア読み取りシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例2にかかる非接触データキャリア読み取りシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例3にかかる非接触データキャリア読み取りシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例4にかかる非接触データキャリア読み取りシステムにおけるアンテナの一配置例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例5にかかる非接触データキャリア読み取りシステムにおけるアンテナの他の配置例を示す説明図である。
【図6】RFIDシステムの基本構成の一例を示すブロック図である。
【図7】RFIDシステムにおけるデータキャリア読み取り装置の一従来例を示すブロック図である。
【図8】RFIDシステムにおけるデータキャリア読み取り装置の他の従来例を示すブロック図である。
【図9】RFIDシステムにおけるデータキャリア読み取り装置のさらに他の従来例を示すブロック図である。
【図10】RFIDシステムにおけるデータキャリア読み取り装置のさらに他の従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 データキャリア読み取り装置
2 送受信アンテナ
3 読み取り駆動制御部
3a 送受信回路部
3a−1 送信回路
3a−2 受信回路
3b コントローラ
4 関連設備
5、5’ アンテナ分配器
6 アンテナ切替器
7 誘導アンテナ
8 テーブル面
9 立体形状部材
11 データキャリア
12 送受信アンテナ
13 ICチップ
13a 送受信回路部
13b メモリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問情報を生成するとともに応答電磁波から所定の識別情報を認識する読み取り駆動制御部と、前記読み取り駆動制御部で生成された質問情報を電磁波としてデータキャリアに送信するとともに該データキャリアからの応答電磁波を受信して前記読み取り駆動制御部に送信する送受信アンテナを有する非接触データキャリア読み取りシステムにおいて、
前記送受信アンテナを複数備えるとともに、
前記読み取り駆動制御部で生成された質問情報を分配して前記複数の送受信アンテナに送信する分配器を有し、さらに、
前記複数の送受信アンテナと相互誘導可能な位置に該送受信アンテナと同一の周波数で共振する誘導アンテナを備えたことを特徴とする非接触データキャリア読み取りシステム。
【請求項2】
前記誘導アンテナによる電磁波の誘起レベルを制御する誘導アンテナ制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の非接触データキャリア読み取りシステム。
【請求項3】
前記読み取り駆動制御部が、送信回路と受信回路を有し、
前記複数の送受信アンテナが、前記送信回路に接続するアンテナと、前記受信回路に接続するアンテナとで構成され、
前記誘導アンテナが、前記送信回路に接続するアンテナ及び前記受信回路に接続するアンテナと相互誘導可能な位置に一本以上設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触データキャリア読み取りシステム。
【請求項4】
前記誘導アンテナ制御手段が、前記誘導アンテナのQ、共振周波数、偏波面、又は位相を制御する機能を備えることを特徴とする請求項2に記載の非接触データキャリア読み取りシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−33247(P2006−33247A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207201(P2004−207201)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000104618)キャビン工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】