説明

面取り工具

【課題】簡易に精度よく所定形状に面取り加工を行なうことができる面取り工具を提供する。
【解決手段】ハンディドリルを下方に向けて押付けるようにして、ドリルチャック11の先端をスラスト玉軸受7に当接した状態で、上部ケーシング2と下部ケーシング3の間に介在させたスプリング5の付勢力に抗して面取りドリル9を下方移動させて、その拡径部9aをピボット玉軸受8の上面に当接させるだけで、面取りドリル9の先端が所定長さだけ筒状ガイド部4の先端から突出し、軸回転する面取りドリル9は、スラスト玉軸受7およびピボット玉軸受8によって支持されるので、面取りドリル9の軸回転は、上部ケーシング2および下部ケーシング3には作用しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面取り工具に関し、さらに詳しくは、簡易に精度よく所定形状に面取り加工を行なうことができる面取り工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料に形成した穴に対して、穴周縁エッジの除去を行なう面取りは広く行なわれている。例えば、タイヤ加硫用モールドには、空気や加硫中に発生するガス等を外部に排出するために、ベントホールが設けられているが、このベントホールにも面取りが行なわれている。面取り加工については、ボール盤等の工作機械を用いた面取り装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの工作機械を用いれば、精度よく所定形状に面取りを行なうことができるが、被加工物のセッティングが面倒であり、機動的かつ簡易に面取り加工することができないという問題があった。
【0003】
一方、ハンディタイプのドリルに面取りアタッチメントを取り付けて、面取り加工を行なう方法もある。しかし、この方法は基本的に手作業になるため、面取りの仕上がりが作業者の技量に左右され、面取り深さや面取り形状にばらつきが生じるという問題があった。
【特許文献1】登録実用新案公報第3005737号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡易に精度よく所定形状に面取り加工を行なうことができる面取り工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の面取り工具は、上部ケーシングと、下方に突出する筒状ガイド部を有する下部ケーシングとをスプリングを介在させて保持し、上部ケーシングにスラスト玉軸受を設け、下部ケーシングにピボット玉軸受を設け、この筒状ガイド部、スラスト玉軸受およびピボット玉軸受を、ハンディドリルのドリルチャックに取付けた面取りドリルが連通するように配置し、前記面取りドリルの中途に、スラスト玉軸受を通過し、ピボット玉軸受の上面に当接して面取りドリルの下方移動を規制する拡径部を設け、前記ドリルチャックの先端がスラスト玉軸受の上面に当接した際に、前記拡径部がピボット玉軸受の上面よりも上方に位置する構成にして、拡径部の下端がピボット玉軸受の上面に当接した際に、前記筒状ガイド部の先端から面取りドリルの先端が所定長さ突出する設定にしたことを特徴とするものである。
【0006】
ここで、前記ドリルチャックの先端がスラスト玉軸受の上面に当接した際に、面取りドリルの先端が筒状ガイド部の先端から1mm以上5mm以下の範囲で突出する設定することもできる。また、前記筒状ガイド部の長さを可変構造にすることもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、ハンディドリルを下方に向けて押付けるようにして、ドリルチャックの先端をスラスト玉軸受に当接した状態でスプリングの付勢力に抗して下方移動させて、拡径部をピボット玉軸受の上面に当接させるだけで、面取りドリルの先端が所定長さだけ筒状ガイド部の先端から突出する。そして、軸回転する面取りドリルは、スラスト玉軸受およびピボット玉軸受によって支持されるので、その軸回転が上部ケーシングおよび下部ケーシングに作用することがない。そのため、作業者の技量に関わらず、簡易に精度よく所定形状に面取り加工を行なうことができる。
【0008】
面取り加工が終わった後は、ハンディドリルを下方に押付ける力を解除すれば、スプリングの付勢力によって、面取りドリルを元の位置に戻すことができるので、次の位置での面取り加工を迅速に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の面取り工具を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1に例示するように、本発明の面取り工具1は、上部ケーシング2と、下方に突出する筒状ガイド部4を有する下部ケーシング3とをコイル状のスプリング5を介在させて保持している。上部ケーシング2には、幅方向中央部に上下に2つのスラスト玉軸受7が設けられている。スラスト玉軸受7は1つにすることもできる。スラスト玉軸受7の幅方向外側には上部ケーシング2を上下に貫通するガイド穴2aが形成されている。ガイド穴2aは、例えば、スラスト玉軸受7の軸心まわりに等角度の配置で4つ形成されている。
【0011】
下部ケーシング3には、幅方向中央部にピボット玉軸受8が設けられている。ピボット玉軸受8の幅方向外側には下部ケーシング3を上下に貫通するネジ穴3aが形成されている。ネジ穴3aは、例えば、ピボット玉軸受8の軸心まわりに等角度の配置で4つ形成されている。
【0012】
スラスト玉軸受7、ピボット玉軸受8および筒状ガイド部4の内穴は、上下方向に直列に配置された状態になっており、スラスト玉軸受7、ピボット玉軸受8および筒状ガイド部4は、ハンディドリル10のドリルチャック11に取付けた面取りドリル9が連通するように配置されている。また、それぞれのガイド穴2aとネジ穴3aとは、上下方向に直列に配置された状態になっており、それぞれのガイド穴2aとネジ穴3aには、上下動ガイドボルト6が連通している。それぞれの上下動ガイドボルト6は、下端部がネジ穴3aで固定されていて、ガイド穴2aではフリーな状態になっている。
【0013】
ドリルチャック11に取付けた面取りドリル9は、先端部に切削(研削)を行なう刃先部9bを有し、刃先部9bよりも上方位置に刃先部9bよりも太径になったテーパ状の拡径部9aが設けられている。この面取りドリル9の中途に設けられた拡径部9aは、スラスト玉軸受7は通過するが、ピボット玉軸受8は通過せずにピボット玉軸受8の上面に当接する大きさに設定されている。そのため、拡径部9bがピボット玉軸受8の上面に当接すると、面取りドリル9の下方移動が規制される構造になっており、拡径部9aがストッパとして機能するようになっている。
【0014】
そして、面取りドリル9をスラスト玉軸受7、ピボット玉軸受8に挿入してゆき、ドリルチャック11の先端が上側のスラスト玉軸受7の上面に当接した際に、拡径部9aがピボット玉軸受8の上面よりも上方に位置する構成になっている。この状態で、さらに、ハンディドリル10を下方に向けて押付けるようにして、スプリング5の付勢力に抗して下方移動させて、拡径部9aの下端がピボット玉軸受8の上面に当接した際には、筒状ガイド部4の先端から面取りドリル9の先端が所定長さLだけ突出するように設定されている。
【0015】
以下に面取り工具1を用いた面取り方法を説明する。
【0016】
図1に例示するように、面取り工具1にハンディドリル10のドリルチャック11に取付けた面取りドリル9を、スラスト玉軸受7、ピボット玉軸受8および筒状ガイド部4に連通した状態にする。この実施形態では、ドリルチャック11の先端が上側のスラスト玉軸受7の上面に当接した際に、面取りドリル9の先端が筒状ガイド部4の先端から1mm以上5mm以下の範囲で突出する設定になっている。
【0017】
次いで、図2に例示するように、面取りドリル9の先端を、アルミモールド等の被加工物Mに形成された加工穴Hに位置決めする。この実施形態では、当初から面取りドリル9の先端が筒状ガイド部4の先端から1mm以上5mm以下の範囲で突出しているので、位置決めを容易に行なうことができる。
【0018】
位置決めをした後は、図3に例示するように、ハンディドリル10を下方に向けて押付けるようにして、スプリング5の付勢力に抗して下方移動させる。スラスト玉軸受7およびピボット玉軸受8を通過するので、面取りドリル9を円滑に上下移動させることができる。さらに、上部ケーシング2がガイドボルト6に沿って下方移動するので、ぶれることなく面取りドリル9を下方移動させることができる。
【0019】
そして、そのままハンディドリル10を下方移動させて拡径部9aをピボット玉軸受8の上面に当接させるだけで、面取りドリル9の先端が所定長さLだけ筒状ガイド部4の先端から突出する。また、面取りドリル9は、スラスト玉軸受7およびピボット玉軸受8によって支持されるので、面取りドリル9を軸回転させても、その回転が上部ケーシング2および下部ケーシング3に作用することはない。
【0020】
そして、面取りドリル9の刃先部9bは、軸回転することによって加工穴Hの周縁部を切削(研削)して面取りする。この面取り工具1はハンディドリル10に着脱可能な構造であるので、移動させることができない被加工物Mに対しても、面取り工具1とハンディドリル10とを簡単に持ち運んで機動的に面取り加工を行なうことができる。
【0021】
このように、この面取り工具1を用いれば、容易かつ安定して所定長さLだけ面取りドリル9の先端を、筒状ガイド部4の先端から突出させることができるので、作業者の技量に関わらず、簡易に精度よく所定形状に面取り加工を行なうことができる。
【0022】
面取り加工が終わった後は、ハンディドリル10を下方に押付ける力を解除すれば、スプリング5の付勢力によって、面取りドリル9を元の位置に戻すことができるので、次の位置での面取り加工を迅速に行なうことができる。
【0023】
また、図4に例示するように、筒状ガイド部4の構造を、上下方向に任意の長さに設定して、その設定した長さで固定できる可変構造にすることもできる。面取り加工を行なう際に、筒状ガイド部4の先端から突出させる面取りドリル9の所定長さLは、基本的に面取りドリル9をドリルチャック11に取付ける際に設定するが、この可変構造にすることにより、面取りドリル9をドリルチャック11に取付けたままの状態で、所定長さLの微調整を行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の面取り工具を例示する縦断面図である。
【図2】位置決めをしている面取り工具を例示する縦断面図である。
【図3】面取り加工を行なっている面取り工具を例示する縦断面図である。
【図4】図1の筒状ガイド部の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 面取り工具
2 上部ケーシング
2a ガイド穴
3 下部ケーシング
3a ネジ穴
4 筒状ガイド部
4a 長さ調節アタッチメント
5 スプリング
6 上下動ガイドボルト
7 スラスト玉軸受
8 ピボット玉軸受
9 面取りドリル
9a 拡径部
9b 刃先部
10 ハンディドリル
11 ドリルチャック
M 被加工物
H 加工穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部ケーシングと、下方に突出する筒状ガイド部を有する下部ケーシングとをスプリングを介在させて保持し、上部ケーシングにスラスト玉軸受を設け、下部ケーシングにピボット玉軸受を設け、この筒状ガイド部、スラスト玉軸受およびピボット玉軸受を、ハンディドリルのドリルチャックに取付けた面取りドリルが連通するように配置し、前記面取りドリルの中途に、スラスト玉軸受を通過し、ピボット玉軸受の上面に当接して面取りドリルの下方移動を規制する拡径部を設け、前記ドリルチャックの先端がスラスト玉軸受の上面に当接した際に、前記拡径部がピボット玉軸受の上面よりも上方に位置する構成にして、拡径部の下端がピボット玉軸受の上面に当接した際に、前記筒状ガイド部の先端から面取りドリルの先端が所定長さ突出する設定にした面取り工具。
【請求項2】
前記ドリルチャックの先端がスラスト玉軸受の上面に当接した際に、面取りドリルの先端が筒状ガイド部の先端から1mm以上5mm以下の範囲で突出する設定にした請求項1に記載の面取り工具。
【請求項3】
前記筒状ガイド部の長さを可変構造にした請求項1または2に記載の面取り工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269154(P2009−269154A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124032(P2008−124032)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】